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JP2007091799A - 熱硬化性樹脂組成物、及びその利用 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、及びその利用 Download PDF

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JP2007091799A
JP2007091799A JP2005279787A JP2005279787A JP2007091799A JP 2007091799 A JP2007091799 A JP 2007091799A JP 2005279787 A JP2005279787 A JP 2005279787A JP 2005279787 A JP2005279787 A JP 2005279787A JP 2007091799 A JP2007091799 A JP 2007091799A
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thermosetting resin
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Shigeru Tanaka
田中  滋
Masaru Nishinaka
賢 西中
Taku Ito
卓 伊藤
Kanji Shimooosako
寛司 下大迫
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Kaneka Corp
Original Assignee
Kaneka Corp
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Abstract

【課題】 接着性、加工性、耐熱性に優れ、さらに、GHz帯域での誘電特性に優れた、熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いてなる積層体、回路基板を提供する。
【解決手段】 特定の構造を有するイミドオリゴマーを少なくとも1種含む(A)イミドオリゴマー成分と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む(B)エポキシ樹脂成分を含有し、(B)エポキシ樹脂成分に少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板等の回路基板の製造等に用いられる、熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いてなる、樹脂溶液、プリプレグ、積層体、回路基板に関するものであり、より詳細には、エポキシ樹脂と反応し得る基を有するイミドオリゴマーと液状エポキシ樹脂を含んでなる熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いてなる樹脂溶液、プリプレグ、積層体、回路基板に関するものである。
電子機器における情報処理能力の向上を図るために、近年、電子機器に用いられる配線基板上の回路を伝達する電気信号の高周波化が進められている。そのため、電気信号が高周波化された場合にも、配線(回路)基板の電気的信頼性を保ち、回路での電気信号の伝達速度の低下や電気信号の損失を抑制することが望まれる。
ところで、上記回路基板上には、通常、該配線基板や回路を保護するための保護膜や、多層構造の配線基板における各層間の絶縁性を確保するための層間絶縁膜等の絶縁層が形成される。上記保護膜や層間絶縁膜等の絶縁層は、配線基板上に設けられるため、絶縁性に加えて、配線基板に接着するための接着性も求められている。
特に、ビルドアップ回路基板等の様に、積層により多層構造の配線基板を製造する場合には、上記層間絶縁層によって各層同士が接着されて固定されると同時に、層間絶縁層の材料が回路配線の線間を埋めて配線が固定される。そのため、層間絶縁膜には、基板等に対する優れた接着力とともに回路配線の線間を埋められる程度の流動性が求められることになる。従って、上記保護膜や層間絶縁膜等の絶縁層は、接着性、樹脂流動性を有する接着材料を用いて形成される。
また、電気信号の高周波化によって電子機器の情報処理能力を向上するためには、接着材料を用いて絶縁層を形成した場合にも、GHz(ギガヘルツ)帯域にて、配線基板の高い信頼性を得ることができるものであり、さらに、電気信号の伝達に悪影響を及ぼさないものであることが望ましい。
従来、配線基板に用いられる接着材料としては、例えば、エポキシ系接着材料や熱可塑性ポリイミド系接着材料が用いられている。上記エポキシ系接着材料は、被着体同士の低温・低圧条件下での貼り合わせや回路配線の線間埋め込みが可能である等の加工性に優れ、被着体との接着性にも優れている。また、上記熱可塑性ポリイミド系接着材料は、誘電率や誘電正接がエポキシ樹脂に比べ低く高周波化に対応でき、また、体積抵抗率が低い等の絶縁性や、熱膨張が小さい、熱分解温度が高い等の耐熱性等にも優れている。
特許文献1には、上記エポキシ樹脂とポリイミド樹脂を混合した材料として、所定の範囲内のガラス転移温度を有するポリイミド樹脂と、エポキシ化合物と、該エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物とを混合してなるフィルム接着剤を用いることにより、低温短時間での被着体同士の接着を可能とするとともに、高温時の耐熱信頼性が得られることが記載されている。
一方、特許文献2には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂系硬化剤、特定のイミドオリゴマー、無機充填剤を含む封止用エポキシ樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献3には、特定の繰り返し単位構造を含むイミドオリゴマー、エポキシ樹脂、及び、エポキシ硬化剤を含有するハイブリット接着剤組成物が記載されている。
特開平08−27430号公報(公開日:平成8(1996)年1月30日) 特開平08−41172号公報(公開日:平成8(1996)年2月13日) 特表平2004−502859号公報(公表日:平成16(2004)年1月29日)
しかしながら、上記エポキシ系接着材料が硬化してなるエポキシ系樹脂は、GHz帯域における誘電率が4以上であり、誘電正接が0.02以上であるため、良好な誘電特性が得られないという問題がある。
これに対し、上記熱可塑性ポリイミド系接着材料が硬化してなるポリイミド系樹脂は、耐熱性、絶縁性に優れている。その一方で、熱可塑性ポリイミド系接着材料を用いて被着体同士を接着させるためには、高温・高圧条件下にて被着体同士を貼り合せる必要があり、加工性に問題がある。
また、特許文献1に記載のフィルム接着剤は、低温短時間での貼り合わせ加工が可能であり、高温時の耐熱信頼性には優れているが、配線回路の線間の埋め込み性(樹脂流動性)や誘電特性については記載されていない。特許文献1に記載のフィルム接着剤に含まれるエポキシ化合物は、フィルム接着剤の軟化温度を下げて低温加工性を向上させる一方、該エポキシ化合物を多量に含有すると、誘電率や誘電正接が高くなり、誘電特性を悪化させる原因になるという問題がある。
それゆえ、電気信号の高周波化によって電子機器の情報処理能力を向上するためには、接着性や加工性、樹脂流動性、耐熱性に優れ、GHz帯域においても、低誘電率かつ低誘電正接を示す誘電特性に優れた絶縁層を形成し得る接着材料の開発が期待される。
一方、特許文献2は、本発明の特定の構造を有するイミドオリゴマーについて記載がなく、また、半導体などの電子部品を封止するのに用いるための樹脂組成物であり、接着性、流動性、誘電特性などの特性については記載がない。
また、特許文献3は、本発明の特定構造を有するイミドオリゴマーについて記載が無く、また、フリップチップ接着剤、異方性導電性接着剤などの電子工業における接着剤や電子部品用封止剤などに用いるための樹脂組成物であり、誘電特性やCTE(線膨張係数)等の特性については記載がない。
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板等の回路基板の製造等に好適に用いることができる、接着性、加工性、耐熱性に優れ、さらに、樹脂流動性とGHz帯域での誘電特性に優れた、熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いてなる樹脂溶液、プリプレグ、積層体、回路基板を提供することにある。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂と反応し得る基を有するイミドオリゴマーとエポキシ樹脂を必須成分としてなる熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、回路基板等の被着体に対する接着性、熱膨張や熱分解に関する耐熱性に優れているとともに、回路を埋め込むために必要な樹脂の流動性が向上すること、エポキシ樹脂成分として少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を用いることによって更に向上することや、熱硬化性樹脂組成物が硬化して得られる硬化樹脂のGHz帯域における誘電率及び誘電正接が低く、誘電特性にも優れ、また、熱膨張や熱分解に関する耐熱性にも優れた熱硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記課題を解決するために、少なくとも一般式(1)
Figure 2007091799
(式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、a、bは、それぞれ独立して0以上15以下の整数であり、a+bは0以上15以下の整数を示す。また、(1)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)
または一般式(2)
Figure 2007091799
(式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、cは、1以上15以下の整数、dは、0以上15以下の整数を示し、c+dは、1以上15以下の整数を示す。また、(2)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)で表されるイミドオリゴマーのうち1種を含む(A)イミドオリゴマー成分と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む(B)エポキシ樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、上記(B)エポキシ樹脂成分に少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を含有していることを特徴としている。
また、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含む(C)ポリイミド樹脂成分を含むことが好ましい。
上記の構成によれば、回路を埋め込むために必要な流動性に優れ、上記熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂は、GHz帯域においても、低い誘電率及び低い誘電正接を示すので、優れた誘電特性を得ることができる。具体的には、上記熱硬化性樹脂組成物を150℃〜250℃の温度条件下で1時間〜5時間加熱することによって得られる硬化樹脂の、1GHz〜10GHzの周波数帯域における誘電率を3.3以下とし、また誘電正接を0.020以下とすることができる。GHz帯域における誘電率が3.3以下であり、誘電正接が0.020以下であれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、回路基板の保護材料や層間絶縁材料として用いた場合にも、回路基板の電気的信頼性を確保し、回路基板上の、回路の信号伝達速度の低下や信号の損失を抑制することができる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱膨張係数が小さく、熱分解温度が高い等の耐熱性、該熱硬化性樹脂組成物と導体や回路基板等の被着体との接着性や、該熱硬化性樹脂組成物と導体や回路基板との貼り合わせ時の加工性等にも優れている。それゆえ、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板等の回路基板の製造等に好適に用いることができる。
このように、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の諸特性をバランスよく備えているため、回路基板の製造等に好適に用いることができるとともに、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる回路基板に対しても、良好な諸特性を付与することができる。
なお、上記(B)エポキシ樹脂成分に対する液状エポキシ樹脂成分の重量で表される重量混合比、液状エポキシ樹脂成分/(B)は、0.2以上であることが好ましい。
また、上記(A)イミドオリゴマー成分、(B)エポキシ樹脂成分と(C)ポリイミド樹脂成分との全樹脂合計重量に対する上記(C)ポリイミド樹脂成分の重量で表される重量混合比(C)/[(A)+(B)+(C)]は、0.05以上0.7以下の範囲内にあることが好ましい。
なお、上記(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基のモル数に対する、上記(A)イミドオリゴマー成分に含まれる活性水素基のモル数で表されるモル混合比(A)/(B)は、0.4以上2.0以下の範囲内であることが好ましい。
