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JP2007101221A - 超高速で生体分子反応を測定する方法 - Google Patents

超高速で生体分子反応を測定する方法 Download PDF

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JP2007101221A JP2005287990A JP2005287990A JP2007101221A JP 2007101221 A JP2007101221 A JP 2007101221A JP 2005287990 A JP2005287990 A JP 2005287990A JP 2005287990 A JP2005287990 A JP 2005287990A JP 2007101221 A JP2007101221 A JP 2007101221A
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泰昌 中村
Yutaka Yamagata
豊 山形
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Abstract

【課題】生体分子反応を超高速で測定することを可能にする測定方法と装置システムを提供することが本発明の課題である
【解決手段】本発明により、少量のサンプルを用いて超高速で正確に生体分子を測定・分析する方法が確立され、更には該方法を実現するためのコンパクトで簡便なマイクロ流体装置が提供された。本発明の方法およびマイクロ流体装置によれば、生体分子を超高速で瞬時に正確に分析できるので、研究現場、製造現場や医療現場、環境モニタリングなどにおいて利用価値が極めて大きい。
【選択図】なし

Description

本発明は、マイクロ流体チップシステムを用いて、超高速で生体分子反応を測定する方法、および該方法に用いるためのための装置システムに関する。本発明の方法及び装置システムを用いることにより、生体高分子反応を極めて短時間に且つ高感度に検出・測定することができる。
マイクロ流体チップは、少量のサンプルで高速、短時間に正確にその場で生体分子反応の測定を可能にするために、医療や創薬、食品、バイオ分野、化学合成分野、環境分野などの分野において広く活用されようとしている。マイクロ流体チップを用いて、動植物や微生物のゲノムやタンパク質の解析、創薬支援、臨床診断、食品の安全性検査、化学物質の合成や分析、環境モニタリングなどを行なうことができ、更には、その場においてできるかぎり迅速に正確な測定分析をし、その結果を利用して適切な対策を施すことが可能となる。
従来のマイクロ流体チップを用いて測定する事により、少量のサンプルで生体分子反応を短時間に測定することが可能である。サンプルの少量化は、微細加工技術を使ってデバイスのサイズをより縮小し、微少量サンプルのハンドリングの精密化を図ることにより実現することができるが、反応時間の短縮化や超高速化については、未だ克服すべき技術的な障害が高い。
すなわち抗原抗体反応などの生体分子反応は、マイクロウェルなどを用いて、反応時間として通常数十分から一時間以上をかけて測定するが、マイクロ流体チップを用いることで、これを数分から数十分の時間で検出することが可能となった。しかし、反応時間を瞬時から数十秒という超高速で正確に検出する技術は未だ確立されていない。更に、コンパクトなマイクロ流体チップで超高速反応を検出するために、大型の検出装置や大掛かりな制御装置を使うと、マイクロ流体チップによる測定分析の価値は半減するので、簡便でコンパクトな測定システムは必須である。しかし、そのような要求を満たす超高速マイクロ流体チップシステムは未だ完成していない。
なお本発明者らはこれまでに、多数のタンパク質あるいはDNAと他の化合物との結合をマイクロチップ上で検出し、更には結合した化合物を回収してその同定を行なえるような構造を持つ生体高分子マイクロチップを提供することを目的としてマイクロ流体チップの開発を行い、特開2002-243734号公報において報告している。
特開2002-243734号公報
そこでマイクロ流体チップを用いて、生体分子反応を超高速で測定することを可能にする測定方法と該方法に用いるための装置システムを提供することが本発明の課題である。
上記課題を解決するために本発明は、基板上に生体分子を固定化し、当該基板上にマイクロ流体チップを設置し、当該マイクロ流体チップ上で当該生体分子と親和性を有する分子を含む流体を高速で移動させ、当該マイクロ流体チップ上で当該生体分子と当該親和性を有する分子の間との生体分子反応を行い、更に当該生体分子反応を検出することからなる、超高速で生体分子反応を測定する方法を提供する。
