以下にAの具体例を挙げる。
A−1 −CH2CH2−
A−2 −CH2CH2CH2−
A−3 −CH=CH−
A−4
A−5
A−6 −CH2C(CH3)2−
以下Bの具体例を挙げる。
B−1 −CH2CH2−
B−2 −CH2CH2CH2CH2−
B−3
B−4
本発明における一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を有するセルロースエステルは、未置換の水酸基を有するセルロース、またはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、フタリル基等のアシル基によってすでに一部の水酸基が置換されているセルロースエステルの存在下で、多塩基酸またはその無水物と多価アルコールとのエステル化反応、またはL−ラクチド、D−ラクチドの開環重合、L−乳酸、D−乳酸の自己縮合を行わせることによって得ることができる。
エステル化反応に用いる多塩基酸無水物として、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水フマル酸が挙げられるが特に限定されない。
エステル化反応に用いることができる多価アルコールとして、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられるが特に限定されない
エステル化反応に用いる触媒としては、無触媒で反応をすることもできるが、公知のルイス酸触媒などを用いることができる。使用できる触媒としてはスズ、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ナトリウム、カリウム、アルミニウムなどの金属およびその誘導体が挙げられ、特に誘導体については金属有機化合物、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的にはオクチルスズ、塩化スズ、塩化亜鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、アルキルアルミニウムなどを例示することができる。また、触媒としてパラトルエンスルホン酸に代表される酸触媒を用いることもできる。また、カルボン酸とアルコールとの脱水反応を促進するためにカルボジイミド、ジメチルアミノピリジンなど公知の化合物を添加してもよい。
係る反応は、セルロースエステルおよびその他の反応させる化合物を溶解させることが可能な有機溶媒中における反応によってもよいし、剪断力を付加しながら加熱攪拌が可能なバッチ式ニーダーを用いた反応によるものであってもよいし、一軸或いは二軸のエクストルーダーを用いた反応によるものであってもよい。
本発明の繰り返し単位はセルロースに対して0.5〜190質量%の範囲で適宜含有させることができる。
セルロースエステルの置換度は、適宜選択することができるが、2.2〜3であることが、熱可塑性、熱加工性の点から好ましい。
本発明のセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
本発明の繰り返し単位は、当該部分の数平均分子量として300〜10000であり、500〜8000であることが熱加工性の点から好ましい。なお、当該セルロースエステルが有する繰り返し単位のみの数平均分子量は、エステル化反応する前のセルロースエステルと反応後のセルロースエステルをポリスチレン換算したGPCデータまたは、1H−NMR(日本電子製JNM−EX−270:溶媒:重塩化メチレン)により比較して求めた。
本発明の繰り返し単位をセルロースに導入する際に副反応として、一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を有するオリゴマー、ポリエステルが生成することあるが、これらの化合物は可塑剤として作用することから精製により必ずしも完全に除去する必要はなくセルロースエステルに含んでもよい。含有量としてはセルロースエステルに対して30質量%であればセルロースエステルの性質を大きく変化させることは少ない。可塑性の点から、好ましくは0.5〜20質量%である。
これらのオリゴマー、ポリエステルの数平均分子量は、300〜10000であり、可塑性の点から好ましくは500〜8000である。
本発明の光学フィルムは、本発明のセルロースエステルの溶液流延法、溶融流延製膜法によって製造することができるが、環境適正から溶融流延製膜法によることが好ましい。
加熱溶融する成形法には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類出来る。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れる位相差フィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
ここで本発明のセルロースエステルが加熱されて、その流動性を発現させた後ドラム上またはエンドレスベルトに押し出し製膜することが溶融流延製膜法として本発明の溶融流延法に含まれる。
本発明の溶融流延に用いるセルロースエステルは、セルロースエステルに含まれる水分または揮発性低分子化合物等の揮発成分を、製膜する前に、または加熱時に除去することが好ましい。この除去する方法は、所謂公知の乾燥方法が適用出来、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことが出来、空気中または不活性ガスとして窒素を選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの公知の乾燥方法を行うとき、本発明のセルロースエステルが分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。
例えば、前記乾燥工程で除去した後の残存する水分または溶媒は、各々本発明のセルロースエステルの全体に質量に対して20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下にすることである。
このときの乾燥温度は、製膜前に乾燥することにより、揮発成分の発生を削減することが出来、樹脂単独、または樹脂と本発明のセルロースエステルの内、樹脂以外の少なくとも1種以上の混合物または相溶物に分割して乾燥することが出来る。好ましい乾燥温度は100℃以上乾燥する材料のTg以下であることが好ましい。材料同士の融着を回避する観点を含めると、乾燥温度は、より好ましくは100℃以上(Tg−5)℃以下、さらに好ましくは110℃以上(Tg−20)℃以下である。好ましい乾燥時間は0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、さらに好ましくは1.5〜12時間である。これらの範囲よりも低いと揮発成分の除去率が低いか、または乾燥の時間がかかり過ぎることがあり、また乾燥する材料にTgが存在するときには、Tgよりも高い乾燥温度に加熱すると、材料が融着して取り扱いが困難になることがある。
