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JP2007309032A - 橋梁ジョイント部の連続化構造 - Google Patents

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JP2007309032A JP2006141079A JP2006141079A JP2007309032A JP 2007309032 A JP2007309032 A JP 2007309032A JP 2006141079 A JP2006141079 A JP 2006141079A JP 2006141079 A JP2006141079 A JP 2006141079A JP 2007309032 A JP2007309032 A JP 2007309032A
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Abstract

【課題】橋梁ジョイント部の連続化構造において、桁端の桁回転変位や伸縮変形をジョイント部材の変形性能で吸収し、表層舗装の早期劣化を回避しつつ、耐久性の向上で円滑な交通荷重の通過を可能とし、しかも短時間で施工を可能とする。
【解決手段】橋桁1の隣接するRC床版2、2の上部にそれぞれ設けた切欠き10で形成された埋設空間11に、ビニロン繊維等をセメントマトリクス中に配合した、ひび割れ分散による擬似的な伸び性能が大きく、高い引張・曲げ変形能力を有し、鉛直剛性がRC床版とほぼ同等の高靭性繊維補強セメント複合材料からなる版状のプレキャストジョイント部材12を遊間4を跨いで配置し、その両端部をそれぞれアンカーボルト13等によりRC床版2に定着し、埋設空間11の隙間に樹脂モルタル等の間詰材16を充填し、舗装体5で覆う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、道路橋等の橋梁の橋桁中間部や端部におけるジョイント部の連続化構造に関するものである。
道路橋等においては、連続する橋桁と橋桁との間、橋桁と橋台との間には、交通荷重による橋桁のたわみや温度変化に伴う伸縮等により生じる動きの違いを吸収し、交通荷重を安全に通過させるための伸縮継手という構造が設けられている。
従来の伸縮継手は、鋼製の爪や鋼板の組合せ、伸縮するゴム系のジョイント構造が用いられてきたが、表面の凹凸や段差が存在することにより、交通荷重の通過に伴って振動や騒音発生の原因となっている。
図8は、ゴム系の伸縮ジョイントの一例であり、遊間をおいて対向配置されている橋桁1、1の端部における舗装体5を所定範囲にわたって撤去し、橋桁の床版2の上部を所定範囲にわたってはつり、形成された切欠き空間に遊間4を跨いでゴムジョイント70を配置し、隙間空間を超早強コンクリート71で埋めると共に、アンカーボルト72と床版埋込み筋73を用いて定着させている。遊間4にはウレタンフォーム74を配置している。このジョイント構造の場合、車両通過時に騒音・振動が発生する、アスファルト舗装体5とコンクリート71の接合部の磨耗・段差が発生する、アンカーボルト72のがたつきが生じる、ゴムジョイント70が損傷する、ジョイント部から漏水するなどの問題がある。
この騒音・振動を解消するための対策として、表面舗装を連続化させる埋設ジョイント工法、床版コンクリートを連続化させる床版連結工法、主桁を連結して連続化させる主桁連結工法、端横桁を連結する横桁連結工法等があり、伸縮継手によって区切られていた走行路を一様な路面に改良すること(一般にノージョイント化と呼ばれている)が行われつつある。
耐久性を確保できるノージョイント化工法としては、床版コンクリートと鋼桁の一部のみを連続化した床版連結工法が現時点では唯一とされている。図9はそのノージョイント化床版連結構造の例であり、橋桁1、1の端部の舗装5を所定範囲にわたって撤去し、橋桁の床版2を所定範囲にわたって撤去し、床版2の既設鉄筋6に連結鉄筋80を溶接で取付け、床版2、2間の空間に樹脂コンクリート81を打設し、この上にアスファルト等の舗装体5を再舗装する。鋼桁3の上部フランジの端部同士は、連結鋼板82、添接板83、フィラープレート84を用いて連結する。連結鋼板82等の上には、発泡スチロールの縁切り材85が桁上に配置される。桁端の鉛直方向の桁回転変位(角変化、角折れ)、温度収縮・膨張に対して、連結鉄筋80・連結鋼板82の弾性ひずみで抵抗する。