更に本発明は、生体分子反応を測定する前記マイクロ流体チップ中の流体を高速で移動させることを特徴とする、上記の方法に用いるための装置システムを提供する。本発明の装置システムは好ましくは、生体分子を固定した基板とマイクロチャンネルより構成されるマイクロ流体チップ、流体を高速で移動させる手段を含む吸引または加圧回路、前記流体を高速で移動させる手段と前記マイクロチャンネルを接続する治具より構成される。
本発明により、少量のサンプルを用いて超高速で正確に生体分子を測定・分析する方法が確立され、これらを実現することができるコンパクトで簡便なマイクロ流体装置を提供することが可能になった。生体分子を極めて短時間に、その場で簡便に測定、分析できることは、ラボ・オン・チップやポイント・オブ・ケアなど、研究現場、製造現場や医療現場、環境モニタリングなどにおいて必要性が極めて高く、その利用価値も大きい。例えばテーラー・メード医療や、緊急医療や手術の現場、自宅にいながら健康状態を常時モニターできる医療の場などにおいて、生体分子を超高速で瞬時に正確に分析し、治療や必要な処置を行なうことが可能であり、本発明により、それらの要求を満たす方法と装置システムを提供することができる。
本発明者らは超高速で生体反応を検出、測定する手段を見出し、その方法を実現するための簡便でコンパクトな装置システムを完成した。すなわち本発明は、マイクロ流体チップの固相基板に固定する生体分子の有効濃度が高く、かつ固定された生体分子が高流速に曝されても高い有効濃度を保ったまま流出されないために、超高速で正確に生体分子を検出する事を可能とする方法を提供するものである。本発明の方法は、基板上に生体分子を固定化し、当該基板上にマイクロ流体チップを設置し、当該マイクロ流体チップ上で当該生体分子と親和性を有する分子を含む流体を高速で移動させ、当該マイクロ流体チップ上で当該生体分子と当該親和性を有する分子の間との生体分子反応を行い、更に当該生体分子反応を検出することからなる。
本発明の超高速測定は、流体を高速で移動させることにより初めて可能になるが、本発明において生体反応を超高速で測定するためには、固相基板上に固定される生体分子の露出面積を大きくすることにより、高い有効濃度を得られるようにすることが必要要件となる。そのような方法としては、生体分子を基板上に多孔性構造を形成するように固定化する方法が好適である。また本発明の超高速測定においては、(1)流体を高速で移動させても流出しないようにタンパク質を強固に基板上に固定させる技術と、(2)固相基板上に固定される生体分子の露出面積が大きく高い有効濃度にする技術、という2つの要件を満たすことも求められる。かかる要件を満たす蛋白質の固定化技術として、エレクトロスプレーディポジション法は好適である。
生体分子を基板上に多孔性構造を形成するように固定する方法は、これに限定されるものではないが、エレクトロスプレーディポジション法を採用することが好ましい。生体高分子の固定化方法としてエレクトロスプレーディポジション法は当業者に良く知られており、例えば国際公開WO98/58745の記載を参考にすることができる。
しかし本発明で使用できる蛋白質の固定化技術はエレクトロスプレーディポジション法に限定されるものではなく、ピンタイプスポッタ−、インクジェット、マイクロコンタクトプリンティング(Quist AP, Pavlovic E, Oscarsson S:Recent advances in microcontact printing. Anal Bioanal. Chem. 381:591-600,2005)、マイクロチャンネルを用いた固定法(Cesaro-Tadic S, Dernick G, Juncker D,Buurman G, Kropshofer H, Michel B, Fattinger C, Delamarche E:High-sensitivity miniaturized immunoassays for tumor necrosis factor alphausing microfluidic systems.. Lab Chip 4:563-569,2004)なども用いることができる。
本発明で使用する固定化基板としては、酸化インジウム錫(ITO; Indium Tin Oxide)で被覆加工したガラス板など、および各種固定化基板表面にアルデヒド、エポキシ、スクシニド、マレイミド、チオール、アミノ、カルボキシルなどの官能基で被覆されたものを用いることが好ましい。しかし固定化基板はそれに限定されるものではなく、ニトロセルロースで被覆したスライドガラスまたはプラスチック基板、ポリスチレンなどの疎水性プラスチック基板、および親水性ゲルで被覆した基板なども本発明の目的で使用することができる。
