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JP2008147233A - アクチュエータ装置の製造方法及び液体噴射ヘッド - Google Patents

アクチュエータ装置の製造方法及び液体噴射ヘッド Download PDF

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JP2008147233A
JP2008147233A JP2006329389A JP2006329389A JP2008147233A JP 2008147233 A JP2008147233 A JP 2008147233A JP 2006329389 A JP2006329389 A JP 2006329389A JP 2006329389 A JP2006329389 A JP 2006329389A JP 2008147233 A JP2008147233 A JP 2008147233A
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Kinzan Ri
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Abstract

【課題】圧電素子の耐久性及び信頼性を向上したアクチュエータ装置の製造方法及びその製造方法によって形成されたアクチュエータ装置を備えた液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】シリコン基板の一方面側に設けられた酸化シリコン膜及びこの上に設けられた酸化ジルコニウム層を含む振動板と、この振動板を介して、下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備するアクチュエータ装置の製造方法において、前記酸化シリコン膜の表層部を30nm〜100nmの厚さだけ除去する表層部除去処理する処理工程と、処理後の酸化シリコン膜上にジルコニウム層を設け、これを熱酸化して酸化ジルコニウム層とする酸化工程とを備える。
【選択図】なし

Description

本発明は、圧力発生室が形成された流路形成基板の一方面に振動板を設け、この振動板を介して設けられる圧電素子を備えたアクチュエータ装置の製造方法及びそれを備えた液体噴射ヘッドに関する。
電圧を印加することにより変位する圧電素子を具備するアクチュエータ装置は、例えば、液滴を噴射する液体噴射ヘッド等に搭載され、このような液体噴射ヘッドとしては、例えば、ノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが知られている。そして、インクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータ装置を搭載したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータ装置を搭載したものの2種類が実用化されている。
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。また、後者の不都合を解消すべく、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
このような圧電素子を構成する圧電材料層の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。この場合、圧電材料層を焼成する際に、圧電材料層の鉛成分が、シリコン(Si)からなる流路形成基板の表面に設けられて振動板を構成する酸化シリコン(SiO)膜に拡散してしまう。そして、この鉛成分の拡散によって酸化シリコンの融点が降下し、圧電材料層の焼成時の熱により溶融してしまうという問題がある。このような問題を解決するために、例えば、酸化シリコン膜上に振動板を構成する酸化ジルコニウム膜を設け、この酸化ジルコニウム膜上に圧電材料層を設けることで、圧電材料層から酸化シリコン膜への鉛成分の拡散を防止したものがある。(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−204849号公報(第1図、第2図、第5頁)
しかしながら、上述した構造にした圧電素子においては、酸化ジルコニウム膜乃至その上の下電極の異常成長が生じ、この異常成長部でリーク電流または先端放電が発生して、最悪の場合には圧電体層が破壊されることがあり、アクチュエータの信頼性を低下させていた。
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、他の装置に搭載されるアクチュエータ装置においても同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑み、圧電素子の耐久性及び信頼性を向上したアクチュエータ装置の製造方法及びその製造方法によって形成されたアクチュエータ装置を備えた液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
前記目的を達成する本発明の一の態様は、シリコン基板の一方面側に設けられた酸化シリコン膜及びこの上に設けられた酸化ジルコニウム層を含む振動板と、この振動板を介して、下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備するアクチュエータ装置の製造方法において、前記酸化シリコン膜の表層部を30nm〜100nmの厚さだけ除去する表層部除去処理する処理工程と、処理後の酸化シリコン膜上にジルコニウム層を設け、これを熱酸化して酸化ジルコニウム層とする酸化工程と、を備えたことを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる本発明では、酸化シリコン膜の表層部を所定の厚さだけ除去する表層部除去処理の処理工程を行うことにより、酸化シリコン膜の表層部にある微細な気泡や異物など、ジルコニウム層の異常成長部の要因となる欠陥が除去され、異常成長部のない酸化ジルコニウム層とすることができる。
