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JP2009042628A - 防眩フィルム - Google Patents

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JP2009042628A JP2007209458A JP2007209458A JP2009042628A JP 2009042628 A JP2009042628 A JP 2009042628A JP 2007209458 A JP2007209458 A JP 2007209458A JP 2007209458 A JP2007209458 A JP 2007209458A JP 2009042628 A JP2009042628 A JP 2009042628A
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Abstract

【課題】優れた防眩性と共に優れたハードコート性を兼ね備えた防眩層を備える防眩フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルム上に最表面が凹凸形状を有する防眩層を設けてなる防眩フィルムであって、防眩層の凹凸層を形成するバインダー成分Cと架橋結合を形成し得る架橋性を有し、且つ、特定の平均粒径を有する反応性無機微粒子Bを、該凹凸層の透明基材フィルム側とは反対側界面の表層領域に偏在させることで、優れた防眩性と共に高いハードコート性を兼ね備えた防眩フィルムを得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶ディスプレイ、陰極管表示装置(CRT)、もしくはプラズマディスプレイパネル等のディスプレイの前面に貼り付けたり、配置したりして、外光の反射を防止し、映像を見えやすくする目的等で使用される、防眩フィルムに関する。
上記のようなディスプレイ等においては、外部から照射される光のディスプレイ表面での反射を防止するために、微細な凹凸表面を有する防眩フィルムがディスプレイ表面に設けられている。
この防眩フィルムには、大粒径又は凝集性の粒子を含む樹脂組成物を透明基材の表面に塗工することによって、表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するタイプ、前記粒子を含まず、スピノーダル分解により、相分離構造を形成し、硬化性樹脂を硬化させることによって表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するタイプ、あるいは層表面に凹凸をもったフィルムをラミネートして凹凸形状を転写することによって、表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するタイプなどがある。
また、上記のような各種ディスプレイ等の表面における外部光源からの光の反射を防止するフィルムとして、下層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率を有する低屈折率層を形成した反射防止フィルムが知られている(例えば、特許文献1〜3等)。
例えば、特許文献1には、透明プラスチックフィルム基材上に、低屈折率微粒子と高屈折率微粒子とバインダーとを含有する硬化層が形成されてなり、該硬化層表面(基材フィルム反対面)側に低屈折率微粒子である中空シリカを偏在させることで、見かけ上の低屈折率層を形成し、優れた反射防止性が得られることが記載されている。また、特許文献2には、特許文献1同様、硬化層表面側に低屈折率微粒子を偏在させると同時に、基材側に高屈折率微粒子を偏在させることによって、反射防止効果を高め、さらには、高屈折率微粒子として導電性微粒子を用いることで帯電防止性をも付与することが記載されている。
特許文献1及び2には、硬化層表面側に偏在させる中空シリカ(低屈折率粒子)として、空腔部の割合を大きくして屈折率をさらに低くするために、平均粒径が30nm以上のものを用いると記載されており、実施例では平均粒径が40nmのものが用いられている。また、中空シリカを硬化層表面側に偏在させるために、フッ素含有化合物で表面処理することで中空シリカの表面自由エネルギーを小さくする方法が採用されている。
さらに、特許文献3には、バインダー樹脂中に比重と屈折率の異なる複数種類の微粒子が分散されているコーティング組成物をワンコートすることによって、比重の差により、塗膜の上部乃至中間部において低屈折率微粒子を偏在させ、且つ中間部乃至下部において中乃至高屈折率微粒子を偏在させた塗膜を有する反射防止フィルムが記載されている。
一方、上記のようなディスプレイ等における画像表示装置の画像表示面は、取り扱い時に傷がつかないように、耐擦傷性を付与することが要求される。これに対して、基材フィルムにハードコート(HC)層を形成させたハードコートフィルムや、更に反射防止性や防眩性等の光学機能を付与したハードコートフィルム(光学積層体)を利用することにより、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性を向上させることが一般になされている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献4)。
ハードコート層と、反射防止層や防眩性層等のその他の機能層とを積層する場合、高い耐擦傷性を得るためには、ハードコート層と機能層との層間密着性を確保することが非常に重要であるが、充分な耐擦傷性を実現する層間密着性が得られにくいのが実情である。
特許文献1や特許文献2には、反射防止を目的として硬化層表面側に偏在させる低屈折率微粒子として、シリカ微粒子を用いることで、硬化層の耐擦傷性が高められるとの記載がある。
特開2007−86764号公報 特開2007−133236号公報 特開2007−121993号公報 特開2007−23107号公報
ハードコート層と、反射防止層や防眩性層等の機能層とを、それぞれ硬化性樹脂組成物を用いて形成し、積層した場合、層間密着性が確保しにくく、充分な耐擦傷性が得られないばかりでなく、複数の層形成による製造効率の低さという問題もある。また、特許文献1〜3のように、1種の硬化性樹脂組成物のワンコートで形成可能であり、ハードコート性と反射防止効果や防眩効果等の光学機能性とを兼ね備えた機能性ハードコート層については、充分なハードコート性と光学機能の両立が実現されていない。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、1種の硬化性樹脂組成物のワンコートで形成可能であり、優れた防眩性と共に優れたハードコート性を兼ね備えた防眩層を備える防眩フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、防眩層の凹凸層を形成するバインダー成分Cと架橋結合を形成し得る架橋性を有し、且つ、特定の平均粒径を有する反応性無機微粒子Bを、該凹凸層の透明基材フィルム側とは反対側界面の表層領域に偏在させることで、優れた防眩性と共に高いハードコート性を兼ね備えた防眩フィルムを得ることができるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の防眩フィルムは、透明基材フィルム上に最表面が凹凸形状を有する防眩層を設けてなる防眩フィルムであって、前記防眩層が、凹凸層のみからなる単一層か、または、凹凸層と当該凹凸層の観察者側に配置された表面形状調整層を含む2層以上からなる積層構造を有し、当該凹凸層は、(1)平均粒子径が1μm以上10μm以下の範囲にある透光性微粒子A、(2)平均粒子径が5nm以上30nm以下の範囲にあり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する反応性無機微粒子B、及び(3)前記反応性無機微粒子Bの反応性官能基bとの架橋反応性を有する反応性官能基cを有するバインダー成分Cを含み、系内における硬化反応性も有する硬化性バインダー系、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該凹凸層の透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域に比べて、当該凹凸層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が多いスキン層を有しており、当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が、当該凹凸層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数の2倍以上であることを特徴とする。
本発明によれば、反応性無機微粒子Bが偏在したスキン層における、反応性無機微粒子Bの反応性官能基bとバインダー成分Cの反応性官能基cによる架橋点の増加と、反応性無機微粒子Bの硬度により、高い硬度と膜強度を有し、優れたハードコート性を示す防眩フィルムを得ることができる。
本発明にかかる防眩フィルムにおいて、スキン層によるハードコート性向上効果をさらに高めるためには、前記スキン層の厚さが、透明基材フィルムとは反対側の界面から前記反応性無機微粒子Bの平均粒径の等倍から5倍までの厚さであることが好ましく、また、前記スキン層において、前記反応性無機微粒子Bが密集していることが好ましい。
さらに、前記スキン層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が800個/μm2以上であり、且つ、前記凹凸層全体の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が500個/μm2以下であることが好ましい。
前記反応性無機微粒子Bのコアとなる無機微粒子及び前記透光性無機微粒子Aが、同じ材質からなる場合、前記凹凸層における内部散乱性が高まり、防眩性をさらに高めることができる。
本発明に係る防眩フィルムにおいて、前記反応性無機微粒子Bは、その表面の少なくとも一部が有機成分で被覆されており、前記反応性官能基bが当該有機成分により前記反応性無機微粒子Bの表面に導入されており、当該有機成分が、被覆前の無機微粒子の単位表面積当たり1.00×10−3g/m以上含まれることが、硬化膜の硬度を向上させる点から好ましい。
また、前記反応性無機微粒子Bとしては、フッ素を含有しないものを用いることができる。
前記反応性無機微粒子Bの反応性官能基b、及び、前記バインダー成分Cの反応性官能基cは、ハードコート性の点から、いずれも重合性不飽和基を有するものであることが好ましい。
また、有機成分含有量が少なくても膜強度の向上が可能であることから、前記反応性無機微粒子Bが、飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られるものが好ましい。
有機成分により前記反応性無機微粒子Bを効率よく表面修飾することができることから、前記表面修飾化合物が水素結合形成基を有する化合物であることが好ましい。また、反応性無機微粒子Bに導入された反応性官能基bとバインダー成分Cの反応性官能基cが架橋結合を形成しやすく、さらに膜強度を向上することが可能であることから、前記表面修飾化合物の少なくとも1種が、前記反応性官能基bとなる重合性不飽和基を有することが好ましい。
前記反応性無機微粒子Bが、当該反応性無機微粒子B表面に導入される反応性官能基b、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られるものであることが、有機成分への分散性、及び膜強度が向上する点から好ましい。
化学式(1)
−Q−C(=Q)−NH−
(化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示す。)
前記バインダー成分Cとしては、前記反応性無機微粒子Bの反応性官能基bと結合可能な反応性官能基cを3つ以上有する化合物であることが好ましい。
前記反応性無機微粒子Bの含有量は、全固形分に対して5〜30重量%であることが好ましい。
本発明の防眩フィルムにおいては、前記透明基材フィルムが、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とすることが好ましい。
本発明によれば、前記防眩層の表面を、#0000番のスチールウールで、300g/cm2の荷重をかけながら、速度50mm/secで10往復摩擦させる耐スチールウール試験において、当該防眩層表面に傷が付かない防眩層を備えたハードコート性に優れる防眩フィルムを提供することが可能である。
本発明の防眩フィルムにおいては、前記凹凸層の膜厚が0.5μm以上30μm以下であることが、当該凹凸層に良好な凹凸形状を形成できる点で好ましい。
本発明の防眩フィルムは、最表面が凹凸形状を有する防眩層において、透明基材フィルムとは反対側界面及びその近傍の表層領域に、特定粒径を有し、且つ、防眩層を形成するバインダー成分と架橋結合を形成し得る反応性官能基を有する反応性無機微粒子を、偏在させることによって、防眩層にハードコート性を付与させたものであり、優れた防眩性とハードコート性を兼ね備えている。
しかも、前記防眩層は、前記反応性無機微粒子と前記バインダー成分と特定の平均粒径を有する透光性微粒子を含有する硬化性樹脂組成物1種のワンコートによって、形成することが可能であるため、生産効率に優れると共に、ハードコート層と防眩層を、別途、組成物を用いて形成する場合と異なり、層間密着性の問題がない。
本発明の防眩フィルムは、透明基材フィルム上に最表面が凹凸形状を有する防眩層を設けてなる防眩フィルムであって、前記防眩層が、凹凸層のみからなる単一層か、または、凹凸層と当該凹凸層の観察者側に配置された表面形状調整層を含む2層以上からなる積層構造を有し、当該凹凸層は、
(1) 平均粒子径が1μm以上10μm以下の範囲にある透光性微粒子A、
(2) 平均粒子径が5nm以上30nm以下の範囲にあり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する反応性無機微粒子B、及び
(3) 前記反応性無機微粒子Bの反応性官能基bとの架橋反応性を有する反応性官能基cを有するバインダー成分Cを含み、系内における硬化反応性も有する硬化性バインダー系、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該凹凸層の透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域に比べて、当該凹凸層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が多いスキン層を有しており、当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が、当該凹凸層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数の2倍以上であることを特徴とするものである。
