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JP2008024306A - 駆動制御装置、及びハイブリッド車両 - Google Patents

駆動制御装置、及びハイブリッド車両 Download PDF

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JP2008024306A JP2007234461A JP2007234461A JP2008024306A JP 2008024306 A JP2008024306 A JP 2008024306A JP 2007234461 A JP2007234461 A JP 2007234461A JP 2007234461 A JP2007234461 A JP 2007234461A JP 2008024306 A JP2008024306 A JP 2008024306A
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Abstract

【課題】走行経路上の登降坂の情報を用いて、蓄電手段を効率的に利用すること。
【解決手段】図2(b)に示すように、下り区間の回生で蓄電できる蓄電量Hが、バッテリ23の通常管理幅の中央値SOCm付近から回生を開始すると上限値SOCuを越えてしまうが、通常管理幅2h0の範囲内に納まる下り区間の場合(h0<H≦2h0の場合)、当該下り区間に到達する前にバッテリ23を放電して、中央値SOCmからα(=(1/2)H)だけ低下させ、下り区間では回生により蓄電する。これにより、通常管理幅2h0の中央値SOCmからのズレ幅を最小限αに抑えることができ、蓄電手段のダメージを抑えつつ下り区間を走行する際の回生エネルギをより多く蓄電することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は駆動制御装置、及び車両に関し、例えば、蓄電手段に蓄電した電気エネルギーを用いて走行する駆動制御装置、ハイブリッド車両に関する。
ハイブリッド車両や電気自動車など、モータの駆動力を利用して走行する車両は、降坂時のエネルギーを電力の形で回生することで、走行全体での効率向上を図っている。
これは元々摩擦ブレーキやエンジンブレーキにより熱エネルギーの形で消散していたエネルギーを電気エネルギーの形で回収するものであり、極めて合理的な方法である。
ところで、このように回生エネルギーを電気エネルギーとして蓄電する場合、蓄電手段としてバッテリやキャパシタなど(以下、バッテリ)を車両に搭載する必要があり、車両の重量増大、積載場所の確保などの問題が生じる。
そのため、これらの制約条件の中で、一般的な通常走行時に消費エネルギーの効率が良くなるように設計を最適化し、バッテリの重量や貯蔵容量などを決定している。
そのため、降坂時には、このようにして決定された限られた容量の中で回生を行う必要がある。
ハイブリッド車両に関しては、バッテリの充電状態又は充電残量(以下、SOCという)は、通常は上限値と下限値の間の中央付近に保たれるように制御されており、減速や降坂時の回生に備え、また、追い越しなどの急加速時や急坂を登る際のモータ駆動による電力消費に備えている。
そして、SOCに一定の管理幅を設けているのは、大きな充電率の変化を頻繁に繰り返すことによるバッテリの劣化の進行が早まることを防止するためである。
ハイブリッド車両の場合、例えば、SOC管理幅の下限値はフル充電量の約40%、上限値は60%程度に設定されている。
このように、各種制約条件の中で決定されたバッテリの容量内で回生を行わなければならないのみならず、更にその一部であるSOC管理幅の範囲内で回生を行っている。
そして、この範囲で回生できない分のエネルギーに関してはブレーキ装置やエンジンブレーキなどで熱エネルギーとして消費され、捨てられることになる。
このようなSOC管理幅内で回生効率を高めるため、ナビゲーションシステムを用いて、先の走行を予測し、下り勾配区間(以下、下り区間)でできるだけ多くのエネルギを回生できるように、走行経路の標高変化情報を事前に得て、エンジン、モータ等の活用をスケジューリングし燃費を改善する方法が種々提案されている。
このような提案の1つとして、例えば、次の特許文献1では、バッテリを効率よく利用するため、経路における登降坂の情報に基づいてバッテリの放電量に着目して制御する技術が開示されている。
特開2001−169408
しかしながら、上記特許文献記載の技術では、効率的にバッテリを制御しても、バッテリ充電量は上記上限値と下限値の間で制御されるため、バッテリ本来の性能(満充電できる許容充電量)を充分に利用しきれていなかった。
そこで、本願発明では、蓄電手段のダメージを抑えつつ下り区間を走行する際の回生エネルギをより多く蓄電することを可能にすることを目的とする。
(1)請求項1記載の駆動制御装置では、駆動力の一部又は全部が発電に使用されるエンジンと、車両の駆動力を発生させるモータとを備え、前記エンジンとモータの少なくとも一方の駆動力により走行するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、前記モータに電力を供給すると共に、回生エネルギによる蓄電が行われる蓄電手段と、通常走行時に前記蓄電手段の蓄電量を通常走行管理幅内となるように前記蓄電手段の蓄放電を制御する蓄放電制御手段と、走行経路上に存在する所定標高差の下り区間を特定する区間特定手段と、前記特定した下り区間を走行する際に蓄電可能な蓄電量を見積もる見積もり手段と、を具備し、前記蓄放電制御手段は、前記見積もった蓄電量が、前記通常走行管理幅の半分より大きく前記通常走行管理幅以である場合、車両が前記見積もった下り区間に到達する前に、前記蓄電手段の蓄電量を前記通常走行管理幅の中央値よりも前記見積もった蓄電量の1/2だけ低下させ、前記下り区間における回生エネルギーを蓄電する、ことにより前記目的を達成する。
(2)請求項2記載の発明では、前記蓄放電手段は、車両が前記下り区間を走行した後、前記蓄電手段の蓄電量が前記通常走行管理幅の中央値付近の値になるように制御する、ことを特徴とする駆動制御装置を提供する。
(3)請求項3記載の発明では、前記エンジンは、駆動力の一部又は全部が車両の駆動又は発電に使用され、前記走行経路に対して、前記下り区間での回生エネルギによる蓄電量が最大になるように、前記エンジンと前記モータの運転スケジュールを設定する運転スケジュール設定手段を具備し、前記設定した運転スケジュールを用いて前記エンジンと前記モータを制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駆動制御装置を提供する。
(4)請求項4記載の発明では、請求項1から請求項3までのうちの何れか1の請求項に記載の駆動制御装置によって駆動系を制御することを特徴とするハイブリッド車両を提供する。
本発明によると、走行経路上に存在する所定標高差の下り区間を走行する際に蓄電可能な蓄電量を見積もり、該見積もった蓄電量が、通常走行管理幅の半分より大きく通常走行管理幅以である場合、車両が下り区間に到達する前に、蓄電手段の蓄電量を通常走行管理幅の中央値よりも見積もった蓄電量の1/2だけ低下させ、下り区間における回生エネルギーを蓄電することにより、通常走行管理幅の中央値からのズレ幅を最小限に抑えることができるので、蓄電手段のダメージを抑えつつ下り区間を走行する際の回生エネルギをより多く蓄電することができる。
1.実施形態の概要
本実施形態では、バッテリを効率的に利用すべく、経路上の登降坂の情報に応じてSOC管理幅自体を制御するものである。SOC管理幅を拡大することによって、登降坂を含む経路を走行中にSOCが通常走行時のSOC管理幅を超える値となるとしても、登降坂の情報によってSOCが通常のSOC管理幅を超える頻度が予測できるため、バッテリの耐久性に支障のない範囲で、SOC管理幅拡大を実行することができる。
2.第1実施形態の概要
この第1実施形態では、山越えを行うときなど、経路上に大きな回生エネルギーを回収できる下り区間(標高差が閾値以上の下り区間)がある場合、一時的にSOC管理幅を拡大し、この拡大した管理幅内で回生エネルギーを回収する。
また、このSOC管理幅の拡大と、ナビ制御(走行する経路の状態や走行状態に基づいて、燃料効率が向上するようにエンジンとモータの駆動分担を決定する制御)とを組み合わせることにより、経路の先に標高差の大きな下り区間があることを予め予測し、下り区間走行前にSOC管理幅を広げ、更にモータを駆動してエンジンを補助し、管理幅の下限値付近までSOCを低下させておく。
