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JP2007012745A - 圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents

圧粉磁心およびその製造方法 Download PDF

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JP2007012745A
JP2007012745A JP2005189382A JP2005189382A JP2007012745A JP 2007012745 A JP2007012745 A JP 2007012745A JP 2005189382 A JP2005189382 A JP 2005189382A JP 2005189382 A JP2005189382 A JP 2005189382A JP 2007012745 A JP2007012745 A JP 2007012745A
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佐藤  淳
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Abstract

【課題】 印加される磁場の周波数に関係なく磁気特性を向上することができ、かつ機械的強度を向上することのできる圧粉磁心及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 圧粉磁心は、Feを主成分とする金属磁性粒子10aと、金属磁性粒子10aを被覆する絶縁被膜20aとを有し、粒径が50μm以上150μm以下である複合磁性粒子30aと、Feを主成分とする金属磁性粒子10bと、金属磁性粒子を被覆する絶縁被膜20bとを有し、粒径が250μm以上350μm以下である複合磁性粒子30bとを備えている。複合磁性粒子の総数に対する複合磁性粒子30aおよび複合磁性粒子30bを合わせた数の割合は80%以上である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧粉磁心およびその製造方法に関し、より特定的には、印加される磁場の周波数に関係なく磁気特性を向上することができ、かつ機械的強度を向上することのできる圧粉磁心およびその製造方法に関する。
近年、電磁弁、モーターまたは電源回路などを備える電気機器には、小型化、高効率化および高出力化が強く求められている。このような要求に応える手段として、これら電気機器の作動周波数の高周波化が有効であり、電磁弁やモーターなどでは数百Hzから数kHz、電源回路では数十kHzから数百kHzという水準で高周波化が進んでいる。
圧粉磁心は、比較的高い磁束密度を有し、かつ鉄損が低いことが知られている。このため、電磁弁やモーターなどの電気機器の鉄心材料として広く用いられている。圧粉磁心は、金属磁性粒子に絶縁被膜を形成した形態の複数の複合磁性粒子により構成されている。
圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、ヒステリシス損失と渦電流損失との和で表される。ヒステリシス損失は、軟磁性材料の磁束密度を変化させるために必要なエネルギーによって生じるエネルギー損失であり、渦電流損失は、主として軟磁性材料を構成する金属磁性粒子間を流れる渦電流によって生じるエネルギー損失である。ヒステリシス損失は動作周波数に比例し、渦電流損失は動作周波数の2乗に比例する。そのため、ヒステリシス損失は主に低周波領域において支配的になり、渦電流損失は主に高周波領域において支配的になる。圧粉磁心にはこの鉄損の発生を小さくする磁気的特性、すなわち高い交流磁気特性が求められる。
圧粉磁心の鉄損は、印加される磁場の周波数および圧粉磁心を構成する複合磁性粒子の粒径の組合せによって変化することが知られている。高周波数(たとえば800Hz〜10kHz)の磁場の下で圧粉磁心を使用する場合には、複合磁性粒子の粒径が小さい(たとえば50〜150μm)方が低鉄損となる。また、低周波数(たとえば50Hz〜800Hz)の磁場の下で圧粉磁心を使用する場合には、複合磁性粒子の粒径が大きい(たとえば100〜300μm)方が低鉄損となる。このため、低周波数の磁場の下で圧粉磁心を使用する場合には、粒径の大きい複合磁性粒子の圧粉磁心が選択される。
