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JP2019183137A - 無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を含む重合性組成物、該重合性組成物を用いた層の製造方法及び無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を含む層 - Google Patents

無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を含む重合性組成物、該重合性組成物を用いた層の製造方法及び無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を含む層 Download PDF

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JP2019183137A JP2019063235A JP2019063235A JP2019183137A JP 2019183137 A JP2019183137 A JP 2019183137A JP 2019063235 A JP2019063235 A JP 2019063235A JP 2019063235 A JP2019063235 A JP 2019063235A JP 2019183137 A JP2019183137 A JP 2019183137A
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acrylate
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梨恵 藤田
Rie Fujita
梨恵 藤田
鉄夫 笠井
Tetsuo Kasai
鉄夫 笠井
雄也 有川
Takeya Arikawa
雄也 有川
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Mitsubishi Chemical Group Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Chemical Holdings Corp
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Abstract

【課題】単層構造で、高屈折率を呈し、透明性に優れる封止層等の層の形成が可能となる重合性組成物を提供する。【解決手段】マトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物とを含み、該(メタ)アクリレートモノマーと無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾する化合物とのHSP値の差が3以上であり、25℃での粘度が40mPa・s以下であることを特徴する重合性組成物を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を含む重合性組成物、該重合性組成物を用いた層の製造方法及び無機酸化物粒子を含む層に関する。特に光学用途に使用される無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を含む重合性組成物、該重合性組成物を用いた層の製造方法及び無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を含む層に関する。
光学用途、特に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、これらを用いたタッチパネル等の封止層に使用される樹脂材料は、使用される層に応じて屈折率を調整することが求められている。
これらディスプレイを構成している透明無機材料との屈折率差が大きいと、界面での反射によって光取り出し効率が低減する。また、近年増加傾向にあるタッチパネルを備えた表示装置にあっては、例えば、パターン化されたITO(インジウム・スズ酸化物)との界面における入射光の内部反射の影響で、視認する側から透明電極のパターンが見えるという「パターン見え」の問題が指摘されている。よって透明無機材料との屈折率をできるだけ合わせるべく、高い屈折率材料が要求されている。
一方、通ってきた光を散乱させることで反射を低減するような反射防止層や光取り出し向上層への用途に用いるために、低い屈折率材料も要求されている。
樹脂材料自体に分子屈折率の高い又は低い構造を導入して屈折率を調整する方法はあるが、材料が高騰化してしまう。例えば、屈折率を高める手法として、通常は透明無機材料と屈折率の近い無機透明粒子、例えば無機酸化物粒子を樹脂材料に混合して屈折率を高めることが行われている。
無機酸化物粒子を含有する重合性組成物としては、例えば、特許文献1に、ハードコート用の樹脂組成物として、(α)少なくとも(メタ)アクリル基を含有する被覆材により被覆されている無機酸化物微粒子と、(β)環状構造を有し、かつ1個の重合性不飽和基を有する環状単官能化合物と、(γ)少なくとも2個以上の重合性不飽和基を有する多官能化合物とを、含有することを特徴とする無機酸化物微粒子含有組成物が開示されている。
また、特許文献2には、粘着剤層の表面から厚み方向のある範囲にわたって、粘着剤層のベース材料よりも高い屈折率を有する屈折率調整区分を形成することによって、該粘着剤層が光学部材の接合に使用されたとき、これら光学部材によって形成される積層体における内部反射を抑制できることが開示されている。高い屈折率を有する屈折率調整区分は、粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に、該粘着性材料より高い屈折率を有する高屈折率材料の粒子が分散されて構成されている。
特開2010−85937号公報 特開2017−26826号公報
高屈折率の無機酸化物粒子を添加することで高屈折率の樹脂組成物の実現は可能である。しかしながら、無機酸化物粒子を多量に使用する必要があり、高価になる。また、高い透明性の要求される用途においては、無機酸化物粒子の添加により透明性が低下することがある。特に屈折率を高めるためにより多くの無機酸化物粒子を添加すると、形成される層が白濁し、視認性が低下する。更に、無機酸化物粒子を多量に添加することで粘度が高くなり、インクジェットプロセスへの適応性が損なわれるなどの塗布方法の制約が出てしまう。
特許文献2のように、積層構造とすることで粘着剤層全体のヘイズ値は低く抑えることができる。しかしながら、積層構造とするために工程数が増加し、製造時間及び製造コストが増加する。
本発明は、容易なプロセスで形成可能であり、単層構造で、高屈折率を呈し、透明性に優れる封止層等の層の形成が可能となる重合性組成物を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、該重合性組成物を用いた層及びその製造方法を提供することにある。
また本発明の他の目的としては、容易なプロセスで形成可能であり、単層構造で、後の蒸着プロセスに膜が耐え得る蒸着耐性を有する重合性組成物を提供することである。該重合性組成物は、タッチパネルの誤作動を抑制するような低誘電性能を有し、透明な封止層等の層形成を可能とする。