SOCを予め低下させておくことにより、回生で蓄電できるエネルギーを増やすことができる。
また、本実施形態では、バッテリ劣化低減の観点から、SOC管理幅の拡大に制限回数を設けており、SOC管理幅の拡大回数を計数して拡大回数が制限値に達した場合は、以降SOC管理幅の拡大を行わず、バッテリの保護を図る。
一般の運転者にとって、大きな標高差の経路を走る機会は特殊な人を除いて少ないことを考えると、走行経路に、予め設定した閾値よりも大きい標高差の下り区間があるときは、そのときに限ってSOCの管理幅を拡大するのは、バッテリに大きなダメージを与えることなく、より多くの回生エネルギを回収するために極めて有効である。
本実施形態では、車両の一例としてハイブリッド車両を用いて説明する。
これらハイブリッド車両としては、乗用車、バス、トラック、軌道上を走行する軌道車両などがある。
また、本実施形態はハイブリッド車両に限らず、電気自動車、燃料電池自動車などのバッテリ(蓄電手段)に蓄電された電力で駆動される車両に適用することができる。
3.第1実施形態の詳細
図1は本発明の実施形態における駆動制御装置、及び車両が適用されるハイブリッド車両の駆動制御システム10の構成を示す概念図である。
駆動制御システム10は、車両の動力を発生する駆動装置20、発生した動力を伝達する駆動力伝達装置25、及び経路探索や現在位置の取得や経路の解析などのナビゲーション関係の情報処理を行うナビゲーション部11を備えている。
駆動装置20は、メイン制御装置26、エンジン21、発電機22、バッテリ23、モータ24を備えている。
エンジン21は、ガソリン、軽油等の燃料によって駆動される内燃機関によるエンジンであり、図示しないECU等のエンジン制御装置を備え、車両の動力源として使用される。
エンジン21の駆動力は、図示しない変速機(多段変速機又は無段変速機)、駆動軸、駆動輪等を備える駆動力伝達装置25に伝達される。そして、伝達された駆動力により駆動輪が回転し、車両が駆動される。エンジン21は、駆動力の一部又は全部が車両の駆動又は発電に使用される。
なお、駆動力伝達装置25にはドラムブレーキ、ディスクブレーキ等の制動装置を配設することもできる。
モータ24は、例えば、交流モータ、DCブラシレスモータなどのモータ装置により構成され、エンジン21と共に車両の動力源として利用される。モータ24が発生した駆動力は、駆動力伝達装置25を介して伝達される。
また、モータ24は交流モータであることが望ましく、この場合、図示しないインバータを備える。
なお、本実施形態では、後述するように発電機22を用いて回生を行うように構成されているが、モータ24で回生することも可能である。この場合、モータ24は、発電装置として作用し、バッテリ23を充電する。
バッテリ23は、モータ24を駆動するための電気エネルギーを蓄える蓄電手段であり、充電と放電を繰り返すことができる2次電池などにより構成されている。
バッテリ23には、蓄電量(以下、SOC)を検出するためのSOCセンサ(蓄電量検出手段)が取り付けられており、メイン制御装置26がバッテリ23のSOCを監視できるようになっている。
バッテリ23としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの2次電池が一般的であるが、電気自動車等に使用される高性能鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池などを用いることもできる。
なお、蓄電手段としては、必ずしもバッテリ23でなくてもよく、電気二重層コンデンサのようなコンデンサ(キャパシタ)、フライホイール、超伝導コイル、蓄圧器等のように、エネルギーを電気的に蓄積し放電する機能を有するものを使用することができる。
更に、これらの中の何れかを単独で使用してもよいし、複数のものを組み合わせて使用してもよい。例えば、バッテリ23と電気二重層コンデンサとを組み合わせて、蓄電手段として使用することもできる。
発電機22は、力学的なエネルギーを電気エネルギーに変換することにより電力を発生する装置であり、発生した電力によりバッテリ23を充電する。
発電機22は、交流発電機であることが望ましく、この場合、図示しないインバータを備える。
発電機22は、エンジン21の駆動力を用いて発電を行うことかできるほか、車両制動時に駆動力伝達装置25から車両の運動エネルギーを取得して電気エネルギーを発生する回生により電力を発生することができる。
このように、駆動制御システム10では、従来の内燃機関による車両であれば、車両制動時にブレーキ装置にて摩擦熱として消散してしまう運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができるため、燃費を向上させることができる。
なお、本実施形態では、発電機22とモータ24を別物として構成したが、発電機22とモータ24を一体的に構成することも可能である。
この場合、モータ24は、バッテリ23から電力が供給されるときは駆動力を発生して動力源として機能し、車両の制動時等のように駆動力伝達装置25によって回転させられるときは回生電流を発生する発電機22として機能する。
また、発電機22はエンジン21の駆動力による発電を行い、車両の減速運転時における回生エネルギーによる電力の発生をモータ24で行うようにしてもよい。
また、エンジン21の駆動力の一部を駆動用に出力し、駆動力の残りで発電機22の駆動に使用して発電する場合、例えば、プラネタリギヤを使用し、エンジン21、発電機22、モータ24の各軸を連結することで実現される。
メイン制御装置26は、図示しないCPU、MPU等の演算手段、半導体メモリ、磁気ディスク等の記憶手段、ナビゲーション部11との通信インターフェース等を備える一種のコンピュータであり、エンジン21、エンジン制御装置、モータ24、発電機22及びインバータの動作を制御する。
メイン制御装置26は、車両の走行状況によってエンジン21とモータ24との使用割合を制御することができ、エンジン21の効率の高い領域では主にエンジン21により動力を発生させ、エンジン21の効率の低い領域では、主にモータ24で駆動力を発生させる。
このように、エンジン21とモータ24を相補的に動作させることにより燃費を向上させることができる。
このような制御は、記憶手段で記憶している所定の制御プログラムを演算手段で実行することにより実現することができる。
メイン制御装置26は、SOCセンサによりバッテリ23の蓄電状態(以下、SOC)を監視しており、バッテリ23の劣化を抑制するために、バッテリ23のSOCをSOC管理幅の中央付近に保たれるように蓄放電を制御する。
ここでSOC(充電率)は、蓄電手段の蓄電能力に対する蓄電量の割合を表したものであり、一般的にハイブリッド車両用の2次電池では、SOC管理幅の下限値は40%程度、上限値は60%程度に設定されている。
このように、メイン制御装置26は、蓄電手段の蓄放電を制御する蓄放電制御手段としての機能を有している。
また、メイン制御装置26は、ナビゲーション部11が提供するナビ情報(後述)を用いて、先の経路状況を見越したナビ制御も行う。
ナビ制御は、例えば、これから走行する経路の状態や走行状態を予測し、SOC管理幅の範囲内で燃料効率が最大となるようにエンジン21とモータ24の運転スケジュールを設定し、これに基づいて駆動装置20を制御したり、あるいは、先に下り区間がある場合、下り区間に到達する前にSOCを低下させて回生による蓄電量を増やしたりなどする。
また、本実施形態の駆動制御システム10は、これから走行する経路に所定の条件(本実施形態では、一例として、所定量以上の標高差とする)を満たす下り坂区間がある場合に、SOC管理幅を拡大してこの区間を走行し、この区間での回生量を増やす制御も行う。このように、メイン制御装置26は、所定の下り区間を特定する区間特定手段としての機能を有している。
以後、ナビ制御を用いないでSOCを管理する制御を従来制御と呼び、ナビ制御を行うものの、SOC管理幅の拡大を行わない制御を通常ナビ制御と呼び、ナビ制御を行い、更にSOC管理幅を拡大して回生を行う制御を拡大ナビ制御と呼ぶことにする。
また、通常ナビ制御と拡大ナビ制御を特に区別しない場合は単にナビ制御と呼ぶことにする。
このように、本実施形態では、先の走行を予測し、下り勾配でできるだけ多く回生できるように、走行経路の標高変化情報をナビゲーション部11から事前に得て、エンジン21、モータ24、及びバッテリ23のSOC管理幅をスケジューリングし燃費を改善することができる。
ナビゲーション部11には、ナビゲーションデータベース12、走行データ取得部13、走行環境データ取得部14、走行データ記憶部15などの各機能部が接続されている。
