以下、本発明に係る駆動機構について、該駆動機構を適用した電動アクチュエータとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1において、参照符号10は、本発明の一実施の形態に係る駆動機構を備える電動アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ制御システムを示す。
このアクチュエータ制御システム10は、原動機としての回転駆動源14の駆動作用下にピストン22及びピストンロッド24が直線状に往復動作する電動アクチュエータ11と、前記電動アクチュエータ11に付設された回転駆動源14を付勢及び滅勢するドライバ118と、前記ドライバ118に方向指令信号を導出するコントローラ120と、コネクタを介して前記ドライバ118に接続される電源124とから構成される。
電動アクチュエータ11は、略扁平状のブロック体からなるハウジング12と、前記ハウジング12の一端部に連結された回転駆動源14と、前記回転駆動源14が連結された側と反対側に前記ハウジング12から所定距離離間して配設されるロッドカバー(エンドブロック)16と、後述する駆動機構30を介して回転駆動源14の回転駆動力が伝達されると共に、前記ピストン22及びピストンロッド24に当該回転駆動力を伝達する送りねじ軸18とを有する。
なお、前記回転駆動源14は、例えば、ブラシ付DCモータ、ブラシレスDCモータ、ステッピングモータ、ACサーボモータ等によって構成されるとよい。また、前記回転駆動源14として、ソレノイド等のリニアモータを用いてもよい。
さらに、前記電動アクチュエータ11は、前記送りねじ軸18を間にして平行に配設され、一端部が第1ねじ部材19a、19b(図3参照)を介して前記ハウジング12に連結され且つ他端部が第2ねじ部材21a、21b(図3参照)を介して前記ロッドカバー16に連結された一組のガイドロッド20a、20bと、前記送りねじ軸18を介して伝達される駆動力の作用下に前記一組のガイドロッド20a、20bに沿って変位するピストン22と、前記ロッドカバー16を貫通して前記ピストン22と一体的に進退動作する中空円筒状のピストンロッド24と、前記ピストンロッド24の先端部に装着されて孔部を閉塞するソケット26とを有する。
なお、前記ピストン22及びピストンロッド24は、変位部材として機能するものである。また、前記送りねじ軸18の表面処理としては、無電解ニッケルメッキ処理を施すとよい。
また、図3に示されるように、ハウジング12の内部において、回転駆動源14の駆動軸15に近接する送りねじ軸18の端部側には、駆動機構30が配設される。この駆動機構30は、リング状のベアリング押さえ32と前記駆動軸15とによって保持されると共に、前記駆動軸15と前記送りねじ軸18とを連結するものであるが、詳細は後述する。
ピストン22に臨むハウジング12の端部には、送りねじ軸18が貫通する貫通孔34を有する第1エンドダンパ36aが保持される。前記第1エンドダンパ36aは、図6に示されるように所定の肉厚からなる円筒部38と、前記円筒部38の外径よりも半径外方向に僅かに拡径した環状のフランジ部40とが一体的に構成されたものである。
この場合、第1エンドダンパ36aのフランジ部40がハウジング12の内壁に形成された環状凹部42に係止されることにより、円筒部38の一部(端部)がハウジング12の端面から所定長だけピストン22側に突出した状態に保持される(図3参照)。
ピストンロッド24が貫通するロッドカバー16の内壁には、第2エンドダンパ36bと、ブッシュ44とが設けられる。前記第2エンドダンパ36bは第1エンドダンパ36aと略同一形状からなり、フランジ部40がロッドカバー16の内壁に形成された環状凹部46に係止されることにより、円筒部38の一部(端部)がロッドカバー16の端面から所定長だけピストン22側に突出した状態に保持される(図3参照)。
前記第1エンドダンパ36a及び第2エンドダンパ36bは、それぞれ、エネルギ吸収体であって、例えば、ウレタンゴム等の弾性体によって形成されるとよい。なお、図13に示されるように、ピストンロッド24との摺動部位にダストシール47やスクレーパ49を設けることによって、外部からの異物の進入を阻止するように構成してもよい。
