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JP2008093652A - 微細構造体および製造方法 - Google Patents

微細構造体および製造方法 Download PDF

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JP2008093652A JP2007184519A JP2007184519A JP2008093652A JP 2008093652 A JP2008093652 A JP 2008093652A JP 2007184519 A JP2007184519 A JP 2007184519A JP 2007184519 A JP2007184519 A JP 2007184519A JP 2008093652 A JP2008093652 A JP 2008093652A
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Yusuke Hatanaka
優介 畠中
Tadafumi Tomita
忠文 冨田
Yoshinori Hotta
吉則 堀田
Akio Uesugi
彰男 上杉
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Abstract

【課題】濾過流量に優れ、且つ流量の経時安定性に優れたポーラスアルミナメンブレンフィルターとして使用可能な微細構造体および該微細構造体の製造方法の提供。
【解決手段】アルミニウム陽極酸化皮膜からなり、マイクロポア貫通孔を有する微細構造体であって、該微細構造体表面が前記アルミニウム陽極酸化皮膜の水和を妨げる保護膜により被覆されていることを特徴とする微細構造体。
【選択図】なし

Description

本発明は、微細構造体およびその製造方法に関する。
精密濾過分野において実用化されているフィルターメンブレンには、有機系メンブレン、無機系メンブレンがあり、実際に広く使用されているのは有機系メンブレンである。この有機系メンブレンの多くは、細孔が独立したものではなく、又、孔径分布も比較的広いため、フィルターの最も重要な機能である特定物の分離の精度に関してさらに向上させるための研究が各方面で進められている。
こうした問題を解決するため、例えば非特許文献1等では、ポリマーよりなる有機皮膜に、原子炉から生じる高エネルギー粒子を照射し、粒子が有機皮膜を通過した飛跡をエッチング処理することにより細孔を形成する、いわゆるトラックエッチング方式が知られている。このトラックエッチング方式は、有機皮膜に対して直行した、細孔径分布の狭い独立した細孔が得られるが、飛跡形成時に重複して粒子が入射することによる二重孔の発生を避けるため、孔密度、いわゆる空壁率を上げることができないという問題があった。
一方で、無機系メンブレンとしては、例えば非特許文献2等で知られているように、アルミニウムの陽極酸化皮膜を利用した、ポーラスアルミナメンブレンフィルターが知られている。アルミニウムを酸性電解液中で陽極酸化処理することで、細孔径分布の狭い独立した細孔が、高い空壁率で配置されているため、時間当たりの濾過流量の高いメンブレンフィルターを安価に製造することができる。
これらの有機系、及び、無機系メンブレンの具体的な用途例としては、例えば、タンパク質吸着材、浄水、空気清浄、脱臭・脱硝・排ガス装置用構造体、オゾン除去、各種ウイルス除去、クリーンルーム用素材、ガス分離のほか、赤血球の変形テスト、ケモタキシス・培養チャンバー・走査電子顕微鏡・放射性分析が挙げられる。また、剥離細胞診・蛍光X線などを用いた試験の各種処理用途、アルカリ溶出、アスベストのモニタリング、寄生虫の検出、大気中粒子のIR分析、河川・海水中の藻類分析等が挙げられる。また、CMP等に使用されるスラリー粒子、顔料、染料、磁性体物質、等の分画が挙げられる。
しかしながら、ポーラスアルミナメンブレンフィルターは、その構造体自体が、アルミニウム陽極酸化皮膜であることから、長時間の水性溶液を分離する際には、該陽極酸化皮膜の水和反応が起こるため、径が縮小してしまい、濾過流量の経時安定性が不十分であり改良が望まれている。
T.D.Brock,Membrane Filtration,Sci.Tech,Inc.,Madison(1983) 益田秀樹,「陽極酸化を用いたポーラスメンブレンの新技術」, アルトピア,1995年7月
したがって、本発明は、濾過流量に優れ、且つ流量の経時安定性に優れたポーラスアルミナメンブレンフィルターとして使用可能な微細構造体および該微細構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、微細構造体をなすアルミニウム陽極酸化皮膜の表面に、該アルミニウム陽極酸化皮膜の水和を妨げる保護膜を形成させることで、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(i)〜(iv)を提供する。
(i)アルミニウム陽極酸化皮膜からなり、マイクロポア貫通孔を有する微細構造体であって、該微細構造体表面が前記アルミニウム陽極酸化皮膜の水和を妨げる保護膜により被覆されていることを特徴とする微細構造体。
(ii)前記保護膜が、Zr元素およびSi元素からなる群から選択される少なくとも1つを含有する無機保護膜、又は水不溶性ポリマーを含有する有機保護膜である、上記(i)記載の微細構造体。
(iii)前記マイクロポアについて、下記式(1)により定義される規則化度が20%以上であり、下記式(2)により定義される空壁率が40%以上である、上記(i)または(ii)に記載の微細構造体。
規則化度(%)=B/A×100 (1)
空壁率 (%)=C/D×100 (2)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。また、上記式(2)中、Cは、測定範囲中のポアの面積を表す。Dは、測定範囲の面積を表す。
(iv)アルミニウム基板に、少なくとも、
(A)陽極酸化処理によりマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する処理、
(B)上記(A)で得られた酸化皮膜から、アルミニウムを除去する処理、
(C)上記(A)で得られた酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる処理、および
(D)酸化皮膜表面に該酸化皮膜の水和を妨げる保護膜を形成する処理、