ナビゲーション部11は、これらの機能部を利用することにより、運転者に目的地までの経路を案内するナビゲーションサービスを提供するほか、メイン制御装置26が、ナビ制御により、エンジン21とモータ24の運転スケジュールを行ったり、SOCの管理幅を設定するのに用いるナビ情報を提供する。
ナビゲーションデータベース12は、地図データ、音声データ、道路データ、探索データなど、運転者にナビゲーションサービスを提供したり、ナビゲーション部11にナビ情報を提供するための各種情報を格納している。
ナビゲーションデータベース12の有するデータは、半導体メモリ、磁気ディスク等の記憶手段に格納されている。
より詳細には、この記憶手段は、磁気テープ、磁気ディスク、磁気ドラム、フラッシュメモリ、CD−ROM、MD、DVD−ROM、光ディスク、MO、ICカード、光カード、メモリカード等、あらゆる形態の記憶媒体を含むものであり、取り外し可能な外部記憶媒体を使用することもできる。
地図データは、緯度経度で規定される座標を用いて、ナビゲーションサービスの対象となる地域に存在する対象の分布を表した地図情報であり、道路の配置、道路案内上のポイントとなる各地点の写真画像、施設や建造物の所在地や形状、及び地形や河川などの地勢に関する情報、その他の情報を含んでいる。
地図上の道路は、各地点の緯度経度が特定されると共に、道路データ、探索データと対応付けられている。
地図データは、道路やそのほかの対象の緯度経度を特定するのに用いるほか、ナビゲーション部11が備える表示部に探索された経路に沿って案内図を表示したり、交差点又は経路における特徴的な写真、コマ図等を表示したり、次の交差点までの距離、次の交差点における進行方向等を表示したり、他の案内情報を表示するのに用いられる。
音声データは、道路案内や、ユーザに対する問いかけ(目的地の名前は何かなど)を行うためのデータであり、音声出力部によって再生出力される。
道路データは、地図データ上のそれぞれの道路に関する情報を、各道路を識別するための道路識別情報と共に格納している。
道路に関する情報としては、例えば、道路種別(国道、県道、主要地方道、一般道、高速道路等の行政道路属性)、道路の長さ、走行に要する時間、幅員、勾配、カント、標高、バンク、路面の状態、中央分離帯の有無、車線数、該車線数の減少する地点、幅員の狭くなる地点などがある。
本実施形態では、道路データに含まれる標高(メッシュ標高データと呼ばれることもある)を用いて経路上の標高差を取得することができる。
そして、経路上に標高差が所定の閾値を超える区間があった場合、この区間での回生エネルギーを回収するためにSOCの管理幅を拡大することができる。
探索データには、運転者が目的地を指定した場合に、出発地から目的地までの経路探索を行うための情報が含まれている。
例えば、探索データに含まれる交差点データには、データが格納されている交差点の数に加え、それぞれの交差点に関するデータが交差点データとして、識別するための交差点識別情報が付与されて格納されている。
走行データ取得部13は、車両が始動してから停止するまでの間、即ち、駆動装置20が始動してから停止するまでの間、所定間隔で車両の現在位置、走行速度などの走行データを取得する。
ここで、所定間隔は、所定時間間隔(例えば、100[msec]、1[sec]等の所定時間毎)、又は、所定距離間隔(例えば、100[m]、500[m]等の所定距離毎)とすることができる。
走行データ取得部13は、GPS(Global Positioning system)センサを備えている。走行データ取得部13は、このGPSセンサでGPS衛生からのGPS情報を受信して解析することにより現在位置(緯度と経度)を算出することができる。
このほかに走行データ取得部13は、車両の向いている方位を検出する方位センサ、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、運転者が操作するブレーキペダルの動きを検出するブレーキスイッチ、運転者が操作するステアリングの舵角を検出するステアリングセンサ、運転者が操作するウィンカスイッチの動きを検出するウィンカセンサ、運転者が操作する変速機のシフトレバーの動きを検出するシフトレバーセンサ、車両の走行速度、即ち、車速を検出する車速センサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、車両の向いている方位の変化を示すヨーレイトを検出するヨーレイトセンサなどを備えている。
走行データ取得部13は、これらのセンサから得られる情報、即ち走行データをナビゲーション部11に提供する。
走行環境データ取得部14は、時刻、日付、曜日、車両が出発した日時、天気、気象情報、渋滞情報、交通規制情報、道路工事情報、イベント情報など、車両走行時における車両周辺の走行環境に関する情報を取得してナビゲーション部11に提供する。
走行環境データ取得部14は、時計、カレンダーなどを備えており、これによって現在の時刻、日付、曜日、車両が出発した日時等の日時情報を取得する。
また、走行環境データ取得部14は、例えば、VICS(R)(Vehicle Information & Communication System)と称される道路交通情報通信システムを利用して、警察、日本道路公団等の交通管制システムの情報を収集して作成した道路の渋滞等に関する情報、交通規制情報、道路工事等に関する工事情報等の道路交通情報を取得する。
更に、走行環境データ取得部14は、祭り、パレード、花火大会等のイベントの開催予定場所、予定日時等のイベント情報、例えば、駅周辺や大型商業施設周辺の道路には週末を除く毎日の特定時刻に渋滞が発生するとか、海水浴場周辺の道路には夏期休暇時期に渋滞が発生する等の統計的渋滞情報、気象庁が作成する天気予報等の気象情報なども取得する。
加えて、走行環境データ取得部14は、ワイパー、ヘッドライト、エアコン、デフロスタなどの車両搭載機器の作動状況のデータ、及び、雨滴センサ、気温センサ等の車両搭載センサのセンシングデータを取得する。車両搭載機器の作動状況のデータ及びセンシングデータは、走行パターン予測部11において、そのときの天候を推定するために利用することができる。
走行データ記憶部15は、走行データ取得部13で取得した走行データと、走行環境データ取得部14で取得した走行環境データを記憶する記憶手段である。
この場合、車両の1回の走行における走行データと走行環境データとは、相互に対応付けられて記憶される。
即ち、走行データにより走行状態の推移を把握することができ、その走行を行ったときの走行環境は走行環境データから把握することができる。
これらのデータは、ナビゲーション部11が解析して、例えば、運転者が日常よく利用する経路を推測するほか、頻発経路における気象状況や曜日、走行時間帯などによる走行データの差異を分析するのに利用することができる。
ナビゲーション部11は、図示しないCPU、MPU等の演算手段、半導体メモリ(ROM、RAM等)、磁気ディスク等の記憶手段、通信インターフェース等を備える一種のコンピュータである。
ナビゲーション部11は、ナビゲーションデータベース12、及び走行データ記憶部15に格納されているデータ、及び、走行データ取得部13、走行環境データ取得部14から取得する情報を用いて、各種の情報処理を行う。
また、ナビゲーション部11は、走行の際に、走行データ取得部13、走行環境データ取得部14から得られる走行データ、及び走行環境データを走行データ記憶部15に格納する。
ナビゲーション部11は、ユーザインターフェースとして、操作キー、押しボタン、ジョグダイヤル、十字キー、リモートコントローラ等を備える入力部、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フロントガラスのホログラムを投影するホログラム装置等を備える表示部、マイクロホン等によって構成される音声入力部、音声合成装置、スピーカ等を備える音声出力部を備えるほか、FM送信装置、電話回線網、インターネット、携帯電話網等との間で各種データの送受信を行う通信部を備えている。
ナビゲーション部11が行う情報処理には、運転者に対するナビゲーションサービスの提供、メイン制御装置26がナビ制御を行うのに用いるナビ情報の生成、及び提供などがある。
ナビゲーションサービスの提供は、ユーザインターフェースを用いて現在地から目的地までの経路探索を行って運転者に提示し、現在位置を取得しながら運転者を目的地まで誘導する処理である。
目的地は、運転者に入力してもらってもよいし、あるいは、運転者の過去の運転パターンから予測するなどして自動的に設定してもよい。
