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JP2007283743A - ポリプロピレン系樹脂積層フィルム、およびその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂積層フィルム、およびその製造方法 Download PDF

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JP2007283743A JP2006194637A JP2006194637A JP2007283743A JP 2007283743 A JP2007283743 A JP 2007283743A JP 2006194637 A JP2006194637 A JP 2006194637A JP 2006194637 A JP2006194637 A JP 2006194637A JP 2007283743 A JP2007283743 A JP 2007283743A
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Abstract

【課題】気相法によって安価に効率的に製造されるポリプロピレン系樹脂からなり、耐ブロッキング性に優れており、滑り性が良好であり、ロール状に巻き取ったときにフィルムロールに皺が入りにくく、製袋加工時や印刷加工時における加工性の良好なポリプロピレン系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基層の表裏両面にポリオレフィン系樹脂を主体とするシール層が積層されている。また、基層およびシール層を構成するポリプロピレン系樹脂が、気相法によって形成されている。そして、40℃の雰囲気下で測定した動摩擦係数、空気抜け指数、およびヘイズ値が所定の条件を満たすように調整されている。
【選択図】なし

Description

本発明は、包装用のフィルムに関するものであり、特に、防曇性を有し、かつ、滑り性、耐ブロッキング性および透明性が良好であり、野菜、根菜、果実、草花、花木、きのこ類、魚、肉等の高い鮮度が要求される植物または動物類からなる生鮮品(以下、これらを生鮮品と称する)を包装するのに適したフィルムに関するものである。
ポリオレフィン系樹脂からなるフイルムは、食品をはじめとする種々の物品の包装用素材として広く使用されている。特に、ポリプロピレンのフイルムは、機械的な特性、透明性、光沢等の光学的性質、ガスバリア性、無臭性等の食品衛生性等が優れていることから、食品包装用の分野を中心に広く用いられている。しかしながらポリプロピレン系樹脂フイルムは、耐ブロッキング性に劣り、フイルムを重ねるとフイルムが互いに密着する現象(いわゆるブロッキング現象)を起こし易く、包装等の作業性を著しく低下させることがある、という欠点を有している。
それゆえ、ポリプロピレン系樹脂フイルムのブロッキングを防止する方法として、フイルム中にいわゆるアンチブロッキング剤として、二酸化珪素に代表される無機系の微粉末、あるいは架橋高分子等の有機系の微粒子を配合する方法や、脂肪酸アマイド等の滑り剤を併わせて配合する方法が考案されている。
また、高い防曇性を備えたポリプロピレン系樹脂フイルムを製袋加工する際に、ポリプロピレン系樹脂を主体とした基層の表面に、ポリオレフィン系樹脂を主体としたシール層を積層する方法が用いられている。また、そのようにプロピレン系樹脂からなる基層上にポリオレフィン系樹脂からなるシール層を積層する場合には、加工された袋が十分な強度を発現するように、低融点のポリオレフィン系樹脂をシール層形成用の樹脂として用いることが多く、そのように低融点のポリオレフィン系樹脂を用いることが、フイルムの滑りやブロッキング性を一層悪化させる要因となっていた。そのような不具合を解消する方法としては、シール層形成用の樹脂中に、所定の粒径の有機ポリマー微粒子と無機系微粒子等の不活性微粒子とを添加する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2003−237827号公報
一方、ポリプロピレン樹脂は、従来、いわゆる溶媒法が利用され、三塩化チタン−有機アルミニウム化合物等の活性のあまり高くない触媒の存在下にプロピレンを重合することによって得られていたが、ポリオレフィンの重合触媒の改良が進められて、いくつかの高活性触媒が開発され、その結果、いわゆる気相法を利用して、より安価で効率的にポリプロピレン樹脂を得ることができるようになった。ところが、上記した気相法により高活性触媒を使用して得られるポリプロピレン樹脂は、平均粒子径が大きく、粒径分布が狭く、微粉含有量が少ないものであることに起因して、特許文献1のようなポリプロピレン系樹脂フィルムを製造するために無機系微粒子を樹脂に添加する際に、その無機系微粒子の分散性を悪くしてしまうという不具合がある。
それゆえ、かかる不具合を解消すべく、所定の大きさの粒子径および見かけ比重を有する無機系微粒子を利用することにより、気相法によって得られるポリプロピレン系樹脂中における無機系微粒子の分散性を向上させる技術が開発されている(特許文献2)。
特開平8−81591号公報
しかしながら、特許文献2の方法では、利用できる無機系微粒子が比較的に大きな粒子径を有し、見かけ比重が大きく、細孔容積の小さいものに限定されてしまう。したがって、必ずしも耐ブロッキング性に優れたポリプロピレン系樹脂フィルムが得られないし、良好な滑り性を発現させることができないため、フィルムをロール状に巻き取ったときにフィルムロールに皺が入り易くなってしまう。また、そのように皺が入ったフィルムロールを用いて製袋加工したり印刷加工したりすると、不良率が高くなってしまう。
本発明の目的は、上記従来のポリプロピレン系樹脂フィルムにおける問題点を解消し、気相法によって安価に効率的に製造されるポリプロピレン系樹脂からなり、耐ブロッキング性に優れており、滑り性が良好であり、ロール状に巻き取ったときにフィルムロールに皺が入りにくく、製袋加工時や印刷加工時における加工性の良好なポリプロピレン系樹脂フィルムを提供することにある。また、そのようなポリプロピレン系樹脂フィルムを安価、かつ、効率的に製造することが可能な製造方法を提供することにある。
かかる本発明の内、請求項1に記載された発明の構成は、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基層の表裏両面にポリオレフィン系樹脂を主体とするシール層が積層されており、厚みが10μm以上70μm未満であり、かつ、ヘイズ値が0.4%以上5.0%以下であるポリプロピレン系樹脂積層フィルムであって、基層およびシール層を構成するポリプロピレン系樹脂が気相法によって形成されたものであり、かつ、下記式(1),(2)を満たすことにある。
(1)40℃の雰囲気下で測定した動摩擦係数(以下、μH40という)が0.2以上1.1以下であること
(2)フィルムを2枚重ねて減圧したときにフィルム間から空気が抜け切るまでの時間である空気抜け指数(以下、ARという)が1.8秒以上9.0秒以下であること
請求項2に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、空気抜け指数が7.8秒以下であることにある。
請求項3に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、少なくとも基層が2軸延伸されたものであることにある。
請求項4に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、積層フィルム全層中に15mg/kg以上150mg/kg未満のAlが含まれていることにある。
請求項5に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、基層が、プロピレン−エチレン共重合体によって形成されており、そのプロピレン−エチレン共重合体におけるエチレン含有量が0.5重量%以上1.5重量%未満であることにある。
請求項6に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、積層フィルムの全層に対するシール層の厚みの比率が1/60〜1/3であることにある。
請求項7に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、基層およびシール層に防曇剤が添加されていることにある。
請求項8に記載された発明の構成は、請求項7に記載された発明において、50℃の温水を入れた容器の開口部を覆わせた状態で5℃の雰囲気下で30分間放置してから室温の雰囲気下に取り出した後の露の付着面積が全体の1/4以下であることにある。
請求項9に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、刃先角度を60度に調整し刃先設定温度を390℃に調整した溶断シール機を用いて、刃先温度370℃で120袋/分のショット速度にてフィルムの溶断シール袋を作成した場合の不良率が5%以下であることにある。
請求項10に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、140℃で1秒間、1kg/cmの圧力を加えてシール層同士を熱融着させた後に、それらの熱融着部分を180度剥離させたときの強度が、1.5N/15mm 以上6.0N/15mm以下であることにある。
