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JP2007162056A - ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板 - Google Patents

ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板 Download PDF

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JP2007162056A
JP2007162056A JP2005358624A JP2005358624A JP2007162056A JP 2007162056 A JP2007162056 A JP 2007162056A JP 2005358624 A JP2005358624 A JP 2005358624A JP 2005358624 A JP2005358624 A JP 2005358624A JP 2007162056 A JP2007162056 A JP 2007162056A
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Munehisa Takahashi
宗尚 高橋
Toshihiro Harada
俊宏 原田
Hiroshi Saito
洋 齊藤
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MA Aluminum Corp
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Abstract

【課題】 ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板において、表面性状の劣化が生じずに安定してきれいな外観のアルミボトルが得られること。
【解決手段】 重量%でSi:0.2〜0.4%、Fe:0.25〜0.55%、Cu:0.15〜0.35%、Mn:0.7〜1.2%、Mg:0.8〜1.4%、Zn:0.1〜0.3%、Ti:0.01〜0.15%を含有し、残部が不可避不純物を含むAlからなる組成であり、表面に存在するMgを含む複合酸化物が5%以下である。さらには、表面にカッピング成形用のカッピング油が100〜500mg/mで塗布され、表面とカッピング油との接触角が20°以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アルミニウム製ボトム型飲料用缶に用いるアルミニウム合金板に関するものである。
アルミボトルの製造に使用されるアルミニウム合金板には、強度が高いこと、絞り加工性が良いこと、絞り・しごき成形時及びボトルネック成形時に発生する耳率(しごき成形時に圧延方向に応じて成形缶体の上縁高さが山谷状に変化した部分(耳)を除去する割合)が低いこと、耐食性が良いこと等が求められる。
この種の用途には、通常のアルミニウム缶と同様に、Al−Mn(アルミニウム−マンガン)系合金板にMg(マグネシウム)を添加したものが主として用いられている。その一般的な製法としては、例えば特許文献1に記載されているように、鋳塊を均質(均熱)化処理し、熱間圧延後に冷間圧延を行って作製する方法である。なお、熱間圧延後あるいは冷間圧延途中において、溶体化や焼鈍及び析出処理等を行う方法や、鋳塊から熱間圧延までの工程を連続鋳造圧延法にて代用する方法等も用いられている。
特開2003−306750号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記アルミニウム合金板では、絞り・しごき加工後に実施する化成処理後、あるいはその後のボトルネック成形後において年輪状の模様、いわゆるドローラインが顕在化し、ボトルネック部外面の美観を損なうばかりか、模様発生部には正常な化成皮膜が形成されない場合があった。このため、ボトルネック成形過程にて塗膜密着性が劣化し、エナメル特性が悪化してしまう不都合がある。