ナビ情報は、メイン制御装置26がエンジン21やモータ24の運転スケジュールを設定するのに使用する情報であって、ナビゲーション部11は、これらか走行する経路の予測を行い(運転者が入力したり、あるいは、運転者の過去の運転パターンから予測したりなどする)、ナビゲーションデータベース12や走行データ記憶部15に格納されている情報などを用いて生成してメイン制御装置26に提供する。
ナビ情報としては各種のものが考えられるが、本実施形態では、これから走行すると予測される経路の標高の推移、標高差などが含まれている。
また、メイン制御装置26が、運転スケジュールを実行するに際して、現在の走行位置を知る必要がある場合、ナビゲーション部11は、メイン制御装置26に走行データ取得部13から取得した現在の走行位置をメイン制御装置26に提供する。
次に、図2を用いてメイン制御装置26が行う各制御(従来制御、通常ナビ制御、拡大ナビ制御)について説明する。
メイン制御装置26は、ナビ情報から下り区間の標高差Hを取得し、その値によって何れの制御を行うか判断するものである。
これら各図は、各制御において走行に伴うSOCの推移を表した図であり、紙面に向かって垂直上方向をSOCの増加する方向とし、水平右方向を走行方向としている。
図中の下限値SOCb、及び上限値SOCuは、SOCの通常の幅(以下、通常管理幅)で管理する場合の下限値と上限値を表し、本実施形態では、一例として満充電の状態を100%とし、下限値SOCbを40%、上限値SOCuを60%とする。
中央値SOCmは、SOC管理幅の中央を表し、本実施形態では、50%である。
拡大下限値SOCEb、拡大上限値SOCEuは、SOC管理幅を拡大した場合(以下、拡大管理幅)の下限値、及び上限値を表し、本実施形態では、一例として、これらの値を20%、及び80%とする。
また、通常管理幅の半分のSOC増加に相当する標高差、即ち、下り坂での回生エネルギー量がSOC管理幅の半分に相当する標高差を基準標高差h0とし、回生エネルギー量が拡大管理幅に相当する標高差を最大標高差Hmaxとする。
後述するように、最大標高差Hmaxは、SOC管理幅に拡大管理幅を適用するか否かを判断する際の閾値として使用される。
以下に、下り区間の標高差Hに応じた各制御について説明する。なお、これらは、メイン制御装置26がナビゲーション部11から取得したナビ情報により、車両の現在地よりも先にある下り区間の標高差Hを予測して行うものである。
(1)H≦h0の場合(回生タイプ1−従来制御)
この場合は、特にSOCの制御は行わずに従来制御を行い下り坂で回生される電気エネルギーをバッテリ23に蓄電する。但し、下り坂開始時までに、SOCがSOCmを上回ることが予想されるならば、モータ走行としてSOCmになるようにしておくことが望ましい。
これは、通常の運転においてメイン制御装置26はSOCを中央値SOCm付近の値になるように制御しているので、標高差Hが基準標高差h0以下であるならば、回生後のSOCが上限値SOCuを越える可能性が低いためである。
即ち、標高差が基準標高差h0以内である場合、回生によるSOCの上昇量が通常管理幅の半分以下であるので、中央値SOCm付近から充電を開始した場合、充電後のSOCがSOCuを越える可能性は低いためである。
図2(a)は、回生タイプ1の場合のSOCの変化を示した図である。
メイン制御装置26は、下り区間30に到達するまで、SOCが中央値SOCm付近に保たれるようにモータ24を駆動し、SOCを制御する。
メイン制御装置26は、車両が下り区間30を走行する際に回生を行い、矢線31に示したように下り区間30の始点から終点にかけてSOCが増加する。矢線31の始点は中央値SOCm付近となり、終点はSOCu以下となる。
このように、回生を行うことにより、ブレーキなどで熱エネルギーとして消散してしまうエネルギーをバッテリ23に電気エネルギーとして蓄えることができる。
なお、車両が下り区間30を走行した後、メイン制御装置26はモータ24を駆動してエンジン21を補助し、SOCが再び中央値SOCm付近の値になるように制御する。これにより、車両の燃費を向上させることができる。
(2)h0<H≦2h0の場合(回生タイプ2−通常ナビ制御)
これは、中央値SOCm付近から回生を開始した場合、回生後のSOCが上限値SOCuを越えてしまうが、回生で蓄電できる蓄電量が通常管理幅の範囲内に納まる場合である。
この場合は、下り区間に到達する前にバッテリ23を放電してモータ24を駆動し、SOCを通常管理幅内で低下させた後、後下り区間の回生エネルギーで蓄電する。この制御は、従来のナビ制御に相当する。
図2(b)は、回生タイプ2の場合のSOCの変化を示した図である。
メイン制御装置26は、車両が下り区間33に到達する前にモータ24を駆動してエンジン21を補助し、矢線34aに示したように、SOCを中央値SOCmより低下させる。低下させる量は、回生後のSOCが上限値SOCuを超えない範囲とすることができる。
次に、メイン制御装置26は、車両が下り区間33を走行する際に回生を行って回生エネルギーでバッテリ23に蓄電する。その結果、矢線34bに示したように、下り区間走行中にSOCは増加する。
車両が下り区間30を走行した後、メイン制御装置26はモータ24を駆動してエンジン21を補助し、SOCが再び中央値SOCm付近の値になるように制御する。
このように、下り区間33に到達する前に、下り区間33での回生で行われる蓄電量を予め見込んで、その分のSOCを低下させておくことにより、従来制御を行う場合よりも多くの回生エネルギーを回収することができる。
なお、従来制御では、中央値SOCm付近から充電を開始し、上限値SOCuを越える分のエネルギーは捨てることになる。
なお、図2(b)は、h0<H≦2h0となるHのうち、H=2h0の場合に該当し、SOCが上限値SOCuまで増加しているが、標高差Hが2h0よりも小さい場合は、中央値SOCmと上限値SOCuの間の値となる。
また、本実施形態では、下り区間33到達時のSOCの値、即ち、SOC低減制御の目標となる値をSOCm−αとした。低下量を後述するように下り標高差に応じて定量化させることにより、SOCmからのズレ幅を最小限に抑えることができ、バッテリの耐久性低下を防止することができる。
ここで、αは、矢線34bの始点がSOCm−αとなり、終点がSOCm+αとなるような値であり、下り区間33で回収される回生エネルギーを予め見積もることにより計算することができる。計算方法については後述する。
このようにαを設定すると、SOCの変化する範囲の中心が中央値SOCm付近となり、バッテリ23の蓄電量が何れか一方(フル放電とフル充電)に偏らず、バッテリ23の劣化を低減することができる。
なお、SOC低減制御の目標値は、これに限定するものではなく、例えば、低減値SOCbやそのほかの値に設定することもできる。
(3)2h0<H<Hmaxの場合(回生タイプ3−拡大ナビ制御)
この場合は、下り区間での回生エネルギー量が通常管理幅では収まらないが、拡大管理幅内には収まる場合である。
この場合は、SOCEbを下限値、SOCEuを上限値としてこの範囲で管理幅を拡大する。拡大幅の決定方法としては、標高差Hに相当するSOC増分を2αとして下限値をSOCm−α、上限値をSOCm+αに拡大する。この制御は拡大ナビ制御に相当する制御である。
図2(c)は、回生タイプ3の場合のSOCの変化を示した図である。メイン制御装置26は、下り区間36で回収できる回生エネルギー量2αを見積り、車両が下り区間36に到達する前に、モータ24を駆動してエンジン21を補助し、矢線37aに示したようにSOCをSOCm−αまで低下させる。次に、メイン制御装置26は、車両が下り区間36を走行する際に回生を行って回生エネルギーでバッテリ23に蓄電する。
その結果、下り区間36の終点では矢線37bで示すようにSOCはSOCm+αに達する。即ち、SOC管理幅はSOCb以上SOCu以下の範囲から、SOCm−α以上SOCm+α以下の範囲へと拡大されることになる。その結果、下り区間36での回生エネルギーを最大限有効に活用できることとなる。
なお、車両が下り区間36を走行した後、メイン制御装置26はモータ24を駆動してエンジン21を補助し、SOCが再び中央値SOCm付近の値になるように制御する。
(4)Hmax≦Hの場合(回生タイプ4−拡大ナビ制御)
この場合は、下り区間での回生エネルギー量が拡大管理幅で回収できる量よりも大きい場合である。
この場合は、メイン制御装置26は、SOC管理幅を拡大管理幅に設定したうえ、モータ24を駆動して、下り区間に到達する前にSOCを拡大下限値SOCEbまで低下させる。そして、下り区間で回生エネルギーで蓄電してSOCを上昇させ、拡大上限値SOCEuを越える分については回生を行わない。