本発明に係る重合性組成物は、マトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物とを含み、該(メタ)アクリレートモノマーと無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾する化合物とのHSP値の差:ΔHSPが3以上であり、25℃での粘度が40mPa・s以下であることを特徴する。
本発明に係る層は、(メタ)アクリレート重合体と、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物とを含み、該無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が該層のいずれか一方の層表面に偏在しており、且つ、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾する(メタ)アクリル基を有する化合物と(メタ)アクリレート重合体が架橋していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る層の形成方法は、上記重合性組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を架橋硬化する工程とを含む。
本発明に係る重合性組成物は、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を一方の表面側に偏析させることが可能であり、該重合性組成物を架橋硬化した層は、該層の一方の層表面に無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が偏在した層とすることができる。無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を可視光散乱が起きない分散粒径又はドメインサイズで偏在させることで、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の添加量が少なくても、屈折率の調整(高屈折率化又は低屈折率化)することができ、透明性にも優れた層を形成できる。
また、上記のように該層の一方の層表面に無機酸化物微粒子又はシロキサン化合物を偏析させた層とすることで、均一分散系と比較して誘電率の上昇を抑制しつつも表面硬度を向上させ、後にCVD(化学蒸着)などの蒸着プロセスを経る際の膜耐久性を上げることができる。
本発明に係る重合性組成物は、マトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマー(以下、「A成分」という場合がある。)と、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物(以下、「B成分」という場合がある。)とを含む。そして、該(メタ)アクリレートモノマーと無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾する化合物とのHSP値の差が3以上であり、該組成物の25℃での粘度が40mPa・s以下であることを特徴する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」という用語は、前者は「メタクリレート」と「アクリレート」、後者は「メタクリル」と「アクリル」の両方の意味を示す。
[A成分]
マトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート類と、多官能(メタ)アクリレート類とがあり、被覆材としての(メタ)アクリル基を有する化合物との密な架橋構造を形成するために、少なくとも1種の多官能(メタ)アクリレート類を含むことが好ましい。また、単官能(メタ)アクリレート類と、多官能(メタ)アクリレート類との混合物であることが好ましい。組成物の粘度を下げる観点からは、分子量の小さい単官能(メタ)アクリレート類の方を多く含むことが好ましい。また、環状構造を含むモノマーは、硬化物の屈折率を向上させ、機械的強度を付与することができる点で好ましい。
単官能(メタ)アクリレート類としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、エトキシ化−o−フェニルフェノールアクリレート、2−ヒドロキシ−o−フェニルフェノールプロピルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−o−フェニルフェノールプロピルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸等ベンジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、9−アントラセニル(メタ)アクリレート、1−ピレニルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノアクリレートモノカルボン酸、ジシクロペンタニルアクリレート等が挙げられる。
柔軟性の観点からは、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以下であるモノマーが好ましく、30℃以下であるモノマーがより好ましく、10℃以下であるモノマーが更に好ましい。上記の中でも、具体的には、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が好ましい。
低誘電性の観点からは、(メタ)アクリル基官能基当量(g/eq)がより大きい材料が好ましく、好ましくは200(g/eq)以上であり、より好ましくは250(g/eq)以上であり、更に好ましくは300(g/eq)以上の(メタ)アクリレートである。具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、9−アントラセニル(メタ)アクリレート、1−ピレニルメチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノアクリレートモノカルボン酸、ジシクロペンタニルアクリレート等が特に好ましい。
蒸着耐性の観点からは、2−ナフチル(メタ)アクリレート、9−アントラセニル(メタ)アクリレート、1−ピレニルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノアクリレートモノカルボン酸、ジシクロペンタニルアクリレート等が好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)クリルプロピルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、デンドリチックポリマーポリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリグリセリンポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとアクリル酸の反応生成物(新中村工業株式会社製、商品名「NKエステル A−BPEF」)等が挙げられる。