請求項11に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、シール層の表面の濡れ張力が35mN/m以上45mN/m以下であることにある。
請求項12に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、シール層を形成する樹脂が、メルトフローレートを1.5g/10分以上9.0g/10分に調整したもの、あるいはそれらの混合物であることにある。
請求項13に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、シール層を形成するポリオレフィン系樹脂層中に、平均粒径が1.0μm以上12.0μm未満、細孔容積が1.0ml/g以上2.0ml/g未満の無機系微粒子が添加されていることにある。
請求項14に記載された発明の構成は、請求項7に記載された発明において、防曇剤が、ポリオキシエチレンアルキルアミン型防曇剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル型防曇剤、脂肪酸グリセリンエステル型防曇剤の内の少なくとも2種以上を併用したものであることにある。
請求項15に記載された発明の構成は、請求項7に記載された発明において、積層フィルム全層中の防曇剤量が0.2重量%以上1.5重量%未満であることにある。
請求項16に記載された発明の構成は、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルムを製造するための製造方法であって、ポリプロピレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を複数の押出機から共押出法により溶融押し出しすることにより、未延伸のポリプロピレン系樹脂積層シートを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸のポリプロピレン系樹脂積層シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程とを含んでおり、下記要件(a)〜(c)を満たすことにある。
(a)前記フィルム化工程が、無機系微粒子を添加して1回造粒したプロピレン−エチレン共重合体と、無機系微粒子を添加して2回造粒したプロピレン−エチレン共重合体とポリプロピレン系樹脂とによってシール層を形成するものであること
(b)前記フィルム化工程が、プロピレン−エチレン共重合体によって基層を形成するものであるとともに、そのプロピレン−エチレン共重合体におけるエチレン含有量を0.5重量%以上1.5重量%未満に調整したものであること
(c)前記二軸延伸工程が、縦方向および横方向に二軸延伸した後に熱固定を行うものであるとともに、前記熱固定の温度を160℃以上170℃未満に調整したものであること
請求項17に記載された発明の構成は、請求項16に記載された発明において、前記フィルム化工程における造粒を100rpm以上500rpm以下の回転速度で回転させた回転体により行うことにある。
本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、気相法によって得られるポリプロピレン系樹脂を利用して製造することができるため、安価かつ効率的に製造することができる。また、耐ブロッキング性に優れており、滑り性が良好であり、ロール状に巻き取ったときにフィルムロールに皺が入りにくく、製袋加工時や印刷加工時における加工性が良好である。さらに、添加された防曇剤が表面にブリードアウトし易いため防曇性に優れており、かつ、透明性にも優れている。したがって、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、野菜等の生鮮品の包装用途に好適に用いることができる。
一方、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムの製造方法によれば、上記の如く、防曇性に優れ、透明性が高く、製袋加工時や印刷加工時の加工性が良好なポリプロピレン系樹脂積層フィルムを、安価かつ効率的に製造することが可能となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムにおいて、主として基層の形成に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、アルミニウム、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分、有機アルミニウム化合物成分および電子供与性化合物成分からなる触媒を用いて実質的に液状媒体の非存在下に気相重合で得られるポリプロピレン系樹脂を挙げることができる。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムのシール層(ヒートシール層)を形成するのに適したポリオレフィン系樹脂としては、基層を形成するポリプロピレン系樹脂の融点より低い融点を有するポリオレフィン系樹脂からなり、たとえば、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体等の1種または2種以上を用いることができる。その中でも好ましいのは、プロピレンとエチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、融点が140℃以下となるように配合したものであるが、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を、フィルムの特性を害さない範囲で用いることもできる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、静電防止剤等を任意に配合することもできる。また、樹脂の重合方法としては、経済性を考慮して、基層に用いる樹脂と同ように気相重合による方法を挙げることができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、シール層表面が防曇性を有することが必要である。すなわち、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムの如く包装用途に用いられるフィルムの場合には、包装体の内面の曇り現象を防止して商品価値を高めるばかりでなく、曇りの進行によって形成される水滴による包装体の内容物の水腐れを防止する上でも防曇性はきわめて重要な特性である。そのようにシール層表面に防曇性を発現させる方法としては、生鮮品に接する側のシール層表面に、保存期間や流通期間において防曇剤を表出(ブリードアウト)させる方法を好適に用いることができる。また、そのように保存期間や流通期間中にシール層表面に防曇剤をブリードアウトさせるためには、フィルム製造時(原料樹脂の溶融押出し時)に、基層を形成する樹脂、シール層を形成する樹脂の少なくとも一方に防曇剤を配合しておく方法を採用することができる。そのように原料樹脂の溶融押出し時に基層形成樹脂やシール層形成樹脂中に防曇剤を配合する方法を採用すると、フィルムの表面に防曇剤を塗布する方法に比べて寒暖の気温変化を伴うような流通期間において安定的に防曇性を持続発揮することができるので好ましい。
また、原料樹脂の溶融押出し時に基層形成樹脂やシール層形成樹脂中に防曇剤を配合する方法を採用する場合には、基層形成樹脂およびシール層形成樹脂の両方に防曇剤を配合すると、防曇剤のスムーズなブリードアウトが長期間に亘って持続されるので好ましい。なお、基層形成樹脂のみに防曇剤を配合した場合であっても、基層形成樹脂中の防曇剤が保存期間や流通期間中にシール層を介してシール層表面に順次ブリードアウトするため、次第にシール層表面が防曇性を有するようになる。加えて、流通過程で長期的に優れた防曇性を接続させるためには、包装体の内容物の作用により発生した曇りを防止することによって表面の防曇剤が流されても、内部の防曇剤が即効的かつ持続的に次々とシール層表面にブリードアウトして、シール層表面が防曇性を有する状態になることが必要である。したがって、本発明における防曇特性の設定に当たっては、表面防曇剤の拭き取り後の再発現性を考慮することが好ましい。
本発明において使用する防曇剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル型、脂肪酸グリセリンエステル型を併用することが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルアミン型としては、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレン牛脂プロピレンジアミン、ポリオキシエチレンステアリルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンN−シクロヘキシルアミン、ポリオキシエチレンメタキシレンジアミンを例示することができる。また、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル型の代表例としては、上記ポリオキシエチレンアルキルアミン型の代表例と次に示す脂肪酸とがエステル結合したものを挙げることができる。ステアリン酸、ベヘニン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルルミチン酸、椰子脂肪酸、牛脂脂肪酸、菜種脂肪酸、ヒマシ脂肪酸、ミリスチル酸。さらに、脂肪酸グリセリンエステル型としては、ミリスチン酸モノグリセライド、モノステアリン酸モノグリセライド、モノイソステアリン酸モノグリセライド、モノオレイン酸モノグリセライド、モノオリーブ油モノグリセライド、ジオレイン酸モノグリセライド、ジステアリン酸モノグリセライド、モノウンデシレン酸モノグリセライド等を挙げることができる。