この制御は、拡大ナビ制御の最大限度の場合である。
図2(d)は、回生タイプ4の場合のSOCの変化を示した図である。
メイン制御装置26は、SOC管理幅を拡大管理幅に設定する。
そして、車両が下り区間38に到達する前にモータ24を駆動してエンジン21を補助し、矢線39aに示したように、SOCを拡大下限値SOCEbまで低下させる。
次に、メイン制御装置26は、車両が下り区間38を走行する際に回生を行って回生エネルギーでバッテリ23に蓄電する。その結果、矢線39bに示したようにSOCは拡大上限値SOCEuまで上昇する。
SOCが拡大上限値SOCEuに達した後、下り区間38の残りの区間での回生は行わない。
なお、車両が下り区間38を走行した後、メイン制御装置26はモータ24を駆動してエンジン21を補助し、SOCが再び中央値SOCm付近の値になるように制御する。そして、メイン制御装置26は、SOC管理幅を速やかに通常管理幅に復帰させる。
このように、SOCの管理幅を一時的に拡大し、その範囲で回生エネルギーを回収することにより、従来ナビ制御を行った場合よりも多くの回生エネルギーを回収することができる。そのため、燃料の消費量を低減し、燃費を向上させることができる。
以上、説明したように、下り区間の標高差Hの大きさにより、タイプ1〜4までの回生方法があり、タイプ1〜2は、SOCの管理幅として通常管理幅を適用し、タイプ3〜4の場合は拡大管理幅を適用している。
そして、タイプ4の回生方法が適用されるのは、Hmax≦Hの場合であり、このため、最大標高差Hmaxは拡大管理幅を適用するための閾値となっている。
このように、標高差Hに閾値を設定することにより拡大管理幅を適用する区間を限定することができ、SOCの管理幅を拡大する頻度を少なくし、管理幅拡大によるバッテリ23の劣化を低減することができる。
これによって、普段は都会の平地で車両を利用し、年に数回程度旅行で標高の高い山を越えるような場合に限ってSOC管理幅を拡大するといった制御方法が可能となる。
なお、本実施形態では、後述するように、メイン制御装置26は、SOCの管理幅を拡大した回数を計数し、拡大回数が予め設定した制限回数に達した後は、標高差Hが最大値Hmax以上となる場合もSOC管理幅の拡大は行わず、バッテリ23を保護する。
図3は、駆動制御システム10が行うSOC管理幅の制御手順を説明するためのフローチャートである。
なお、本実施形態では、車両の走行が初走行の場合(より詳細には、バッテリ23を初めて使用する場合)に拡張カウンタNをN=0と初期化して、以後SOC管理幅を拡張した回数を加算し、予め設定した制限回数Nmaxになったなら以後のSOC管理幅拡張を止め、バッテリの劣化を防止する。バッテリ23を新規のものに交換した場合も、拡張カウンタNを0にリセットする。
また、このようなバッテリ23の過負荷は一般的に繰り返しの期間が長ければ軽減されることもあるので、カウンタを加算する際にその影響を考慮することも可能である。
本実施形態では、処理を簡略化するために繰り返し期間にかかわらず、拡張回数を加算することとするが、例えば、以前の拡張時からの経過時間Tが所定の時間(又は期間)Td以上経過していた場合は加算時に1より小さな加算数nを加算するなど、繰り返し期間を考慮した加算も可能である。同様の効果は、以前の拡張時からの経過時間Tが所定の時間Td以上経過していた場合に、加算数nを1より小さな値にするかわりに制限回数Nmaxの値を増加することでも達成できる。
制限回数Nmax、加算数nの具体的な数値はバッテリ23やハイブリッドシステムの試験データなどに基づいて設定される。
まず、ナビゲーション部11がナビゲーションデータベース12から経路情報の読み込みとメッシュ標高データの読み込みを行って解析する。解析結果は、ナビ情報としてメイン制御装置26に送られる(ステップ5)。
経路の設定方法は種々考えられるが、例えば、ナビゲーション部11が提供するナビゲーション処理で運転者が目的地を入力し、経路の探索・選択を行うことにより行うことができる。
又は、経路設定がない場合でも、ナビゲーション部11で現在地点と走っている方向から経路を予測することもできる。
即ち、ナビゲーション処理のマップマッチング機能により現在走行中の道路を特定し、その道路の進行方向前方の道路をナビゲーションデータベース12を用いて調べる。
なお、拡大管理幅を適用するような標高差の大きな走行経路は選択肢が限られる。
次に、メイン制御装置26は、今回の走行がバッテリ23を使用する初めての走行か判断する(ステップ10)。
初めての走行の場合は(ステップ10;Y)、拡張カウンタNを0に設定する(ステップ15)。
初めての走行でない場合(ステップ10;N)、又はステップ15で拡張カウンタを0に設定した場合、メイン制御装置26はナビゲーション部11から取得したナビ情報を用いて経路上の地点の各標高差を推測して下り区間を特定し、その下り区間の標高差Hを取得する(ステップ20)。
次に、メイン制御装置26は、下り区間の標高差Hが、SOCの通常管理幅に相当する2h0以下であるか否かを判断する(ステップ25)。
標高差Hが通常管理幅相当2h0以下である場合(ステップ25;Y)、メイン制御装置26は、更に標高差Hが基準標高差h0以下であるか否かを判断する(ステップ45)。
標高差Hが基準標高差h0以下である場合は(ステップ45;Y)、SOC管理幅を通常管理幅のまま、回生タイプ1(図2(a))の従来制御を行いながら下り区間を走行する(ステップ55)。
このように、ステップ45でH≦h0となる場合は、回生タイプ1に対応する。
標高差Hが基準標高差h0より大きい場合、即ちh0<H≦2h0である場合は(ステップ45;N)、メイン制御装置26は、下り区間の始点に達する前に、所定のSOCとなるようにバッテリ23のSOCを制御する。この場合は、回生タイプ2に相当する通常ナビ制御が行われ(ステップ50)、下り区間を回生タイプ2にて走行する(ステップ55)。
この場合、所定のSOCとして、SOC−αや下限値SOCbとすることができる。
また、回生タイプ2でSOCの低減目標値をSOCm−αとし、基準標高差h0に相当するSOCが10%とした場合(即ち上限値SOCuと中央値SOCmの差が10%)、αは10×H/(2h0)となる。なお、αは標高差HをSOCの%に換算した値を意味する。
下り区間に到達する前に、SOCをこのように制御すると、下り区間通過後のSOCはSOCm+αとなる。
一方、ステップ25において、標高差Hが2h0より大きい場合(ステップ25;N)、メイン制御装置26は、拡張カウンタNに1を加え(ステップ30)、更に制限回数Nmax以下であるか否かを判断する(ステップ35)。
このように、メイン制御装置26は、管理幅を拡大した回数を計数する回数計数手段としての機能を有している。
拡張カウンタNが制限回数Nmaxより大きい場合(ステップ35;N)、既に制限回数で設定した回数だけSOCの管理幅を拡張したため、バッテリ23の劣化を防止するために管理幅の拡張処理は行わずに下り区間を、回生タイプ2の通常ナビ制御により(ステップ50)、走行する(ステップ55)。
拡張カウンタNが制限回数Nmax以下である場合(ステップ35;Y)、さらに標高差Hが最大標高差Hmax以下である場合(ステップ37;Y)には、下り区間に到達する前にSOC管理幅を拡張した管理幅に設定し、下り区間到達時にSOCが目標値SOCm−αとなるようにSOCを制御する(ステップ38)。この場合は、回生タイプ3に相当する。
すなわち、2h0≦H<Hmaxの場合(ステップ37;Y)、メイン制御装置26は、SOCの管理幅を拡大管理幅とし、下り区間に到達する前に、下り区間での回生に備えてSOCの値を低めに誘導する。
このとき目標値SOCm−αの設定に際しては、下り区間での回生エネルギーにより蓄電可能な蓄電量を予め見積もり、これに対応してSOCの最低値と最大値が、通常管理幅から蓄電側、及び放電側に等量分だけ拡大するようにこの誘導する目標値を設定する。
即ち、回生タイプ2と同様に、下り区間の始点到達時(回生開始時)でのSOCがSOCm−αであり、下り区間の終点到達時(回生完了時)でのSOCがSOCm+αとなるようなαを標高差Hを用いて算出し、SOCm−αを目標値とする。この際のSOCの変化を図2(c)の矢線37aにより示している。
メイン制御装置26は、SOCm−αを目標値として設定し、車両が下り区間に到達する前にSOCがSOCm−αとなるようにモータ24を駆動してバッテリ23に蓄電されているエネルギーを消費する。
そして、メイン制御装置26は、車両が下り区間を走行する間に回生を行い、バッテリ23を蓄電する。回生後のSOCの値は、計算によるとSOCm+αとなる。
