JP2007269702A - 抗癌剤副作用の軽減剤および食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】マツタケ(Tricholoma matsutake)を利用して、安全で、長期間投与・摂取可能な、抗癌剤副作用(抗癌剤投与に伴うQOL低下や正常細胞に与える不都合な反応、等)の軽減剤および食品を提供する。
【解決手段】マツタケ(Tricholoma matsutake)、特にはマツタケFERM BP−7304株、の菌糸体、培養物(Broth)または子実体(胞子を含む)のいずれかをそのまま、あるいはその乾燥物、あるいはそれらの抽出物(例えば熱水抽出液、アルカリ溶液抽出液)を含有する、抗癌剤副作用軽減剤および食品。
【選択図】図2
【解決手段】マツタケ(Tricholoma matsutake)、特にはマツタケFERM BP−7304株、の菌糸体、培養物(Broth)または子実体(胞子を含む)のいずれかをそのまま、あるいはその乾燥物、あるいはそれらの抽出物(例えば熱水抽出液、アルカリ溶液抽出液)を含有する、抗癌剤副作用軽減剤および食品。
【選択図】図2
Description
本発明は、動物やヒトにおける抗癌剤副作用の軽減のための薬剤および食品に関する。本発明の薬剤および食品は、医薬品として投与することができるだけでなく、種々の形態、例えば、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)やいわゆる健康食品(いずれも飲料を含む)、または飼料として飲食物の形で与えることも可能である。さらには、口中に一時的に含むものの、そのほとんどを口中より吐き出す形態、例えば、歯磨き剤、洗口剤、チューインガム、うがい剤などの形で与えることも、あるいは鼻から吸引させる吸入剤の形で与えることも可能である。
癌診断技術や治療法は年々進歩しているのにもかかわらず、日本人の死亡原因の第一位は依然として癌であり、死因別死亡数の中で約30%を占めている。高齢社会に突入した日本では、50歳以上の発症例が多く、今後さらに増加が見込まれている。部位別で患者数増加が顕著なのは、男性では前立腺癌や肺癌など、女性では乳癌や子宮癌などである。
癌治療法には、外科手術療法、放射線療法、化学療法、免疫療法、およびそれらの組み合わせがある。これらのうち、化学療法は抗腫瘍性薬物あるいは物質(化学療法剤)を用いる治療法であり、主として、外科手術や放射線照射だけでは治せない場合に用いられる。化学療法剤は、その作用メカニズムから、(i)シクロホスファミドのような「アルキル化剤」、(ii)フルオロウラシルのような「代謝拮抗剤」、(iii)塩酸ドキソルビシンのような「抗腫瘍性抗生物質」、(iv)塩酸イリノテカンのような「抗腫瘍性植物成分」、(v)白金錯体化合物のような「その他」に分類され、様々な癌種や病期の患者に対して臨床適応されている。しかし、化学療法剤が効きやすい癌種は、精巣腫瘍や急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫など限られており、その他の癌では完治は難しく、メカニズムの異なる化学療法剤同士の組み合わせ等により対処しているが、多くの場合、薬剤耐性癌の出現等を許して患者は不幸な転帰をたどる。そのため、分子標的治療薬など、新しい作用メカニズムをもつ薬剤が求められている。2004年の癌関連用剤の市場は約5,000億円と推定されており、今後、さらなる拡大が予測されている。
化学療法剤は癌細胞の増殖を抑制するだけでなく、正常な細胞、特に、増殖力の高い毛嚢細胞や胃・腸管細胞、生殖細胞、骨髄細胞などの機能・増殖に大きな影響を及ぼす。すなわち、化学療法剤の最大の問題点は、癌細胞選択性が低いことである。強力な化学療法を施した癌患者では、脱毛、口内炎、嚥下困難、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、貧血、出血傾向、疲労感などの副作用症状が現れ、体力の低下などを引き起こす。これら副作用は、感染症や敗血症を引き起こし、患者の命を奪う原因ともなる。また、ある種の化学療法剤は免疫機能低下を惹起するために、生体防御機能の低下を引き起こし、癌転移などのリスクが高まる。化学療法剤の副作用を緩和することは、治療遂行の面からだけでなく、患者QOL(quality of life;生活の質)維持からも重要である。
化学療法剤誘発副作用の軽減のため、癌治療補助剤が使用されている。血球減少防止のための顆粒球コロニー刺激因子、悪心・嘔吐など消化器症状改善のための塩酸アザセトロンや塩酸グラニセトロン、癌性疼痛改善のための塩酸ブプレノルフィンや複方オキシコトン製剤、育毛促進のための育毛プロテイン・クリームなどが用いられているものの、適用範囲は狭く、効果は十分でない。それゆえ、新規薬剤や機能性食品が求められている。
ところで、きのこ類は多用な生物活性を有することから、古くから日本人の健康に寄与してきた。例えばマツタケ〔Tricholoma matsutake(S. Ito & Imai)Sing.〕については、特公昭57−1230号公報(特許文献1)に、マツタケ菌糸体の液体培養物を熱水または希アルカリ溶液で抽出して得られる抽出液から分離精製されたエミタニン−5−A、エミタニン−5−B、エミタニン−5−C、およびエミタニン−5−Dに、サルコーマ180細胞の増殖阻止作用があることが開示され、特許第2767521号公報(特許文献2)には、マツタケ子実体の水抽出物から分離精製された分子量20〜21万のタンパク質(サブユニットの分子量10〜11万)が抗腫瘍活性を有することが開示されている。
さらに、本発明者らにより、マツタケ熱水抽出液、マツタケアルカリ溶液抽出液、あるいはこれら抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分が免疫増強活性を有することが見出されている(国際公開第01/49308号パンフレット(特許文献3))。本発明者らはまた、マツタケの特定の菌糸体由来の部分精製画分にストレス負荷回復促進作用があることも見出した(特開2003−050227号公報(特許文献4))。
上述のようにマツタケには抗腫瘍活性、免疫増強活性、ストレス負荷回復促進作用などの種々の生理活性が含まれることが見出されている。しかしながら、本発明者の知る限りにおいて、マツタケが抗癌剤副作用に対して優れた軽減効果を有するということについては、これまで報告がされていない。
本発明者は、マツタケが抗癌剤副作用に対し優れた軽減効果を有することを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の課題は、マツタケを利用した抗癌剤副作用の軽減剤および食品を提供することにある。
本発明は、マツタケ(Tricholoma matsutake)またはその抽出物を含む、抗癌剤副作用の軽減剤および食品に関する。
また本発明は、マツタケ(T. matsutake)が菌糸体、培養物(Broth)または子実体(胞子を含む)である、上記抗癌剤副作用の軽減剤および食品に関する。
また本発明は、マツタケ(T. matsutake)がFERM BP−7304株である、上記抗癌剤副作用の軽減剤および食品に関する。
また本発明は、マツタケ(T. matsutake)がFERM BP−7304株の菌糸体の乾燥粉末である、上記抗癌剤副作用の軽減剤および食品に関する。
また本発明は、マツタケ抽出物が、FERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液またはアルカリ溶液抽出液である、上記抗癌剤副作用の軽減剤および食品に関する。
本発明により、安全で、安定的に大量供給が可能な、抗癌剤副作用の軽減のための薬剤および食品が提供される。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品に用いられるマツタケ〔Tricholoma matsutake(S. Ito & Imai)Sing.〕は、菌糸体、培養物(Broth)、子実体のいずれの形態のものも用いることができ、生でも乾燥したものでもよい。本発明では子実体は胞子も含むものとする。これら菌糸体、培養物(Broth)、子実体の各抽出物も用いることができる。
本発明では特にマツタケFERM BP−7304株が好ましく用いられる。
マツタケFERM BP−7304株は、本出願人によって新規菌株として従前に出願され(国際公開第02/30440号パンフレット)、独立行政法人産業技術総合研究所((旧)工業技術院生命工学研究所)に平成12年9月14日に寄託されている。このマツタケFERM BP−7304株は、京都府亀岡市で採取したマツタケCM6271株から子実体組織を切り出し、試験管内で培養することにより菌糸体継代株を得たものであり、株式会社クレハ 生物医学研究所で維持している。
マツタケFERM BP−7304株の子実体の形態は、「原色日本新菌類図鑑(1)」(今関六也・本郷次雄編、保育社、昭和32年発行)プレート(plate)9頁および26頁に記載のマツタケ子実体に合致するものであった。
マツタケFERM BP−7304株の継代は、エビオス寒天斜面培地で実施することができる。マツタケFERM BP−7304株の菌糸体をエビオス寒天平板培地に接種すると、白色の菌糸が放射状に密に生育し、大きなコロニーを形成する。走査型電子顕微鏡で観察すると、太さ1〜2μmの枝状の菌糸体が無数に存在し、菌糸体側部に数μm程度の突起物が時々みられる。該菌株の菌糸体を大量培養する場合は、液体培地に接種し、静置培養、振盪培養、タンク培養等により行うことができる。
なお、マツタケFERM BP−7304株は、もっぱら菌糸体の形状で継代維持または培養することが可能であるが、子実体の形状となることもある。
マツタケFERM BP−7304株の菌学的性質は以下のとおりである。
(1)麦芽エキス寒天培地における培養的・形態的性質
白色の菌糸が放射状に密に生育してコロニーを形成する。接種30日目のコロニー径は約4cmである。
白色の菌糸が放射状に密に生育してコロニーを形成する。接種30日目のコロニー径は約4cmである。
(2)ツアペック寒天培地、オートミール寒天培地、合成ムコール寒天培地、およびフェノールオキシダーゼ反応検定用培地における培養的・形態的性質
上記いずれの培地においても、接種後1ヶ月経過しても菌糸の発育はほとんどみられない。
上記いずれの培地においても、接種後1ヶ月経過しても菌糸の発育はほとんどみられない。
(3)YpSs寒天培地における培養的・形態的性質
白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約5mmである。
白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約5mmである。
(4)グルコース・ドライイースト寒天培地における培養的・形態的性質
白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約2mmである。