さらに本発明は、マイクロ流体チップの流速を高速で正確に制御し、超高速反応を高感度に検出するマイクロ流体チップ装置システムを提供するものである。本発明の装置システムは、生体分子を固定した基板とマイクロチャンネルより構成されるマイクロ流体チップ、流体を高速で移動させる手段を含む吸引または加圧回路、前記流体を高速で移動させる手段と前記マイクロチャンネルを接続する治具より構成される。
本発明により、従来数分から数時間を要した生体分子の反応時間を瞬時から数十秒に短縮し、生体分子反応を超高速で測定・分析することが可能となった。なお本願明細書において「超高速で生体分子反応を測定する」とは、0.01秒から60秒、好ましくは0.1秒から20秒、更に好ましくは0.1秒から10秒という短時間で生体分子反応を測定することを意味するものである。
なお本発明において採用する流体を移動させる流速は、15mm/秒から1500mm/秒、好ましくは100mm/秒から1500mm/秒の高流速であるが、この範囲に限定されるものではない。使用する流速はマイクロチャンネルの構造や材質、生体分子反応の種類などにより異なる。なお本願明細書において「流体を高速で移動」とは流体を上記で述べた流速、ずなわち、15mm/秒から1500mm/秒、好ましくは100mm/秒から1500mm/秒の流速で移動させることを意味する。
本願発明を実施する目的で使用できるマイクロ流体チップとして、既に述べた特開2002-243734号公報のマイクロチップ、又は該マイクロチップを試験するべきサンプルや実験条件に応じて適宜改変したものを採用することができる。しかし、本発明において使用されるマイクロ流体チップはかならずしも特開2002-243734号公報に記載されたものに限定されるものと解されるべきでなく、本発明の技術思想の範囲内において他のマイクロチップを使用することも可能である。なお本願明細書において「マイクロ流体チップ」という用語は当技術分野で通常に認識されている意味であり、具体的には数ミリメートルから数センチメートル四方程度の基板上に、披検物質や試料を入れる穴と、太さ数ミクロンから数百ミクロンの微細な流路を形成したものを意味する。
マイクロ流体チップを用いて微細な流路上で生体反応を行なうことにより、反応の効率が改善され、高感度且つ短時間で正確に反応を検出することが可能となる。本発明者らは、マイクロ流体チップを用いて超高速に、すなわち瞬時から数十秒の短時間で正確に反応を検出する方法を鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
本発明の方法に用いる装置システムの全体図を図1に示す。本発明のシステムは、生体分子を固定した基板(図1における流体チップ試料側c)とマイクロチャンネル(図1における流体チップ流路側b)からなるマイクロ流体チップ、流体を高速で移動させる手段を含む吸引または加圧回路(図1における真空ポンプ20を含む吸引回路21−25)、及び流体を高速で移動させる手段とマイクロチャンネルを接続する治具10−17より構成される。10種類の生体分子の試料1から試料10種類の生体分子(試料C1−C10)を固定した16チャンネルのマイクロ流体チップからなる超高速分析システムを図1に示したが、生体分子の数、チャンネル数、ポンプシステムを含めて、その記載は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
マイクロ流体チップを流体チップ治具Aにセットし、マイクロ流体チップと真空ポンプ20を含む吸引回路21−25を接続する(図1)。なお流体チップ治具Aは、吸引回路と治具を接続するための流体チップ排出口押さえ10、流体チップと吸引回路を接続するための流体チップシール板11、流体チップ排出口の位置合わせを行なうための流体チップガイド板12、流体チップのセット及び接続をするための流体チップ昇降シール板13、各治具を維持するための治具ベース14、流体チップ注入口を押さえるための流体チップ注入口側押さえ15、流体チップ昇降シール板13をガイドするための昇降用ガイドピン16、流体チップの固定及び接続をするためのシール・固定用圧縮スプリング17より構成される。しかし治具Aの構成要素はこれらに限定されるものではなく、適宜改変を行なうことができる。