前記ピストン22は、図4に示されるように、その中心部に軸線方向に沿って貫通する縦断面略長円状に形成された貫通孔48と、前記貫通孔48の両側に軽量化を図るために形成された一組の肉抜き孔50a、50bとを有し、例えば、アルミニウム等の金属製材料によって一体成形される。前記ピストン22の貫通孔48には、送りねじ軸18に螺合するねじ孔50を有する略円筒状の摺動ナット52が該送りねじ軸18の軸線方向に沿って摺動可能に挿入される。
この場合、前記摺動ナット52とピストン22とは、該送りねじ軸18の軸線方向に沿って相対的に摺動可能に設けられると共に、該摺動ナット52の外周面に形成された一組の平面部54a、54bによってピストン22に対する周方向への周り止めがなされている。また、前記一組の平面部54a、54bに代替して、摺動ナット52の外周面に図示しないスプラインを形成し、あるいは図示しないキー溝を形成することにより、回り止め機能を営むようにしてもよい。
なお、図5に示されるように、摺動ナット52の縦断面円弧状に形成された面とピストン22の内壁面との間にクリアランスαが設けられるように貫通孔48aの形状を設定すると好適である。前記ピストン22の上面に対して負荷が付与された場合、前記摺動ナット52は、図5の矢印A1又はA2方向に沿って前記クリアランスαだけ偏芯することが許容されるからである。
この結果、ピストン22に付与された負荷が摺動ナット52に伝達されることがなく前記摺動ナット52に対して偏荷重が付与されることが阻止され、前記摺動ナット52及び摺動ナット52に連結された送りねじ軸18等の他の要素の耐久性を向上させることができる。
前記摺動ナット52の両端部には、図7に示される環状の一組のピストンダンパ56a、56bが環状凹部を介して装着され、前記一組のピストンダンパ56a、56bは摺動ナット52の端面から軸線方向に沿って所定長だけ突出するように設けられる(図3参照)。
この場合、ピストンダンパ56a、56bは、その外周面に形成された一組の平面部57a、57bを有し、摺動ナット52の縦断面外周形状(図4参照)と面一に形成される。
前記ピストン22の軸線方向に沿った一端部には、送りねじ軸18が挿通する貫通孔58を有する連結体60が設けられる。前記連結体60は、ピストン22の雌ねじに螺合する雄ねじからなる第1ねじ部を有する第1環状部62と、中空のピストンロッド24の雌ねじに螺合する雄ねじからなる第2ねじ部を有する第2環状部64と、前記第1環状部62と第2環状部64との間に設けられた環状フランジ部66とから構成される。前記第1環状部62、第2環状部64及び環状フランジ部66はそれぞれ一体的に形成される。
なお、図11に示されるように、摺動ナット52によって片持ち支持される側と反対側(ロッドカバー16側)の送りねじ軸18の端部には、ピストンロッド24の内壁面に接触して振動を防止するリング体67が装着されるとよい。
このリング体67は、例えば、樹脂製材料又はゴム製材料によって形成され、ピストンロッド24の内壁面に沿って送りねじ軸18の端部と一体的に摺動変位するものである。ピストン22の変位量がロングストロークに設定されたときに送りねじ軸18の端部が回転することによって発生する振動(振れ)を前記リング体67により好適に阻止することができる。
前記ピストン22の軸線方向に沿った他端部には、該ピストン22の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が外周面に形成された環状体68が連結され、前記環状体68はピストン22の端面と面一となるように設けられる。
この場合、摺動ナット52の端面から軸線方向に沿って所定長だけ突出する一方のピストンダンパ56aは連結体60の第2環状部64に接触するように設けられ、摺動ナット52の端面から軸線方向に沿って所定長だけ突出する他方のピストンダンパ56bは環状体68に接触するように設けられる(図3参照)。
従って、ピストンロッド24がワークWに当接し該ピストンロッド24に対して衝撃が付与されたときを除いて、ピストン22の両端部に固定された連結体60及び環状体68によって摺動ナット52がピストン22の内部に保持(挟持)され、送りねじ軸18との螺回作用下に、前記摺動ナット52は軸線方向に沿ってピストン22と一体的に変位するように設けられる。
なお、図12に示されるように、前記連結体60及び環状体68の内周面には、それぞれ、環状溝を介して潤滑油保持部材69a、69bを装着するとよい。この潤滑油保持部材69a、69bは、例えば、潤滑油が含浸されたフェルトからなり、送りねじ軸18のねじ部に接触することにより、前記送りねじ軸18と摺動ナット52との摺動部位に対して潤滑性を付与することができる。