をこの順に施すことにより形成される微細構造体。
本発明によれば、濾過流量に優れ、且つ流量の経時安定性に優れたポーラスアルミナメンブレンフィルターとして使用可能な微細構造体を得ることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の微細構造体は、アルミニウム陽極酸化皮膜からなり、マイクロポア貫通孔を有する微細構造体であって、該微細構造体表面が前記アルミニウム陽極酸化皮膜の水和を妨げる保護膜により被覆されていることを特徴とする。
本発明の微細構造体は、好ましくは、
アルミニウム基板に、少なくとも、
(A)陽極酸化処理によりマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する処理、
(B)上記(A)で得られた酸化皮膜から、アルミニウムを除去する処理、
(C)上記(A)で得られた酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる処理、および
(D)酸化皮膜表面に該酸化皮膜の水和を妨げる保護膜を形成する処理、
をこの順に施すことにより形成される。
<アルミニウム基板>
アルミニウム基板は、特に限定されず、例えば、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板が挙げられる。
アルミニウム基板のうち、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.9質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、マイクロポア配列の規則性が十分となる。
アルミニウム基板の表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理を施されるのが好ましい。
また、あらかじめアルミニウム基板が熱処理を施されるのが好ましい。熱処理により、ポア配列の規則性が向上する。
<熱処理>
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。これにより、後述する陽極酸化処理により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法が挙げられる。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
中でも、以下の各方法が好適に例示される。
アルコール(例えば、メタノール)、ケトン、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム表面に接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法)。
脱脂処理は、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない方法が好ましい。この点で、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基板の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる方法を、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法が挙げられる。
また、米国特許第2708655号明細書に記載されている方法が好適に挙げられる。
また、「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法も好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、研磨剤を用いる方法を、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行い、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
<(A)陽極酸化によるマイクロポア形成処理>
処理(A)では、アルミニウム基板に陽極酸化処理を施すことにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する。
陽極酸化処理としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
なお、自己規則化法によりマイクロポアを形成するには、後述する陽極酸化処理を実施すればよいが、好ましくは、後述する陽極酸化処理、脱膜処理および再陽極酸化処理をこの順に実施する。
<陽極酸化処理>
陽極酸化処理をする際の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。そのようなかくはん装置としては、例えば、AS ONE社製のマグネティックスターラーHS−50Dが挙げられる。
陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化処理の処理時間は、0.5分〜16時間であるのが好ましく、1分〜12時間であるのがより好ましく、2分〜8時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化処理は、一定電圧下で行う以外に、電圧を断続的または連続的に変化させる方法も用いることができる。この場合は電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜300μmであるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ましく、10〜100μmであるのが更に好ましい。
平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。なお、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
<脱膜処理>
陽極酸化処理によりアルミニウム基板表面に陽極酸化皮膜を形成した後、直ちに後述するアルミニウムを除去する処理を実施してもよいが、陽極酸化処理の実施後、脱膜処理および再陽極酸化処理をこの順で実施してから、アルミニウムを除去する処理を実施することが好ましい。
脱膜処理では、陽極酸化処理によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する。
陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板に近くなるほど規則性が高くなっているので、この脱膜処理により、一度陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に露出させて、規則的な窪みを得ることができる。したがって、脱膜処理では、アルミニウムは溶解させず、アルミナ(酸化アルミニウム)からなる陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
アルミナ溶解液は、クロム化合物、硝酸、リン酸、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
具体的なクロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
中でも、上記アルミナ溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
アルミナ溶解液は、−10℃以上であるのが好ましく、−5℃以上であるのがより好ましく、0℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
アルミナ溶解液は、アルミナを溶解し、アルミニウムを溶解しない。ここで、アルミナ溶解液は、アルミニウムを実質的に溶解させなければよく、わずかに溶解させるものであってもよい。
脱膜処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
<再陽極酸化処理>
脱膜処理により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した<陽極酸化処理>と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
陽極酸化処理を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、陽極酸化処理を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1〜1000μmであるのが好ましく、1〜1000μmであるのが好ましく、1〜500μmであるのがより好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
マイクロポアのポア径は0.01〜0.5μmであるのが好ましい。
平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
図1は、処理(A)後の状態を示した部分断面図である。図1に示すように、アルミニウム基板10表面には、マイクロポア14を有する陽極酸化皮膜12が形成されている。
<(B)アルミニウム除去処理>
アルミニウム除去処理では、図1に示す状態からアルミニウム基板10を溶解して除去する。図2は、本処理後の状態を示した部分断面図であり、マイクロポア14を有する陽極酸化皮膜12からなる微細構造体が示されている。
したがって、アルミニウム除去処理には、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する処理液を用いる。
処理液としては、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する液であれば特に限定されないが、例えば、塩化水銀、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、王水、塩酸/塩化銅混合物等の水溶液等が挙げられる。
濃度としては、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
処理温度としては、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
アルミニウム除去処理は、上述した処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
アルミニウム除去処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
アルミニウム除去処理後、後述する処理(C)を行う前に、陽極酸化皮膜12を水洗処理する。水和によるマイクロポア14のポア径の変化を抑制するため、水洗処理は30℃以下で実施することが好ましい。
<(C)マイクロポア貫通処理>
マイクロポア貫通処理では、図2に示すマイクロポア14を有する陽極酸化皮膜12を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜12を部分的に溶解させる。これにより、マイクロポア14底部の陽極酸化皮膜12が除去され、マイクロポア14が貫通する(マイクロポア貫通孔16が形成される)。図3は、マイクロポア貫通処理後の状態を示した部分断面図であり、マイクロポア貫通孔16を有する陽極酸化皮膜12からなる微細構造体が示されている。
図3では、陽極酸化皮膜12に存在する全てのマイクロポアがマイクロポア貫通孔16となっているが、処理(C)により、陽極酸化皮膜に存在する全てのマイクロポアが貫通しなくてもよい。但し、本発明の微細構造体をポーラスアルミナメンブレンフィルターとして使用する場合、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのうち70%が、処理(C)により貫通することが好ましい。
マイクロポア貫通処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
マイクロポア貫通処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
マイクロポア貫通処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
マイクロポア貫通処理後、後述する処理(D)を行う前に、陽極酸化皮膜12を水洗処理する。水和によるマイクロポア貫通孔16のポア径の変化を抑制するため、水洗処理は30℃以下で実施することが好ましい。
<(D)保護膜形成処理>
保護膜形成処理では、図3に示すマイクロポア貫通孔16を有する陽極酸化皮膜12からなる微細構造体に対して、マイクロポア貫通孔16の内部を含めた陽極酸化皮膜12の表面全域にわたって、該陽極酸化皮膜の水和を妨げる保護膜を形成する。
保護膜としては、Zr元素およびSi元素からなる群から選択される少なくとも1つを含有する無機保護膜、又は、水不溶性ポリマーを含有する有機保護膜が挙げられる。
<無機保護膜>