真空ポンプ20とマイクロ流体チップ間の吸引回路には、圧力切替用のハンドバルブ25、廃液回収用のトラップ24、吸引圧力確認用の圧力計23、汚染防止用のフィルター22、圧力制御用のレギュレーター21が配管26によって接続される。正確な圧力制御を行なうために、マイクロ流体チップの排出口b2側にハンドバルブ25と真空ポンプ側にレギュレーター21を設けた上で、ハンドバルブ25とマイクロ流体チップ排出口b2の間の配管の距離をなるべく短くすることが望ましい。吸引回路内は常に真空ポンプ20により減圧され、レギュレーター21により減圧量を一定に調整することで、ハンドバルブ25の操作によって、マイクロ流路内を一定減圧と大気圧に切替ることができる。しかし本発明の範囲は以上において述べた機構に限定されるものではない。
マイクロ流体チップの注入口b1に注入された液は、真空ポンプ20により吸引圧制御下で一定の高流速で移動される。真空ポンプ20の吸引圧はマイクロ流体チップb(流路側)、c(試料側)の構造や口径、長さ、材質などにより異なる。図1に示したマイクロ流体チップの例では、吸引圧は好ましくは-1kPa から-100kPaに制御されるが、吸引圧の値はこの範囲に規定されるものではない。
また配管にはマイクロ流体チップから排出された廃液をためるためのトラップ24と、トラップ24から漏れでた廃液が真空ポンプ20に入るのを防ぐフィルター22を設けるのが望ましい。
マイクロ流体チップの注入口b1は1−20μlの容量の液体を保持するためのくぼみをもち、反応物溶液や洗浄液は、ピペットマンまたはディスペンサーdにより滴下されるが、マイクロ流体チップへの溶液の供給方法や注入口の形状はこの方法に限定されない。
マイクロ流体チップで測定分析するために固定する生体分子としては、抗原、抗体、各種酵素、受容体、リガンド、各種タンパク質、DNA,RNA,糖、脂質などの生体高分子があるが、それらに限定されるものではない。本発明で検出する生体分子反応とは、ある生体分子と該生体分子と生物学的な親和性を有する分子の間の反応を意味するものである。そのような生体分子反応の具体例として、抗原と抗体の反応、アビジンとビオチンの反応、受容体と該受容体に対するリガンドの反応、酵素と該酵素の基質の反応、DNAと蛋白質、DNAとの反応、RNAと蛋白質、RNAとの反応などを挙げることができる。本発明の方法においては、このように生物学的な親和性を有する生体分子の一方を基板上に固定化し、他方の生体分子を含む流体を高速で流すことにより、マイクロ流体チップ上で生体分子反応を行なうことができる。
生体分子を固定化した後、後に流す被験サンプルなどが流路や基板上に非特異的に吸着することを防ぐために、スキムミルクや牛血清アルブミンなどのタンパク質溶液を用いてブロッキング反応を行なうことは本発明においても好ましい。
生体分子が固定化されたマイクロ流体チップの流路内に、抗原、抗体、リガンド、基質などの反応物溶液や洗浄液を、ポンプを用いて加圧ないしは吸引により高流速で移動させる。なお、流体を高速で移動させる手段として吸引用の真空ポンプを含む吸引回路を使用することができる。流体の流速は吸引圧の強さで制御できるが、使用する吸引圧はマイクロチャンネルの構造や口径、長さ、材質、さらには生体分子反応の種類などにより異なる。例として、図1に示したマイクロ流体チップを用いた際の流速制御を図2に示す。なお本発明において使用できる流体を移動させるため手段は特に限定されるものではなく、他の手段を適宜採用することができる。そのような手段としては、吸引ポンプや加圧ポンプなどのポンプを用いる手段、振動を与える手段、遠心力を与える手段などを挙げることができる。
生体分子反応の検出は、直接ないしは酵素標識抗体による検出の例のように一段階から複数段階の反応を経て、吸光法、蛍光法、発光法、蛍光偏光法、時間分解蛍光法、電気化学的測定法などの種々の方法で行なわれる。かくして、一段階から複数段階の反応、反応液の洗浄を順次、連続的に流速制御下で進行し、反応を検出する。各反応の流速はポンプにより制御されるが、それらの流速は反応の種類によって異なる。また反応液洗浄も、高速流速下で瞬時に洗浄することができるが、洗浄液の量とその流速は反応の種類によって異なる。
下記の実施例や図面を用いて本発明を更に詳しく説明するが、その記載は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(実施例1)
ITOで被覆加工されたスライドガラス基板上に、幅1mm、長さ9.6mmの線状の穴を開けた0.1mm厚のガラス製のマスクを設置し、ヤギ由来イムノグロブリンG(IgG)(シグマアルドリッチ)をエレクトロスプレーディポジション装置を用いて100ng噴霧した。この基板上にポリジメチルシロキサン(PDMS)で作製したマイクロ流路を設置した後、図1に示した吸引ポンプシステムにセットした。