また、本発明に関連する先行技術文献としては、特許文献1〜4がある。特許文献1の発明は、伸縮遊間上の両側にわたって骨材を含むアスファルト混合物からなる舗装を連続して施工するものであり、伸縮遊間を挟んで対向する橋体(橋桁や橋台) の端部の上に伸縮遊間を跨いでシート状の滑り層を布設し、この上に網状体を敷設し、その上に基層と表層からなるアスファルト混合物(ゴムアスファルトコンパウンド) を積層し、基層には応力を分散させてひび割れを防止するハニカムやエキスパンドメタル等の応力伝達部材を埋設し、基層と表層との間には、基層から表層に伝えられる応力を分散させてひび割れを防止する、メッシュ状の補強用繊維をアスファルト系材料内に埋設したひずみ分散シートを介挿したものである。
特許文献2の発明は、伸縮遊間上の舗装部に埋設される埋設ジョイント部材であり、伸縮遊間を跨いでゴム製の埋設ジョイント部材を設置し、このゴム製の埋設ジョイント部材にはスチールコードまたは繊維コードを橋軸方向とバイアス方向に配設し、橋軸方向・橋軸直角方向・回転方向のひずみを分散できるようにし、この埋設ジョイント部材の両端部にはテンションバーを埋設し、このテンションバーをテンションボルトで橋体または陸上道路に固定し、この埋設ジョイント部材の中央部下面には埋設ジョイント部材が伸縮遊間に落ち込むのを防止する硬質板からなる荷重支持部材を埋設したものである。
特許文献3の発明は、道路橋等の橋面継手部の補修工法であり、床版対向端部間の既設継手部材を除去した部分に、遊間部をバックアップ材で封じた後、その上にシート状物を敷設してから、ジオテキスタイルと弾性樹脂を積層した弾性舗装体を形成するものである。
特許文献4の発明は、埋設型伸縮継手の構造であり、対向する桁に目地遊間を跨いで中央部が垂下する弛みを有する可撓性の合成樹脂板を取付け、この上に相互摺動面を有するスライドプレート及びカバープレートをそれぞれ対向する桁に固着し、その上に埋戻し舗装材を載せたものである。
特開平7−166506号公報 特開平10−292316号公報 特開平6−257105号公報 特開平11−140821号公報
特許文献2等の埋設ジョイント工法は、桁端の回転角、橋桁の伸縮を舗装直下の柔軟な部材により一定範囲内の一様なひずみとして分散させ、舗装自体のひび割れを一箇所に集中させないような配慮の元に構成されているが、頻繁な交通荷重の通過や制動荷重により、舗装下の柔軟な部材の変形により数年で劣化しており、その耐久性が維持できないことが明らかになってきた。
床版コンクリートと鋼桁の一部のみを連続化した床版連結工法(図9)の場合、既設コンクリートの広くて深い範囲のはつり撤去、鋼桁の上フランジの接合、既設鉄筋同士の溶接、連結床版部分の縁切り、樹脂コンクリートの打設、再舗装など、手間と時間がかかり、一昼夜を越える交通止め作業が不可欠となっており、大々的な展開は困難となっている。
本発明は、橋梁の中間部または端部の不連続部に設けられるジョイント部の連続化構造において、交通荷重の載荷に伴う桁端の桁回転変位や温度変化等に伴う伸縮変形をジョイント部材の変形性能で吸収し、表層アスファルト舗装の早期劣化を回避しつつ、耐久性の向上により円滑な交通荷重の通過を可能とし、しかも短時間で施工が可能な橋梁ジョイント部の連続化構造を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る発明は、橋梁の中間部または端部において橋体(橋桁や橋台)が遊間を挟んで対向配置されている不連続部の橋面を連続化する橋梁ジョイント部の連続化構造であり、遊間を挟んで対向する橋体端部の上部にそれぞれ切欠きを設けることによりジョイント部材の埋設空間が形成され、この埋設空間に高靭性繊維補強セメント複合材料(以下、高靭性FRCCと記載)からなる版状のプレキャストジョイント部材が遊間を跨いで配置され、このプレキャストジョイント部材の橋軸方向の両端部がそれぞれアンカー(アンカーボルトやアンカー鉄筋など)により橋体に定着され、埋設空間内のプレキャストジョイント部材下面には縁切り用シートを配置した上で橋体との間には間詰材(樹脂モルタル等)が充填され、プレキャストジョイント部材上面が舗装材料(アスファルト等)で覆われていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造である(図1〜図4参照)。プレキャストジョイント部材は、舗装体で覆われる。既設や新設の橋梁の連続化に適用される。