前記一組のピストンダンパ56a、56bは、第1及び第2エンドダンパ36a、36bと同様に、エネルギ吸収体であって、例えば、ウレタンゴム等の弾性体によって形成されるとよい。
軸線と直交するピストン22の両側面には断面略円弧状のガイド部70(図4参照)が形成され、一組のガイドロッド20a、20bの間にピストン22が挟持される。前記ガイド部70には、ガイドロッド20a、20bの外周面と線接触し且つガイドロッド20a、20bの軸線方向に沿って延在する樹脂製の一組のプレート72a、72b接着される。それぞれ金属製材料によって形成されたピストン22とガイドロッド20a、20bとの間に、樹脂製材料からなるプレート72a、72bを介在させることにより摺動抵抗を低減させるためである。
なお、前記プレート72a、72bや前記摺動ナット52は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等のいずれかからなる樹脂製材料によって形成されるとよく、特に、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)によって形成されることにより良好な摺動特性を得ることができる。
ピストン22に対してラジアル方向の負荷が付与された場合、あるいはピストン22に回転方向の負荷が付与された場合のいずれであっても、前記一組のガイドロッド20a、20bによって前記負荷が好適に吸収される。回転方向の負荷に対しては、一組のガイドロッド20a、20bが回り止めとしての機能を営む。
ここで、本実施の形態における駆動機構30について、主に図14〜図24を参照して詳細に説明する。この駆動機構30は、前記従来の構成におけるベアリングとカップリング部材の双方の作用を奏する。
図14及び図15に示されるように、駆動機構30は、円環状の外輪80と、前記外輪80の内側に同軸状に配置される略円環状の内輪82と、前記外輪80の内壁面に形成される溝部80a、80bと前記内輪82の外壁面に形成される溝部82a、82bとの間に形成される空間(間隙)に配列される複数個、本実施の形態では6個の鋼球(転動体)84a、84bと、前記鋼球84a、84bをそれぞれ自転及び公転自在に保持するスペーサ86a、86bとから構成される。
このような構成により、外輪80と内輪82とは、鋼球84a、84bを介して回転自在に構成される。従って、駆動機構30は、ベアリングとしての作用を備える。また、前記スペーサ86a、86bの外側には潤滑用のグリスを保持するためのシール88a、88bが設けられる。
ところで、一般的なベアリングでは、前記のような外輪80及び内輪82は、DIN 17230にて規定される完全焼入れ鋼にて製作される。これに対して、本実施の形態では、外輪80及び内輪82を、ニッケル−クロム鋼(Ni−Cr鋼)、クロム−モリブデン鋼(Cr−Mo鋼)又はステンレス鋼等で製作し、表面に軟窒化処理を施すものとする。
この結果、本実施形態における前記外輪80及び前記内輪82は、一般的なベアリングの摺動面に要求される表面硬度であるロックウェルC硬さ(HRC)で58以上を得ることができ、また、焼入れしない鋼材により製作できるため、加工コストを削減できる。さらに、駆動機構30では、前記軟窒化処理により耐蝕性も向上するため、コストの低減と耐久性の向上が可能となる。
前記内輪82の軸方向における一方の側である回転駆動源14側の孔部における内壁面には、回転駆動源14の駆動軸15の先端部17と係合する係合部83bが形成される(図16参照)。図17Bに示されるように、前記先端部17は、断面六角形状であり、前記係合部83bは、この先端部17が挿入及び嵌合可能な六角形状とされる(図17A参照)。これにより、駆動軸15と内輪82とを確実且つ回転不能に連結でき、駆動軸15からの回転駆動力を、内輪82に伝達することが可能となる。
なお、前記先端部17及び前記係合部83bの形状は、駆動軸15からの回転駆動力が内輪82に伝達可能、すなわち、先端部17と係合部83bとが滑ることなく回転不能に噛み合っていればよく、例えば、図18、図19A及び図19Bに示されるように、先端部17及び係合部83bを、セレーション形状として連結するようにしてもよい。
