JP2007145667A - 立方晶窒化硼素焼結体 - Google Patents
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【解決手段】 立方晶窒化硼素及び、結合材からなる立方晶窒化硼素焼結体であって、前記結合材中における炭素の含有量が、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して、0.01〜3質量%であることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体とする。前記炭素がグラファイトとして含有されている場合には、その粒径が30nm以下であることが好ましい。
Description
前記立方晶窒化硼素の耐摩耗性を向上させるため、炭化チタンと窒化チタンとアルミニウムとが特定の比率となるような組成とすることが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、近年、加工能率を一層向上させるために、切削速度の高速化がなされており、この様な高速度下では、上記組成においても、立方晶窒化硼素の耐摩耗性は十分ではなかった。
(1)立方晶窒化硼素及び、結合材からなる立方晶窒化硼素焼結体であって、前記結合材中における炭素の含有量が、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して、0.01〜3質量%であることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体である。
(2)炭素の含有量が、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して、0.1〜1質量%である前記(1)に記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(3)結合材は、周期律表の4〜6族元素、Fe、Co、Ni及びAlからなる群より選択される一種以上の元素を含み、
前記元素は、単体、相互固溶体、炭化物、窒化物、炭窒化物、硼化物及び酸化物からなる群より選択される一つ以上の状態で含有されている前記(1)又は(2)に記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(4)結合材は、炭素と、炭素以外の周期律表における4族元素の窒化物の一種以上とを含有し、前記炭素は、前記周期律表の4族元素の窒化物と相互固溶体を形成している前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(5)炭素以外の周期律表における4族元素が、Ti及び/又はHfである前記(3)又は(4)に記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(6)結合材としてTiNを含有し、前記TiNのCu−KαX線による回折パターンにおいて、(111)及び(200)反射の2θ位置が、それぞれ、36.10〜36.60及び41.90〜42.50の範囲にあることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(7)立方晶窒化硼素の粒径が、0.2〜10μmである前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(8)立方晶窒化硼素焼結体中における立方晶窒化硼素含有率が、40〜75体積%である前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(9)炭素がグラファイトとして含有されている前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(10)グラファイトの粒径が30nm以下である前記(9)に記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(11)立方晶窒化硼素の粒径が、0.2〜10μmである前記(9)又は(10)に記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
(12)立方晶窒化硼素焼結体中における立方晶窒化硼素含有率が、40〜95体積%である前記(9)〜(11)のいずれか一つに記載の立方晶窒化硼素焼結体である。
このため、本発明では、高速の切削速度においても十分実用に耐えうる切削工具に適した立方晶窒化硼素焼結体を提供することができる。
(立方晶窒化硼素)
前記立方晶窒化硼素としては、特に制限はなく、種々の立方晶窒化硼素を使用することができ、例えば、熱分解窒化硼素を原料として得られた立方晶窒化硼素、六方晶窒化硼素を原料として得られた立方晶窒化硼素などが挙げられる。
前記立方晶窒化硼素の粒径としては、0.2〜10μmが好ましく、0.2〜6μmがより好ましい。立方晶窒化硼素の粒径が小さすぎると、得られる立方晶窒化硼素焼結体の熱伝導率が低下し、耐熱性が悪くなる傾向があり、高速切削時の耐摩耗性が低下する場合がある。また、立方晶窒化硼素の粒径が大きすぎると、得られた立方晶窒化硼素焼結体を切削工具等に使用した場合に、粒径の大きな立方晶窒化硼素に応力が集中しやすく、クラック発生の起点となりやすく、切削工具等の寿命が短くなる場合がある。
本発明の立方晶窒化硼素焼結体は、その結合材中に、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して0.01〜3質量%の炭素を含有することが必要である。
前記炭素の含有量が少なすぎると、本発明の技術的効果を得られず、前記炭素の含有量が多すぎると、得られる立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性は向上するが、耐欠損性が悪化して切削工具としての性能に劣る場合がある。
周期律表の4〜6族元素、Fe、Co、Ni及びAlは、いずれも、立方晶窒化硼素の粒子を強固に結合させる作用を有している。よって、前記結合材の組成として、周期律表の4〜6族元素、Fe、Co、Ni及びAlからなる群より選択される一種以上の元素を含有することにより、立方晶窒化硼素の粒子同士が強固に結合した耐摩耗性に優れた立方晶窒化硼素焼結体を得ることができる。
上記の結合材の原料の中でも、Ti、Hf、TiN及びHfNからなる群から選ばれる一種以上を含有することがより好ましい。結合材が、Ti、Hf、TiN及びHfNからなる群から選ばれる一種以上を含有することによって、高温域における立方晶窒化硼素焼結体の結合相を安定させることができる。また、得られた立方晶窒化硼素焼結体を切削工具に用いた場合に、高速度の切削速度においても、特に優れた耐摩耗性や滑性を有する立方晶窒化硼素焼結体を得ることができる。
TiNのCu−KαX線による回折パターンにおいて、(111)及び(200)反射の2θ位置は、TiNに炭素が固溶し、炭素の固溶量に応じてシフト幅が変わってくることが知られている。TiNのCu−KαX線による回折パターンにおいて、(111)及び(200)反射の2θ位置が、それぞれ、36.10〜36.60及び41.90〜42.50の範囲にある場合に、TiNと炭素が適度に固溶しており、特に耐摩耗性に優れる立方晶窒化硼素焼結体を得ることができる。
前記炭素が、結合材中において、他の元素との相互固溶体として存在する場合には、被膜形成のための別工程を経ることなく、立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性を向上させることができる。