さらに、少なくとも一種の無機充填材を含む(D)無機充填材成分を含有することが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂組成物、あるいは、該熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂に対して、優れた誘電特性、流動性、耐熱性、接着性、加工性等の諸特性をバランスよく付与することができる。
また、本発明の樹脂溶液は、上記課題を解決するために、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解したことを特徴としている。
また、本発明のプリプレグは、上記熱硬化性樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材に塗工、含浸したことを特徴としている。
また、本発明の積層体は、上記の熱硬化性樹脂組成物によって形成された樹脂層を少なくとも1層含んでなることを特徴としている。
また、本発明の回路基板は、上記課題を解決するために、上記の熱硬化性樹脂組成物を有していることを特徴としている。
上記の樹脂溶液、プリプレグ、積層体及び回路基板は、上記の熱硬化性樹脂組成物を含んでなっている。そのため、該樹脂溶液、プリプレグ、積層体及び回路基板の、熱硬化性樹脂組成物によって形成される樹脂層に対して、誘電特性、流動性、耐熱性、接着性、加工性等の諸特性をバランスよく付与することができる。これにより、上記、樹脂溶液、プリプレグ、積層体及び回路基板を好適に製造することが可能になる。特に、積層体及び回路基板が回路等を有している場合、各回路の電気的信頼性を確保し、各回路における信号伝達速度の低下や信号の損失を抑制することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、以上のように、イミドオリゴマーとエポキシ樹脂を必須成分としてなるものであり、エポキシ樹脂成分には、少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を含有している。
これにより、回路を埋め込むために必要な流動性、回路基板等の被着体に対する接着性、低温での接着を可能とする加工性や取扱性、熱膨張や熱分解に関する耐熱性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、熱硬化性樹脂組成物が硬化して得られる硬化樹脂のGHz帯域における誘電率及び誘電正接が、従来のポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とからなる樹脂組成物よりも遥かに低く、誘電特性にも優れた、熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、従来の樹脂組成物に比べて、低温での接着が可能であり、加工性や取扱性に優れ、耐熱性や誘電特性にも優れているため、諸特性のバランスを備えてなる熱硬化性樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
それゆえ、GHz帯域での低誘電率や低誘電正接が要求されるフレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板や、積層体の製造に好適に用いることができるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、例えば、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板等の回路基板に使用され、該回路基板や回路基板上のパターン化された回路を保護する保護材料、あるいは、多層の回路基板にて各層間の絶縁性を確保するための層間絶縁材料として好適に用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも一般式(1)
Figure 2007091799
(式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、a、bは、それぞれ独立して0以上15以下の整数であり、a+bは0以上15以下の整数を示す。また、(1)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)
または一般式(2)
Figure 2007091799
(式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、cは、1以上15以下の整数、dは、0以上15以下の整数を示し、c+dは、1以上15以下の整数を示す。また、(2)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)で表されるイミドオリゴマーのうちの1種を含む(A)イミドオリゴマー成分と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む(B)エポキシ樹脂成分を必須成分とし、(B)エポキシ樹脂成分には、少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を含有している。
上記(B)エポキシ樹脂成分に含まれる液状樹脂の比率は、(B)エポキシ樹脂成分に対する液状エポキシ樹脂成分の重量で表される重量混合比、液状エポキシ樹脂成分/(B)にて、下限値が0.2以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。また上記重量混合比の上限値は、とくに制限は無いが、1.0以下であり、0.8以下がより好ましい。
上記重量混合比、液状エポキシ樹脂成分/(B)が0.2未満であると、本発明の熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態(Bステージ状態)における樹脂流動性が低下(溶融粘度が上昇)したり、もろく割れやすくなってしまい、取り扱いが困難となる傾向がある。
上記熱硬化性樹脂組成物の上記各成分の混合比率は、(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基のモル数に対する、上記(A)イミドオリゴマー成分に含まれる活性水素基のモル数で表されるモル混合比(A)/(B)にて、下限値が0.4以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。また、上記モル混合比(A)/(B)の上限値は、2.0以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましい。
上記モル混合比(A)/(B)が0.4未満あるいは2.0を超えると、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の誘電特性が劣る場合がある。また、熱硬化性樹脂組成物のガラス転移温度や熱膨張係数、高温時における弾性率が低下したり、耐熱性が損なわれる場合がある。
なお、エポキシ基のモル数は、エポキシ価から算出すればよく、イミドオリゴマーの活性水素は、イミドオリゴマーの分子量とイミドオリゴマー中に存在するアミノ基または水酸基の数から算出すればよい。
尚、本発明における活性水素とは、アミノ基の窒素原子に直接結合した水素原子、または水酸基の酸素原子に直接結合した水素原子を指し、一般的には、1つのアミノ基に対し2つの活性水素、1つの水酸基に対して1つの活性水素がある。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、より耐熱性を向上させたり、得られる硬化物に可とう性を付与したい場合には、(C)成分としてポリイミド樹脂を含むことが好ましい。(A)イミドオリゴマー成分、(B)エポキシ樹脂成分、及び(C)ポリイミド樹脂成分との全樹脂合計重量に対する上記(C)ポリイミド樹脂成分の重量で表される重量混合比(C)/[(A)+(B)+(C)]にて、下限値が0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。また、上記重量混合比(C)/[(A)+(B)+(C)]の上限値は、0.7以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
(C)ポリイミド樹脂を用いることにより、硬化後の樹脂のGHz帯域における誘電特性や熱分解やガラス転移温度以下の領域における熱膨張などの耐熱性を付与することが出来る。また(A)イミドオリゴマー成分、(B)エポキシ樹脂成分からなる熱硬化性樹脂成分を混合することにより、導体や回路基板との貼り合わせや積層時の回路埋め込みなどの加工時に重要な硬化前の樹脂流動性、硬化後の樹脂シートの高温時における弾性率や線膨張係数等で表される耐熱性を付与することが出来、混合比率が上記範囲内であるとこのような特性をよりバランス良く有する樹脂組成物を得ることが出来る。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を上記の重量混合比とすることによって、該熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂は、GHz帯域においても優れた誘電特性を示す。すなわち、上記熱硬化性樹脂組成物を150℃〜250℃の温度条件下で1時間〜5時間加熱することによって得られる硬化樹脂の誘電特性は、周波数1GHz〜10GHzにて、誘電率が3.3以下であり、また誘電正接が0.020以下となる。誘電率及び誘電正接が上記の範囲内であれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、回路基板の保護材料や層間絶縁材料として用いた場合にも、回路基板の電気的絶縁性を確保し、回路基板上の回路の信号伝達速度の低下や信号の損失を抑制することができるので、信頼性の高い回路基板を提供することが可能になる。
上記のように、熱硬化性樹脂組成物中の、(A)イミドオリゴマー、(B)エポキシ樹脂、及び(C)ポリイミド樹脂の配合比率、更には(B)エポキシ樹脂中に含まれる液状エポキシ樹脂の混合比率を特定範囲内とすることにより、回路を埋め込むために必要な流動性、回路基板や導体等の被着体に対する接着性、低温での接着を可能とする加工性や取扱性、熱膨張や熱分解に関する耐熱性、プレッシャークッカーによる耐湿性テスト(PCT)耐性、半田耐熱性、絶縁性、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の誘電特性等の諸特性の優れたバランスを備えた熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。以下、上記熱硬化性樹脂組成物に含まれる、(A)イミドオリゴマー成分、(B)エポキシ樹脂成分、(C)ポリイミド樹脂、(D)無機充填材その他の成分について、詳細に説明する。
(A)イミドオリゴマー成分
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種の一般式(1)
Figure 2007091799
(式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、a、bは、それぞれ独立して0以上15以下の整数であり、a+bは0以上15以下の整数を示す。また、(1)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)
または一般式(2)
Figure 2007091799
(式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、cは、1以上15以下の整数、dは、0以上15以下の整数を示し、c+dは、1以上15以下の整数を示す。また、(2)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)で表されるイミドオリゴマーのうち1種を含む(A)イミドオリゴマー成分を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物に樹脂流動性を付与するとともに、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して耐熱性を付与する。また、上記によって、熱硬化性樹脂組成物を硬化させる場合に、後述する(B)エポキシ樹脂成分を効率よく硬化させることが可能になる。
さらに、イミド基の構造を有していることにより該熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐屈曲性、優れた機械特性、耐薬品性を付与するとともに、GHz帯域における誘電率及び誘電正接の低い、優れた誘電特性を付与することができる。
上記のイミドオリゴマー成分の重量平均分子量は、構造の繰り返し単位が1以上15以下の範囲内であれば特に限定されないが、溶媒溶解性や流動性に優れる点から上限は15000以下であることが好ましく、10000以下であることが好ましい。
上記イミドオリゴマーは、従来公知の方法で製造することができるが、例えば、イミドオリゴマーの前駆体物質であるアミド酸オリゴマーを、化学的あるいは熱的にイミド化することによって得ることができる。
以下、上記イミドオリゴマーの製造方法を説明するために、アミド酸オリゴマーの合成方法、およびアミド酸オリゴマーを脱水閉環してイミド化を行い、ポリイミド樹脂を得る方法について詳細に説明する。
<アミド酸オリゴマーの製造方法>
上記アミド酸オリゴマーは、少なくとも1種の酸二無水物を含んでなる酸二無水物成分と、少なくとも1種のジアミンまたは/及び水酸基を有するモノアミンを含んでなるアミン成分とを有機溶媒中で、酸無水物に対してアミン類がモル数で過剰になるようにして、反応させれば得ることができる。