なお、圧粉磁心に関する技術は、たとえば特開2004−273564号公報(特許文献1)などに開示されている。特許文献1では、粒径50μm〜200μmの大粒径、粒径20〜50μmの中粒径、および粒径20μm以下の小粒径と少なくとも3水準の粒径を有する軟磁性粉末の混合粉末を用いてなり、相対密度が83%以上である圧粉磁心が開示されている。また、その圧粉磁心の軟磁性粉末は、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物からなっており、かつ圧粉磁心のアスペクト比は1.1〜2.0となっている。
特開2004−273564号公報
上述のように、従来において圧粉磁心の鉄損を低減するためには、印加される磁場の周波数に適した粒径の複合磁性粒子を選ぶ必要があった。このため、印加される磁場の周波数に関係なく圧粉磁心の磁気特性を向上することはできないという問題があった。
また、圧粉磁心は、軟磁性材料の加圧成形の際に複合磁性粒子が塑性変形し、複合磁性粒子同士が絡み合うことにより、機械的強度を発生する。しかし、複合磁性粒子の粒径が大きい場合には粒子同士の間に隙間が生じやすいので、圧粉磁心の密度が低く、複合磁性粒子同士が絡み合いにくかった。その結果、複合磁性粒子の粒径が大きいと圧粉磁心の機械的強度が低下するという問題があった。圧粉磁心の機械的強度が低いと、圧粉磁心を切削加工やドリル穴開けする際や、圧粉磁心にコイルを巻きつける際などに、破損や欠落が起こりやすい。
したがって、本発明の目的は、印加される磁場の周波数に関係なく磁気特性を向上することができ、かつ機械的強度を向上することのできる圧粉磁心およびその製造方法を提供することである。
本発明の圧粉磁心は、Fe(鉄)を主成分とする第1金属磁性粒子と、第1金属磁性粒子を被覆する第1絶縁被膜とを有し、粒径が50μm以上150μm以下である第1複合磁性粒子と、Feを主成分とする第2金属磁性粒子と、第2金属磁性粒子を被覆する第2絶縁被膜とを有し、粒径が250μm以上350μm以下である第2複合磁性粒子とを備えている。複合磁性粒子の総数に対する第1および前記第2複合磁性粒子を合わせた数の割合は80%以上である。
本発明の圧粉磁心の製造方法は、粒径が50μm以上150μm以下であり、かつFeを主成分とする第1金属磁性粒子に第1絶縁被膜を形成する第1形成工程と、粒径が250μm以上350μm以下であり、かつFeを主成分とする第2金属磁性粒子に第2絶縁被膜を形成する第2形成工程と、金属磁性粒子の総数に対する第1および第2金属磁性粒子を合わせた数の割合が80%以上となるように混合する混合工程とを備えている。
本発明の圧粉磁心およびその製造方法によれば、小さい粒径の第1複合磁性粒子を圧粉磁心が備えているので、大きい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて高周波数(たとえば800Hz〜10kHz)の磁場の下での鉄損を低減することができる。また、大きい粒径の第1複合磁性粒子を圧粉磁心が備えているので、小さい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて低周波数(たとえば50Hz〜800Hz)の磁場の下での鉄損を低減することができる。したがって、印加される磁場の周波数に関係なく磁気特性を向上することができる。
また、大きい粒径の第1複合磁性粒子と、小さい粒径の第2複合磁性粒子とによって圧粉磁心が構成されるので、大きい粒径の第2複合磁性粒子同士の隙間に小さい粒径の第1複合磁性粒子が入り込み、圧粉磁心の密度を向上することができる。したがって、複合磁性粒子同士が絡み合い易くなり、大きい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて機械的強度を向上することができる。
また、複合磁性粒子(金属磁性粒子)の総数に対する第1および前記第2複合磁性粒子(第1および第2金属磁性粒子)を合わせた数の割合を80%以上とすることにより、第1および前記第2複合磁性粒子(第1および第2金属磁性粒子)の割合を高めることができ、第1および前記第2複合磁性粒子(第1および第2金属磁性粒子)による上記効果を得ることができる。