ここで、スキン層とは、防眩層を構成する凹凸層の透明基材フィルム側とは反対側の界面(いわゆる空気界面)から一定の深さに亘る表層領域に、反応性無機微粒子Bが偏在して形成された層状構造であり、凹凸層の空気界面側の最表面を構成するものである。スキン層は、該凹凸層の該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域と比較して、反応性無機微粒子Bを多く含有しており、凹凸層において、透明基材フィルムとは反対側の界面から一定の深さを過ぎると、その厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数は、透明基材フィルム側に向かって急激に減少し、スキン層の境界の存在を明瞭に判別することができる。スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数は、該スキン層を含む凹凸層全体の厚み方向断面における単位面積当りの平均粒子数の2倍以上となっている。
ここで、本発明にかかる防眩フィルムの凹凸層における反応性無機微粒子Bの分布状態について、図3を用いて説明する。
まず、凹凸層3の厚さ方向断面において、透明基材フィルム側界面、該透明基材フィルムとは反対側の界面(空気側界面)、及び、凹凸層の厚さ方向に平行な2辺に囲まれた領域Sを切り取り、該領域Sの単位面積あたりの反応性無機微粒子Bの平均粒子数Aを、該凹凸層3全体の厚さ方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数とする。
領域Sにおいて、空気側界面から一定の深さDまでの領域sにおける単位面積当りの平均粒子数aを測定すると、a>A×2である。空気側界面からの深さDをDよりも深くし、空気側界面から深さDまでの領域sにおける単位面積当りの平均粒子数aを測定していくと、単位面積当りの平均粒子数aが、a=A×2となる深さDがある。そして、空気側界面からの深さがDよりも深い、深さDm+1までの領域sm+1では、単位面積当りの平均粒子数am+1は、am+1<A×2となる。このとき、空気界面側から深さDまでの領域sをスキン層と考えることができる。
尚、凹凸層における反応性無機微粒子Bの分布状態は、凹凸層の透過電子顕微鏡(STEM)写真などにより確認することができ、反応性無機微粒子Bが偏在してなるスキン層は、その領域の境界を目視で明瞭に判別することができる。
また、凹凸層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数は、以下のようにして求めることができる。すなわち、凹凸層の深さ方向断面のSTEM写真等により、反応性無機微粒子の数をカウントし、カウントした粒子が存在する面積で除することによって単位面積あたりの密度を算出することができる。
図1に、本発明の防眩フィルムの一形態例を示す。図1に示す防眩フィルム100において、透明基材フィルム1の一方の面上には、直接、最表面が凹凸形状を有する防眩層2が設けられている。防眩層2は、最表面が凹凸形状を有する凹凸層3のみからなる単一構造を有しているが、該凹凸層3の透明基材フィルム1側とは反対側の界面に、反応性無機微粒子5が偏在してなるスキン層3’を有している。
このように、防眩効果を有する防眩層を構成する凹凸層において、透明基材フィルム側とは反対側の界面及びその近傍の表層領域に反応性無機微粒子Bを偏在させ、該表層領域以外の領域よりも反応性無機微粒子Bを多く存在させることによって、まず、反応性無機微粒子Bそのものが有する高い硬度により、防眩層の硬度を向上させることができる。さらには、反応性無機微粒子Bとバインダー成分Cとの架橋点の偏在により、膜強度を向上させることができる。このように反応性無機微粒子Bを偏在させることによって、同量の反応性無機微粒子Bを凹凸層全体に分散させた場合と比較して、防眩層表面のハードコート性を著しく且つ効率よく高めることが可能である。
しかも、本発明の防眩フィルムにおいては、凹凸層の表面から一定の深さまでに反応性無機微粒子Bが偏在しており(スキン層)、厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数は上記一定の深さを超えると急激に減少するものである。このように、反応性無機微粒子Bが偏在する領域(スキン層)の境界が明瞭となるように反応性無機微粒子Bを分布させることによって、凹凸層の表面から除々に反応性無機微粒子の密度が減少するような傾斜構造で偏在させる場合と比較して、効果的に凹凸層のハードコート性を高めることができる。
スキン層の厚さは、透明基材フィルムとは反対側の界面から反応性無機微粒子Bの平均粒径の等倍から5倍までの厚さ、特に、反応性無機微粒子Bの平均粒径の等倍から3倍までの厚さであることが好ましい。このように、凹凸層の空気界面側の非常に限定された狭い表層領域に反応性無機微粒子Bを偏在させることによって、効率良く防眩層のハードコート性を高めることができる。
また、スキン層によるハードコート性向上効果を高めるためには、スキン層において反応性無機微粒子Bが密集していることが好ましい。ここで、反応性無機微粒子が密集しているとは、隣接する反応性無機微粒子B同士が互いに接触している状態である。このように、スキン層における反応性無機微粒子Bの偏在性を高めることで、凹凸層表面の硬度及び膜強度をさらに高めることができる。
スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数は、スキン層を含む凹凸層の全体の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数の2倍以上であれば、防眩層のハードコート性を充分に向上させることができるが、特に3倍以上、さらに5倍以上の倍率であることが好ましい。
さらに具体的には、スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数が800個/μm2以上であり、且つ、凹凸層全体の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数が500個/μm2以下であることが好ましい。防眩層のハードコート性の観点からは、特に、スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数が800個/μm2以上であり、且つ、凹凸層全体の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Bの平均粒子数が400個/μm2以下であることが好ましい。
尚、防眩フィルムにおいて、防眩層は必ず観察者側の表面に配置される。ここで、本発明において観察者側とは、本発明に係る防眩フィルムを画像表示装置に配置する際に、観察者に向ける面を意味する。また、本発明において、表示装置側とは、本発明に係る防眩フィルムを画像表示装置に配置する際に、画像表示装置本体に向ける面を意味する。
また、図1に示す防眩フィルムは、透明基材フィルム上に直接、防眩層が設けられているが、他の層を介して、透明基材フィルム上に防眩層を設けてもよい。また、防眩層は、防眩層の最表面を形成する凹凸形状を有していればよく、凹凸層のみからなる単一構造に限定されず、凹凸層と該凹凸層の観察者側に配置された表面形状調整層を含む2層以上からなる積層構造を有していてもよい。具体的な積層構造については、後述する。
以下、本発明の防眩フィルムについて、詳しく説明していく。
なお、本明細書中において(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。また、本願明細書中の光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
また、反応性官能基には、光硬化性官能基及び熱硬化性官能基が含まれる。光硬化性官能基とは、光照射により重合反応や架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合のような重合反応、あるいは、光二量化を経て進行する付加重合または縮重合等の反応形式により反応が進行するものが挙げられる。また、本明細書中の熱硬化性官能基とは、加熱によって同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応または架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等を例示することができる。
本発明に用いられる反応性官能基としては、特に、硬化膜の硬度を向上させる観点から、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
[透明基材フィルム]
透明基材フィルムの材質は、特に限定されないが、防眩フィルムに用いられる一般的な材料を用いることができ、例えば、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とするものが挙げられる。ここで、「主体とする」とは、基材構成成分の中で最も含有割合が高い成分を示すものである。
セルロースアシレートの具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が挙げられ、より具体的には、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製 スミライトFS-1700、JSR(株)製 アートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製 アペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製の Topas(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製 オプトレッツOZ-1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
アクリレート系ポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとはアクリル、メタクリル又はその両方の混合系を意味する。
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
本発明にあっては、透明基材が薄膜の柔軟性に富んだフィルム状体として使用する場合、その厚さは、20μm以上300μm以下、好ましくは上限が200μm以下であり、下限が30μm以上である。透明基材が剛性を有する板状体の場合には上記厚さの範囲を越える厚さであってもよく、1〜5mm程度のものが用いられる。透明基材フィルムは、その上に防眩層を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤もしくはプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行なってもよい。さらに、透明基材フィルムは1層のみに限定されず、2層以上存在してもよい。
[防眩層]
防眩層は本発明の防眩フィルムに必須の層であり、観察者側の表面に設けられる。防眩層は1層又は2層以上からなり、少なくとも凹凸層を有し、その最表面は凹凸形状を有する。
本発明にあっては、上記透明基材フィルム等の表面に、予め成形しておいた凹凸層を積層してもよい。
(凹凸層)
本発明の防眩層フィルムにおける凹凸層は、防眩性を付与するための透光性微粒子A、ハードコート性を付与するための反応性無機微粒子B、及び基材や隣接する層に対する密着性を付与するためのバインダー成分Cを必須成分とする、硬化性バインダー系の硬化後に凹凸層のマトリクスを形成する成分を含有し、更に必要に応じて、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤、屈折率調整、架橋収縮防止、高押し込み強度付与のための無機フィラー等を含有して形成される。
<透光性微粒子A>
透光性微粒子Aは、表面の凹凸を形成し防眩性を付与するために、防眩層に含有させる微粒子である。透光性微粒子Aは、目的に応じ、1種類だけでなく、成分が異なるもの、形状が異なるもの、粒度分布が異なるものなどを2種類以上混合して用いることができる。好ましくは、1〜3種類用いるのがよく、特に1〜2種類用いるのがよい。但し、凹凸を形成する以外の目的のために、更に多種の粒子を用いることもできる。
本発明に用いられる1種又は2種以上の透光性微粒子Aは、球状、例えば真球状、回転楕円体状等のものであってよく、真球状であることがより好ましい。1種又は2種以上の透光性微粒子Aの各平均粒子径(μm)は、1μm以上10μm以下であり、1μm以上7μm以下であることが好ましく、1.5μm以上5μm以下がより好ましい。
平均粒子径が1μm未満の場合、防眩層の表面に充分な防眩性を発揮できるサイズの凹凸形状を付与することが困難であり、仮に凹凸形状を付与できるとしても、透光性微粒子Aの添加量を非常に多くしなければならないため、防眩層の膜物性が悪くなる。また、平均粒子径が10μmを超えるときは、防眩層の表面形状が粗くなり、面質を悪化させたり、表面へイズの上昇により白味が増してしまう恐れがある。
尚、透光性微粒子Aの平均粒子径とは、含有される各々の粒子が、単分散型の粒子(形状が単一な粒子)であれば、その平均粒子径を表し、ブロードな粒度分布を持つ不定形型の粒子であれば、粒度分布測定により、最も多く存在する粒子の粒径を平均粒子径として表している。上記微粒子の粒径は、主に、コールターカウンター法により計測できる。また、この方法以外に、レーザー回折法、SEM写真撮影による測定によっても計測できる。また、上記透光性微粒子Aは、凝集粒子であってもよく、凝集粒子である場合は、二次粒子径が上記範囲内であることが好ましい。
上記各透光性微粒子Aは、透光性微粒子全体の80%以上(好ましくは90%以上)が、各平均粒子径±300nmの範囲内にあることが好ましい。これによって、防眩層の凹凸形状の均一性を良好なものとすることができる。
上記各透光性微粒子Aは、特に限定されず、無機系、有機系のものを使用することができる。特に好ましくは、膜強度アップの点から無機系微粒子を使用することが好ましい。
有機系材料により形成されてなる微粒子の具体例としては、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、ポリスチレンビーズ(屈折率1.60)、メラミン樹脂ビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.50〜1.53)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54〜1.58)、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、等が挙げられる。上記プラスチックビーズは、その表面に疎水性基を有することが好ましく、例えば、スチレンビーズを挙げることができる。
無機系微粒子としては、不定形シリカ、無機シリカビーズ等を挙げることができる。不定形シリカは、分散性が良好な粒径1〜10μmのシリカビーズを使用することが好ましい。
また、以下で詳述する防眩層形成用塗工液の粘度上昇を生じることなく上記不定形シリカの分散性を良好なものとするためには、粒子表面に有機物処理を施して疎水化した不定形シリカを使用することが好ましい。上記有機物処理には、ビーズ表面に化合物を化学的に結合させる方法や、ビーズ表面とは化学的に結合させることなく、ビーズを形成する組成物に存在するボイドなどに浸透させるような物理的な方法があり、どちらを使用してもよい。