乾燥工程は2段階以上の分離してもよく、例えば予備乾燥工程による材料の保管と、製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥工程を介して製膜してもよい。
本発明において、光学フィルムが押出し機から押出されて巻き取られる間にガラス転移温度+80℃以上、+150℃以下の温度で加圧される工程を含む。加圧される時間は好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下である。ガラス転移温度+150℃以上で加圧するとフィルム表面が溶融し、平面性は劣化する。加圧する好ましい温度はガラス転移温度+100℃以上、+150℃以下、さらに好ましい範囲は、ガラス転移温度+120℃以上、+140℃以下である。
フィルムの表面粗さ、および膜厚変動は既知の方法で測定することが可能である。例えば、フィルムの表面粗さに関しては、表面粗さ計でフィルム表面を10cm程度測定し、平均粗さ(Ra)として比較する方法がある。また、膜厚変動は膜厚計にて測定を行い、標準偏差を求めたり、平均膜厚に対しての変動幅で比較することが可能である。本発明においては、溶融押出しにて作製したフィルムの表面粗さRaは0.1μmであり、好ましくは0.05μmである。また、幅手方向の膜厚変動は±3%以内、好ましくは±2%以内である。
本発明の光学フィルムは、少なくとも一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を有するセルロースエステルを主成分とする。ここで主成分とするとは、光学フィルムの50質量%以上を占める構成成分であることを言う。
本発明において、本発明のセルロースエステル中に、安定剤の少なくとも一種を前記セルロースエステルの加熱溶融前または加熱溶融時に添加することが好ましい。製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。
上記安定化剤は次に挙げられる効果に用いるがこれらに限定されるものではない。
ヒンダードフェノール酸化防止剤、酸捕捉剤、ヒンダードアミン光安定剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、アミン類などが挙げられる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。これらの中で、本発明の目的のためには、安定化剤としてヒンダードフェノール酸化防止剤、酸捕捉剤、ヒンダードアミン光安定剤の内少なくとも1種、本発明のセルロースエステル中の含むことにある。
本発明のセルロースエステルの酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明出来ていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために安定化剤を用いる。
一方、本発明のセルロースエステルを加熱溶融すると分解反応が著しくなり、この分解反応によって着色や分子量低下に由来した該構成材料の強度劣化を伴うことがある。また本発明のセルロースエステルの分解反応によって、本発明の目的において、分解反応によって生じる好ましくない揮発成分の発生も併発することもある。
本発明のセルロースエステルは、材料の変質や吸湿性を回避する目的で、構成する材料が一種または複数種のペレットに分割して保存することが出来る。ペレット化は、加熱時の溶融物の混合性または相溶性が向上出来、または得られたフィルムの光学的な均一性が確保出来ることもある。
本発明のセルロースエステルを加熱溶融するとき、上述の安定化剤が存在することは、材料の劣化や分解に基づく強度の劣化を抑制すること、または材料固有の強度を維持出来る観点で優れている。
本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして使用する観点から上述の安定化剤が存在することが好ましい。フィルム製造時、位相差フィルムとしてのリターデーションを付与する工程において、該本発明のセルロースエステルの強度の劣化を抑制すること、または材料固有の強度を維持出来ることにある。このことはフィルム製膜時の延伸工程において、本発明の目的のリターデーションを付与する観点で好ましい。本発明のセルロースエステルが著しい劣化によって脆くなると、該延伸工程において破断が生じやすくなり、目的の位相差フィルムとしてのリターデーション値が発現出来なくなることがあるためである。
また、上述の安定化剤の存在は、加熱溶融時において可視光領域の着色物の生成を抑制すること、または揮発成分がフィルム中に混入することによって生じる透過率やヘイズ値といった位相差フィルムとして好ましくない性能を抑制または消滅出来る点で優れている。
本発明のセルロースエステルの保存或いは製膜工程において、空気中の酸素による劣化反応が併発することがある。この場合、上記安定化剤の安定化作用とともに、空気中の酸素濃度を低減させる効果を用いることも本発明を具現化する上で併用出来る。これは、公知の技術として不活性ガスとして窒素やアルゴンの使用、減圧〜真空による脱気操作、及び密閉環境下による操作が挙げられ、これら3者の内少なくとも1つの方法を上記安定剤の存在させる方法と併用することが出来る。本発明のセルロースエステルが空気中の酸素と接触する確率を低減することにより、該材料の劣化が抑制出来、本発明の目的のためには好ましい。
本発明の光学フィルムは、偏光板用保護フィルムとしても活用するため、偏光板及び偏光板を構成する偏光子に対して経時保存性を向上させる観点からも、本発明のセルロースエステル中に上述の安定化剤の存在が重要な役割を発現する。
本発明の偏光板を用いた液晶表示装置において、本発明の位相差フィルムに上述の安定化剤が存在するため、上記の変質や劣化を抑制する観点から位相差フィルムの経時保存性が向上出来るとともに、液晶表示装置の表示品質向上においても位相差フィルムが付与された光学的な補償設計が長期にわたって機能発現出来る点で優れている。
本発明において、セルロースエステルの熱溶融時の安定化のために用いる化合物として有用なヒンダードフェノール酸化防止剤化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているものなどの、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物には、以下の一般式(3)のものが含まれる。
