JP2007326817A - N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を製造するに際し、該N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸が水酸基を有するものであっても中和時に副生する塩とN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸とを、簡便且つ効率的に分離し、高収率でN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】 N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸、塩及び5質量%以上の水を含有する有機溶媒溶液からN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を分離するに際し、先ず、前記有機溶媒溶液に含まれる水を除去して該溶液に含まれる塩を析出させてから析出した塩を分離除去し、更に塩が分離除去された有機溶媒溶液に貧溶媒を加えてN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を析出させ、これを液相から分離する。
【選択図】 なし
【解決手段】 N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸、塩及び5質量%以上の水を含有する有機溶媒溶液からN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を分離するに際し、先ず、前記有機溶媒溶液に含まれる水を除去して該溶液に含まれる塩を析出させてから析出した塩を分離除去し、更に塩が分離除去された有機溶媒溶液に貧溶媒を加えてN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を析出させ、これを液相から分離する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ペプチドや抗生物質等を製造する際の中間化合物として有用なN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を製造する方法に関する。
アミノ酸のアミノ基を保護したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸は、抗生物質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびアミノ配糖体の化学合成において、ペプチド結合を形成させる際に、選択的に目的物を得るための出発物質または中間体として重要な化合物である。
N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の合成法としては、水とt−ブチルアルコール等の水相溶性有機溶媒との混合溶媒系で、アミノ酸を化学量論以上の水酸化ナトリウムやトリエチルアミン等の塩基性物質と反応させて水溶性の塩とした後にジ−t−ブチルジカーボネートと反応させ、得られたN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸塩を中和して酸に変換し、その水溶液または水懸濁液として得、次いで該水溶液または水懸濁液からN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を有機相中に抽出する方法が知られている(特許文献1および非特許文献1参照)。
これら従来方法では、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸塩を中和して酸に変換するときに塩が副生し、副生した塩の一部は中和生成物であるN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を有機溶媒で抽出する際に同時に抽出されるので、目的物を単離するためには塩を分離除去する必要がある。通常、抽出液に含まれる塩は、抽出液を水洗することにより除去されている。例えば、特許文献1及び非特許文献1に記載されている方法でも、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸含有有機溶媒からの塩の除去は二層系で水洗することにより行われている。
しかしながら、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸がN−t−ブチルオキシカルボニルセリンなどの水酸基を有するN−アルコキシカルボニルアミノ酸である場合には、水洗により効率的に塩を除去することが困難である。すなわち、このようなN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸は水に対する親和性が高いため、たとえば抽出溶媒として酢酸エチルを使用する場合には非常に大量の酢酸エチルを使用して抽出を行わないと、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸は充分に抽出されない。また、抽出液を水洗すると折角抽出されたN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸が大量に水層へ移動してしまうため収率が著しく低下するという問題が起こる。さらに、抽出効率を高めるためには抽出溶媒として1−ブタノールのようなN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸に対する溶解度の高い溶媒を用いて抽出した場合には、その程度は小さくなるものの、水洗時における目的物のロスの問題が避けられないばかりでなく、塩の除去も困難となる。