他方、前記内輪82の軸方向における他方の側である送りねじ軸18側の孔部における内壁面には係合部83aが形成されており、送りねじ軸18の先端部19が係合部83aに、圧入により挿入され、前記先端部19と前記内輪82とが連結される(図20及び図21参照)。このような圧入は、焼きばめや冷やしばめ等により行ってもよい。これにより、送りねじ軸18と内輪82とを確実且つ回転不能に連結でき、前記駆動軸15から内輪82に伝達された回転駆動力が、確実に送りねじ軸18に伝達される。
なお、前記先端部19及び前記係合部83aの形状は、内輪82からの回転駆動力が送りねじ軸18に伝達可能、すなわち、前記先端部17及び係合部83bの場合と同様に、先端部19と係合部83aとが滑ることなく回転不能に噛み合っていればよく、例えば、図22及び図23に示されるように、先端部19にローレット目を施して段付に形成し(図22参照)、内輪82の係合部83a周辺の外壁面を加圧変形させて締結するようにしてもよい(図23参照)。
本実施の形態における駆動機構30は、以上のように構成されるので、送りねじ軸18を回転自在且つ軸方向に支持するベアリングとしての作用を備え、さらに、前記駆動軸15からの回転駆動力を被駆動軸としての前記送りねじ軸18に伝達可能な状態で、前記駆動軸15と前記送りねじ軸18とを連結するカップリングとしての作用も備える(図3及び図24参照)。すなわち、駆動機構30においては、前記駆動軸15と前記送りねじ軸18との間に介装されるベアリングを備えると共に、このベアリングの内輪82に前記駆動軸15と前記送りねじ軸18とが対向して挿入されて連結されている。
従って、前記従来の構成のようにベアリングと直列的にカップリング部材を別体で設ける必要がなく、さらに、駆動軸15により駆動機構30の一端部が固定されることによりボルトやナット等の締結部材を削減できるため、このような駆動機構30により、電動アクチュエータ11では、部品点数の削減、コスト低減及び小型化が可能となると共に、組立作業が簡略化されるので、製造コストを低減できる。
なお、図24は、図16に示される断面六角形状の先端部17と、図20に示される先端部19とが、駆動機構30により連結した一例を示す部分縦断面図であるが、これら先端部17又は先端部19の替わりに、図18に示されるセレーション形状の先端部17又は図22に示されるローレット目を施して段付に形成した先端部19を夫々適用してもよいことは勿論である。
図25に示されるように、ドライバ118は、幅広な側面に複数のフィン119が突出形成されたケーシング121を有し、前記ケーシング121の上部には、ケーブルを介してコントローラ120と電気的に接続される複数の制御端子123が設けられ、前記ケーシング121の下部には、ケーブルを介して電源124と接続される図示しない電源端子と、回転駆動源14と接続される図示しない回転駆動源用出力端子とがそれぞれ設けられる。
前記ドライバ118の幅狭な側面には、例えば、プラスのドライバ等で所定方向に回転角度を調節することにより、回転駆動源14の回転トルク(推力)を外部からに任意に設定することが可能なトルク設定用トリマ125と、図示しないLEDが発光することにより認識可能な複数の表示ランプ127a〜127dと、手動で操作することによりテスト運転等が可能となる複数のマニュアルスイッチとを備える。
前記マニュアルスイッチは、ON/OFF動作によりA−PHASE方向(ピストンロッド24が伸長する方向)とB−PHASE方向(ピストンロッド24が短縮する方向)の2方向を指示するPHASE方向切り換えスイッチ129と、ドライバ118を付勢・滅勢するON/OFFスイッチ131と、OFFのとき初期設定となりONのときに前記トルク設定用トリマ125によって外部からの推力の選択が可能となるSETスイッチ133とを有する。
なお、前記PHASE方向切り換えスイッチ129では、図示しないギヤとの関係でA−PHASE方向とB−PHASE方向との間でピストンロッド24の進退動作が逆転する場合もある。
また、コントローラ120からドライバ118に導入される制御信号は、ON/OFFの二値信号によって構成される。
さらに、電源124からドライバ118への印可電圧を、例えば、図示しない抵抗又はトランス等によって任意に変更し、あるいは、回転駆動源14を図示しないブリッジ回路に組み込んで前記ブリッジ回路の不平衡電圧をフィードバックする電子ガバナ(図示せず)を設けることにより、回転駆動源14の回転速度の制御を行うことができる。
さらにまた、前記マニュアルスイッチ等が設けられた幅狭な側面と反対側の側面には、取付用孔部135が形成されたフランジ137が形成される。