2% ECLアドバンスブロッキングエージェント-PBS溶液(ブロッキング液)を1チャンネルあたり10μl、10kPaで流して瞬間的に洗浄した後、ブロッキング液で800μg/mlに希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヤギ抗体(ジャクソン)を10μl、15.6から586mm/秒の高流速制御下で瞬間的に流し、抗原抗体反応を行い、チャンネルをブロッキング液20μlで瞬間洗浄することで反応を停止した。各条件3チャンネルずつ行った。
マイクロ流路を外し、基板上にECLアドバンス ウェスタンブロッティング デテクション キット(アマシャム)を滴下し、カバーガラスを載せた後、暗所内で冷却CCDカメラ(ビットラン)を用いて1分間撮影した。撮影画像における各スポットの発光強度はアレイプロアナライザー(日本ローバー)を用いて測定した。
各流速における、平均の結合比率(発光強度)および単位時間あたりの結合量をプロットした。標準誤差をバーで表示した(図3)。なお図3aは流速と結合比率の関係を、図3bは流速と単位当たり結合量の関係を、それぞれ示す。抗体溶液の流速が早いほどIgGへの抗IgG抗体の結合比率は低下したが(図3a)、単位時間あたりの抗IgG抗体結合量は流速に対し直線的に増加した(図3b)。
(実施例2)
実施例1と同様にITO基板上にアビジン(ワコー)を100ng噴霧した後、ブロッキング液で洗浄し、5μg/mlのビオチン標識ペルオキシダーゼ(ジャクソン)を3μl、5から586mm/秒の流速で流し、結合反応を行った。反応はチャンネルをブロッキング液20μlで洗浄することで停止した。各条件3チャンネルずつ行い、各流速における結合比率(蛍光強度)および単位時間あたりの結合量をプロットした(図4)。なお図4aは流速と結合比率の関係を、図4bは流速と単位当たり結合量の関係を、それぞれ示す。ビオチンとアビジンの結合反応において、流速が早くなるほどビオチンのアビジンへの結合比率が低下したが(図4a)、単位時間あたりの結合量は直線的に増加した(図4b)。
(実施例3)
実施例2と同様にITOコート基板上に、Alexa Fluor 568蛍光色素標識抗ヤギ抗体(モレキュラープローブ)を、エレクトロスプレーディポジション装置を用いて250、1000ngずつ(1スポットあたり8、30ng)噴霧した。これにマイクロ流路をセットし、ブロッキング液で0-4回洗浄した。洗浄は20μlのブロッキング液を吸引ポンプシステムで10kPaで吸引することで、各条件3チャンネルずつ行った。洗浄後マイクロ流路を外し、暗所内でBX51WI蛍光顕微鏡(オリンパス)と冷却CCD(浜松ホトニクス)を用いて蛍光観察した。スポットの蛍光量はアレイプロアナライザーにて測定した。各洗浄回数における蛍光量と、0回洗浄を100%としたときの相対結合率の平均と標準誤差を求めた(図5上段)。また1スポットあたり30ngスプレーした蛍光標識タンパクの、0、1、4回洗浄後の表面形状をNanoScope IIIa操作型プローブ顕微鏡(デジタルインスツルメンツ)で観察した(図5下段)。
その結果図5の上段に示したように、エレクトロスプレー量が1スポットあたり8ngの条件(黒丸)では、高流速下で4回洗浄しても蛍光の低下がなく、蛍光標識抗体タンパク質の流出は認められなかった。1スポットあたり30ngスプレーした場合(白四角)では、一回目の洗浄後蛍光が低下し、デポジットした蛍光標識抗体の一部が流出することが認められたが、2回目以降の洗浄において流出は検出されなかった。一方エレクトロスプレーされた直後のタンパク質は径10数ナノメーターから百数十ナノメーター径の粒子からなるの多孔質の形状になるが、洗浄後もこの形状は保たれていた(図5下段)。
(実施例4)
実施例2と同様にITOコート基板上に、マウスの病原菌であるクロストリジウム・ピリフォルメ(Clostridium piliforme)の抗原(ミズーリ大学Research Animal Diagnostic Laboratory)を100ngエレクトロスプレーした後、マイクロ流路を基板上に載せ、吸引ポンプシステムにセットした。ブロッキング液で洗浄後、抗C.pilifrome抗体を含むマウス由来プレザイム「生研」TZ−陽性コントロール(強陽性)(デンカ生研)10μlを10kPaで2チャンネルに流した。このときの流速は約160mm/秒、反応時間は2秒である。コントロールとしてブロッキング液を流した。ブロッキング液で洗浄後、1μg/mlペルオキシダーゼ標識ProteinA(カルビオケム)10μlを10kPaで同様に吸引し、基板上に結合した抗C.pilifrome抗体と結合させた。そして実施例2と同様に酵素化学発光により検出した。