上記の中でも、屈折率を高める観点からは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとアクリル酸の反応生成物(新中村工業株式会社製、商品名「NKエステル A−BPEF」)が好ましい。また、柔軟性の観点からは、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、低誘電の観点からは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとアクリル酸の反応生成物(新中村工業株式会社製、商品名「NKエステル A−BPEF」)、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
[B成分]
「被覆」とは、無機酸化物粒子などの表面に被覆材が物理的あるいは静電気的に付着して被覆している状態であり、「化学修飾」とは、無機酸化物粒子などの表面の官能基(OH基など)と被覆材の官能基が反応して結合している状態を示す。
無機酸化物粒子としては、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化亜鉛、酸化ニオブ、シリカ(二酸化ケイ素)から選ばれる少なくとも一種の無機金属酸化物を含むナノ粒子であることが好ましい。中でも、屈折率の観点からより好ましくはチタニア及び/又はジルコニアであり、最も好ましくはジルコニアである。
無機酸化物は多孔質微粒子であってもよく、低屈折率又は低誘電率が求められる場合は多孔質微粒子であることがより好ましい。
無機酸化物粒子の粒子径は、ナノレベルの粒子径であり、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。上記上限値以下であれば、透明性が損なわれない傾向にある。一方、粒子径の下限値は1nm以上であり、2nm以上が好ましい。なお、粒子径とは電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等によって形態観察を実施した際の画像解析によって得られる粒子径を指す。
シロキサン化合物は、シロキサン結合を有する化合物であればいずれであってもよいが、[RSiO3/2で表されるシルセスキオキサン又はその誘導体であることが好ましい。Rとしては、メチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基などのアルケニル基、メトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基、塩素などのハロゲン、等が挙げられる。RSiO3/2はT単位と呼ばれ、T単位毎のRは同一であっても異なっていてもよい。その誘導体としては、Rの炭化水素基がハロゲン等で置換されたもの等が挙げられる。シルセスキオキサンの構造としては、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などのいずれの形態であってもよい。また、これらの構造の混合物も使用できる。
シロキサン化合物は、比較的低分子量の無定形のものから、高分子量のナノ粒子型のものまでいずれの形状であってもよいが、高分子量のナノ粒子型のものが好ましい。
ナノ粒子型のシロキサン化合物(シルセスキオキサン)も、無機酸化物粒子の粒子径と同等のものを使用することが好ましい。
本発明で使用するB成分は、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾されている。また、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾する化合物である被覆材又は化学修飾材は、少なくともマトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマーとのHSP値の差が3以上の化合物を含む。HSP値の差は4以上であることがより好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることがより好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましく、9以上であることが最も好ましい。また、上限は12以下である。ΔHSPが上記下限値以上であることが、無機酸化物粒子が該層のいずれか一方の層表面に偏在するためのドライビングフォースとなる。また、ΔHSP値が上限以下であることで、B成分の凝集が抑制され、分散が良好である傾向にある。
なお、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が複数の化合物で被覆又は化学修飾されている場合、(メタ)アクリル基を有する化合物及びそれ以外の被覆材又は化学修飾材のうち少なくとも1つの化合物が上記HSP値の差を満たせばよい。
好ましくは、被覆材又は化学修飾材すべてが上記HSP値の差を満たすことである。
本発明でのHSP値とは、分散力項(δ)、極性力項(δ)、水素結合力項(δ)の3成分に分割して物質の極性を考慮したHansen溶解度パラメーである。多成分の場合、成分比に応じた値の合計値とすることができる。本発明における、HSP値の差(ΔHSP)は、下記式で表される。ここでは、成分Aと成分Bの2成分について、各項をδDA、δPA、δHAとδDB、δPB、δHBとで表す。
ΔHSP={4(δDADB)2+(δPAPB)2+(δHAHB)2}1/2
この差が小さいものは相溶性があり、この差が大きくなると相溶性が低下して相分離が起こりやすくなる。
このようにHSP値の差があることで、B成分は、組成物中で浮上もしくは沈降する。その状態でマトリックス樹脂の(メタ)アクリレートを重合させると、被覆材又は化学修飾材の(メタ)アクリル基を有する化合物と架橋して、B成分が偏析した状態で固定される。HSP値の差とB成分の含有量を特定範囲内の値にすることで、B成分を可視光散乱が起こらないサイズの粒子分散、ドメイン状態とすることができ、偏析と透明性を両立した層形成が可能となる。
被覆材又は化学修飾材としての(メタ)アクリル基を有する化合物の具体例としては、メタクリル酸、アクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。また、これら不飽和カルボン酸のシリル化物、特にアルコキシシランで修飾された化合物も使用できる。例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物が挙げられる。
また、被覆材又は化学修飾材としては他に、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸などの直鎖状カルボン酸;2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクサン酸、ネオデカン酸などの分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの環状カルボン酸などを使用することができる。これらのうちネオデカン酸や2−エチルヘキサン酸などの分枝鎖状カルボン酸が好適である。
無機酸化物粒子又はシロキサン化合物と被覆材又は化学修飾材との割合は、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が60質量%以上(すなわち、被覆材が40質量%以下)であることが好ましく、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が95質量%以下(すなわち、被覆材が5質量%以上)であることが好ましい。被覆材又は化学修飾材の量としては10〜30質量%がより好ましい。