白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約2mmである。
(5)最適生育温度および生育範囲
滅菌処理した液体培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス、pH7.0)10mLの入った100mL容三角フラスコに、マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、5〜35℃の種々の温度でそれぞれ培養し、28日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定した。その結果、菌体質量は5〜15℃の範囲で直線的に増加し、15〜25℃の範囲で緩やかに増加した。27.5℃以上ではほとんど増殖しなかった。最適生育温度は15〜25℃である。
滅菌処理した液体培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス、pH7.0)10mLの入った100mL容三角フラスコに、マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、5〜35℃の種々の温度でそれぞれ培養し、28日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定した。その結果、菌体質量は5〜15℃の範囲で直線的に増加し、15〜25℃の範囲で緩やかに増加した。27.5℃以上ではほとんど増殖しなかった。最適生育温度は15〜25℃である。
(6)最適生育pHおよび生育範囲
液体培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス)のpHを1モル/L塩酸または1モル/L水酸化カリウムで調整し、pH3.0〜8.0の種々の培地を調製して菌体の生育pHを調べた。すなわち各培地をフィルター滅菌し、培地10mLを滅菌済100mL容三角フラスコに分注した。マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種後、22℃で培養し、フラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定した。その結果、菌体の生育限界はpH3.0〜7.0、最適生育pHは4.0〜6.0であった。
液体培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス)のpHを1モル/L塩酸または1モル/L水酸化カリウムで調整し、pH3.0〜8.0の種々の培地を調製して菌体の生育pHを調べた。すなわち各培地をフィルター滅菌し、培地10mLを滅菌済100mL容三角フラスコに分注した。マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種後、22℃で培養し、フラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定した。その結果、菌体の生育限界はpH3.0〜7.0、最適生育pHは4.0〜6.0であった。
(7)対峙培養による帯線形成の有無
エビオス寒天平板培地に、マツタケFERM BP−7304株のブロック(約3mm×3mm×3mm)と、公知の13種類のマツタケ株(例えば、IFO 6915株;(財)発酵研究所)の各ブロック(約3mm×3mm×3mm)とを、約2cm間隔に対峙して植菌し、22℃で3週間培養した後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定した。
エビオス寒天平板培地に、マツタケFERM BP−7304株のブロック(約3mm×3mm×3mm)と、公知の13種類のマツタケ株(例えば、IFO 6915株;(財)発酵研究所)の各ブロック(約3mm×3mm×3mm)とを、約2cm間隔に対峙して植菌し、22℃で3週間培養した後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定した。
その結果、マツタケFERM BP−7304株は、公知のマツタケ株(13種類)のいずれの株に対しても明確な帯線を形成しなかった。なお、マツタケでは異株間対峙培養で帯線は生じないとされており、公知のマツタケ株(13種類)間についても、明確な帯線を形成した組み合わせはなかった。
(8)栄養要求性
滅菌処理した菌根菌用合成培地(「太田培地」。Ohtaら、"Trans. Mycol. Soc. Jpn.", 31, 323-334, 1990)10mLの入った100mL容三角フラスコに、マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、22℃で培養し、42日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定したところ、菌体441mgが得られた。
滅菌処理した菌根菌用合成培地(「太田培地」。Ohtaら、"Trans. Mycol. Soc. Jpn.", 31, 323-334, 1990)10mLの入った100mL容三角フラスコに、マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、22℃で培養し、42日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定したところ、菌体441mgが得られた。
上記菌根菌用合成培地中の炭素(C)源であるグルコースの代わりに、28種類の糖質関連物質のいずれか1つを加えた各培地に、マツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体質量を測定した。その結果、菌体質量が多かった糖質関連物質から菌体質量が少なかった糖質関連物質を順に示せば、以下のとおりである。
小麦デンプン>トウモロコシデンプン>デキストリン>メチルβグルコシド>セロビオース>マンノース>フラクトース>アラビノース>ソルビトール>グルコース>ラクトース>グリコーゲン>マンニトール>リボース>マルトース>トレハロース>ガラクトース>ラフィノース>メリビオース>N−アセチルグルコサミン。
なお、セルロース、ダルチトール、シュークロース、キシロース、メチルαグルコシド、イヌリン、イノシトール、およびソルボースでは、菌の発育はほとんどみられなかった。
次に、上記菌根菌用合成培地中の窒素(N)源である酒石酸アンモニウムの代わりに、15種類の窒素関連物質のいずれか1つを加えた各培地に、マツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体質量を測定した。
その結果、菌体質量が多かった窒素関連物質から菌体質量が少なかった窒素関連物質を順に示せば、以下のとおりである。
コーンスティープリカー>大豆ペプトン>ミルクペプトン>硝酸アンモニウム>硫酸アンモニウム>酒石酸アンモニウム>炭酸アンモニウム>アスパラギン>リン酸アンモニウム>塩化アンモニウム>硝酸ナトリウム>肉エキス>酵母エキス>カザミノ酸>クロレラ>トリプトーン>硝酸カリウム。
さらに、上記合成培地中のミネラルおよびビタミン類のうち、特定の1成分を除去した培地に、マツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体質量を測定した。
その結果、塩化カルシウム・二水和物、硫酸マンガン(II)・五水和物、硫酸亜鉛・七水和物、硫酸コバルト・七水和物、硫酸銅・五水和物、硫酸ニッケル・六水和物、塩酸アミン、ニコチン酸、葉酸、ビオチン、塩酸ピリドキシン、塩化カーチニン、アデニン硫酸・二水和物、または塩酸コリンのいずれか1つを培地から除いても、菌体質量にほとんど影響がなかった。
一方、硫酸マグネシウム・七水和物、塩化鉄(II)、またはリン酸二水素カリウムのいずれか1つを培地から除くと、菌体質量は顕著に減少した。すなわち、マグネシウム、鉄、リン、およびカリウムは、マツタケFERM BP−7304株の増殖に必須と考えられる。
(9)DNA塩基組成(GC含量)
GC含量は49.9%である。
GC含量は49.9%である。
(10)RAPD法により生成するDNAパターン
6種類の異なるPCR(Polymerase Chain Reaction)用プライマー(10mer)をそれぞれ単独で用いるRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法により生成するDNAパターンについて、マツタケFERM BP−7304株と、公知の44種類のマツタケ株(例えば、IFO 6915株;(財)発酵研究所)とを比較したところ、マツタケFERM BP−7304株は、公知のマツタケ株(44種類)のいずれとも異なるDNAパターンを示した。
6種類の異なるPCR(Polymerase Chain Reaction)用プライマー(10mer)をそれぞれ単独で用いるRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法により生成するDNAパターンについて、マツタケFERM BP−7304株と、公知の44種類のマツタケ株(例えば、IFO 6915株;(財)発酵研究所)とを比較したところ、マツタケFERM BP−7304株は、公知のマツタケ株(44種類)のいずれとも異なるDNAパターンを示した。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品は、有効成分として、(i)マツタケFERM BP−7304株(例えば、当該株の菌糸体、培養物(Broth)または子実体)の生のものをそのまま、あるいはこれを乾燥粉末としたもの、(ii)マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液(例えば、当該株の菌糸体、培養物(Broth)または子実体の、熱水抽出液)、(iii)マツタケFERM BP−7304株のアルカリ溶液抽出液(例えば、当該株の菌糸体、培養物(Broth)または子実体の、アルカリ溶液抽出液)などを含む態様が好ましく例示されるが、これら例示に限定されるものではない。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の菌糸体としては、例えば、培養により得られる菌糸体(すなわち培養菌糸体)と培地との混合物から適当な除去手段(例えば、濾過)により培地を除去しただけの状態で使用することもできるし、あるいは、培地を除去した後の菌糸体から適当な除去手段(例えば、凍結乾燥)により水分を除去した菌糸体乾燥物の状態で使用することもでき、さらには前記菌糸体乾燥物を粉砕した菌糸体乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の培養物(Broth)としては、例えば、培養により得られる菌糸体(すなわち培養菌糸体)と培地との混合物の状態で使用することもできるし、あるいは、前記混合物から適当な除去手段(例えば、凍結乾燥)により水分を除去した培養物(Broth)乾燥物の状態で使用することもでき、さらには前記培養物(Broth)乾燥物を粉砕した培養物(Broth)乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