ここで、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、減圧下で150℃〜500℃での加熱処理、及び逆スパッタ処理の少なくとも一方を行う処理であるのが好ましい。
かかる処理工程により、酸化シリコン膜の表層部の欠陥が除去され、異常成長部のない酸化ジルコニウム層を形成することができる。
また、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、減圧下で150℃〜500℃で加熱処理し、その後、逆スパッタ処理を行うものであるのが好ましい。
かかる減圧下での加熱処理及び逆スパッタ処理により表層部の気泡や異物が除去されて酸化シリコン膜の表層部の欠陥が除去され、異常成長部のない酸化ジルコニウム層を形成することができる。
また、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、逆スパッタ処理をし、その後、減圧下で150℃〜500℃で加熱処理し、さらに逆スパッタ処理を行うものであるのが好ましい。
かかる超音波洗浄及び逆スパッタにより特に表面の異物が除去され、また、加熱処理により水分等が除去された後、逆スパッタすることにより、酸化シリコン膜の表層部の欠陥が除去され、異常成長部のない酸化ジルコニウム層を形成することができる。
また、前記加熱処理が、スパッタ装置内での処理であるのが好ましい。
かかる加熱処理は、逆スパッタと連続的に行うことができ、効率的である。
また、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、フッ酸溶液を用いたエッチングを行うものであるのが好ましい。
かかるエッチングによって、表層部の気泡や異物が除去され、酸化シリコン膜の表層部の欠陥が除去され、異常成長部のない酸化ジルコニウム層を形成することができる。
また、前記酸化シリコン膜が、熱酸化により1000nm以上の膜厚に形成されたものであるのが好ましい。
このように酸化シリコン膜を1000nm以上の膜厚に形成し、この表層部を除去することにより、酸化シリコン膜の表層部の欠陥が除去され、異常成長部のない酸化ジルコニウム層を形成することができる。
また、前記ジルコニウム層の形成が、成膜温度が室温から100℃までの範囲で、成膜時のスパッタ圧力が0.2〜1.0Paであり、パワー密度3〜30kW/mの出力でのDCスパッタリング法によるものであるのが好ましい。
かかる条件でジルコニウム層を形成することにより、異常成長部のないジルコニウム層を比較的容易に形成することができる。
一方、本発明の他の態様は、本発明のアクチュエータ装置の製造方法によるアクチュエータ装置を具備し、その変位によって、前記基板に設けられた圧力発生室に連通するノズル開口から液滴を吐出させることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる液体噴射ヘッドは、異常成長部のない酸化ジルコニウム層を振動板の一部とした圧電素子を用いたアクチュエータ装置を具備するので、信頼性の高いものである。
本発明によれば、酸化シリコン膜に表層部除去処理を施した後、この酸化シリコン膜上に酸化ジルコニウム層を形成するようにしたので、圧電素子の耐久性及び信頼性を向上したアクチュエータ装置の製造方法及びその製造方法によって形成されたアクチュエータ装置を備えた液体噴射ヘッドを提供することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータ装置を備えたインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバ部32と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、圧力発生室12の幅方向両側の隔壁11を連通部13側に延設してインク供給路14と連通部13との間の空間を区画することで形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12の幅方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の幅方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、後述するマスク膜を介して接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの二酸化シリコン(SiO)からなる弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、250〜1500nm、本実施形態では、約400nmの酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55が形成されている。なお、詳しくは後述するが、本発明の絶縁体膜55は、所定の製造工程で成膜されたジルコニウム層を熱酸化することにより形成されて、弾性膜50との密着性が向上されている。
また、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエータ装置と称する。なお、本実施形態では、弾性膜、絶縁体膜及び下電極膜が振動板として作用するが、勿論、弾性膜及び絶縁体膜のみが振動板として作用するようにしてもよい。
そして、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