そこで本発明は、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を製造するに際し、該N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸が水酸基を有するものであっても中和時に副生する塩とN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸とを、簡便且つ効率的に分離し、高収率でN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸、塩及び水を含有する有機溶媒溶液を共沸脱水することにより濃縮して塩を析出させ、析出した塩をろ過して除去した場合には、溶液中に残存する塩の濃度が500ppm以下となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸、塩及び5質量%以上の水を含有する有機溶媒溶液からN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を分離する工程を含むN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法であって、
(A)前記有機溶媒溶液に含まれる水を除去して該溶液に含まれる塩を析出させる工程、
(B)析出した塩を有機溶媒溶液から分離除去する工程、
(C)塩が分離除去された有機溶媒溶液に貧溶媒を加えてN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を析出させる工程、及び
(D)析出したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を液相から分離する工程
を含むことを特徴とする方法である。
(A)前記有機溶媒溶液に含まれる水を除去して該溶液に含まれる塩を析出させる工程、
(B)析出した塩を有機溶媒溶液から分離除去する工程、
(C)塩が分離除去された有機溶媒溶液に貧溶媒を加えてN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を析出させる工程、及び
(D)析出したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を液相から分離する工程
を含むことを特徴とする方法である。
本発明によれば、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸含有有機溶媒溶液から効率的に塩を除去することができ、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の結晶を、生産性を低下させることなく製造することが可能となる。
本発明の製造方法では、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸塩及び水を含有する有機溶媒溶液(以下、原料溶液ともいう。)からN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を分離してN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を製造する。
上記原料溶液は、有機溶媒中にN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸及び塩が溶解若しくは分散したものであれば特に限定されないが、工業的には次のような方法で得られた溶液を使用するのが好適である。すなわち、アミノ酸塩とジ−t−ブチルジカーボネートとを反応させた後に中和することにより得た、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸及び塩を含む水溶液または水懸濁液から有機溶媒を用いて抽出操作を行うことにより得られた抽出液を使用するのが好適である。該抽出液には上記中和反応で生成したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸と塩とが含まれる他、被抽出液の溶媒(分散媒)である水も含まれることになる。
上記アミノ酸塩は、アミノ酸を塩基と反応させることにより得ることができる。このとき原料となるアミノ酸は、分子内に少なくとも一つ以上のアミノ基またはイミノ基及びカルボキシル基を持つ化合物であれば特に制限はない。但し、一分子中に2個以上のアミノ基またはイミノ基を有しているアミノ酸の場合は、少なくとも1個のアミノ基またはイミノ基さえ有していれば、他のアミノ基またはイミノ基はアルキル基等により置換されていてもよい。また、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有しているアミノ酸の場合は、少なくとも1個のカルボキシル基さえ有していれば他のカルボキシル基はエステル或いはアミドの状態になっていてもよい。
原料として好適に使用できるアミノ酸を具体的に示せば、グリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、ジヨードチロシン、トレオニン、セリン、ホモセリン、イソセリン、アゼチジン−2−カルボン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、ピペリジン−2−カルボン、トリプトファン、チロキシン、メチオニン、ホモメチオニン、シスチン、ホモシスチン、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸−β−シクロへキシルエステル、アスパラギン酸−β−メチルエステル、アスパラギン酸−β−イソプロピルエステル、アスパラギン酸−β−ベンジルエステル、グルタミン酸、グルタミン酸−γ−シクロへキシルエステル、グルタミン酸−γ−メチルエステル、グルタミン酸−γ−イソプロピルエステル、グルタミン酸−γ−ベンジルエステル、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、アルギニン、ヒスチジン、アンチカプシン、N5−イミノメチルオルニチン、α−アミノ−β−(2−イミダゾリジル)プロピオン酸、タウリン、γ−ホルミル−N−メチルノルバリン、Ng−トシルアルギニン、Ng−ベンジルオキシカルボニルアルギニン、S−アセトアミドメチルシスティン、S−ベンジルシスティン、Nim−ベンジルオキシカルボニルヒスチジン、N6−ベンジルオキシカルボニルリジン、N5−ベンジルオキシカルボニルオルニチン、O−ベンジルセリン、O−ベンジルトレオニン、Nin−ホルミルトリプトファン、2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−グリオキシ酢酸、2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−ペンテン酸、フェニルグリシン、4−ヒドロキシフェニルグリシン酸を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、二種類以上組合して使用してもよい。