また、上記3種類の防曇剤に加え、その他の防曇剤を添加しても良く、そのような防曇剤としては、モノステアリン酸ジグリセライド、モノイソステアリン酸ジグリセライド、モノオレイン酸ジグリセライド、ジオレイン酸ジグリセライド、トリイソステアリン酸ジグリセライドらに代表されるポリグリセリン脂肪酸エステル型等を挙げることができる。
本発明において防曇性を発揮するのに好ましい防曇剤量としては、フイルムの内部および外面を併せて、0.2から1.5重量%の範囲で防曇剤が存在することが好ましく、0.3から1.2重量%であるとより好ましく、0.5から1.0重量%の範囲であるとさらに好ましい。防曇剤の量が0.2重量%未満であると、十分な防曇効果を発揮しないため、好ましくなく、反対に、防曇剤の量が1.5重量%を越えると、防曇剤が飽和状態となり、経済的に好ましくない上に、フイルム表面に多量の防曇剤が移行してしまい、フイルム表面が粉を噴いた状態となり、外観を低下させることとなるため、好ましくない。
一方、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムには、耐ブロッキング性を向上させる目的や滑り性を向上させる目的で、シール層を形成する樹脂中に無機系微粒子を添加する必要がある。かかる無機系微粒子としては、平均粒子径が1.0〜12.0μm、好ましくは1.3〜4.0μm、かつ細孔容積1.0〜2.0ml/g、好ましくは1.25〜1.80ml/g のものを用いることができる。平均粒子径、細孔容積のいずれかがこの範囲を外れると、良好な耐ブロッキング性、滑り性が得られなくなる。すなわち、平均粒子径が1.0μm未満では、フイルムの耐ブロッキング性が不足する上に、μH40を0.2以上1.1以下の範囲内に調整しにくくなるため好ましくなく、反対に、12.0μmを越えると、外観、透明性が悪化するので好ましくない。また、細孔容積が2.0ml/gを超えると、樹脂との混練りの際の分散が悪くなり、1.0ml/g未満では、耐傷付き性が悪化するのに加え、添加重量当たりの粒子数が少なくなり、同量の粒子数量を添加しようとする際に結果的に添加量を増やす必要があり、透明性を悪くするため、好ましくない。無機系微粒子としては、二酸化珪素、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を好適に用いることができる。それらの無機系微粒子の中でも、特に、平均粒子径が1.5〜4.0μm、細孔容積が1.0〜2.0ml/gの二酸化珪素を好適に用いることができる。また、基層やシール層を形成する樹脂に対する無機系微粒子の配合量は、樹脂100重量部に対して0.05〜0.60重量部とするのが好ましい。0.05重量部未満では、耐ブロッキング性が不足し、0.60重量部を越えると、分散性が悪化して、外観、透明性の悪化を引き起こすので好ましくない。無機系微粒子の配合量は、耐ブロッキング性と分散性の点から、0.10〜0.40重量部がより好ましい。平均粒子径が1.5〜4.0μmで細孔容積が1.0〜2.0ml/gの二酸化珪素を、0.10〜0.40重量部の配合量となるように使用するのが特に好ましい。なお、無機系微粒子の細孔容積は、BET方式に基づくJIS−K−1150の方法等の公知の方法によって測定することができる。また、細孔容積の測定装置としては、カンタクローム社製オートソーブ1や島津製作所製高速比表面積/細孔分布測定装置アサップ2400等を好適に用いることができる。
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、内容物を視認し易いように、ヘイズ値が0.4%以上5.0%以下となるように調整することが必要である。ヘイズ値が5.0%を越えると、生鮮品の包装用途に用いる場合に透明性が不十分なものとなるので好ましくない。また、ヘイズ値の下限は、0.8%以上であると好ましく、1.0%以上であると特に好ましい。また、ヘイズ値の上限は、4.0%以下であると好ましく、3.5%以下であると特に好ましい。なお、ヘイズ値は低いほど好ましいが、樹脂へのアンチブロッキング剤の添加が不可欠であることを考慮すると、0.4%未満のポリプロピレン系樹脂フィルムを得ることは、実質上不可能であると考えられる。
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、積層フィルム全層中に15mg/kg以上150mg/kg未満のAlが含まれていることが好ましい。一般的にポリプロピレンの重合では、助触媒として有機アルミニウム化合物を使用しており、溶媒法等の従来の重合方法では、触媒の除去工程にて有機アルミニウム化合物は除去されるのに対して、本発明で用いる気相法重合により得られたポリプロピレン原料においては、触媒の失活が行われるのみであるので、原料内には、Alが存在することになる。すなわち、積層フィルム中にAlが存在するということは、気相法重合により得られたポリプロピレン原料を使用して製造された積層フィルムであることを意味する。気相法重合により得られたポリプロピレン原料は、溶媒法原料により得られたポリプロピレン原料に比べ、触媒、アタクチックポリプロピレンの除去工程、その除去に必要な溶媒の回収工程を必要としないので、エネルギー消費の面において経済的な原料であるということができ、その原料を使用して製造された積層フィルムも地球環境にやさしい、経済的なフィルムといえる。また、より好ましいAlの含有量は、積層フィルム全層対して20mg/kg以上80mg/kg未満である。なお、積層フィルム全層中に含まれるAlの量は、所定量(約1.0g)の試料を乾式分解して酸で処理した後にプラズマ発光分析によって測定する方法等によって求めることができる。
加えて、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、シール層を形成する樹脂が、メルトフローレートを1.5g/10分以上9.0g/10分に調整したもの、あるいはそれらの混合物であると好ましい。そのようにメルトフローレイトが調整された樹脂、あるいはそれらの混合物を、シール層形成用の樹脂として用いることによって、後述する造粒によるフィルムの動摩擦係数(μH40)やARの値の調整が容易なものとなる。
また、ポリプロピレン系樹脂フィルムは、連続的に製造してミルロールとして巻き取った場合に、物性が安定するまでに非常に時間がかかる(通常の約40℃の雰囲気にてエージングした場合には、12時間程度、物性の不安定な状態が継続する)。それゆえ、そのように製造後のフィルムの物性が長時間に亘って安定しないことに起因して、巻き締まりが起こったりすることにより、フィルムロールに皺が入り易い。
本発明の発明者らは、上記の知見から、エージング中にフィルムロールに皺が入らないようにするためには、通常考えられているように摩擦係数のみをコントロールするのでは不十分であり、巻き取られたフィルム同士(フィルムの表面と裏面)が適度に滑り合うことと、巻き取られたフィルム同士の間から適度な早さで空気が抜けることとが同時に満たされることが不可欠であると推測した。また、巻き取られたフィルム同士の滑り具合は、物性が安定したフィルム(エージング後のフィルム)の40℃における動摩擦係数(すなわち、μH40)によって見積ることができ、巻き取られたフィルム同士の間からの空気の抜け易さは、物性が安定したフィルムのAR(空気抜け指数)の値によって見積ることができるのではないかと推測した。そして、それらの推論に基づき、エージング中における皺の入り度合いと、物性が安定したフィルムのμH40およびARの値との関係について鋭意検討した結果、物性が安定したフィルムにおいて、μH40およびARの値が所定の範囲内にある場合には、エージング中にフィルムロールに皺が生じていないことを突き止めた。しかしながら、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムのように低いヘイズ値(すなわち、高い透明性)が要求されるフィルムにおいては、添加する滑剤の種類や量が大幅に制限されるため、滑剤の種類や量を単純に調整するだけでは、μH40およびARの値を所望する範囲にコントロールするのは不可能であり、滑剤の樹脂中への分散度合いのコントロールが必要であると考えられた。それゆえ、本発明の発明者らが、滑剤の樹脂中への分散度合いを考慮しつつ試行錯誤した結果、後述する方法(0053段落〜0064段落参照)により、多量の滑剤を用いることなく、所望するヘイズ値、所望するμH40、所望するARの値を同時に満足するポリプロピレン系樹脂フィルムを得ることができることを見出し、本件発明を案出するに至った。