被覆材又は化学修飾材の量は、被覆又は化学修飾された無機酸化物粒子の場合は、TG−DTA(熱重量−示唆熱分析)等の方法で、当該無機酸化物粒子を空気雰囲気中で800℃まで加熱して有機成分を除去したときの減量率で表すことができる。
無機酸化物粒子の被覆又は化学修飾は、公知の方法が利用でき、各種カップリング処理と同様に、無機酸化物粒子の分散液中に被覆材を滴下して無機酸化物粒子の表面を修飾することができる。あるいは、金属酸化物の前駆体化合物と被覆材を水と混合し、水熱合成により被覆材で被覆又は化学修飾された金属酸化物粒子を得ることもできる。
無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量は、組成物全量中60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは45質量%である。また、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。なお、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量は被覆材又は化学修飾材を含まない量である。無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量が上記上限値以下であることで、重合性組成物の粘度が高くなり過ぎず、偏析しやすくなる傾向にある。また、上記下限値以上であることで、偏析による効果が得られる傾向にある。
無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量は、粘度を抑制できる点から、体積分率では組成物全量中18vol%以下であることが好ましく、16vol%以下であることがより好ましく、15vol%以下であることがさらに好ましく、13vol%以下であることがさらに好ましく、10vol%以下であることが特に好ましい。
<重合開始剤>
また、本発明の重合性組成物は重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、光又は熱によって、ラジカル、カチオン又はアニオン活性種を発生するような重合開始剤を用いることができる。部材ダメージ低減の観点から、光重合開始剤、又は光重合開始剤及び熱重合開始剤との併用が好ましい。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ジエトキシアセトフェノン等のベンゾイル類;
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパンー1−オン等のベンゾイン類;
α−アミノアルキルフェノン類、
1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;等の光ラジカル開始剤が挙げられる。また、光照射によってカチオン活性種を発生するA+-で表される塩が挙げられる。ここで、カチオンA+は、芳香族ヨードニウムイオン又は芳香族スルホニウムイオンが好ましい。
また、アニオンBが、SbF 、PF 又はB(C のような、B(アリール) イオンである開始剤を少なくとも含むことが好ましい。B(アリール) としては、B(C の他に、例えばB(COCF 、B(CCF 等の光カチオン開始剤が挙げられる。
これらの中でも、硬化性の観点から、ベンゾイン類、ベンゾイル類、オキシムエステル類が好ましく、特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド又はビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤は、本発明の重合性組成物を100質量部としたとき、通常0.001質量部以上、好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上である。その上限は、通常10質量部以下、好ましくは9質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。光重合開始剤の添加量が上記上限以下であることで、重合が急激に進行せず、硬化体の複屈折の低下、色相の向上を行うことができる傾向にある。一方、上記下限以上であることで、重合性組成物が十分に重合する傾向にある。
(熱重合開始剤)
熱重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、ハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の一方の水素原子が炭化水素基で置換されているハイドロパーオキサイド;
ジt−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等のジアルキルパーオキサイド;
t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等のパーオキシエステル;
ベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート;パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の過酸化物;
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物系開始剤;の熱ラジカル開始剤が挙げられる。
また、熱によってカチオン活性種を発生する熱カチオン開始剤も用いることができる。これは、光照射によっては実用的な量のカチオン活性種を発生し得ない化合物であり、上記のAで表される塩である。カチオン活性種を発生させる温度は、好ましくは60℃以上である、より好ましくは80℃以上である。また、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは150℃以下である。
ここで、カチオンAは硫黄原子(S)を含むスルホニウムイオン(SR )が好ましく、Sに結合している3つのR基のうち少なくとも1つがアルキル基であるスルホニウムイオンがより好ましい。この場合、2つの基が一緒になってアルキレン基となりSと共に環を形成していてもよい。残りの基は、置換基を有していてもよいアリール基、アリール基で置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基等の熱カチオン開始剤であることが好ましい。アニオンBとしては、BF 、PF 、SbF などが挙げられる。
熱カチオン開始剤としては、ベンジル(4−ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル(メチル)スルホニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
熱重合開始剤の中でも、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド又はアゾ化合物系開始剤が重合性の観点から好ましい。さらに具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が好ましい形態として挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱重合開始剤は、本発明の重合性組成物を100質量部としたとき、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上である。その上限は、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。熱重合開始剤が上記上限以下であることで、重合性組成物を光重合させた後、脱型して熱重合させるに際の重合が急激に進行せず、硬化体の複屈折の低下、色相の向上を行うことができる傾向にある。一方、上記下限以上であることで、熱重合が十分に進行する傾向にある。