また、流路形成基板10上の圧電素子300側の面には、圧電素子300に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電素子保持部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。圧電素子300は、この圧電素子保持部31内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。さらに、保護基板30には、流路形成基板10の連通部13に対応する領域にリザーバ部32が設けられている。このリザーバ部32は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の並設方向に沿って設けられており、上述したように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
ここで、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバ部32のみをリザーバとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子保持部31とリザーバ部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33内に下電極膜60の一部及びリード電極90の先端部が露出され、これら下電極膜60及びリード電極90には、図示しないが、駆動ICから延設される接続配線の一端が接続される。
なお、保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることがより好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動ICからの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図6を参照して説明する。なお、図3〜図6は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。ここで、二酸化シリコン膜51は、所定の表層部除去処理を施すことにより、処理後二酸化シリコン膜52とした後、図3(b)に示すように、酸化ジルコニウム層からなる絶縁体膜55を形成する。この手順については図4を参照しながら詳細に説明する。
まず、図4(a)に示すように、熱酸化処理により、1000nm以上、本実施形態では、約1100nmの厚さの二酸化シリコン膜51を形成し、その後、図4(b)に示すように、表層部除去処理により30〜100nmの厚さだけ表層部を除去して処理後二酸化シリコン膜52とする。
ここで、表層部除去処理の方法は特に限定されず、二酸化シリコン膜51の表層部に含まれる気泡や異物を除去し、その上に形成されるジルコニウム層54に異常成長部を形成しないように表層部を30〜100nmの厚さで除去する処理であればよい。
具体的な表層部除去処理としては、例えば、純水を用いた超音波洗浄の後、減圧下で150℃〜500℃での加熱処理、及び逆スパッタ処理の少なくとも一方を行う処理を挙げることができる。純水を用いた超音波処理により、表面に付着した異物を除去し、また、減圧下での加熱処理により付着した水分等を完全に除去でき、さらに、所定の厚さだけ逆スパッタにより除去することにより、気泡や異物が含有される表層部を除去できるからである。
好適には、表層部除去処理として、純水を用いた超音波洗浄の後、減圧下で150℃〜500℃で加熱処理し、その後、逆スパッタ処理を行う処理を挙げることができる。
純水を用いた超音波処理により、表面に付着した異物を除去し、その後、減圧下での加熱処理により付着した水分等を完全に除去し、最後に所定の厚さだけ逆スパッタにより除去することにより、気泡や異物が含有される表層部を除去できるからである。
また、好適には、表層部除去処理が、純水を用いた超音波洗浄の後、逆スパッタ処理をし、その後、減圧下で150℃〜500℃で加熱処理し、さらに逆スパッタ処理を行う処理を挙げることができる。
純水を用いた超音波洗浄の後の逆スパッタ処理を二回に分けることにより、さらに欠陥のない膜とすることができる。なお、それぞれの逆スパッタによる処理量は合計の厚さが上述した範囲となるようにすればよいが、それぞれの処理を30nm以上とするのが逆スパッタ処理の効果を顕著にする上でさらに好ましい。
また、上述した減圧下での加熱処理は、スパッタ装置内で行えばよい。加熱処理を逆スパッタ処理と連続的に行うことができ、効率的に行うことができるからである。勿論、別の加熱処理装置で行ってもよいことはいうまでもない。
さらに、好適な表層部除去処理としては、純水を用いた超音波洗浄の後、フッ酸溶液を用いたエッチングを行う処理を挙げることができる。
次に、図4(c)に示すように、表層部除去処理を施した処理後二酸化シリコン膜52上に、ジルコニウム層54を成膜し、これを酸化して図4(d)に示すように、酸化ジルコニウム層からなる絶縁体膜55とする。
ここで、ジルコニウム層54を成膜する成膜工程は、例えば、スパッタリング法により行えばよいが、上述したとおり、処理後二酸化シリコン膜52上に成膜するので、異常成長部のないジルコニウム層54が成膜できる。また、スパッタ条件は特に限定されないが、例えば、成膜温度を室温から100℃以下とし、パワー密度が3〜30kW/mの範囲とし、スパッタ圧力は、0.2〜1Paの範囲とするのが好ましい。信頼性のあるアクチュエータ装置に適した酸化ジルコニウム層を得るために適した条件であるからである。
このように形成したジルコニウム層54を形成した後は、図4(d)に示すように、例えば、850〜1000℃に加熱した拡散炉内に、例えば、300mm/min以上、好ましくは500mm/min以上のスピードで流路形成基板用ウェハ110を挿入してジルコニウム層54を熱酸化させ、酸化ジルコニウム層からなる絶縁体膜55とする。これにより、異常成長部のない結晶状態が良好な絶縁体膜55を得ることができる。すなわち、絶縁体膜55を構成する酸化ジルコニウムの結晶に異常成長部がない結晶となり、振動板の信頼性を向上させることができる。
これにより、振動板の剥離等の発生を防止することができ、耐久性及び信頼性を向上したアクチュエータ装置及びそれを備えたインクジェット式記録ヘッドを実現することができる。