その結果ブロッキング液を流した場合のバックグラウンド発光平均が32に対し、陽性コントロールの発光は204であった。このC.pilifrome抗原と、これに対する抗体の超高速の抗原抗体反応においても、バックグラウンドに対し、6倍以上の有意なシグナルが得られた。
(実施例5)
実施例2と同様にしてアリルハイドロカーボンレセプター(Ahr)のDRE認識配列を含むDNAを、基板上にエレクトロスプレーし固定化を行った。次にマイクロ流路をセットし、流路をブロッキング液で洗浄後、ダイオキシンを含む試料とAhrおよびAhレセプター核輸送タンパク(Arnt)溶液を流路に流した。そして基板上のDRE配列、Ahr、Arnt、ダイオキシンで複合体を形成させた。複合体形成後、ウサギ由来抗Arnt抗体、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ抗体を順次反応させ、最後にECLアドバンスを用いて酵素化学発光により検出を行った。
本発明により、少量のサンプルを用いて超高速で正確に生体分子を測定・分析する方法が確立され、更には該方法を実現するためのコンパクトで簡便なマイクロ流体装置が提供された。本発明の方法およびマイクロ流体装置によれば、生体分子を超高速で瞬時に正確に分析できるので、研究現場、製造現場や医療現場、環境モニタリングなどにおいて利用価値が極めて大きい。
図1は、本発明のマイクロ流体チップシステムの概要を示す図である。 図2は、真空ポンプによる吸引圧と流速の関係を示すグラフである。 図3は、ヤギIgGと抗ヤギIgG抗体との結合反応における流速の速さと結合比率(図3a)、および流速の速さと結合量(図3b)との関係を示すグラフである。 図4は、アビジンとビオチン結合反応における流速の速さと結合比率(図4a)、および流速の速さと結合量(図4b)との関係を示すグラフである。 図5は、高速洗浄がタンパク質の基板結合量、および固定されたタンパク質の表面構造に及ぼす影響を示す図である。
符号の説明
10 流体チップ排出口押さえ 11 流体チップシール板 12 流体チップガイド板 13 流体チップ昇降シール板 14 治具ベース 15 流体チップ注入口側押さえ 16 昇降用ガイドピン 17 シール・固定用圧縮スプリング 20 真空ポンプ 21レギュレーター 22 フィルター 23 圧力計 24 トラップ 25 ハンドバルブ 26 配管 A 流体チップ治具 b 流体チップ(流路側) b1 流体チップ(注入口) b2 流体チップ(排出口) C 流体チップ(試料側) C1 試料1 C2 試料2 C3 試料3 C4 試料4 C5 試料5 C6 試料6 C7 試料7 C8 試料8 C9 試料9 C10 試料10 d ピペットマンまたはディスペンサー

Claims (9)

  1. 基板上に生体分子を固定化し、当該基板上にマイクロ流体チップを設置し、当該マイクロ流体チップ上で当該生体分子と親和性を有する分子を含む流体を高速で移動させ、当該マイクロ流体チップ上で当該生体分子と当該親和性を有する分子の間との生体分子反応を行い、更に当該生体分子反応を検出することからなる、超高速で生体分子反応を測定する方法。
  2. 前記生体分子を基板上に多孔性構造を形成するように固定化する請求項1記載の方法。
  3. エレクトロスプレーディポジション法で前記生体分子を基板に固定化する請求項1または請求項2記載の方法。
  4. 生体分子を固定化する前記基板が酸化インジウム錫で被覆加工したガラス盤である請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項記載の方法。
  5. 前記生体分子が、抗原抗体、各種酵素、受容体、リガンド、各種タンパク質、DNA,RNA、糖、脂質からなる群から選択された物質である、請求項1ないし請求項4のいずれか1つの請求項記載の方法。
  6. 前記生体分子が抗原または抗体である請求項5記載の方法。
  7. 流体を高速で移動させる手段が吸引ポンプあるいは加圧ポンプである請求項1ないし請求項6のいずれか1つの請求項記載の方法。
  8. 生体分子反応を測定する前記マイクロ流体チップ中の流体を高速で移動させることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか1つの請求項記載の方法に用いるための装置システム。
  9. 前記生体分子を固定した基板とマイクロチャンネルより構成されるマイクロ流体チップ、流体を高速で移動させる手段を含む吸引または加圧回路、前記流体を高速で移動させる手段と前記マイクロチャンネルを接続する治具より構成される、請求項8記載の装置システム。
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