光重合開始剤と熱重合開始剤とを併用する場合、その質量比は、通常「100:1」〜「1:100」(「光重合開始剤:熱重合開始剤」、以下、本段落において同様。)、好ましくは「10:1」〜「1:10」である。熱重合開始剤が上記下限以上であることで、重合が十分となる傾向にあり、上記上限以下であることで、着色を抑制する傾向にある。
本発明の重合性組成物は、その粘度が小さい方が、B成分の偏析がスムーズに起こり、且つ、インクジェットプロセス等への適用が可能となり、該重合組成物を用いた塗布方法の選択肢が広がるため好ましい。
本発明の重合性組成物の25℃での粘度は、40mPa・s以下であり、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい。粘度は、使用するモノマーの種類及びその組み合わせ、無機酸化物粒子の添加量、重合開始剤の添加量に応じて適宜調整すればよい。なお、粘度はB型粘度計を用いて、温度25℃の条件下で測定した値であり、溶媒を含む場合はエバポレーター等で溶媒を除去して測定した値とする。
本発明の重合性組成物は、(メタ)アクリレートモノマーを自溶媒としており、実質的にはその他の溶媒を含まないことが好ましい。しかしながら、無機酸化物粒子の分散液に含まれる溶媒が同伴されることを妨げるものではない。
[層]
本発明に係る層は、(メタ)アクリレート重合体と、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシルセスキオキサン化合物とを含む。該無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が該層のいずれか一方の層表面に偏在しており、且つ、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾している(メタ)アクリル基を有する化合物と(メタ)アクリレート重合体が架橋していることを特徴とする。
該(メタ)アクリレート重合体、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシルセスキオキサン化合物は、前記重合組成物で用いた、(メタ)アクリレート重合体、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシルセスキオキサン化合物と同義である。
本発明に係る層の形成方法は特に限定されないが、本発明に係る重合性組成物を基材上に塗工して塗膜を形成し、該塗膜を重合硬化させることにより形成し得る。また、基材とは別の支持体上に塗工して重合硬化させた後、基材上に転写する方法で形成してもよい。重合性組成物を基材上に塗工する際には、回転塗布(スピンコーティング)、インクジェット法などの方法で、均一な膜厚となるように塗布する。また、塗膜を形成した後、B成分の偏析が完了するまで所定の時間静置した後、塗膜を重合硬化させる。静置する時間は、重合性組成物の組成や粘度、無機酸化物粒子の粒子径などにより異なるが、概ね、5秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。
重合硬化は、前記したように光硬化反応又は光硬化と熱硬化併用により行うことが好ましい。通常、紫外線(UV)を含む光を照射して光硬化反応を行う。UV光の照射は、基材やその他の部材に影響しない限り、どのように行ってもよい。照射量及び照射時間は、重合硬化(架橋)が充分に完了するよう、適宜調整して行われる。重合時は、大気下(空気中)で行ってもよく、不活性ガス、例えば窒素雰囲気下に行ってもよい。反応誘起相分離により偏析度を上げる観点で、不活性ガス、例えば窒素雰囲気下で実施することがより好ましい。
このような方法により、B成分が該層のいずれか一方の層表面に偏在しており、且つ、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を、被覆又は化学修飾している(メタ)アクリル基を有する化合物と(メタ)アクリレート重合体が架橋している層を得ることができる。
層の厚さは、目的に合わせて適宜変更できるが、入出力デバイス等の封止層に使用する場合、通常は5μm〜500μmであり、デバイスの厚みを減らす観点で、より好ましくは5μm〜400μm、さらに好ましくは5μm〜300μm、さらに好ましくは5μm〜200μm、さらに好ましくは5μm〜100μm、さらに好ましくは5μm〜50μm、さらに好ましくは5μm〜30μmが、さらに好ましくは5μm〜20μm、特に好ましくは5μm〜10μmである。
B成分の偏在の度合い(偏在度ともいう)は、B成分が偏在している一方の層表面(表面)と、他方の層表面(裏面)とのATR測定における無機酸化物又はシロキサン化合物由来ピーク積分値の表面/裏面比で表すことができる。この表面/裏面比(偏在度)が、1よりも大きければ無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の表面と裏面との量が異なるといえるが、本発明ではこの表面/裏面比が1.5以上である場合を偏在しているという。偏在度は2以上であることが好ましく3以上であることがより好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることが最も好ましい。本発明により達成される偏在度の上限は10程度までである。
本発明に係る層は透明性が高く、屈折率がマトリックス樹脂の屈折率に対して高くあるいは低く調整される。例えば、マトリックス樹脂よりも屈折率が充分に高い無機酸化物粒子を添加する場合、層の屈折率が1.65以上となるように、無機酸化物粒子の量、マトリックス樹脂、被覆材の又は化学修飾材の種類や組成を調整することが好ましい。
なお、屈折率は、D線(波長589nm)での屈折率(n)である。本発明にかかる層では、屈折率nは、1.70以上であることがより好ましく、1.73以上とすることがより好ましく、1.76以上とすることがさらに好ましい。なお、通常のアクリル樹脂の屈折率は1.47程度である。
一方、シロキサン化合物はアクリル樹脂の屈折率よりも低く、組成物の硬化物の層の屈折率を下げることができる。
層中の無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量は、層中の60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは45質量%である。また、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。なお、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量は被覆材又は化学修飾材を含まない量である。無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量が上記範囲であることで、偏析による効果が得られる傾向にある。