すなわち、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、40℃の雰囲気下で測定した動摩擦係数(すなわち、μH40)が0.2以上1.1以下であることが必要である。μH40が0.2未満であると、フィルム同士が滑りすぎ、ロール状に巻き取った後に、巻きずれが生じるので好ましくなく、反対に、μH40が1.1を越えると、滑り性が悪く、ロール状に巻き取った後に、フィルムロールに皺が入り易くなるので好ましくない。なお、μH40の下限は、0.3以上であると好ましく、0.35以上であると特に好ましい。また、μH40の上限は、1.0以下であると好ましく、0.95以下であると特に好ましい。
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、フィルムを2枚重ねて減圧したときにフィルム間から空気が抜け切るまでの時間である空気抜け指数(すなわち、AR)が1.8秒以上9.0秒以下であることが必要である。ポリプロピレン系樹脂積層フィルムをロール状に巻き取ってフィルムロールとする際には、一定量の空気を巻き込みながら巻き取ることが好ましい。巻き込み量が少ないと、ブロッキングをし易くなる上に、本発明の如きポリプロピレン系樹脂積層フィルムの場合には、そのガラス転移点がマイナス領域のため、常温でも寸法変化を起こすことから、重なり合ったフィルム同士が追従して寸法変化を起こすため、皺が発生することとなるので好ましくない。特に、延伸フィルムでは、延伸した際の応力が残っている方向に皺が入り易くなる。一方、巻き込み空気が多すぎると、重なり合ったフィルムが個々に自由に変形するため、フィルムにタルミが発生したり、フィルムの流れ方向に対して垂直な方向に皺が発生したりするため好ましくない。そして、ARの値が1.8秒を下回ると、巻き込み空気がすぐになくなってしまうため、フィルム同士がブロッキングしたり、延伸時の残留応力により製品フィルムロールに皺が発生したりするので好ましくなく、反対に、ARの値が9.0秒を上回ると、巻き込み空気がいつまでも保持されるため、フィルムにタルミが発生したり、製品フィルムロールにおいてフィルムの流れ方向に対して垂直な方向に皺が発生したりするため好ましくない。なお、ARの値の下限は、2.0秒以上であると好ましく、2.5秒以上であると特に好ましい。また、ARの値の上限は、7.8秒以下であると好ましく、7.5秒以下であるとより好ましく、7.0秒以下であると特に好ましい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、140℃で1秒間、1kg/mの圧力を加えてシール層同士を熱融着させた後に、それらの熱融着部分を180度剥離させたときの強度(いわゆるシール強度)が、1.5N/15mm以上6.0N/15mm未満であると好ましい。シール強度が1.5N/15mm未満であると、包装用途に用いた場合に袋が簡単に開きすぎるものとなるので好ましくなく、反対に、シール強度が6.0N/15mm以上であると、包装用途に用いた場合に袋が開きにくいものとなるので好ましくない。なお、シール強度の下限は、2.0N/15mm以上であると好ましく、3.0N/15mm以上であると特に好ましい。また、シール強度の上限は、5.0N/15mm未満であると好ましく、4.0N/15mm未満であると特に好ましい。
一方、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、印刷性および防曇剤による防曇効果の発現性の観点から、シール層の表面の濡れ張力が35mN/m以上45mN/m以下に調整されていることが必要である。また、シール層の表面の濡れ張力の下限は、37mN/m以上であると好ましく、反対に、シール層の表面の濡れ張力の上限は、43mN/m以下であるとより好ましい。濡れ張力が35mN/m未満であるとフィルム表面の防曇効果の発現性が不良となるので好ましくなく、反対に、濡れ張力が45mN/mを上回るとブロッキングや壁壊が生じ易くなるので好ましくない。
次に本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムの好ましい製造方法について説明する。未延伸フィルムの形成は、結晶性ポリプロピレンを主体とする基層形成用樹脂とポリオレフィンを主体とするシール層形成用樹脂をそれぞれ別の押出し機に供給し、加熱溶融し、ろ過フィルターを通した後、220〜320℃の温度でT型ダイス内で基層形成用樹脂とシール層形成用樹脂とを積層した後、スリット状のT型ダイス出口より、溶融押出しし、冷却固化せしめることによって連続的な未延伸フィルムを形成するのが好ましい。このとき、ドラム状の引取り機(チルロール)上に樹脂を落下させ、チルロールに接触する面とは反対側の面からエアーナイフによって風を当てると、未延伸シートとチルロールとの密着性が増し、表面が平滑で厚みの均一な未延伸シートが得られるので好ましい。この際のエアーナイフの風圧は、700〜2200mmHO の範囲とするのが好ましい。風圧が低いと、未延伸シートとチルロールとの密着が不均一になるので好ましくなく、反対に、風圧が高いと、未延伸シートがばたつきチルロールとの密着が不均一になるので好ましくない。また、上記の如く溶融押出しする際の樹脂温度は、樹脂劣化が発生しない温度範囲であって230〜290℃程度の温度範囲であることが好ましく、270〜280℃程度の温度範囲であるとより好ましい。
また、溶融押出しする際の結晶性ポリプロピレンを主体とする基層形成用樹脂とポリオレフィンを主体とするシール層形成用樹脂の樹脂温度は、それぞれの樹脂に明確な融点が存在する場合には、その融点より60℃以上高い温度であると好ましく、70℃以上高く熱劣化には至らない温度であるとより好ましい。樹脂温度がそのような温度範囲内であると、溶融押出し時におけるポリオレフィン系樹脂の分子量分布に依存する溶融変形の緩和時間分布の影響を少なくすることができるため、未延伸フィルムの厚み斑を低減することができる。また、チルロール温度は、30℃以下の温度に調整されていると好ましく、20℃以下に調整されているとより好ましい。溶融押出しする際の樹脂温度が低く、チルロール温度が高いと、樹脂の結晶化が進み易く、フィルム表面が肌荒れ状態となり厚みむらが発生し易くなるので好ましくない。
上記の如く未延伸フィルムを形成した後には、その未延伸フィルムを二軸延伸することによって、二軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸方法、または同時二軸延伸方法を用いることができる。逐次二軸延伸方法としては、未延伸フィルムを90〜140℃の温度に加熱し、長手方向に3〜7倍延伸した後、冷却してから、テンター式延伸機に導き、130〜175℃の温度に加熱し、幅方向に7〜12倍に延伸した後、所定の温度で熱固定(熱処理)して幅方向に2〜15%、好ましくは4〜10%緩和させ、冷却した後に巻き取る方法を採用することができる。そのように延伸後に緩和しながら熱固定することにより、ポリオレフィン系樹脂の分子量分布に依存する溶融変形の歪みが解消されるため、フィルム全幅に亘って積層フィルムの熱収縮性等の物性が安定し、その結果、ヒートシール時のシール部の収縮、寸法変化が少なくなり、ひいてはシール部の変形がない見栄えの良い包装体を得ることが可能となる。なお、好ましい熱固定方法については後述する。
基層に積層されるシール層の厚みの比率は、特に限定されるものではないが、通常、積層フィルムの全層(基層およびシール層)に対して、1/60〜1/3(基層の両面にシール層を積層するときはその合計厚み)であることが好ましく、1/50〜1/5であるとより好ましく、1/30〜1/10であると特に好ましい。シール層の厚み比率が、1/60より小さいと、製袋加工したときのシール強度が不十分となり、包装体としての信頼性が欠けることになるので好ましくない。また、シール層の厚み比率が、1/3より大きいと、基層部分の割合が小さいことに起因して積層フィルム全体に所謂“腰”がなくなり、内容物を充填した後の包装体の形状が不安定で商品価値に欠けるものとなるので好ましくない。また、積層フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、高い防曇性を有する包装用フィルムとして好適な10〜70μm程度の範囲内において適宜定めることができる。なお、積層フィルムのより好ましい厚みの範囲は、15〜60μmである。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、主として野菜等の生鮮食料品を包装する用途に用いられるものであるため、良好な溶断シール性を有しているのが好ましい。具体的には、刃先角度を60度に調整し刃先設定温度を390℃に調整した溶断シール機を用いて、刃先温度(刃先の実温度)370℃で120袋/分のショット速度にてフィルムの溶断シール袋を作成する場合に、形成される溶断シール袋1000枚当たりの不良率(溶着状態および切断状態に不具合が生じたものの割合)が5%以下であると好ましくい。また、不良率は、4%以下であるとより好ましく、3%以下であると一層好ましく、2%以下であるとさらに好ましく、4%以下であると特に好ましい。
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、片方または両方の表面にコロナ放電処理や、火炎処理等の表面処理を施すことができる。なお、好ましいコロナ放電処理の方法については後述する。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムを得るためには、製造時に以下の手段を講じることが必要である。かかる手段を講じることにより、防曇性、透明性、耐ブロッキング性、滑り性が良好で、ロール状に巻き取ったときに皺が入りにくいフィルムを得ることが可能となる。