また、連続生産時に最終製品にてボトルネック部に該当するDI(Deep drawing & Ironing)缶の口辺部において、黒スジ(いわゆるブリードスルー)と呼ばれる表面荒れが遅効的に発生する場合がある。この黒スジは、連続生産において、絞りしごき加工時のリドロー金型へのAl凝着が遅効的に発生することで、発生するものである。このため、ボトルネック部外面の美観を損なうと共に、再絞り金型の交換頻度が増加する等の不都合があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、表面性状の劣化が生じずに安定してきれいな外観が得られるボトル型飲料缶用アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
本発明者らは、ドローラインの発生原理について鋭意研究を進めたところ、次の2つの現象が生じていることを突き止めた。すなわち、(A1)欠陥は板幅のサイド方向のものほど模様が目立つこと、(A2)化成処理後の缶に発生している年輪模様は白い筋状であるが、塗装後にボトルネック加工を行うと黒い筋状となり、ドローラインを形成すること、の2つの事象である。さらに、上記(A2)の最終製品で黒色年輪模様に発展し、化成処理後の缶に発生している白色年輪模様部位について特定し、FIB(Focused Ion Beam)断面観察を試みると、正常部とは連続性を有さない多数の空孔を含む粒状組織が存在していることを発見した。このFIB加工・観察視野にてEPMA(Electron Probe Micro Analyzer:電子プローブマイクロアナライザ)による定性分析を実施したところ、欠陥部からはMg(マグネシウム)及びO(酸素)を主体とする様々な元素が検出された。この検出結果を表1に示す。
Figure 2007162056
また、主要元素についてEPMAマッピングを実施したところ、欠陥部からはMgとOとが特に強く検出された。この組織及び検出元素について過去の知見に鑑みると、欠陥部が熱間圧延時に発生したアルミ粉、いわゆるピックアップ層であることが明らかになった。そこで、本素材についても熱間圧延後の合金板をFIBによる断面観察を実施したところ、上記欠陥部と同様の組織が板表面のほぼ全域に存在していた。よって、ドローラインの発生機構としては、図2の(a)に示すように、Mgを含む素材1を熱間圧延すると、その加熱によって素材1表面にMgO酸化皮膜がドローラインDLとして成長することに起因すると考えられる。
すなわち、このMgO酸化皮膜が圧延中にロールと素材1との間をアルミ粉となって脱着を繰り返し、圧延方向に沿って分布したものの内、比較的厚めに存在してしまった箇所が最終製品まで残存し、図2の(b)に示すように、絞りしごき加工によって圧延方向に対して90°位置のDI缶2の側壁部に年輪状模様のドローラインDLを形成するものと考えられる。上記(A1)のように、この欠陥部は、板幅のサイド方向で模様が目立つ向きにあったことから、板幅サイド部位は熱間圧延時に強圧がかかるため、熱間圧延中に潤滑不良が発生し、Al粉(ピックアップ)の発生が板幅中央部位よりも多くなり、結果的にドローライン模様が目立つようになったと考えられる。
また、本発明者らは、黒スジの発生原理についても鋭意研究を進めたところ、次の5つの現象が生じていることを突き止めた。すなわち、(B1)欠陥は缶口辺部に筋状あるいは淡い模様で発生し、化成処理後の缶にトレイシングペーパーを巻き付けることや白色の背景を缶に写しこむことで存在が確認できること、(B2)化成処理後の缶に発生している欠陥部は正常部と比較して表面荒れが生じていること、(B3)DI成形時のリドロー金型を交換あるいはポリッシングを行うと欠陥の発生が改善されること、(B4)連続生産条件下において欠陥の発生が徐々に顕在化してくること、(B5)アルミボトルではDI成形及び印刷塗装後にネック形成が施されるため、それまで目立たなかった欠陥が絞りを経て顕在化してくること、の5つの事象である。
上記(B1)〜(B3)の現象から、これまでの知見を鑑みたところ、これらの欠陥はアルミニウム通常缶で発生する欠陥の一種である黒スジであることがわかった。また、上記(B4)については、少量テストにおいて黒スジの発生が問題なかった条件についても、連続生産では欠陥が遅効的に発生し得ることを見出した。さらに、上記(B5)については、未だ新しい製法・品種故に、それまでのアルミニウム通常缶では問題にならないレベルの黒スジ発生でも、アルミボトル特有の絞りが加わると欠陥が顕在化することも見出した。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