また、前記炭素が、結合材中において、グラファイトとして存在する場合には、滑性が高く且つ硬度の高い立方晶窒化硼素焼結体を得ることができる。前記グラファイトの粒径としては特に限定されないが、30nm以下であることが好ましい。前記グラファイトの粒径が大きすぎると、立方晶窒化硼素焼結体の摩耗を急激に進行させる起点となる場合があり、立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性が悪くなる場合がある。また、前記グラファイトの粒径が大きすぎると、立方晶窒化硼素焼結体を切削工具に使用した場合に、応力の集中が起こる場合があり、立方晶窒化硼素焼結体にクラックが生じやすくなる場合がある。
前記炭素化合物としては、例えば、グラファイト、アモルファスカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、4〜6族元素の炭化物等が挙げられる。
前記高分子有機物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
本発明の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素及び、結合材からなり、前記結合材中に炭素を特定量含有するものである。
結合材中の炭素の含有量は、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して、0.01〜3質量%である必要があり、立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性、滑性及び硬度の面から、0.1〜1質量%であるのが好ましい。
前記炭素の含有量が少なすぎると、耐摩耗性が十分でなく、また、滑性が十分でない。また、前記炭素の含有量が多すぎると、立方晶窒化硼素焼結体の硬度が低くなる傾向がある。
また、本発明の立方晶窒化硼素焼結体中において、結合材中の炭素がグラファイトとして存在している場合には、立方晶窒化硼素が40〜95体積%であることが好ましく、50〜95体積%であることがより好ましい。結合材中の炭素がグラファイトとして存在している場合において、立方晶窒化硼素の割合が少なすぎると、十分な耐摩耗性が得られない場合があり、多すぎると、立方晶窒化硼素の粒子が欠損しやすくなり、立方晶窒化硼素焼結体を切削工具に使用した場合に工具の寿命が短くなる傾向がある。
この結合材AにCo,W,Fe,Ni,Hfなどの金属元素と粒径8μmのグラファイトまたはアモルファスカーボンを加えて、いくつかの結合材原料となる混合粉を作成し、超硬合金製の容器と超硬合金製ボールとからなるボールミルを用いて均一に混合し数種類の結合材を作成した。
また、結合材Aを用いる代わりに複数の金属及びセラミクス材料を混合し、これに粒径1μmのカーボンナノチューブを添加してボールミルを用いて均一に混合しいくつかの結合材を作成した。
更に、結合材AにcBN粉末を加えてボールミルにより均一に混合し、得られた混合粉末を超硬合金製のカプセルに充填した後、超高圧装置を用いて圧力6GPa、温度1700℃にて約15分間保持して比較例1の立方晶窒化ホウ素焼結体を得た。
更に焼結体のICP分析を行い、焼結対中に含まれる炭素の焼結体全体に対する重量比率を求めた。
これらの結果を表1に示す。
実施例1〜6及び、比較例1,2,4〜8の焼結体から作成したこれらの工具を用いて、下記の条件にて焼入鋼を高速で連続切削する切削試験を実施した。結果を表2に示す。
切削試験の条件は、切削速度:V=200mm/min、送り:f=0.1mm/rev、切り込み:d=0.2mm、乾式切削、被削材:SUJ2で行った。
なお、表2において、工具の逃げ面磨耗量が0.1mmを越えた場合若しくは、刃先が大きくかけ落ちる様な欠損が生じ、加工面の品質に変化を生じた場合を工具寿命と定義し、比較例1の焼結体を使用した工具の寿命を1としてこれとの相対比較で表記した。
切削試験の条件は、切削速度:V=400mm/min、送り:f=0.12mm/rev、切り込み:d=0.2mm、
湿式切削、被削材:ダクタイル鋳鉄FCD450で行った。
表3において、工具の逃げ面磨耗量が0.1mmを越えた場合若しくは、刃先が大きくかけ落ちる様な欠損が生じ、加工面の品質に変化を生じた場合を工具寿命と定義し、比較例3の焼結体を使用した工具の寿命を1としてこれとの相対比較で表記した。
Claims (12)
- 立方晶窒化硼素及び、結合材からなる立方晶窒化硼素焼結体であって、前記結合材中における炭素の含有量が、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して、0.01〜3質量%であることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体。
- 炭素の含有量が、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して、0.1〜1質量%である請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 結合材は、周期律表の4〜6族元素、Fe、Co、Ni及びAlからなる群より選択される一種以上の元素を含み、
前記元素は、単体、相互固溶体、炭化物、窒化物、炭窒化物、硼化物及び酸化物からなる群より選択される一つ以上の状態で含有されている請求項1又は2に記載の立方晶窒化硼素焼結体。 - 結合材は、炭素と、炭素以外の周期律表における4族元素の窒化物の一種以上とを含有し、前記炭素は、前記周期律表の4族元素の窒化物と相互固溶体を形成している請求項1〜3のいずれか一項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 炭素以外の周期律表における4族元素が、Ti及び/又はHfである請求項3又は4に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 結合材としてTiNを含有し、前記TiNのCu−KαX線による回折パターンにおいて、(111)及び(200)反射の2θ位置が、それぞれ、36.10〜36.60及び41.90〜42.50の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 立方晶窒化硼素の粒径が、0.2〜10μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 立方晶窒化硼素焼結体中における立方晶窒化硼素含有率が、40〜75体積%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 炭素がグラファイトとして含有されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- グラファイトの粒径が30nm以下である請求項9に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 立方晶窒化硼素の粒径が、0.2〜10μmである請求項9又は10に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
- 立方晶窒化硼素焼結体中における立方晶窒化硼素含有率が、40〜95体積%である請求項9〜11のいずれか一項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
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