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JP2008508259A - コレステロール低下添加剤およびこれを用いて生産された低コレステロールの卵 - Google Patents

コレステロール低下添加剤およびこれを用いて生産された低コレステロールの卵 Download PDF

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JP2008508259A
JP2008508259A JP2007523457A JP2007523457A JP2008508259A JP 2008508259 A JP2008508259 A JP 2008508259A JP 2007523457 A JP2007523457 A JP 2007523457A JP 2007523457 A JP2007523457 A JP 2007523457A JP 2008508259 A JP2008508259 A JP 2008508259A
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ヒョンジン キム
ソンチュル ホン
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JINIS BIOPHARMACEUTICALS Co
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Abstract

本発明は、低コレステロールの卵を生産するための家禽類卵のコレステロール低下剤、これを含む飼料及び飼料添加剤、これを用いた低コレステロールの卵の生産方法及び、該生産方法により生産された低コレステロールの卵に関する。本発明では、微生物由来スタチンの化学式5のうち6番炭素にメチル基を有しないスタチンを用いて低コレステロールの卵を生産する。また、本発明によれば、生産コストの大きな上昇なしに低コレステロールの卵を生産することが可能な低コレステロールの卵の生産方法では、従来の合成スタチンを用いた方法に比べて1/20から1/4まで生産コストを低めることができる。
Figure 2008508259

【選択図】なし

Description

本発明は、低コレステロールの卵を生産するための家禽類用コレステロール低下剤、これを含む飼料及び飼料添加剤、これを用いた低コレステロールの卵の生産方法で生産された低コレステロールの卵に関する。
コレステロールは、すべての動物性食品に存在する脂肪の一種で、かつ細胞の構成成分であり、ホルモン合成に必須的な成分であるが、過度なコレステロールは、むしろ人体に悪影響を及ぼすので、適正水準のコレステロール維持が健康に非常に重要である。
ヒトの血中コレステロール数値が200mg/dL以上の場合を高コレステロール症というが、高コレステロール症は、世界中の大人人口の52%で見出すことができるほどありふれた慢性疾患であって、高コレステロール症は動脈硬化の直接的な原因となり、また、高血圧、狭心症、心筋梗塞症、脳卒中などの各種心血管疾患を起こす原因となる。1900年代の統計によれば、心臓病は、肺炎やインフルエンザ、結核、下痢や膓炎に継いで4番目の死因であって、全ての死亡者のわずか8%に過ぎなかったが、現代では、人類の一番目の死亡原因として登場した。これは、卵製品(鶏卵)、肉製品(肉)、乳製品(牛乳、バター)などのような動物性食品の過多摂取に起因する高コレステロール症患者の増加による結果として考えられている。
しかし、現在、動物性食品の摂取量は、毎年増加しつつあり、特に、経済が発展するほど動物性食品の消費が増えているため、動物性食品の摂取を画期的に減らすことは、現実的にほとんど不可能なこととみなされている。このため、最近は、動物性食品そのものの消費量を減らそうとする努力よりも、動物性食品に含有されているコレステロールの含量を低めて低コレステロール動物性食品として開発する研究が、多様な方法で進行されている。