本発明は、道路橋等のノージョイント化工法の一つである埋設ジョイント工法において、従来の埋設ジョイントの弱点である柔軟部材を、高靭性FRCCからなるプレキャストジョイント部材に置き換えることにより、交通荷重の載荷に伴う桁端の鉛直方向の桁回転変位(角変化、角折れ)、あるいは温度変化等に伴う伸縮変形を、同部材のひび割れ分散性能で吸収すると共に、同部材にはコンクリートと同程度の鉛直剛性があるため、交通荷重に対して周囲のコンクリート床版と同程度の変形特性を維持することで、表層舗装の局所的な破壊を防止できるようにしたものである。さらに、本構造は、従来の伸縮ジョイント部材と同様、プレキャスト部材で構成されていることから、従来の伸縮ジョイントの取換えが片側交通規制下において一晩で施工できた(既設の橋梁の場合)のと同様、短時間で施工可能なものである。
高靭性FRCCは、ビニロン繊維やポリエチレン繊維等の非常に細くて強い化学繊維がセメントマトリクス中に3次元方向にランダムに分散配合され、見かけの引張ひずみが数%(2〜3%) に達するような靭性に富む材料である。このような材料で成形したプレキャストジョイント部材は、高い引張変形能力・曲げ変形能力を有し、また鉄筋コンクリートと同等の鉛直剛性を有する。
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材の橋軸方向の中央部における下部に凹部が設けられていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造である。
橋梁ジョイント部には、隣接橋桁の支承条件が両方固定で、桁端の桁回転変位のみが作用する場合(図1参照)と、片側固定で片側移動あるいは両方移動で、桁端の桁回転変位と、伸縮変形とが作用する場合(図3参照)があり、図2(a)、(b)、図4(b)等に示すように、凹部による薄肉部の変形で桁回転変位や伸縮変形を吸収し、変位量が大きい場合は材料の非常に細かなひび割れに分散して変位を吸収する。図2(a)はアーチ型であり、変形はアーチ部で吸収され、車両荷重はアーチ効果により床版に伝達され、耐荷性能が保持される。図2(b)は、複数のスリットによるひび割れ分散型であり、複数のスリットによりひび割れが効果的に分散される。
本発明の請求項3は、請求項1に記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材の橋軸方向の中央部における下部に遊間に挿入される下方突起部が設けられていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造である。
図2(c)等に示すように、平板部の下に下方突起部を一体的に設けた場合であり、平板部の左右両側の2箇所に変形やひび割れを分散させることができ、また部材長手方向(橋軸直角方向)に連続する下方突起部により平板部の剛性が向上し、輪荷重を支持することができる。
本発明の請求項4は、請求項1に記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材が上下に分割され、上部プレキャストジョイント部材の橋軸方向の両端部がアンカーにより橋体に定着され、上部プレキャストジョイント部材の橋軸方向中央部の下に下部プレキャストジョイント部材が配置されていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造である。
図3、図4(a)に示すように、プレキャストジョイント部材を上下分離型とした場合であり、上部プレキャストジョイント部材の薄肉部で桁端の桁回転変位や伸縮変形を吸収し、下部プレキャストジョイント部材で輪荷重を支持する。この下部プレキャストジョイント部材には下方突起部を設けるのが好ましい。
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材の上面に弾性体シート(繊維補強樹脂シート等)が貼設されていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造である。