前記ドライバ118の概略ブロック構成図を図26に示す。
このドライバ118は、コントローラ120から導出された方向指令信号によって電圧の極性を切り換えることにより、正逆方向のいずれか一方に回転駆動源14の回転方向を切り換える方向切換手段134と、前記方向切換手段134から出力された電圧を対応する電流に変換すると共に、予め設定された基準電流IMAX(閾値)に電流を制限する電流アンプ/リミッタ136とを含む。
さらに、ドライバ118は、前記電流アンプ/リミッタ136の下流側に設けられ回転駆動源14に供給される電流を検出する電流センサ(電流検出手段)138と、前記電流センサ138からの検出信号を前記電流アンプ/リミッタ136の上流側にフィードバックする電流ループ140とを有する。
前記電流アンプ/リミッタ136には、予め設定され且つ記憶手段内に記憶された基準電流IMAXと前記電流センサ138から検出線145を通じて検出される電流値の検出信号とを比較する比較手段と、例えば、回転駆動源14に対して高負荷が付与され前記回転駆動源14に供給される電流が基準電流IMAXを超えようとするとき、該回転駆動源14に供給される電流を基準電流IMAXを超えないようにリミットする電流リミット手段(電流制限手段)とが設けられる。
なお、ドライバ118は、図示しない回路基板を有し、例えば、電流センサ138は、前記回路基板に配置された小抵抗によって構成されるとよい。
本実施の形態に係るアクチュエータ制御システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作乃至作用効果について説明する。
先ず、コントローラ120からの方向指令信号(二値信号)がドライバ118に導入される。前記ドライバ118では、前記方向指令信号に基づき電圧の極性を切り換えることにより、正逆方向のいずれか一方に回転駆動源14の回転方向を切り換える。前記方向切換手段134から回転駆動源14に供給される電流に対応する電圧が電流アンプ/リミッタ136に入力される。
前記電流アンプ/リミッタ136では、前記方向切換手段134から出力された電圧を対応する電流に変換して回転駆動源14に供給することにより、前記回転駆動源14が所定方向に回転駆動し、前記回転駆動源14の回転駆動力が駆動軸15から、駆動機構30を介して送りねじ軸18に伝達される。
所定方向に回動する送りねじ軸18が送りナットとして機能する摺動ナット52のねじ孔50に螺合することにより、前記摺動ナット52及びピストン22が一組のガイドロッド20a、20bの案内作用下にピストンロッド24と一体的に軸線方向に沿って変位する。従って、ピストン22と一体的にピストンロッド24が外部に向かって変位し、ストロークエンドに到達することにより、図示しないワークを所定位置に押し付ける押し付け動作(ワーク保持動作)がなされる。
図8に示されるように、ピストン22が一方又は他方のストロークエンドまで到達することがなくその中間位置でワークWの押し当て作業を行った場合、ワークWに当接するソケット26、ピストンロッド24及び連結体60を介してピストン22に衝撃が伝達される。
この場合、本実施の形態では、連結体60に接触するピストンダンパ56aの端部が図9に示されるように弾性変形することによって衝撃が受容されると共に、ピストン22の内部に設けられた摺動ナット52がピストン22に対して、送りねじ軸18の軸線方向に沿って僅かに摺動変位することにより(図9中の二点鎖線参照)、前記衝撃が好適に吸収される。
換言すると、ピストンロッド24に付与される衝撃によって相互に連結されたピストン22及び連結体60が送りねじ軸18の軸線方向に沿って変位可能に設けられ、前記ピストン22及び連結体60の僅かな変位を摺動ナット52の端部に装着された弾性を有するピストンダンパ56aによって吸収することにより、前記衝撃が好適に緩和される。
この場合、摺動ナット52は送りねじ軸18に螺合しているため、該送りねじ軸18との関係では変位することがないと共に、摺動ナット52と送りねじ軸18との螺合部位に対して衝撃が伝達されることが阻止されることにより、前記摺動ナット52及び送りねじ軸18の螺合部位を好適に保護することができる。
従って、本実施の形態では、両ストロークエンドの中間位置においてピストンロッド24によってワークWの押し当てを行った場合であっても、前記ピストンロッド24に付与される衝撃が弾性を有するピストンダンパ56aと、ピストン22及び摺動ナット52との間の相対的な摺動変位を通じて円滑に吸収されるため、電動アクチュエータ11の耐久性が劣化することを阻止することができる。