鶏卵のような卵製品は、栄養的な観点では、高品質のタンパク質、飽和及び不飽和脂肪酸、ミネラル、そしてビタミンから構成された、非常に立派な食品である。しかし、このような卵製品、特に卵は、鶏卵1個当たり約200mg以上のコレステロールを含んでいるため、食べ物から摂取されるコレステロールの主な供給源として見なされている。最近、血中コレステロール数値と心血管疾患の発病率との間の連関性が明らかになり、食べ物から摂取するコレステロールの量が増加すると、心血管疾患の危険が増加すると推測され(Weggemans et al.,2001)、このため、健康を気遣う消費者たちは、コレステロール摂取量を制限している。米国心臓協会のコレステロールの一日勧奨摂取量は300mgであり、この勧奨量を守るために、多くの消費者たちがメニューから鶏卵を制限しており、これによって、一人当たり鶏卵消費量は、かなり減少している(National Institutes of Health Consensus Development Panel,1985)。米国で食餌摂取コレステロールに対する一般消費者たちの意識水準の変化は、一人当たり鶏卵消費量が去る35年間303個から256個へと減少したことからも分かる(US Department of Agriculture,2002)。したがって、低コレステロールの卵は、健康意識のある消費者や高付加価値機能性製品の開発を所望する畜産会社にとって、魅力的な商品になる。本発明は、このような低コレステロールの卵を生産する方法に関するものである。
米国特許第6,177,121号によれば、低コレステロールの卵を作り出すために、コレステロール低下剤であるロバスタチン、シムバスタチン、アトルバスタチンを産卵鶏用飼料添加剤として用いる方法が開示されている(Elkin et al.,J. Nutr 1999:129:1010−1019、Elkin et al.,J.Agric.Food Chem 2003:51:3473−3481)。この文献では、シムバスタチンやアトルバスタチンを、0.03〜0.06%で5週間給餌し、低コレステロールの卵が生産されると報告しているが、実際この方法は、低コレステロールの卵の生産に活用できなかった。その理由は、シムバスタチンやアトルバスタチンは、有機合成によって生産された高価な医薬品であるため、これを飼料添加剤として用いると、低コレステロール卵の生産にかかる所要費用が、最小でも一般卵の生産コストの数十倍以上となるという点からである。もう一つの問題点は、シムバスタチンやアトルバスタチンの給餌によって、産卵率が著しく劣るという予期せぬ副作用があって、これが低コレステロールの卵の生産コストを一層高める原因となる。上記特許は、シムバスタチンやアトルバスタチンの他にも、ロバスタチンをも例示しているが、ロバスタチン0.06%はコレステロール低下効果が最大3〜6%であるので、低コレステロール卵の生産に効果的ではないと開示されている。従って、ロバスタチン、シムバスタチンまたはアトルバスタチンを用いた低コレステロールの卵が商品化される可能性は、非常に希薄であると言える。
コレステロール低下剤であるスタチンは、コレステロール生合成の阻害酵素である3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ(3−Hydroxy−3−Methylglutaryl Coenzyme A reductase、HMG−CoA還元酵素)を阻害して、コレステロール生合成阻害効果を有する化学物質を言う。ヒトや家畜を含む温血動物の体内において、コレステロールは、アセチルコエンザイムA(acetyl−CoA)から出発して多段階過程を経て合成されるが、コレステロール生合成過程の中で最も核心的な役割をする過程は、HMG−CoA還元酵素によってメバロン酸(mevalonic acid)が合成される過程である(反応式1)。
Figure 2008508259
スタチンは、メバロン酸と類似した構造を有することにより、HMG−CoA還元酵素を阻害するコレステロール生合成阻害物質である。この系列の薬品としては、メバスタチン(mevastatin:米国特許第3,983,140号)、ロバスタチン(lovastatin:米国特許第4,231,938号)、プラバスタチン(pravastatin:米国特許第4,346,227号)、シムバスタチン(simvastatin:米国特許第4,444,784号及び第4,450,171号)、フルバスタチン(fluvastatin:米国特許第4,739,073号)、アトルバスタチン(atorvastatin:米国特許第5,273,995号)、セリバスタチン(cerivastatin:米国特許第5,502,199号)などが挙げられる。
上記スタチンの中で、コンパクチン(メバスタチン)、ロバスタチン、プラバスタチンだけが微生物由来スタチンとして区別され、残りは全部有機合成を通じて生産される。微生物由来スタチンは、下記化学式5のような構造を共通に有するが、6番炭素の反応基(R group)によって、コンパクチン(R:−H)、ロバスタチン(R:−CH)、プラバスタチン(R:−OH)に分類される。これらのスタチンは、下記化学式5の酸(acid)構造以外にも、ラクトン(lactone)又は塩(salt)の形態で存在する。