上記培養工程は、特に限定されるものでなく、一般にマツタケ菌を培養する方法を任意に用いることができるが、例えば、マツタケFERM BP−7304株(「マツタケ菌I」)を固形培地または液体培地で培養または保存してマツタケ菌IIを得る工程、前記マツタケ菌IIを静置液体培養してマツタケ菌IIIを得る工程、前記マツタケ菌IIIを振盪培養してマツタケ菌IVを得る工程、前記マツタケ菌IVを100L未満の小型培養装置を用いて、培養液中に通気を行わない攪拌培養してマツタケ菌Vを得る工程、前記マツタケ菌Vを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部攪拌培養してマツタケ菌VIを得る工程、前記マツタケ菌VIを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部攪拌培養してマツタケ菌VIIを得る工程、および前記マツタケ菌VIIを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部撹拌培養してマツタケ菌VIIIを得る工程、からなる培養方法(国際公開第2004/038009号パンフレット)が、マツタケ菌の生理活性を損うことなく大量生産できるという点から好適に用いられる。
〈マツタケ菌Iを培養または保存してマツタケ菌IIを得る工程〉
用いる培地としては、一般にマツタケ菌を培養する栄養源基質を有する培地であれば特に制限なく使用することができる。例えば、太田培地(Ohtaら、"Trans. Mycol. Soc. Jpn.", 31, 323-334, 1990)、MMN培地(Marx, D. H., "Phytopathology", 59:153-163, 1969)、浜田培地(浜田、"マツタケ", 97-100, 1964)等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
用いる培地としては、一般にマツタケ菌を培養する栄養源基質を有する培地であれば特に制限なく使用することができる。例えば、太田培地(Ohtaら、"Trans. Mycol. Soc. Jpn.", 31, 323-334, 1990)、MMN培地(Marx, D. H., "Phytopathology", 59:153-163, 1969)、浜田培地(浜田、"マツタケ", 97-100, 1964)等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
固形培地用の固形化剤としては、カラギーナン、マンナン、ペクチン、寒天、カードラン、デンプン、アルギン酸等が好適例として挙げられる。これらのうち寒天が好ましい。
使用可能な培地の栄養源基質には、炭素源、窒素源、無機元素源などが挙げられる。
上記炭素源としては、米デンプン、小麦粉デンプン、バレイショデンプン、サツマイモデンプン等のデンプン類;デキストリン、アミロペクシン等の多糖類;マルトース、シュクロース等の少糖類;フラクトース、グルコース等の単糖類などが挙げられる。さらに麦芽エキスを挙げることができる。マツタケ菌の生長速度から、グルコースなどの単糖類が好ましい時期と、デンプン類が好ましい時期とがあるので、時期に応じた炭素源を選択し、必要に応じて組合せて使用する。
上記窒素源としては、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティーブリカー、大豆粉、大豆ペプトンなどの天然由来物質や、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素などが挙げられる。これらは単独で、あるいは組合せて用いることができる。一般に生長速度を考慮すると、天然由来物質、特に酵母エキスが好ましい。
上記無機元素源は、リン酸および微量元素を供給するために使用される。例を挙げると、リン酸塩のほか、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、鉄などの金属イオンの無機塩(例えば、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、等)があり、必要量を培地中に溶解する。
また、培地にビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類を添加することもできる。
さらに、使用するマツタケ菌の性質に応じて、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質などを添加することができる。植物抽出物としては、果菜類、根菜類、葉菜類などの抽出物が例示される。有機酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸などが例示される。核酸関連物質としては、市販の核酸、核酸抽出物、酵母、酵母エキスなどが例示される。
固形培地を調製する場合、炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは10〜50g/L、特に好ましくは20〜30g/Lである。
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
リン酸塩の使用量は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.02モル/Lである。さらに他の無機塩、ビタミン類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜添加することができる。また、調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.0、特に好ましくは5.0〜5.5とする。
〈静置液体培養〉
次に、マツタケ菌II(マツタケ菌Iを固形培地または液体培地で培養または保存したマツタケ菌)を静置液体培養してマツタケ菌IIIを製造する方法について記載する。
次に、マツタケ菌II(マツタケ菌Iを固形培地または液体培地で培養または保存したマツタケ菌)を静置液体培養してマツタケ菌IIIを製造する方法について記載する。
通常、100mL〜2L容の三角フラスコを用いて行う。
この静置液体培養は、液体培地にマツタケ菌IIを接種することにより開始する。
接種したマツタケ菌IIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物と、接種したマツタケ菌IIを含有する培養液との体積比(「接種時拡大倍率」)が好ましくは2〜50倍、より好ましくは3〜30倍となる量の液体培地を使用する。
接種したマツタケ菌IIを含有する培養液中のマツタケ菌IIの乾燥菌糸体質量と、接種したマツタケ菌IIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物の体積比(「初発菌糸体濃度」)を、好ましくは0.05〜3g/L、より好ましくは0.1〜2g/Lとなるように、液体培地にマツタケ菌IIを含有する培養液を接種する。
該静置液体培養での培養温度は15〜30℃が好ましく、より好ましくは20〜25℃であり、培養期間は30〜400日間が好ましく、より好ましくは120〜240日間である。培養期間が30日未満、あるいは400日超では、大量培養に適した生育能を有するマツタケ菌IIIを得ることが困難となる。
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)を初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加率」)が、2〜25倍となるように培養することが、生育能の点から好ましい。
静置液体培養に使用する液体培地は、その浸透圧を、好ましくは0.01〜0.8MPa、より好ましくは0.02〜0.7MPa、特に好ましくは0.03〜0.5MPaとなるように、栄養源基質を使用する。
静置液体培養に用いる栄養源基質として、マツタケ菌Iを培養する固形培地と同じ炭素源、窒素源、無機元素源、ビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類等を使用することができる。
炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは20〜60g/L、特に好ましくは25〜45g/Lである。通常、グルコース等の単糖類を使用する。
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
リン酸塩を使用する場合は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.02モル/Lになるようにする。
さらに、他の無機塩、ビタミン類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜添加することができる。
調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.5、特に好ましくは5.0〜6.0とする。
マツタケ菌IIIを含有する静置液体培養による培養液の一部若しくは全部を、マツタケ菌IIを含有する培養液(若しくは培養物)と同様に静置液体培養の接種源として、再度、静置液体培養工程で使用することもできる。
〈振盪培養〉
次いで、マツタケ菌III(マツタケ菌IIを静置液体培養して得られたマツタケ菌)を振盪培養して、マツタケ菌IVを製造する方法について記載する。
通常、300mL〜5L容の三角フラスコを用いて行う。
次いで、マツタケ菌III(マツタケ菌IIを静置液体培養して得られたマツタケ菌)を振盪培養して、マツタケ菌IVを製造する方法について記載する。
通常、300mL〜5L容の三角フラスコを用いて行う。
この振盪培養は、液体培地にマツタケ菌IIIを接種することにより開始する。
接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物と、接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液との体積比(「接種時拡大倍率」)が、好ましくは2〜50倍、より好ましくは3〜30倍、特に好ましくは5〜10倍となる量の液体培地を使用する。
なお、接種時拡大倍率に見合う培養液の量を確保するために、静置液体培養を複数の培養装置を用いて製造することもできる。
接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液中のマツタケ菌IIIの乾燥菌糸体質量と、接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物の体積比(「初発菌糸体濃度」)を、好ましくは0.05〜3g/L、より好ましくは0.1〜2g/Lとなるように、液体培地にマツタケ菌IIIを含有する培養液を接種する。
