JP2007131589A - N−アルコキシカルボニルアミノ酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回収工程前のN−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液に塩基性化合物を加えて、該水溶液のpHよりも高く、且つpH14未満に保持してN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶を製造し、化学純度が99.8%以上であるN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶を得る。
Description
上記問題を解決する方法としては、例えば、N−アルコキシカルボニル化反応液のpHを14とした後、反応液中の無水化合物を酢酸エチルで抽出・除去する方法(非特許文献3)や、N−アルコキシカルボニル化反応時のpHを11〜13に保ちながら反応させることで、副反応の進行を抑制して高い反応収率でN−アルコキシカルボニルアミノ酸を合成できる方法(特許文献1)が報告されている。しかし、これら方法では、反応液からの生成N−アルコキシカルボニルアミノ酸回収工程時に新たにジペプチド様の化合物が生じるためにN−アルコキシカルボニルアミノ酸の純度が低下するという問題があった。また、非特許文献3のような溶媒洗浄操作は工程が煩雑化すると共に、pH14という強塩基性条件下でエステル系有機溶剤を用いた場合、溶剤が水和され不純物が生じるという問題点を有していた。
(1)回収工程前のN−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液に塩基性化合物を加えて、該水溶液のpHよりも高く、且つpH14未満に保持する保持工程を含むN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶の製造方法。(2)化学純度が99.8%以上であるN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶。
本発明に係る回収工程前のN−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液は、アミノ酸及びN−アルコキシカルボニル化剤とを水性媒体中で反応させることにより得ることができる。回収工程前とは、N−アルコキシカルボニル化反応をさせたN−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液を抽出操作、酸析あるいは溶媒留去等に供する前のことをいう。
N−アルコキシカルボニルアミノ酸は、下記一般式(I)で示される化合物である。
任意の置換基としては、例えば、低級アルキル基、置換低級アルキル基、低級アルケニル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、芳香族基、置換芳香族基、複素環基、又は置換複素環基等が好ましい。
R3は、アルコキシ基であり、炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルコキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基等が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基又はベンジルオキシ基等が特に好ましい。
本発明において、水性媒体とは、水、あるいは水と水に親和性を有する有機溶媒との混合溶媒又は水と水に実質的に混和しない有機溶媒の二相系溶媒をいう。二相系溶媒を用いる場合は、その水相部分で反応を行う。
N−アルコキシカルボニル化反応は、塩基性条件下で行うことが好ましい。
水性媒体を塩基性に調整する際に用いる塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はピリジン等の有機塩基化合物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド又はカリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコラート化合物、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム等の無機塩基化合物等が挙げられ、これら化合物の1種又は複数種を組み合わせて用いることができる。塩基性化合物の使用形態は、塩基性化合物そのもの若しくは水溶液又は有機溶媒溶液として用いることができる。
反応液のpHを一定の範囲で保つ場合は上記塩基性化合物の1種又は複数種を組み合わせて適宜添加しても良い。
上述のようにN−アルコキシカルボニル化反応によってN−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液が生成する。
保持工程のpHの下限は、pH11以上とすることが好ましく、pH12以上とすることがより好ましく、pH13以上とすることが特に好ましい。
この範囲内であると、N−アルコキシカルボニル化反応の際に生成したN−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液中の無水化合物が速やかに分解・減少され、高純度のN−アルコキシカルボニルアミノ酸を得ることができる。
保持工程中に水溶液のpHが下がるような場合は、上述の塩基性化合物を適宜添加してpHを調整してもよい。
保持工程は、回収工程の直前であれば良く、N−アルコキシカルボニル化反応直後に行っても良く、あるいはN−アルコキシカルボニル化反応後に洗浄等の数工程を経た後に行っても良い。
保持工程の時間としては、0.1〜100時間とすることが好ましく、0.2〜24時間とすることがより好ましく、0.5〜12時間とすることが特に好ましい。
