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JP4720075B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エージング工程での漏れ電流不良の発生を防止し、歩留まりを高めることができる固体電解コンデンサの製造方法に関する。
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに着目した技術(特許文献1参照)が存在している。
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、ケースの開口部を封ロゴムで封止して固体電解コンデンサを作成する。
特開平2−15611号公報
ところで、従来は、定電流でエージングを行っていたが、エージングを続けても漏れ電流が低下しないコンデンサがあり、これらは漏れ電流不良となり、歩留まりを低下させる原因となっていた。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、エージング工程での歩留まりを高め、漏れ電流特性を向上させることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、エージング工程での漏れ電流不良の発生メカニズムについて種々検討を重ねた結果、以下の結論に達したものである。
すなわち、定格電圧の異なる複数の固体電解コンデンサについて、従来から用いられている方法である定電流でエージングを行い、漏れ電流が低下しないコンデンサについて検討した結果、定格電圧の低いコンデンサに漏れ電流が低下しないものが多いことが判明した。
この知見に基づき、本発明者等は以下の仮説を立てて検討したところ、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、エージング工程で漏れ電流が低下するのは、導電性ポリマーの欠陥部に電流が流れて、この欠陥部が絶縁化するためであると考えられる。そして、この絶縁化には、必要となる最低電力があり、定格電圧が低く定電流である電力が小さい状態では、電力不足で絶縁化が進まないのではないかと考えられた。
そこで、エージングの開始段階で大きな電流を流したところ、漏れ電流不良が低減することが分かった。また、その際に、定電圧、一定電流とすると、安定した特性となることが判明した。
この作用・機作は以下の通りであると考えられた。
すなわち、エージングが開始されると、大きな欠陥部の抵抗は小さいことから、その部分に電流が流れる。この場合に、電流が小さいと欠陥部を絶縁化するだけの電力がないので、欠陥部が絶縁化せずに電流が流れ続け、漏れ電流が低下しない。一方、大きな電力が与えられるように一定電流以上の電流を流すと、大きな欠陥部に電力が与えられて絶縁化し、次に大きな欠陥部に電流が流れてその部分が絶縁化するという状態になるため、漏れ電流が低減していくと考えられる。
(エージングの条件)
エージング電圧は、定格電圧の1.2〜1.5倍が好ましく、定格電圧の低いものほど大きな係数とすることが好ましい。また、エージングの電流は、5〜20mAが好ましく、定格電圧の低いものほど大きくすることが好ましい。その理由は、定格電圧の低いものほどエージングの際に加わる電力が小さくなることから、絶縁化に必要なエネルギーを得るためには、定格電圧の低いものほど大きな電力を与える必要があるためである。
なお、この電圧値及び電流値は、コンデンサの定格、サイズ等によって異なる。コンデンサの定格、サイズ等によって、導電性ポリマーの面積等の状態が異なり、それによって欠陥部の状態も異なるので、絶縁化に必要な電力の大きさが異なるからである。
(固体電解コンデンサの製造方法)
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔を、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。続いて、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤と所定の溶媒とを混合して調製した混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、定格電圧の1.2〜1.5倍の電圧、5〜20mAの電流を流すことによりエージングを行い、固体電解コンデンサを形成する。
(EDT及び酸化剤)
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜65wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
(修復化成の化成液)
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
(他の重合性モノマー)
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
Figure 0004720075
(作用・効果)
本発明の構成で、エージング工程での歩留まりが向上し、漏れ電流特性も向上する理由は、以下の通りと考えられる。すなわち、エージングの開始段階で大きな電力が与えられるように、定電圧、一定電流以上の電流を流すと、大きな欠陥部に電力が与えられてその部分が絶縁化し、その後は、次に大きな欠陥部に電流が流れてその部分が絶縁化するという状態になるため、漏れ電流が低減すると考えられる。
本発明によれば、エージング工程での歩留まりを高め、漏れ電流特性を向上させることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
続いて、以下のようにして製造した実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例)
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が5φ×2.8Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して、修復化成を行った。
一方、所定の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液を、その重量比が1:2となるように注入し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、120℃、60分加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。
そして、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後に、5.6V、10mAの電流を流すことによりエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は4WV、定格容量は820μFである。
(従来例)
1mAの定電流でエージングを行った。その他の条件及び工程は、実施例と同様である。
[比較結果]
上記の方法により得られた実施例及び従来例について、エージング工程における歩留まりと、良品の漏れ電流を測定したところ、表1に示したような結果が得られた。
Figure 0004720075
表1から明らかなように、実施例によれば、従来例に比べ良品の漏れ電流は同等ながら、歩留まりの向上が認められた。これは、実施例においては、従来例に比べて高分子の絶縁化が促進されたため、従来例では絶縁化しきれずに漏れ電流不良となっていたものが良品となったためと考えられる。
なお、これら従来は不良であるが、本発明を適用することにより良品化されたものの信頼性は従来のものと変わりないことを確認している。

Claims (3)

  1. 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固定電解質層を形成し、所定のケースに封止した後、エージングの開始段階で定格電圧の1.2〜1.5倍の電圧と5〜20mAでエージングを行うことを特徴とする固定電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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