上式中、R1、R2及びR3は、さらに置換されているかまたは置換されていないアルキル置換基を表す。ヒンダードフェノール化合物の具体例には、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3’,5’'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのヒンダードフェノール系酸化防止剤化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、「Irganox1076」及び「Irganox1010」という商品名で市販されている。
本発明において、本発明のセルロースエステルの熱溶融時の安定化のために用いる化合物として有用な酸捕捉剤は、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び一般式(4)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
上式中、nは0〜12に等しい。用いることが出来るさらなる可能な酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
本発明において、本発明のセルロースエステルの熱溶融時の安定化のために用いる化合物として、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。このような化合物には、以下の一般式(5)のものが含まれる。
上式中、R1及びR2は、Hまたは置換基である。ヒンダードアミン光安定剤化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N’−ジブチル−アジパミド、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N’−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル。好ましいヒンダードアミン光安定剤の例には、以下のHALS−1及びHALS−2が含まれる。
上記本発明のセルロースエステル中の安定化剤は、少なくとも1種以上選択出来、添加する量は、セルロースエステルの質量に対して、安定化剤の添加量は0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上0.8質量%以下である。
安定化剤の添加量が上記添加量の範囲よりも少ないと、熱溶融時の材料の安定化作用が低いために安定化剤の効果が得られず、また上記添加量の範囲よりも多いと樹脂への相溶性の観点から光学フィルムとしての透明性の低下を引き起こし、またフィルムが脆くなることもあるために好ましくない。
本発明においては、セルロースエステルを溶融する前に安定剤とセルロースエステルとを均一に混合することが好ましい。樹脂と安定剤を均一に混合する方法としては、従来知られている混合機を適宜使用することができる。また、セルロースエステルの融点以下、安定剤の融点以上の温度で混合することにより、安定剤のみを溶融してセルロースエステルの表面に安定剤を吸着させることも出来る。
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することが出来る。
本発明で用いられる光学フィルムは輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の光源側の偏光板の透過軸に前記偏光板用保護フィルムの遅相軸が平行に位置するとき他方の偏光板の、外側の面に垂直な位置で観察したときの光が漏れてくることを意味する。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロースエステルに含まれる水酸基のエステル化部分が未反応であることがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステルを用いることと、加熱溶融したセルロースエステルを濾過することによって除去し、低減することが出来る。また、フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向がある。
上記は、輝点の個数としては、面積250mm2当たり、偏光クロスニコル状態で認識される大きさが5〜50μmの輝点が、フィルムを観察時のとして300個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。更に好ましくは、5〜50μmの輝点が200個以下である。
輝点異物を濾過によって除去する場合、本発明において、セルロースエステルを溶融することが出来る。本工程で輝点異物の除去し、連続して溶融流延の製膜工程が実施される場合、加熱溶融時のセルロースエステルは安定化剤が存在することで上記劣化が回避出来る点で優れている。
熱溶融による輝点異物の濾過工程を含む溶融流延法は、可塑剤とセルロースエステルの組成物とした場合、可塑剤が添加しない系と比較して熱溶融温度を低下させる観点から輝点異物の除去効率の向上と熱分解の回避の観点から好ましい方法である。また、後述する他の添加剤として紫外線吸収剤、やマット材も適宜混合したものを同様に濾過することも出来る。
濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂、フッ素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものが更に好ましく、10μm以下のものが更に好ましく、5μm以下のものが更に好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することも出来る。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることが出来るが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
本発明のセルロースエステルに添加する安定化剤、可塑剤及び上記その他添加剤を添加するときは、それらを含めた総量が、セルロースセルロースエステルの質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムはセルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。前述の高分子材料やオリゴマーはセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。この場合は、上述のその他添加剤として含むことが出来る。