(1)シール層形成樹脂中の無機系微粒子の分散条件の調整
(2)基層形成樹脂におけるエチレン含有量の調整
(3)横延伸後の熱固定条件の調整
(4)コロナ放電処理条件の調整
以下、上記した各手段について順次説明する。
(1)シール層形成樹脂中の無機系微粒子の分散条件の調整
本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムの製造においては、シール層を形成するポリオレフィン系樹脂中に無機系微粒子を添加する際に、粉末の無機系微粒子を押出機内に添加して混練りするのではなく、予めポリオレフィン系樹脂中に高濃度の無機系微粒子を添加したマスターバッチポリマーチップを作成し、そのマスターチップを、無機系微粒子を含まないポリオレフィン系樹脂でブレンド希釈する方法を採用する必要がある。
また、シール層を形成するマスターチップは、ポリオレフィン系樹脂に無機系微粒子を添加してミキサーやブレンダー等で撹拌した後、その混合物を押出機内に投入して、混練りし溶融押出ししてペレット状に形成した後に、無機系微粒子を含まないポリオレフィン系樹脂のチップと混合して利用する必要がある(以下、上記の如く、樹脂に無機系微粒子を添加して撹拌した後に押出機内に投入して混練りし溶融押出ししてペレット状に形成する工程を造粒工程という)。
さらに、シール層を形成するマスターチップとしては、混練り工程を1回のみ施したもの(1度造粒チップ)と、混練り工程を2回繰り返したもの(2度造粒チップ)とを併用する必要がある。また、そのように1度造粒チップと2度造粒チップとを併用する場合には、1度造粒チップと2度造粒チップとの混合比は、1:9〜9:1の範囲内に調整するのが好ましい。さらに、1度造粒チップと2度造粒チップとを併用する際には、1度造粒チップの形成時に添加する無機系微粒子の粒子径と、2度造粒チップの形成時に添加する無機系微粒子の粒子径とをできるだけ近づけるのが好ましい。すなわち、1度造粒チップと2度造粒チップとを併用する際には、1度造粒チップの形成時に添加する無機系微粒子の粒子径と、2度造粒チップの形成時に添加する無機系微粒子の粒子径との差を2.0μm未満にするのが好ましい。
シール層の形成時に、1.5μm未満の小さい粒子径の無機系微粒子が添加された2度造粒チップのみを使用すると、μH40が増大して滑り性が悪化して、ロール状に巻き取ったときにフィルムロールに皺が発生し易くなるので好ましくない。なお、そのようにフィルムロールに皺が発生すると、フィルムロールの保管時に巻き締まり、フィルム間に巻き込まれるエアーが少なくなることに起因して、防曇剤がブリードアウトしにくくなり、フィルムの防曇性が悪化する。また、フィルムロールに皺が発生すると、溶断して製袋加工(ラミネート加工)する際に、きれいに製袋できず、形成される袋の見栄えが悪化する。また、1.5μm以上の大きな粒子径の無機系微粒子が添加された1度造粒チップのみを使用すると、ARの値が極端に小さくなり、上記と同様にフィルム間に巻き込まれるエアーが少なくなるため、フィルムロールの保管時に重なり合ったフィルム同士が追従して変形することでフィルムロールに皺が発生し易くなるので好ましくない。また、上記と同様に防曇剤がブリードアウトしにくくなり、フィルムの防曇性が悪化することとなる。さらに、1.5μm未満の小さな粒子径の無機系微粒子が添加された1度造粒チップのみを使用すると、無機系微粒子の分散性不足により、フィルムにフィッシュアイが形成されて外観不良となるので好ましくない。加えて、シール層を形成するマスターチップとしては、無機粒子を添加した1度造粒チップおよび2度造粒チップの他に、溶断シール強度を悪化させない範囲内で、有機系微粒子を添加した造粒チップを併用することも可能である。
また、上記の如く混練りを行う場合には、押出機のスクリュー等の回転体の回転速度を100rpm以上500rpm以下に調整するのが好ましく、250rpm以上450rpm以下に調整するとより好ましく、270rpm以上430rpm以下に調整すると特に好ましい。加えて、上記の如く2度造粒する際に、1度目の造粒における回転体の回転速度を2度目の造粒における回転体の回転速度より高くするのが好ましい。
(2)基層形成樹脂におけるエチレン含有量の調整
本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムの製造においては、上述したように、基層を形成するポリプロピレン系樹脂として、ポリプロピレンを主成分とした各種のポリプロピレン系樹脂を用いることができるが、その中でも、ポリプロピレンとエチレンとが共重合したものあるいはその変性物を利用するのが好ましい。また、そのような共重合体や変性物の中でも、エチレンの含有率が0.5重量%以上1.5重量%未満である樹脂を用いるのが好ましい。かかる樹脂を用いることによって、基層に添加された防曇剤がブリードアウトし易くなり、ポリプロピレン系樹脂フィルムの防曇性(後述する初期防曇性および防曇持続性)が格段に向上する。
基層を構成する共重合体中のエチレンの含有量が1.5重量%以上となると、フィルムが軟化して滑りにくくなり、μH40が増大することとなる。また、ARの値が増大して、巻き取られたフィルム同士の間から空気が抜けにくくなり、フィルムロールに皺が発生し易くなる。さらに、フィルムが熱負けし易くなり、ヘイズ値が増大して透明性が低下する。反対に、エチレンの含有量が0.5重量%未満となると、防曇剤がブリードアウトしにくくなり、良好な防曇性が得られなくなる上、融着部分に粘りがなくなったり、融着部分の形崩れが生じたりして、良好なシール強度が得られなくなったり、製袋加工時における溶断シール性が悪化したりするので好ましくない。
(3)横延伸後の熱固定条件の調整
また、本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、上記したように、共押出法により、基層上にシール層を積層させて形成した未延伸フィルムを、縦・横二軸に延伸した後に熱固定することによって製造される。かかる二軸延伸フィルムの製造において、通常のポリプロピレン系樹脂フィルムの製造の場合には、融点をやや下回る155℃以上160未満の温度条件で熱固定されるのが通常であるが、本発明のフィルムを得るためには、160℃以上170℃未満という通常よりもきわめて高い温度で熱固定処理を行う必要がある。そのように高い温度で熱固定処理を行うことにより、フィルムの収縮応力が除去され、ロール状に巻き取った後の経時変化が抑制され、皺の発生がきわめて低いレベルに低減される。それゆえ、皺の発生による防曇剤のブリードアウト不良が起こらず、フィルムの防曇性の悪化という事態が発生しない。また、皺の発生に起因した製袋加工や印刷加工における加工性の悪化という事態が発生しない。
熱固定処理の温度が170℃を上回ると、フイルム表面が溶融して、熱負け、肌荒れが起こり、μH40が低下して滑り易くなり、フィルム間の空気が抜け易くなる(ARが小さくなる)ものの、フィルムの透明性や外観が不良となり、使用に耐えられなくなるので好ましくない。反対に、熱固定処理の温度が160℃を下回ると、徐冷となり易く、表面再結晶化時に球晶が成長して透明性悪くなる上、フィルムの収縮応力が大きくなり、経時変化が大きくなり、保管時にフィルムロールに皺が入り易くなるので好ましくない。
(4)コロナ放電処理条件の調整
本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムの製造においては、フィルムの表面に、所定の条件でコロナ放電処理を施すことが必要である。すなわち、コロナ放電処理は、公知の各種の方法を採用することができるが、フィルムの幅方向に懸架されたアルミニウム製バータイプ等の電極によって、二軸延伸後のフィルムの表面に施されるのが好ましく、フィルムと電極との間隔を1〜3mmに調整した上で、15〜45W/m/minの処理電力で行うのが好ましい。そして、コロナ放電後のフィルム表面の濡れ特性を35mN/m以上45mN/mの範囲に調整する必要がある。
コロナ放電処理の度合いが弱いと、内部の滑剤等の添加剤が外部へブリードアウトしにくくなり、滑り性が悪くなる(μH40が増大する)上、空気が抜けにくくなる(ARの値が増大する)。さらに、製袋加工時に、二つ折りしたフィルム同士の滑りが悪化したり、製袋加工機とフィルムとの摩擦が増大したりして、見栄えの良い溶断シール袋ができなくなることがある。また、内部の防曇剤も外部へブリードアウトしにくくなるため、良好な防曇性を発現させるのが困難となる。また、コロナ放電処理の度合いを強くすると、フィルム表面が荒らされて(コロナ放電処理に起因した表面凹凸が形成されて)、上記したような不具合が解消され、滑り性が良好なものとなる(μH40が低下する)上、空気が抜け易くなる(ARの値が減少する)が、コロナ放電処理の度合いが極端に強くなると、フィルム表面のいわゆる“肌荒れ”がひどくなり、その“肌荒れ”に起因して透明性が低くなる(ヘイズが増大する)上、添加された防曇剤等のブリードアウトの速度が極端に早くなり、多量の防曇剤の存在によって経時的に透明性が悪化する事態を招来することもある。加えて、フィルム表面の添加剤や樹脂が劣化して、低分子量物質となるため、べたつき易くなり、ブロッキングし易くなる。この際、接合したフィルム同士を剥がす際に片側の防曇剤が剥離することによって防曇性が低下することもある。したがって、十分な防曇性および透明性を発現させ、良好な溶断シール性を発現させつつ、μH40およびARの値を所望する範囲内にコントロールためには、適度な強さでコロナ放電処理をするのが好ましく、そのためには、上記した態様によってコロナ放電処理を施すことが効果的である。