すなわち、本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板は、重量%でSi:0.2〜0.4%、Fe:0.25〜0.55%、Cu:0.15〜0.35%、Mn:0.7〜1.2%、Mg:0.8〜1.4%、Zn:0.1〜0.3%、Ti:0.01〜0.15%を含有し、残部が不可避不純物を含むAlからなる組成であり、表面に存在するMgを含む複合酸化物が5%以下であることを特徴とする。
本発明者らは、熱間圧延時に生じた複合酸化物層から上記のようにMg及びOが多く検出される傾向に着目し、表面におけるMgを含む複合酸化物の存在率とドローラインの発生状況との相関を調べた。この相関に基づき、本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板では、表面におけるMgを含む複合酸化物の存在率を5%以下とすることで、ドローラインの発生が抑制されて人間の視覚判断で問題がない良好な外観を得ることができる。なお、上記合金組成の限定理由については、後述する。
また、本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板は、表面にカッピング成形用のカッピング油が100〜500mg/mで塗布され、表面と前記カッピング油との接触角が20°以下であることを特徴とする。
素材最終冷間圧延では、鉱物系低粘度油に油性向上剤としてアルコールやエステル系の添加剤を数%添加したものを用いており、最終圧延板上には上記圧延時の残油が存在している。この最終圧延板について、黒スジの発生には素材の晶出物分布状況や潤滑性能が大きく影響することがこれまでの知見で明らかになっているが、素材の晶出物分布状況に特に問題がない場合、素材とカッピング成形に用いるカッピング油との親和性が重要になる。
そこで、本発明者らは、上記上記(B1)〜(B5)の欠陥解析結果に基づいて素材最終段階におけるカッピング油の油性皮膜条件と黒スジ発生との相関を調べた。この相関に基づき、本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板では、表面にカッピング成形用のカッピング油を100〜500mg/mで塗布し、表面とカッピング油との接触角を20°以下とすることで、連続生産においても黒スジの発生を防ぐことができ、金型交換頻度の増加を抑制することができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るボトル型飲料缶用アルミニウム合金板によれば、表面に存在するMgを含む複合酸化物を5%以下とすることで、ドローラインの発生が抑制され表面性状の劣化が生じずに安定してきれいな外観のアルミボトルを得ることができる。
以下、本発明に係るボトル型飲料缶用アルミニウム合金板の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板は、重量%でSi:0.2〜0.4%、Fe:0.25〜0.55%、Cu:0.15〜0.35%、Mn:0.7〜1.2%、Mg:0.8〜1.4%、Zn:0.1〜0.3%、Ti:0.01〜0.15%を含有し、残部が不可避不純物を含むAlからなる組成であり、表面に存在するMgを含む複合酸化物が5%以下とされている。
また、本実施形態のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板は、表面にカッピング成形用のカッピング油が100〜500mg/mで塗布され、表面とカッピング油との接触角が20°以下とされている。
上記合金組成の限定理由について以下に説明する。
Si(シリコン)を添加しているのは、Siが、同時に含有するMgと共に化合物を形成し、析出硬化作用を及ぼすほか、Al、Mn、Fe(鉄)等と共に金属間化合物を形成してしごき成形時にダイスへの焼き付きを防止する効果を発揮するためである。また、Si添加量を0.2〜0.4%の範囲内に設定しているのは、0.2%未満では狙いとする潤滑性能が発揮できず、ダイスへの焼き付きを防止するのに不十分であるためであり、0.4%を超えると脆くなり、加工性が劣化するためである。