前述の冷却ドラムから剥離され、得られたフィルムを1つまたは複数のロール群及び/又は赤外線ヒーター等の加熱装置を介して長手方向に一段又は多段縦延伸することが好ましい。このとき、本発明のフィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)℃以上(Tg+100)℃以下、より好ましくは(Tg−20)℃以上(Tg+80)℃以下の範囲内で加熱して搬送方向に延伸することが好ましい。
次に、搬送方向に延伸されたフィルムを、(Tg−20)℃以上(Tg+20)℃以下の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると幅方向の厚さ及び光学的な分布が低減でき好ましい。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、得られた位相差フィルムの物性と液晶表示装置の視野角拡大のための位相フィルムの機能付与ために、本発明の偏光板用保護フィルムの製造においては、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定することが出来る。
本発明の光学フィルムとして作成した場合、セルロースエステルによってTgが異なるが、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率が異なることは本発明において制御出来る領域である。本発明の用途においては、Tgは120℃以上が好ましく、更に135℃以上が好ましい。これは液晶表示装置に本発明の位相差フィルムを用いた場合、該フィルムのTgが上記よりも低いと、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によって該フィルムの温度環境に変化を与える。
このとき該フィルムの使用環境温度よりも該フィルムのTgが低いと、延伸によってフィルム内部に固定された分子の配向状態に由来して、位相差フィルムとしての光学的用途においては、リターデーション値及びフィルムとしての寸法形状に大きな変化を与えることとなる。逆に該フィルムのTgが高過ぎると、本発明のセルロースエステルをフィルム化するとき温度が高くなるために加熱するエネルギー消費が高くなることが現状である。また、フィルム化するときの用いる材料自身の分解によって揮発成分の存在や着色を呈することがあり、従って、250℃以下が好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法にて求めることが出来る。
本発明に係る光学フィルムは、偏光板用保護フィルムの機能を複合させるため、屈折率制御を延伸操作により行うことが好ましい。以下、その延伸方法について説明する。
本発明の位相差フィルムの製造において、セルロースエステルの1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することでリターデーションRo及びRthを所望の範囲に制御することが出来る。
例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に延伸することが出来る。
このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、上記定義のフィルムの屈折率nx、ny、nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。
例えば溶融して流延した方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制或いは、幅方向にも延伸することで改善出来る。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、テンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、所謂ボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、該流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制出来、幅手の位相差の分布を少なく改善出来るのである。
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少出来る。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが本発明のリターデーション値を得るためにより好ましい。
長手方向に偏光子の吸収軸が存在する場合、幅方向に偏光子の透過軸が一致することになる。本発明の長尺状の偏光板を得るためには、本発明の位相差フィルムは、幅方向に遅相軸を得るように延伸することが好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、上述の構成から、幅方向に延伸することで、位相差フィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。この場合、本発明において、表示品質の向上のためには、位相裁フィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、本発明のリターデーション値を得るためには、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)を満たすことが必要である。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、或いは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことが出来、破断等の危険性が減少出来るので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持或いは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明の位相差フィルムを偏光板用保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、更には35μm以上が好ましい。又、150μm以下、更には120μm以下が好ましい。特に好ましくは25以上〜90μmが好ましい。
本発明の位相差フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内の存在し、製膜方向とのなす角度をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義出来、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことが出来る。
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与出来、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与出来る。