本発明の圧粉磁心において好ましくは、第1金属磁性粒子および第2金属磁性粒子は、いずれも純鉄、Fe(鉄)−Si(シリコン)系合金、Fe−N(窒素)系合金、Fe−Ni(ニッケル)系合金、Fe−C(炭素)系合金、Fe−B(ホウ素)系合金、Fe−Co(コバルト)系合金、Fe−P(リン)系合金、Fe−Ni−Co系合金、Fe−Cr(クロム)系合金、およびFe−Al(アルミニウム)−Si系合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上よりなっている。これにより、圧粉磁心における飽和磁束密度などの磁気的特性を向上することができる。
本発明の圧粉磁心において好ましくは、樹脂は、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、およびフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上よりなっている。
これらの有機物は、複合磁性粒子同士を強固に接合するとともに、軟磁性材料の加圧成形時に潤滑剤として機能し、複合磁性粒子同士が擦れ合って絶縁被膜が破壊されることを防止する。このため、圧粉磁心の強度を向上させ、さらに、渦電流損を低減させることができる。また、金属磁性粒子は絶縁被膜によって覆われているため、これらの樹脂に含まれる酸素または炭素が金属磁性粒子内に拡散することも防止できる。
本発明の圧粉磁心の製造方法において好ましくは、上記第1形成工程および上記第2形成工程の後で、上記混合工程を行なう。
これにより、上記第1形成工程および上記第2形成工程が別工程で行なわれるので、第1および第2金属磁性粒子の各々に対して最適な条件で第1および第2絶縁被膜の各々を形成することができる。
なお、本明細書において「Feを主成分とする」とは、Fe(鉄)の割合が50質量%以上であることを意味している。また、「純鉄」とは、Feの割合が99.9質量%以上であることを意味している。
本発明の圧粉磁心およびその製造方法に拠れば、印加される磁場の周波数に関係なく磁気特性を向上することができ、かつ機械的強度を向上することができる。
以下、本発明の一実施の形態について図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における圧粉磁心の拡大断面図である。図1に示すように、本実施の形態における圧粉磁心は、粒径が50μm以上150μm以下の範囲にある複合磁性粒子30aと、粒径が250μm以上350μm以下の範囲にある複合磁性粒子30bとを含んでいる。複合磁性粒子30a同士の隙間に複合磁性粒子30bが入り込んでいる。複合磁性粒子30aはFeを主成分とする金属磁性粒子10aと、金属磁性粒子10aを被覆する絶縁被膜20aとを有している。また、複合磁性粒子30bはFeを主成分とする金属磁性粒子10bと、金属磁性粒子10bを被覆する絶縁被膜20bとを有している。
なお、複合磁性粒子30の各々の間には有機物40が介在していてもよい。複数の複合磁性粒子30の各々は、有機物40や、複合磁性粒子30aおよび30bが有する凹凸の噛み合わせなどによって接合されている。なお、複合磁性粒子30aおよび30bの他に、複合磁性粒子30aおよび30bの粒径範囲外の粒径を有する複合磁性粒子が圧粉磁心に含まれていてもよい。
図2は、本発明の一実施の形態における圧粉磁心を構成する複合磁性粒子の粒径分布を示す図である。図2を参照して、本実施の形態の圧粉磁心において、複合磁性粒子の粒径分布は2つのピークを有している。1つのピークは50μm以上150μm以下の範囲にあり、もう1つのピークは250μm以上350μm以下の範囲にある。そして、圧粉磁心を構成する複合磁性粒子の総数を総数Nとする。粒径が50μm以上150μm以下である複合磁性粒子、つまり複合磁性粒子30aの数をN1とする。粒径が250μm以上350μm以下である複合磁性粒子、つまり複合磁性粒子30bの数をN2する。本実施の形態の圧粉磁心においては、複合磁性粒子の総数Nに対する複合磁性粒子30aおよび複合磁性粒子30bを合わせた数(N1+N2)の割合は80%以上となっている。複合磁性粒子の平均粒径はたとえば250μmである。