図2(d)、(e)等に示すように、プレキャストジョイント部材の上面や両側面を弾性体シートにより補強するものであり、弾性体シートによる復元特性でひび割れが閉じる効果と、舗装体への影響を軽減する効果が得られる。
以上のような構成のプレキャストジョイント部材の高靭性FRCCは、適切に配合されたビニロン繊維やポリエチレン繊維等と、セメント、細骨材からなる複合材料であり、従来のセメント材料の常識を超える引張変形能力・曲げ変形能力を有する。例えば、3%の純引張ひずみ(鋼材の降伏ひずみの20倍相当)でも耐力を維持できる。モルタルや既存の繊維補強コンクリート(FRC)では、初期クラックが生じると、このクラックが拡大してそのまま破壊されてしまうが、高靭性FRCCは、繊維によるクラックの架橋能力が高く、増加する引張荷重が繊維により負担されるため、初期ひび割れが破壊につながらず、次のひび割れが生じ、次々とこの連鎖が続き、微小なひび割れが細かく分散され、結果的に非常に大きな引張ひずみが生じて、荷重に耐えることができる。
本材料により制作されたプレキャストジョイント部材で橋桁の端部同士を連結し、その上を一般部と同様に舗装することで、見かけは一様な路面を現出させることができる。桁端の桁回転変位や伸縮変位は、両方の桁に固定された高靭性FRCCのプレキャストジョイント部材が負担し、変位量が大きい場合は非常に細かなひび割れに分散して変位を吸収することから、舗装自体の柔軟な追随性の範囲内に局所ひずみを抑制でき、舗装体の破壊を免れるという性能を発揮する。
また、高靭性FRCCの部材の鉛直剛性は、RC床版の剛性と殆ど変わりないことから、急激な剛性変化に伴う段差の発生や舗装の劣化、すり減りを発生させる原因とはなり難い。
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
(1)高靭性FRCCからなるプレキャストジョイント部材で橋桁の端部同士を連結し、その上を一般部と同様に舗装することで、連続した路面を現出させることができ、桁端の桁回転変位や伸縮変形はプレキャストジョイント部材で負担し、変位量が大きい場合は非常に細かいひび割れに分散して変位を吸収することができるため、舗装自体の柔軟な追随性の範囲内に局所ひずみを抑制でき、舗装の破壊を回避することができ、舗装の早期劣化を回避しつつ、耐久性の向上により円滑な交通荷重の通過が可能となる。
(2)高靭性FRCCの鉛直剛性はRC床版の剛性と殆ど変わりないことから、急激な剛性変化に伴う段差の発生や舗装の劣化、すり減りを発生する原因とはなり難く、結果的に舗装の長寿命化に貢献する。
(3)ジョイント部材はプレキャスト部材であるため、短時間で施工が可能であり、既設の橋梁の場合には、一晩でノージョイント化が可能となる。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、既設の鋼桁床版構造の橋梁の連続化に適用した例である。新設の橋梁の連続化にも適用することができる。また、鋼桁床版に限らず、その他の型式の橋梁にも適用できる。また、連続する橋桁と橋桁のジョイント部について例示しているが、橋桁と橋台とのジョイント部についても同様である。
図1は、本発明の橋梁ジョイント部の連続化構造であり、隣接橋桁の支承条件が両方とも固定支承による固定(F―F)の場合の一実施形態を示す鉛直断面図である。図2は、図1の連続化構造で用いられるジョイント部材の種々の形態を示す鉛直断面図である。図3は、隣接橋桁の支承条件が固定支承による片方固定・可動支承による片方移動(F−M)あるいは両方移動(M−M)の場合の一実施形態を示す鉛直断面図である。図4は、図3の連続化構造で用いられるジョイント部材の種々の形態を示す鉛直断面図である。図5は、図1の連続化構造の詳細を示す橋軸方向に平行な鉛直断面図、平面図、橋軸直角方向に平行な鉛直断面図である。図6は、図1で用いられるジョイント部材の詳細を示す幅方向に平行な鉛直断面図、長手方向に平行な鉛直断面図、底面図である。図7は、実際に行った連続化構造の例を示す鉛直断面図である。