無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量は、偏析による効果が得られることから、体積分率では層中19vol%以下であることが好ましく、17ol%以下であることがより好ましく、16vol%以下であることがさらに好ましく、14vol%以下であることがさらに好ましく、11vol%以下であることが特に好ましい。
[その他添加剤]
本発明の重合性組成物は、マトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物以外のモノマー又は樹脂成分、粘着付与樹脂、軟化剤、溶媒、腐食防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、防カビ剤、pH調整剤、難燃剤、結晶核剤、導電性粒子、無機粒子、有機粒子、粘度調整剤、滑剤、表面処理剤、レベリング剤、架橋剤、消泡剤、増感剤、更なる機能付与を目的として、各種成分が含まれていてもよいが、溶媒に関してはプロセス効率上含まないことが好ましい。
(その他添加剤の量)
重合性組成物の上記その他添加剤の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば特に限定されない。重合性組成物を100質量%としたとき、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<アクリルモノマー重合液(1)の調製>
単官能(メタ)アクリレートとして、ノルマルブチルアクリレート(和光純薬工業製)53.4g、多官能(メタ)アクリレートとして、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとアクリル酸の反応生成物(新中村工業株式会社製、商品名「NKエステル A−BPEF」)5.4g、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、商品名「Irgacure819」)1.2gを秤量し、ミックスローターを用いて混合し、アクリルモノマー重合液(1)を得た。
<アクリルモノマー重合液(2)の調製>
光重合開始剤を2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、商品名「Irgacure TPO」)に変更した以外はアクリルモノマー重合液(1)と同様にし、アクリルモノマー重合液(2)を調製した。
<アクリルモノマー重合液(3)の調製>
単官能(メタ)アクリレートをイソボルニルアクリレート(東京化成工業株式会社製)、光重合開始剤を1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製、商品名「Irgacure184」)に変更した以外はアクリルモノマー重合液(1)と同様にし、アクリルモノマー重合液(3)を調製した。
<アクリルモノマー重合液(4)の調製>
単官能(メタ)アクリレートを2−エチルヘキシルアクリレート(東京化成工業株式会社製)に変更した以外はアクリルモノマー重合液(3)と同様にし、アクリルモノマー重合液(4)を調製した。
<アクリルモノマー重合液(5)の調製>
単官能(メタ)アクリレートをイソステアリルアクリレート35.0g及びジシクロペンタニルアクリレート(日立化成株式会社製、商品名:「FA−513AS」)11.7g、多官能(メタ)アクリレートとして、1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村工業株式会社製、商品名「A−DOD−N」)2.2g、重合開始剤を1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製、商品名「Irgacure184」)1.0gに変更した以外はアクリルモノマー重合液(4)と同様にし、アクリルモノマー重合液(5)を調製した。
<被覆ジルコニア分散液の調製>
2−エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液(第一稀元素化学工業社製)(782g)に純水(268g)を混合した。当該混合物を撹拌機付きオートクレーブ内に仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにより置換した。その後、反応溶液を180℃まで加熱し、16時間反応させることにより酸化ジルコニウムを合成した。180℃で反応した際の容器中圧力は1.03MPaであった。
反応後の溶液を取り出し、底部にたまった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に乾燥した。乾燥後の当該沈殿物(100g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。
次に、精製工程として定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。次に、濾液を減圧濃縮したトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子を回収した。
上記で得られた酸化ジルコニウムナノ粒子(10g)をトルエン(90g)に分散させ、透明分散液を得た。当該分散液に表面処理剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(1.5g、信越化学工業社製、KBM−503)を添加し、90℃で1時間加熱還流した。次いで、還流処理後の分散液にn−ヘキサンを添加することで分散粒子を凝集させて分散液を白濁させた。白濁液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で加熱乾燥し、2−エチルヘキサン酸、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
得られた被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は12nmであった。さらに赤外吸収スペクトルにより分析したところ、C−H由来の吸収とCOOH由来の吸収に加えてSi−O−C由来の吸収が認められた。これら吸収は、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆している2−エチルヘキサン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに由来するものと考えられる。また、TG−DTA(熱重量−示唆熱分析)により、空気雰囲気下10℃/分の速度で800℃まで昇温した時の酸化ジルコニウムナノ粒子の質量減少率を測定したところ、18質量%の減少率となった。よって、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆している2−エチルヘキサン酸、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、粒子全体の18質量%であることが確認された。
上記で得られた2−エチルヘキサン酸、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子80質量%に対してフェノキシベンジルアクリレートを20質量%添加し、撹拌して被覆酸化ジルコニアナノ粒子を80質量%含有するモノマー分散液を得た。
実施例1〜4・比較例1〜2はこの被覆ジルコニア分散液を用いた。