例えば繰り返し単位nが1で末端の官能基がアミン基であるイミドオリゴマーを主に含むイミドオリゴマーを得る場合、酸二無水物1モルにジアミンを実質的に2モルになるようにして反応させれば得ることが可能である。
上記反応の代表的な手法としては、上記アミン成分を有機溶媒に溶解し、その後、上記酸二無水物成分を添加して、アミド酸オリゴマーが溶解してなる溶液(以下、ポリアミド酸溶液と記載する)を得る方法が挙げられる。なお、ここで「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解した状態、及び、溶質が溶媒中に均一に分散又は拡散して、実質的に溶解している状態と同じ状態となる場合を含むものとする。
なお、上記アミン成分及び酸二無水物成分の添加順序は上記に限定されるものではなく、当業者であれば、その添加方法を適宜変更・修正・改変することができる。すなわち、例えば、上記添加方法は、酸二無水物成分を有機溶媒に溶解又は拡散させ、その後、アミン成分を加えて、アミド酸オリゴマー溶液とする方法であってもよい。
上記酸二無水物とアミンとの反応(アミド酸オリゴマーの合成反応)の温度条件は、該酸二無水物とアミンとを重合させることができれば特に限定されないが、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃の範囲内がよい。また、反応時間は、酸二無水物とアミンとの重合反応を完了させることができれば特に限定されないが、30分〜50時間の範囲内で任意に設定すればよい。
さらに、上記アミド酸オリゴマーの合成反応に使用する上記有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。アミド酸オリゴマーやアミド酸オリゴマーを得るための原料が溶解し、またイミドオリゴマーを製造する際に該イミドオリゴマーを乾燥させやすくする等の点から、なるべく沸点の低い有機溶媒を選択することが製造工程上有利である。
具体的には、アミド酸オリゴマーの合成反応に使用する上記有機溶媒として、ジメチルスルホキシドやジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミドやN,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミドやN,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。さらに、必要に応じて、上記有機溶媒と、キシレン又はトルエン等の芳香族炭化水素と組み合わせて用いてもよい。
<アミド酸オリゴマーの製造に用いる酸二無水物成分>
上記アミド酸オリゴマーを合成するために用いられる酸二無水物成分に含まれる酸二無水物としては、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、後述する(B)エポキシ樹脂成分、(C)ポリイミド樹脂との相溶性等を有する点で、上記酸二無水物は、一般式(3)
Figure 2007091799
(式中、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価基であり、Tは2価の有機基を表す)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(3)にて表される酸二無水物のうち、特に、GHz帯域における誘電率や誘電正接が低く、耐熱性に優れた硬化樹脂を得るためには、上記一般式(3)にて、Vが、−O−T−O−,又は,−COO−T−OCO−であることが好ましい。
ここで、上記Tは、下記一般式
Figure 2007091799
からなる群より選択される2価基、及び、一般式(4)
Figure 2007091799
(式中、Zは、−(CH2)Q−,−C(=O)−,−SO2−,−O−,及び,−S−からなる群より選択される2価基であり、Qは1以上5以下の整数である)で表される構造を有する2価基であることが好ましい。
このうち、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、(B)エポキシ樹脂成分及び(C)ポリイミド樹脂との相溶性、誘電特性等の諸特性をバランスよく備えたポリイミド樹脂が得られること、及び、入手しやすさ等の点から、酸二無水物として、下記一般式
Figure 2007091799
で表される4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物を用いることが特に好ましい。
ポリイミド樹脂を合成する場合には、上記一般式(3)にて表される構造を有する上記各酸二無水物のうちの少なくとも1種の酸二無水物を含んでなる酸二無水物成分を用いればよい。すなわち、酸二無水物成分には、上記にて説明した各酸二無水物のうち、1種のみが含まれていてもよく、あるいは、2種以上が任意の割合で組み合わせて含まれていてもよく、さらに、上記一般式(3)で表される構造以外の構造を有する酸二無水物(以下、その他の酸二無水物)が含まれていてもよい。
上記一般式(3)にて表される構造の酸二無水物の、酸二無水物成分中における含有量は、酸二無水物成分中の全酸二無水物のうちの50モル%以上であることが好ましい。含有量が50モル%以上であれば、各種の有機溶媒に対する溶解性、(B)エポキシ樹脂成分との相溶性、誘電特性等に優れたイミドオリゴマーを得ることができる。
上記酸二無水物成分に含まれる酸二無水物のうち、上記一般式(3)で表される構造以外の構造を有する、その他の酸二無水物としては、ピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,3'4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン酸、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸、4,4'−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸、p−フェニレンジフタル酸等の無水物またはその低級アルキルエステル等を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
これら各化合物は、単独で用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよいが、上述したように、一般式(3)で表される酸二無水物が少なくとも1種用いられることが非常に好ましい。
<アミド酸オリゴマーの製造に用いるアミン成分>
また、上記アミド酸オリゴマーを合成するために用いられるアミン成分に含まれるアミンとしては、イミドオリゴマーの末端に用いられるアミン成分(便宜上、末端用アミン成分と称する。)と、イミドオリゴマーの末端以外に用いられるアミン成分(便宜上ジアミン成分と称する。)に大別できる。
末端用アミン成分、ジアミン成分としては、いずれも各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、半田耐熱性、PCT耐性、低吸水性等に優れたイミドオリゴマーが得られるものが好ましく、特に芳香族系アミンであることが好ましい。以下、末端アミン成分とジアミン成分に分けて説明する。
(末端アミン成分)
末端アミン成分としては、具体的には、一般式(5)
Figure 2007091799
(式中R1は、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(5)にて表される構造を有するアミンとしては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン等のフェニレンジアミン類、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル類、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]アルカン類;2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]フルオロアルカン類;1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等のビス(アミノフェノキシ)ベンゼン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン等のビス(アミノフェノキシ)ケトン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]エーテル系化合物類;1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン系化合物類;4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル系化合物類;4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物類;4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン等の(フェノキシ)フェニルスルホン系化合物類;1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ジメチルベンゼン]ベンゼン系化合物類等が挙げられる。
あるいは、アミン成分に含まれるアミンとしては、水酸基を有するアミンであってもよい。水酸基を有するアミンとしては、水酸基を有していれば特に限定されない。例えば、4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、2−アミノフェノール等のアミノフェノール類、4−(4−アミノフェノキシ)フェノール、4−(3−アミノフェノキシ)フェノール等のアミノフェノキシフェノール類、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール系化合物;3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル等のジアミノビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェニル)フェニル]アルカン類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物等が挙げられる。
特に、溶媒への溶解性、エポキシ樹脂との反応性に優れ、また入手性の点より、上記一般式(5)にて、R1が、
Figure 2007091799
からなる群より選択される2価の有機基、及び一般式(6)
Figure 2007091799
(式中、Xは、それぞれ独立して−C(=O)−,−SO2−,−O−,−S−,−(CH2)l−,−NHCO−,−C(CH32−,−C(CF32−,及び,−C(=O)O−からなる群より選択される2価基、又は、直接結合を表し、R5は、それぞれ独立して、−OH、−NH2、水素,ハロゲン,又は,炭素数1〜4のアルキル基を表し、l、sは、それぞれ独立して0以上5以下の整数である。
(ジアミン成分)
ジアミン成分としては、上記一般式(5)におけるR3がNH2の場合のジアミンを用いることが出来るが、イミドオリゴマーの溶媒への溶解性の点から、一般式(7)
Figure 2007091799
(式中R2は、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基を表す。)で表されるジアミンを含有することが好ましい。
特に溶媒への溶解性、エポキシ樹脂との反応性に優れ、また入手性の点から、上記一般式(7)にて、R2が下記一般式(6)
Figure 2007091799
(式中、Xは、それぞれ独立して−C(=O)−,−SO2−,−O−,−S−,−(CH2)l−,−NHCO−,−C(CH32−,−C(CF32−,及び,−C(=O)O−からなる群より選択される2価基、又は、直接結合を表し、R5は、それぞれ独立して、−OH、−NH2、水素,ハロゲン,又は,炭素数1〜4のアルキル基を表し、l、sは、それぞれ独立して0以上5以下の整数である。)からなる群より選択される2価の有機基であることが好ましい。
<アミド酸オリゴマーのイミド化>
上記アミド酸オリゴマーを含んでなるアミド酸オリゴマー溶液を用いて、イミドオリゴマーを得るために、上記アミド酸オリゴマーをイミド化する方法について説明する。イミド化は、例えば、熱的手法により、上記ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。上記熱的手法とは、アミド酸オリゴマー溶液を熱処理して脱水する方法である。以下、上記手法について説明する。
熱的手法による脱水閉環としては、例えば、上記アミド酸オリゴマー溶液の加熱処理によって、イミド化反応を進行させ、同時に溶媒を蒸発させる等の方法を挙げることができる。この熱的手法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。なお、上記加熱処理の条件は特に限定されないが、300℃以下の温度で、約5分〜20分間の範囲の時間で加熱を行うことが好ましい。
なお、上記の熱的手法では、溶媒を蒸発させる方法について説明したが、溶媒を蒸発させない方法もある。具体的には、上記熱的手法によって得られるイミドオリゴマー溶液を、貧溶媒中に加え、イミドオリゴマーを析出させるとともに、未反応のモノマー(酸二無水物・アミン)を除去して精製・乾燥することにより、固体のイミドオリゴマーを得る方法である。上記貧溶媒としては、イミドオリゴマー溶液の溶媒とは良好に混合するが、イミドオリゴマーは溶解しにくい性質の溶媒であれば特に限定されず、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ(登録商標)、メチルエチルケトン等を挙げることができる。