Figure 2008508259
コンパクチンは、上記の化学式5の構造において、反応基が水素(R;−H)である構造であって、ペニシリウム(Penicillium)の醗酵培養液から分離されたものとして初めて知られた(米国特許第3,983,140号)。その後、コンパクチン生産菌株が、ペニシリウム(P.citrinum,P.brevicompactum,P.cyclopium,P.adametzioides)、トリコデルマ(Trichoderma viridae)、アスペルギルス(Aspergillus terreus)、グリオクラディウム属(Gliocladium sp.)など多様な属で報告された(米国特許第3,983,140号;第4,049,495号;第4,137,322号;第5,691,173号;韓国特許第832801号;第832329号;第378640号)。コンパクチンは、コレステロール低下剤として開発するために臨床実験を進行していたところ、深刻な人体毒性が報告されたため、臨床実験が中断されたことがある。その後、コンパクチン誘導体として3−ヒドロキシコンパクチン、6−ヒドロキシコンパクチン、8a−ヒドロキシコンパクチン、4a、5−ジヒドロコンパクチン酸、5’−ホスホコンパクチン酸、ML−236Aなどが知られて、研究されている(Chakravarti et al.,2004、Appl.Microbial.Biotechnol.64:618−624)。
プラバスタチンは、上記の化学式5の6番炭素にヒドロキシル基(R:−OH)を有する構造であって、これもコンパクチンと同様に、人体における血中コレステロール低下効果を示す。しかし、6番炭素に水素基を有するコンパクチンとは異なり、ヒドロキシル基を有するプラバスタチンの場合には、コンパクチンの問題点であった深刻な人体毒性はなく、高コレステロール症患者のためのコレステロール低下剤として使われている。したがって、プラバスタチンは、コンパクチンを用いてコンパクチンの6番炭素に結合された水素をヒドロキシル基に転換させる生物変換プロセスによって生産され、この変換には、酵素又は微生物菌株が用いられている(米国特許第4,346,227号)。プラバスタチン生産のための生物転換プロセスに用いられる微細物菌株としては、ストレプトミセス(Streptomyces carbophilus,S.roseochromogenus subsp.)、ノルカジア(Nocardia)、アクチノマドゥラ(Actinomadura)属などが多様に報告されている(米国特許第5,942,423号;第5,179,013号;第4,537,859号;第4,448,979号;第4,346,227号;カナダ特許第1,150,170号;第1,186,647号;韓国特許第414334号;第180706号;Serizawa et al.,1983、J.Antibiotics 36:887−891)。
本発明は、商用化が可能な経済性のある方法でコレステロール含量を大いに低下させた低コレステロールの卵を生産することを目的にする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、アトルバスタチンやシムバスタチンなど従来のスタチンを用いた方法において、産卵率の低下が低コレステロールの卵の生産コストを一層高める追加上昇の原因になっているという点から、産卵鶏の産卵率に影響を与えることなく、少量使用でも、卵製品に含有されたコレステロールを低下させる効果が大きい物質を探し出すようになった。
本発明では、微生物由来のスタチンの中で、化学式5の構造における6番炭素に、メチル基(−CH)を有しないスタチンの場合、産卵鶏の産卵率には影響を与えずに卵製品に含有されたコレステロールを低下させることができるということが明らかとなった。
また、本発明では、微生物由来スタチンの化学式5の構造における6番炭素に、メチル基(−CH)を有しないコンパクチン及びその誘導体、プラバスタチン及びその誘導体は、アトルバスタチンやシムバスタチン、ロバスタチンに比べて1/10〜1/2程度の少量使用でも、卵製品に含有されたコレステロールを大きく低下させることができることが究明された。
本発明では、前述のような研究結果に基づいて、低コレステロールの卵を生産するための家禽類用コレステロール低下剤、これを含む飼料及び飼料添加剤、これを用いた低コレステロールの卵の生産方法、及び該生産方法により生産された低コレステロールの卵を提供する。
本発明の他の目的及び長所は後述するが、これは本発明の実施例によってよく理解できるであろう。