一般的には、水酸基またはシラノール基等のシリカ表面の活性基を利用する化学的処理法が、処理効率の観点で好ましく用いられる。処理に使用する化合物としては、上記活性基と反応性の高いシラン系、シロキサン系、シラザン系材料などが用いられる。例えば、メチルトリクロロシラン等の、直鎖アルキル単置換シリコーン材料、分岐アルキル単置換シリコーン材料、或いはジ-n-ブチルジクロロシラン、エチルジメチルクロロシラン等の直鎖アルキル多置換シリコーン化合物や、分岐鎖アルキル多置換シリコーン化合物が挙げられる。同様に、直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基の単置換、多置換シロキサン材料、シラザン材料も有効に使用することができる。
必要機能に応じ、アルキル鎖の末端、乃至中間部位に、ヘテロ原子、不飽和結合基、環状結合基、芳香族官能基等を有するものを使用しても構わない。
これらの化合物は、含まれるアルキル基が疎水性を示すため、被処理材料表面を、親水性から疎水性に容易に変換することが可能となり、未処理では親和性の乏しい高分子材料とも、高い親和性を得ることができる。
凹凸層において、透光性微粒子Aの含有量は、凹凸層の固形分全質量に対して、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上30質量%以下である。5質量%未満であると、十分な防眩性が付与できず、40質量%を超えると、膜強度が落ち、防眩層に充分なハードコート性を付与できないおそれがある。
上記のような透光性微粒子Aを多く添加した場合には、樹脂組成物中で透光性微粒子Aが沈降し易いので、沈降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量が増す程、透光性微粒子Aの沈降防止に有効であるが、粒径や使用量によっては、塗膜の透明性に悪影響を与える。従って、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、バインダーに対して塗膜の透明性を損なわない程度に含有させるとよい。
本発明において2種類以上の透光性微粒子Aを混合して用いる場合には、第1の微粒子の平均粒子径をR1(μm)とし、第2の微粒子の平均粒子径をR2(μm)とした場合に、下記式(I):
0.25R1(好ましくは0.50R1)≦R2≦1.0R1(好ましくは0.75R1)(I)
を満たすものが好ましい。
2が0.25R1以上であることにより、塗布液の分散が容易となり、粒子が凝集することがない。また、塗布後の乾燥工程においてフローティング時の風の影響を受けることなく、均一な凹凸形状を形成することができる。この関係は、第2の微粒子に対する第3の微粒子にも成り立つ。第3の微粒子をR3とすると、0.25R2≦R3≦1.0R2を満たすものが好ましい。
互いに異なる成分からなる2種類以上の微粒子を混合して用いる場合には、当該2種類以上の微粒子は、上記のように平均粒子径が異なることも好ましいが、同じ平均粒子径であるものも好適に用いられる。
また、本発明の別の態様によれば、バインダーと、第1の微粒子と、第2の微粒子との単位面積当りの総質量比が、第1の微粒子の単位面積当りの総質量をM1、第2の微粒子の単位面積当りの総質量をM2、バインダーの単位面積当りの総質量をMとした場合に、下記の式(II)及び(III):
0.08≦(M1+M2)/M≦0.36 (II)
0≦M2≦4.0M1 (III)
を満たすものが好ましい。
中でも、上記第2の微粒子の含有量は、上記第1の微粒子の含有量に対して、3〜100質量%であることが好ましい。また、3種類以上の微粒子を含む場合、第3の微粒子の含有量は、第2の微粒子の3〜100質量%であることが好ましい。第4の微粒子以降の粒子含有量も、この関係に従うのが好ましい。
<反応性無機微粒子B>
無機微粒子をハードコート層に含有させることにより、ハードコート性を向上させることが一般になされている。また、架橋反応性を有する無機微粒子と、硬化性バインダーを架橋反応させ、架橋構造を形成することにより、ハードコート性を更に向上させることができる。反応性無機微粒子Bとは、コアとなる無機微粒子の少なくとも表面の一部に有機成分が被覆し、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する無機微粒子のことである。反応性無機微粒子Bには、1粒子あたりコアとなる無機微粒子の数が2つ以上のものも含まれる。
本発明に係る防眩層は、十分な耐擦傷性を有するように硬度を向上させることを目的として、反応性無機微粒子Bを含有する。反応性無機微粒子Bは、防眩層に更に機能を付与するものであっても良く、目的に合わせて適宜選択して用いる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物微粒子などが挙げられる。金属微粒子、金属硫化物微粒子、金属窒化物微粒子等を用いても良い。
硬度が高い点からは、シリカ、酸化アルミニウムが好ましい。また、相対的に高屈折率層とするためには、ジルコニア、チタニア、酸化アンチモン等の膜形成時に屈折率が高くなる微粒子を適宜選択して用いることができる。同様に、相対的に低屈折率層とするためには、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子や、中空シリカ微粒子などの膜形成時に屈折率が低くなる微粒子を適宜選択して用いることができる。更に、帯電防止性、導電性を付与したい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ等を適宜選択して用いることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の防眩フィルムでは、中空シリカのような中空の反応性無機微粒子Bや、多孔質構造を有する反応性無機微粒子Bを用いた場合、その見かけ上の比重(中空部を含めて平均化した単位体積当りの質量)により、該反応性無機微粒子Bの空気界面側への偏在を促進することも期待できるが、中空や多孔質の無機微粒子は、その構造上、中実の無機微粒子と比較して硬度が低くなる。従って、本発明においては、典型的には中実の反応性無機微粒子Bを用いることによってその硬度を確保し、該反応性無機微粒子Bの偏在促進は、その粒径のコントロールにより行うことが好ましい。
また、反応性無機微粒子Bと上記透光性微粒子Aの組み合わせは、特に限定されないが、反応性無機微粒子Bのコアとなる無機微粒子と同じ材質からなる透光性微粒子Aを組み合わせて用いる場合、防眩層のヘイズ性の向上が期待できる。反応性無機微粒子Bのコアと透光性微粒子Aとが同じ無機材料からなる場合、その親和性により透光性微粒子Aの周囲に反応性無機微粒子Bが凝集し、該凝集体によって凹凸層における内部散乱性が高まるためである。
ここで、反応性無機微粒子のコアとなる無機微粒子と、透光性微粒子が同じ材質からなる組み合わせとしては、具体的には、反応性無機微粒子Bのコア及び透光性微粒子Aとしてシリカを用いる組み合わせが挙げられる。
無機微粒子の表面には通常、無機微粒子内ではこの形態で存在できない基を有する。これら表面の基は通常、相対的に反応しやすい官能基である。例えば金属酸化物の場合には、例えば水酸基及びオキシ基、例えば金属硫化物の場合には、チオール基及びチオ基、又は例えば窒化物の場合には、アミノ基、アミド基及びイミド基を有する。
本発明に用いられる反応性無機微粒子Bは、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する。ここで、有機成分とは、炭素を含有する成分である。また、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆されている態様としては、例えば金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基にシランカップリング剤等の有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部に有機成分が結合した態様のほか、例えば金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基に水素結合等の相互作用により有機成分を付着させた態様や、ポリマー粒子中に1個又は2個以上の無機微粒子を含有する態様などが含まれる。
当該被覆している有機成分は、無機微粒子同士の凝集を抑制し、且つ無機微粒子表面への反応性官能基数を多く導入して膜の硬度を向上させる点から、粒子表面のほぼ全体を被覆していることが好ましい。このような観点から、反応性無機微粒子Bを被覆している前記有機成分は、反応性無機微粒子B中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり1.00×10-3g/m2以上含まれることが好ましい。
無機微粒子表面に有機成分を付着乃至結合させた態様においては、反応性無機微粒子Bを被覆している前記有機成分が、反応性無機微粒子B中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり2.00×10-3g/m2以上含まれることが更に好ましく、3.50×10-3g/m2以上含まれることが特に好ましい。
ポリマー粒子中に無機微粒子を含有する態様においては、反応性無機微粒子Bを被覆している前記有機成分が、反応性無機微粒子B中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり3.50×10-3g/m2以上含まれることが更に好ましく、5.50×10-3g/m2以上含まれることが特に好ましい。
当該被覆している有機成分の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少%の恒量値として、例えば空気中で室温から通常800℃までの熱重量分析により求めることができる。
なお、単位面積当りの有機成分量は、以下の方法により求めたものである。まず、示差熱重量分析TG−DTAにより、有機成分重量/無機成分重量を測定する。次に、重量と用いた無機微粒子の比重から無機成分全体の体積を計算する。また、被覆前の無機微粒子が真球状であると仮定し、被覆前の無機微粒子の平均粒径から被覆前の無機微粒子1個当りの体積を計算する。無機成分全体の体積と被覆前の無機微粒子B1個当たりの体積から、被覆前の無機微粒子の個数を求める。次に、反応性無機微粒子B1個当りの有機成分重量を、被覆前の無機微粒子1個当りの表面積で割ることにより、被覆前の無機微粒子の単位面積当たりの有機成分量を求めることができる。
本発明において使用する反応性無機微粒子Bは、平均粒子径が5nm以上30nm以下である。本発明は、このように比較的小粒径の反応性無機微粒子Bを用いることで、防眩層における該反応性無機微粒子Bの一定領域(透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域)への偏在を促進し、該反応性無機微粒子Bによる防眩層のハードコート性の向上を達成するものである。
上記範囲の平均粒径を有する小粒径の反応性無機微粒子Bは、その比表面積が大きいため、硬化性樹脂組成物中において、バインダー成分との相溶性に基づく作用により、相分離しようとする力が大きくなる。その結果、透明基材フィルム上に塗布された硬化性樹脂組成物において、該反応性無機微粒子Bの一部は自然と空気界面側へと拡散し、偏在することとなる。
以上のように、本発明の防眩フィルムは、反応性無機微粒子Bの小粒径化による相分離性及び拡散性の増大を利用することによって、該反応性無機微粒子Bの偏在を促進し、防眩層のハードコート性の向上を実現するものである。
反応性無機微粒子Bの平均粒径は、5nm以上とすることで、防眩層のハードコート性を充分に向上させることが可能となる。一方、平均粒径が30nm以下の反応性無機微粒子Bを用いることで、該反応性無機微粒子Bの偏在を充分に促進することができ、反応性無機微粒子Bの偏在による充分なハードコート性向上効果が得られる。また、平均粒径が30nm以下の反応性無機微粒子Bは、比表面積が大きいことから、マトリクス内での架橋点を高めることができ、膜強度の高い凹凸層が得られるという利点もある。
反応性無機微粒子Bの平均粒径は、凹凸層の硬度の点から、10nm以上であることが好ましく、特に15nm以上であることが好ましい。また、表面への偏在性の点から、25nm以下であることが好ましく、特に20nm以下であることが好ましい。
また、透明性を損なうことなく、樹脂のみを用いて形成した場合の凹凸層の復元率を維持しつつ、硬度を著しく向上させる点から、反応性無機微粒子Bは粒径分布が狭く、単分散であることが好ましい。
尚、ここでの平均粒子径は、反応性無機微粒子Bを用いて作製した防眩フィルムの断面TEM写真による観察を行い、反応性無機微粒子Bの粒径を測定してその平均値を算出する他、反応性無機微粒子Bを溶剤分散ゾルとし、該ゾルにおける50%平均粒子径を、例えば、日機装(株)社製Nanotracまたは粒度分析計を用いて求めることができる。
また、反応性無機微粒子Bの反応性官能基bとしては、特に、硬化膜の硬度を向上させる観点から、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する反応性無機微粒子Bを調製する方法としては、当該無機微粒子の種類と導入したい反応性官能基bにより、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。
中でも、本発明においては、被覆している有機成分が反応性無機微粒子B中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり1.00×10-3g/m2以上含まれることが可能で、無機微粒子同士の凝集を抑制し、膜の硬度を向上させる点から、以下の(i)の無機微粒子のいずれかを適宜選択して用いることが好ましい。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基bを有する無機微粒子。
(ii)当該無機微粒子に導入したい反応性官能基b、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
化学式(1)
−Q−C(=Q)−NH−
(化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示す。)
以下、上記本発明において好適に用いられる反応性無機微粒子Bを順に説明する。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
上記(i)の反応性無機微粒子Bを用いる場合には、有機成分含量が少なくても膜強度を向上できるというメリットがある。
上記(i)の反応性無機微粒子Bに用いられる上記表面修飾化合物は、カルボキシル基、酸無水物基、酸塩化物基、酸アミド基、エステル基、イミノ基、ニトリル基、イソニトリル基、水酸基、チオール基、エポキシ基、第一級、第二級及び第三級アミノ基、Si−OH基、シランの加水分解性残基、又はβ−ジカルボニル化合物のようなC−H酸基等の、分散条件下において上記無機微粒子の表面に存在する基と化学結合可能な官能基を有する。ここでの化学結合は、好ましくは、共有結合、イオン結合又は配位結合が含まれるが、水素結合も含まれる。配位結合は錯体形成であると考えられる。例えば、ブレンステッド又はルイスに従う酸性/塩基反応、錯体形成又はエステル化が、上記表面修飾化合物の官能基と無機微粒子表面の基の間で生じる。上記(i)の反応性無機微粒子Bに用いられる上記表面修飾化合物は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
上記表面修飾化合物は通常、無機微粒子の表面の基との化学結合に関与できる少なくとも1つの官能基(以下、第1の官能基という)に加えて、当該官能基を介して上記表面修飾化合物に結びついた後に、無機微粒子に新たな特性を付与する分子残基を有する。分子残基又はその一部は疎水性又は親水性であり、例えば無機微粒子の安定化、融和化、又は活性化させる。