以下に、本明細書中において用いた特性値の測定方法を示す。
[40℃における動摩擦係数(μH40)]
所定の大きさに切断したフィルム(移動フィルム)を、下面をフラットに形成した1500gの扁平な直方体状の取付治具に、シール層が外側になるように巻き付け、取付治具の下面(縦×横=7cm×5cm)を移動フィルムで覆わせる。一方、取付治具に比べて十分に大きく切断した他のフィルム(固定フィルム)を、一部(20cmの長さに亘る部分)が40℃に加熱された水平な基台上に、シール層が上向きになるように貼り付ける。しかる後、移動フィルムを取り付けた取付治具を固定フィルム上に載置して、移動フィルムのシール層と固定フィルムのシール層とを接合させ、その状態で、駆動装置を利用して取付治具を2.5m/分の速度で引っ張り、基台の加熱部分上を通過させる。そして、加熱部分の通過時の動摩擦係数をμH40として算出する。なお、測定用のフィルムは、23℃、65RH%の雰囲気下において12時間以上に亘ってエージングし、測定自体も23℃、65RH%の雰囲気下にて行う。また、測定は、試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均値をμH40として算出する。
[空気抜け指数(エアーリーケージ:AR)]
フィルムの空気抜け速さは、図1に示す装置を用いて測定する。すなわち、フィルム4を、リング状の台盤1上に置いた後、リング状のフィルム押さえ2をフィルム4の上から台盤1に載せ、張力をかけた状態でフィルム4を固定する。次いで、フィルム押さえ2上に別のフィルム5を置き、そのフィルム5上にさらに別のリング状のフィルム押さえ8を載せ、ネジ3を用いてフィルム押さえ8,2、および台盤1を固定する。ここで、フィルム押さえ2は、上面に円形の溝孔2a、その溝孔2aの一部とフィルム押さえ2の外側部分とが連通する孔2c、および溝孔2aの一部とフィルム押さえ2の内側部分とが連通する細孔2dを備える。なお、2枚のフィルム4,5は、いずれも、ロール状に巻き取ったときに外側になる面が上側になるように設置する。
上述の如くフィルムがセットされた後には、細孔2cにパイプ7を介して接続された真空ポンプ6を作動させることにより、フィルム5は、溝孔2aに吸い付けられて、張力が加わった状態となる。さらに、フィルム4およびフィルム5の重なり合ったフィルム重なり部Xもまた、フィルム押さえ2内の細孔2dを介して減圧されるので、フィルム4およびフィルム5はその重なり合った部分X間で、外周部から密着し始める。密着状態は、フィルム重なり部Xの上部から干渉縞を観察することによって把握し得る。そして、フィルム重なり部Xの外周に干渉縞が生じてから、フィルム重なり部Xの全面に干渉縞が拡がり、干渉縞の動きが止まるまでの時間(秒)を測定し、この時間(秒)を「空気抜け指数」とする。なお、測定は、2枚のフィルム試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均値をAR値として算出する。
[ヘイズ値]
得られた二軸配向フィルムを所定の大きさに切断し、JIS K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定する。なお、測定は試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を求める。
[初期防曇性]
次の順序でフィルムの防曇性を測定する。
(1)500mLの上部開口容器に50℃の温水を300mL入れる。
(2)フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
(3)5℃の冷室中に放置した後に、室温(約23℃)下に取り出し、フィルム測定面の露付着状況を下記の6段階で評価する。なお、測定は、フィルム試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均の等級を初期防曇性とする(たとえば、5回測定したときの各等級が、6,6,5,4,4の場合には、5級とする)。
評価6級:全面露なし(付着面積=0)
評価5級:若干の露付着(付着面積1/5まで)
評価4級:多少の露付着(付着面積1/4まで)
評価3級:約1/2の露付着(付着面積2/4まで)
評価2級:ほとんど露付着(付着面積3/4まで)
評価1級:全面露付着(付着面積3/4以上)
[防曇持続性]
次の順序でフィルムの防曇性を測定する。
(1)500mLの上部開口容器に50℃の温水を300mL入れる。
(2)フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
(3)5℃の冷室中に放置する。
(4)5℃の冷室に放置12時間後、30℃の環境に移し、12時間放置する。
(5)(4)の操作を2日間に亘って繰り返した後、フィルム測定面の露付着状況を下記の6段階で評価する。なお、測定は、試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均の等級を防曇持続性とする(たとえば、5回測定したときの各等級が、6,6,5,4,4の場合には、5級とする)。
評価6級:全面露なし(付着面積=0)
評価5級:若干の露付着(付着面積1/5まで)
評価4級:多少の露付着(付着面積1/4まで)
評価3級:約1/2の露付着(付着面積2/4まで)
評価2級:ほとんど露付着(付着面積3/4まで)
評価1級:全面露付着(付着面積3/4以上)
[溶断シール性]
溶断シール機(共栄印刷機械材料(株)製:PP500型 サイドウェルダー)を用いて、下記の条件にてフィルムの溶断シール袋(200mm×300mm)を作製する。そして、作製された溶断シール袋1000枚当たりの不良率を溶断シール性として求める。
条件:溶断刃;刃先角度60度、刃先設定温度390℃、刃先実温度:370℃
ショット数;120袋/分
[ヒートシール強度]
製品取り幅×長さ方向500mmのサンプルをサンプリングして、これを幅方向に3等分し、それぞれの中央部より、幅方向50mm×長さ方向250mmの大きさのサンプルをサンプリングし、このサンプルをシール面が合わさるように二つ折りにして、ヒートシール温度140℃、圧力1kg/cm、ヒートシール時間1秒の条件で、熱板シールを行い、15mm幅の試験片を作製する。この試験片の180度剥離強度を測定し、ヒートシール強度(N/15mm)とする。なお、測定は、二軸延伸フィルム試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を算出する。
[濡れ張力]
JIS−K−6768法に準じて23℃65%RHの雰囲気下で測定する。なお、測定は、二軸延伸フィルム試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を算出する。
[メルトフローレイト (MFR)]
JIS K7210にしたがって条件−14の方法で測定する。なお、測定は、原料樹脂試料を取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を算出する。
[エチレン含有量]
なお、プロピレン−エチレン共重合体中のエチレン含有量は、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第615〜617頁に記載された方法により、13C−NMRスペクトル法によって決定する。なお、同書の256頁「(i)ランダム共重合体」の項記載の方法によってIRスペクトル法で決定することも可能である。
[無機系微粒子の平均粒子径]
コールター・カウンターマルチサイザーで重量分布を測定し、50%径で表示したものを平均粒子径とする。なお、二軸延伸フィルムから画像処理によって平均粒子径を求めたり、得られたフィルムを酸等で処理した後の残渣から平均粒子径を求めたりすることも可能である。
[無機系微粒子の細孔容積]
BET方式に基づくJIS−K−1150の方法によって測定した。
[製品フィルムロールの皺]
ロール状に巻き取られたポリプロピレン系樹脂フィルムを40℃の雰囲気下で12時間に亘ってエージングした後、そのフィルムロールを目視して、以下の基準によって皺の有無を判定する。
○・・皺なし
△・・皺のない部分もあるが、製品の収率が悪い
×・・全体的に皺が発生
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例および比較例で使用した原料チップA〜Gの性状、組成、造粒条件、実施例および比較例におけるシール層の組成等を表1,2に示す。
Figure 2007283743
Figure 2007283743
[アンチブロッキング剤マスターバッチの作成]