本明細書における“家禽類”とは、その卵を食用する目的で人間が飼育又は養殖するすべての鳥類を含み、特に、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、七面鳥などがここに含まれる。
本明細書における“卵”とは、家禽類から食用を目的として生産されるすべての卵製品を含み、特に、鶏卵、うずら卵、アヒルの卵、ガチョウの卵、ダチョウの卵、七面鳥の卵などがここに含まれる。
本明細書における“低コレステロールの卵”または“低コレステロールの卵製品”とは、特に限定しない限り、通常の平均卵製品に比べて、コレステロール数値が著しく低くなった卵製品を意味する。
本発明では、家禽類の卵に含まれるコレステロールの含有量を低下させるコレステロール低下剤が提供される。本発明のある観点によれば、上記のコレステロール低下剤は、化学式1で表されるコンパクチンとその誘導体、化学式2で表されるコンパクチンとその誘導体、上記コンパクチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、上記コンパクチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含む。コンパクチンは、化学式1または化学式2の6番炭素の位置に水素基(−H)を有するスタチン構造の化合物である。
Figure 2008508259
Figure 2008508259
コンパクチンは、メバスタチン(mevastatin)又はML236Bとも呼ばれるが、化学式1のラクトン(lactone)構造、化学式2の遊離酸(free acid)構造、あるいは塩(salt)やエステル(ester)の形態を有するものを全部含む。コンパクチン誘導体は、化学式5の6番炭素の位置に水素基(−H)を有する全てのスタチン誘導体であり、例えば3−ヒドロキシコンパクチン(3−hydroxy cmpactin)、6−ヒドロキシコンパクチン、8a−ヒドロキシコンパクチン、4a,5−ジヒドロコンパクチン酸(4a,5−dihydrocompactic acid)、5’−ホスホコンパクチン酸(5’−phosphocompactic acid)、ML−236Aなどがここに含まれるが、これらに制限されることはない。コンパクチン誘導体はまた、微生物由来のコレステロール生合成阻害物質であってもよいが、これらに制限されることはない。これらを生産することが知られた菌株としては、3−hydroxy compactinを生産するStreptomyces roseochromogenus(Streptomyces roseochromogenus for 3−hydroxy compactin)、6−hydroxy compactinを生産するMucor hiemalis(Mucor hiemalis for 6−hydroxy compactin)、8a−hydroxy compactinを生産するSchizophyllum commune(Schizophyllum commune for 8a−hydroxy compactin)、Penicillum citrinum(4a,5−dihydrocompactic acid)、5’−phosphocompactic acidを生産するCarcinella muscae(Carcinella muscae for 5’−phosphocompactic acid)、ML−236Aを生産するEmericella unguis(Emericella unguis for ML−236A)などが挙げられる。
また、本発明では、化学式3で表されるプラバスタチンとその誘導体、化学式4で表されるプラバスタチンとその誘導体、上記プラバスタチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、上記プラバスタチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含む、卵に含まれるコレステロールを低下させるコレステロール低下剤を提供する。プラバスタチンは、化学式3または化学式4の6番炭素の位置にヒドロキシル基(−OH)を有するスタチン構造の化合物である。
Figure 2008508259
Figure 2008508259
プラバスタチンは、コンパクチンの微生物生物変換により得られ、エプタスタチン(eptastatin)、メザロチン(mezalotin)、またはプラバコール(pravachol)とも呼ばれる。本発明において、プラバスタチンは、化学式3のラクトン(lactone)構造、化学式4のカルボン酸(carboxylic acid)構造、またはその塩(salt)やエステル(ester)形態を有するものを全部含む。プラバスタチン誘導体は、化学式5の6番炭素の位置にヒドロキシル基(−OH)を有するスタチン誘導体であれば全部含まれる。