さらに、ピストンロッド24の前進端におけるストロークエンドで衝撃が発生した場合、前記ピストンダンパ56aの緩衝作用と共に、連結体60の環状フランジ部66が第2エンドダンパ36bに当接して緩衝作用が相乗効果的になされるため、より一層好適に衝撃が吸収される(図10参照)。
同様に、ピストンロッド24の後進端におけるストロークエンドで衝撃が発生した場合、前記ピストンダンパ56bの緩衝作用と共に、ピストン22及び環状体68の端面が第1エンドダンパ36aに当接して緩衝作用が相乗効果的になされるため、より一層好適に衝撃が吸収される(図3参照)。
このように本実施の形態では、ピストン22に設けられた一組のピストンダンパ56a、56bと、ハウジング12及びロッドカバー16に設けられた第1及び第2エンドダンパ36a、36bとを含む緩衝機構を設けることにより、両ストロークエンド間の中間位置並びに両ストロークエンドの任意の位置においてピストン22に付与される衝撃を好適に緩衝することができる。
また、本実施の形態では、圧縮空気がない、若しくは使用できない環境であっても、エアシリンダと同様に使用可能なモータ駆動によるアクチュエータとして使用することができる。
この場合、エアシリンダと同様であるとは、ON/OFF制御による駆動であること、コントローラが不要であること、ピストン22の押し当て動作が可能であること、センサなしでも駆動可能であること、速度制御、推力制御が可能であること等をいう。
さらに、本実施の形態では、駆動機構30により、送りねじ軸18を回転自在且つ軸方向に支持すると共に、前記駆動軸15からの回転駆動力を前記送りねじ軸18に伝達可能に、前記駆動軸15と前記送りねじ軸18とを連結するため、部品点数の削減、コスト低減及び小型化が可能となると共に、組立作業が簡略化されるので、製造コストを低減できる。
さらにまた、本実施の形態では、剛性ボデイをなくして平行な一組のガイドロッド20a、20bによって所定の剛性を確保することにより、部品点数を削減して製造コストを低減すると共に、軽量化を図ることができる。
また、駆動機器において衝突部位に衝撃エネルギ吸収体(ダンパ)を配置することは一般的に行われているが、本実施の形態では、衝突時の衝撃値を5G以下、好ましくは2G以下になるようにダンパの性質、寸法及び変位量を設定することにより、ダンパの耐久性を向上させると共に、電動アクチュエータの耐久性をも向上させることができる。また、衝撃値の抑制によって各部の強度を軽減することができ、装置の小型・軽量化を達成することができる。
ハウジング12及びロッドカバー16の製造方法としては、例えば、アルミニウムダイカストによる一体成形、プレス板金深絞り、あるいは、複数枚の鋼板を積層して一体的に形成した積層鋼板等を用いるとよい。
送りねじ軸18としては、樹脂製滑りねじ軸、金属製滑りねじ軸、ボールねじ軸、あるいはプーリに懸架されるタイミングベルト等を用いるとよい。
ところで、前記ピストン22及びピストンロッド24がストロークエンドまで到達した後、前記ピストンロッド24によってワークWが所定位置に押し付けられ回転駆動源14に対して高負荷が付与された場合、前記回転駆動源14の駆動軸15の回転が停止して拘束された状態となる。その際、回転駆動源14の駆動軸15から出力されるトルクは、前記回転駆動源14に印加される電流と比例するため、前記拘束された状態となったとき、予め規定されている電流値以上の電流(過電流)が回転駆動源14に印加されて、過電流が発生することによって回転駆動源14が焼損するおそれがある。
そこで、本実施の形態では、回転駆動源14に供給される電流を検出する電流センサ138からの検出信号を電流ループ140を介して電流アンプ/リミッタ136の上流側にフィードバックする。前記電流アンプ/リミッタ136では、比較手段を介して予め設定され且つ記憶手段内に記憶された基準電流IMAXと前記電流センサ138からの検出信号とを比較すると共に、電流リミット手段を介して回転駆動源14に供給される電流が基準電流IMAXを超えないようにリミットされる(図27参照)。
回転駆動源14を制御する際の電流値として、例えば、回転駆動源14の駆動軸15が停止した拘束時では0.6A以下、無負荷駆動時では0.2A以下に制限することにより、前記回転駆動源14の長寿命化を図ることができる。