さらに、減圧下で加熱処理を行って、アミド酸オリゴマーをイミド化する方法では、加熱条件を80℃〜400℃とすればよいが、効率よくイミド化及び脱水を行うためには、100℃以上とすることがより好ましく、120℃以上とすることがさらに好ましい。なお、加熱処理における最高温度は、イミドオリゴマーの熱分解温度以下とすることが好ましく、通常、イミド化の完結温度である約250℃から350℃の温度範囲内に設定される。また、圧力条件は、低圧であることが好ましく、具体的には、0.001気圧〜0.9気圧の範囲内であることが好ましく、0.001気圧〜0.8気圧であることがより好ましく、0.001気圧〜0.7気圧であることがさらに好ましい。
上記減圧下で加熱処理を行ってアミド酸オリゴマーをイミド化する方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去することができるので、ポリアミド酸の加水分解を抑制することができる。その結果、所望の分子量を有するイミドオリゴマーを得ることができる。さらに、該方法を用いれば、アミド酸オリゴマーの原料である酸二無水物中に不純物として存在する、片側開環物又は両側開環物を閉環させることができるので、イミドオリゴマーの分子量の制御をより一層向上することができる。
(B)エポキシ樹脂成分
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂について説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含んでなる(B)エポキシ樹脂成分を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物に樹脂流動性を付与するとともに、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐熱性や絶縁性を付与するとともに、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができる。
また、(B)エポキシ樹脂成分に、少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を含有することにより、半硬化状態(Bステージ状態)の樹脂流動性を更に向上させることが出来、また、シート状とした場合、シートが割れにくくなり、スリットもしやすくなる等、取り扱い性を向上させることができる。
本発明の液状エポキシ樹脂とは、60℃以下の温度領域で最低粘度が10Pa・S(100ポイズ)以下のエポキシ樹脂を示す。尚、本発明においては、最低溶融粘度が60℃以下の温度で、5Pa・S以下の液状エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、液状であれば特に限定されないが、多官能タイプの液状エポキシ樹脂としては、例えばエピコートE152(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロンN730−S(商品名、大日本インキ工業(株)製)等の液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコートE827、エピコートE828(共に商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコートE806、エピコートE807(共に商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等の液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピコートE630商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、GOT、GAN(商品名、日本化薬(株)製)等の液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂、EPU−73(商品名、旭電化工業(株))等の液状ウレタン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YED122、YED111N(共に商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等の単官能エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のうち、液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
該エポキシ樹脂は、入手しやすく、(A)イミドオリゴマー成分や後述の(C)ポリイミド樹脂、(E)その他成分との相溶性、熱硬化性樹脂組成物の樹脂流動性に優れており、また、半硬化状態における取り扱い性を向上させたり、上記硬化樹脂に対して優れた耐熱性や絶縁性を付与することができる。
上記液状エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン等のエポキシ樹脂類や、それらのハロゲン化エポキシ樹脂や融点を有する結晶性エポキシ樹脂を挙げることができる。
上記のエポキシ樹脂のうち、分子鎖中に少なくとも1つの芳香環及び/又は脂肪族環を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂、融点を有する結晶性エポキシ樹脂が好ましい。該エポキシ樹脂は、入手しやすく、(A)イミドオリゴマー成分や後述の(C)ポリイミド樹脂、(E)その他成分との相溶性、熱硬化性樹脂組成物の樹脂流動性に優れており、また、上記硬化樹脂に対して優れた耐熱性や絶縁性を付与することができる。
なお、熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、信頼性の高い電気絶縁性を得るために、高純度のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂中に含まれるハロゲンやアルカリ金属の含有濃度は、120℃、2気圧の条件下で抽出した場合に、25ppm以下であることが好ましく、15ppm以下であることがより好ましい。ハロゲンやアルカリ金属の含有濃度が25ppmよりも高くなると、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の電気絶縁性の信頼性が損なわれてしまう場合がある。
上記エポキシ樹脂は、エポキシ価(エポキシ当量ともいう)の下限値が150以上であることが好ましく、170以上であることがより好ましく、190以上であることが最も好ましい。また、上記エポキシ樹脂のエポキシ価の上限値は、700以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることが最も好ましい。
上記エポキシ樹脂のエポキシ価が150未満であると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂中の極性基が多くなるため、誘電特性が損なわれる場合がある。すなわち、硬化樹脂の誘電率や誘電正接が高くなってしまう場合がる。一方、エポキシ価が700を超えると、硬化樹脂中の架橋密度が低下するので、耐熱性が損なわれてしまう場合がある。
(C)ポリイミド樹脂成分
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記(A)成分と(B)成分に更に少なくとも1種のポリイミド樹脂を含む(C)ポリイミド樹脂成分を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物に耐熱性を付与し、さらに、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐屈曲性、優れた機械特性、耐薬品性を付与するとともに、GHz帯域における誘電率及び誘電正接の低い、優れた誘電特性を付与することができる。
ポリイミド樹脂としては、特に限定されるものではないが、有機溶媒に溶解する可溶性ポリイミド樹脂であることが好ましい。ここで、可溶性ポリイミド樹脂とは、15℃〜100℃の温度範囲にて、有機溶媒に1重量%以上溶解するポリイミド樹脂をいう。
なお、上記有機溶媒としては、例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒等から選ばれる少なくとも1種の溶媒を挙げることができる。
上記可溶性ポリイミド樹脂を用いれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱硬化に際して、高温・長時間での処理を必要としない。従って、ポリイミド樹脂として可溶性ポリイミド樹脂を用いることは、加工性の点から好ましい。
上記ポリイミド樹脂は、従来公知の方法で製造することができるが、例えば、
ポリイミド樹脂の前駆体物質であるポリアミド酸を、化学的あるいは熱的にイミド化することによって得ることができる。
以下、上記ポリイミド樹脂の製造方法を説明するために、ポリアミド酸の合成方法、およびポリアミド酸を脱水閉環してイミド化を行い、ポリイミド樹脂を得る方法について詳細に説明する。
<ポリアミド酸の製造方法>
上記ポリアミド酸は、少なくとも1種の酸二無水物を含んでなる酸二無水物成分と、少なくとも1種のジアミンを含んでなるジアミン成分とを有機溶媒中で、上記酸二無水物とジアミンとが、実質的に等モルとなるようにして、反応させれば得ることができる。あるいは、2種以上の酸二無水物成分および2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル比と複数の酸二無水物成分全量のモル比とを、実質的に等モルとなるように調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
上記反応の代表的な手法としては、上記ジアミン成分を有機溶媒に溶解し、その後、上記酸二無水物成分を添加して、ポリアミド酸が溶解してなる溶液(以下、ポリアミド酸溶液と記載する)を得る方法が挙げられる。なお、ここで「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解した状態、及び、溶質が溶媒中に均一に分散又は拡散して、実質的に溶解している状態と同じ状態となる場合を含むものとする。
なお、上記ジアミン成分及び酸二無水物成分の添加順序は上記に限定されるものではなく、当業者であれば、その添加方法を適宜変更・修正・改変することができる。すなわち、例えば、上記添加方法は、酸二無水物成分を有機溶媒に溶解又は拡散させ、その後、ジアミン成分を加えて、ポリアミド酸溶液とする方法であってもよい。あるいは、まず、有機溶媒中に適量のジアミン成分を加え、続いて、ジアミン成分中のジアミンに対して過剰となる酸二無水物を含む酸二無水物成分を加え、該酸二無水物の過剰量に相当する量のジアミンを含むジアミン成分を添加して、ポリアミド酸溶液とする方法であってもよい。
上記酸二無水物とジアミンとの反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、該酸二無水物とジアミンとを重合させることができれば特に限定されないが、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃の範囲内がよい。また、反応時間は、酸二無水物とジアミンとの重合反応を完了させることができれば特に限定されないが、30分〜50時間の範囲内で任意に設定すればよい。
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する上記有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。しかしながら、上記ポリアミド酸の重合時の粘度の増加を抑制して攪拌しやすくする、また、ポリイミド樹脂を製造する際に該ポリイミド樹脂を乾燥させやすくする等の点から、ポリアミド酸に対して良溶媒であり、なるべく沸点の低い有機溶媒を選択することが製造工程上有利である。
具体的には、ポリアミド酸の合成反応に使用する上記有機溶媒として、ジメチルスルホキシドやジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミドやN,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミドやN,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。さらに、必要に応じて、上記有機溶媒と、キシレン又はトルエン等の芳香族炭化水素と組み合わせて用いてもよい。
<ポリアミド酸の製造に用いる酸二無水物成分>
上記ポリアミド酸を合成するために用いられる酸二無水物成分に含まれる酸二無水物としては、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、前述の(A)イミドオリゴマー成分及び(B)エポキシ樹脂成分との相溶性等を有するポリイミド樹脂が得られるものであれば特に限定されないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。具体的には、上記酸二無水物は、一般式(3)
Figure 2007091799
(式中、Vは、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−からなる群より選択される2価基であり、Tは2価の有機基を表す)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(3)にて表される酸二無水物のうち、特に、GHz帯域における誘電率や誘電正接が低く、耐熱性に優れた硬化樹脂を得るためには、上記一般式(3)にて、Vが、−O−T−O−,又は,−COO−T−OCO−であることが好ましい。