また、本発明では、上記の家禽類卵用のコレステロール低下剤を含む飼料添加剤及び飼料が提供される。
また、本発明では、化学式1で表されるコンパクチンとその誘導体、化学式2で表されるコンパクチンとその誘導体、上記コンパクチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、上記コンパクチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含むコレステロール低下剤を、家禽類に給餌する低コレステロール卵の生産方法が提供される。
上記コンパクチンまたはその誘導体は、飼料に添加して給餌するか直接給餌することができ、望ましくは0.0001〜3重量%で飼料に添加されて給餌される。0.0001〜3重量%で飼料に添加され、1日1回以上、かつ5日以上給餌する場合、生産卵において通常、著しいコレステロール低下効果を奏するが、これに限定されるわけではなく、家禽類の種類によって必要な最小給餌量及び給餌期間を変更することができる。
また、本発明では、化学式3で表されるプラバスタチンとその誘導体、化学式4で表されるプラバスタチンとその誘導体、上記プラバスタチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、上記プラバスタチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含むコレステロール低下剤を、家禽類に給餌する低コレステロール卵の生産方法が提供される。
化学式3で表されるプラバスタチンとその誘導体、化学式4で表されるプラバスタチンとその誘導体、これらのプラバスタチンの塩やエステルは、飼料に添加して給餌するか直接給餌することができ、望ましくは0.0001〜3重量%で飼料に添加されて給餌される。
本発明では、コンパクチン及びその誘導体、プラバスタチン及びその誘導体としては、精製された製品の他に、微生物培養液の精製過程で発生する中間生成物または工程副産物として生じる産業副生成物やこれらから分離された物質などが用いられることができる。
コンパクチンやプラバスタチン及びそれらの誘導体は、有機合成されたスタチンではなく微生物によって生合成される微生物由来のスタチンである。よって、微生物に由来するコンパクチンやプラバスタチンなどを生産するためには、まず、これらスタチン生成微生物を培養した後、スタチンが含まれている微生物培養液を濃縮、精製する過程を経て医薬品として生産することになるが、この際、工程段階別でスタチンの含まれた副生成物が出ることとなる。
例えば、プラバスタチンの生産工程を調べて見れば、C−6ヒドロキシル化(hydroxylation)機能付きの微生物、例えばストレプトミセスを増殖させる。次に、ストレプトミセス培養液にコンパクチンを添加すると、コンパクチンの生物変換、すなわちC−6ヒドロキシル化過程を経てプラバスタチンが生産される。生物変換反応後の微生物培養液からストレプトミセス菌体を取り除くと、培養液が残るが、これをカラムクロマトグラフィーなどの方法で精製し遠心分離することで高純度のプラバスタチンを生産することができる。この時、コンパクチンがプラバスタチンに生物変換される割合は、通常40〜70%であるので、培養液には未使用のコンパクチン、生物変換で生成されたプラバスタチン、及び不完全なヒドロキシル化によるコンパクチン誘導体などが存在するようになる。更に、培養液から分離された菌体物の場合もコンパクチン、コンパクチン誘導体またはプラバスタチンなど様々なスタチンが少量存在するようになる。また、培養液から有機溶媒を利用したスタチン分離精製過程において、不完全な回収によって前処理液やカラム洗浄液、カラム溶出液などからスタチンを含む副生成物が出るようになる。
医薬品生産工程において、これらのスタチンを含有する中間生成物は、更なる精製過程を経なければ医薬品の材料として使用することはできないが、家畜用には使用可能である。よって、本発明では、このような中間生成物や産業副生成物を本発明の目的である低コレステロールの卵を生産するための飼料添加剤として用いることで、安価で低コレステロールの卵を生産することができる。これらの中間生成物及び産業副生成物は、凍結乾燥後に固相の乾燥物に作製して、飼料添加剤として使用されることが好ましい。