また、光学異性体が存在する場合にはL体、D体、あるいはラセミ体いずれでもよい。これらの中でも、本発明の方法を採用することによるメリットが大きいという観点から、水酸基を有するアミノ酸を使用するのが好ましい。水酸基を有するアミノ酸を具体的に示せば、セリン、チロシン、チロニン、ヒドロキシフェニルグリシン、及びハイドロキシプロリンを挙げることができ、これらの中でもセリンが最も好ましい。
また、アミノ酸と反応させる塩基を具体的に例示すると、無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。また、有機塩基としては、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1−メチルピペリジン、1−メチルピロリジン等を挙げることができる。これらの塩基の使用量は、ジ−t−ブチルジカーボネートとの反応速度を維持し、且つジ−t−ブチルジカーボネートとの反応後の中和に要する酸の量を少なくするために、アミノ酸1当量に対して0.2〜2.0当量、さらに0.5〜1.5当量の範囲で選ぶことが好ましい。
このようにして得られたアミノ酸塩とジ−t−ブチルジカーボネートとの反応は、水性溶媒中で両者を混合することにより行うことができる。このとき、水性溶媒としては、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を使用することが好ましい。このときに用いる水溶性有機溶媒として好適なものを具体的に例示すると、2−メチル−2−プロパノール(以後t−ブチルアルコールとも呼ぶ)、t−アミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;アセトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルフォキサイド等を挙げることができる。これらの水溶性有機溶媒と水との混合比は、反応に用いられるアミノ酸の種類によって変化するため一概に決めることはできないが、アミノ酸およびジアルキルジカーボネートの溶解度をともに大きくして高い反応速度を維持するためには、水100質量部に対して水溶性有機溶媒を30質量部〜400質量部の範囲で選ぶことが好ましい。
上記反応における水溶性有機溶媒と水との混合溶媒中のアミノ酸塩の濃度としては、高い反応速度を維持し、かつ副生成物であるN−t−ブトキシカルボニルアミノ酸エステルの生成を抑制するために、混合溶媒100質量部に対して10〜70質量部の範囲から選択するとよい。
上記反応により、原料として使用したアミノ酸に対応したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸塩が生成する。反応終了後、生成したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸塩を中和するが、中和操作の前に反応液から水性有機溶媒を留去しておくことが好ましい。水溶性有機溶媒の留去操作における温度は特に制限されないが、光学活性なアミノ酸を原料として用いた場合には、ラセミ化を防止する観点から50℃以下で減圧留去することが好ましい。この溶媒留去操作においては、ジ−t−ブチルジカーボネートの分解によって副生したt−ブチルアルコールも除去される。
このようにして水溶性有機溶媒を留去した後にアミノ酸塩の中和が行われる。中和は、通常の酸塩基中和反応と同様に、水性有機溶媒留去後の反応液に酸を添加すればよい。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類;硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム等のアルカリ金属塩;又は酢酸、蟻酸、蓚酸等の有機酸を使用することができる。酸は、反応液のpHが1〜4の範囲になるまで加えることが好ましく、最適な添加量はN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸のpKa値によって決めればよい。中和は、20℃以下で実施することが望ましい。
このようにして得られたN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の水溶液または水懸濁液から有機溶媒を用いて抽出操作を行うことによりN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸及び前記中和反応で副生した塩の一部、更には有機溶媒の溶解度に応じて非抽出液の溶媒(分散媒である)水を含む原料溶液を得ることができる。抽出に際しては、前記水溶液または水懸濁液中の塩濃度を10質量%〜30質量%に調整するのが好ましい。塩濃度をこのような範囲とすることにより塩析効果により水に対する有機溶媒の溶解度が低下するので、水に対して混和性を有するアルコール等の有機溶媒を用いて抽出操作を行うことが可能となる。塩濃度の調製は、中和によって副生する塩の量および溶媒(水)量に応じて、水により希釈する又は塩を添加することにより行われる。添加する塩は副生する塩と同種であっても異種であってもよく、添加可能な塩を具体的に例示すれば、食塩、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化カリウムを挙げることができる。