ここで、上記Tは、下記一般式
Figure 2007091799
からなる群より選択される2価基、及び、一般式(4)
Figure 2007091799
(式中、Zは、−(CH2)Q−,−C(=O)−,−SO2−,−O−,及び,−S−からなる群より選択される2価基であり、Qは1以上5以下の整数である)で表される構造を有する2価基であることが好ましい。
このうち、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、(B)ジアミン成分及び(C)エポキシ樹脂成分との相溶性、誘電特性等の諸特性をバランスよく備えたポリイミド樹脂が得られること、及び、入手しやすさ等の点から、酸二無水物として、下記一般式
Figure 2007091799
で表される4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物を用いることが特に好ましい。
ポリイミド樹脂を合成する場合には、上記一般式(3)にて表される構造を有する上記各酸二無水物のうちの少なくとも1種の酸二無水物を含んでなる酸二無水物成分を用いればよい。すなわち、酸二無水物成分には、上記にて説明した各酸二無水物のうち、1種のみが含まれていてもよく、あるいは、2種以上が任意の割合で組み合わせて含まれていてもよく、さらに、上記一般式(3)で表される構造以外の構造を有する酸二無水物(以下、その他の酸二無水物)が含まれていてもよい。
上記一般式(3)にて表される構造の酸二無水物の、酸二無水物成分中における含有量は、酸二無水物成分中の全酸二無水物のうちの50モル%以上であることが好ましい。含有量が50モル%以上であれば、各種の有機溶媒に対する溶解性、(A)イミドオリゴマー成分及び(B)エポキシ樹脂成分との相溶性、誘電特性等に優れたポリイミド樹脂を得ることができる。
上記酸二無水物成分に含まれる酸二無水物のうち、上記一般式(3)で表される構造以外の構造を有する、その他の酸二無水物としては、特に限定されないが、上記一般式(3)で表される構造以外の構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
上記その他の酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,3'4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン酸、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸、4,4'−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸、p−フェニレンジフタル酸等の無水物またはその低級アルキルエステル等を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
上記その他の酸二無水物は、1種のみを用いてもよく、あるいは、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
<ポリアミド酸の製造に用いるジアミン成分>
また、上記ポリアミド酸を合成するために用いられるジアミン成分に含まれるジアミンとしては、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、半田耐熱性、PCT耐性、低吸水性、熱可塑性等に優れたポリイミド樹脂が得られるものが好ましく、芳香族系ジアミンであることが好ましい。具体的には、上記ジアミンとして、一般式(8)
Figure 2007091799
(式中、Yは、それぞれ独立して、−C(=O)−,−SO2−,−O−,−S
−,−(CH2)u−,−NHCO−,−C(CH32−,−C(CF32−,及び,−C(=O)O−からなる群より選択される2価基、又は、直接結合を表し、R6は、それぞれ独立して、水素,ハロゲン,又は,炭素数1〜4のアルキル基を表し、t、uは、それぞれ独立して1以上5以下の整数である)で表される構造を有するものが好ましい。ここで、直接結合とは、2つのベンゼン環のそれぞれに含まれる炭素が直接結合することによって、2つのベンゼン環が結合していることをいう。
上記一般式(8)にて表される構造を有するジアミンとしては、例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]アルカン類;2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]フルオロアルカン類;1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等のビス(アミノフェノキシ)ベンゼン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン等のビス(アミノフェノキシ)ケトン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]エーテル系化合物類;1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン系化合物類;4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル系化合物類;4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物類;4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン等の(フェノキシ)フェニルスルホン系化合物類;1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ジメチルベンゼン]ベンゼン系化合物類等が挙げられる。
上記一般式(8)にて表される構造を有するジアミンのうち、メタ位にアミノ基を有するジアミンがより好ましい。メタ位にアミノ基を有するジアミンを用いれば、パラ位にアミノ基を有するジアミンを用いた場合よりも、さらに各種の有機溶媒に対する溶解性に優れたポリイミド樹脂を得ることができる。メタ位にアミノ基を有するジアミンは、一般式(9)
Figure 2007091799
(式中、Yは、それぞれ独立して、−C(=O)−,−SO2−,−O−,−S−,−(CH2)u−,−NHCO−,−C(CH32−,−C(CF32−,及び,−C(=O)O−からなる群より選択される2価基、又は、直接結合を表し、Rは、それぞれ独立して、水素,ハロゲン,又は,炭素数1〜4のアルキル基を表し、t、uは、それぞれ独立して1以上5以下の整数である)で表される構造を有する。
上記一般式(9)にて表される構造を有するジアミンとしては、上記したジアミンのうち、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3)−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等を挙げることができる。このうち、特に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることが好ましい。該1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いれば、各種の有機溶媒に対する溶解性、半田耐熱性、PCT耐性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することが可能になる。
あるいは、ジアミン成分に含まれるジアミンとしては、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンであってもよい。水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンを用いてポリアミド酸を製造して、ポリイミド樹脂を得れば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
ポリイミド樹脂に水酸基及び/又はカルボキシル基が導入されていると、上記(B)エポキシ樹脂成分の硬化を促進することができる。従って、上記(B)エポキシ樹脂成分の熱硬化を低温又は短時間で行うことが可能になる。さらに、(B)エポキシ樹脂成分は、水酸基及び/又はカルボキシル基と反応するので、ポリイミド樹脂同士が(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ樹脂を介して架橋される。従って、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するポリイミド樹脂を得るために、上記ジアミンとして、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンを用いれば、耐熱性、半田耐熱性、PCT耐性等にさらに優れた熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンとしては、水酸基及び/又はカルボキシル基を有していれば特に限定されない。例えば、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール系化合物;3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル等のジアミノビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェニル)フェニル]アルカン類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物;3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(カルボキシフェニル)フェニル]アルカン類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物等を挙げることができる。
上記のうち、良好な半田耐熱性やPCT耐性を得るためには、上記水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンとして、下記式
Figure 2007091799
で表される3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを用いることが特に好ましい。
ポリイミド樹脂を合成する場合には、少なくとも1種の上記一般式(8)にて表される構造を有するジアミン、及び/又は、少なくとも1種の水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンを含んでなるジアミン成分を用いることが好ましい。
ジアミン成分に上記一般式(8)にて表される構造を有するジアミンが含まれる場合には、該ジアミン(一般式(8))が、ジアミン成分中の全ジアミンのうちの60モル%以上99モル%以下となるように含有することが好ましい。また、ジアミン成分に水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンが含まれる場合には、該ジアミン(水酸基及び/又はカルボキシル基を有する)が、ジアミン成分中の全ジアミンのうちの1モル%以上40モル%以下となるように含有することが好ましい。
より好ましくは、上記ジアミン成分は、少なくとも1種の上記一般式(8)にて表される構造を有するジアミンと、少なくとも1種の水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンとを含んでいるとよい。特に、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンとして、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを用いることが最も好ましい。これにより、より優れた半田耐熱性やPCT耐性を得ることができる。
ジアミン成分に含まれる各ジアミンは、それぞれ任意の割合で組み合わせればよいが、一般式(8)にて表される構造を有するジアミンのジアミン成分中における含有量が、全ジアミンのうちの60モル%以上99モル%以上であって、かつ、少なくとも1種の水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンのジアミン成分中における含有量が、全ジアミンのうちの1モル%以上40モル%以下であることが好ましい。上記一般式(8)にて表される構造を有するジアミンと、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンとの含有量が、上記範囲から逸脱すると、該ジアミンを用いて得られるポリイミド樹脂の、各種の有機溶媒に対する溶解性、半田耐熱性、PCT耐性が損なわれる場合がある。
また、ジアミン成分には、上記したジアミン(一般式(8)で表される構造を有するジアミン、及び水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミン)以外のジアミン(以下、その他のジアミン)が含まれていてもよい。上記ジアミン成分に含まれるその他のジアミンとしては、特に限定されないが、芳香族系ジアミンが好ましい。
上記芳香族系ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド等を挙げることができる。
上記その他のジアミンは、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよく、ジアミン成分中における含有量が、全ジアミンのうちの10モル%未満であることが好ましい。
<ポリアミド酸のイミド化>