振盪培養では、培養温度は15〜30℃が好ましく、より好ましくは20〜25℃であり、培養期間は7〜50日間が好ましく、より好ましくは14〜28日間である。
振盪培養に要する動力として、通常、三角フラスコ内の培養液単位体積あたりの攪拌所要動力0.05〜0.4kW/m3を用いる。
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)と初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加倍率」)が2〜25倍となるように培養することが、生育能の点で好ましい。
振盪培養に使用する液体培地は、その浸透圧を、好ましくは0.01〜0.8MPa、より好ましくは0.02〜0.7MPa、特に好ましくは0.03〜0.5MPaとなるように、栄養源基質を使用する。
振盪培養に用いられる栄養源基質として、マツタケ菌IIを培養する液体培地と同じ炭素源、窒素源、無機元素源、ビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類を使用することができる。
炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは20〜60g/L、特に好ましくは25〜45g/Lである。通常、グルコース等の単糖類を使用する。
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
リン酸塩の使用量は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.02モル/Lになるようにする。
さらに、他の無機塩、ビタミン類、アミノ酸類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜添加することができる。
調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.5、特に好ましくは5.0〜6.0とする。
〈攪拌培養〉
次に、攪拌培養により、マツタケ菌V、マツタケ菌VI、マツタケ菌VII、マツタケ菌VIIIを製造する方法について記載する。
次に、攪拌培養により、マツタケ菌V、マツタケ菌VI、マツタケ菌VII、マツタケ菌VIIIを製造する方法について記載する。
この攪拌培養は、液体培地にマツタケ菌(IV〜VII)を接種することにより開始する。以下の説明において、マツタケ菌IVは、マツタケ菌IIIを振盪培養して得られるマツタケ菌をいい;マツタケ菌Vは、マツタケ菌IVを100L未満の小型培養装置を用いて培養液中に通気を行わない撹拌培養を行って得られたマツタケ菌をいい;マツタケ菌VIは、マツタケ菌Vを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部撹拌培養して得られたマツタケ菌をいい;マツタケ菌VIIは、マツタケ菌VIを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部撹拌培養して得られたマツタケ菌をいい;マツタケ菌VIIIは、マツタケ菌VIIを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部撹拌培養して得られたマツタケ菌をいう。
攪拌培養で用いる液体培地は、次のようにして調製することができる。
栄養源基質は、振盪培養で使用する、炭素源、窒素源、無機元素源、ビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類と同じものを使用することができる。
炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは20〜60g/L、特に好ましくは25〜45g/Lである。デンプン類を好ましく使用できる。
攪拌を行う培養液中の浸透圧に影響するグルコースなどの単糖類を併用する場合、その使用量は、好ましくは0.1〜60g/L、より好ましくは0.5〜40g/L、特に好ましくは0.7〜20g/Lである。
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが唖好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
リン酸塩の使用量は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
さらに、他の無機塩、ビタミン類、アミノ酸類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜、添加することができる。
調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.5、特に好ましくは5.0〜6.0とする。
攪拌培養に使用する液体培地は、その浸透圧を、好ましくは0.01〜0.8MPa、より好ましくは0.02〜0.7MPa、特に好ましくは0.03〜0.5MPaとなるように、栄養源基質を使用する。
攪拌培養の培養温度は、15〜30℃、好ましくは20〜25℃とする。
接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液と液体培地とを合せた混合物と、接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液との体積比(「接種時拡大倍率」)が、好ましくは2〜50倍、より好ましくは3〜30倍、特に好ましくは5〜10倍となる量の液体培地を使用する。
接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液中のマツタケ菌(IV〜VII)の乾燥菌糸体質量と、接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液と液体培地とを合せた混合物の体積比(「初発菌糸体濃度」)を、好ましくは0.01〜5g/L、より好ましくは0.05〜3g/L、特に好ましくは0.1〜2g/Lとなるように、液体培地にマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液を接種する。
攪拌培養で得られるマツタケ菌(V〜VII)を、さらに攪拌培養の母菌として用いる場合の培養日数は、3〜20日間が好ましく、特には5〜14日間である。
これらの培養日数後に、マツタケ菌(V〜VII)の乾燥菌糸体含有量が、好ましくは0.5〜10g/L、より好ましくは1〜8g/L、特に好ましくは1〜6g/Lになっている培養液は、攪拌培養に適した生育能を有するマツタケ菌(V〜VII)を含有している。
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)と初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加率」)が2〜25倍となるように培養することが、生育能の点で好ましい。
他方、攪拌培養で得られるマツタケ菌(V〜VIII)を、マツタケ菌糸体として分離する場合の培養日数は5〜30日間であり、好ましくは7〜20日間、特に好ましくは10〜15日間である。
これらの培養日数から、炭素源の資化速度が著しく低下した時を培養終了とするのが好ましいが、適宜、製造サイクル、製造コスト等の製造形態に合せて決定することができる。
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)と初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加倍率」)が35〜100倍となるように培養することが、工業的な生産の点で好ましい。
マツタケ菌IVを含有する振盪培養で製造した培養液を、100L以上の中型、および大型培養槽などの培養装置による攪拌培養工程で使用することもできる。
攪拌培養に使用する培養装置は、通気攪拌ができ、無菌性が確保できれば特に制限なく使用することが可能で、必要に応じて通気することができ、または通気装置を装着できるものを使用する。したがって、通常の、小型、中型および大型の培養槽、またはジャーファーメンターを使用することができる。
100L未満のジャーファーメンターまたは小型培養槽を用いて、マツタケ菌IVの培養を行いマツタケ菌Vを製造する場合、液体培地中に通気せずに、攪拌培養を行うのが好ましい。100L未満のジャーファーメンターまたは小型培養槽で通気を行って培養すると、菌糸が凝集し、成長点が欠失して母菌としての生育能が損われる場合があるからである。
また、100L以上の中型、および大型培養槽などの培養装置により工業スケールで深部攪拌培養を行う場合、必要に応じて通気を行う。この場合の通気量は0.05〜1.0vvm、特には0.2〜0.5vvmとするのが好ましい。
攪拌培養における攪拌は、培養初期では培養液単位体積あたりの所要攪拌動力で制御する。通常、0.01〜2kW/m3、好ましくは0.05〜1kW/m3の範囲で攪拌を行うことにより、マツタケ菌糸体が良好に生育する。培養初期を過ぎれば菌が生育を始め、酸素供給量が不足し、さらに、生育した菌糸体の分散が不十分になるので、適宜、攪拌の強度を大きくすることが必要になる。当該深部攪拌では、培養初期には低通気、低撹拌速度で培養し、培養後期には高通気、高攪拌速度で培養するのが好ましい。
深部攪拌培養から得られたマツタケ菌糸体の分離・回収は、常法によって行うことができる。例えば、フィルタープレスなどによる濾過、遠心分離などである。
得られた菌糸体は、例えば蒸留水により充分に洗浄してから、次の熱水抽出工程を実施するのが好ましい。また抽出効率が向上するように、破砕物または粉体の状態に加工するのが好ましい。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の子実体としては、例えば、子実体をそのままで、または子実体を破砕した状態で使用することもできるし、あるいは、子実体から適当な除去手段(例えば、凍結乾燥)により水分を除去した子実体乾燥物の状態で使用することもでき、さらには、前記子実体乾燥物を粉砕した子実体乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液は、例えば培養により得られるマツタケFERM BP−7304株の菌糸体(すなわち培養菌糸体)、培養物(Broth)、または子実体を熱水で抽出することにより得ることができる。
熱水抽出に用いる熱水の温度は、マツタケFERM BP−7304株に含有される抗癌剤副作用の軽減効果を示す成分が、熱水抽出液中に充分に抽出される温度である限り特に限定されるものではないが、60〜100℃程度が好ましく、80〜98℃程度がより好ましい。