保持工程の温度としては、0〜90℃とすることが好ましく、5〜60℃とすることがより好ましく、10〜40℃とすることが特に好ましい。この範囲内であると温度・pH制御等操作性や、速やかに無水化合物を分解できる点で好ましい。
例えば、HPLCチャート上、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンのエリア面積比を100%とした場合、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンとクロロギ酸メチルが反応して生じる無水化合物のエリア面積比が0.2%以下になるまで保持することが好ましく、0.1%以下になるまで保持することが特に好ましい。
ここで、水溶液を酸性にするために添加する酸性物質としては、硫酸、塩酸、又は硝酸等の鉱酸が好ましい。抽出によりN−アルコキシカルボニルアミノ酸を回収する場合、抽出操作後に水相が酸性になるように行えば良い。酸性物質の添加は、N−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液に有機溶媒を添加する前、添加した後のいずれでも良い。
例えば、回収工程後に得られるN−アルコキシカルボニルアミノ酸を含む有機溶媒溶液を冷却しN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶を析出させる、又は、回収工程後に得られるN−アルコキシカルボニルアミノ酸を含む有機溶媒溶液を濃縮する。あるいは、N−アルコキシカルボニルアミノ酸を含む有機溶媒溶液にN−アルコキシカルボニルアミノ酸が難溶性である有機溶媒又は種晶を添加する等の操作を行って、N−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶を析出させることもできる。析出させたN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶は、ろ過又は遠心分離等の方法により単離することができる。
なお、N−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶の単離前に純度向上や単離収率向上を目的として、回収工程後に得られるN−アルコキシカルボニルアミノ酸を含む有機溶媒溶液に対して、少量の水で洗浄する又は共沸脱水等の脱水処理を行う等の操作を行っても良い。
なお、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン、ジペプチド様の化合物及び無水化合物の検出は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。
試料調製:反応液を純水で希釈する
カラム: イナートシル ODS−3V GLサイエンス社製
移動層: 0.1% リン酸水溶液(v/v)
流速: 1mL/min
検出: RI
L−tert−ロイシンの保持時間: 約8.7分
試料調製:反応液を移動層で希釈する
カラム: イナートシル ODS−3V GLサイエンス社製
移動層: 0.1% リン酸水溶液(v/v):アセトニトリル(70:30)
流速: 1mL/min
検出: UV(210nm)
各化合物の保持時間:
N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン 約 7.7分
ジペプチド様の化合物 約14.4分
無水化合物 約17.8分
<N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン結晶の化学純度のHPLC分析条件>
試料調製: 結晶を移動層に溶解し、0.5%w/v溶液を調整する
カラム: イナートシル ODS−3V GLサイエンス社製
移動層: 0.1% リン酸水溶液(v/v):アセトニトリル(70:30)
流速: 1mL/min
検出: UV(210nm)
L−tert−ロイシン(東京化成(株)製)131.1g(1.00mol)を293.3g(1.10mol)の15%wtNaOH水溶液に添加後、攪拌して溶解させた。次いで、これを攪拌しながらクロロギ酸メチル103.8g(1.10mol)を2時間かけて加えた。N−アルコキシカルボニル化反応中は20℃で反応液のpHが12.4〜12.9の範囲内になるように適宜25%wtNaOH水溶液を加えた。その後、HPLC分析によりL−tert−ロイシンが99%以上消費されたことを確認し反応を終了した。反応終了時のN−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン水溶液は、pH12.5であった。
次いで、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンの生成をHPLCで確認した。N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン187.3g(収率99%)であった。 この時、HPLCチャート上、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンのエリア面積比を100%とした場合、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンとクロロギ酸メチルが反応して生じる無水化合物生成物のエリア面積比が0.35%であった。一方、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンとL−tert−ロイシンのジペプチド様の化合物のエリア面積比は、0.10%であった。
参考例1で得られたN−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン水溶液(pH12.5)に25%wtNaOH水溶液を加えて保持工程を行った。保持工程は、水溶液のpHを13.1〜13.3に保ちながら温度20℃で1時間攪拌して行った。