上記ポリアミド酸を含んでなるポリアミド酸溶液を用いて、可溶性ポリイミド樹脂を得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。イミド化は、例えば、熱的手法又は化学的手法により、上記ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。上記熱的手法とは、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する方法であり、上記化学的手法とは、脱水剤を用いて脱水する方法である。これらの手法の他、減圧下で加熱処理を行って、ポリアミド酸をイミド化する方法もある。以下、上記各手法について説明する。
熱的手法による脱水閉環としては、例えば、上記ポリアミド酸溶液の加熱処理によって、イミド化反応を進行させ、同時に溶媒を蒸発させる等の方法を挙げることができる。この熱的手法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。なお、上記加熱処理の条件は特に限定されないが、300℃以下の温度で、約5分〜20分間の範囲の時間で加熱を行うことが好ましい。
一方、化学的手法による脱水閉環としては、例えば、上記ポリアミド酸溶液に、化学量論量以上の脱水剤と触媒とを加えることによって、脱水反応及び有機溶媒の蒸発を行う方法を挙げることができる。この化学的手法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。
上記脱水剤としては、無水酢酸等の脂肪族酸無水物;無水安息香酸等の芳香族酸無水物;N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド類等を挙げることができる。また、上記触媒としては、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類等を挙げることができる。なお、化学的手法による脱水閉環を行う際の温度条件は、100℃以下であることが好ましく、反応時間は、約1分〜50時間の範囲内で行うことが好ましい。また、有機溶媒の蒸発は、200℃以下の温度で、約5分〜120分間の範囲の時間で行うことが好ましい。
なお、上記の熱的手法及び化学的手法では、溶媒を蒸発させる方法について説明したが、溶媒を蒸発させない方法もある。具体的には、上記熱的手法又は化学的手法によって得られるポリイミド樹脂溶液を、貧溶媒中に加え、ポリイミド樹脂を析出させるとともに、未反応のモノマー(酸二無水物・ジアミン)を除去して精製・乾燥することにより、固形のポリイミド樹脂を得る方法である。上記貧溶媒としては、ポリイミド樹脂溶液の溶媒とは良好に混合するが、ポリイミド樹脂は溶解しにくい性質の溶媒であれば特に限定されず、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ(登録商標)、メチルエチルケトン等を挙げることができる。
さらに、減圧下で加熱処理を行って、ポリアミド酸をイミド化する方法では、
加熱条件を80℃〜400℃とすればよいが、効率よくイミド化及び脱水を行うためには、100℃以上とすることがより好ましく、120℃以上とすることがさらに好ましい。なお、加熱処理における最高温度は、ポリイミド樹脂の熱分解温度以下とすることが好ましく、通常、イミド化の完結温度である約250℃から350℃の温度範囲内に設定される。また、圧力条件は、低圧であることが好ましく、具体的には、0.001気圧〜0.9気圧の範囲内であることが好ましく、0.001気圧〜0.8気圧であることがより好ましく、0.001気圧〜0.7気圧であることがさらに好ましい。
上記減圧下で加熱処理を行ってポリアミド酸をイミド化する方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去することができるので、ポリアミド酸の加水分解を抑制することができる。その結果、高分子量のポリイミド樹脂を得ることができる。さらに、該方法を用いれば、ポリアミド酸の原料である酸二無水物中に不純物として存在する、片側開環物又は両側開環物を閉環させることができるので、ポリイミド樹脂の分子量をより一層向上することができる。
(D)無機充填材成分
硬化樹脂の特性の改善、特に熱膨張係数を更に低下させるために、無機充填材(フィラー)成分を含有させる事が好ましい。無機充填材成分として用いられる無機充填材は、特に限定されないが、具体的には、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ(球状溶融、破砕)等の無機フィラー、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの有機フィラー等が挙げられる。上記無機充填材成分うち、球状溶融シリカが特に好ましい。
該無機充填材は、高濃度に充填できることにより硬化樹脂の熱膨張係数を低下させることができ、またBステージ状態から硬化する過程で樹脂組成物の樹脂流動性を妨げることがなく、溶融粘度の上昇を回避することができる、また硬化物に対しても、優れた誘電特性を付与することが出来る。
球状溶融シリカは、形状がほぼ球形であり、主たる材質がシリカ(SiO2 )であれば特に限定されるものではない。ここで、球状溶融シリカの真円度は0.5以上であればよく、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
上記球状溶融シリカの材質は、上記のように、シリカすなわち二酸化ケイ素であれば特に限定されるものではないが、球状溶融シリカすなわち珪石を高温で溶融して得られるガラス状(非晶質)のシリカであることが好ましい。球状溶融シリカは熱膨張率があらゆる工業材料中最も小さい等、熱特性に優れていることに加え、優れた電気特性(絶縁性等)および科学特性(安定性等)を備えている。この球状溶融シリカを用いることで、フィラー含有樹脂組成物が溶融した状態でも、その流動性(溶融粘度)への悪影響を小さくすることができ、かつ、硬化後の硬化樹脂の熱膨張係数を小さくすることが可能となる。
上記球状シリカの平均粒径は、3μm以下であればよく、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。また、上記球状溶融シリカの粒度分布は特に限定されるものではないが、粒径10μm以上の粒子が、球状シリカ全量の10重量%以下となっていることが好ましく、5重量%以下となっていることがより好ましく、1重量%以下となっていることがさらに好ましい。
少なくとも上記球状溶融シリカの平均粒径が上記上限以下であれば、球状溶融シリカの粒径が小さければ流動性の増大を回避できるため、微細な回路形成に有利となる。さらには、10μm以上の粒子の含有比(重量比)が上記上限以下であれば、本発明にかかるフィラー含有樹脂組成物の加工性をさらに向上させることができ、プリント配線板、特にビルドアップ型プリント配線板の層間絶縁膜として用いたときに、内層回路の埋め込み性をより一層向上させることができるため好ましい。
なお、球状溶融シリカの平均粒径はより小さい方が高密度回路形成には適していると思われるが、粒径が小さくなるほどフィラーの表面積が大きくなり、樹脂組成物全体の流動性が低下することになる。そのため、高密度回路形成と樹脂流動性という双方の物性を両立させるためには、球状溶融シリカの粒径は上記範囲内であることが好ましい。
本発明では、上記球状溶融シリカは、そのまま用いることもできるが、少なくとも(A)ポリイミド樹脂成分との親和性を高めるように表面処理されたものであるとより好ましい。このような表面処理の方法は特に限定されるものではないが、公知の表面処理剤を用いて公知の条件で処理すればよい。
上記表面処理剤として用いることのできる化合物としては、具体的には、例えば、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等の各種カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、各種界面活性剤、各種樹脂酸、各種リン酸エステル等を用いることができる。これらの中でも、得られる表面処理済の球状シリカを樹脂組成物中で良好に分散させる分散性や、フィラー含有樹脂組成物の溶融粘度の低下を回避・抑制できる点から、カップリング剤をより好ましく用いることができる。
本発明で用いることのできるカップリング剤としては特に限定されるものではないが、上記シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤を好ましく用いることができる。これらカップリング剤は、一般に、無機フィラーの表面改質剤として市販されているものを好適に用いることができる。
上記シランカップリング剤は、一般に、ケイ素(Si)を含み、一分子中に有機材料と親和性の高い置換基を持つ有機官能性基、および、無機材料と親和性の高い極性基とを有している構成となっている。このようなシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。これら以外にも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のシランモノマーも好適に用いることができる。これら各化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記チタネート系カップリング剤も、シランカップリング剤と同様にとは、チタンを含み、一分子中に有機材料と親和性の高い置換基を持つ有機官能性基、および、無機材料と親和性の高い極性基とを有している構成となっている。チタネート系カップリング剤のより具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ブチルチタネートダイマー、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンオクチレングリコレート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジヒドロキシチタンビスラクテート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリスステアロイイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。これら各化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、上記シランカップリング剤およびチタネート系カップリング剤を組み合わせて用いてもよいし、これら以外の公知のカップリング剤を、単独または2種類以上を組み合わせて併用して用いてもよい。
球状溶融シリカの表面処理方法は、上述したカップリング剤等の表面改質剤を用いて公知の条件で処理すればよいが、より具体的には、特に、カップリング剤を用いる場合には、撹拌法や湿式法等を挙げることができる。
上記撹拌法は、予めカップリング剤と球状溶融シリカとを撹拌装置に仕込み、適切な条件で撹拌する方法である、上記撹拌装置としては、ヘンシェルミキサー等の高速回転で撹拌・混合が可能なミキサーを用いることができるが、特に限定されるものではない。撹拌の条件も特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、球状溶融シリカをヘンシェルミキサーに仕込み、1000rpmで3分間予備混合した後、カップリング剤を滴下し、さらに1000rpmで5分間本混合する条件を挙げることができる。なお、上記予備混合および本混合の回転速度や混合時間は、用いるカップリング剤の種類や、球状溶融シリカおよびカップリング剤の配合内容や配合量により適切な条件を選択すればよい。
上記湿式法は、表面処理しようとする球状溶融シリカの表面積に対して十分な量のカップリング剤を水または有機溶剤に溶解して、カップリング剤分子を加水分解させることにより、表面処理溶液とする。この表面処理溶液の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、約3重量%を挙げることができる。得られた表面処理溶液に対して球状シリカを添加し、スラリー状となるように撹拌する。撹拌によってカップリング剤および球状シリカを十分反応させた後、濾過や遠心分離等の方法により球状溶融シリカを表面処理溶液から分離し、加熱乾燥する。
なお、上記撹拌法や湿式法以外にも、例えば、球状溶融シリカを溶媒中に分散させてなるフィラー分散液に直接カップリング剤を添加し、球状溶融シリカの表面を改質するインテグラルブレンド法も好適に用いることができる。
本発明では、上記のようなカップリング剤を用いて球状溶融シリカの表面改質処理を行うことで、特に、(A)イミドオリゴマー成分、(B)エポキシ樹脂等の樹脂成分や(C)ポリイミド樹脂成分と(D)フィラー成分としての球状シリカとの密着性を向上させ、(A)成分、(B)成分や(C)成分中における、(D)成分の分散性を向上させることができる。それゆえ、本発明にかかるフィラー含有樹脂組成物において、硬化後の硬化樹脂の機械的強度、耐熱性、耐湿性等の特性を向上させることができる。
なお、球状溶融シリカの表面を改質する段階については特に限定されないので、本発明にかかるフィラー含有樹脂組成物を調製する段階で配合してもよいし、予め表面処理が完了した球状溶融シリカを用いてもよい。
(E)その他の成分
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、(A)イミドオリゴマー成分以外の(E−1)エポキシ樹脂成分の硬化剤や、(E−2)エポキシ樹脂成分と硬化剤との反応を促進するための硬化促進剤などの熱硬化成分等が含まれていてもよい。