Feを添加しているのは、Feが、結晶粒の微細化としごき成形時にダイスに対する焼き付きを防止する効果を発揮するためである。また、Fe添加量を0.25〜0.55%の範囲内に設定しているのは、0.25%未満では狙いの効果が得られず、0.55%を超えると脆くなり加工性が劣化するためである。なお、上述した理由から、Fe添加量をさらに0.35〜0.5%の範囲内に設定することが好ましい。
Cu(銅)を添加しているのは、Cuが、同時に含有されるMgと金属間化合物を形成し易く、硬化作用に寄与するためである。また、Cu添加量を0.15〜0.35%の範囲内に設定しているのは、0.15%未満では、狙いの効果が得られず、0.35%を超えると加工性が劣化するためである。なお、上述した理由から、Cu添加量をさらに0.2〜0.3%の範囲内に設定することが好ましい。
Mnを添加しているのは、Mnが、同時に含有されるFe、Si、Al等と金属間化合物を形成し易く、しごき成形加工時にダイスに対する焼き付きを防止する効果を発揮するためである。また、Mn添加量を0.7〜1.2%の範囲内に設定しているのは、0.7%未満では、狙いとする硬化特性が得られず、1.2%を超えると脆くなり、加工性が劣化するためである。なお、上述した理由から、Mn添加量をさらに0.8〜1.1%の範囲内に設定することが好ましい。
Mgを添加しているのは、Mgが、固溶体強化作用を有し、圧延加工時に加工硬化性を高めると共に、SiやCuと共存することで分散析出硬化作用を発揮するためである。また、Mg添加量を0.8〜1.4%の範囲内に設定しているのは、0.8%未満では、これらの作用効果が十分に発揮されず、1.4%を超えるとベーキング後の耐力が高くなりすぎて加工性が劣化するためである。なお、上述した理由から、Mg添加量をさらに0.9〜1.3%の範囲内に設定することが好ましい。
Zn(亜鉛)を添加しているのは、Znが、析出するMg、Si、Cuの金属間化合物を微細化する作用を有するためである。また、Zn添加量を0.1〜0.3%の範囲内に設定しているのは、0.1%未満では上記作用が不十分であり、0.3%を超えると加工性と耐食性とが劣化するためである。なお、上述した理由から、Zn添加量をさらに0.15〜0.25%の範囲内に設定することが好ましい。
なお、上記必須成分のほかに、不純物として重量%で、0.1%以下のZr(ジルコニウム)、0.1%以下のCr(クロム)を含んでいてもよい。
本実施形態のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板を製造するには、まず上記合金組成を有するアルミニウム合金を溶製し、半連続鋳造して得た鋳塊(スラブ)に均質(均熱)化処理を施して後、面削を行ってから熱間圧延を行う。そして、この熱間圧延後に、苛性ソーダ等のアルカリ洗浄液による苛性洗浄処理と硝酸溶液等の酸洗浄液による酸洗浄処理とを行う。
上記均質化処理後に面削を行う理由は、高温・長時間で保持されたスラブ表面にはMgO酸化皮膜が成長しており、その後の熱間圧延時のアルミ磨耗粉の発生、すなわちドローラインの発生を助長するため、表面のMgO酸化皮膜を除去するためである。この面削の量としては、チル層等の不均一組織が安定して除去でき、かつ歩留まりとして許容できる範囲として10〜20mmの範囲内であることが好ましい。
また、上記熱間圧延後に苛性洗浄処理及び酸洗浄処理を行う理由は、苛性洗浄処理によるアルミ素材表面層の除去とドローラインの根源となるMgO酸化物の濃縮とを行い、この濃縮されたMgO酸化物を酸洗浄処理で除去するためである。すなわち、苛性洗浄処理では、アルミ素材の表面がエッチング効果によって除去されるものの、ドローラインの根源となるMgO酸化皮膜は残留するか、逆に濃化傾向に至ってしまう。また、酸洗浄処理では、アルミ素材表面層に存在するMgO酸化皮膜を除去することができるものの、素材中に埋め込まれたMgO酸化皮膜を除去することが困難である。
したがって、アルカリ洗浄によってアルミ素材表面層を除去すると共にMgO酸化物を濃縮させ、次いで酸洗浄を行うことでMgO酸化皮膜を除去する。このように、苛性洗浄処理と酸洗浄処理との相乗効果により、効果的にドローラインの根源となるMgO酸化物を除去することができる。