その後、水溶液中の中間体生成物の量をHPLC分析した。水溶液中の無水化合物の量はエリア面積比で0.05%であった。この時、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンの分解は認められなかった。
攪拌後のN−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン水溶液にトルエン400gを加え、次いで、36%塩酸を水相のpHが1.5になるまで加えた。pHを1.5に調整後、この溶液を70℃で0.5時間、撹拌により混合した。その後、静置して分相し、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを含むトルエン溶液595.0gを回収した。このトルエン溶液を38gの水で洗浄した後、トルエン800gを加え全体量が900gになるまで減圧濃縮した。さらにトルエン800gを加え、全体量が940gになるまで再度減圧濃縮した。これを25−30℃で1時間冷却し、析出したN−メトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を減圧ろ過により単離した。次いで、結晶を少量のトルエンで洗浄した。ろ残結晶の減圧乾燥後、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン乾燥結晶175.1gが得られた(92.5%Yd.)。HPLC分析では乾燥結晶中のジペプチド様の化合物は検出限界以下であり、これはエリア面積比で0.02%以下に相当する。結晶の化学純度は99.9%以上であり、他の不純物は検出されなかった。結果を表1に示した。
保持工程を実施しない以外は実施例1と同様の方法で行った。ろ残結晶の減圧乾燥後、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン乾燥結晶176.0gが得られた(93%Yd.)。この乾燥結晶中のジペプチド様の化合物の含量は0.25%であった。従って、回収工程中、無水化合物がジペプチド様の化合物へと変換され、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン乾燥結晶中に不純物として混入することがわかった。結果を表1に示した。
L−tert−ロイシン(東京化成(株)製)65.6g(0.50mol)を15%wtNaOH水溶液133.3g(0.50mol)に添加後、攪拌して溶解させた。次いで、20℃でこれを攪拌しながらクロロギ酸メチル49.6g(0.52mol)を0.8時間かけて加えた後、さらに1時間N−アルコキシカルボニル化反応させた。N−アルコキシカルボニル化反応中は反応液のpHが10.8〜11.2の範囲内になるように適宜25%wtNaOH水溶液を加えた。その後、HPLC分析によりL−tert−ロイシンが99%以上消費されたことを確認し反応を終了した。反応終了時のN−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン水溶液は、pH10.9であった。
次いで、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンの生成をHPLCで確認した。N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン93.0g(収率98%)であった。 この時、HPLCチャート上、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンのエリア面積比を100%とした場合、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンとクロロギ酸メチルが反応して生じる無水化合物のエリア面積比が0.60%であった。一方、N−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシンとL−tert−ロイシンのジペプチド様の化合物のエリア面積比は、0.21%であった。
参考例2で得られたN−メトキシカルボニル−L−tert−ロイシン水溶液(pH10.9)に25%wtNaOH水溶液を加え、pH11.2−11.5で1.5時間の保持工程を行った以外は実施例1と同様にしてN−メトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を単離した。結果を表1に示した。
pH12.0−12.5で1時間の保持工程を行った以外は実施例2と同様にしてN−メトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を単離した。結果を表1に示した。
pH12.5−13.0で1時間の保持工程を行った以外は実施例2と同様にしてN−メトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を単離した。結果を表1に示した。
pH13.3−13.7で1時間の保持工程を行った以外は実施例2と同様にしてN−メトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を単離した。結果を表1に示した。
表1に結果を示した。
Claims (2)
- 回収工程前のN−アルコキシカルボニルアミノ酸水溶液に塩基性化合物を加えて、該水溶液のpHよりも高く、且つpH14未満に保持する保持工程を含むN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶の製造方法。
- 化学純度が99.8%以上であるN−アルコキシカルボニルアミノ酸結晶。
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