上記硬化剤としては、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ドデシル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の脂肪族酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等の芳香族酸無水物;アミノ樹脂類、ユリア樹脂類、メラミン樹脂類、ジシアンジアミド、ジヒドラジン化合物類、イミダゾール化合物類、ルイス酸、及びブレンステッド酸塩類、ポリメルカプタン化合物類、イソシアネートおよびブロックイソシアネート化合物類、等を挙げる事ができる。
上記硬化剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよく、全エポキシ樹脂100重量部に対して、1重量部〜100重量部の範囲内で用いることが好ましい。
また、上記硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン等のアミン系化合物;1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のボレート系化合物等、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のアジン系イミダゾール類等が挙げられる。イミドオリゴマーにアミノ基が含まれる場合、特に熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度の最低値が大幅に低下し、回路埋め込み性が向上させることができるる点で、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のイミダゾール類を用いることが好ましい。
上記硬化促進剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよく、全熱硬化性樹脂組組成物100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の範囲内で用いることが好ましい。
さらに、上記熱硬化成分は、熱硬化性樹脂組成物又は該熱硬化性樹脂組成物の硬化樹脂の、接着性や耐熱性、加工性等の諸特性を改善するために、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂;高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基、等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子等を用いることができる。上記熱硬化性成分は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いればよい。
なお、上記硬化剤,硬化促進剤,熱硬化成分は、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の誘電特性を損なわない範囲で、熱硬化性樹脂組成物に含有させることが好ましい。
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物の使用態様について説明するが、以下の説明に限定されるものではない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、適当な溶媒に添加して攪拌することによって、樹脂溶液として用いることができる。あるいは、該樹脂溶液は、熱硬化性樹脂組成物の各成分を適当な溶媒に溶解してなる各成分毎の溶液を混合することによっても得ることができる。
樹脂溶液に用いることができる溶媒としては、熱硬化性樹脂組成物又は該熱硬化性樹脂組成物の各成分を溶解し得る溶媒であれば限定されないが、沸点が150℃以下であることが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、トリグライム、ジエチレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等の鎖状エーテル等のエーテル類が好ましく用いられる。また、上記エーテル類に、トルエン、キシレン類、グリコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、環状シロキサン、鎖状シロキサン等を混合した混合溶媒も好ましく用いることができる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、あらかじめシート状に成形加工しておくことによって、樹脂シートとして用いることができる。具体的には、熱硬化性樹脂組成物のみからなる単層シート、フィルム基材の片面あるいは両面に上記熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を設けてなる2層シート又は3層シート、フィルム基材と熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を交互に積層した多層シート等の積層体を挙げることができる。
上記樹脂シートは、上記した樹脂溶液を支持体表面に流延又は塗布し、該流延又は塗布した樹脂溶液を乾燥させることによって、フィルム状に成形することができる。このフィルム状の熱硬化性樹脂組成物は、半硬化状態(Bステージ状態)にある。従って、半硬化状態のフィルム状の熱硬化性樹脂組成物を、上記支持体から剥離すれば、上記単層シートを得ることができる。また、上記積層体は、上記フィルム基材の表面に、上記樹脂溶液を流延又は塗布し、該樹脂溶液を乾燥させる操作を繰り返すことによって、製造することができる。
尚、本発明の熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態の樹脂は、溶融粘度は60℃以上200℃以下の範囲のいずれか温度における最低溶融粘度が、10Pa・S以上8000Pa・S以下であることが好ましい。
溶融粘度が8000Pa・Sを超えると回路埋め込み性が低下し、10Pa・S未満であると、加工時に樹脂が基板の外側へ大量にはみだし基板上に残る樹脂量が減少する結果、回路を埋め込むことが出来なくなる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により塗工、含浸させ、加熱、半硬化させることによりプリプレグを得ることが出来る。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂に繊維状充填材を含有させた繊維強化型樹脂シートである。上記繊維からなるシート状補強基材としては、特に限定されないが、例えばガラス布、ガラスマット、芳香族ポリアミド繊維布、芳香族ポリアミド繊維マットやフッソ系樹脂繊維など、公知慣用のプリプレグ用繊維を好適に使用できる。上記繊維からなるシート状補強基材に樹脂を塗布、含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えばホットメルト法やソルベント法等を好適に用いることが出来る。ホットメルト法では、無溶剤の樹脂を使用し、樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングしそれをラミネートしたり、ダイコーターにより直接塗工する方法によりプリプレグを製造することが出来る。ソルベント法では、有機溶剤に該熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解した樹脂溶液にシート状補強基材を浸漬、含浸させ、その後乾燥させてプリプレグを製造することが出来る。
上記フィルム基材として、銅やアルミニウム等の金属を用いれば、金属付き積層体を得ることもできる。すなわち、金属付き積層体は、少なくとも1つの熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層と、少なくとも1つの金属層とを含む積層体である。なお、樹脂層は、金属層の片面にのみ設けてもよく、あるいは、金属層と樹脂層とを交互に積層させてもよい。
上記金属付き積層体は、上記したように、樹脂溶液を金属層表面に流延又は塗布して、該樹脂溶液を乾燥することによって製造することもできるが、上記した樹脂シートに、金属箔と樹脂シートとを張り合わせる、あるいは、化学めっきやスパッタリング等により、金属層を形成することによって製造することもできる。
さらに、上記金属層が、回路基板の導体として用いることができる金属であれば、上記金属付き積層体の金属層に、ドライフィルムレジストや液状のレジスト等を用いて金属エッチング等を行って、所望のパターンの回路(以下、パターン回路)を形成することもできる。従って、上記金属付き積層体の金属層にパターン回路を形成し、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を設ければ、フレキシブルプリント配線基板やビルドアップ回路基板等の回路基板として用いることが可能になる。
パターン回路が形成された金属層に対しては、樹脂層として、上記した半硬化状態の樹脂シートを用いてもよい。本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてなる半硬化状態の樹脂シートは、適度な流動性を有しているため、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合にパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。これにより、金属層と樹脂層とが貼り合わせられる。
上記熱圧着処理における処理温度は、50℃以上200℃以下であることが好ましく、60℃以上180℃以下であることがより好ましく、特に80℃以上130℃以下であることが好ましい。上記処理温度が200℃を超えると、熱圧着処理時に、樹脂層が硬化してしまう可能性がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、樹脂層の流動性が低く、パターン回路を埋め込むことが困難となる。
上記パターン回路上に設けられる樹脂層は、パターン回路を保護する保護材料あるいは、多層の回路基板での層間絶縁材料となる。そのため、パターン回路を埋め込んだ後、露光処理、加熱キュア等を行うことによって、完全に硬化させることが好ましい。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させる場合には、(B)エポキシ樹脂成分の硬化反応を十分に進行させるために、金属層と樹脂層とを貼り合せた後に、ポスト加熱処理を実施することが好ましい。ポスト加熱処理の条件は特に限定されないが、150℃以上200℃以下の範囲内の温度条件下、10分以上、3時間以下の加熱処理を行うことが好ましい。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更や修正及び改変を行うことが可能である。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂シートのBステージ可とう性、流動性,積層性,揮発成分量の算出、また、該樹脂シートを加熱硬化してなる硬化樹脂シートの誘電特性及びガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度は、以下のように測定し、評価した。
〔Bステージ可とう性〕
PETフィルム基材付の樹脂シートを、内径3インチ、肉厚10mmの円筒に、熱硬化性樹脂組成物の層を外側にして1周以上巻きつけて、該熱硬化性樹脂組成物の層に割れが発生しなかった場合を○(合格)、発生した場合を×(不合格)とした。
〔流動性〕
剪断モードの動的粘弾性測定装置(CVO、Bohling社製)を用い、加熱硬化前の樹脂シートについて、下記の条件で溶融粘度(Pa・S)を測定した。
。各樹脂シートの溶融粘度の評価は、60℃以上150℃以下範囲内での最も小さい溶融粘度で行った。
測定周波数:1Hz
昇温速度 :12℃/分
測定試料 :直径3mmの円形状の樹脂シート
〔積層性〕
高さが18μm,回路幅が50μm,回路間距離が50μmにて形成された回路を有するガラスエポキシ基板FR−4(MCL−E−67、日立化成工業(株)社製;銅箔の厚さ50μm、全体の厚さ1.2mm)の回路形成面と、PETフィルム基材付の樹脂シート(50μmの厚み)の熱硬化性樹脂組成物の層の表面が接するように重ねて、温度150℃、圧力1MPaの条件下で5分の加熱加圧を行って積層体を得た。積層体からPETフィルムをはがし熱硬化性樹脂組成物の表面からを、光学顕微鏡(倍率50倍)を用いて目視によって観察し、回路間の泡のかみ込みの有無を確認した。
回路間の泡のかみ込み(回路間に樹脂が入り込んでいない部分)が確認されなかった場合の積層性を合格(○)とし、泡のかみ込み確認がされた場合の積層性を不合格(×)として評価を行った。
〔樹脂シート中の揮発成分量の算出〕
質量分析装置(TGA50、島津製作所社製)を用い、樹脂シートを試料容器に入れて、下記条件にて重量変化を測定し、100℃〜300℃の範囲で減少した重量を、重量変化前の樹脂シートの重量に対する割合で算出し、揮発成分量とした。
測定温度範囲:15℃〜350℃
昇温速度 :20℃/分
測定雰囲気 :窒素、流量50mL/分
試料容器 :アルミニウム製
〔誘電特性〕
空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置(商品名、関東電子応用開発社製)を用い、下記条件にて、硬化樹脂シートの誘電率及び誘電正接を測定した。
測定周波数:3GHz、5GHz、10GHz、
測定温度 :22℃〜24℃
測定湿度 :45%〜55%
測定試料 :上記測定温度・測定湿度条件下で、24時間放置した樹脂シート
〔ガラス転移温度〕
DMS−200(セイコー電子工業社製)を用い、測定長(測定治具間隔)を20mmとして、下記の条件下で、硬化樹脂シートの貯蔵弾性率(ε’)の測定を行い、該貯蔵弾性率(ε’)の変曲点をガラス転移温度(℃)とした。
測定雰囲気:乾燥空気雰囲気下、
測定温度 :20℃〜400℃