菌糸体または子実体を熱水抽出に用いる場合には、抽出効率が向上するように、破砕物または粉体の状態に加工することが好ましい。
また抽出の際には、抽出効率が向上するように、攪拌または振盪しながら実施するのが好ましい。抽出時間は、例えば、菌糸体の状態(例えば、破砕物または粉体の状態に加工した場合にはその加工状態)、熱水の温度、または攪拌若しくは振盪の有無若しくは条件に応じて、適宜決定することができるが、通常1〜6時間程度であり、2〜3時間程度が好ましい。
得られた熱水抽出液は、不要物が混在する状態で、そのまま、本発明の抗癌剤副作用の軽減剤の有効成分として用いることもできるし、あるいは不溶物を除去してから、さらにはそこから抽出液中の低分子画分(好ましくは分子量3500以下の画分)を除去してから、本発明の抗癌剤副作用の軽減剤の有効成分として用いることもできる。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株のアルカリ抽出液は、例えば、上述したマツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液の製造方法において、熱水の代わりにアルカリ溶液を用いること以外は、上記熱水抽出液の製造方法に準じた方法により得ることができる。
アルカリ溶液抽出に用いるアルカリ溶液としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物、特には水酸化ナトリウムの水溶液を用いることができる。アルカリ溶液のpHは8〜13が好ましく、9〜12がより好ましい。アルカリ溶液抽出は0〜30℃程度で実施するのが好ましく、0〜25℃程度がより好ましい。抽出時間は、例えば、菌糸体残渣の状態(例えば、破砕物または粉体の状態に加工した場合にはその加工状態)、アルカリ溶液のpH若しくは温度、または攪拌若しくは振盪の有無若しくは条件に応じて、適宜決定することができるが、通常30分間〜5時間程度であり、1〜3時間程度が好ましい。得られたアルカリ溶液抽出液は、そのまま、あるいは所望により中和処理を実施してから、本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品に用いる。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品は、有効成分であるマツタケ、特にはマツタケFERM BP−7304株、あるいはその抽出物を、単独で、あるいは所望により薬剤学的に許容し得る担体とともに、ヒトや動物に投与することができる。
本発明において「抗癌剤副作用の軽減」とは、動物やヒトなどにおいて、抗癌剤投与に伴うQOL低下など、生体の正常細胞に与える不都合な反応を軽減させることを意味する。したがって、本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品の投与・摂取時期は、特に限定されるものではないが、抗癌剤投与前、投与中または投与後、日常的に継続投与・摂取するのが好ましい。
本発明における抗癌剤副作用の軽減効果は、抗癌剤副作用のタイプを問うものでなく、いずれのタイプの抗癌剤副作用に対しても奏功し得る。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品の投与・摂取剤型としては特に限定されるものでなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、または注射剤、外用液剤、軟膏剤、座剤、局所投与のクリーム、点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。
経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、または合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、または酸化防止剤等を用いて、常法により製造することができる。
非経口投与方法としては、注射(皮下、静脈内など)等が例示される。なかでも注射剤が最も好適に用いられる。
例えば、注射剤の調製においては、有効成分の他に生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、または乳化剤などを任意に用いることができる。
また、本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、このペレットを治療すべき組織中に外科的に移植することができる。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品は、これに限定されるものではないが、マツタケFERM BP−7304株あるいはその抽出物等の有効成分を0.01〜99質量%、好ましくは0.1〜80質量%の量で含有することができる。
本発明の抗癌剤副作用の軽減剤および食品を用いる場合の投与・摂取量は、被投与者の年齢、性別、体重、または投与・摂取方法などに応じて適宜決定することができ、経口的にまた非経口的に投与・摂取することが可能である。
また、投与・摂取形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)やいわゆる健康食品(いずれも飲料を含む)、または飼料として飲食物の形で与えることも可能である。さらには、口中に一時的に含むものの、そのほとんどを口中より吐き出す形態、例えば、歯磨き剤、洗口剤、チューインガム、うがい剤などの形で与えることも、あるいは鼻から吸引させる吸入剤の形で与えることも可能である。例えば、マツタケFERM BP−7304株あるいはその抽出物等の有効成分を、添加剤(食品添加剤など)として、所望の食品(飲料を含む)、飼料、歯磨剤、洗口剤、チューインガム、またはうがい剤等に添加することができる。
なお、上記において、特定保健用食品は、その食品が持つ健康機能の表示が認められる食品(食品ごとに厚生労働省の許可を必要とする)をいい、栄養機能食品は栄養成分の機能を明記できる食品(厚生労働省が作成した規格基準を満たす必要あり)をいい、いわゆる健康食品とは上記保健機能食品以外の食品一般を広く意味するもので、健康補助食品等を含むものである。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によってなんら限定されるものでない。
(実施例1)
[マツタケ菌糸体抽出物の調製]
株式会社クレハ 生物医学研究所で樹立および維持しているマツタケCM6271株(マツタケFERM BP−7304株)の菌糸体を、滅菌済み培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス、pH6.0)100mLの入った500mL容三角フラスコ20本に接種し、22℃で250rpmの振盪培養機で4週間培養を行った。培養終了後、培養物(Broth)をホモゲナイザー中で磨砕した後、攪拌して93℃〜98℃のウォーターバス中で3時間抽出した。抽出終了後、室温まで冷却し、遠心分離(12000rpm、20分間、4℃)によって上清を回収し、抽出残渣に純水1Lを加え、再び同様の処理を行った。この操作を3回行い、各操作で得られた上清を混合した後、分子量3500分画の透析膜(Spectra/Por 3 Membrane; Spectrum)に入れ、水道水の流水中で3日間透析した。そして、該透析膜内液を濃縮した後、凍結乾燥を行い、白色粉末(以下、単に「CM6271」とも記す)7.8gを得た。
[マツタケ菌糸体抽出物の調製]
株式会社クレハ 生物医学研究所で樹立および維持しているマツタケCM6271株(マツタケFERM BP−7304株)の菌糸体を、滅菌済み培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス、pH6.0)100mLの入った500mL容三角フラスコ20本に接種し、22℃で250rpmの振盪培養機で4週間培養を行った。培養終了後、培養物(Broth)をホモゲナイザー中で磨砕した後、攪拌して93℃〜98℃のウォーターバス中で3時間抽出した。抽出終了後、室温まで冷却し、遠心分離(12000rpm、20分間、4℃)によって上清を回収し、抽出残渣に純水1Lを加え、再び同様の処理を行った。この操作を3回行い、各操作で得られた上清を混合した後、分子量3500分画の透析膜(Spectra/Por 3 Membrane; Spectrum)に入れ、水道水の流水中で3日間透析した。そして、該透析膜内液を濃縮した後、凍結乾燥を行い、白色粉末(以下、単に「CM6271」とも記す)7.8gを得た。
(実施例2)
[アルキル化剤誘発副作用に対する作用検討]
シクロホスファミド(CY)は、注射または経口により、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、真性多血症、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、神経芽腫、網膜芽腫、骨腫瘍、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、咽頭癌、胃癌、膵癌、肝臓癌、結腸癌、睾丸腫瘍、絨毛性疾患、横紋筋肉腫、悪性黒色腫の治療に用いられているアルキル化剤である。
[アルキル化剤誘発副作用に対する作用検討]
シクロホスファミド(CY)は、注射または経口により、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、真性多血症、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、神経芽腫、網膜芽腫、骨腫瘍、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、咽頭癌、胃癌、膵癌、肝臓癌、結腸癌、睾丸腫瘍、絨毛性疾患、横紋筋肉腫、悪性黒色腫の治療に用いられているアルキル化剤である。
本剤の代表的な副作用症状として、吐き気や嘔吐、食欲不振に加えて、白血球・血小板・赤血球減少、発熱、寒気、戦慄、咳、のどの痛み、軟便、下痢、腹痛、排尿時の痛み、血尿、頻尿、残尿感、肛門痛、皮歯肉痛、発汗、紫斑、内出血、歯磨きによる出血、鼻血、血便、血尿が報告されている。さらに、手足が冷たい、爪の色が白い、顔色が悪い、頭痛、耳鳴りがする、脈拍が増える、動悸がする、息切れしやすい、食欲不振、便秘、めまいがする、疲労感・倦怠感などの症状も起きる。
そこで、マウスを用いて、CY誘発の体重および末梢血細胞減少に及ぼすCM6271投与の影響を調べるとともに、CYの抗腫瘍効果に及ぼす影響を評価した。
(i)試験動物
日本チャールスリバー(株)から雄性C57BL/6NCrj(C57BL/6)マウスを購入し、予備飼育の後、8週齢で試験に供した。マウスの飼育は、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で行った。