Zr元素を有する保護膜の形成としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニウム化合物が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的であり、保護膜の強固性/安定性の観点からリン化合物をあわせて溶解させた水溶液を用いることが好ましい。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カルシウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド等が使用でき、特にフッ化ジルコン酸ナトリウムが好ましい。また濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.01〜10wt%が好ましく、0.05〜5wt%がより好ましい。
リン化合物としては、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム等が使用でき、特にリン酸水素ナトリウムが好ましい。また濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.1〜20wt%が好ましく、0.5〜10wt%がより好ましい。
また、形成される保護膜の陽極酸化皮膜の水和を妨げる機能が向上することから、浸せき処理の際、ジルコニウム化合物が溶解している水溶液にタンニン酸を含めることが好ましい。この場合、水溶液中におけるタンニン酸の濃度は、0.05〜10wt%であることが好ましく、0.1〜5wt%がより好ましい。
また処理温度としては、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
Si元素を有する保護膜の形成としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的である。
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって保護膜厚の調節が可能である。ここでMとしては、特にナトリウム、カリウムが好適に用いられる。
モル比としては、〔SiO2〕/〔M2O〕が0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましい。また、SiO2の含有量としては、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
同様に、アルカリ土類金属ケイ酸塩の水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ土類金属酸化物M´Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M´O〕のモル比で表す)と濃度によって保護膜厚の調節が可能である。ここでM´としては、特にカルシウム、マグネシウム、バリウムが好適に用いられる。
モル比としては、〔SiO2〕/〔M´O〕が0.1〜10.0が好ましく、0.5〜5.0がより好ましい。また、SiO2の含有量としては、0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
<有機保護膜>
有機保護膜としては、水不溶性ポリマーが溶解している有機溶剤に、直接浸せきしたのち、加熱処理により溶剤のみを揮発させる方法が好ましい。
水不溶性ポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、等が挙げられる。濃度としては、0.1〜50wt%が好ましく、1〜30wt%がより好ましい。
また、溶剤揮発時の加熱温度としては、30〜300℃が好ましく、50〜200℃がより好ましい。
保護膜形成処理後において、保護膜の膜厚は、1〜50nmであるのが好ましく、5〜25nmであるのが更に好ましい。
アルミニウム基板に、少なくとも上記(A)〜(D)の処理をこの順を施すことにより、得られる本発明の微細構造体は、マイクロポアについて、下記式(1)により定義される規則化度が20%以上であり、下記式(2)により定義される空壁率が40%以上であることが好ましい。ここで、マイクロポアとは、マイクロポア貫通孔のことを指す。
規則化度(%)=B/A×100 (1)
空壁率 (%)=C/D×100 (2)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。また、上記式(2)中、Cは、測定範囲中のポアの面積を表す。Dは、測定範囲の面積を表す。
なお図4は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。図4を用いて、上記式(1)をより具体的に説明する。
図4(A)に示されるマイクロポア1は、マイクロポア1の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円3(マイクロポア2に内接している。)を描いた場合に、円3の内部にマイクロポア1以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア1は、Bに算入される。
図4(B)に示されるマイクロポア4は、マイクロポア4の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円6(マイクロポア5に内接している。)を描いた場合に、円6の内部にマイクロポア4以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア4は、Bに算入されない。また、図1(B)に示されるマイクロポア7は、マイクロポア7の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円9(マイクロポア8に内接している。)を描いた場合に、円9の内部にマイクロポア7以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア7は、Bに算入されない。
本発明の微細構造体は、マイクロポアについて、上記式(1)により定義される規則化度が40%以上であることがより好ましい。また、上記式(2)により定義される空壁率が50%以上であることがより好ましい。
また、本発明の微細構造体は、用途に応じて、陽極酸化皮膜のマイクロポアに、有機化合物や無機化合物、金属微粒子等を担持することもできる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1〜5、比較例1]