ここで、複合磁性粒子の粒径は以下の方法により規定される。図1に相当する圧粉磁心の断面を光学的手法(たとえば光学顕微鏡による観察)によって観察する。そして、一定の領域に存在する複合磁性粒子の各々の形状を特定し、平面的に見た場合の複合磁性粒子の表面積Sを測定する。そして表面積Sから以下の式(1)を用いて算出される。
複合磁性粒子の粒径=2×{表面積S/π}1/2 ・・・(1)
図1を参照して、金属磁性粒子10aおよび10bは、たとえばFe、Fe−Si系合金、Fe−N(窒素)系合金、Fe−Ni(ニッケル)系合金、Fe−C(炭素)系合金、Fe−B(ホウ素)系合金、Fe−Co(コバルト)系合金、Fe−P系合金、Fe−Ni−Co系合金、Fe−Cr(クロム)系合金あるいはFe−Al−Si系合金などから形成されている。金属磁性粒子10はFeを主成分としていればよく、純鉄であることが好ましい。
絶縁被膜20aおよび20bの各々は、金属磁性粒子10aおよび10bの各々の間の絶縁層として機能する。金属磁性粒子10aおよび10bの各々を絶縁被膜20aおよび20bの各々で覆うことによって、圧粉磁心の電気抵抗率ρを大きくすることができる。これにより、金属磁性粒子10aおよび10bの各々の間に渦電流が流れるのを抑制して、圧粉磁心の渦電流損を低減させることができる。絶縁被膜20aおよび20bは、たとえばリン酸アルミニウム化合物、リン酸マンガン化合物、またはリン酸亜鉛化合物などよりなっている。なお、絶縁被膜20aと絶縁被膜20bとは同一の材料よりなっていてもよいし、互いに異なる材料よりなっていてもよい。
絶縁被膜20aおよび20bの各々の厚みは、0.005μm以上20μm以下であることが好ましい。絶縁被膜20aおよび20bの各々の厚みを0.005μm以上とすることによって、渦電流によるエネルギー損失を効果的に抑制することができる。また、絶縁被膜20aおよび20bの各々の厚みを20μm以下とすることによって、圧粉磁心に占める絶縁被膜の割合が大きくなりすぎない。このため、圧粉磁心の磁束密度が著しく低下することを防止できる。なお、絶縁被膜20aと絶縁被膜20bとは、同一の膜厚であってもよいし、互いに異なる膜厚であってもよい。
有機物40は、複合磁性粒子30aおよび30bの各々の結合を強化し、圧粉磁心の機械的強度を向上する役割を果たしている。有機物40は少なくとも炭素を含んでおり、たとえばポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、またはフッ素樹脂などよりなっている。
続いて、図1に示す圧粉磁心を製造する方法について説明する。図3は、本発明の一実施の形態における圧粉磁心の製造方法を工程順に示す図である。
図3を参照して、まず、微粒の金属磁性粒子により構成される微粒粉末と、粗粒の金属磁性粒子により構成される粗粒粉末とをそれぞれ準備する(ステップ1)。微粒粉末としては、粒径が50μm以上150μm以下である金属磁性粒子10aが80%以上含まれている粉末が準備される。また粗粒粉末としては、粒径が250μm以上350μm以下である金属磁性粒子10bが80%以上含まれている粉末が準備される。
ここで、粒径が50μm以上150μm以下の金属磁性粒子10aを用いることにより、圧粉磁心における複合磁性材料30aの各々の粒径を50μm以上150μm以下とすることができる。これは、絶縁被膜20aの膜厚が金属磁性粒子10aの粒径に比べて無視できる程度に薄く、圧粉磁心における複合磁性粒子30aの粒径と金属磁性粒子10aの粒径とはほぼ同一になるためであり、かつ加圧成形の際に複合磁性粒子30aの粒径はほとんど変化しないためである。同様の理由により、粒径が250μm以上350μm以下の金属磁性粒子10bを用いることにより、圧粉磁心における複合磁性材料30bの各々の粒径を250μm以上350μm以下とすることができる。
次に、微粒粉末および粗粒粉末の各々を400℃以上900℃未満の温度で熱処理する(ステップS2)。熱処理の温度は、700℃以上900℃未満であることがさらに好ましい。熱処理前の金属磁性粒子の内部には、多数の歪み(転位、欠陥)が存在している。そこで、金属磁性粒子に熱処理を実施することによって、この歪みを低減させることができる。なお、この熱処理は省略されてもよい。