上述したように、絶縁体膜55を形成した後は、図3(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。次いで、下電極膜60及び絶縁体膜55上に、チタン(Ti)をスパッタリング法、例えば、DCスパッタリング法で種チタン層65を形成する。種チタン層65を形成することにより、後述する工程で形成される圧電体層70の結晶性を向上させることができるからである。
次いで、図3(d)に示すように、種チタン層65上に、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成している。そして、このように圧電体層70を形成すると、焼成時に圧電体層70の鉛成分が弾性膜50に拡散する虞があるが、圧電体層70の下側には酸化ジルコニウム層からなる絶縁体膜55が設けられているため、圧電体層70の鉛成分が弾性膜50に拡散することはない。なお、圧電体層70の形成方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、MOD(Metal-Organic Decomposition)法でもよく、また、スパッタリング法によってもよい。
次いで、図5(a)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域毎にパターニングして圧電素子300を形成する。次に、リード電極90を形成する。具体的には、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなる金属層91を形成する。その後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して金属層91を各圧電素子300毎にパターニングすることでリード電極90が形成される。
次に、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接合する。なお、保護基板用ウェハ130を接合することによって流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図5(d)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで薄くする。
次に、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、マスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、このマスク膜53を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチングすることにより、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、連通部13、インク供給路14、及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
(実施例)
ここで、二酸化シリコン膜51に表層部除去処理を施し、ジルコニウム層54を成膜した具体的な実施例及び比較例を示す。以下に示す実施例及び比較例から、上述したような表層部除去処理を施した処理後二酸化シリコン膜52上にジルコニウム層54を成膜することにより、異常成長部のない、信頼性の高いジルコニウム層を形成できることがわかる。
(実施例1)
シリコンウェハを熱酸化して約1100nmの二酸化シリコン膜を形成し、このウェハを、純水を用いて超音波洗浄した後、DCスパッタ装置に導入し、1×10-5Pa以下の減圧下400℃で10分間加熱処理した。その後、厚さ50nmだけ逆スパッタし、処理後二酸化シリコン膜を形成した。
この処理後二酸化シリコン膜上に、スパッタ圧力0.5Pa、パワー密度15kW/m、室温の条件で270nmのジルコニウム層を形成した。
かかるジルコニウム層の表面のSEM像を図7に示す。この表面を観察すると、異常成長部がない結晶であることが明らかとなった。
(実施例2)
熱酸化により約1100nmの二酸化シリコン膜を形成したウェハを、純水を用いて超音波洗浄した後、DCスパッタ装置に導入し、厚さ50nmだけ逆スパッタし、その後、1×10-5Pa以下の減圧下400℃で10分間加熱処理した。その後、厚さ50nmだけ逆スパッタし、処理後二酸化シリコン膜を形成した。
この処理後二酸化シリコン膜上に、実施例1と同じ条件のスパッタリング法によりジルコニウム層を形成した。
かかるジルコニウム層の表面のSEM像を図8に示す。この表面を観察すると、異常成長部がない結晶であることが明らかとなった。
(実施例3)
シリコンウェハを熱酸化して約1100nmの二酸化シリコン膜を形成し、このウェハを、純水を用いて超音波洗浄した後、DCスパッタ装置に導入し、1×10-5Pa以下の減圧下180℃で10分間加熱処理し、その後、厚さ50nmだけ逆スパッタした。続いて、1×10-5Pa以下の減圧下400℃で10分間加熱処理し、さらに、厚さ50nmだけ逆スパッタし、処理後二酸化シリコン膜を形成した。
この処理後二酸化シリコン膜上に、実施例1と同じ条件のスパッタリング法によりジルコニウム層を形成した。
かかるジルコニウム層の表面のSEM像を図9に示す。この表面を観察すると、異常成長部がない結晶であることが明らかとなった。
(実施例4)
シリコンウェハを熱酸化して約1100nmの二酸化シリコン膜を形成し、このウェハを、純水を用いて超音波洗浄した後、フッ酸(HF)溶液で洗浄し、表面を100nmエッチングし、処理後二酸化シリコン膜を形成した。
この処理後二酸化シリコン膜上に、実施例1と同じ条件のスパッタリング法によりジルコニウム層を形成した。
かかるジルコニウム層の表面のSEM像を図10に示す。この表面を観察すると、異常成長部がない結晶であることが明らかとなった。
(比較例1)
シリコンウェハを熱酸化して約1100nmの二酸化シリコン膜を形成し、この上に、実施例1と同じ条件のスパッタリング法によりジルコニウム層を形成した。