本発明の位相差フィルムがマルチドメイン化されたVAモードに用いられるとき、位相差フィルムの配置は、位相差フィルムの進相軸がθ1として上記領域に配置されることが、本発明の目的である表示画質の向上のために寄与出来、偏光板及び液晶表示装置としてMVAモードとしたとき、例えば図1に示される構成をとることが出来る。
また、セルロースエステルフィルムの面内方向のリターデーション(Ro)分布は、5%以下に調整することが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。また、フィルムの厚み方向のリターデーション(Rth)分布を10%以下に調整することが好ましいが、更に好ましくは、2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
上記、リターデーション分布の数値は、得られたフィルムの幅手方向に1cm間隔でリターデーションを測定し、得られたリターデーションの変動係数(CV)で表したものである。リターデーション、その分布の数値の測定方法については、例えば、面内及び厚み方向のリターデーションをそれぞれ(n−1)法による標準偏差を求め、以下で示される変動係数(CV)を求め、指標とする。測定において、nとしては、130〜140に設定して算出することも出来る。
変動係数(CV)=標準偏差/リターデーション平均値
本発明の位相差フィルムにおいて、リターデーション値の分布変動が小さい方が好ましく、液晶表示装置に本発明の位相差フィルムを含む偏光板を用いるとき、該リターデーション分布変動が小さいことが色ムラ等を防止する観点で好ましい。
本発明の位相差フィルムは、リターデーション値の波長分散性を有していてもよく、液晶表示素子に上記同様に用いる場合、表示品質の向上のために、該波長分散性に関して適宜選択することが出来る。ここで、本発明の位相差フィルムの590nmの測定値Roと同様に、450nmにおけるる面内リターデーションR450、650nmの面内リターデーションをR650と定義する。
本発明において表示装置がMVAに用いる場合、本発明の位相差フィルムの面内リターデーションにおける波長分散性は、好ましくは、0.7<(R450/R0)<1.0、1.0<(R650/R0)<1.5である。更に好ましくは0.7<(R450/R0)<0.95、1.01<(R650/R0)<1.2であり、特に好ましくは0.8<(R450/R0)<0.93、1.02<(R650/R0)<1.1の範囲内にあることが、表示の色再現性において有効な効果を発揮するために選択することが出来る。
本発明の位相差フィルムはVAモードまたはTNモードの液晶セルの表示品質の向上に適したリターデーション値に調整することができるが、その中で特にVAモードとして上記のマルチドメインに分割してMVAモードに好ましく用いるとき面内リターデーションであるRoが30nmよりも大きく95nm以下であり、かつ厚さ方向のリターデーションであるRthは70nmよりも大きく400nm以下の値であることが求められる。
上記面内リターデーションは2枚の偏光板がクロスニコルに配置され、偏光板の間に液晶セルが配置された、例えば図1の構成であるときに、表示面の法線方向から観察するときを基準にしてクロスニコル状態にあるとき、表示面の法線から斜めに観察したとき、偏光板のクロスニコル状態からのずれが生じ、これが要因となる光漏れを主に補償する。厚さ方向のリターデーションは、上記TNモードやVAモード、特にMVAモードにおいて液晶セルが黒表示状態であるときに、同様に斜めから見たときに認められる液晶セルの複屈折を主に補償するために機能出来る。この両者の挙動を融合するとRo及びRthは本発明の範囲で光学的に補償出来る。また、本発明において液晶セル自身のリターデーションに対してRo及びRthを調節することが出来る。
本発明の光学フィルムを用いた液晶表示装置において液晶セルの上下に本発明の偏光板が二枚配置された構成である場合、図中の2a及び2bは、Rthの配分を選択することが出来、上記範囲を満たしかつRthの両者の合計値が140nmよりも大きくかつ500nm以下にすることが好ましい。このとき2a及び2bのRo、Rthが両者同じであることが、工業的な偏光板の生産性向上において好ましい。特に好ましくはRoが35nmよりも大きくかつ65nm以下であり、かつRthは90nmよりも大きく180nm以下で図1の構成でMVAモードの液晶セルに適用することである。
液晶表示装置に本発明の位相差フィルムを含む偏光板が片側に配置される場合、もう一枚の偏光板は例えば本発明外の市販の偏光板用保護フィルムとしてRo=0〜4nm及びRth=20〜50nmで厚さ35〜85μmのTACフィルムが図1の2bに位置しており、かつ2aは本発明の位相差フィルムを配置した構成において、Roが30nmよりも大きく95nm以下であり、かつ厚さ方向のリターデーションであるRthは140nmよりも大きく400nm以下とすることが、表示品質の向上に寄与出来、かつフィルムの生産面においても好ましい。
〈液晶表示装置〉
本発明の位相差フィルムを含む偏光板で構成された液晶表示装置は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させるために用いる。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮出来る。
マルチドメイン化は、画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されており、これらに限定される訳ではない。
本発明の偏光板は垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることが出来る。また、OCB(Optical Compensated Bend)モードへの適合においても光学的に二軸性を有するフィルムの提案が開示されており「T.Miyashita,T.Uchida:J.SID,3(1),29(1995)」、本発明の偏光板によって表示品質において、本発明の効果を発現することも出来る。本発明の偏光板を用いることによって本発明の効果が発現出来れば、液晶モード、偏光板の配置は限定されるものではない。
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することが出来る。ドメインの分割は、公知の方法を採用することが出来、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定出来る。
該液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置しても応用されつつあり、本発明における表示品質は、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