例えば、疎水性分子残基としては、不活性化又は反発作用をもたらす、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキル又はフッ素含有アルキル基等が挙げられる。親水性基としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はポリエステル基等が挙げられる。
反応性無機微粒子Bが上記バインダー成分Cと反応できるように表面に導入される反応性官能基bは、上記バインダー成分Cに応じて、適宜選択される。当該反応性官能基bとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、上記バインダー成分Cと反応できる反応性官能基bが含まれる場合には、上記表面修飾化合物中に含まれる第1の官能基を無機微粒子表面に反応させることによって、上記(i)の反応性無機微粒子Bの表面に上記バインダー成分Cと反応できる反応性官能基bを導入することが可能である。例えば、第1の官能基のほかに、更に重合性不飽和基を有する表面修飾化合物が、好適なものとして挙げられる。
一方で、上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、第2の反応性官能基を含有させ、当該第2の反応性官能基を足掛かりにして、上記(i)の反応性無機微粒子Bの表面に上記バインダー成分Cと反応できる反応性官能基bが導入されてもよい。例えば、第2の反応性官能基として水酸基及びオキシ基のような水素結合が可能な基(水素結合形成基)を導入し、当該微粒子表面上に導入された水素結合形成基に、更に別の表面修飾化合物の水素結合形成基が反応することにより、上記バインダー成分Cと反応できる反応性官能基bが導入されることが好ましい。すなわち、表面修飾化合物として、水素結合形成基を有する化合物と、重合性不飽和基などの上記バインダー成分Cと反応できる反応性官能基bと水素結合形成基を有する化合物とを併用して用いることが好適な例として挙げられる。水素結合形成基の具体例としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、アミド基、といった官能基、もしくはアミド結合を示すものである。ここで、アミド結合とは、−NHC(O)や>NC(O)−を結合単位に含むものを示す旨である。本発明の表面修飾化合物に用いられる水素結合形成基としては、中でもカルボキシル基、水酸基、アミド基が好ましい。
上記(i)の反応性無機微粒子Bに用いられる上記表面修飾化合物は500以下、より好ましくは400、特に200を超えない分子量を有する。このような低分子量を有するため、無機微粒子表面を急速に占有し、無機微粒子同士の凝集を妨げることが可能であると推定される。
上記(i)の反応性無機微粒子Bに用いられる上記表面修飾化合物は、表面修飾のための反応条件下で好ましくは液体であり、分散媒中で溶解性又は少なくとも乳化可能であるのが好ましい。中でも分散媒中で溶解し、分散媒中で離散した分子又は分子イオンとして一様に分布して存在することが好ましい。
飽和又は不飽和カルボン酸としては、1〜24の炭素原子を有しており、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クエン酸、アジピン酸、琥珀酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びステアリン酸、並びに対応する酸無水物、塩化物、エステル及びアミド、例えばカプロラクタム等が挙げられる。前記カルボン酸には、炭素鎖がO−基、S−基又はNH−基により遮断されるものも含まれる。特に好ましいものとしては、カルボン酸モノエーテルやカルボン酸ポリエーテルなどのカルボン酸エーテル、並びに対応する酸水化物、エステル及びアミド(例えば、メトキシ酢酸、3,6−ジオキサヘプタン酸及び3,6,9−トリオキサデカン酸)等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸を用いると、重合性不飽和基を導入することができる。
好ましいアミンの例は、一般式Q3−nNHn(n=0,1又は2)を有するものであり、残基Qは独立して、1〜12、特に1〜6、特別好ましくは1〜4の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル及びブチル)、並びに6〜24の炭素原子を有するアリール、アルカリル又はアラルキル(例えば、フェニル、ナフチル、トリル及びベンジル)を表す。また、好ましいアミンの例としては、ポリアルキレンアミンが挙げられ、具体例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トルイジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンである。
好ましいβ−ジカルボニル化合物は4〜12、特に5〜8の炭素原子を有するものであり、例えば、ジケトン(アセチルアセトンなど)、2,3−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸−C−C−アルキルエステル(アセト酢酸エチルエステルなど)、ジアセチル及びアセトニルアセトンが挙げられる。
アミノ酸の例としては、β−アラニン、グリシン、バリン、アミノカプロン酸、ロイシン及びイソロイシンが挙げられる。
好ましいシランは、少なくとも1つの加水分解性基又はヒドロキシ基と、少なくとも1つの非加水分解性残基を有する加水分解性オルガノシランである。ここで加水分解性基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基が挙げられる。非加水分解性残基としては、反応性官能基bを有する及び/又は反応性官能基bを有しない非加水分解性残基が用いられる。また、フッ素で置換されている有機残基を少なくとも部分的に有するシランを使用しても良い。
用いられるシランとしては特に限定されないが、例えば、CH=CHSi(OOCCH、CH=CHSiCl、CH=CH−Si(OC、CH=CHSi(OC、CH=CH−Si(OCOCH、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CH−Si(OOCCH、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、γ−グリシジルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、N−(2−アミノエチル)−3アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N'−(2'−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、ビス−(ヒドロキシエチル)−3−アミ之プロピルトリエトキシシラン、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン及び3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
官能基を有する金属化合物としては、元素周期表の第1群III〜V及び/又は第2群II〜IVからの金属Mの金属化合物が挙げられる。ジルコニウム及びチタニウムのアルコキシド、M(OR)(M=Ti、Zr)、(式中、OR基の一部はβ−ジカルボニル化合物又はモノカルボン酸などの錯生成剤により置換される。)が挙げられる。重合性不飽和基を有する化合物(メタクリル酸など)が錯生成剤として使用される場合には、重合性不飽和基を導入することができる。
分散媒として、水及び/又は有機溶媒が好適に使用される。特に好ましい分散媒は、蒸留された(純粋な)水である。有機溶媒として、極性及び非極性及び非プロトン性溶媒が好ましい。それらの例として、炭素数1〜6の脂肪族アルコール(特にメタノール、エタノール、n−及びi−プロパノール及びブタノール)等のアルコール、アセトン及びブタノン等のケトン類、酢酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピランなどのエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;スルホラン及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類及びスルホン類;及びペンタン、ヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族(任意にハロゲン化された)炭化水素類が挙げられる。これらの分散媒は混合物として使用することができる。
分散媒は、蒸留(任意に減圧下)により容易に除去できる沸点を有することが好ましく、沸点が200℃以下、特に150℃以下の溶媒が好ましい。
(i)の反応性無機微粒子Bの調製に際し、分散媒の濃度は、通常40〜90、好ましくは50〜80、特に55〜75重量%である。分散液の残りは、未処理の無機微粒子および上記表面修飾化合物から構成される。ここで、無機微粒子/表面修飾化合物の重量比は、100:1〜4:1とすることが好ましく、更に50:1〜8:1、より更に25:1〜10:1とすることが好ましい。
(i)の反応性無機微粒子Bの調製は、好ましくは室温(約20℃)〜分散媒の沸点で行われる。特に好ましくは、分散温度は50〜100℃である。分散時間は、特に使用される材料のタイプに依存するが、一般に数分から数時間、例えば1〜24時間である。
上記(i)の反応性無機微粒子Bの調製を行う際には、無機微粒子が表面修飾化合物の存在する分散媒において機械反応粉砕を受け、表面修飾化合物が粉砕されたコロイド無機微粒子と少なくとも部分的に化学結合する態様も好適に用いられる。
この場合の機械粉砕は一般的にミル、ニーダー(混練機)、シリンダーミル又は例えば高速度分散機で行われる。機械粉砕に適する粉砕機械は、ホモジナイザー、ターボ撹拌機、離れた粉砕工具を有するミル(ボールミル、ロッドミル、ドラムミル、コーンミル、チューブミル、自生粉砕ミル、遊星ミル、振動ミル及び撹拌機ミル)、ヘビーローラーニーダー、コロイドミル及びシリンダーミルである。中でも特に好ましいミルは、運動撹拌機と粉砕手段としての粉砕ボールを有する撹拌ボールミルである。
粉砕及びホモジナイジングを有する粉砕は好ましくは室温で行われる。所要時間は混合の種類と用いられる粉砕機により適宜調製する。
(ii)当該無機微粒子に導入したい反応性官能基b、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、コアとなる無機微粒子としての金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基bを有する無機微粒子。
化学式(1)
−Q−C(=Q)−NH−
(化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示す。)
上記(ii)の反応性無機微粒子Bを用いる場合には、有機成分量アップの点から分散性、および膜強度がより高まるというメリットがある。
まず、当該無機微粒子に導入したい反応性官能基b、上記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物(以下、反応性官能基修飾加水分解性シランという場合がある。)について説明する。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、当該無機微粒子に導入したい反応性官能基bは、上記バインダー成分Cと反応可能なように適宜選択すれば特に限定されない。上述したような重合性不飽和基を導入するのに適している。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、上記化学式(1)に示す基[−Q−C(=Q)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1種を併用することが好ましい。前記化学式(1)に示す基[−Q−C(=Q)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材との密着性及び耐熱性等の特性を付与することが可能になると考えられる。
また、加水分解によってシラノ−ル基を生成する基としては、ケイ素原子上にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を有する基を挙げることができ、アルコキシシリル基又はアリールオキシシリル基が好ましい。シラノール基又は、加水分解によってシラノ−ル基を生成する基は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、金属酸化物微粒子と結合することができる。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランの好ましい具体例としては、例えば、下記化学式(2)に示す化合物を挙げることができる。
Figure 2009042628
化学式(2)中、R、Rbは同一でも異なっていてもよいが、水素原子又はCからCのアルキル基若しくはアリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。ここでmは1、2又は3である。
[(RO)m 3-mSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
cはCからC12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。そのような有機基としては例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。これらのうち好ましい例は、メチレン、プロピレン、シクロヘキシレン、フェニレン等である。
また、Rは2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには前記化学式(1)に示す基を含むこともできる。
eは(n+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
Y’は反応性官能基を有する1価の有機基を示す。上述のような反応性官能基そのものであっても良い。例えば反応性官能基bを重合性不飽和基から選択する場合、(メタ)アクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、(メタ)アクリルアミド基等を挙げることができる。また、nは好ましくは1〜20の正の整数であり、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
本発明で用いられる反応性官能基修飾加水分解性シランの合成は、例えば特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。すなわち、例えば重合性不飽和基を導入したい場合、(イ)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応可能な活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(ロ)分子中にアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(ハ)分子中に重合性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシラン又はアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