日本チャールスリバー(株)から雄性C57BL/6NCrj(C57BL/6)マウスを購入し、予備飼育の後、8週齢で試験に供した。マウスの飼育は、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で行った。
(ii)試薬(アルキル化剤)
CYは塩野義製薬(株)製「注射用エンドキサン」(商品名)100mgを用いた。
CYは塩野義製薬(株)製「注射用エンドキサン」(商品名)100mgを用いた。
(iii)CM6271の投与
CM6271は、0.5%メチルセルロース400CP(信越化学工業(株)製)溶液に懸濁したものをマウスに経口投与した。
CM6271は、0.5%メチルセルロース400CP(信越化学工業(株)製)溶液に懸濁したものをマウスに経口投与した。
(iv)試験群構成および試験方法
<CY処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響>
上記雄性C57BL/6マウスを無作為に下記のようにA〜D群の4群(各群:n=8)に分け、CM6271投与群(B群、D群)とCM6271非投与群(対照群。A群、C群)に、CY投与腹腔内投与処置あるいは生理的食塩水腹腔内投与処置を施した後、8日間にわたって経時で体重を測定した。結果を表1に示す。
<CY処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響>
上記雄性C57BL/6マウスを無作為に下記のようにA〜D群の4群(各群:n=8)に分け、CM6271投与群(B群、D群)とCM6271非投与群(対照群。A群、C群)に、CY投与腹腔内投与処置あるいは生理的食塩水腹腔内投与処置を施した後、8日間にわたって経時で体重を測定した。結果を表1に示す。
A群[生理的食塩水処置・対照群]: 生理食塩水処置10日前から、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、同経口投与を継続しながら、投与開始後10日目に生理的食塩水を1回腹腔内投与(0.2mL)し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を8日間連日経口投与し、経日で体重を測定した。
B群[生理的食塩水処置・CM6271投与群]: 生理食塩水処置10日前から、CM6271(上記(iii))を1g/kg/日の量で連日経口投与し、同経口投与を継続しながら、投与開始後10日目に生理的食塩水を1回腹腔内投与(0.2mL)し、その後、CM6271を1g/kg/日の量で8日間連日経口投与し、経日で体重を測定した。
C群[CY処置・対照群]: CY処置10日前から、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、同経口投与を継続しながら、投与開始後10日目にCYを1回腹腔内投与(100mg/kg)し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を8日間連日経口投与し、経日で体重を測定した。
D群[CY処置・CM6271投与群]: CY処置10日前から、CM6271を1g/kg/日の量で連日経口投与し、同経口投与を継続しながら、投与開始後10日目にCYを1回腹腔内投与(100mg/kg)し、その後、CM6271を1g/kg/日の量で8日間連日経口投与し、経日で体重を測定した。
表1に示す結果から明らかなように、CY処置によりマウス体重は減少し、投与4日目以降、徐々に回復した(C群、D群)。CY処置の10日前からCM6271 1g/kgを経口投与させたマウスでは、CY処置後の体重減少が有意に抑制された(D群)。
なお、生理食塩水処置・対照群と生理食塩水処置・CM6271群の対比において、両群の平均体重はほとんど変わりなく、CM6271はCY非処置マウスの体重に殆ど影響を与えないことが示唆された。
<CY処置マウスの抹消白血球数に及ぼすCM6271投与の影響>
上記A〜D群のマウスにつき、処置(CY投与腹腔内投与処置あるいは生理的食塩水腹腔内投与処置)後、4〜8日後のマウスの眼窩静脈叢をガラス毛細管で軽く傷つけることにより採血し、多項目自動血球計数装置Sysmex KX-21(シスメックス(株)製)を用いて白血球数を測定した。結果を表2に示す。
上記A〜D群のマウスにつき、処置(CY投与腹腔内投与処置あるいは生理的食塩水腹腔内投与処置)後、4〜8日後のマウスの眼窩静脈叢をガラス毛細管で軽く傷つけることにより採血し、多項目自動血球計数装置Sysmex KX-21(シスメックス(株)製)を用いて白血球数を測定した。結果を表2に示す。
表2に示すように、C群(CY処置・対照群)の白血球数はCY処置により有意に減少し、その後徐々に回復し、処置後7日目以降、リバウンド的に増加した。一方、D群(CY処置・CM6271投与群)では、CY処置後4〜5日目の減少は対照群と同様であったが、CY処置後7日目以降のリバウンド的増加は有意に抑制された。なお、生理食塩水処置・対照群と生理食塩水処置・CM6271群の対比において、両群の平均白血球数は殆ど変わりなく、CM6271はCY非処置マウスの白血球数に殆ど影響を与えないことが示唆された。
<肺癌細胞LLC移植マウスの生存期間に及ぼすCY処置およびCM6271の影響>
CYは、おもに肝代謝酵素CYP2B6で代謝されて活性化物質に変換する。CYP2C8、CYP2C9、CYP3A4、CYP2A6もCYの代謝に関与していることが報告されている。マツタケ菌糸体がこれら薬物代謝酵素に作用して、CYの活性化を阻害している可能性は否定できない。
CYは、おもに肝代謝酵素CYP2B6で代謝されて活性化物質に変換する。CYP2C8、CYP2C9、CYP3A4、CYP2A6もCYの代謝に関与していることが報告されている。マツタケ菌糸体がこれら薬物代謝酵素に作用して、CYの活性化を阻害している可能性は否定できない。
そこで、CYの抗腫瘍効果発現に及ぼすCM6271投与の影響を調べた。すなわち、(株)クレハ 生物医学研究所で継代維持しているルイス肺癌細胞(LLC)1×106cells/匹を、C57BL/6マウス(上記(i))の皮下に移植して担癌マウスとした。この担癌マウス(LLC移植マウス)を無作為に下記のようにE群〜H群の4群(各群:n=10)に分けた。なお下記において「対照群」とは「CM6271非投与群」を意味する。
E群[生理的食塩水処置・対照群]: 腫瘍移植10日前から0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植翌日から生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を週2回、合計4回腹腔内投与し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間をモニターした。
F群[生理的食塩水処置・CM6271投与群]: 腫瘍移植10日前からCM6271(上記(iii))を1g/kgの量で経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植翌日から生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を週2回、合計4回腹腔内投与し、その後、CM6271を1g/kg/日の量を20日間連日経口投与した。
G群[CY処置・対照群]: 腫瘍移植10日前から0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を経口投与し、同経口投与を継続しながら、瘍移植翌日からCY80mg/kgを週2回、合計4回腹腔内投与し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間をモニターした。
H群[CY処置・CM6271投与群]: 腫瘍移植10日前からCM6271を1g/kgの量で経口投与し、同経口投与を継続しながら、瘍移植翌日からCY80mg/kgを週2回、合計4回腹腔内投与し、その後、CM6271を1g/kg/日の量で連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間をモニターした。
結果を図1に示す。同図から明らかなように、担癌マウスはCY投与により生存期間が延長され、CM6271の併用投与によりさらに延長されたことが確認された。すなわちCM6271は、CYの抗腫瘍効果を損なうことなく、むしろ増強することが示唆される。なお同図中、「T/C%」はテスト群(F、GまたはH)の平均生存日数/E群の平均生存日数%を意味する。
(実施例3)
[代謝拮抗剤誘発副作用に対する作用検討]
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(以下、「TS−1」と記す。商品名「ティーエスワン」(大鵬薬品(株)製))は、経口投与により、胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌の治療に用いられている代謝拮抗剤である。
[代謝拮抗剤誘発副作用に対する作用検討]
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(以下、「TS−1」と記す。商品名「ティーエスワン」(大鵬薬品(株)製))は、経口投与により、胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌の治療に用いられている代謝拮抗剤である。
本剤の代表的な副作用症状として、白血球・好中球・ヘモグロビン・血小板減少、食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、口内炎、色素沈着、発疹が挙げられる。肝障害、脱水症状、間質性肺炎、消化管潰瘍、消化管出血、消化管穿孔、急性腎不全などの症状も報告されている。そこで、TS−1処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響を調べるとともに、TS−1の抗腫瘍効果に及ぼす影響を評価した。
(i)試験動物
日本チャールスリバー(株)から雄性BALB/c AnNCrlCrlj(BALB/c)マウスを購入し、予備飼育の後、8週齢で試験に供した。マウスの飼育は、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で行った。
日本チャールスリバー(株)から雄性BALB/c AnNCrlCrlj(BALB/c)マウスを購入し、予備飼育の後、8週齢で試験に供した。マウスの飼育は、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で行った。
(ii)試薬(代謝拮抗剤)
TS−1は、テガフール:ギメラシル:オテラシルカリウムをモル比で1:0.4:1の割合で混合し、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースに懸濁させて20mg/kg量をマウスに5日間連日経口投与した。投与後、経時的に体重を測定するとともに、部分採血して白血球数を測定した。