本発明の位相差フィルムを偏光板用保護フィルムとして有する偏光板を少なくとも1枚含む液晶表示装置は、本発明の位相差フィルムを含む偏光板が、液晶セルに対して、一枚配置するか、或いは液晶セルと両側に二枚配置する。このとき偏光板に含まれる本発明の位相差フィルム側が液晶表示装置の液晶セルに面するように用いることで表示品質の向上に寄与出来る。図1においては2a及び2bのフィルムが液晶表示装置の液晶セルに面することになる。
このような構成において、本発明の位相差フィルムの存在は、液晶セルを光学的に補償することが出来る。本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶表示装置の偏光板の内の少なくとも一つの偏光板を、本発明の偏光板とすればよい。本発明の偏光板を用いることで、表示品質が向上し、視野角特性に優れた液晶表示装置が提供出来る。
本発明の偏光板において、偏光子からみて位相差フィルムとは反対側の面には、通常のTACフィルム、本発明の光学フィルムなどを用いることが出来る。液晶セルから遠い側に位置する偏光板用保護フィルムは、表示装置の品質を向上する上で、他の機能性層を配置することも可能である。
例えば、反射防止、防眩、耐キズ、ゴミ付着防止、輝度向上のためにディスプレイとしての公知の機能層を構成物として含むフィルムや、または本発明の偏光板表面に貼付してもよいがこれらに限定されるものではない。
本発明の長尺状の光学フィルムは、溶融流延法によってフィルムを製造するため、溶液流延法と異なり揮発させるための溶媒が存在しないため、変動の少ないロールフィルムが得られることに優れている技術である。本発明は、溶融流延によって製造されたフィルムを、連続的に延伸処理することによって長尺状の位相差フィルムを得る点で優れている。
溶融流延法による本発明の長尺状光学フィルムは、セルロースエステルを主体として構成されるため、セルロースエステル固有のケン化を活用してアルカリ処理工程を活用することが出来る。これは、偏光子を構成する樹脂がポリビニルアルコールであるとき、従来の偏光板用保護フィルムと同様に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて本発明の光学フィルムと貼合することが出来る。このために従来の偏光板加工方法が適用出来る点に優れており、特に長尺状であるロール偏光板が得られることに優れている。
これらの優れた効果は、特に100m以上の長尺の巻物において効果が発揮出来、1500m、2500m、5000mとより長尺化することによって、偏光板製造において効果をより発揮出来る。
本発明の光学フィルムにおいて、ロール長さは生産性と運搬性を考慮すると、10m以上5000m以下、好ましくは50m以上4500m以下であり、このときのフィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することが出来、0.5m以上4.0m以下、好ましくは0.6m以上3.0m以下の幅で製造してロール状に巻き取り偏光板加工に用いてもよく、また、目的の倍幅以上のフィルムを製造してロールを巻き取り後断裁して目的の幅のロールとしてもよく、これらを偏光板加工に用いても良い。
〈可塑剤〉
本発明の光学フィルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点において好ましい。
また本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロースエステル単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加により本発明のセルロースエステルの溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロースエステル単独よりも可塑剤を含む本発明のセルロースエステルの溶融粘度が低下出来る目的を含んでいる。
ここで、本発明において、本発明のセルロースエステルの溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態において、材料が加熱された温度を意味する。本発明においては、流動性を向上させるために一般の可塑剤を添加してもよい。
本発明では可塑剤として、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
リン酸エステル誘導体としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることが出来る。
カルボン酸エステル誘導体としては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等が挙げられ、フタル酸エステル誘導体としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることが出来る。
その他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。また、これらアルキルフタリルアルキルグリコレート等を2種以上混合して使用してもよい。
これらの化合物の添加量は可塑剤がセルロースエステルに対して、0.5質量%以上〜20質量%未満の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1質量%以上〜11質量%未満の範囲にある。これらの化合物の添加量は、上記目的の観点から調整することが出来る。
上記可塑剤の中でも熱溶融時に揮発成分を生成しないことが好ましい。具体的には特表平6−501040号に記載されている不揮発性燐酸エステルが挙げられ、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルや上記例示化合物の中ではトリメチロールプロパントリベンゾエート等が好ましいがこれらに限定されるものではない。揮発成分が上記可塑剤の熱分解によるとき、上記可塑剤の熱分解温度Td(1.0)は、1.0質量%減少したときの温度と定義すると、本発明のセルロースエステルの溶融温度(Tm)よりも高いことが求められる。可塑剤は、上記目的のために、セルロースエステルに対する添加量が他の本発明のセルロースエステルよりも多く、揮発成分の存在は得られるフィルムの品質に与える劣位となる影響が大きいためである。熱分解温度Td(1.0)は、市販の示差熱重量分析(TG−DTA)装置で測定することが出来る。
紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明に用いる紫外線吸収剤において、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”、5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(いずれもチバ−スペシャルティ−ケミカルズ社製)を用いることも出来る。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、更に0.5〜10質量%添加することが好ましく、更に1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
本発明の光学フィルムは、搬送性や巻き取りをし易くするためにマット剤を添加することが出来る。
マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることが出来る。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低く出来るので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の二次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは、7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させる為に好ましく用いられる。微粒子のセルロースエステル中の含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用出来る。
これらのマット剤の添加方法は常法によって混練するなどによって行うことが出来る。また、別の形態として予め溶媒に分散した微粒子とセルロースエステル及び/又は可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を混合分散させた後、溶媒を揮発または沈殿法によって分子して洗浄した固形物を得て、これをセルロースエステル溶融物の製造過程で用いることがマット微粒子がセルロースエステル中で均一に分散出来る観点から好ましい。
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的としてフィルムの強度向上のために用いることも出来る。
また、本発明の光学フィルムにおいて配向膜を形成して液晶層を設け、位相差フィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化して光学補償能を付与して液晶表示品質の向上のために偏光板加工を行い用いてもよい。リターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することも出来る。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
本発明の位相差フィルムは、例えば米国特許第2,492,978号、同第2,739,070号、同第2,739,069号、同第2,492,977号、同第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,607,704号、英国特許第64,071号、同第735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号に記載の方法を参照して製膜できる。
本発明の位相差フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことが出来る。
製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースエステルを含む組成物を共押し出しして、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することも出来る。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることが出来る。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることが出来、コア層のみに入れてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することも出来、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することも出来る。スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていても良く、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。このとき、スキンとコアの両者のガラス転移温度を測定し、これらの体積分率より算出した平均値を上記Tgと定義して同様に扱うこともできる。又、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度>スキン層の粘度でもよい。
本発明の光学フィルムは、寸度安定性が、23℃55%RHに24時間放置したフィルムの寸法を基準としたとき、80℃90%RHにおける寸法の変動値が±2.0%未満であり、更に好ましくは1.0%未満であり、更に好ましくは0.5%未満である。
本発明の光学フィルムは偏光板用保護フィルム用として用いることが出来る。偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することが出来る。得られた光学フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて、偏光子の両面に偏光板用保護フィルムを貼り合わせる方法があり、少なくとも片面に本発明の偏光板用保護フィルムである光学フィルムが偏光子に直接貼合できる観点で好ましい。
また、上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、同6−118232号に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することが出来る。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いることが出来る。
溶融流延法による本発明の光学フィルムにおいて、本発明のセルロースエステルとは、以下の複数の材料によって構成されることを意味する。フィルムを構成するセルロースエステル、可塑剤、安定剤が挙げられ、必要に応じて紫外線吸収剤、滑り剤としてマット剤やフィルムの強度や光学的の制御のために材料を添加してもよく、また上述のリターデーション制御剤を添加してもよい。本発明のセルロースエステルに含まれるこれらの複数の材料は、本発明の範囲で選択することができる。