例えば、メルカプトアルコキシシランとしては、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を好適に用いることができる。
また、ポリイソシアネ−ト化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を好適に用いることができる。
また、活性水素含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパンジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスルト−ルペンタ(メタ)アクリレ−ト等を挙げることができる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレ−ト等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を用いることができる。
(ii)の反応性無機微粒子Bの製造においては、反応性官能基修飾加水分解性シランを別途加水分解操作を行った後、これと無機微粒子を混合し、加熱、攪拌操作を行う方法、もしくは反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を無機微粒子の存在下に行う方法、また、他の成分、例えば多価不飽和有機化合物、単価不飽和有機化合物、放射線重合開始剤等の存在下、無機微粒子の表面処理を行う方法を選ぶことができるが、反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を無機微粒子の存在下行う方法が好ましい。(ii)の反応性無機微粒子Bを製造する際、その温度は、通常20℃以上150℃以下であり、また処理時間は5分〜24時間の範囲である。
加水分解反応を促進するため、触媒として酸、塩もしくは塩基を添加してもよい。酸としては有機酸および不飽和有機酸;塩基としては3級アミンまたは4級アンモニウムヒドロキシドが好適な物として挙げられる。これら酸もしくは塩基触媒の添加量は反応性官能基修飾加水分解性シランに対して0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。
本発明において、反応性無機微粒子Bは、フッ素を含有しないものでよい。ここで、フッ素を含有しないとは、反応性無機微粒子Bのコアを形成する無機微粒子がフッ素を含有せず、且つ、反応性無機微粒子Bの表面の一部を被覆する有機成分がフッ素を含有しないことが好ましいが、典型的には、反応性無機微粒子Bの表面にフッ素が存在しなければよく、具体的には、含フッ素表面処理剤による表面処理が施された反応性無機微粒子Bでないことを指す。
表面を含フッ素表面処理剤により表面処理した反応性無機微粒子Bは、凹凸層用組成物におけるなじみがさらに低下するため、相分離を生じやすく、偏在しやすい。しかしながら、本発明においては、反応性無機微粒子Bの平均粒径を30nm以下とすることによって、該反応性無機微粒子Bの偏在が充分に促進されているため、特許文献1や特許文献2のように含フッ素表面処理剤による表面処理を施さなくても、充分なハードコート性を発現する程度に反応性無機微粒子Bが凹凸層の空気界面側表層に偏在した凹凸層を形成することが可能である。
反応性無機微粒子Bがフッ素を含有しないことは、以下のようにして確認できる。すなわち、反応性無機微粒子Bを用いて作製した防眩フィルムを斜め切削し、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析装置、例えばアルバック・ファイ社製)を用いて、反応性無機微粒子Bに含まれる成分を検出することで確認することができる。反応性無機微粒子Bがフッ素を含まなければフッ素原子は検出されない。
また、反応性無機微粒子Bとしては、分散媒を含有しない粉末状の微粒子を用いてもよいが、分散工程を省略でき、生産性が高い点から微粒子を溶剤分散ゾルとしたものを用いることが好ましい。
また、凹凸層において、反応性無機微粒子Bの含有量は、凹凸層の全固形分(反応性無機微粒子Bと硬化性バインダー系の構成成分の合計量)に対して、5〜30重量%であることが好ましく、特に、5〜20重量%であることが好ましい。5重量%以上とすることで、防眩層表面の硬度を充分に向上させることができ、30重量%以下とすることで、反応性無機微粒子Bの充填率増加による膜強度の低下を防止することができる。
<硬化性バインダー系>
本明細書において、硬化性バインダー系の構成成分とは、バインダー成分Cの他に、必要に応じて、バインダー成分C以外の硬化性バインダー成分、ポリマー成分、重合開始剤等の硬化後に後述する凹凸層のマトリクス成分となるものを表す。
〔バインダー成分C〕
凹凸層を形成するバインダー成分Cは、反応性無機微粒子Bの反応性官能基bと架橋反応性を有する反応性官能基cを有しており、該反応性官能基bと該反応性官能基cが架橋結合し、網目構造が形成される。該バインダー成分Cは、充分な架橋性を得るために、反応性官能基cを3つ以上有することが好ましい。反応性官能基cとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
バインダー成分Cとしては、硬化性樹脂が好ましく、塗膜とした時に光が透過する透光性のものが好ましい。その具体例としては、紫外線または電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂など、塗工時に固形分を調整するための溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、または熱硬化型樹脂の三種類が挙げられ、好ましくは電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、(メタ)アクリレート基等のラジカル重合性官能基を有する化合物、例えば、(メタ)アクリレート系のオリゴマー、プレポリマー、或いは単量体(モノマー)が挙げられる。
より具体的には、(メタ)アクリレート系オリゴマー又はプレポリマーとしては、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリル酸エステルから成るオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。
また、(メタ)アクリレート系単量体としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート系化合物以外の例としては、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能又は多官能単量体、或いはビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、芳香族ビニルエーテル、脂肪族ビニルエーテル等のオリゴマー又はプレポリマー等のカチオン重合性官能基を有する化合物が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用する場合には、光重合開始剤または光重合促進剤として増感剤を添加することができる。
光重合開始剤の具体例としては、ラジカル重合性官能基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、ベンゾイン類、ベンゾインメチルエーテル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、アシルホスフィンオキシド類、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、等が挙げられ、これらを単独で、又は混合して用いる。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンは、例えば商品名イルガキュア184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)として入手可能である。また、α-アミノアルキルフェノン類としては、例えば商品名イルガキュア907、369として入手可能である。
カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いる。
また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部である。
電離放射線硬化型樹脂に混合して使用される溶剤乾燥型樹脂としては、主として熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は一般的に例示されるものが利用される。溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。好ましい熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、2,6−キシレノールの重合体)、セルロース誘導体(例えば、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類)、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン)、ゴム又はエラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム)等が好ましい。
熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等をさらに添加して使用することができる。
[凹凸層の形成]
本発明の防眩フィルムの実施形態として、バインダー成分Cを含む硬化性バインダー系として光硬化性バインダー系を用い、凹凸層が、透明基材フィルムの観察者側の表面に、当該光硬化性バインダー系に透光性微粒子A、及び反応性無機微粒子Bを添加した凹凸層用硬化性樹脂組成物を塗工して凹凸層を形成する方法によって形成された防眩フィルムを挙げることができる。
凹凸層は、透光性微粒子A、反応性無機微粒子B及び光硬化性バインダー系の構成成分を適切な溶剤に混合して得た凹凸層用硬化性樹脂組成物(以下、凹凸層用組成物ということがある)を、透明基材フィルムに塗布することにより形成することができる。このとき、透光性微粒子Aは、好ましくは、第1の微粒子と第2の微粒子からなるか、第1の微粒子と第2の微粒子と第3の微粒子からなるのがよい。
(樹脂組成物の調製)
凹凸層用硬化性樹脂組成物は、一般的な調製法に従って、上記成分を混合し分散処理することにより調製される。混合分散には、ペイントシェーカー又はビーズミル等を用いることができる。透光性微粒子A及び反応性無機微粒子Bが溶剤中に分散された状態で得られる場合には、その分散状態のまま、前記硬化性バインダー系、溶剤を含むその他の成分を適宜加え、混合し分散処理することにより調製される。
溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素またはこれらの混合物が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、凹凸層用組成物に、フッ素系またはシリコーン系などのレベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤を添加した凹凸層用組成物は、塗布または乾燥時に塗膜表面に対して塗工安定性、滑り性や防汚性を付与でき、かつ、耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。
凹凸層用組成物を透明基材フィルムに塗布する方法としては、ロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法等の塗布方法が挙げられる。凹凸層用組成物の塗布後に、乾燥と紫外線硬化を行う。凹凸層用組成物を、塗布後、数十秒から数分間程度の時間をかけて乾燥させることで、反応性微粒子Bが空気界面側(透明基材フィルムと反対側の界面)に偏在する。
紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が挙げられる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、または直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
光硬化性バインダー系の構成成分を硬化させることにより、当該光硬化性バインダー系の構成成分中に含まれる、反応性無機微粒子Bの反応性官能基bとバインダー成分Cの反応性官能基cが架橋結合し、網目構造が形成される。また、光硬化性バインダー系の構成成分中の透光性微粒子Aが固定されて、凹凸層の最表面に所望の凹凸形状が形成される。
凹凸層用組成物を付与して凹凸層を形成する場合には、凹凸層用組成物をゲル分率で30%以上80%以下、好ましくは下限が35%以上であり、より好ましくは40%以上であり、好ましくは上限が70%以下であり、より好ましくは60%以下で硬化させることが、凹凸層と表面形状調整層との密着性と、耐擦傷性がよい点から好ましい。
尚、ゲル分率は、例えば、該組成物が紫外線硬化性樹脂の場合には、以下の方法により求めることができる。まず、サンプルとして、凹凸層用組成物の成分のうち、モノマー、オリゴマー、ポリマー、その他添加剤など、透光性微粒子A及び反応性無機微粒子Bを含む粒子以外の成分を含むインキを作製し、厚さ50μmPET基材上に、5μmの膜厚に塗工し、10〜100mJの範囲で10mJ間隔でUV照射条件を変えて照射したサンプルを各々作製する。次に、当該サンプルを10cm角に切り、n数を三点取り、重さXを測定する。次に、モノマーが溶解すると考えられる溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、トルエン、及びその混合溶媒など。アクリレート系組成物の場合、代表的にはアセトン、メチルエチルケトン。)に12時間以上浸漬し、溶剤から各サンプルを取り出して、オーブンで十分乾燥(60℃×2分)し、乾燥したサンプルの重さBを測定する。次に、溶剤に浸漬前の重さXと、乾燥したサンプルYとの差をとり、この値をZとする。最後に、下記式を用いて各照射量毎のゲル分率(%)を算出する。
「ゲル分率(%)」=100−Z/X
本発明に係る防眩フィルムにおいて、凹凸層の膜厚は、0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、更に0.5μm以上3μm以下であることが、硬度、耐擦傷性などの物性面が良好であり、生産性も良好な点から好ましい。膜厚を0.5μm以上とすることで充分なハードコート性を付与することができ、30μm以下とすることでクラックの発生を抑制することができる。尚、ここで、凹凸層の膜厚とは、凹凸層の透明基材フィルム側界面から、透明基材フィルムとは反対側の界面における凹部表面までの厚さとする。
また、本発明によれば、以下の方法により行われる耐スチールウール試験において、表面に形成される傷が5本以下、さらには傷が形成されない、高いハードコート性を有する防眩層を備えた防眩フィルムを提供することが可能である。
(耐スチールウール試験)
