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JP2008270845A - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ESRの低減を可能とした固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】 表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔を、ナイロン繊維を主体繊維とし、PVAをバインダーとしたセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。その後に80℃以上100℃未満の温水に5〜120分浸漬し、80℃以上250℃未満で10〜180分熱処理する。そして、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤とを所定の溶媒と共に混合して調製した混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体電解コンデンサ及びその製造方法に係り、特に、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(以下、ESRと記す)を低減させることができる固体電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに着目した技術(特許文献1)が存在している。
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納して固体電解コンデンサを作成する。
特開平2−15611号公報
ところで、近年、電子情報機器はデジタル化され、さらにこれらの電子情報機器の心臓部であるマイクロプロセッサ(MPU)の駆動周波数の高速化が進んでいる。これに伴って、消費電力の増大化が進み、発熱による信頼性の問題が顕在化してきたため、その対策として駆動電圧の低減化が図られてきた。
上記駆動電圧の低減化を図るため、マイクロプロセッサに高精度な電力を供給する回路として電圧制御モジュールと呼ばれるDC−DCコンバーターが広く使用されており、その出力側コンデンサには、電圧降下を防ぐためESRの低いコンデンサが多数用いられている。このような低ESR特性を有するコンデンサとして、上述したような固体電解コンデンサが実用化され、多用されている。
しかしながら、マイクロプロセッサの駆動周波数の高速化は著しく、それに伴って消費電力がさらに増大し、それに対応するために電圧降下を防ぐためのコンデンサからの供給電力のさらなる増大化が求められている。すなわち、大きな電力を短時間で供給することができなければならず、このために固体電解コンデンサには大容量化、小型化、低電圧化と共に、さらに優れたESR特性が要求されている。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、ESRをさらに低減させることができる固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、従来の固体電解コンデンサの製造方法で十分なESRの低減効果が得られない理由がセパレータにあるのではないかと考え、セパレータの主体繊維及びバインダーについて鋭意検討を重ねた。その結果、ナイロン繊維を主体繊維とし、ポリビニルアルコール(以下、PVAと記す)をバインダーとしたセパレータを用いることによって、ESRがさらに低減することが判明したものである。
(固体電解コンデンサの製造方法)
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔を、ナイロン繊維を主体繊維とし、PVAをバインダーとしたセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。その後に、80℃以上100℃未満の温水に5〜120分浸漬し、80℃以上250℃未満で10〜180分熱処理する。
そして、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤とを所定の溶媒と共に混合して調製した混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成する。
なお、上記温水浸漬処理及び熱処理は、いずれか一方でも良い。
(セパレータ)
通常、合成繊維を主体とする固体電解コンデンサ用セパレータは、合成繊維とこれらを接合するバインダーから構成されている。このバインダーとしては、合成樹脂そのものを用いたり、合成樹脂を繊維状にして、セパレータの作成工程で溶融させて主体繊維を接合させている。
本発明においては、ナイロン繊維を主体繊維とし、PVAをバインダーとしたセパレータを用いることにより良好な結果が得られたものである。上記ナイロン繊維としては、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン610、ナイロン612、ナイロン10、ナイロン12を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、バインダーとして用いるPVAはPVAバインダー繊維を用いることが好ましい。
そして、これらのナイロン繊維、PVAバインダー繊維を混合し、水に分散させスラリーを作成する。このスラリーを長網式、傾斜型長網式、または丸網式抄紙機で抄紙し、乾燥機で乾燥させることによって、本発明のセパレータを得ることができる。
なお、セパレータに対するバインダーの含有量は10〜20wt%が好ましい。また、本発明のセパレータは耐熱性が良好なので、鉛フリーリフローにも耐え得ることが確認されている。
このようにナイロン繊維を主体繊維とし、PVAをバインダーとしたセパレータを用いることによってESRが低減する理由は、以下の通りと考えられる。すなわち、コンデンサ素子に重合性モノマーと酸化剤を含浸して導電性ポリマーを形成する際に、主体繊維であるナイロン繊維が酸化剤によって分解され、繊維分が少なくなることによってセパレータが粗密化する。そのため、コンデンサ素子内に含有されるPEDT等の導電性ポリマーの量が増大し、全体の伝導性が向上して、ESRが低減するものと考えられる。また、PVAをバインダーとして用いているため、修復化成中に溶解したPVAが酸化皮膜に付着することにより、ESRの低減効果をさらに高めていると考えられる。
なお、このことは、導電性ポリマーを形成した後のコンデンサ素子を観察した結果、ナイロン繊維が少なくなっていることから判明したものである。
(熱処理)