1.電解研磨処理
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を、10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットし、以下組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を行なった。陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
<電解研磨液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
2.(A)陽極酸化によるマイクロポア形成処理
上記で得られた研磨処理後のサンプルを、表1記載の条件で陽極酸化処理した。得られたサンプルを、0.2M無水クロム酸、0.6Mリン酸の混合水溶液を用いて50℃の条件で12時間浸せきして脱膜処理した。その後、表1の条件で再陽極酸化処理して、アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成した。
なお、陽極酸化処理、再陽極酸化処理共に、陰極はステンレス電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置としては、NeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
3.(B)アルミニウム除去処理
上記で得られたサンプルを、表1記載の条件で処理し、アルミニウム基板を除去した。
4.(C)マイクロポア貫通処理
上記で得られたサンプルを、表1記載の条件で処理し、マイクロポアを貫通させた。
5.(D)保護膜形成処理
上記で得られたサンプルを、表1記載の条件で処理し、実施例1〜5の微細構造体を得た。また比較例1に関しては、前記(D)処理を行わなかった。
上記で得られた実施例1〜5、及び、比較例1の微細構造体の規則化度及び空壁率を計測した。具体的にはFE−SEMにより表面写真(倍率20000倍)を撮影し、100nm×100nmの視野で、マイクロポアについて下記式(1)、(2)により定義される規則化度、空壁率を測定した。なおこれらの測定は、10箇所において行い、平均値を算出した。結果を表1に示す。
規則化度(%)=B/A×100 (1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
空壁率 (%)=C/D×100 (2)
上記式(2)中、Cは、測定範囲中のポアの面積を表す。Dは、測定範囲の面積を表す。
また、上記で得られた実施例1〜5、及び、比較例1の微細構造体の濾過流量、及び、経時特性を評価した。具体的には、1.0kgf・cm-2の駆動圧力で濾過時間(a)0〜100分間、及び(b)400〜500分間に対する20℃純水の濾過流量を求めた。すなわち、濾過時間(a)及び(b)における濾過流量が大きいほど濾過性が良く、(a)と(b)の流量差が小さいほど、フィルターとしての経時性が良いといえる。結果を表1に示す。
Figure 2008093652
(実施例6)
本発明に関するフィルター状微細構造体の具体的な使用例を以下に示す。
ブレークダウン法により平均粒子径20nmまで粉砕した非晶質のケイ酸原料スラリーと、生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.4になるように混合し、原料全量に対して、質量比で10倍の水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーをオートクレーブ中に入れ、撹拌しながら180℃で4時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。このスラリーを70℃まで冷却し、ケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な高濃度の酢酸(濃度99.7%)を添加し、10分間撹拌した溶液に、実施例1で作成した微細構造体を浸漬温度30℃で60秒間浸漬し、次いで120℃で乾燥処理し、次いで、電気炉中で600℃にて1時間加熱処理し、高タンパク質吸着性ケイ酸質系微細フィルターを得た。
図1は、処理(A)後の状態を示した部分断面図である。 図2は、処理(B)後の状態を示した部分断面図である。 図3は、処理(C)後の状態を示した部分断面図である。 図4は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。
符号の説明
1、2、4、5、7、8 マイクロポア
3、6、9 円
10 アルミニウム基板
12 陽極酸化皮膜
14 マイクロポア
16:マイクロポア貫通孔

Claims (4)

  1. アルミニウム陽極酸化皮膜からなり、マイクロポア貫通孔を有する微細構造体であって、該微細構造体表面が前記アルミニウム陽極酸化皮膜の水和を妨げる保護膜により被覆されていることを特徴とする微細構造体。
  2. 前記保護膜が、Zr元素およびSi元素からなる群から選択される少なくとも1つを含有する無機保護膜、又は水不溶性ポリマーを含有する有機保護膜である、請求項1記載の微細構造体。
  3. 前記マイクロポアについて、下記式(1)により定義される規則化度が20%以上であり、下記式(2)により定義される空壁率が40%以上である、請求項1または2に記載の微細構造体。
    規則化度(%)=B/A×100 (1)
    空壁率(%)=C/D×100 (2)
    上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。また、上記式(2)中、Cは、測定範囲中のポアの面積を表す。Dは、測定範囲の面積を表す。
  4. アルミニウム基板に、少なくとも、
    (A)陽極酸化処理によりマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する処理、
    (B)上記(A)で得られた酸化皮膜から、アルミニウムを除去する処理、
    (C)上記(A)で得られた酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる処理、および
    (D)酸化皮膜表面に該酸化皮膜の水和を妨げる保護膜を形成する処理、
    をこの順に施すことにより形成される微細構造体。
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