なお、その時々の交通状況など様々な要因により、回生後のSOCの値はSOCm+αの付近でばらつくが、仮にSOCが拡大上限値SOCEuに達してしまった場合、メイン制御装置26は、SOCが拡大上限値SOCEuを越えないように回生を中断する。
このように、メイン制御装置26は、下り区間を走行する際に蓄電可能な蓄電量を見積もる見積もり手段としての機能を有している。
そして、見積もった蓄電量を用いて、SOCが通常管理範囲を超えて変化する範囲を、中央値SOCmを中心に等量となるように制御することにより、バッテリ23の蓄電状態が、フル充電、あるいはフル放電の何れかの方向に偏ることを防ぐことができ、バッテリ23の劣化を低減することができる。
本実施形態では例えば、SOCm=50%、SOCb=40%、SOCu=60%とした場合、α=10×H/2h0に設定すると、回生後のSOCがSOCm+αとなる。
今、h0=SOC10%分相当の標高変化を80[m]、予測される経路の下り標高差を240[m]とした場合、下り区間到達前のSOCの目標値は、SOC=SOCm−10×H/2h0=50−10×240/(2×80)=35%となる。
そして、回生後のSOCは、SOC=SOCm+10×H/h0=50+10×240/(2×80)=65%となる。
このようにメイン制御装置26は、SOCの変化の幅を中央値SOCmを中心に等量分だけ拡大し、上下限値オーバー分を同じにすることができる。
このように、標高差Hが通常管理幅相当の2h0より大きく、最大標高差Hmaxよりも小さい場合(ステップ37;Y)、下り区間で得られる回生エネルギーの量に応じて必要最低限だけSOC管理幅を可変的に広げることができる。
これにより、実質的なSOCの拡大管理幅(SOCの変化する範囲)を、予測した下り標高差Hに応じて必要最小限に留めることができ、バッテリ23の劣化を抑制することができる。
以上の拡大ナビ制御(ステップ38)により、拡大管理幅内でバッテリ23の充電が満たされるまで、回生を行いながら下り区間を走行する(ステップ55)。
一方、標高差Hが最大標高差Hmaxよりも大きい場合(ステップ37;N)、メイン制御装置26は、下り区間到達前のSOCの目標値をSOCEbに設定し、拡大ナビ制御を行う(ステップ40)。
そして、メイン制御装置26は、車両が下り区間を走行する間、拡大管理幅にて回生を行い、SOCが拡大上限値SOCEuに達したら回生を中止する。この場合は回生タイプ4に相当する。
なお、ステップ35にて、拡張カウンタNが制限回数Nmaxより大きい場合(ステップ35;N)、即ちバッテリの劣化防止の観点からこれ以上管理幅の拡張ができない場合には、通常ナビ制御を最大限活用すべく、標高差Hの値として2h0を代入し(ステップ36)、ステップS50を実行するようにする。
下り区間を走行後、下り区間を回生タイプ1又は2の場合で走向した場合は、元からSOCが管理幅の範囲に入っているので、メイン制御装置26は引き続き通常のSOC制御で走行を続ける。
下り区間を回生タイプ3又は4で走向した場合、メイン制御装置26は、下り区間走行後、SOCが通常の制御値(SOCm)付近に納まったか否かを判断する(ステップ60)。SOCが通常の制御値付近にない場合は(ステップ60;N)、走行を続けSOCが通常の制御値付近に納まったか否かを再度判断する。
SOCが通常制御値に納まった場合(ステップ60;Y)、メイン制御装置26は、SOC管理幅を通常管理幅に復帰させ(ステップ65)、以後通常の制御にて走行を続行する。
このように、メイン制御装置26は、下り区間を走行後、SOCの管理幅を拡大管理幅から通常管理幅に復帰する管理幅復帰手段としての機能を有している。
図4は、箱根経路をハイブリッド車両で走向した場合のシミュレーション結果を示した図である。
図では、経路の標高41、車両の走行速度42、SOCの推移(SOC43、〜45)が示されている。
このうち、SOC43は、(1)経路の全行程を従来制御で走向した場合のSOCの推移であり、SOC44は、更に、(2)経路の下り区間で通常ナビ制御を行った場合のSOCの推移であり、SOC45は、更に(3)標高差の大きい下り区間で拡大ナビ制御を行った場合のSOCの推移を示している。
以下に、これら各SOCの制御についてシミュレーション結果を説明する。
また、図には経路上の地点、及び区間を識別するために地点A〜Lまでの符号が付してあり、これら地点の符号を用いて区間A−Bなどとしてこれら地点間の区間を記すことにする。
標高41で示したこの経路は、地点AからLまで走行距離が約50[Km]、標高差880[m]であり、地点C、Gを2つのピークとする登降坂がある。
また、車両の進行方向は、地点Aから地点Lへ向かう方向とする。
(A)従来制御の場合のSOC制御(ナビ制御なし)
SOC43に示したように、この場合は、SOCは通常管理幅の範囲内に納まるように制御される。
なお、SOC43のうち、SOC44と重なる部分についてはSOC44で示し、更にSOC45と重なる部分についてはSOC45で示してある。
図に示したように、最初のピークである地点Cに至るまでは、SOCは中央値SOCm付近の値となるように制御されている。
そして、ピーク地点Cを通過した後、区間C−Eから成る下り勾配になり回生が行われSOCが増加している
しかし、下り区間の終点に到達する前に、地点DにいてSOCが上限値SOCuに達し、この地点で回生を中断して地点Eに到達している。
その後、区間E−Fから成る比較的平坦な経路を走行するときに、区間C−Eで蓄えた回生分の電力でモータ24を補助的に使って、SOCが中央値SOCmになるように走行している。
そして、2つ目のピーク地点Gから再び下り勾配になるので回生ブレーキが作動し回生が開始される。
そして、地点HでSOCが上限値SOCuに達するため、回生を中断し以後、エンジンブレーキ、通常のブレーキで地点Kまで降下することになる。
この場合、地点Gから地点Kまでに至る間、標高差約800[m]降下しているが、回生は地点Gから地点Hまでの僅か降下量80[m]分のエネルギーしか回生されてない。
このように、従来の回生制御(ナビ制御なし)では、区間H−Kでの降下時の回生可能なエネルギーが有効に回生できれば、この経路走行時の燃費効率を大きく向上させることができることが推測できる。
しかし、従来の回生制御では、この回生可能なエネルギーを有効利用するためには、この分の回生電力を蓄える大きなバッテリを備えることが必須条件となってくる。
しかしながら、従来技術でも述べたように大きな重いバッテリを搭載することは普段の走行の燃費を悪化させたり、車両設計上も困難となる。
しかも、標高差800[m]のような大きな標高差の経路は、一般のドライバーにとっては必ずしも頻繁に走るわけではないこともあり、通常時の走行を優先させてバッテリ容量が設定されている。
(B)通常ナビ制御を行った場合のSOC制御(管理幅の拡大は行わない)
SOC44に示したように、この場合もSOC43と同様にSOCは通常管理幅の範囲内に納まるように制御される。
なお、SOC44のうち、SOC45と重なる部分についてはSOC45で示してある。
この場合、メイン制御装置26は、ナビゲーション部11からのナビ情報を用いて、ピーク地点Cの先に下り区間である区間C−Eが存在すること、及びその標高差を予測する。
そして、区間C−Dの手前にある区間B−Cでモータ24を駆動させてエンジン21の補助として登坂に使い、目標値(ここでは、管理幅の下限値SOCb)までSOCを低下させて、区間C−Eでの回生に備える。
そして、区間C−Eの下り区間を走行する際に回生し、バッテリ23を充電する。区間C−Eでの標高差は200[m]足らずであり、SOCが下り区間終了地点Eで上限値SOCuまで達している。
このように、ナビ情報により予め下り区間C−Eが存在することを予測して、その手前でSOCを下げておくことにより、区間C−Eの全行程に渡って回生を行うことができ、通常ナビ制御を行わないときよりも多くのエネルギーを回生している。
その後、メイン制御装置26は、ナビ情報により、その後、もう1つピーク地点Gがあり、更にその先に下り区間G−Kがあることを予測し、区間E−Gでモータ24を駆動させてエンジン21の補助として使い、管理幅の下限値SOCbまでSOCを低下させて、区間G−Kでの回生に備える。
そして、地点Gを通過後回生を開始し、地点IでSOCが上限値SOCuに達し、回生を中断する。
このように、区間G−Kを通過する際も、通常ナビ制御を行わなかった場合に比べて回生エネルギー量が増えている。
この通常ナビ制御により、従来制御の場合より2箇所の下りの回生量を増加させることができる。