図1において、橋桁1は鉄筋コンクリート(RC)床版2と鋼桁3から構成され、RC床版2とRC床版2とが遊間4をおいて対向配置されており、隣接するRC床版2、2の上部にそれぞれ切欠き10を設け、2つの切欠き10で形成された埋設空間11に高靭性FRCC(High Performance Fiber Reinforced Cementitious Composites)からなる版状のプレキャストジョイント部材(以下、PCaジョイント部材と記載)12を遊間4を跨いで配置し、このPCaジョイント部材12の橋軸方向の両端部をそれぞれアンカーボルト13等によりRC床版2に定着する。遊間4の上部はウレタンフォーム等のバックアップ材14で閉塞し、PCaジョイント部材12に設けた注入孔15からPCaジョイント部材12とRC床版2との間の隙間に樹脂モルタル等の間詰材16を充填する。PCaジョイント部材12の上面には防水シート17等を設け、アスファルト混合物等からなる舗装体5で覆うことにより、橋面が連続化される。
既設の橋梁の場合、舗装体5を所定範囲にわたって撤去し、RC床版2の上部を所定範囲にわたって部分的にはつり、埋設空間11内に突出するRC床版2の上部の既設鉄筋6を切断除去し、この埋設空間11内にアンカー工を施工した後、PCaジョイント部材12を設置する。次いで、間詰材16の注入工、防水工を施工し、その上に舗装体5を再舗装して完了する。急速施工が可能であり、片側交通規制下において一晩でノージョイント化施工が可能となる。
高靱性FRCCは、セメント・水・砂等の通常のモルタルに用いる材料のマトリクスに、ビニロンやポリエチレン等の非常に細くて強い化学繊維を3次元方向にランダムに分散配合したものであり、従来のセメント材料の常識を超える引張変形能力(伸び性能) と曲げ変形能力を有する材料である。例えば、3%の純引張ひずみ(鋼材降伏ひずみの20倍) でも耐力を維持することができる。
このような高靱性化のメカニズムは以下の通りである。即ち、モルタルや既存のFRC材料では、初期クラックが生じると、このクラックが拡大してそのまま破壊してしまう。しかし、高靱性FRCCでは、繊維によるクラックの架橋能力が高く、増加する引張外力が繊維により負担されるため、初期ひび割れが破壊につながることなく、次のひび割れが発生する。引き続き、次々と新たな微小なひび割れが多数発生し、見かけ上、非常に大きな引張ひずみが生じても荷重に耐えることができる。
応力−ひずみ線図において、通常のモルタルや既存の鋼繊維のFRC材料は、鋼材のような降伏棚がないが、ビニロン繊維等の高靱性FRCCは所定の引張力に対して引張ひずみが増大する降伏棚を有しており、2〜3%の見かけの引張ひずみが得られる。
本材料でPCaジョイント部材12が製作されるが、その形状は次のようなものが考えられる。図1は、隣接する橋桁1、1の支承条件が固定支承によるF−Fであるため、温度変化に伴う桁端の伸縮は無く、交通荷重の載荷に伴う桁端の鉛直方向の桁回転変位(角変化、角折れ)と移動成分のみが作用する連続化構造である。従って、図1の連続化構造に用いられるPCaジョイント部材12の断面形状は、図2(a)に示すように、橋軸方向の中央部における下部に凹部20が形成され、アーチ型とされている。中央部が薄肉部21とされ、両端部に厚肉部22が設けられている。上面はフラットであり、両端面には、下方に向かって狭まる傾斜面23が形成され、荷重が集中して伝達されるようにしている。
この図1、図2(a)のアーチ型のPCaジョイント部材12において、桁端の桁回転変位は、高靱性FRC材料のアーチ部の変形で吸収する。変位量が大きい場合は、非常に細かなひび割れに分散して変位を吸収する。車両荷重はアーチ効果によりRC床版2に伝達される。高靱性FRCCは鉄筋コンクリートと同程度の鉛直剛性を有し、舗装体5の局所的な破壊が回避される。
図2(b)は、凹部20の上面に複数のスリット24を鋸歯状に形成したひび割れ分散型のPCaジョイント部材12である。図2(a)のアーチ型と同様の作用効果が得られるほか、複数のスリット24によりひび割れを効果的に分散させることができる。
図2(c)は、上部の平板部25の橋軸方向の中央部における下面に、下方に突出して遊間4に挿入される下方突起部26を設けたT型のPCaジョイント部材12である。桁端の桁回転変位を高靱性FRCCの平板部25の左右両側の変形で吸収すると共に、ひび割れを平板部25の左右両側の2箇所に分散させることができる。下方突起部26は、橋軸直角方向に連続する部材であり、薄肉部の剛性を高め、輪荷重を支持し、平板部25・舗装体5を平坦に保持することができる。