抽出溶媒としては、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できる。これらの中でも1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。さらに、抽出の対象物であるN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸が水酸基を有する化合物であっても抽出効率を高くすることができるという理由から、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用するのが特に好適である。
抽出は、前記水溶液または水懸濁液と抽出溶媒である有機溶媒とを混合し、振とう或いは攪拌を行うことにより両者をよく接触させてから静置して、2相に分離させ、有機相を分液することにより好適に行うことができる。通常、前記水溶液または水懸濁液100容量部に対して20〜50容量部の有機溶媒で3回程度抽出すれば、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸のほぼ全量を抽出することができる。このようにして分離回収された有機層(抽出液)が原料溶液となる。このようにして得られた原料溶液には、水の抽出溶媒に対する溶解度に応じて水が含まれることになる。抽出溶媒として前記したものを使用した場合には、通常5質量%〜50質量%の水が含まれることになる。抽出溶媒として特に好適なもとして例示したものを用いた場合には、10質量%以上、更には20質量%以上の水を含むこともある。原料溶液には、5質量%以上の水が含まれるので、塩も一緒に溶け込むことになる。
本発明の製造方法では(A)工程で、原料溶に含まれる水を除去して該溶液に含まれる塩を析出させる。水分の除去は、共沸脱水すればよい、抽出溶媒(原料溶液の有機溶媒成分)自体が水と共沸混合物を作ることができるものであれば有機溶媒を留去するときに水も同時に留去される。抽出溶媒が水と共沸混合物を作らないものである場合には、水と共沸混合物を作る有機溶媒を添加してから溶媒留去を行えばよい。水分の除去に伴い、水に溶けていた塩が溶解できなくなり析出してくる。水分は完全に除去するのが好ましいが、残水分量が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であれば原料溶液に溶解する塩濃度を問題とならないレベル(例えば500ppm以下)とすることができる。
本発明の方法では、工程(B)において、前記工程(A)で析出した塩を水分除去後の原料溶液から分離除去する。塩の分離法としては、固液分離法として知られている方法が特に制限無く利用できるが、操作の簡便性から加圧ろ過、減圧ろ過、自然ろ過、遠心分離ろ過等のろ過法を採用するのが好ましい。水分除去後の原料溶液が水および有機溶媒の留去により粘度が高くなってしまい、ろ過が困難な場合には抽出に使用した有機溶媒を加え希釈してもよい。また、加熱して粘度を下げてろ過しても良い。このようにして得られたろ液中の塩濃度は、通常、500ppm以下となっており、そのまま次工程に供すことができる。
本発明では、(C)工程として、前記工程(B)で塩が分離除去された有機溶媒溶液(以下、単に塩除去液ともいう。)に貧溶媒を加えてN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を析出させると共に、(D)工程において、該(C)工程で析出したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を液相から分離する。
(C)工程においては、貧溶媒を添加する前に塩除去液を濃縮し、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の濃度が50質量%以上となるようにするのが好ましい。こうすることのよりN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の回収率を高くすることができる。必要に応じて濃縮された塩除去液に添加する貧溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メチル等のエステル類;ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;又はベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が使用できる。これらの中でも、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、又はキシレンが好適に使用され、結晶性の良いN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を析出させることができるという観点から、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用するのが特に好ましい。貧溶媒の添加量は、貧溶媒の種類や塩除去液における溶媒の種類、更にはN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の種類や濃度に応じて適宜決定すればよいが、通常は、必要に応じて濃縮された塩除去液に含まれる有機溶媒(抽出溶媒)の質量の0.1〜50質量倍、特に1〜30質量倍の範囲である。
貧溶媒を添加することによって、N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の結晶が析出してくるので、それを熟成してから分離すればよい。結晶の熟成は、系に応じて適宜決定すれば良いが、通常は、−20℃〜80℃に1〜10時間程度静置または攪拌すればよい。
このようにして熟成された結晶を分離する方法としては、デカンテーションやろ過などの公知の固液分離法が何ら限定無く採用できる。分離されたN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の結晶は、必要に応じて洗浄し、更に乾燥することにより純度の高い固体として単離される。乾燥方法としては、風乾、温風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、天日干等公知の乾燥方法が特に限定されず採用される。乾燥温度は適宜選択すればよい。