以上のように通常ナビ制御による回生効率の改善効果が示されたが、地点Gから地点Kまでの標高差800[m]のうち、回生しているのは160[m]ほどであり、まだまだ改善の余地が残されている。
(C)拡大ナビ制御を行った場合のSOC制御
区間C−Eの標高差は、通常管理幅で回生できる値なので、地点Eまでの制御は(2)で説明した通常ナビ制御と同じである。
メイン制御装置26は、ナビゲーション部11から取得したナビ情報により、ピーク地点Gの先に拡大管理幅で回生エネルギーを回収できる下り区間G−Kが存在することを予測する。
そして、地点EでSOC管理幅を通常管理幅(40%〜60%)から拡大管理幅(20%〜80%)に拡大し、区間E−Gを走行する際に、モータ24を駆動させてエンジン21の補助として使い、管理幅の拡大下限値SOCEbまでSOCを低下させて、区間G−Kでの回生に備える。
即ち、区間E−Gでバッテリ23を拡大下限値SOCEbまで使い切り、残りをエンジン21にて走行する。
ピーク地点Gを通過した後は、下限値20%から80%まで回生が可能となり、地点Jまでの標高差約400[m]分の降下エネルギーを回収することができる。
地点JでSOCが拡大上限値SOCEuに達した後は回生を中断する。回生できるエネルギーが増加したことにより、区間K−Jの約4.2[Km]をモータ24にて走行することができる。
なお、メイン制御装置26は、SOCが通常の制御値(ここではSOCm、地点L以降)に納まった後、SOC管理幅を通常管理幅に戻す。
このように、メイン制御装置26は、ナビ情報を用いて下り区間G−Kでの回生エネルギー量が最大となるようにエンジン21とモータ24の運転スケジュールを設定する運転スケジュール手段としての機能を備えている。
図5は、箱根経路をハイブリッド車両で走向した場合のシミュレーション結果を示した表である。
表から(1)従来制御(SOC43)、(2)通常ナビ制御(SOC44)、(3)拡大ナビ制御(SOC45)を行った場合の燃費改善率を読み取ることができる。
走行距離50.30[Km]、標高差880.8[m]の箱根経路において、従来制御では、燃料消費量が2987.27ccである。
これに対し、通常ナビ制御を行った場合、燃料消費量が2765.47ccであり、従来制御よりも221.8ccだけ燃料を節約している。
従来制御に対する改善率、即ち、従来制御による燃料消費量に対する燃料節約量の割合は7.43%であり、燃費が改善されていることがわかる。
更に、拡大ナビ制御を行った場合、燃料消費量が2443.743ccであり、従来制御に比べて543.53ccだけ燃料を節約している。
従来制御に対する改善率は18.20%であり、通常ナビ制御を行った場合よりも更に燃費が改善されている。
以上のように、本実施形態では、通常ナビ制御に加えて、SOCの管理幅を拡大することにより、下り区間において通常ナビ制御よりも多くの回生エネルギーを回収することができ、燃費が改善されている。
本実施形態では、説明を明瞭化するために回生エネルギー量を簡易的に標高差で代表して述べ、拡大管理幅を適用する下り区間を標高差を条件として特定しているが、これは車両毎の仕様、その登降坂路の状況毎にエネルギー計算を行って処理するように構成することもできる。
例えば、同じ標高差であっても勾配の大きさ、路面の走りやすさ等で回生エネルギーは異なってくるので、その場合はその影響を評価して処理すればよい。
より一般的には、回収が期待できる回生エネルギーの大きさによって、拡大管理幅を適用するか否かを判断すればよい。
何れの構成を採用しても、基本となるコンセプト、即ち、下り区間でより多くの回生エネルギーを回収するためにSOCの管理幅を一時的に拡大するという思想は同じである。
本実施形態により次のような効果を得ることができる。
(a)標高差など所定の条件を満たす下り区間を、従来のSOCの管理幅よりも拡大管理幅にて走行し、より多くの回生エネルギーを回収することができる。
(b)ナビ情報を用いて、先にある下り区間の位置、標高差、勾配などを検知することができ、その区間での回生エネルギー量を見積もりすることができる。そのため、下り区間に到達する前にSOCの管理幅を拡大し、拡大下限値SOCEb付近まで充電率を低めに管理することができる。
(c)下り区間で拡大管理幅の拡大下限値SOCEbから拡大上限値SOCEuまで回生エネルギーを回収することができ、燃費を改善することができる。
(d)SOCの変化の範囲(実質的なSOC管理幅)を、回収が見込める回生エネルギーに応じて必要最低限の範囲(SOCm−αからSOCm+αまで)に設定することができる。
(e)バッテリ23の耐久性を考慮して拡大回数の制限回数Nmaxを予め設定することができ、SOCの管理幅拡大回数を制限することができる。
(f)バッテリ23の耐久性を考慮してSOCの管理幅の拡大幅を予め設定することができる。
(g)比較的平坦な経路での普段の走行時の燃費効果を損ねることなく、大きな登降坂経路での燃費向上が図れる。
4.第2実施形態
第1の実施形態では、管理幅を拡大する閾値として標高差を2h0とした(図3ステップ25)。すなわち通常の管理幅を超えることが予想される場合に管理幅の拡大を行うこととした。
第2の実施形態では、管理幅を拡大する処理を行うための閾値とする標高差の値(閾値標高差Hs)として、2h0以上、Hmax以下の間の値を設定する。
そして走行経路上に存在する下り区間の標高差がHsを超える場合に、管理幅を拡大するのである。
具体的な処理としては、図3のフローチャートのステップS25において、判断処理の内容を「H≦2h0」から「H≦Hs」に変更する。そして標高差がHs以下であれば、例え2h0以上であっても通常ナビ制御を行うようにするのである。
このように管理幅を拡大する閾値である標高差を2h0より大きくすることにより拡大ナビ制御が過度に適用されることを防止し、燃費低減の効果がより得られる場合にのみ拡大ナビ制御が実行されるようにすることができる。
すなわち、第1の実施形態では下り区間の標高差が2h0を僅かに超える場合であっても拡大ナビ制御が実行されるため、良く利用する走行経路上に標高差が2h0を僅かに超える下り区間があると、走行のたびに拡大ナビ制御が実施されることとなり、拡大ナビ制御の実行回数の制限値にすぐに到達してしまうこととなる。
そこで、通常ナビ制御より確実に燃費低減効果が得られる下り区間の標高差をHsとして定義し、Hsを超える標高差を有する下り区間がある場合にのみ拡大ナビ制御を実行するように制御することで、限られた拡大ナビ制御回数を燃費低減効果の高い状況において作動させるようにすることでより燃費低減効果を得ることが可能となる。
また、第2の実施形態においては、拡大ナビ制御が行われる場合、即ち図3のフローチャートにおけるステップ38もしくはステップ40では、下り区間に到達前のSOC目標値としてはSOCm−αもしくはSOCEbとするが、管理幅としてはあくまで拡大した管理幅、すなわち図2に図示するところのSOCEbからSOCEuまでの範囲内にSOCが収まるように制御を行う。
これは、下り区間到達前のSOC目標値(SOCm−αもしくはSOCEb)は、下り区間走行前後でSOCの値がSOCmを中心値として上下に均等に変化するように設けた値であるが、実際の走行時には、SOCの値が目標値とずれることも予想されるがそのような場合でも、SOCの管理幅としてはSOCEbからSOCEuまでの範囲とするということである。
例えば、下り区間到達前に予想以上にモータを使用し、下り区間到達時にSOCの値がSOCm−αより低くなることが推定された場合であっても、SOCの値としてSOCEbとなるまではモータを使用し続けるよう制御する。
また、下り区間において運転者が予想以上にブレーキを踏んだ場合には回生されるエネルギは予想値である2αを越えることが予想されるが、その場合でもSOCEuまでは回生エネルギをバッテリに蓄積するように制御する。
以上の第2実施形態を要約すると次のように表現することができる。即ち、本第2の実施形態は、駆動力の一部又は全部が発電に使用されるエンジンと、車両の駆動力を発生させるモータとを備え、前記エンジンとモータの少なくとも一方の駆動により走行するハイブリッド車両の駆動装置であって、前記モータに電力を供給すると共に、回生エネルギによる蓄電が行われる蓄電手段と、蓄電手段への蓄電量を、第1の蓄電量範囲(通常ナビ制御管理幅)内又は第2の蓄電量範囲(拡大ナビ制御管理幅)内となるように制御する蓄放電制御手段と、走行経路上に存在する所定標高差の下り区間を特定する区間特定手段と、を備え、前記第2の蓄電量範囲は前記第1の蓄電量範囲より広く設定され、前記第1の蓄電量範囲に相当するエネルギ量を回生可能な標高差(図2(a)において、通常ナビ制御の管理幅:SOCb以上SOCu以下、に相当する標高差2h0)以上であり、かつ、前記第2の蓄電量範囲に相当するエネルギ量を回生可能な標高差(図2(a)において、拡大ナビ制御管理幅:SOCEb以上SOCEu以下、に相当する標高差Hmax)以下である標高差閾値(Hs)が設定され、前記下り区間の所定標高差が前記標高差閾値を超える場合に、前記蓄電制御手段が制御目標とすべき蓄電量範囲を前記第1の蓄電量範囲から前記第2の蓄電量範囲に変更する蓄電制御範囲切替手段(図3ステップ25の内容を「H≦Hs」とした場合のステップS25、S50,S38、S40に相当)と、を有することを技術的特徴とするものである。