図2(d)、(e)は、上記のPCaジョイント部材12の上面・側面を繊維補強樹脂シート等の弾性体シート50で補強する例であり、弾性体シート50による復元特性でひび割れが閉じる効果と、舗装体5への影響を軽減する効果が得られる。
次に、図3は、隣接する橋桁1、1の支承条件が片方固定、片方移動のF−M、あるいは両方移動のM−Mであるため、桁端の桁回転変位と共に、温度変化等に伴う桁端の伸縮が作用する部位での連続化構造である。従って、図3の連続化構造に用いられるPCaジョイント部材12は、上下に2分割した分離型とされ、上部のPCaジョイント部材30で変形を吸収し、下部のPCaジョイント部材31で輪荷重を支持する構成とされている。
上部のPCaジョイント部材30は、図4(a)に示すように、橋軸方向の中央部が薄肉部32とされ、両端部に厚肉部33が設けられている。薄肉部32の下面には鋸歯状のスリット34が設けられている。下部のPCaジョイント部材31は、薄肉部32の下の凹部内に配置される平板部35と、遊間4に挿入される下方突起部36からT型に形成されている。厚肉部33には、アンカーとしての定着鉄筋37が予め設けられおり、床版埋込み筋38(図3参照)を介してRC床版2に定着される。なお、上部の薄肉部32と下部の平板部35との間には、発泡スチロール等の下面縁切り材39が配置されている。
この図3、図4(a)の分離型のPCaジョイント部材12において、桁端の鉛直方向の桁回転変位及び温度変化等に伴う引張変形は、高靱性FRCCの上部PCaジョイント部材30の薄肉部32の変形で吸収する。変位量が大きい場合は、非常に細かなひび割れに分散して変位を吸収する。車両荷重は下部PCaジョイント部材31によりRC床版2に伝達される。高靱性FRCCはコンクリートと同程度の鉛直剛性を有し、さらに薄肉部32が下部PCaジョイント部材31でバックアップされているため、舗装体5の局所的な破壊が回避される。なお、温度変化等に伴う圧縮変形は、遊び分を上部PCaジョイント部材30が負担し、最終的に下部PCaジョイント部材31の下方突起部36が負担する。
図4(b)は、一体型のPCaジョイント部材12であり、図4(a)の薄肉部32を厚肉の平板部40とすることにより、輪荷重支持の下部PCaジョイント部材31を省略できるようにしたものである。この場合、RC床版2の切欠き10の形状を工夫し、定着部41に厚みと同じ深さの凹部を形成することで、定着鉄筋37等を最小化することができる。
図4(c)では、図4(a)の薄肉部32の中央部における下部に下方突起部36を設けることにより、輪荷重支持の下部PCaジョイント部材31を省略している。さらに、隣接するRC床版2、2の下面に繊維補強樹脂シート等の弾性体シート51を貼付け、桁端移動制限工として変位を制御することもできる。
次に、図5、図6の具体的な実施例において、PCaジョイント部材12は、図6に示すように、幅が60cm程度、長さが1m程度の版であり、両側の厚肉部22にボルト孔18が長手方向に間隔をおいて千鳥状に配置されている。このボルト孔18は、長手方向に長い長孔とされ、アンカーボルト13の設置誤差を吸収できるようにされている。アンカーボルト13は、図5に示すように、場所打ちアンカーであり、例えばケミカルアンカーが用いられる。施工に際しては、図5に示すように、RC床版2を橋軸直角方向に二分割し、片側交通規制下で、一次施工、二次施工を行い、一晩で施工を完了することができる。
また、図7は、実際に行った施工例であり、PCaジョイント部材12は、幅が60cm程度、長さが2m程度の薄い版であり、両端部と中央部に厚肉部22が設けられている。高靭性FRCCの内部には金網が補強材として埋設されている。上面はフラットであり、両端部の上面には外に向かって下り勾配の傾斜面が形成されている。RC床版2の上部は2段ではつられており、中央部が深い埋設空間11が形成される。
両端部の厚肉部22がアンカーボルト13によりRC床版2に定着され、中央部の厚肉部22や薄肉部21に設けられた注入孔15から間詰材(超早強モルタル)16が充填される。中央部の厚肉部22には定着鉄筋37が設けられている。薄肉部21の下面には縁切りシート39が設けられている。PCaジョイント部材12の上面からRC床版2の上面にかけて防水シート17が設けられ、この上に舗装体5が再舗装される。