なお、苛性洗浄処理を実施するタイミングは、上記に束縛されないが、好ましくは熱間圧延直後の上工程側が望ましい。これは苛性洗浄にてMgO酸化物と共に除去されたAl等の自然酸化皮膜の存在がDI加工性に影響することから、この自然酸化皮膜の回復を考慮したためである。
このように処理することにより、アルミニウム合金板の表面に存在するMgを含む複合酸化物を5%以下とする。
次に、アルミニウム合金板の表面におけるMgを含む複合酸化物の存在率を評価する方法について、図1を参照して説明する。
この評価方法は、図1に示すように、最終素材表面にてEPMA元素マッピング機能を用いてMg及びOのマッピング(S1)を行った後、同座標上においてMg及びOの双方の元素が同時に強く検出される箇所を抽出(S2)し、種々の解析処理(S3,S4、S5)を経て得られた画像に存在する粒子それぞれの最大弦長及び最大弦幅を乗じてから合計(S6)し、この値を評価視野総面積にて商する(S7)ことで、Mgを含む複合酸化物の存在率を求めるものである。したがって、これにより、素材最終段階におけるドローライン評価を行うことができる。
Mg及びOの強く検出される箇所の抽出(S2)は、Mg及びOのマッピング(S1)と同視野において実施する。Mgは、マッピング視野全体のカウント数平均値をしきい値とし、Oはマッピング視野全体のカウント数平均値に1.5を乗じた値をしきい値とする。次いで、同座標においてそれぞれのしきい値以上の値を示す箇所を抽出することにより、Mg及びOが強く検出される箇所のマッピングを可能になる。
上記しきい値の根拠であるが、欠陥部のMg及びOは正常部と比較して高濃度となる傾向にあることから、当初はMg及びOのしきい値はマッピング視野全体のカウント数平均値をそのまま用いることで検討していたが、Oについては、素材表面の自然酸化皮膜及び凹凸の影響を受けることが明らかになり、Oのしきい値にはマッピング視野全体の平均値をそのまま用いることができなかった。
そこで、Oのしきい値について最適条件を探るべく、種々の条件について検討した結果、Mgを多く含む複合酸化物を最も忠実に抽出できる条件として、Oのマッピング視野全体のカウント数に1.5を乗じた値が最も適していることを見出したものである。
次に、解析処理であるが、この解析条件の決定にあたってドローラインの不良判定をどのように行うかという視覚的影響について鋭意調査したところ、年輪状の模様が日立つことを不良とすることが明らかになり、その中でもラインの長さおよび幅と言うファクターが大きく作用していることが明らかになった。よって、解析処理条件についても、抽出処理によって得られた粒子の長さと幅とについて着目し、視覚判断に近似できる条件の模索を行った。
まず、前述の抽出処理(S2)にて得られたマッピング像について、製缶時にドローラインの形成に影響を与えない微粒子の除去を実施する(S3)。この微粒子除去作業では、例えば面積700μm以下の微粒子の除去について評価視野全体を対象に実施する。この700μmという値はいくつかの抽出マッピング像について種々の除去条件について検討し、狙いとする抽出箇所が最も顕在化する条件を検討した結果得られたものである。
しかし、このままの状態では、粒子中に空孔が存在しているものや、本来一体のものが微小間隔を空けて分断されているために一体として捉えられないおそれがある。よって、視覚判断に近似させるためには微小間隔によって分断された箇所について、何らかの方法にて連結し、一つの粒子として認識する必要がある。そこで、評価視野全体を対象に微粒子除去後において残留粒子各々の周囲全体に1画素の肉付けを行い、分断粒子の連結を行う。また、空孔を有する粒子は、穴埋め補完処理を行う(S4)。この1画素肉付け条件についても微粒子除去条件と同様、種々の条件を実験することで求められたものである。
前述の処理によって得られた各々の粒子について、最大弦長および最大弦幅を求め(S5)、これらを乗じた値について評価視野全体の合計を求め(S6)、さらに評価視野総面積にて商して百分率を求めたものを評価結果(S7)とする。これまで述ベた条件の決定にあたっては、実際にアルミボトルに成形したもののネック部のドローライン評価と本評価結果との突合せを行い、条件の小変更を重ねた結果、最適条件を見出した。