車両は販売された後、運転者によって運転されるが、平坦な都市部で使用される場合と、山がちで起伏の大きい山間地域で使用される場合とでは、最も経済的となる閾値標高差Hsが異なってくる。
即ち、閾値標高差Hsを低めに設定し、運転者が起伏の多い地域で日常的に車両を使用する場合、運転者の日常的な使用により、拡大ナビ制御を行ってしまい、早期に拡大カウンタNが制限回数Nmaxに到達してしまうことが考えられる。
一方、閾値標高差Hsを高めに設定すると、逆に運転者が平坦な地域で日常的に車両を使用する場合、運転者がたまたま標高差の大きな下り区間を走行した際に、その標高差が閾値標高差Hsに達せず、回生エネルギーを回収できない可能性がある。
そこで、運転者が日常的に使用する経路に応じて閾値標高差Hsを設定するのが望ましいことになる。
本変形例では、運転者が車両を購入してから一定期間(例えば、1ヶ月間)、拡大ナビ制御を行わずに、ナビゲーション部11が走行データを収集する。
そして、ナビゲーション部11は、ユーザが日常的に使用する経路にある下り区間の標高差を取得してメイン制御装置26に提供し、メイン制御装置26は、運転者が日常的に走行する下り区間の標高差よりも閾値標高差Hsを高く設定する。
その際に、起伏の多い山間地で車両を使用するユーザに対しては閾値標高差Hsを高めに設定し、平坦な都市部で車両を使用するユーザに対しては閾値標高をHsを低めに設定する。
以上のように、本変形例では、運転者が日常的に車両を使用する地域に応じて閾値標高差Hsを自動的に設定することができる。
また、本願発明の実施形態として、次の(a)〜(i)により駆動装置、ナビゲーション装置を構成するようにしてもよい。
(a) 駆動力の一部又は全部が発電に使用されるエンジンと、車両の駆動力を発生させるモータとを備え、前記エンジンとモータの少なくとも一方の駆動力により走行するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、
前記モータに電力を供給すると共に、回生エネルギによる蓄電が行われる蓄電手段と、
通常走行時に前記蓄電手段の蓄電量を通常走行管理幅内となるように前記蓄電手段の蓄放電を制御する蓄放電制御手段と、
走行経路上に存在する所定標高差の下り区間を特定する区間特定手段と、を具備し、
前記蓄放電制御手段は、前記特定した下り区間を走行する際に、前記通常走行管理幅を拡大した拡大管理幅で回生エネルギによる蓄電を行うことを特徴とする駆動制御装置。
(b) 前記蓄放電手段は、前記蓄電手段の管理幅を蓄電側と放電側に等量だけ拡大して前記拡大管理幅を設定することを特徴とする(1)に記載の駆動制御装置。
(c) 前記特定した下り区間を走行する際に蓄電可能な蓄電量を見積もる見積もり手段を具備し、
前記蓄放電手段は、前記見積もった蓄電量に対応して前記拡大管理幅を設定し、前記車両が前記下り区間の走行を開始するまでに、前記蓄電手段の蓄電量を、前記拡大管理幅の下限まで消費するように蓄放電を制御することを特徴とする(b)に記載の駆動制御装置。
(d) 前記下り区間を通過した後、前記蓄電手段の管理幅を通常走行管理幅に復帰する管理幅復帰手段を具備したことを特徴とする(a)、(b)、又は(c)に記載の駆動制御装置。
(e) 前記管理幅を拡大した回数を計数する回数計数手段を具備し、
前記蓄放電制御手段は、前記計数した回数が所定回数以下であることを条件に、前記蓄電手段の管理幅を拡大管理幅に拡大することを特徴とする(a)から(d)のうちの何れかに記載の駆動制御装置。
(f) 前記回数計数手段は、前回計数したときから所定時間以上経過して新たに計数をした場合には、前記所定回数の値をより大きな値に変更、又は前記計数した回数をより小さな値にすることを特徴とする(e)に記載の駆動制御装置。
(g) 前記蓄放電制御手段は、前記下り区間を通過した後に電力を消費して、前記蓄電手段の蓄電量が通常走行時に管理されている値となるように蓄放電を制御することを特徴とする請求項(a)から(f)のうちの何れかに記載の駆動制御装置。
(h) 前記エンジンは、駆動力の一部又は全部が車両の駆動又は発電に使用され、
前記走行経路に対して、前記下り区間での回生エネルギによる蓄電量が最大になるように、前記エンジンと前記モータの運転スケジュールを設定する運転スケジュール設定手段を具備し、
前記設定した運転スケジュールを用いて前記エンジンと前記モータを制御することを特徴とする(a)から(g)のうちの何れかに記載の駆動制御装置。
(i) (a)から(h)のうちの何れかに記載の駆動制御装置によって駆動系を制御することを特徴とするハイブリッド車両。
(a)〜(i)の実施形態によれば、走行経路上に存在する所定標高差の下り区間を走行する際に、通常走行管理幅を拡大した拡大管理幅で回生エネルギによる蓄電を行うことにより、蓄電手段のダメージを抑えつつ下り区間を走行する際の回生エネルギをより多く蓄電することができる。
本発明の第1実施形態における駆動制御装置、及び車両が適用されるハイブリッド車両の駆動制御システムの構成を示す概念図である。 第1実施形態における、メイン制御装置が行う各制御におけるSOCの変化の推移を説明するための図である。 第1実施形態における、SOC管理幅の制御手順を説明するためのフローチャートである。 第1実施形態における、箱根経路をハイブリッド車両で走向した場合のシミュレーション結果を示した図である。 第1実施形態における、箱根経路をハイブリッド車両で走向した場合のシミュレーション結果を示した表である。
符号の説明
10 駆動制御システム
11 ナビゲーション部
12 ナビゲーションデータベース
13 走行データ取得部
14 走行環境データ取得部
15 走行データ記憶部
20 駆動装置
21 エンジン
22 発電機
23 バッテリ
24 モータ
25 駆動力伝達装置

Claims (4)

  1. 駆動力の一部又は全部が発電に使用されるエンジンと、車両の駆動力を発生させるモータとを備え、前記エンジンとモータの少なくとも一方の駆動力により走行するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、
    前記モータに電力を供給すると共に、回生エネルギによる蓄電が行われる蓄電手段と、
    通常走行時に前記蓄電手段の蓄電量を通常走行管理幅内となるように前記蓄電手段の蓄放電を制御する蓄放電制御手段と、
    走行経路上に存在する所定標高差の下り区間を特定する区間特定手段と、
    前記特定した下り区間を走行する際に蓄電可能な蓄電量を見積もる見積もり手段と、
    を具備し、
    前記蓄放電制御手段は、前記見積もった蓄電量が、前記通常走行管理幅の半分より大きく前記通常走行管理幅以である場合、車両が前記見積もった下り区間に到達する前に、前記蓄電手段の蓄電量を前記通常走行管理幅の中央値よりも前記見積もった蓄電量の1/2だけ低下させ、前記下り区間における回生エネルギーを蓄電する、
    ことを特徴とする駆動制御装置。
  2. 前記蓄放電手段は、車両が前記下り区間を走行した後、前記蓄電手段の蓄電量が前記通常走行管理幅の中央値付近の値になるように制御する、
    ことを特徴とする駆動制御装置。
  3. 前記エンジンは、駆動力の一部又は全部が車両の駆動又は発電に使用され、
    前記走行経路に対して、前記下り区間での回生エネルギによる蓄電量が最大になるように、前記エンジンと前記モータの運転スケジュールを設定する運転スケジュール設定手段を具備し、
    前記設定した運転スケジュールを用いて前記エンジンと前記モータを制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駆動制御装置。
  4. 請求項1から請求項3までのうちの何れか1の請求項に記載の駆動制御装置によって駆動系を制御することを特徴とするハイブリッド車両。
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