かかるジルコニウム層の表面のSEM像を図11に示す。この表面を観察すると、異常成長部である膨らみが観察された。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、弾性膜50上に絶縁体膜55を形成するようにしたが、絶縁体膜55は、弾性膜50よりも圧電体層70側に設けられていればよく、例えば、弾性膜50と絶縁体膜55との間に他の層が設けられていてもよい。この場合でも、弾性膜50の表面状態が他の層を介して絶縁体膜55に影響し、上述した効果を得ることができる。また、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを例示して本発明を説明したが、液体噴射ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。本発明は、広く液体噴射ヘッドの全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射するものにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明の製造方法は、液体噴射ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)に搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、あらゆる装置に搭載されるアクチュエータ装置に適用できることは言うまでもない。
実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 表層部除去処理及びジルコニウム層の成膜工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施例1に係るジルコニウム層の表面のSEM像を示す図である。 実施例2に係るジルコニウム層の表面のSEM像を示す図である。 実施例3に係るジルコニウム層の表面のSEM像を示す図である。 実施例4に係るジルコニウム層の表面のSEM像を示す図である。 比較例1に係るジルコニウム層の表面のSEM像を示す図である。
符号の説明
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、 32 リザーバ部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体膜、 80 上電極膜、 100 リザーバ、 300 圧電素子

Claims (9)

  1. シリコン基板の一方面側に設けられた酸化シリコン膜及びこの上に設けられた酸化ジルコニウム層を含む振動板と、この振動板を介して、下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備するアクチュエータ装置の製造方法において、
    前記酸化シリコン膜の表層部を30nm〜100nmの厚さだけ除去する表層部除去処理する処理工程と、処理後の酸化シリコン膜上にジルコニウム層を設け、これを熱酸化して酸化ジルコニウム層とする酸化工程と、
    を備えたことを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  2. 請求項1に記載のアクチュエータ装置の製造方法において、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、減圧下で150℃〜500℃での加熱処理、及び逆スパッタ処理の少なくとも一方を行う処理であることを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置の製造方法において、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、減圧下で150℃〜500℃で加熱処理し、その後、逆スパッタ処理を行うものであることを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置の製造方法において、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、逆スパッタ処理をし、その後、減圧下で150℃〜500℃で加熱処理し、さらに逆スパッタ処理を行うものであることを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  5. 請求項3又は4に記載のアクチュエータ装置の製造方法において、前記加熱処理が、スパッタ装置内での処理であることを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置の製造方法において、前記処理工程が、純水を用いた超音波洗浄の後、フッ酸溶液を用いたエッチングを行うものであることを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載のアクチュエータ装置の製造方法において、前記酸化シリコン膜が、熱酸化により1000nm以上の膜厚に形成されたものであることを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載のアクチュエータ装置の製造方法において、前記ジルコニウム層の形成が、成膜温度が室温から100℃までの範囲で、成膜時のスパッタ圧力が0.2〜1.0Paであり、パワー密度3〜30kW/mの出力でのDCスパッタリング法によるものであることを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載のアクチュエータ装置の製造方法によるアクチュエータ装置を具備し、その変位によって、前記基板に設けられた圧力発生室に連通するノズル開口から液滴を吐出させることを特徴とする液体噴射ヘッド。
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