この方法によって、素材段階においてボトル成形後のドローライン状態を予測・評価するドローライン評価システムが確立でき、本システムによって実験にてドローラインに関する素材段階での規定条件を見出した。すなわち、人間が問題なし、あるいは問題ありと判定された複数のサンプルについて素材を入手し、上記ドローライン評価システムにて評価したところ、人間の視覚判断にて問題なしと判断される条件には、Mgを多く含む複合酸化物の存在率、すなわち各々の最大弦長と最大弦幅を乗じた値を合計した値が評価総面積に対して5%以下である必要があることが判明した。
次に、素材とカッピング油(油性皮膜)との親和性について説明する。このカッピング油は、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール又は脂肪酸等からなる鉱物油である。なお、これら油種の代表的な特性については、動粘度が10〜20cst(40℃)であり、絶縁抵抗が1.0〜5.0MΩ(24℃)である。なお、動粘度が10cst(40℃)未満では静電塗布法を用いた際に油が垂れてしまい、均一な塗布ができなくなり、20cst(40℃)を超えると油が霧化し難く塗布性が低下する。一方、絶縁抵抗については、1.0MΩ(24℃)未満では霧化した油滴が拡散して広がってしまうことから塗油効率が低下し、5.0MΩ(24℃)を超えると油滴が過剰に帯電してしまい、アルミニウム合金板に均一に塗布されない。
種々の条件について検討した結果、素材最終板において、素材表面へのカッピング油塗布量が100〜500mg/m、かつ素材板表面とカッピング油との接触角が20°以下という条件が求められた。なお、上記接触角は、カッピング油を素材板表面に液滴後30秒以内に測定したものである。また、より好ましくは、素材使用直前でこの規定を満たしていることが望ましい。これは仕上げ段階で規定値を満たしていた場合でも、使用までに長い時間を要した場合、塗布した油が揮発してしまい、素材使用時の値が規定値から外れることにより欠陥の発生に至ることが容易に想定されるためである。
カッピング油塗布量を100〜500mg/mとした理由は、100mg/m未満では接触角が20°以下の実現が難しく、かつアルミ板を巻き取ったコイルの輸送時等におけるハンドリング傷の発生リスクが大きくなるためであり、500mg/mを超えると効果が飽和してしまい不経済となるためである。接触角20°以下としたのは、カッピング油が素材へと付着し易くする、すなわち親和性を確保するのに必要なためである。
なお、製缶数が少ない場合においては20°を超えた接触角、例えばおよそ30°でも可能であるが、連続生産において、絞りしごき加工時のリドロー金型へのAl凝着が遅効的に生じて黒スジが発生してしまうため、金型交換頻度が増加してしまって大量生産には適応し得ない。また、接触角20°未満では、ほぼその効果が飽和に達するため、より好ましくは20°を超えない範囲が実現でき、かつ最も生産性が良い工程を選択するのが良い。
次に、本発明に係るボトル型飲料缶用アルミニウム合金板を、実施例により具体的に説明する。
本実施例1は、合金組成に関する実施例であり、素材としては、以下の表2に示す合金組成のアルミニウム合金(水準(1)、(2))を用いた。なお、比較例として水準(3)も用いた。
Figure 2007162056
それぞれの合金を溶湯から常法によって半連続鋳造により鋳塊を作製し、次いで600℃に加熱して均質(均熱)化処理を行った後、板厚6.5mmまで熱間圧延を行った。そして、引き続き板厚0.4mmまで冷間圧延を行い、この冷間圧延途中、板厚1.2mmにて360℃、板厚1.0mmで550℃の中間焼鈍を一連の処理として実施した。
なお、評価は、アルミボトル材として求められる主要特性項目について実施した。また、耳率は、33.8mmの外径を有するポンチで直径62mmのブランクを絞って成形したカップの耳高さから算出した。DI成形時の胴切れ性は1000缶の製缶を行い、胴切れ性の発生が無かったものを良好(○)とし、胴切れ性の発生が確認されたものを不良(×)とした。ネック成形性は実際にボトルネック成形を行い、縮径過程及びカーリング加工時に発生する割れについて目視評価し、割れの発生が無かったものは良好(○)とし、割れが生じたものは不良(×)とした。ボトルネック成形数は、それぞれ100缶とした。ベーキング条件は、210℃×10分とした。これらの評価結果を、以下の表3に示す。