ここで、“中間生成物及び副生成物”とは、工程途中の微生物培養液、培養液の前処理後の生成物、培養液から除去された菌体物、カラム洗浄液や溶出液、生産工程段階別で得られる工程副生成物などを全部含む意味として使われる。
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、下記の実施例によって本発明の範囲が限定されるわけではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想や特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なことは明らかである。
(実施例1:コンパクチンを用いた低コレステロールの卵)
(1)コレステロール低下添加剤の給餌
本実験における実験動物は、健康な45週齢のISA brown産卵鶏を用いた。実験産卵鶏は、2つの給餌グループに任意に分類した(それぞれ、対照群8羽、実験群6羽ずつ)。これらの実験産卵鶏は、鶏舎に一羽ずつ分離して入れ、実験動物飼育室の室内温度は25℃、相対湿度50%、明暗16L:8D条件に調節した。産卵鶏を鶏舎及び飼料に2週間適応させた後実験を開始した。対照群の食餌は、とうもろこし及び大豆を基にし、具体的な食餌組成は下記の表1の通りである。実験群の食餌は、対照群の食餌に99%精製コンパクチン塩(Sigma Aldrich Korea社製)を0.003または0.03%で添加して給餌した。水及び餌を自由に食べられるようにして、6週間飼育し、飼料摂取量、鶏卵の生産量及び鶏卵の重量をそれぞれ毎日測定した。産卵率は、すべての卵数を産卵鶏数で割った百分率で計算した。
Figure 2008508259
(2)産卵鶏の鶏卵の生産性
45週齢ISA brown産卵鶏の鶏卵の産卵率における、0.003%または0.03%のコンパクチンの効果を検討し、下記の表2に示した。飼料に0.003または0.03重量%の割合でコンパクチン塩を添加して6週間の実験期間中に給餌した処理群において、鶏卵の重量は給餌後にも60g以上を維持した。また、0.003%または0.03%でコンパクチン塩を給餌した2つの処理群とも、産卵率は、コンパクチン塩を添加しない対照群とほとんど違いがなく、産卵率の大きな低下がないことが観察された。これは5週間給餌時産卵率が70%以下に落ちるアトルバスタチンと比べると、非常に大きい差であると言える。
Figure 2008508259
(3)鶏卵のコレステロール分析
鶏卵のコレステロール含量を分析するために鶏卵を収集して卵黄を卵白から分離させた後、重量を測定し、分析のための試料とした。卵黄の脂肪は、Folchらの方法(1957)で抽出した。まず、鶏卵の卵黄1gを33%KOH溶液3mlで均質化した後、95%メタノール30mlを入れて65℃の恒温水槽で90分間培養した。次にヘキサン10mLと水3mLを入れた後10分間振湯培養した。標準溶液としては5α−コルレスタン(cholestan,Sigma C−8300)を利用した。コレステロール分析は、VB−1カラム(30m×0.25mm×0.25μm、VICI Inc.社製)を用いたガスクロマトグラフィ(島津製作所製(Shimadzu),Japan)を利用し、搬送ガスは窒素を用い、カラム溶出速度は0.54mL/minであった。ガスクロマトグラフィの注入機、カラム、検出機の温度は、それぞれ275℃、290℃、340℃であった。コレステロール含量におけるコンパクチンの効果を、下記の表3に示した。対照群の平均卵黄の重量は、17.2gであった。コンパクチンを給餌した卵黄は、対照群に比べて、わずかな卵黄重量減少が認められた。対照群のコレステロール濃度は卵黄1g当たり12.8mgであり、コンパクチン処理群は対照群に比べてコレステロール濃度が有意に減少されたことが認められた。鶏卵内のコレステロールの全含量を見ると、対照群と比較して、0.003%コンパクチン処理群では16%が減少し、特に0.03%コンパクチン処理群ではコレステロール含量が29%も低下した。0.03%未満のコンパクチンを給餌することで低コレステロール卵を生産することができたということは、従来低コレステロール卵の生産のために用いられたアトルバスタチンに比べて、コンパクチンは、2倍または3倍以上の優れたコレステロール低下効果を有することを示唆している。
Figure 2008508259
(実施例2:プラバスタチンを用いた低コレステロールの卵)