防眩層表面を、#0000番のスチールウールで、300g/cm2の荷重をかけながら、速度50mm/secで10往復摩擦させる。往復摩擦を行うストローク幅は、5〜15cmとすることが好ましい。
(その他の層)
本発明による防眩フィルムは、上記したように透明基材フィルム、防眩層により基本的には構成されてなる。しかしながら、防眩フィルムとしての機能または用途を加味して、本発明に係る防眩層の他に、更に下記のような一又は二以上の層を含有していてもよい。また更に、中屈折率層や高屈折率層を含んで形成しても良い。
本発明の防眩フィルムは、画像表示装置に必要とされる各種機能を付与することができる点から、図2(2A)に示すように防眩層2が、2層以上からなり、凹凸層3の観察者側に表面形状調整層6を有する積層構造としてもよい。凹凸層の上に表面形状調整層を形成することにより、該凹凸層が、例えば、適切な防眩性能を発揮するためには、微細化された凹凸形状である場合や、大きすぎる凹凸差を有する場合も、防眩層2の観察者側の表面を、なめらかで緩やかな所望の凹凸形状にし、かつ、様々な機能を防眩フィルムに付与することが可能となる。
表面形状調整層には、更に帯電防止剤、屈折率調整剤、防汚染剤、撥水剤、撥油剤、指紋付着防止剤、高硬化剤および硬度調整剤を含有していても良い。
また、表面形状調整層が低屈折率層を兼ねることにより、防眩層2に反射防止性能を付与してもよいが、図2(2B)に示すように、防眩層1が2層以上からなり、表面形状調整層6とは別に観察者側に更に低屈折率層7を有していてもよい。この低屈折率層7は、当該層の下地となる凹凸層3又は表面形状調整層6の表面の凹凸形状に追随した形状を有しており、表面の凹凸形状は下地となる層の表面と同等の凹凸形状となる。また、低屈折率層7の他、任意の層が観察者側に存在してもよい。尚、低屈折率層7は、当該低屈折率層7を積層する画像表示装置側の層の屈折率よりも低い屈折率を有している。
以下、表面形状調整層及び低屈折率層について詳しく説明する。
<表面形状調整層>
本発明にあっては、防眩層表面の凹凸形状を調整するために、凹凸層の上に表面形状調整層を形成しても良い。表面形状調整層は、凹凸層の表面粗さにおいて凹凸スケール(凹凸の山高さと山間隔)の1/10以下のスケールで凹凸形状に沿って存在している微細な凹凸を埋めて、スムージングを掛けて凹凸表面を滑らかにしたり、あるいは、凹凸の山間隔や山高さ、山の頻度(個数)の調整をする。また、表面形状調整層に、帯電防止、屈折率調整、高硬度化、防汚染性等の機能をさらに付与してもよい。
表面調整層の膜厚(硬化時)は0.6μm以上15μm以下であることが好ましく、より好ましくは下限が3μm以上であり上限が8μm以下である。なお、表面調整層の厚みは、防眩層の層厚の測定方法と同様にレーザー顕微鏡観察、SEM又はTEM観察により測定することができる。
表面形状調整層を形成するバインダー(モノマー、オリゴマー等の樹脂成分を包含する)としては、透明性のものが好ましく、その具体例としては、紫外線または電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂との混合物、または熱硬化型樹脂の三種類が挙げられ、好ましくは電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、凹凸層で述べた樹脂を挙げることができる。また、必要に応じて電離放射線硬化型樹脂に混合して使用することができる光重合開始剤、光重合促進剤、光増感剤、溶剤乾燥型樹脂等も、凹凸層で述べたものをそれぞれ使用することができる。
表面調整層は、流動性を調整する有機微粒子や無機微粒子を含有するものであってもよい。微粒子の中でも好ましいのは、コロイダルシリカである。従来、表面調整層の形成によって微細な凹凸を目止めして、スムージングをかけようとすると、過剰なスムージングがかかってしまうことによって、防眩性が著しく低下してしまった。しかし、上記コロイダルシリカを含有する組成物によって被膜の形成を行うと、防眩性と黒色再現性の両立を図ることができる。このような効果が得られる作用は、明確ではないが、コロイダルシリカを含有する組成物は、その流動性が制御されることによって表面の凹凸形状への追随性が良好であることから、スムージングにおいて、従来の表面調整層では完全につぶれてしまう下地凹凸層にある微細な凹凸形状に、適度な滑らかさを付与させながら完全につぶさず残すことができるものと推測される。
上記流動性調整剤として使用することができる有機微粒子又は無機微粒子の形状は特に制限されるものではなく、例えば、球状、板状、繊維状、不定形、中空等のいずれのものでも良い。特に、好ましい流動性調整剤は、コロイダルシリカである。
本発明において「コロイダルシリカ」とは、コロイド状態のシリカ粒子を水又は有機溶媒に分散させたコロイド溶液を意味する。上記コロイダルシリカの粒子径(直径)は、1〜50nm程度の超微粒子のものであることが好ましい。なお、本発明におけるコロイダルシリカの粒子径は、BET法による平均粒子径(BET法により表面積を測定し、粒子が真球であるとして換算して平均粒子径を算出する)である。
上記コロイダルシリカは、公知のものであり、市販のものとしては、例えば、「メタノールシリカゾル」、「MA−ST−M」、「IPA−ST」、「EG−ST」、「EG−ST−ZL」、「NPC−ST」、「DMAC−ST」、「MEK」、「XBA−ST」、「MIBK−ST」(以上、日産化学工業(株)製品、いずれも商品名)、「OSCAL1132」、「OSCAL1232」、「OSCAL1332」、「OSCAL1432」、「OSCAL1532」、「OSCAL1632」、「OSCAL1132」、(以上、触媒化成工業(株)製品、いずれも商品名)で市販されているものを挙げることができる。
上記有機微粒子又は無機微粒子の添加量は、添加する微粒子によって変化するが、コロイダルシリカの場合には、表面調整層のバインダー樹脂の質量100に対し、添加量は5〜80が好ましい。80を超えると、それ以上添加しても防眩性が変化しない領域となるため、添加する意味がなくなることと、これを超えると下層との密着性不良が起こるため、この範囲以下にすることがよい。
〔表面形状調整層の形成法〕
表面形状調整層は、上記各成分を溶剤に分散及び/又は溶解してなる表面形状調整層用組成物を塗布し、乾燥と紫外線硬化を行うことにより形成することができる。表面形状調整層用組成物を塗布する方法としては、ロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法等の塗布方法が挙げられる。
紫外線硬化における紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が挙げられる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、または直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
<低屈折率層>
低屈折率層は、外部からの光(例えば蛍光灯、自然光等)が光学積層体の表面にて反射する際、多層膜での光の干渉効果によってその反射率を低くするという役割を果たす層である。本発明の好ましい態様によれば、単層からなる防眩層、つまり凹凸層の上か、または、二層以上からなる防眩層、表面形状調整層の表面に低屈折率層を形成したものが好ましい。低屈折率層は、その屈折率が該層の下の層のそれより低いものである。
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率層に隣接する凹凸層又は表面形状調整層の屈折率が1.5以上であり、低屈折率層の屈折率が1.45以下であり、好ましくは1.42以下で構成されてなるものが好ましい。
低屈折率層としては、好ましくは1)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有する樹脂、2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂、3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂、4)シリカ又はフッ化マグネシウムの薄膜等のいずれかで構成される。フッ素樹脂以外の樹脂については、凹凸層を構成する樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
上記フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。重合性化合物は、特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基、熱硬化する極性基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。
また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基などを一切もたないものである。
電離放射線硬化性基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ‐2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソールなど)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとして、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物などもある。
熱硬化性極性基として好ましいのは、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基である。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカなどの無機超微粒子との親和性にも優れている。熱硬化性極性基を持つ重合性化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品などを挙げることができる。
電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、アクリル又はメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類、完全又は部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
また、フッ素原子を持つ重合性化合物や重合体とともに、凹凸層用硬化性樹脂組成物で述べたような各樹脂成分を混合して使用することもできる。更に、反応性基等を硬化させるための硬化剤、塗工性を向上させたり、防汚性を付与させたりするために、各種添加剤、溶剤を適宜使用することができる。
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率剤として、「空隙を有する微粒子」を利用することが好ましい。「空隙を有する微粒子」は低屈折率層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げることを可能とする。本発明において、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を有し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。この微粒子を使用した低屈折率層は、屈折率を1.30〜1.45に調節することが可能である。
空隙を有する無機系の微粒子の具体例としては、特開2001−233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ微粒子が好ましくは挙げられる。また、特開平7−133105、特開2002−79616号公報、特開2006−106714号公報等に記載された製法によって得られるシリカ微粒子であってもよい。空隙を有するシリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して低屈折率層を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20〜1.45程度の範囲内に調製することを可能とする。特に、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報で開示されている技術を用いて調製した中空ポリマー微粒子が好ましく挙げられる。
塗膜の内部及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子としては先のシリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され、充填用のカラムおよび表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる除放材、触媒固定用に使用される多孔質微粒子、または断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体を挙げることができる。そのような具体例としては、市販品として日本シリカ工業株式会社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業(株)製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から、本発明の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
「空隙を有する微粒子」の平均粒子径は、5nm以上300nm以下であり、好ましくは下限が8nm以上であり上限が100nm以下であり、より好ましくは下限が10nm以上であり上限が80nm以下である。微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することが可能となる。
〔低屈折率層の形成〕
低屈折率層の形成に当たっては、必要に応じて適宜な溶剤を用い、粘度を、樹脂組成物として好ましい塗布性が得られる0.5〜5cps(25℃)、好ましくは0.7〜3cps(25℃)の範囲のものとすることが好ましい。粘度を適切に調節することによって可視光線の優れた反射防止膜を実現でき、かつ、均一で塗布ムラのない薄膜を形成することができ、かつ基材に対する密着性に特に優れた低屈折率層を形成することができる。
樹脂の硬化手段は、凹凸層の項で説明したのと同様であってよい。硬化処理のために加熱手段が利用される場合には、加熱により、例えばラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始させる熱重合開始剤がフッ素系樹脂組成物に添加されることが好ましい。
さらに、本発明に係る防眩フィルムは以下のような防汚層を備えていてもよい。
<防汚層>
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率層の最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けてもよく、好ましくは低屈折率層が形成された基材フィルムの一方の面と反対の面側に防汚層が設けられてなるものが好ましい。防汚層は、防眩フィルムに対して防汚性と耐擦傷性のさらなる改善を図ることが可能となる。
防汚剤の具体例としては、分子中にフッ素原子を有する光硬化性樹脂組成物への相溶性が低く、低屈折率層中に添加することが困難とされるフッ素系化合物および/またはケイ素系化合物、分子中にフッ素原子を有する光硬化性樹脂組成物および微粒子に対して相溶性を有するフッ素系化合物および/またはケイ系化合物が挙げられる。