Figure 2007162056
上記評価結果から、本発明に係るそれぞれの合金成分を適正化することで、アルミボトル用合金板として求められる特性を満足できることが明らかになった。
次に、本発明に係る実施例2について、以下に説明する。
実施例2はドローライン発生に関する実施例であり、実施例1における水準(1)の素材を用いて熱間圧延後に苛性洗浄処理を行っている。この実施例2において評価に用いた供試材を、以下の表4に示すと共に、その評価結果を表5に示す。この実施例2における水準(1)〜(4)では、苛性洗浄処理及び酸洗浄処理の両方を行っている。なお、比較例として、苛性洗浄処理及び酸洗浄処理の少なくとも一方を実施してない水準(5)〜(8)も同様に評価した。すなわち、水準(5)では、NaOH溶液のみの処理(苛性洗浄処理)とし、硝酸による酸洗浄処理は実施していない。また、水準(6)では、酸洗浄処理のみを実施し、水準(7)(8)では苛性洗浄処理及び酸洗浄処理のいずれも実施していない。
Figure 2007162056
Figure 2007162056
上記苛性洗浄処理は、処理条件として10%NaOH水溶液を50℃に加熱したところに浸漬時間をコントロールしてそれぞれエッチング量が得られるようにし、次いで10%硝酸溶液にて常温で20秒の浸漬を実施した。また、水準(1)(2)(7)については、半連続鋳造後の鋳塊を均質(均熱)化処理してから面削を行い、面削量としては片面15mmずつの面削を実施してからソーキング及び熱間圧延を実施した。
評価は、上述したドローライン評価システムによる評価と実際のアルミボトル成形サンプルによる視覚的判定評価との二通りで実施した。
ドローライン評価システムによる評価では、EPMA分析装置(日本電子株式会社製JXA−8800型電子プローブマイクロアナライザー)を用いてMg及びOの面分析を実施した。
次に、上記分析により得られたMg及びOのEPMAマッピング分析結果にて異常が無いことの確認と共に、各マッピングにおけるカウント数平均値をMg及びOについて求めた。さらに、ドローラインの根源であるMgを多く含む複合酸化物層を抽出した。この抽出処理では、EPMA分析装置の層分析機能の複合化を用いて実施した。
この複合化では、X軸にMg、Y軸にOのカウント数を設定し、それぞれのマッピングにおける同座標のカウント数をプロットする。その後、Mgについてはそれぞれのマッピングにおけるカウント数平均値を、Oについては各マッピングにおけるカウント数平均値に1.5を乗じた値を、それぞれしきい値とし、各しきい値以上のものをマッピングさせ、Mgを多く含む複合酸化物層の抽出処理が完了する。
次いで、この抽出画像の解析処理を行うが、この処理にはEPMA分析装置の粒子解析機能を用いた。この解析では、ドローラインの形成に影響を与えない微粒子の除去として、700μm以下の面積を有する微粒子除去を行った。この微粒子除去完了後は各粒子の周囲に1画素ずつの肉付けを行い、分断粒子間の連結を図った。次いで、粒子中に空孔が生じているものについては補完、すなわち穴埋めを行った。このようにして求められた画像に存在するそれぞれの粒子について最大弦長及び最大弦幅を求め、各粒子の最大弦長及び最大弦幅を乗じたものを合計し、評価総面積で商して百分率を求めることで評価結果を求めた。なお、水準の評価結果は、3視野の平均値より求めている。
実際のアルミボトル成形サンプルによる視覚的判定評価では、素材最終板において上述のドローライン評価システムにて試験片を採取した箇所と可能な限り近くの部位からブランクを採取し、実際のアルミボトルを成形した。ボトルは各水準について10缶ずつ作製し、3段階の標準サンプルを用いて評価を実施し、10缶の評価平均値を求めることで最終的に7段階評価とした。
すなわち、この評価では、模様が目立つほど評価点は大きくなる。この7段階評価とした理由は、同一水準においてもドローラインの状態にばらつきがあることや、状態が標準サンプル間に位置し、標準サンプルによる二極判定が難しい場合に対して結果を明確にするためである。また、標準サンプルの存在しない1点とは目視にてドローラインを認識することが困難なものを示し、7点とは著しく模様が目立つものを規定した。なお、視覚判定にてNGと判定されるのは評価点6点以下である。