プロピレン−エチレン共重合体粉末であるRW140EG(住友化学社製、エチレン含有量4.0重量%、メルトフローレート5.0g/10分)に、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)を0.15重量部、イルガホス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)を0.15重量部、無機系微粒子としてサイリシア350(富士シリシア化学社製、二酸化珪素粉末;平均粒子径1.8μm、細孔容積1.60ml/g)を2.0重量部配合して、トータル重量20kgとし、115Lのスーパーミキサーにて、羽根先端の周速度20m/secにて5分間混合した。
次いで混合原料を、45mmφの2軸押出機(スクリュー径43mmφ L/D;19.5)を用いて、スクリューの回転数、フィーダーの回転数を、それぞれ300rpm、20rpmに調整した条件下で、1回のみ造粒してペレットAを得た。また、同じ混合原料を、ペレットAと同じ条件で造粒(1回目の造粒)した後に、同じ2軸押出機を用いて、スクリューの回転数、フィーダーの回転数を、それぞれ220rpm、20rpmに調整した条件下で、再度造粒(2回目の造粒)してペレットBを得た。一方、同じ混合原料を、同じ2軸押出機を用いて、スクリューの回転数、フィーダーの回転数を、それぞれ220rpm、20rpmに調整した条件下で、1回のみ造粒してペレットCを得た。さらに、同じ混合原料を、ペレットCと同じ条件下で造粒(1回目の造粒)した後に、同じ2軸押出機を用いて、1回目の造粒と同じ条件下で造粒(2回目の造粒)することによってペレットDを得た。また、混合原料の調整時において、無機系微粒子を、それぞれ、サイリシア310P(富士シリシア化学社製、二酸化珪素粉末;平均粒子径1.4μm)、サイリシア420(富士シリシア化学社製、二酸化珪素粉末;平均粒子径1.9μm細孔容積1.25ml/g)に変更し、ペレットAと同じ条件で1回のみ造粒することによってペレットE,Fを得た。さらに、混合原料の調整時において、無機系微粒子の代わりに有機系微粒子(住友化学社製 CS18;平均粒子径1.8μmのポリマービーズ)を添加し、ペレットAと同じ条件で1回のみ造粒することによってペレットGを得た。なお、上記ペレットA〜Gの造粒の際には、フィルタメッシュ構成を50メッシュ/100メッシュ/50メッシュとし、第1〜第4のシリンダ、アダプタ、ダイの温度を、それぞれ200℃、210℃、220℃、220℃、220℃、220℃に調整した(表1参照)。
[実施例1]
<シール層の作成>
アンチブロッキング剤マスターバッチとして、ペレットAを2.5重量%、ペレットBを12.3重量%、ベース原料としてFSX66E8(気相法により製造された住友化学社製のポリプロピレン系樹脂、エチレン含有量2.5重量%、ブテン−1含有量7.0重量%、メルトフローレート3.5g/10分)を68.7重量%、BH180EL−2(気相法により製造された住友化学社製のポリプロピレン系樹脂、ブテン−1含有量25.0重量%、メルトフローレート3.0g/10分)を16.0重量%、モノステアリン酸モノグリセライドを0.4重量%、エルカ酸アミドを0.1重量%を115mmφの押出機(L/D;29)内で溶融混合してヒートシール層とした。
<基層の作成>
FS2011DG3(気相法により製造された住友化学社製のポリプロピレン系樹脂、エチレン含有量0.9重量%、メルトフローレート2.5g/10分)を97.89重量%、S131(気相法により製造された住友化学社製のポリプロピレン系樹脂、エチレン含有量5.0重量%、メルトフローレート1.7g/10分)を1.26重量%、モノステアリン酸モノグリセライドを0.10重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミンモノステアリン酸エステルを0.60重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミンを0.15重量%をタンデム押出機(第1段175mmφ、L/D;17、第2段220mmφ、L/D;20)内で溶融混合して基層とした。
<フイルムの作成>
基層とシール層それぞれが各押出機にて溶融された状態のまま、基層の吐出量1980kg/H、シール層の吐出量126kg/Hの供給量にて260℃の3層Tダイ(マルチマニホールド型、リップ幅900mm、リップギャップ2.4mm)内で積層押出しした後、20℃のキャスティングロールへ、エアーナイフにて風速1050mmAqで吹き付け、58.8m/分の速度で引き取り、冷却固化してシートを得た。得られたシートは、連続して、それぞれ108℃から130℃まで順番に加熱したロールにて予備過熱後、131℃に過熱したロール間で、それぞれのロール速度を65.44m/分と242.12m/分とに調整して速度差を付けることで、3.7倍の縦延伸をした後、130℃に加熱したロールにて緩和させた。そして、縦延伸されたシートを、引き続き167.5℃のオーブン内にて241.4m/分の速度で予備加熱後、155℃にて変形速度1.39m/秒の速さで10.7倍に横延伸し、さらに165℃の環境下で熱固定しながら4.5秒間で8%緩和させ、40℃の環境下で1.5秒間冷却することによって、シール層0.8μm、基層18.4μm、シール層0.8μmの順に積層されたトータル20μmの2種3層フイルムを連続的に作製した。しかる後、そのように連続的に作製されるフイルムの表面に、フイルム表面の濡れ張力が39mN/mとなるようにコロナ放電処理を施し、コロナ放電処理後のフィルムを、絶対湿度 8g/kgDryAir以上となるようにコントロールした環境下で、巻き取り速度241.4m/分にて巻き取ることによって、幅方向6240mm、流れ方向29000mの巻き取りフイルムロールを得た。さらに、巻き取ったフイルムロールを12時間、40℃の環境下に保管し、自然緩和を行った後、幅方向600mm、流れ方向4000mのサイズにスリットして製品フィルムロールを70本得た。得られた製品フィルムロールは、皺がなく、印刷、製袋等の加工が良好に実施できるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。また、得られたフィルムロールから所定量(約1.0g)のフィルム試料を切り出し、そのフィルム試料を乾式分解して酸で処理した後に、プラズマ発光分析によってAl含有量を測定したところ、Alの含有量は34mg/kgであった。
[実施例2]
実施例1において、シール層を作成する際、ペレットAの代わりにペレットCを使用した以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、実施例1と同様に皺がなく、印刷、製袋等の加工が良好に実施できるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例3]
実施例1において、シール層を作成する際、ペレットAの代わりにペレットGを使用し、ペレットBの一部をペレットFに置き換えた。それ以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、実施例1と同様に皺がなく、印刷、製袋等の加工が良好に実施できるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例4]
実施例1において、基層形成用の押出機の吐出量およびシール層形成用の押出機の吐出量をそれぞれ調整することにより、二軸延伸後の2種3層フィルムのシール層の厚みを0.6μmに変更するとともに、基層の厚みを18.8μmに変更した(すなわち、0.6μmのシール層、18.8μmの基層、0.6μmのシール層が順に積層されたトータル20μmの2種3層フイルムとした)。それ以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、実施例1と同様に皺がなく、印刷、製袋等の加工が良好に実施できるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例5]
ヒートシール層を形成する際に、アンチブロッキング剤マスターバッチとして、ペレットAを5.0重量%、ペレットBを10.0重量%、ベース原料としてFSX66E8を68.5重量%、BH180EL−2を16.0重量%、モノステアリン酸モノグリセライドを0.4重量%、エルカ酸アミドを0.1重量%を実施例1と同じ115mmφの押出機内で溶融混合した。それ以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、実施例1と同様に皺がなく、印刷、製袋等の加工が良好に実施できるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例6]
ヒートシール層を形成する際に、アンチブロッキング剤マスターバッチとして、ペレットAを1.2重量%、ペレットBを17.5重量%、ベース原料としてFSX66E8を64.8重量%、BH180EL−2を16.0重量%、モノステアリン酸モノグリセライドを0.4重量%、エルカ酸アミドを0.1重量%を実施例1と同じ115mmφの押出機内で溶融混合した。それ以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、実施例1と同様に皺がなく、印刷、製袋等の加工が良好に実施できるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例1]
実施例1において、シール層を作成する際、ペレットAの代わりにペレットBを用い、ペレットBの合計配合量を14.8重量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、皺が入り、印刷、製袋等の加工に不具合が生じるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例2]