なお、実施例5については、δD=19.91, δP=8.36, δH=8.69のHSP値を有する被覆材で被覆した酸化ジルコニア粒子の50質量%酢酸エチル分散液を用いた。TEM観察による被覆酸化ジルコニウム粒子の粒子径は5nmであった。
<実施例1>
(被覆ジルコニア含有重合性組成物の調製)
アクリルモノマー重合液(1)の2.6g、被覆ジルコニア分散液4.4gを秤量し、混練機(シンキー製、商品名「あわとり練太郎(AR-250)」)で混合5分・脱泡1分を実施し、被覆ジルコニア含有重合性組成物(1)を得た。
被覆ジルコニア分散液:被覆ジルコニア濃度80質量%、ジルコニア/被覆材=82/18(質量比)のため、
組成物全体のうちのジルコニア濃度={(4.4×0.8×0.82)/(2.6+4.4)}×100=41(質量%)として求めた。
重合性組成物(1)の粘度をBROOK FIELD製B型粘度計「DV−I+VISCOMETER」(商品名)を用いて、温度25℃の条件下で測定したところ、8mPa・sであった。
(光学評価用ガラス上塗布サンプルの作製)
マイクロピペッターを用いて、重合性組成物(1)の1mLをスライドガラス(2.5cm×7.5cm、水研磨、松浪硝子工業株式会社製)上に乗せ、スピンコーター(ミカサ(株)製、1H−D7)を用いて250rpm・15sの回転条件で塗布し、窒素雰囲気下でUV照射することによって、光学評価用ガラス上塗布サンプル(膜厚11μm)を得た。
UV照射条件:フュージョンUVシステムズジャパン株式会社(現ヘレウス株式会社)製のUVランプコンベアーシステム(バルブ:Vタイプ)を用いて3J/cmのUVを照射
(光学評価)
(分光光度計による光学評価:屈折率算出)
作製した光学評価用ガラス上塗布サンプルのD線(589nm)の透過率と反射率を分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製、U−4000)によって室温(25℃)で測定し、スライドガラスのみのブランク(透過率・反射率)を差し引いて得られたデータよりガラス上塗布サンプルのn(屈折率)を算出した。
(外観評価)
目視により硬化物の外観(透明性)を評価した。
(Haze評価)
TMダブルビーム自動ヘイズコンピューターHZ−2(スガ試験機株式会社製)を用い、光学評価用ガラス上塗布サンプルのHaze評価を実施した。この際、スライドガラスのみのブランクのHazeを差し引き、ガラス上塗布サンプルのHaze値とした。
(ATR評価:ジルコニア粒子の偏析度合いデータ算出)
サーモフィッシャーサイエンティフィック製FT−IR分光装置NicoletiS5用い、作製した光学評価用ガラス上塗布サンプルの表面と裏面の赤外分光分析(全反射法・ATR)を実施した。まず、アクリルモノマー重合液(1)のみをUV硬化した重合物と、被覆ジルコニア分散液にビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、商品名「Irgacure819」)を全体の2質量%添加した液をUV硬化した重合物との、それぞれのATRデータを取得した。(UV照射条件は上記同様)。ATRデータより、被覆ジルコニア分散液の重合物のみに1517−1576cm−1に酸化ジルコニウム(ZrO)由来ピークが存在した。上記サンプルをそのピーク積分値を比較することによりジルコニア量比を比較することが可能である。左記方法によって表面と裏面の酸化ジルコニウム由来ピーク積分値の表面/裏面比(偏析度)は5.86となり、表面によりジルコニア粒子が偏析していることが分かった。
(電子顕微鏡評価:偏析範囲)
上記硬化後サンプルをFIB加工法にて100nm厚みに設定して薄片化し、FEI社製TECNAI G2 F20 透過型電子顕微鏡を用いて高分解能HAADF−STEM像(観察倍率;20,000倍と80,000倍)を取得した。HAADF−STEM強度は酸化ジルコニウムの量を反映するが、最も低い強度よりも強度が10a.u.以上高く出た。厚さ方向深さ(nm)は表面から247−2184(nm)であり、表面2μm付近にジルコニア粒子が偏析していることが分かった。
(HSP値の算出)
モノマーのHSP値は、Pirika製計算ソフトHSPiPを用いて実施した。モノマー混合物のHSP値は混合比(vol%)を用いて、以下の式から計算した。
DmPmHm]=[(a×δD1+b×δD2),(a×δP1+b×δP2),(a×δH1+b×δH2)]/(a+b)
(式中、δDm,δPm,δHmは混合物のHPS値、δD1,δP1,δH1は第1モノマーのHPS値、δD2,δP2,δH2は第2モノマーのHPS値、aは第1モノマーの混合割合、bは第2モノマーの混合割合を示す。)
次に、ΔHSP値は下記のように算出した。ジルコニアの被覆材である2−エチルヘキサン酸のHSP値はδD=16.1, δP=4.1, δH=8.6、また3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのHSP値はδD=14.9, δP=4.1, δH=4.6である。マトリックス樹脂である(メタ)アクリレートモノマーとのΔHSP値は下記式により計算すると、2−エチルヘキサン酸の場合ΔHSP=3.2、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合ΔHSP=2.6となり、マトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマーと無機酸化物であるジルコニアを被覆する化合物の一成分である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとのΔHSPは3以上であった。
ΔHSP={4(δDADB)2+(δPAPB)2+(δHAHB)2}1/2
<実施例2〜5、比較例1,2>
表1に示す組成にて、重合性組成物を調製し、表2に示す重合雰囲気下に実施例と同様にして光学評価用ガラス上塗布サンプルの作製と評価を行った。実施例1の結果を併せて、重合性組成物の評価を表1に、硬化物の評価を表2に示す。
<実施例6>
表3に示すモノマー重合液(5)8.4gに、メタクリル基含有シランカップリング剤で処理したナノコロイダルシリカ(アドマテックス製Y10SM−AM1・50%MEK分散液)を3.2g添加し、混練機(シンキー製、商品名「あわとり練太郎(AR−250)」)で混合5分・脱泡1分を実施し、重合性組成物(8)を調製した。マイクロピペッターを用いて、重合性組成物(8)1mLをITOベタ基板(50mm×50mm×0.7mm)上に乗せ、スピンコーター(ミカサ(株)製、1H−D7)を用いて600rpm・30sの回転条件で塗布した。その後、70℃のホットプレート上に5min置いておくことで溶媒を除去し、その後窒素雰囲気下でUV照射することによって、光学評価用ガラス上塗布サンプル(膜厚12μm)を得た。この際、誘電率を評価する上でITO剥き出しの部分を作る必要があるため、UV照射する前に綿棒で塗布面一部を拭き取り、ITO剥き出しの部分を作製した。
UV照射条件は、実施例1と同様とした。
(金属Al蒸着)
誘電率を評価するため、上記UV照射後のサンプルに対し、真空蒸着装置を用い、1nm/Sの速度でAl(フルウチ化学(株)製Aluminium Metal Wire 99.99%純度)を4mm×4mm×100nm(厚み)×4スポット部分に蒸着した。
(誘電率、蒸着耐性評価)