水準(5)(6)は、ドローライン特性が明らかに劣っており、苛性洗浄処理と酸洗浄処理とを組み合わすことでドローライン対策としての効果を発揮することが確認された。なお、苛性洗浄処理及び酸洗浄処理の両処理を行わない水準(7)(8)は、明らかにドローライン特性が劣っていた。
このように本発明の実施例では、表面に存在するMgを含む複合酸化物を5%以下とすることで、ドローラインの発生が抑制されて人間の視覚判断で問題がない良好な外観を得ることができる。
実施例3は、黒スジ発生に関する実施例であり、各水準に用いた素材は実施例2の水準(2)を用いた。評価に用いた供試材を表6に示すと共に、評価結果を表7に示す。
Figure 2007162056
Figure 2007162056
評価した水準(1)は、冷間圧延仕上がりの状態である。また、水準(2)〜(4)は、冷間圧延仕上がり後に脱脂処理として洗浄工程を追加し、その後市販品カッピング油(Mobil社製EJ67-2257D:動粘度15.7cst(40℃)、絶縁抵抗3.4MΩ(24℃))を表中の各条件に応じて静電塗布したものである。水準(5)〜(7)は、冷間仕上がり後に脱脂処理を行わないでカッピング油を静電塗布したものである。この水準(5)〜(7)はカッピング油静電塗布前に冷間圧延残油が存在しているため、カッピング油塗布量の測定はできなかった。このため、水準(5)〜(7)は、水準(2)〜(4)の塗布条件と連続して行うことで、それぞれの狙い値とした。
接触角の測定は、上述した静電塗布に用いたものと同様のカッピング油を素材表面に液滴し、30秒以内に測定を終えた。また、黒スジの評価は、表に示す製缶数毎に化成処理未塗装缶(DI缶)及びアルミボトル成形缶(ALB缶)をそれぞれ10缶ずつ採取し、観察を行った。評価は、10缶中のサンプリングで黒スジ模様が認められなかったものは良好(○)、3缶以内認められた場合は中程度(△)、3缶を超えて認められた場合は不良(×)とした。
水準(1)は、50000缶製缶した時点でDI缶及びALB缶にて黒スジの発生が確認され、特にALB缶で欠陥が目立っていた。水準(5)(6)については、200000缶製缶した時点でDI缶及びALB缶で欠陥が目立つ傾向にあった。なお、本発明の範囲外に位置する水準(2)では、200000缶成形時点において黒スジの発生は確認されないものの、コイルの長手前後端においてコイル中の巻きズレ等によるハンドリング傷の発生リスクが高まるため、本発明の範囲から除外する。
この評価結果から、冷間圧延油の残油の有無に関わらず、リオイル塗布量(油性皮膜の塗布量)が100mg/m以上及び接触角20°以下の両条件が確保されていれば、連続生産時の黒スジ発生については問題ないことが明らかになった。
このように本発明の実施例では、表面へのカッピング油塗布量及び表面とカッピング油との接触角を上記範囲内に設定することで、連続生産においても黒スジの発生を防ぐことができ、金型交換頻度の増加を抑制することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
本発明に係る一実施形態のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板において、ドローライン評価システムのフローチャートである。 ドローラインの発生イメージを説明するための説明図である。
符号の説明
1…素材、2…DI缶、DL…ドローライン

Claims (2)

  1. 重量%でSi:0.2〜0.4%、Fe:0.25〜0.55%、Cu:0.15〜0.35%、Mn:0.7〜1.2%、Mg:0.8〜1.4%、Zn:0.1〜0.3%、Ti:0.01〜0.15%を含有し、残部が不可避不純物を含むAlからなる組成であり、
    表面に存在するMgを含む複合酸化物が5%以下であることを特徴とするボトル型飲料缶用アルミニウム合金板。
  2. 請求項1に記載のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板において、
    表面にカッピング成形用のカッピング油が100〜500mg/mで塗布され、
    表面と前記カッピング油との接触角が20°以下であることを特徴とするボトル型飲料缶用アルミニウム合金板。
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