次に、微粒粉末を構成する金属磁性粒子(金属磁性粒子10a)の各々の表面に絶縁被膜20aを形成し、粗粒粉末を構成する金属磁性粒子(金属磁性粒子10b)の各々の表面に絶縁被膜20bを形成する(ステップS3)。その結果、複合磁性粒子30aおよび複合磁性粒子30bの各々が得られる。絶縁被膜は、金属磁性粒子をリン酸塩化成処理することによって形成することができる。リン酸塩化成処理によって、たとえばリンと鉄とを含むリン酸鉄の他、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、またはリン酸アルミニウムなどよりなる絶縁被膜が形成される。
また、絶縁被膜20aまたは20bとして、酸化物を含有する絶縁被膜を形成してもよい。この酸化物を含有する絶縁被膜としては、酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムなどの酸化物絶縁体を使用することができる。
次に、微粒粉末と粗粒粉末とを混合する(ステップS4)。その結果、複合磁性粒子30aと複合磁性粒子30bとにより構成される軟磁性材料が得られる。ここで、微粒粉末には金属磁性粒子10aが80%以上含まれており、粗粒粉末には金属磁性粒子10bが80%以上含まれているので、得られる軟磁性材料においては、金属磁性粒子の総数に対する金属磁性粒子10aと金属磁性粒子10bとを合わせた数の割合が80%以上となる。
なお、混合方法には特に制限はなく、たとえばメカニカルアロイング法、振動ボールミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン、共沈法、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法(PVD法)、めっき法、スパッタリング法、蒸着法またはゾル−ゲル法などのいずれを使用することも可能である。なお、上記の混合の際に有機物40をさらに加えてもよい。
次に、得られた軟磁性材料の粉末を金型に入れ、たとえば390(MPa)から1500(MPa)までの圧力で加圧成形する(ステップS5)。これにより、軟磁性材料が圧粉成形された成形体が得られる。なお、加圧成形する雰囲気は、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とすることが好ましい。この場合、大気中の酸素によって混合粉末が酸化されるのを抑制することができる。
次に、窒素ガス雰囲気で、加圧成形によって得られた成形体を300℃以上900℃以下の温度で熱処理する(ステップS6)。加圧成形を経た圧粉成形体の内部には歪や転位が多数発生しているので、熱処理によりこのような歪や転位を取り除くことができる。以上に説明した工程により、図1に示す圧粉磁心が完成する。
なお、本実施の形態では、絶縁被膜20aおよび20bを形成し(ステップS3)た後で、微粒粉末と粗粒粉末とを混合する(ステップS4)場合について示した。しかし、本発明はこのような場合の他、微粒粉末と粗粒粉末とを混合した後で絶縁被膜20aおよび20bを同時に形成してもよい。
本実施の形態の圧粉磁心およびその製造方法によれば、小さい粒径の複合磁性粒子30aを圧粉磁心が備えているので、大きい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて高周波数(たとえば800Hz〜10kHz)の磁場の下での鉄損を低減することができる。また、大きい粒径の複合磁性粒子30bを圧粉磁心が備えているので、小さい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて低周波数(たとえば50Hz〜800Hz)の磁場の下での鉄損を低減することができる。したがって、印加される磁場の周波数に関係なく磁気特性を向上することができる。
また、互いに粒径の異なる複合磁性粒子30aおよび30bによって圧粉磁心が構成されるので、大きい粒径の複合磁性粒子30a同士の隙間に小さい粒径の複合磁性粒子30aが入り込み、圧粉磁心の密度を向上することができる。したがって、複合磁性粒子同士が絡み合い易くなり、大きい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて機械的強度を向上することができる。
また、複合磁性粒子(金属磁性粒子)の総数Nに対する複合磁性粒子30aおよび30b(金属磁性粒子10aおよび10b)を合わせた数の割合を80%以上とすることにより、複合磁性粒子30aおよび30b(金属磁性粒子10aおよび10b)の割合を高めることができ、複合磁性粒子30aおよび30b(金属磁性粒子10aおよび10b)による上記効果を得ることができる。