本発明においては、重合性モノマーと酸化剤を含浸する前に熱処理を施すと、ESRがさらに低減することが判明した。その理由は、ナイロン繊維の分解が促進されるためと考えられる。なお、この熱処理温度は80〜250℃が好ましく、より好ましくは90〜170℃であり、熱処理時間は10〜180分が好ましく、より好ましくは30〜120分である。
(温水浸漬処理)
また、本発明においては、重合性モノマーと酸化剤を含浸する前に温水浸漬処理を行うと、ESRはさらに低減することが判明した。その理由は、PVAの酸化皮膜への付着状態が向上するためと考えられる。なお、この温水の温度は80〜100℃が好ましく、より好ましくは90〜100℃であり、浸漬時間は5〜120分が好ましく、より好ましくは60〜120分である。
(EDT及び酸化剤)
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜58wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
(修復化成の化成液)
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
(他の重合性モノマー)
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
Figure 2008270845
以上述べたように、本発明によれば、ESRの低減を可能とした固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
続いて、以下のようにして製造した実施例1〜4及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
ナイロン繊維を主体繊維とし、PVAをバインダー(セパレータに対するバインダーの含有量は15%)として用いたセパレータを用い、以下のようにして固体電解コンデンサを作成した。表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔を上記のセパレータを介して巻回して、素子形状が5φ×2.8Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して修復化成を行った。修復化成後、このコンデンサ素子を90℃の温水に60分浸漬した後、100℃で10分間熱処理した。
一方、所定の容器に、EDTと50%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液を混合し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、120℃、60分加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。
そして、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後に、150℃、120分、5.2Vの電圧印加によってエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は4WV、定格容量は150μFである。
(実施例2)
修復化成後、コンデンサ素子を90℃の温水に10分浸漬した後、170℃で120分間熱処理した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例3)
修復化成後、コンデンサ素子を90℃の温水に60分浸漬した後、170℃で120分間熱処理した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例4)
修復化成後、温水浸漬処理及び熱処理のいずれも行わずに重合工程に移行した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(比較例)
PET繊維を主体繊維とし、PETをバインダー(セパレータに対するバインダーの含有量は15%)として用いたセパレータを用い、修復化成後、温水浸漬処理及び熱処理のいずれも行わずに重合工程に移行した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
[比較結果]
上記の方法により得られた実施例1〜4及び比較例について、ESRを調べたところ表1に示したような結果が得られた。
Figure 2008270845
表1から明らかなように、修復化成後、温水浸漬処理及び熱処理のいずれも行わずに重合工程に移行した実施例4と比較例を比べると、ナイロン繊維を主体繊維とし、PVAバインダーを用いたセパレータを使用した実施例4は、PET繊維を主体繊維とし、PETバインダーを用いたセパレータを使用した比較例に比べて、ESRは約84.8%に減少した。
また、修復化成後、温水浸漬処理及び熱処理を行った実施例1〜3と比較例を比べると、ESRは約61.7〜68.3%に減少した。さらに、修復化成後の温水浸漬処理及び熱処理の有無が異なる実施例1〜3と実施例4を比べても、ESRは約72.8〜80.5%に減少した。
このことから、ナイロン繊維を主体繊維とし、PVAバインダーを用いたセパレータを使用した方がESRの低減効果は大きく、また、修復化成後、温水浸漬処理及び熱処理を行う方が、ESRの低減効果はより大きいことが分かった。

Claims (4)

  1. 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に重合性モノマーと酸化剤を含浸して、導電性ポリマーを形成した固体電解コンデンサにおいて、
    ナイロン繊維を主体繊維としポリビニルアルコールをバインダーとしたセパレータを用いたコンデンサ素子を熱処理して、酸化剤によるセパレータの粗密化を促進させたことを特徴とする固体電解コンデンサ。
  2. 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
    前記セパレータとして、ナイロン繊維を主体繊維としポリビニルアルコールをバインダーとしたセパレータを用い、前記コンデンサ素子を形成した後、熱処理により、酸化剤によるセパレータの粗密化を促進させたことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記熱処理が80℃以上250℃未満であることを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記コンデンサ素子を形成した後、80℃以上100℃未満の温水に浸漬することを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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