<添加剤>
上記各層は、更に別の機能を有していてもよく、例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、防汚染剤、硬度調整剤等の機能付加成分を含んでなる組成物により形成されてもよい。機能付加成分は、上記各層のうち、特に表面形状調整層に含有させることが好ましい。
〔帯電防止剤(導電剤)〕
上記各層、特に表面形状調整層中に、帯電防止剤を含有させることにより、光学積層体の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、或いは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
また、導電性超微粒子が挙げられる。導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるものを挙げることができる。そのような金属酸化物としては、ZnO(屈折率1.90、以下、カッコ内の数値は屈折率を表す。)、CeO(1.95)、Sb(1.71)、SnO(1.997)、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫(1.95)、In(2.00)、Al(1.63)、アンチモンドープ酸化錫(略称;ATO、2.0)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO、2.0)等を挙げることができる。微粒子とは、1ミクロン以下の、いわゆるサブミクロンの大きさのものを指し、好ましくは、平均粒子径が0.1nm〜0.1μmのものである。この平均粒子径の範囲内であることにより、超微粒子をバインダーに分散した折、ヘイズがほとんどなく、全光線透過率が良好な高透明な膜を形成できる組成物を作製できるという観点からみて好ましい。上記導電性金属酸化物微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法等によって測定することができる。
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)が挙げられ、これら以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体等を挙げられる。
上記帯電防止剤は、上記バインダー樹脂量(溶剤を除く)に対する添加が5〜250質量%であることが好ましい。より好ましくは、上記添加量の上限が100以下であり、下限が7以上である。添加量を上記数値範囲に調整することにより、光学積層体としての透明性を保ち、また、防眩性等の性質に悪影響を与えることなく、帯電防止性能を付与することができる点で好ましい。
尚、本発明の別の態様によれば、本発明による防眩層を構成する各層間に、任意の層として、帯電防止層(導電層)を形成してもよい。
帯電防止層の形成の具体例としては、防眩層の各層の上面に導電性金属もしくは導電性金属酸化物等を蒸着またはスパッタリングすることにより蒸着膜を形成する方法または樹脂中に導電性微粒子を分散した樹脂組成物を塗布するにより塗膜を形成する方法が挙げられる。
帯電防止層を蒸着により形成する場合、帯電防止剤としては、導電性金属もしくは導電性金属酸化物、例えばアンチモンドープのインジウム・錫酸化物(以下、「ATO」という)、インジウム・錫酸化物(以下、「ITO」という)が挙げられる。帯電防止層としての蒸着膜の厚さは、10nm以上200nm以下であり、好ましくは上限が100nm以下であり、下限が50nm以上である。
帯電防止層は帯電防止剤を含む塗液により形成されてもよい。この場合、帯電防止剤は、機能付加成分としての帯電防止剤において説明したものと同様のものを使用できる。導電性微粒子を用いて塗膜する場合、好ましくは硬化型樹脂を用いる。硬化型樹脂としては、凹凸層を形成するものと同様であってよい。塗膜を形成するには、導電性微粒子に硬化型樹脂に含ませた塗液を、ロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法等の塗布方法により塗布する。塗布後に、乾燥と紫外線硬化を行う。
電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法としては、電子線または紫外線の照射によって硬化する。電子線硬化の場合には、100KeV〜300KeVのエネルギーを有する電子線等を使用する。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。
〔屈折率調整剤〕
防眩層に、屈折率調整剤を添加することにより、防眩層表面の反射防止特性を調整することが可能となる。屈折率調整剤には、低屈折率剤、中屈折率剤、高屈折率剤等が挙げられる。
(1)低屈折率剤
低屈折率剤は、その屈折率が防眩層より低いものである。本発明の好ましい態様によれば、防眩層の屈折率が1.5以上であり、低屈折率剤の屈折率が1.5未満であり、好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。
具体的には、低屈折率層の説明において挙げた低屈折率剤を好ましく用いることができる。低屈折率剤を含有させた表面形状調整層の膜厚は、1μmよりも厚い方が好ましい。これは、この層が最外層となるため、耐擦傷性や硬度が必要であるからである。
(2)高屈折率剤/中屈折率剤
反射防止性をさらに向上させるために、高屈折率剤、中屈折率剤を表面形状調整層に含有させてもよい。高屈折率剤、中屈折率剤の屈折率は1.46〜2.00の範囲内で設定されてよく、中屈折率剤は、その屈折率が1.46〜1.80の範囲内のものを意味し、高屈折率剤は、その屈折率が1.65〜2.00の範囲内のものを意味する。
これら高屈折率剤/中屈折率剤としては、微粒子が挙げられ、その具体例(かっこ内は屈折率を示す)としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)が挙げられる。
〔レベリング剤〕
防眩層は、レベリング剤を添加することができる。レベリング剤の好ましいものとしては、フッ素系またはシリコーン系等のレベリング剤が挙げられる。レベリング剤を添加した凹凸層用樹脂組成物は、塗布または乾燥時に塗膜表面に対して塗工適性を向上させ、滑り性や防汚性が付与でき、かつ、耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。
〔防汚染剤〕
防眩層には防汚染剤を含有させることができる。防汚染剤は、光学積層体の最表面の汚れ防止を主目的とし、さらに光学積層体の耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚染剤の具体例としては、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性を発現するような添加剤が有効である。より具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
〔硬度調整剤(高硬化剤)〕
防眩層は、耐擦傷性の効果を付与することを目的として、硬度調整剤(高硬化剤)を添加することができる。硬度調整剤の具体例としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を挙げることができる。
(製造例1−1:反応性無機微粒子B(1−1)の調製)
(1)表面吸着イオン除去
粒子径5nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックスXS、商品名、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK1B、三菱化学(株)製)400gを用いて3時間イオン交換を行い、次いで、陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンSA20A、三菱化学(株)製)200gを用いて3時間イオン交換を行った後、洗浄し固形分濃度20重量%のシリカ微粒子の水分散体を得た。
この時、シリカ微粒子の水分散体のNaO含有量は、シリカ微粒子当たり各7ppmであった。
(2)表面処理(単官能モノマーの導入)
上記(1)の処理を行ったシリカ微粒子の水分散液10gに150mlのイソプロパノール、4.0gの3,6,9−トリオキサデカン酸、及び4.0gのメタクリル酸を加え、30分間撹拌し混合した。
得られた混合液を、60℃で5時間加熱しながら撹拌する事で、シリカ微粒子表面にメタクリロイル基が導入されたシリカ微粒子分散液を得た。得られたシリカ微粒子分散液を、ロータリーエバポレーターを用いて蒸留水、及びイソプロパノールを留去させ、乾固させないようにメチルエチルケトンを加えながら、最終的に残留する水やイソプロパノールを0.1重量%とし、固形分50重量%のシリカ分散メチルエチルケトン溶液を得た。
このようにして得られたシリカ微粒子(反応性無機微粒子B(1−1))は、日機装(株)社製Nanotrac粒度分析計により測定した結果、d50=5nmの平均粒子径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は、熱重量分析法により測定した結果4.68×10−3g/mであった。また、得られた反応性無機微粒子B(1−1)の比重は、2.1だった。
(製造例1−2:反応性無機微粒子B(1−2)の調製)
(1)表面吸着イオン除去
粒子径10nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックスS、商品名、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を用いて、製造例1−1と同様に、表面吸着イオンを除去したシリカ微粒子の水分散液を得た。
(2)表面処理(多官能モノマーの導入)
製造例1−1と同様の手法で表面処理を行った。
このようにして得られた反応性無機微粒子B(1−2)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=10nmの平均粒子径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果、3.84×10−3g/mであった。また、得られた反応性無機微粒子B(1−2)の比重は、2.1だった。
(製造例1−3:反応性無機微粒子B(1−3)の調製)
(1)表面吸着イオン除去
粒子径30nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックス50、商品名、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を用いて、製造例1−1と同様に、表面吸着イオンを除去したシリカ微粒子の水分散液を得た。
(2)表面処理(多官能モノマーの導入)
製造例1−1と同様の手法で表面処理を行った。
このようにして得られた反応性無機微粒子B(1−3)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=30nmの平均粒子径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果、2.73×10−3g/mであった。また、得られた反応性無機微粒子(1−3)Bの比重は、2.1だった。
(製造例1−4:反応性無機微粒子(1−4)の調製)
(1)表面吸着イオン除去
粒子径80nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックスZL、商品名、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を用いて、製造例1−1と同様に、表面吸着イオンを除去したシリカ微粒子の水分散液を得た。
(2)表面処理(多官能モノマーの導入)
製造例1−1と同様の手法で表面処理を行った。
このようにして得られた反応性無機微粒子(1−4)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=80nmの平均粒子径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果、2.15×10−3g/mであった。また、得られた反応性無機微粒子(1−4)の比重は、2.1だった。
(製造例2:反応性無機微粒子B(2)の調製)
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン7.8重量部、ジブチルスズジラウレート0.2重量部からなる溶液に対し、イソフォロンジイソシアネート20.6重量部を撹拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間撹拌した。これにペンタエリスリトールトリアクリレート71.4重量部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱撹拌することで化合物(1)を得た。
窒素気流下、粒子径20nmのメタノールシリカゾル(触媒化成工業(株)製、商品名、OSCALシリーズ)88.5重量部(固形分26.6重量部)、上記で合成した化合物(1)8.5重量部、p−メトキシフェノール0.01重量部の混合液を、60℃、4時間撹拌した。続いて、この混合溶液にメチルトリメトキシシラン3重量部を添加し、60℃、1時間撹拌した後、オルト蟻酸メチルエステル9重量部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱撹拌することで反応性無機微粒子B(2)を得た。
このようにして得られた反応性無機微粒子B(2)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=22nmの平均粒子径を有していた。また、表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果7.08×10−3g/mであった。また、得られた反応性無機微粒子B(2)の比重は、2.1だった。
(製造例3:反応性無機微粒子B(3)の調製)
(1)表面吸着イオン除去
粒子径30nmのイソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(触媒化成工業(株)製、商品名、スルーリアDN−19)を用いた。
(2)表面処理(多官能モノマーの導入)
製造例1−1と同様の手法で表面処理を行った。
このようにして得られた反応性無機微粒子B(3)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=30nmの平均粒子径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果、5.35×10−3g/mであった。尚、製造例3に使用したシリカ微粒子は中空構造を有するものであり、その空洞部分の体積も中実部分として比重を換算したところ、得られた反応性無機微粒子B(3)の見かけ上の比重は1.68だった。
<実施例1>
厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(透明基材フィルム)の一方の側に、上記製造例1−1で製造した反応性無機微粒子B(1−1)を含む下記組成の「防眩層塗工液」をミヤバーコートで3.5g/m塗工し、溶剤を蒸発乾燥後、酸素濃度を0.1%以下に保って、80W/cmの紫外線照射装置で10m/minの速度で2度照射することにより、凹凸層からなる防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例1の防眩フィルムは、凹凸層の厚さ(透明基材フィルム表面から凹部表面までの厚さ)が2.1μmであった。また、実施例1の防眩フィルムは、凹凸層全体の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子の平均粒子数に対する、スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子の平均粒子数の倍率(以下、スキン層の倍率という。)が、3だった。
尚、凹凸層の厚さは、防眩フィルム断面のSTEM写真において、5箇所を測定し、その平均値とした(以下同じ)。
また、実施例1の防眩フィルムを斜め切削し、アルバック・ファイ社製TOF−SIMSを用いて、反応性無機微粒子B(1−1)に含まれる成分を検出したところ、フッ素原子は検出されなかった。
「防眩層塗工液」
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA):42.5重量部
・イルガキュア184(光重合開始剤):0.25重量部
・シリコーン(レベリング剤):0.1重量部
・反応性無機微粒子B(1−1):7.5重量部
・シリカ(透光性微粒子A)(平均粒径1μm):12重量部
・トルエン:34重量部
<実施例2>
実施例1において、反応性無機微粒子B(1−1)の代わりに製造例1−2で得られた反応性無機微粒子B(1−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、TACフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例2の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、実施例2の防眩フィルムは、スキン層の倍率が2.5だった。また、実施例2の防眩フィルムを斜め切削し、アルバック・ファイ社製TOF−SIMSを用いて、反応性無機微粒子B(1−2)に含まれる成分を検出したところ、フッ素原子は検出されなかった。
<実施例3>
実施例1において、反応性無機微粒子B(1−1)の代わりに製造例1−3で得られた反応性無機微粒子B(1−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、TACフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例3の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、実施例3の防眩フィルムは、スキン層の倍率が2.0だった。また、実施例3の防眩フィルムを斜め切削し、アルバック・ファイ社製TOF−SIMSを用いて、反応性無機微粒子B(1−3)に含まれる成分を検出したところ、フッ素原子は検出されなかった。
<実施例4>
実施例1において、反応性無機微粒子B(1−1)の代わりに製造例2で得られた反応性無機微粒子B(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、TACフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例4の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、実施例4の防眩フィルムは、スキン層の倍率が2.1だった。また、実施例4の防眩フィルムを斜め切削し、アルバック・ファイ社製TOF−SIMSを用いて、反応性無機微粒子B(2)に含まれる成分を検出したところ、フッ素原子は検出されなかった。
<実施例5>
実施例1において、反応性無機微粒子B(1−1)の代わりに製造例3で得られた反応性無機微粒子B(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、TACフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例5の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、実施例5の防眩フィルムは、スキン層の倍率が3だった。また、実施例5の防眩フィルムを斜め切削し、アルバック・ファイ社製TOF−SIMSを用いて、反応性無機微粒子B(3)に含まれる成分を検出したところ、フッ素原子は検出されなかった。
<実施例6>
実施例2において、凹凸層の厚さが1.2μmとなるように、防眩層用塗工液の塗布量を調節した以外は、実施例2と同様にして、TACフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例6の防眩フィルムは、スキン層の倍率が4だった。また、実施例6の防眩フィルムは、スキン層の倍率が4だった。
<実施例7>
実施例2において、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの代わりに、80μm厚のシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして、COPフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例7の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、実施例7の防眩フィルムは、スキン層の倍率が2.5だった。
<実施例8>
実施例2において、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの代わりに、80μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして、PETフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例8の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、実施例8の防眩フィルムは、スキン層の倍率が2.5だった。
<実施例9>
実施例2において、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの代わりに、80μm厚のアクリル系樹脂フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして、アクリル系樹脂フィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた実施例9の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、実施例9の防眩フィルムは、スキン層の倍率が2.5だった。
<比較例1>
実施例1において、反応性無機微粒子Bを含有しない以外は、実施例1と同様にしてTACフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた比較例1の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、比較例1の防眩フィルムは、反応性無機微粒子を含有しないため、スキン層が形成されなかった。
<比較例2>
実施例1において、反応性無機微粒子B(1−1)の代わりに製造例1−4で得られた反応性無機微粒子(1−4)を用いた以外は、実施例1と同様にしてTACフィルム上に防眩層を形成し、防眩フィルムを得た。
得られた比較例2の防眩フィルムは、凹凸層の厚さが2.1μmであった。また、比較例2の防眩フィルムは、無機反応微粒子(1−4)の平均粒径が80nmであるために、該無機反応微粒子を凹凸層表面に充分に偏在させることができず、スキン層(凹凸層の表層に反応性無機微粒子が偏在した領域)の倍率が1.3と2未満だった。
〔評価方法〕
上記、各実施例、及び比較例で得られた防眩フィルムについて、以下の方法により耐スチールウール性を評価した。結果を表1(耐SW性)に示す。
<耐スチールウール性試験>
防眩フィルム表面を、#0000番のスチールウールで、300g/cm2の荷重をかけながら、速度50mm/secで10往復摩擦させ、防眩フィルム表面の傷の有無と傷の数を目視で確認した。
〔結果〕
表1に示すように、反応性無機微粒子を含有しない比較例1の防眩フィルムは、耐スチールウール性試験において、その表面に多数の傷(20本以上)が確認された。また、反応性無機微粒子は含有するが、その平均粒径が80nmと大きく、凹凸層の空気界面側表層に該反応性無機微粒子を充分に偏在させることができなかった(倍率1.3)比較例2の防眩フィルムも、耐スチールウール性試験において、その表面に多数の傷(20本以上)が確認された。
これに対して、5nm以上30nm以下の平均粒径を有する反応性無機微粒子Bを用いた実施例1〜9の防眩フィルムは、スキン層の倍率が2以上となる該反応性無機微粒子Bの偏在が生じ、耐スチールウール性試験において形成された傷が5本以下と、高い耐スチールウール性を示した。中でも、実施例1〜4、実施例8及び実施例9は、耐スチールウール性試験において傷が形成されず、優れたハードコート性を有することが確認された。
Figure 2009042628
本発明の防眩フィルムの一形態例を示す断面図である。 本発明の防眩フィルムの他の一形態例を示す断面図である。 凹凸層における反応性無機微粒子Bの分布状態を説明する図である。
符号の説明
1…透明基板
2…防眩層
3…凹凸層(3’:スキン層)
4…透光微粒子
5…反応性無機微粒子
6…表面形状調整層
7…低屈折率層

Claims (17)

  1. 透明基材フィルム上に最表面が凹凸形状を有する防眩層を設けてなる防眩フィルムであって、
    前記防眩層が、凹凸層のみからなる単一層か、または、凹凸層と当該凹凸層の観察者側に配置された表面形状調整層を含む2層以上からなる積層構造を有し、
    当該凹凸層は、
    (1) 平均粒子径が1μm以上10μm以下の範囲にある透光性微粒子A、
    (2) 平均粒子径が5nm以上30nm以下の範囲にあり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する反応性無機微粒子B、及び
    (3) 前記反応性無機微粒子Bの反応性官能基bとの架橋反応性を有する反応性官能基cを有するバインダー成分Cを含み、系内における硬化反応性も有する硬化性バインダー系、
    を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
    当該凹凸層の透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域に比べて、当該凹凸層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が多いスキン層を有しており、
    当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が、当該凹凸層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数の2倍以上であることを特徴とする、防眩フィルム。
  2. 前記スキン層の厚さは、透明基材フィルムとは反対側の界面から前記反応性無機微粒子Bの平均粒径の等倍から5倍までの厚さであることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム。
  3. 前記スキン層において、前記反応性無機微粒子Bが密集していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の防眩フィルム。
  4. 前記スキン層の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が800個/μm2以上であり、且つ、前記凹凸層全体の厚み方向断面における単位面積当たりの前記反応性無機微粒子Bの平均粒子数が500個/μm2以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  5. 前記反応性無機微粒子Bのコアとなる無機微粒子及び前記透光性微粒子Aは、同じ材質からなるものである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  6. 前記反応性無機微粒子Bの表面の少なくとも一部が有機成分で被覆されており、前記反応性官能基bは当該有機成分により前記反応性無機微粒子Bの表面に導入されており、当該有機成分が、被覆前の無機微粒子の単位表面積当たり1.00×10−3g/m以上含まれる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  7. 前記反応性無機微粒子Bは、フッ素を含有しないものである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  8. 前記反応性無機微粒子Bの反応性官能基b、及び、前記バインダー成分Cの反応性官能基cは、いずれも重合性不飽和基を有するものである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  9. 前記反応性無機微粒子Bが、飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  10. 前記表面修飾化合物が、水素結合形成基を有する化合物である、請求項9に記載の防眩フィルム。
  11. 前記表面修飾化合物の少なくとも1種が、前記反応性官能基bとなる重合性不飽和基を有する、請求項10に記載の防眩フィルム。
  12. 前記反応性無機微粒子Bが、当該反応性無機微粒子B表面に導入される反応性官能基b、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
    化学式(1)
    −Q−C(=Q)−NH−
    (化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、Q
    はO又はSを示す。)
  13. 前記バインダー成分Cが、前記反応性無機微粒子Bの反応性官能基bと結合可能な反応性官能基cを3つ以上有する化合物である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  14. 前記反応性無機微粒子Bの含有量が、全固形分に対して、5〜30重量%である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  15. 前記透明基材フィルムが、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  16. 前記防眩層の表面を、#0000番のスチールウールで、300g/cm2の荷重をかけながら、速度50mm/secで10往復摩擦させる耐スチールウール試験において、当該防眩層表面に傷が付かない、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
  17. 前記凹凸層の膜厚が0.5〜30μmである、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
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