さらに、用途に合わせて複合磁性粒子30aと複合磁性粒子30bとの混合割合をコントロールすることで、適切な磁気特性および機械的強度を有する圧粉磁心を得ることができる。
本実施の形態の圧粉磁心において、金属磁性粒子10aおよび10bはいずれも純鉄よりなっていることが好ましい。これにより、圧粉磁心における飽和磁束密度などの磁気的特性を向上することができる。
上記製造方法においては、絶縁被膜20aおよび20bを形成した後で、金属磁性粒子10aおよび10bを混合することが好ましい。これにより、上記第1形成工程および上記第2形成工程が別工程で行なわれるので、第1および第2金属磁性粒子の各々に対して最適な条件で第1および第2絶縁被膜の各々を形成することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、試料A1〜A5の圧粉磁心の各々を製造し、機械的強度および磁気特性を調べた。試料A1〜A5の圧粉磁心の各々は以下の方法により作製された。
始めに、純度が99.98%以上の純鉄よりなる金属磁性粒子を分級して、粒径が50μm以上150μm以下である金属磁性粒子が80%以上含まれており、かつ平均粒径が約100μmの微粒粉末を準備した。同様に、粒径が250μm以上350μm以下である金属磁性粒子が80%以上含まれており、かつ平均粒径が約300μmの粗粒粉末を準備した。次に、微粒粉末および粗粒粉末の各々を水素気流中において600℃の温度で熱処理した。続いて、微粒粉末および粗粒粉末の各々をリン酸塩水溶液中に浸漬し、絶縁被膜を形成した。これにより複合磁性粒子を得た。次に、粗粒粉末に対する微粒粉末の配合割合をそれぞれ0質量%(粗粒粉末のみ)、20質量%、50質量%、80質量%、および100質量%(微粒粉末のみ)と変化させて、粗粒粉末と微粒粉末とを混合した。これにより、軟磁性材料を得た。
次に、得られた軟磁性材料を加圧成形し、図4に示す成形体50を作製した。成形体50は、高さd1=10mm、奥行きd2=10mm、幅d3=55mmの直方体とした。加圧成形は10ton/cm2(1000MPa)のプレス面圧で行なわれた。続いて、成形体50を熱処理した。以上により、試料A1〜A5の圧粉磁心の各々を製造した。試料2〜4が本発明品であり、試料1および試料5が比較品である。
続いて、図5に示す方法により3点曲げ試験を行ない、試料A1〜A5の圧粉磁心の3点曲げ強度を測定した。具体的には、始めに2つの支持部45で下方から圧粉磁心50を支持した。支持部45のスパンd4を40mmとした。そして、2つの支持部45の中間部に上部より荷重を加え、圧粉磁心50が折れたときの圧力を測定した。
続いて、BHカーブトレーサを用いて試料A1〜A5の圧粉磁心の鉄損を測定した。こ鉄損の測定は、10kG(=1T(テスラ))の励起磁束密度で行なわれ、800Hz(高周波数)および50Hz(低周波数)の2つの測定周波数で行なわれた。
試料A1〜A5の圧粉磁心の各々の3点曲げ強度および鉄損を表1に示す。また、微粒粉末の配合割合と3点曲げ強度との関係を図6に示し、微粒粉末の配合割合と高周波数の磁場の下での鉄損との関係を図7に示し、微粒粉末の配合割合と低周波数の磁場の下での鉄損との関係を図8に示す。
Figure 2007012745
表1および図6を参照して、粗粒粉末のみから製造された試料A1の3点曲げ強度は117.3MPaであったのに対して、粗粒粉末と微粒粉末とから製造された試料A2〜A4の各々の3点曲げ強度は122.4MPa〜128.1MPaであった。言い換えれば、微粒粉末の配合割合が増加するに従って、圧粉磁心の3点曲げ強度が向上した。特に微粒粉末を50質量%配合した試料3では、試料1に比べて3点曲げ強度が約6%向上した。この結果から、本発明の圧粉磁心によれば、粒径の大きい複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて機械的強度を向上できることが分かる。