本発明のセルロースエステルは溶融及び製膜工程において、揮発成分が少ないまたは発生しないことが、求められる。これは加熱溶融時に発泡して、フィルム内部の欠陥やフィルム表面の平面性劣化を削減または回避することが出来る。
本発明の、セルロースエステル中の安定化剤の存在は、該セルロースエステル、可塑剤、その他必要に応じて添加する紫外線吸収剤やマット剤、リターデーション制御剤等、フィルムを構成する材料の少なくとも1種以上に対して変質や分解による揮発成分の発生を抑制または防止する観点で優れている。また安定化剤自身も本発明のセルロースエステルの溶融温度領域において、揮発成分を発生しないことが求められる。
本発明のセルロースエステルが溶融されるときの揮発成分の含有量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下のものであることが望ましい。本発明においては、示差熱重量測定装置(セイコー電子工業社製TG/DTA200)を用いて、30℃から350℃までの加熱減量を求め、その量を揮発成分の含有量とする。
続いて本発明のフィルムの製造条件に関して説明する。
本発明において、樹脂と安定剤は溶融する前に混合機等により混合しておくことが好ましいが、前述の可塑剤や紫外線吸収剤、マット剤に関しても溶融する前に混合機等を用いて混合しておくこともできる。混合機としては、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、一般的な混合機を用いることができる。
本発明においては、材料を混合した後に押出し機を用いて直接製膜する方法以外に、一旦、ペレット化した後、ペレットを押出し機で溶融して製膜することも可能である。また、融点の異なる複数の材料が混合された系においては、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦おこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機に投入して製膜することも可能である。熱分解しやすい樹脂や添加剤を使用する場合においては、樹脂の溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
本発明において、フィルム製膜に用いる押出し機は単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。材料からペレットを作成せずに直接製膜する場合では適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより適度の混練が得られ製膜が可能となる。また、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を作製する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。
押出し機内および押出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出し機内の樹脂の溶融温度は樹脂の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には成形材料のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg以上、Tg+100℃以下の範囲であることが好ましい。更に好ましくは溶融温度はTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。押出し時の溶融粘度は10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出し機内での樹脂の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、より好ましくは3分以内、最もこのましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出し機のスクリューの形状や回転数等は、樹脂の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機でのせん断速度は、好ましくは1/秒〜10000/秒、より好ましくは5/秒〜1000/秒、もっとも好ましくは10/秒〜100/秒である。
ダイはシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。ダイの材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどがあげられる。
ダイスリップ部の好ましい材質は、ダイと同様である。また、リップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
本発明において、ダイから押出された材料は、冷却ロールにて冷却、表面矯正される。ダイから押出された材料が最初に接触する冷却ロールを第1冷却ロールとすると、材料がダイから第1冷却ロールに接触するまでの時間は短い方が好ましく、10秒以内、好ましくは5秒以内、最も好ましくは2秒以内である。また、ダイから第1冷却ロールまでの距離は短い方が好ましい。好ましくは50cm以下、より好ましくは20cm以下である。ダイから第1冷却ロールまでの距離または到達時間を短くする目的は、ダイから出たフィルムの温度がガラス転移点以下に冷却される前にロールに接触させてフィルム表面の凸凹を矯正させるためである。ダイから出たフィルムがガラス転移点以下で第1ロールと接触すると、ダイで形成されたダイラインや厚みムラなどを矯正しにくくなる。
本発明において、ダイからポリマーが流出する際、昇華物等によるダイや冷却ロールの汚染を防ぐため、ダイ付近に吸引装置をつけることが好ましい。吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱するなどの処置を施すことが必要である。また、吸引圧が大きすぎると段ムラなどフィルム品質に影響を及ぼす、小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
本発明において、フィルムと冷却ロールは密着することが好ましい。フィルムと冷却ロールを密着させる方法としては、フィルムをガラス転移温度以上に保つこと、タッチロールを用いて押し付けることなどがあげられる。また、フィルムを冷却ロールから剥離するときにフィルム膜が延伸しないように張力、冷却ロール温度を制御することが必要である。フィルムが冷却ロールから剥がれるときのフィルム温度はガラス転移温度以下であることが好ましい。冷却ロールは1本以上であれば良いが、フィルムの両面に対して平滑性を高めるために2本以上とし、両面とも冷却ロールに接触させることが好ましい。また、冷却ロールには、クリーニングロール等の清掃設備を付与することも可能である。