TS−1は、テガフール:ギメラシル:オテラシルカリウムをモル比で1:0.4:1の割合で混合し、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースに懸濁させて20mg/kg量をマウスに5日間連日経口投与した。投与後、経時的に体重を測定するとともに、部分採血して白血球数を測定した。
(iii)CM6271の投与
CM6271は、0.5%メチルセルロース400CP(信越化学工業(株)製)溶液に懸濁したものをマウスに経口投与した。
CM6271は、0.5%メチルセルロース400CP(信越化学工業(株)製)溶液に懸濁したものをマウスに経口投与した。
(iv)試験群構成および試験方法
<TS−1処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響〉
上記雄性BALB/cマウスを無作為に下記のようにI〜L群の4群(各群:n=8)に分け、CM6271投与群(J群、L群)とCM6271非投与群(対照群。I群、K群)に、TS−1経口投与処置(5日間連続)あるいは生理的食塩水経口投与処置(5日間連続)を施し、処置開始日以降、経時的に体重を測定した。結果を表3に示す。
<TS−1処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響〉
上記雄性BALB/cマウスを無作為に下記のようにI〜L群の4群(各群:n=8)に分け、CM6271投与群(J群、L群)とCM6271非投与群(対照群。I群、K群)に、TS−1経口投与処置(5日間連続)あるいは生理的食塩水経口投与処置(5日間連続)を施し、処置開始日以降、経時的に体重を測定した。結果を表3に示す。
I群[生理的食塩水処置・対照群]: 0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.2mL/匹/日)を10日間連続投与後、生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を5日間連続して経口投与する処置を行い、経時で体重を測定した。なお、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、TS−1投与期間中および投与後11日目まで連日経口投与した。
J群[生理的食塩水処置・CM6271投与群]: CM6271(上記(iii))を1g/kg/日の量で10日間連続投与後、生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を5日間連続して経口投与する処置を行い、経時で体重を測定した。なお、CM6271は、TS−1投与期間中および投与後11日目まで連日経口投与した。
K群[TS−1処置・対照群]: 0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.2mL/匹/日)を10日間連続投与後、TS−1(上記(ii)に示す試薬)を5日間連続して経口投与する処置を行い、経時で体重を測定した。なお、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、TS−1投与期間中および投与後11日目まで連日経口投与した。
L群[TS−1処置・CM6271投与群]: CM6271を1g/kg/日の量で10日間連続投与後、TS−1を5日間連続して経口投与する処置を行い、経時で体重を測定した。なお、CM6271は、TS−1投与期間中および投与後11日目まで連日経口投与した。
表3に示す結果から明らかなように、TS−1処置を行ったがCM6271を投与しなかったK群(TS−1処置・対照群)では、TS−1処置開始5日目を過ぎた後、体重は有意に低下した。一方、TS−1処置の10日前からCM6271を投与したL群(TS−1処置・CM6271投与群)では、TS−1処置による体重減少が有意に防止された。
<TS−1処置マウスの白血球数に及ぼすCM6271投与の影響〉
上記I〜K群のマウスにつき、処置(TS−1経口投与処置あるいは生理的食塩水経口投与処置)開始7日目および14日目のマウスの眼窩静脈叢をガラス毛細管で軽く傷つけることにより採血し、多項目自動血球計数装置Sysmex KX-21(シスメックス(株)製)を用いて白血球数を測定した。結果を表4に示す。
上記I〜K群のマウスにつき、処置(TS−1経口投与処置あるいは生理的食塩水経口投与処置)開始7日目および14日目のマウスの眼窩静脈叢をガラス毛細管で軽く傷つけることにより採血し、多項目自動血球計数装置Sysmex KX-21(シスメックス(株)製)を用いて白血球数を測定した。結果を表4に示す。
表4に示すように、K群(TS−1処置・対照群)とL群(TS−1処置・CM6271投与群)との対比から明らかなように、マウスの白血球数はTS−1処置により有意に減少したが、CM6271投与により白血球数減少は優位に抑制された。なお、I群とJ群の対比において、両群の平均白血球数は殆ど変わりなく、CM6271はTS−1非処置マウスの白血球数に殆ど影響を与えないことが示唆された。
<TS−1の抗腫瘍効果発現に及ぼすCM6271投与の影響>
次に、TS−1の抗腫瘍効果発現に及ぼすCM6271投与の影響を調べた。すなわち、株式会社クレハ 生物医学研究所で継代維持しているcolon26大腸癌細胞1×106cells/匹を雄性BALB/cマウス(上記(i))の皮下に移植して担癌マウスとした。
次に、TS−1の抗腫瘍効果発現に及ぼすCM6271投与の影響を調べた。すなわち、株式会社クレハ 生物医学研究所で継代維持しているcolon26大腸癌細胞1×106cells/匹を雄性BALB/cマウス(上記(i))の皮下に移植して担癌マウスとした。
この担癌マウス(colon26腫瘍移植マウス)を無作為に下記のようにM群〜P群の4群(各群:n=8)に分けた。なお下記において「対照群」とは「CM6271非投与群」を意味する。
M群[生理的食塩水処置・対照群]: 腫瘍移植10日前から0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.2mL/匹/日)を経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植翌日から生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を7日間連続で経口投与し、その後、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間をモニターした。
N群[生理的食塩水処置・CM6271投与群]: 腫瘍移植10日前からCM6271(上記(iii))を1g/kgの量で経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植翌日から生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を7日間連続で経口投与し、その後、CM6271を1g/kgの量で連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間をモニターした。
O群[TS−1処置・対照群]: 腫瘍移植10日前から0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.2mL/匹/日)を経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植翌日からTS−1(上記(ii)に示す薬剤試薬)12.5mg/kgを連日7日間経口投与し、その後、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間をモニターした。
P群[TS−1処置・CM6271投与群]: 腫瘍移植10日前からCM6271を1g/kgの量で経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植翌日からTS−1 12.5mg/kgを連日7日間経口投与し、その後、CM6271を1g/kg/日の量で連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間をモニターした。
結果を図2に示す。同図から明らかなように、生理食塩水処置群(M群、N群)では、CM6271の投与は腫瘍増殖にほとんど影響を及ぼさなかったが、TS−1処置群(O群、P群)では、腫瘍増殖は抑制され、CM6271の併用によりさらに増強された。
(実施例4)
[抗腫瘍性抗生物質誘発副作用に対する作用検討]
塩酸ドキソルビシン(ADM)は、注射により、悪性リンパ腫(細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病)、肺癌、消化器癌(胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、乳癌、膀胱腫瘍、骨肉腫の自覚的および他覚的症状の緩解のために用いられる代表的な抗腫瘍性抗生物質である。また、尿路上皮癌に対しては多剤と併用される。
[抗腫瘍性抗生物質誘発副作用に対する作用検討]
塩酸ドキソルビシン(ADM)は、注射により、悪性リンパ腫(細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病)、肺癌、消化器癌(胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、乳癌、膀胱腫瘍、骨肉腫の自覚的および他覚的症状の緩解のために用いられる代表的な抗腫瘍性抗生物質である。また、尿路上皮癌に対しては多剤と併用される。
本剤の代表的な副作用は脱毛、白血球減、悪心・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、血小板減少、貧血・赤血球減少、心電図異常、頻脈、頻尿、排尿痛、膀胱炎、血尿、発熱、不整脈、胸痛、肝障害、蛋白尿、色素沈着、倦怠感、頭痛、残尿感、発疹、鼻出血である。そこで、ADM処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響を調べるとともに、ADMの抗腫瘍効果に及ぼす影響を評価した。
(i)試験動物
日本チャールスリバー(株)から雄性CD2F1/Crlj(CDF1)マウスを購入し、予備飼育の後、8週齢で試験に供した。マウスの飼育は、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で行った。
日本チャールスリバー(株)から雄性CD2F1/Crlj(CDF1)マウスを購入し、予備飼育の後、8週齢で試験に供した。マウスの飼育は、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で行った。
(ii)試薬(抗腫瘍性抗生物質)および投与方法