また、表1および図7を参照して、粗粒粉末のみから製造された試料A1の高周波数での鉄損W10/800は911.6W/kgであったのに対して、粗粒粉末と微粒粉末とから製造された試料A2〜A4の各々の高周波数での鉄損W10/800は870W/kg〜840W/kgであった。言い換えれば、微粒粉末の配合割合が増加するに従って、圧粉磁心の高周波数での鉄損W10/800が低減された。特に微粒粉末を50質量%配合した試料3では、試料1に比べて鉄損が約6%低減された。この結果から、本発明の圧粉磁心によれば、大きい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて高周波数での鉄損を低減できることが分かる。
さらに、表1および図8を参照して、微粒粉末のみから製造された試料A5の低周波数での鉄損W10/50は16.01W/kgであったのに対して、粗粒粉末と微粒粉末とから製造された試料A2〜A4の各々の低周波数での鉄損W10/50は14.72W/kg〜15.1W/kgであった。言い換えれば、微粒粉末の配合割合が減少するに従って、圧粉磁心の低周波数での鉄損W10/50が低減された。この結果から、本発明の圧粉磁心によれば、小さい粒径の複合磁性粒子のみを用いた圧粉磁心に比べて低周波数での鉄損を低減できることが分かる。
以上に開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
本発明の圧粉磁心は、たとえば、モーターコア、電磁弁、リアクトルもしくは電磁部品一般に利用される。
本発明の一実施の形態における圧粉磁心の拡大断面図である。 本発明の一実施の形態における圧粉磁心を構成する複合磁性粒子の粒径分布を示す図である。 本発明の一実施の形態における圧粉磁心の製造方法を工程順に示す図である。 成形体の構成を示す斜視図である。 3点曲げ試験を説明するための図である。 微粒粉末の配合割合と3点曲げ強度との関係を示す図である。 微粒粉末の配合割合と高周波数の磁場の下での鉄損との関係を示す図である。 微粒粉末の配合割合と低周波数の磁場の下での鉄損との関係を示す図である。
符号の説明
10a,10b 金属磁性粒子、20a,20b 絶縁被膜、30a,30b 複合磁性粒子、40 有機物、45 支持部、50 成形体。

Claims (5)

  1. Feを主成分とする第1金属磁性粒子と、前記第1金属磁性粒子を被覆する第1絶縁被膜とを有し、粒径が50μm以上150μm以下である第1複合磁性粒子と、
    Feを主成分とする第2金属磁性粒子と、前記第2金属磁性粒子を被覆する第2絶縁被膜とを有し、粒径が250μm以上350μm以下である第2複合磁性粒子とを備え、
    複合磁性粒子の総数に対する前記第1および前記第2複合磁性粒子を合わせた数の割合は80%以上である、圧粉磁心。
  2. 前記第1金属磁性粒子および前記第2金属磁性粒子は、いずれも純鉄、Fe−Si系合金、Fe−N系合金、Fe−Ni系合金、Fe−C系合金、Fe−B系合金、Fe−Co系合金、Fe−P系合金、Fe−Ni−Co系合金、Fe−Cr系合金、およびFe−Al−Si系合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上よりなる、請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記樹脂は、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、およびフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上よりなる、請求項1または2に記載の圧粉磁心。
  4. 粒径が50μm以上150μm以下であり、かつFeを主成分とする第1金属磁性粒子に第1絶縁被膜を形成する第1形成工程と、
    粒径が250μm以上350μm以下であり、かつFeを主成分とする第2金属磁性粒子に第2絶縁被膜を形成する第2形成工程と、
    金属磁性粒子の総数に対する前記第1および前記第2金属磁性粒子を合わせた数の割合が80%以上となるように混合する混合工程とを備える、圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記第1形成工程および前記第2形成工程の後で、前記混合工程を行なう、請求項4に記載の圧粉磁心の製造方法。
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