コレステロール低下飼料の添加剤として、コンパクチン塩の代りに、プラバスタチンを飼料に0.003または0.03重量%の割合で添加することを除いては実施例1と同様な方法で産卵鶏に給餌し、同じ方法で卵の生産性及び卵のコレステロール含量を測定した。鶏卵の重量及び産卵率で測定した鶏卵の生産性の結果は、下記の表4の通りである。プラバスタチン処理群は、6週間の実験給餌後の産卵率が80%以上であり、対照群と同様であった。これは対照群に比べて産卵率が15%以上低下するアトルバスタチンとは非常に大きな差である。
Figure 2008508259
鶏卵のコレステロール含量におけるプラバスタチンの効果を、下記の表5に示した。プラバスタチンを給餌することで、対象群に比べ、卵黄の重量及びコレステロール濃度が減少し、コレステロール含量が減少した。特に、0.03%のプラバスタチン処理群ではコレステロール含量が24%も低下した低コレステロールの卵が生産されることと確認された。
Figure 2008508259
(実施例3:スタチンを含む産業副生成物を用いた低コレステロールの卵)
コレステロール低下飼料の添加剤としてコンパクチンの生物変換反応が終わったストレプトミセス培養液、及び該培養液から分離された菌体物を次のような方法で乾燥して用いた。まず、コンパクチンの生物変換のための微生物であるストレプトミセスカーボフィリウス(Streptomyces carbophilus)単一コロニー(colony)を、500ml三角フラスコに入っている100mlのR2YE培地に接種して、27℃、200rpmで3日間培養した。培養液10mlを、500ml三角フラスコに入っている100mlの生物変換培地(グルコース 2.0%、corn steep liquor 0.2%、KHPO 0.15%、酵母エキス0.1%、MgSO・7HO 0.15%、ZnSO・7HO 0.001%、NHNO 0.1%、ペプトン 0.1%、pH7.0)に接種した後、同様に27℃、200rpmで3日間培養した。次に、ろ過滅菌したコンパクチン塩(compactin salt)を0.1重量%投入した後、4日間培養し続けた。生物変換反応が起きた培養液を、TLCで定性分析した結果、コンパクチン及びプラバスタチンが同量で混合されていた。この培養液を凍結乾燥器で24時間乾燥させて得られた培養液乾燥物をコレステロール低下飼料の添加剤として用いた。更に、反応が起きた培養液を3,000×gに遠心分離して反応液と菌体とを分離して菌体物を得、これを60℃乾燥器で24時間乾燥させて得られた菌体乾燥物をコレステロール低下飼料の添加剤として用いた。
コレステロール低下飼料の添加剤としてコンパクチン塩の代りに前述のように用意された培養液乾燥物及び菌体乾燥物をそれぞれ0.5%及び1%重量で飼料に添加することを除いては、実施例1と同様な方法で産卵鶏に給餌し、同じ方法で卵の生産性及び卵のコレステロール含量を測定した。鶏卵の重量及び産卵率で測定した鶏卵の生産性の結果は、下記の表6の通りである。処理群の鶏卵の重量は、対照群と比べて大きな変化を見せておらず、産卵率は対照群に比べてむしろ少し増加したことが明らかとなった。
Figure 2008508259
鶏卵のコレステロール含量を分析した結果を、表7に示した。鶏卵のコレステロール含量は、添加量に比例して減少し、平均の卵黄重量及びコレステロール濃度のいずれにおいても、対照群より減少した。培養液乾燥物の給餌による鶏卵のコレステロール含量変化は、0.5%と1%の処理群において、それぞれ17%と24%であった。菌体乾燥物の場合においても、0.5%と1%の処理群において、それぞれ13%と17%のコレステロール含量低下効果を示した。
Figure 2008508259
本発明では、産卵率は低下することなくコレステロール低下効果に優れているコンパクチン及びその誘導体、プラバスタチン及びその誘導体を用いることにより、従来の合成スタチンを用いた方法に比べて1/20から1/4まで生産コストを低めることができ、更に、微生物培養液の精製過程で発生する中間生成物及び産業副生成物などを活用することで、一般卵と比べても生産コストの大きな上昇なしに低コレステロールの卵を生産することができる。本発明は、コレステロール含量を大きく低めた低コレステロールの卵を安価な方法で提供して、1日コレステロール勧奨量基準を守りながらも栄養が優秀な卵製品を充分に接種できるようにすることで、その結果食品を通じて取られるコレステロール量を減らし、現代人の高コレステロール症の予防に寄与することができる。

Claims (16)

  1. 下記化学式1で表されるコンパクチンとその誘導体、下記化学式2で表されるコンパクチンとその誘導体、前記コンパクチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、前記コンパクチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含むことを特徴とする、家禽類卵のコレステロール低下剤。