このように、本実施の形態のドライバ118では、回転駆動源14に供給される電流値を電流センサ138を介して監視し、電流アンプ/リミッタ136により、前記回転駆動源14に対する印加電流を基準電流IMAX以下に制限している。
この結果、回転駆動源14に高負荷が付与されてオン状態にある回転駆動源14の駆動軸15が停止して拘束状態となった場合であっても、前記回転駆動源14に供給される電流が予め設定された基準電流IMAX以下に制限されるため、過電流の発生による回転駆動源14の焼損を防止することができる。なお、回転駆動源14に供給される印加電流を制限することにより、トルクを制限することができることは勿論である。
また、本実施の形態では、ピストン22及びピストンロッド24の位置及び動作速度を制御するためのエンコーダ、レゾルバ等の検出器及び制御回路が不要となり、簡素な回路によって回転駆動源14に焼損が発生することを防止することにより、製造コストを低減することができる。
この場合、本実施の形態に係るドライバ118は、ピストンロッド24による押し付け動作と回転駆動源14の回転方向だけを制御する駆動機器(電動アクチュエータ)に適用されると好適である。
なお、本実施の形態のドライバ118では、電動アクチュエータ11のピストンロッド24によるワークの押し付け動作に基づいて説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、電動アクチュエータ11のピストンロッド24によるワーク搬送動作、加締め動作、押圧動作、支持動作、又は、図示しない電動チャックによるワーク把持動作、若しくは、図示しない電動クランプによるクランプ動作等に適用することができることは勿論である。
すなわち、このようなワーク搬送動作、ワーク把持動作、クランプ動作等によって回転駆動源14に高負荷が付与され、前記回転駆動源14の駆動軸15の回転が停止して拘束状態となったとき、前記回転駆動源14に供給される電流が基準電流IMAX以下となるように制限される。
また、本実施の形態のドライバ118では、電磁弁と同様のオン/オフ制御によって電動アクチュエータ11を操作することにより、例えば、押し付け動作や搬送動作等に最適な方向制御機器として使用することができる。
さらに、本実施の形態のドライバ118では、回転駆動源14の外部に付設されるエンコーダ等の検出器が不要となるため、小型軽量化を達成することができる。
なお、図28に示されるように、小径な取付用孔部90を有し縦断面L字状に屈曲する第1取付金具92を、複数のねじ部材94を介してロッドカバー16の側面に対して装着すると共に、小径な取付用孔部96を有しハウジング12の平坦な底面部に対して前記ハウジング12の軸線と直交し且つ相互に反対方向に延在する一対の第2取付金具98(但し、一方は図示せず)を装着するとよい。前記第1取付金具92及び第2取付金具98を用いることにより、電動アクチュエータ11の取付性が向上すると共に、設置環境に対する汎用性を増大させることができる。
また、図29に示されるように、図28の電動アクチュエータ11に対して、ハウジング12とロッドカバー16との間に装着されて上面が開口するカバー部材100を装着するようにしてもよい。前記カバー部材100を装着することにより、該カバー部材100が装着されていない場合と比較して塵埃等が電動アクチュエータ11の内部に対して進入することを抑制することができる。
さらに、図30に示されるように、前記上面を含む全ての面が閉塞された他のカバー部材102をハウジング12とロッドカバー16との間に装着することにより、電動アクチュエータ内部への塵埃等の進入を好適に阻止することができる。
この場合、図31に示されるように、前記カバー部材102には、断面円弧状からなるセンサ装着用の長溝104が形成され、前記長溝104に沿った任意の位置にピストン22の位置を検出するセンサ106が装着されるとよい。このセンサ106は、少なくとも、磁気センサ、近接センサ、フォトマイクロセンサ等を含み、そのいずれかであるとよい。
次に、他の構成に係る電動アクチュエータ180を図32〜図34に示す。なお、図2に示される電動アクチュエータ11と同一の構成要素には同一の参照符号を付しその詳細な説明を省略する。また、一組のピストンダンパ56a、56b及び第1及び第2エンドダンパ36a、36bの機能は、前記実施の形態と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