上記金属Alを蒸着したサンプルの誘電率を、LCRメーター(キーエンス製GT2−H12KL)を用いて23℃50%RHの環境下で測定した(周波数は100Hz〜1000000Hzの範囲)。蒸着耐性に関しては、蒸着Al面が鏡面となったものを○、白濁したものを×とした。
<実施例7、比較例3,4>
表3に示す組成にて、各重合性組成物を調製し、実施例1と同様にしてUV照射後のサンプルの作製、金属Al蒸着及び誘電率、蒸着耐性の評価を行った。評価を表3に示す。
表3において、メタクリル基含有ナノコロイダルシリカはアドマテックス製Y10SM−AM1(固形分50wt%, MEK分散液)、フェニル基含有ナノコロイダルシリカはアドマテックス製Y10SP−AM1(固形分30.9w%, MEK分散液)を使用し、溶媒を除去した後の重合性組成物全体のうちのナノコロイダルシリカ量が表3に示す量となるように重合液と配合した。
Figure 2019183137
Figure 2019183137
Figure 2019183137
表1、表3における略号は以下の通りである。
・単官能モノマー
nBA:ノルマルブチルアクリレート
IBA:イソボルニルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
ISA:イソステアリルアクリレート
FA−513AS:日立化成株式会社製ジシクロペンタニルアクリレート、
商品名:「FA−513AS」
A−DOD−N:新中村工業株式会社製1,10−デカンジオールジアクレート、
商品名「A−DOD−N」
・多官能モノマー
A−BPEF:新中村工業株式会社製、商品名「NKエステル A−BPEF」
・重合開始剤
819:BASF製、商品名「Irgacure819」
TPO:BASF製、商品名「Irgacure TPO」
184:BASF製、商品名「Irgacure184」
比較例1では、ジルコニア粒子の添加量が多く、重合性組成物の粘度が上がったため、ジルコニア粒子の偏析が起こらず、添加量が多いにも拘わらず屈折率が他の実施例に比較して低くなった。また、ジルコニア粒子の添加量が多いためにヘイズが悪化した。
比較例2は、単官能モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートを多量に使用したことで、ジルコニアが凝集して不均一液となり、重合組成物の粘度が測定できなかった。また、ヘイズ値が非常に高く、全体的に白濁し、屈折率の測定は行わなかった。
これに対して、実施例1〜5では、ジルコニア粒子の充分な偏析が起こり、屈折率が高く、ヘイズも低く透明性に優れた層の形成が可能であった。
また、実施例6,7は、誘電率及び蒸着耐性の両方を十分満たすものであった。一方、比較例3及び4は、フェニル基含有シランカップリング剤で処理したナノコロイダルシリカを用いたため、誘電率及び蒸着耐性の両方を満たすものとはならなかった。
本発明に係る重合性組成物は、比較的少ない無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の添加によってマトリックス樹脂の屈折率よりも十分に高いあるいは低い屈折率に調整でき、また、蒸着耐性良好且つ誘電率が低く、透明性に優れた硬化物の層の提供が可能となる。この結果、単層にて光学用途に適した封止層を提供でき、装置コストの低減に寄与できる。
本発明に係る封止層は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、これらを用いたタッチパネル等の画像入出力デバイスに好適であり、透明電極等の「パターン見え」の問題やタッチパネル誤作動の課題を解決できる。

Claims (15)

  1. マトリックス樹脂となる(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物とを含み、該(メタ)アクリレートモノマーと無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾する化合物とのHSP値の差が3以上であり、25℃での粘度が40mPa・s以下であることを特徴する重合性組成物。
  2. 前記(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1種の多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の重合性組成物。
  3. 前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートの1種以上と単官能(メタ)アクリレートの1種以上とを含む、請求項2に記載の重合性組成物。
  4. 重合性組成物中の被覆又は化学修飾する化合物を含まない無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量が60質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性組成物。
  5. 前記無機酸化物粒子が、酸化ジルコニウム粒子であり、該酸化ジルコニウム粒子の粒子径が100nm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性組成物。
  6. さらに、光重合開始剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合性組成物。
  7. (メタ)アクリレート重合体と、少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物で被覆又は化学修飾された、無機酸化物粒子又はシルセスキオキサン化合物とを含む層であって、該無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が該層のいずれか一方の層表面に偏在しており、且つ、無機酸化物粒子又はシロキサン化合物を被覆又は化学修飾している(メタ)アクリル基を有する化合物と(メタ)アクリレート重合体が架橋していることを特徴とする層。
  8. 前記層中の被覆又は化学修飾する化合物を含まない無機酸化物粒子又はシロキサン化合物の含有量が全体の60質量%以下である請求項7に記載の層。
  9. 前記無機酸化物粒子が、酸化ジルコニウム粒子であり、該酸化ジルコニウム粒子の粒子径が100nm以下である、請求項7又は8に記載の層。
  10. 前記層において、前記無機酸化物粒子が偏在している一方の層表面(表面)と、他方の層表面(裏面)とのATR測定における酸化ジルコニウム由来ピーク積分値の表面/裏面比が1.5以上10以下である請求項9に記載の層。
  11. 前記層の屈折率nが、1.65以上である、請求項9又は10に記載の層。
  12. 請求項7〜11のいずれか1項に記載の層を封止層として含む入出力デバイス。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を架橋硬化する工程とを含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の層の形成方法。
  14. 前記塗膜を形成した後、所定の時間静置する工程を含み、前記無機酸化物粒子又はシロキサン化合物が偏析した後、前記架橋硬化する工程を行う、請求項13に記載の層の形成方法。
  15. 前記架橋硬化する工程が、紫外線を塗膜に照射することにより行う、請求項13又は14に記載の層の形成方法。
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