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例示によって何ら制限されるものではない。
実施例1
温度計、コンデンサー、攪拌翼(メカニカルスターラーにて攪拌)を装着した2L四つ口ガラス反応器にイオン交換水300g、水酸化ナトリウム44.0g(1.1mol)を加え25℃に調節した。次いで、L−セリン105.1g(1.0mol)を30℃以下で加え溶解させ、さらにt−ブチルアルコール180gを加え25〜30℃に調節した。次にジ−t−ブチルジカーボネート229.2g(1.05mol)を、反応液温が35℃以下となるように維持しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30〜35℃で10時間さらに攪拌した。経時的にサンプリングした反応液を高速液体クロマトグラフィー(以後、HPLCとも呼ぶ)で分析することにより反応を追跡し、転化率が99%となった時点を終点とした。反応終了後、釜残が400gとなるまで水およびt−ブチルアルコールを留去することにより反応液を濃縮した。濃縮後、イオン交換水88gを加え反応液を10℃以下に調整し、溶液温度が15℃以下を維持するように12質量%塩酸364g(1.2mol)を2時間かけて滴下することにより中和を行った。中和後の反応液(水溶液)に、食塩75gを加え均一溶液とした後、1−ブタノール162gを加えN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンを抽出した。さらに、水層に1−ブタノール81gを加え同様に抽出した。得られた油層を合わせて水分量が500ppm以下となるまで減圧濃縮し、1−ブタノール40gを加えて減圧ろ過し析出した食塩を除去した。得られたろ液を1−ブタノールの残量が20gとなるまで濃縮し、ヘプタン70gを加え35℃で2時間攪拌し結晶化した。その後、さらにヘプタン490gを加え25℃で1時間、5℃で2時間熟成後、減圧ろ過しN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの湿体を得た。次に、この湿体を50℃で減圧乾燥し、N−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの乾燥体183g(収率:85%、HPLC純度:99.5面積%、残存塩:200ppm)を得た。
温度計、コンデンサー、攪拌翼(メカニカルスターラーにて攪拌)を装着した2L四つ口ガラス反応器にイオン交換水300g、水酸化ナトリウム44.0g(1.1mol)を加え25℃に調節した。次いで、L−セリン105.1g(1.0mol)を30℃以下で加え溶解させ、さらにt−ブチルアルコール180gを加え25〜30℃に調節した。次にジ−t−ブチルジカーボネート229.2g(1.05mol)を、反応液温が35℃以下となるように維持しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30〜35℃で10時間さらに攪拌した。経時的にサンプリングした反応液を高速液体クロマトグラフィー(以後、HPLCとも呼ぶ)で分析することにより反応を追跡し、転化率が99%となった時点を終点とした。反応終了後、釜残が400gとなるまで水およびt−ブチルアルコールを留去することにより反応液を濃縮した。濃縮後、イオン交換水88gを加え反応液を10℃以下に調整し、溶液温度が15℃以下を維持するように12質量%塩酸364g(1.2mol)を2時間かけて滴下することにより中和を行った。中和後の反応液(水溶液)に、食塩75gを加え均一溶液とした後、1−ブタノール162gを加えN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンを抽出した。さらに、水層に1−ブタノール81gを加え同様に抽出した。得られた油層を合わせて水分量が500ppm以下となるまで減圧濃縮し、1−ブタノール40gを加えて減圧ろ過し析出した食塩を除去した。得られたろ液を1−ブタノールの残量が20gとなるまで濃縮し、ヘプタン70gを加え35℃で2時間攪拌し結晶化した。その後、さらにヘプタン490gを加え25℃で1時間、5℃で2時間熟成後、減圧ろ過しN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの湿体を得た。次に、この湿体を50℃で減圧乾燥し、N−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの乾燥体183g(収率:85%、HPLC純度:99.5面積%、残存塩:200ppm)を得た。
実施例2〜4
実施例1において、抽出溶媒を2−ブタノール、t−ブチルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は実施例1に従った。結果を表1に示す。
実施例1において、抽出溶媒を2−ブタノール、t−ブチルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は実施例1に従った。結果を表1に示す。
比較例1
温度計、コンデンサー、攪拌翼(メカニカルスターラーにて攪拌)を装着した2L四つ口ガラス反応器にイオン交換水300g、水酸化ナトリウム44.0g(1.1mol)を加え25℃に調節した。次いで、L−セリン105.1g(1.0mol)を30℃以下で加え溶解させ、さらにt−ブチルアルコール180gを加え25〜30℃に調節した。次にジ−t−ブチルジカーボネート229.2g(1.05mol)を、反応液温が35℃以下となるように維持しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30〜35℃で10時間さらに攪拌した。経時的にサンプリングした反応液をHPLC分析することにより反応を追跡し、転化率が99%となった時点を終点とした。反応終了後、釜残が400gとなるまで水およびt−ブチルアルコールを留去することにより反応液を濃縮した。