ADMは協和発酵(株)のものを用いた(商品名「アドリアシン注」)。ADMは5mg/kg量を1回腹腔内投与した。投与後、経時的に体重を測定するとともに、部分採血して白血球数を測定した。
ADMは協和発酵(株)のものを用いた(商品名「アドリアシン注」)。ADMは5mg/kg量を1回腹腔内投与した。投与後、経時的に体重を測定するとともに、部分採血して白血球数を測定した。
(iii)CM6271の投与
CM6271は、0.5%メチルセルロース400CP(信越化学工業(株)製)溶液に懸濁したものをマウスに経口投与した。
CM6271は、0.5%メチルセルロース400CP(信越化学工業(株)製)溶液に懸濁したものをマウスに経口投与した。
(iv)試験群構成および試験方法
<ADM処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響〉
上記CDF1マウスを無作為に下記のようにQ〜T群の4群(各群:n=8)に分け、CM6271投与群(R群、T群)とCM6271非投与群(対照群。Q群、S群)に、ADM5mg/kg量を1回腹腔投与し、当該処置後、経時的に体重を測定した。結果を表5に示す。
<ADM処置マウスの体重に及ぼすCM6271投与の影響〉
上記CDF1マウスを無作為に下記のようにQ〜T群の4群(各群:n=8)に分け、CM6271投与群(R群、T群)とCM6271非投与群(対照群。Q群、S群)に、ADM5mg/kg量を1回腹腔投与し、当該処置後、経時的に体重を測定した。結果を表5に示す。
Q群[生理的食塩水処置・対照群]: 0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を10日間経口投与し、同経口投与を継続しながら、処置日に生理的食塩水を1回腹腔内投与(5mg/kg)し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連続して経口投与し、経時で体重を測定した。
R群[生理的食塩水処置・CM6271投与群]: CM6271(上記(iii))を1g/kg/日の量で10日間経口投与し、同経口投与を継続しながら、処置日に生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を1回腹腔内投与(5mg/kg)し、その後、CM6271を1g/kg/日の量で連続して経口投与し、経時で体重を測定した。
S群[ADM処置・対照群]: 0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を10日間連経口投与し、同経口投与を継続しながら、処置日にADM(上記(ii)に示す試薬)を1回腹腔内投与し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連続して経口投与し、経時で体重を測定した。
T群[ADM処置・CM6271投与群]: CM6271を1g/kg/日の量で10日間経口投与し、同経口投与を継続しながら、処置日にADMを1回腹腔内投与し、その後、CM6271を1g/kg/日の量を連続して経口投与し、経時で体重を測定した。
表5に示す結果から明らかなように、ADM処置・対照群(S群)では、ADM処置開始5日目以降、体重は有意に低下した。ADM処置の10日前からCM6271を経口投与させたマウス群(R群)では、体重減少が有意に防止された。
<ADM処置マウスの末消白血球数に及ぼすCM6271投与の影響>
上記Q〜T群のマウスにつき、処置(ADM腹腔内投与処置あるいは生理的食塩水腹腔内投与処置)後、7日後のマウスの眼窩静脈叢をガラス毛細管で軽く傷つけることにより採血し、多項目自動血球計数装置Sysmex KX-21(シスメックス(株)製)を用いて白血球数を測定した。結果を表6に示す。
上記Q〜T群のマウスにつき、処置(ADM腹腔内投与処置あるいは生理的食塩水腹腔内投与処置)後、7日後のマウスの眼窩静脈叢をガラス毛細管で軽く傷つけることにより採血し、多項目自動血球計数装置Sysmex KX-21(シスメックス(株)製)を用いて白血球数を測定した。結果を表6に示す。
表6に示すように、ADM処置・対照群(S群)の白血球数は有意に減少したが、CM6271投与により、防止された(T群)。
<ADMの抗腫瘍効果発現に及ぼすCM6271投与の影響>
次に、ADMの抗腫瘍効果発現に及ぼすCM6271投与の影響を調べた。すなわち、株式会社クレハ 生物医学研究所で継代維持しているL1210白血病細胞1×105cells/匹を雄性CDF1マウス(上記(i))の腹腔内に移植して担癌マウスとした。
次に、ADMの抗腫瘍効果発現に及ぼすCM6271投与の影響を調べた。すなわち、株式会社クレハ 生物医学研究所で継代維持しているL1210白血病細胞1×105cells/匹を雄性CDF1マウス(上記(i))の腹腔内に移植して担癌マウスとした。
この担癌マウス(L1210白血病細胞移植マウス)を無作為に下記のようにU群〜X群の4群(各群:n=10)に分けた。なお下記において「対照群」とは「CM6271非投与群」を意味する。
U群[生理的食塩水処置・対照群]: 腫瘍移植10日前から0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植4日目に生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を1回腹腔内投与し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間を20日間モニターした。
V群[生理的食塩水処置・CM6271投与群]: 腫瘍移植10日前からCM6271(上記(iii))を1g/kgの量で経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植4日目に生理的食塩水(0.2mL/匹/日)を1回腹腔内投与し、その後、CM6271を1g/kgの量で連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間を20日間モニターした。
W群[ADM処置・対照群]: 腫瘍移植10日前から0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植4日目にADM(上記(ii)に示す試薬)5mg/kgを1回内腹腔投与し、その後、0.5%メチルセルロース400CP(0.2mL/匹/日)を連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間を20日間モニターした。
X群[ADM処置・CM6271投与群]: 腫瘍移植10日前からCM6271を1g/kgの量で経口投与し、同経口投与を継続しながら、腫瘍移植4日目にADM(上記(ii)に示す試薬)5mg/kgを1回内腹腔投与し、その後、CM6271を1g/kg/日の量で連日経口投与し、腫瘍増殖と生存期間を20日間モニターした。
結果を図3に示す。同図から明らかなように、生理食塩水処置・対照群(U群)の平均生存日数13.2日に比し、ADM処置・対照群(W群)のそれは16.3日に延長され、さらにADM処置・CM6271投与群(X群)では18.1日に達した。なお、生理食塩水処置・CM6271投与群(V群)の平均生存日数13.4日であった。なお同図中「T/C%」はテスト群(V、WまたはX)の平均生存日数/U群の平均生存日数%を意味する。
(まとめ)
CM6271の経口投与は、抗癌剤CY、TS−1およびADM処置マウスの体重や末梢白血球数減少を減少させた。さらに、CM6271は、肺癌細胞や大腸癌細胞、白血病細胞を移植したマウスの生存日数を延長させ、腫瘍増殖を抑制した。これらの成績は、CM6271が抗癌剤誘発の副作用を軽減し、抗癌作用を増強することを示唆している。
CM6271の経口投与は、抗癌剤CY、TS−1およびADM処置マウスの体重や末梢白血球数減少を減少させた。さらに、CM6271は、肺癌細胞や大腸癌細胞、白血病細胞を移植したマウスの生存日数を延長させ、腫瘍増殖を抑制した。これらの成績は、CM6271が抗癌剤誘発の副作用を軽減し、抗癌作用を増強することを示唆している。
Claims (10)
- マツタケ(Tricholoma matsutake)またはその抽出物を含む、抗癌剤副作用の軽減剤。
- マツタケ(T. matsutake)が菌糸体、培養物(Broth)または子実体(胞子を含む)である、請求項1記載の抗癌剤副作用の軽減剤。
- マツタケ(T. matsutake)がFERM BP−7304株である、請求項1または2記載の抗癌剤副作用の軽減剤。
- マツタケ(T. matsutake)がFERM BP−7304株の菌糸体の乾燥粉末である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗癌剤副作用の軽減剤。
- マツタケ抽出物が、FERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液またはアルカリ溶液抽出液、である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗癌剤副作用の軽減剤。
- マツタケ(Tricholoma matsutake)またはその抽出物を含む、抗癌剤副作用の軽減のための食品。
- マツタケ(T. matsutake)が菌糸体、培養物(Broth)または子実体(胞子を含む)である、請求項6記載の食品。
- マツタケ(T. matsutake)がFERM BP−7304株である、請求項6または7記載の食品。
- マツタケ(T. matsutake)がFERM BP−7304株の菌糸体の乾燥粉末である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の食品。
- マツタケ抽出物が、FERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液またはアルカリ溶液抽出液、である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の食品。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016196509A (ja) * | 2008-03-05 | 2016-11-24 | ビカス セラピューティクス,エルエルシー | 癌および粘膜炎の治療のための組成物および方法 |
-
2006
- 2006-03-31 JP JP2006097821A patent/JP2007269702A/ja not_active Abandoned
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016196509A (ja) * | 2008-03-05 | 2016-11-24 | ビカス セラピューティクス,エルエルシー | 癌および粘膜炎の治療のための組成物および方法 |
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