実施例1において、シール層を作成する際、ペレットBの代わりにペレットAを用い、ペレットAの合計配合量を14.8重量%とした以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、皺が入り、印刷、製袋等の加工に不具合が生じるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例3]
実施例1において、シール層を作成する際、ペレットBの代わりにペレットEを使用した以外は、実施例1と同様にしてフイルムロールの作製を試みた。ところが、無機系微粒子の分散不良による異物が多数発生したため、評価に値するフィルムサンプルを得ることができなかった。
[比較例4]
実施例1において、シール層を作成する際、ペレットAの代わりに、ペレットCを用い、ペレットBの代わりにペレットDを用いた以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。得られた製品フィルムロールは、皺が入り、印刷、製袋等の加工に不具合が生じるものであった。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例5]
実施例1において、フィルムの横延伸後の熱固定の条件を、171℃の環境下で4.5秒間8%の緩和を実施するものに変更した以外は、実施例1と同様にして製品フィルムロールを得た。そして、得られた製品フィルムロールを構成するフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 2007283743
[実施例のフィルムの効果]
表3から、実施例のフィルムは、μH40、AR、ヘイズ値が本発明の条件を満たしているため、防曇性、透明性が良好であり、フィルムロールに皺が発生せず、溶断シール性が良好であることが分かる。これに対して、比較例1のフィルムは、μH40が大きく、本発明の条件を満たしておらず、フィルムロールに皺が発生し、溶断シール性がきわめて不良であり、比較例2,4のフィルムは、ARの値が小さく、本発明の条件を満たしておらず、フィルムロールに皺が発生し、溶断シール性が不良であり、比較例5のフィルムは、透明性が悪く、ヘイズ値において本発明の条件を満たしておらず、包装時に内容物が鮮明に見えないものであった。
本発明のポリプロピレン系樹脂積層フィルムは、上記の如く優れた特性を有しているので、生鮮品の包装用途に好適に用いることができる。
フィルムの空気抜け速さを測定する装置の断面を示す説明図である。
符号の説明
1・・台盤、2,8・・フィルム押さえ、2a・・溝孔、2c・・孔、2d・・細孔、3・・ネジ、4,5・・フィルム、6・・真空ポンプ、7・・パイプ、X・・フィルム重なり部。

Claims (17)

  1. ポリプロピレン系樹脂を主体とする基層の表裏両面にポリオレフィン系樹脂を主体とするシール層が積層されており、厚みが10μm以上70μm未満であり、かつ、ヘイズ値が0.4%以上5.0%以下であるポリプロピレン系樹脂積層フィルムであって、
    基層およびシール層を構成するポリプロピレン系樹脂が気相法によって形成されたものであり、かつ、下記式(1),(2)を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
    (1)40℃の雰囲気下で測定した動摩擦係数が0.2以上1.1以下であること
    (2)フィルムを2枚重ねて減圧したときにフィルム間から空気が抜け切るまでの時間である空気抜け指数が1.8秒以上9.0秒以下であること
  2. 空気抜け指数が7.8秒以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  3. 少なくとも基層が2軸延伸されたものであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  4. 積層フィルム全層中に15mg/kg以上150mg/kg未満のAlが含まれていることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  5. 基層が、プロピレン−エチレン共重合体によって形成されており、そのプロピレン−エチレン共重合体におけるエチレン含有量が0.5重量%以上1.5重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  6. 積層フィルムの全層に対するシール層の厚みの比率が1/60〜1/3であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  7. 基層およびシール層に防曇剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  8. 50℃の温水を入れた容器の開口部を覆わせた状態で5℃の雰囲気下で30分間放置してから室温の雰囲気下に取り出した後の露の付着面積が全体の1/4以下であることを特徴とする請求項7に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  9. 刃先角度を60度に調整し刃先設定温度を390℃に調整した溶断シール機を用いて、刃先温度370℃で120袋/分のショット速度にてフィルムの溶断シール袋を作成した場合の不良率が5%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  10. 140℃で1秒間、1kg/cmの圧力を加えてシール層同士を熱融着させた後に、それらの熱融着部分を180度剥離させたときの強度が、1.5N/15mm 以上6.0N/15mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  11. シール層表面の濡れ張力が35mN/m以上45mN/m以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  12. シール層を形成する樹脂が、メルトフローレートを1.5g/10分以上9.0g/10分に調整したもの、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  13. シール層を形成するポリオレフィン系樹脂層中に、平均粒径が1.0μm以上12.0μm未満で細孔容積が1.0ml/g以上2.0ml/g未満の無機系微粒子が添加されていることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  14. 防曇剤が、ポリオキシエチレンアルキルアミン型防曇剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル型防曇剤、脂肪酸グリセリンエステル型防曇剤の内の少なくとも2種以上を併用したものであることを特徴とする請求項7に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  15. 積層フィルム全層中の防曇剤量が0.2重量%以上1.5重量%未満であることを特徴とする請求項7に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルム。
  16. 請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂積層フィルムを製造するための製造方法であって、
    ポリプロピレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を複数の押出機から共押出法により溶融押し出しすることにより、未延伸のポリプロピレン系樹脂積層シートを形成するフィルム化工程と、
    そのフィルム化工程で得られる未延伸のポリプロピレン系樹脂積層シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程とを含んでおり、
    下記要件(a)〜(c)を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂フィルムの製造方法。
    (a)前記フィルム化工程が、無機系微粒子を添加して1回造粒したプロピレン−エチレン共重合体と、無機系微粒子を添加して2回造粒したプロピレン−エチレン共重合体と、ポリプロピレン系樹脂とによってシール層を形成するものであること
    (b)前記フィルム化工程が、プロピレン−エチレン共重合体によって基層を形成するものであるとともに、そのプロピレン−エチレン共重合体におけるエチレン含有量を0.5重量%以上1.5重量%未満に調整したものであること
    (c)前記二軸延伸工程が、縦方向および横方向に二軸延伸した後に熱固定を行うものであるとともに、前記熱固定の温度を160℃以上170℃未満に調整したものであること
  17. 前記フィルム化工程における造粒を100rpm以上500rpm以下の回転速度で回転させた回転体により行うことを特徴とする請求項16に記載のポリプロピレン系樹脂フィルムの製造方法。
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