濃縮後、イオン交換水88gを加え反応液を10℃以下に調整し、溶液温度が15℃以下を維持するように12質量%塩酸364g(1.2mol)を2時間かけて滴下することにより中和を行った。中和後の反応液(水溶液)に、食塩75gを加え均一溶液とした後、1−ブタノール162gを加えN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンを抽出した。さらに、水層に1−ブタノール81gを加え同様に抽出した。得られた油層を合わせてイオン交換水50gで2回水洗した。その後油層を水分量が500ppm以下となるまで減圧濃縮し、1−ブタノールの残量が20gとなるまで濃縮し、ヘプタン70gを加え35℃で2時間攪拌し結晶化した。その後、さらにヘプタン490gを加え25℃で1時間、5℃で2時間熟成後、減圧ろ過しN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの湿体を得た。次に、この湿体を50℃で減圧乾燥し、N−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの乾燥体92g(収率:43%、HPLC純度:98.5面積%、残存塩:5000ppm)を得た。
温度計、コンデンサー、攪拌翼(メカニカルスターラーにて攪拌)を装着した2L四つ口ガラス反応器にイオン交換水300g、水酸化ナトリウム44.0g(1.1mol)を加え25℃に調節した。次いで、L−セリン105.1g(1.0mol)を30℃以下で加え溶解させ、さらにt−ブチルアルコール180gを加え25〜30℃に調節した。次にジ−t−ブチルジカーボネート229.2g(1.05mol)を、反応液温が35℃以下となるように維持しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30〜35℃で10時間さらに攪拌した。経時的にサンプリングした反応液をHPLC分析することにより反応を追跡し、転化率が99%となった時点を終点とした。反応終了後、釜残が400gとなるまで水およびt−ブチルアルコールを留去することにより反応液を濃縮した。濃縮後、イオン交換水88gを加え反応液を10℃以下に調整し、溶液温度が15℃以下を維持するように12質量%塩酸364g(1.2mol)を2時間かけて滴下することにより中和を行った。中和後の反応液(水溶液)に、食塩75gを加え均一溶液とした後、1−ブタノール162gを加えN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンを抽出した。さらに、水層に1−ブタノール81gを加え同様に抽出した。得られた油層を合わせてイオン交換水50gで2回水洗した。その後油層を水分量が500ppm以下となるまで減圧濃縮し、1−ブタノールの残量が20gとなるまで濃縮し、ヘプタン70gを加え35℃で2時間攪拌し結晶化した。その後、さらにヘプタン490gを加え25℃で1時間、5℃で2時間熟成後、減圧ろ過しN−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの湿体を得た。次に、この湿体を50℃で減圧乾燥し、N−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリンの乾燥体92g(収率:43%、HPLC純度:98.5面積%、残存塩:5000ppm)を得た。
比較例2
実施例1において減圧ろ過により塩のろ過を行わなかった以外は実施例1に従った。結果は収率:85%、HPLC純度:99.5面積%、残存塩:2%であった。
実施例1において減圧ろ過により塩のろ過を行わなかった以外は実施例1に従った。結果は収率:85%、HPLC純度:99.5面積%、残存塩:2%であった。
Claims (4)
- N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸、塩及び5質量%以上の水を含有する有機溶媒溶液からN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を分離する工程を含むN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法であって、
(A)前記有機溶媒溶液に含まれる水を除去して該溶液に含まれる塩を析出させる工程、
(B)析出した塩を有機溶媒溶液から分離除去する工程、
(C)塩が分離除去された有機溶媒溶液に貧溶媒を加えてN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を析出させる工程、及び
(D)析出したN−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸を液相から分離する工程
を含むことを特徴とする方法。 - N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸及び塩を含有する有機溶媒溶液の溶媒である有機溶媒が、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の方法。
- 前記工程(C)で使用する貧溶媒が、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の方法。
- N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸がN−t−ブチルオキシカルボニル−DL−セリン、N−t−ブチルオキシカルボニル−L−セリン、又はN−t−ブチルオキシカルボニル−D−セリンである請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
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JP2006159753A JP2007326817A (ja) | 2006-06-08 | 2006-06-08 | N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法 |
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