    Figure 2008508259
    Figure 2008508259
  2. 前記コレステロール低下成分は、化学式1または2のコンパクチンおよびその誘導体を含む副生成物、中間生成物、及び/又は、微生物培養物の工業製品から分離された分離体であることを特徴とする、請求項1に記載の家禽類卵のコレステロール低下剤。
  3. 下記化学式3で表されるプラバスタチンとその誘導体、下記化学式4で表されるプラバスタチンとその誘導体、前記プラバスタチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、前記プラバスタチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含むことを特徴とする、家禽類卵のコレステロール低下剤。
    Figure 2008508259

    Figure 2008508259
  4. 前記コレステロール低下成分は、化学式3または4のプラバスタチンおよびその誘導体を含む副生成物、中間生成物、及び/又は、微生物培養物の工業製品から分離された分離体であることを特徴とする、請求項3に記載の家禽類卵のコレステロール低下剤。
  5. 請求項1または2に記載の家禽類卵のコレステロール低下剤を含むことを特徴とする、飼料添加剤。
  6. 卵を産む脊椎動物用の飼料と、
    請求項1または2に記載の家禽類卵のコレステロール低下剤と、
    を含むことを特徴とする、家禽類用飼料。
  7. 請求項3または4に記載の家禽類卵のコレステロール低下剤を含むことを特徴とする、飼料添加剤。
  8. 卵を産む脊椎動物用の飼料と、
    請求項3または4に記載の家禽類卵のコレステロール低下剤と、
    を含むことを特徴とする、家禽類用飼料。
  9. 下記化学式1で表されるコンパクチンとその誘導体、下記化学式2で表されるコンパクチンとその誘導体、前記コンパクチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、前記コンパクチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含むコレステロール低下剤を、家禽類に給餌することを特徴とする、低コレステロール卵の生産方法。
    Figure 2008508259
    Figure 2008508259
  10. 前記コレステロール低下成分は、化学式1または2のコンパクチンおよびその誘導体を含む副生成物、中間生成物、及び/又は、微生物培養物の工業製品から分離された分離体であることを特徴とする、請求項9に記載の低コレステロール卵の生産方法。
  11. 0.0001〜3重量%の前記コンパクチンおよびその誘導体を含む家禽類用飼料を、1日1回以上、かつ5日以上家禽類に給餌することを特徴とする、請求項9に記載の低コレステロール卵の生産方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか一つに記載の低コレステロール卵の生産方法により生産されたことを特徴とする、低コレステロールの卵。
  13. 下記化学式3で表されるプラバスタチンとその誘導体、下記化学式4で表されるプラバスタチンとその誘導体、前記プラバスタチンとその誘導体の薬学的に許容される塩、および、前記プラバスタチンとその誘導体のエステルからなる群より選択されるコレステロール低下成分を含むコレステロール低下剤を、家禽類に給餌することを特徴とする、低コレステロール卵の生産方法。
    Figure 2008508259
    Figure 2008508259
  14. 前記コレステロール低下成分は、化学式3または4のプラバスタチンおよびその誘導体を含む副生成物、中間生成物、及び/又は、微生物培養物の工業製品から分離された分離体であることを特徴とする、請求項13に記載の低コレステロールの卵の生産方法。
  15. 0.0001〜3重量%の前記プラバスタチンおよびその誘導体を含む家禽類用飼料を、1日1回以上、かつ5日以上家禽類に給餌することを特徴とする、請求項13に記載の低コレステロールの卵の生産方法。
  16. 請求項13〜15のいずれか一つに記載の低コレステロール卵の生産方法により生産されたことを特徴とする、低コレステロールの卵。
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