本発明の橋梁ジョイント部の連続化構造であり、隣接橋桁の支承条件が両方とも固定支承による固定(F―F)の場合の一実施形態を示す鉛直断面図である。 図1の連続化構造で用いられるジョイント部材の種々の形態を示す鉛直断面図である。 本発明の橋梁ジョイント部の連続化構造であり、隣接橋桁の支承条件が固定支承による片方固定・可動支承による片方移動(F−M)あるいは両方移動(M−M)の場合の一実施形態を示す鉛直断面図である。 図3の連続化構造で用いられるジョイント部材の種々の形態を示す鉛直断面図である。 図1の連続化構造の詳細であり、(a)は橋軸方向に平行な鉛直断面図、(b)は平面図、(c)は橋軸直角方向に平行な鉛直断面図である。 図1で用いられるジョイント部材の詳細であり、(a)は幅方向に平行な鉛直断面図、(b)は長手方向に平行な鉛直断面図、(c)は底面図である。 実際に行った連続化構造の例を示す鉛直断面図である。 従来の伸縮ジョイントによる連続化構造を示す鉛直断面図である。 従来のノージョイト化床版連結構造を示す鉛直断面図である。
符号の説明
1……橋桁
2……鉄筋コンクリート床版(RC床版)
3……鋼桁
4……遊間
5……舗装体
6……既設鉄筋
10……切欠き
11……埋設空間
12……プレキャストジョイント部材(PCaジョイント部材)
13……アンカーボルト
14……バックアップ材
15……注入孔
16……間詰材
17……防水シート
18……ボルト孔
20……凹部
21……薄肉部
22……厚肉部
23……傾斜面
24……スリット
25……平板部
26……下方突起部
30……上部PCaジョイント部材
31……下部PCaジョイント部材
32……薄肉部
33……厚肉部
34……スリット
35……平板部
36……下方突起部
37……定着鉄筋
38……床版埋込み筋
39……下面縁切り材(シート)
40……平板部
41……定着部
50……弾性体シート
51……弾性体シート

Claims (5)

  1. 橋梁の中間部または端部において橋体が遊間を挟んで対向配置されている不連続部の橋面を連続化する橋梁ジョイント部の連続化構造であり、遊間を挟んで対向する橋体端部の上部にそれぞれ切欠きを設けることによりジョイント部材の埋設空間が形成され、この埋設空間に高靭性繊維補強セメント複合材料からなる版状のプレキャストジョイント部材が遊間を跨いで配置され、このプレキャストジョイント部材の橋軸方向の両端部がそれぞれアンカーにより橋体に定着され、埋設空間内のプレキャストジョイント部材下面には縁切り用シートを配置した上で橋体との間には間詰材が充填され、プレキャストジョイント部材上面が舗装材料で覆われていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造。
  2. 請求項1に記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材の橋軸方向の中央部における下部に凹部が設けられていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造。
  3. 請求項1に記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材の橋軸方向の中央部における下部に遊間に挿入される下方突起部が設けられていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造。
  4. 請求項1に記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材が上下に分割され、上部プレキャストジョイント部材の橋軸方向の両端部がアンカーにより橋体に定着され、上部プレキャストジョイント部材の橋軸方向中央部の下に下部プレキャストジョイント部材が配置されていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の橋梁ジョイント部の連続化構造において、プレキャストジョイント部材の上面に弾性体シートが貼設されていることを特徴とする橋梁ジョイント部の連続化構造。
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