この他の構成に係る電動アクチュエータ180は、一組のガイドロッド20a、20bがなく、円筒状のハウジング182と段付き円筒状のロッドカバー184とを連結する長尺な円筒状のチューブ186を備え、前記チューブ186の中空部188内にピストン190が収装されている点で前記実施の形態と異なる。
前記ピストン190の外周面には、樹脂製材料によって形成され軸線方向に沿って延在する一組のガイドプレート192a、192bと、縦断面円弧状の半割り形状からなる一組のマグネット194a、194bとがそれぞれ固着される。
この場合、前記一組のガイドプレート192a、192bのみがチューブ186の内壁に形成された平坦なガイド面196a、196bに沿って摺動するように設けられているため、ピストン190に対するガイド作用及びチューブ186の周方向に対する周り止め作用がなされる。前記ガイドプレート192a、192bを除いた他の部位においてはピストン190の外壁とチューブ186の内壁との間に所定のクリアランス198が設けられる(図34参照)。
なお、ピストン190の内部に同一形状からなる摺動ナット52が摺動可能に装着される点は前記実施の形態と同一である。また、前記摺動ナット52は、ピストン190の一端部に連結された連結体200と、ピストン190の他端部に装着されたCクリップ202とによって保持される(図33参照)。
前記チューブ186の外周面の所定部位には、例えば、磁気センサ、近接センサ、フォトマイクロセンサ等のいずれか1つからなるセンサ106が締付金具108及びバンド部材110を介して装着され、前記マグネット194a、194bの磁界をチューブ186に装着されたセンサ106によって検知することにより、ピストン22の位置検出がなされる(図35参照)。
また、図36に示されるように、縦断面略L字状に屈曲する第1取付金具112をロッドカバー184のねじ部に装着し、ロックナット114を緊締することにより前記第1取付金具112を保持するようにすると共に、ハウジング182と回転駆動源14との環状段差部分に装着された第2取付金具116をロックナット117によって保持するようにするとよい。なお、前記第1取付金具112及び第2取付金具116には、それぞれ、円形状の取付用孔部141が形成されている。
さらに、図37に示されるように、ロックナット114を介して矩形のプレート状からなる取付金具142をロッドカバー184に装着し、あるいは、図38に示されるように、一対の円柱状のピボット143a、143bを有する環状体144をロッドカバー184側に装着し、前記ピボット143a、143bを図示しないブッシュによって支持することにより電動アクチュエータ180が揺動自在に支持される、いわゆるトラニオン形シリンダのように構成してもよい。
以上の実施の形態では、図2に示されるように、ピストンロッド24が伸縮動作するロッドタイプのみが開示されているが、これに限定されるものではなく、前記ピストン22に図示しないスライドテーブルを連結して使用するスライドテーブルタイプにも適用することができることは勿論である。
この場合、ピストンロッド24をピストン22から取り外し、ピストンロッド24が貫通する孔部が閉塞された図示しない他のロッドカバーを用いることによりロッドタイプからスライドテーブルタイプに容易に変更することができる。
次に、図39に、方向制御用ドライバマニホールドの斜視図を示す。このように、複数の電動アクチュエータ11(電動シリンダ)に接続される複数の方向制御用のドライバ118を複数連設してマニホールド化することが可能である。この場合、複数の方向制御用のドライバ118はコネクタで電気信号又はシリアル信号でバス結合されている。また、AC100〜200V等又はDC24Vを発生させる装置を付設して供給するとよい。さらに、複数の方向制御用のドライバ118は、長尺なレール部材350によって着脱自在に連設される。さらに、前記ドライバ118及び電源発生装置に、それぞれ、ファンを設けるとよい。
なお、本発明は前記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
例えば、前記各実施の形態では、本発明に係る駆動機構を適用した電動アクチュエータについて説明したが、これに限らず、本発明に係る駆動機構は、回転駆動される駆動軸と、この駆動軸により駆動される被駆動軸とを有する装置ならば適用可能であり、例えば、電動ドリルや電動ドライバ等の電動工具等にも適用することができる。