測定試料 :幅9mm,長さ40mmにスリットした硬化樹脂シート
〔熱分解温度〕
質量分析装置(TGA50、島津製作所社製)を用い、硬化樹脂シートを試料容器に入れて、下記条件にて重量変化を測定し、JIS K 7120で定義される開始温度を熱分解温度とした。
測定温度範囲:30℃〜950℃
昇温速度 :20℃/分
測定雰囲気 :空気、流量50mL/分
試料容器 :白金製のマクロセル
試料量:5〜10mg
〔熱膨張係数〕
硬化樹脂シートの熱膨張係数は、セイコーインスツルメント社製・商品名:TMA120Cを用い測定した。下記所定の測定条件にて室温から200℃まで昇温させながら温度に対する寸法変化を測定した後、一旦冷却した。この操作により、測定サンプル中の残留応力を開放し、再度下記測定条件の測定温度範囲にて寸法変化を測定した。この2回目の測定において、温度−寸法変化の曲線における変曲点の温度をガラス転移温度(Tg)とし、−55℃〜125℃の温度範囲における平均熱膨張係数をサンプルの熱膨張係数として算出した。
測定試料サイズ:長さ 約20mm×幅5mm(チャック間15mm)
測定温度範囲:(1回目)室温、(2回目)−60℃〜300℃
昇温速度:10℃/min
荷重:1g
〔破断強度〕
硬化樹脂シートの破断強度は、ストログラフVES1D(商品名、(株)東洋精機製作所製)を使用し、ビルドアップ配線板技術標準ver2に従って下記条件にて測定し、硬化樹脂シート破断時の荷重より算出した。
測定試料サイズ:長さ 約80mm×幅 15mm(チャック間60mm)
引張速度:5mm/min
〔イミドオリゴマーの合成例1〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、1293.2gのジメチルホルムアミド(以下、DMF)を入れ、更に292.1g(1.0mol)の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学(株)社製)を入れ、窒素雰囲気下で撹拌して溶解させて、DMF溶液とした。続いて、フラスコ内を窒素雰囲気下で、DMF溶液を氷水で冷却しながら撹拌し、260.3g(0.5mol)の4、4’−(4、4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(GE社製、以下、IPBP)を添加し、更に2時間攪拌し、アミド酸オリゴマー溶液を得た。上記アミド酸オリゴマー溶液300gをフッ素樹脂でコートしたバットに移し、真空オーブンにて、200℃、5mmHg(約0.007気圧、約5.65hPa)の圧力の条件下で、3時間減圧加熱することによって、アミノ基を有するイミドオリゴマー(アミン価は計算上で267.2g/eq、以下オリゴマーA)を得た。重量平均分子量は、1068であった。
〔イミドオリゴマーの合成例2〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、400gのDMFを投入し、更に104.1g(0.2mol)のIPBPを投入し、窒素雰囲気下で撹拌して溶解させて、DMF溶液とした。続いて、フラスコ内を窒素雰囲気下で、DMF溶液を氷水で冷却しながら撹拌しながら25.8g(0.1mol)の3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(群栄化学工業(株)社製、以下DAM−1)を投入し1時間攪拌し、更に21.8g(0.2mol)の3−アミノフェノール(和光純薬(株)製)を入れ、更に2時間攪拌し、アミド酸オリゴマー溶液を得た。上記アミド酸オリゴマー溶液300gをフッ素樹脂でコートしたバットに移し、真空オーブンにて、200℃、5mmHg(約0.007気圧、約5.65hPa)の圧力の条件下で、3時間減圧加熱することによって、水酸基を有するイミドオリゴマー(水酸基価は、計算上で370.4g/eq、以下オリゴマーB)を得た。重量平均分子量は、1478であった。
〔ポリイミド樹脂の合成例〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、1480gのジメチルホルムアミド(以下、DMF)を投入し、続けて292g(1mol)の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学(株)社製、以下、APB)及び8.64g(0.04mol)の3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(和歌山精化工業(株)社製)を入れ、窒素雰囲気下で撹拌して溶解させて、DMF溶液とした。続いて、フラスコ内を窒素雰囲気下で、DMF溶液を氷水で冷却しながら撹拌し、541.3g(1.04mol)の4、4’−(4、4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(GE社製、以下、IPBP)を添加し、更に3時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液300gをフッ素樹脂でコートしたバットに移し、真空オーブンにて、200℃、5mmHg(約0.007気圧、約5.65hPa)の圧力の条件下で、3時間減圧加熱することによって、ポリイミド樹脂(PI)を得た。
〔実施例1〕
上記にて得たポリイミド樹脂と、エポキシ樹脂である液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(E827、最低溶融粘度0.1Pa・S(50℃)、エポキシ価=184g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)と、合成例1で得られたイミドオリゴマーAとを、表1に示す配合で、ジオキソランに溶解し樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を、支持体である38μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、の温度で各1分ずつ加熱乾燥させて、PETフィルムをフィルム基材とする2層シートを得た。尚、熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂シート(加熱硬化前)層の厚みは50μmであった。2層シートを熱硬化性樹脂組成物からなる層同士が互いに接触するように折り曲げて、熱ロールラミネーターを用い80℃で貼り合せ加工し、熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂シートの両面にPETフィルムが設けられているシートを得た。得られたシートから両側のPETフィルムを引き剥がし100μmの熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂シートを得た。得られた樹脂シート(加熱硬化前)のBステージ可とう性、樹脂流動性、積層性、揮発成分量を、上記の評価法で評価した。その結果を表3に示す。
更に、18μmの圧延銅箔(BHY−22B−T、ジャパンエナジー(株)社製)を用いて、該圧延銅箔の銅箔シャイン面に上記2層シートの熱硬化性樹脂組成物を含む層の表面が接するように重ねて、熱ロールラミネーターを用い80℃で貼り合せ加工し、更にPETフィルムを剥がすことにより、銅箔に熱硬化性樹脂組成物含む樹脂シートが積層された積層体を得た。得られた積層体を、熱風オーブンにて60℃から180℃まで1時間かけて昇温加熱し、更に180℃1時間加熱硬化させた。得られた銅箔積層体の銅箔をエッチングにより除去し硬化樹脂シートを得た。得られた硬化樹脂シートの硬化樹脂シートの誘電特性及びガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を測定した。その結果を表4に示す。
〔実施例2〜8〕
イミドオリゴマー、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、無機充填材、イミダソ゛ールを、表1に示す比率で混合した以外は、実施例1と同様の手法で、樹脂シート(加熱硬化前)、該樹脂シートを硬化させてなる硬化樹脂シートを得た。なお、表1中、E827(エポキシ価=184g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。NC3000H(エポキシ価=290g/eq、日本化薬(株)、60℃以下で固形)は、ビフェニル−フェノールノボラック共重合型エポキシ樹脂を示し、C11z−Aは、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(キュアゾールC11Z−A、四国化成工業(株)社製)、E1は、球状溶融シリカ〔SFP−130MC(商品名、電気化学工業(株)製、平均粒径0.5μm)〕を示す。得られた樹脂シートについて、Bステージ可とう性、流動性、積層性、揮発成分量を評価し、硬化樹脂シートについて、硬化樹脂シートの誘電特性及びガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を評価した。その結果を表3及び表4に示す。
〔比較例1〕
上記にて得たイミドオリゴマーに代えて硬化剤として、フェノール樹脂を使用し、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミダゾール、無機充填材を、表2に示す比率で混合した以外は、実施例1と同様の手法で、樹脂シート(加熱硬化前)、該樹脂シートを硬化させてなる硬化樹脂シートを得た。樹脂シートについて、Bステージ可とう性、流動性、積層性、揮発成分量を評価し、硬化樹脂シートについて、硬化樹脂シートの誘電特性及びガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を評価した。その結果を表3及び表4に示す。
Figure 2007091799
Figure 2007091799
Figure 2007091799
Figure 2007091799
上記の結果から、(A)イミドオリゴマーと(B)エポキシ樹脂を必須成分とした熱硬化性樹脂組成物において(B)エポキシ樹脂に液状エポキシ樹脂を含有させた熱硬化性樹脂組成物を用いて樹脂シートを得ることにより、優れた流動性及び積層性を得ることができ、また誘電特性に優れ、耐熱性、強度が良好なものとなり得る硬化樹脂シートを得ることができる。

Claims (10)

  1. 少なくとも一般式(1)
    Figure 2007091799
    (式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、a、bは、それぞれ独立して0以上15以下の整数であり、a+bは0以上15以下の整数を示す。また、(1)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)
    または一般式(2)
    Figure 2007091799
    (式中、R1は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む2価の有機基であり、R2は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも2つの芳香環を含む2価の有機基であり、R3は、同一であっても異なっていても良く、−OH、または−NH2から選択される1価の有機基であり、R4は、同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つの芳香環を含む4価の有機基を示し、Vは、直結、−O−,−CO−,−O−T−O−,及び,−COO−T−OCO−、−C(CH32−、−C(CF32−からなる群より選択される2価の基であり、Tは2価の有機基であり、cは、1以上15以下の整数、dは、0以上15以下の整数を示し、c+dは、1以上15以下の整数を示す。また、(2)は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体であってもよい。)で表されるイミドオリゴマーのうちの1種を含む(A)イミドオリゴマー成分と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む(B)エポキシ樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、上記(B)エポキシ樹脂成分に少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を含有していることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 上記(B)エポキシ樹脂成分に対する液状エポキシ樹脂成分の重量で表される重量混合比、液状エポキシ樹脂成分/(B)は、0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. さらに、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含む(C)ポリイミド樹脂成分を含むことを特徴とする請求項1または3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 上記(A)イミドオリゴマー成分、(B)エポキシ樹脂成分と(C)ポリイミド樹脂成分との全樹脂合計重量に対する上記(C)ポリイミド樹脂成分の重量で表される重量混合比(C)/[(A)+(B)+(C)]は、0.05以上0.7以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 上記(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ基のモル数に対する、上記(A)イミドオリゴマー成分に含まれる活性水素基のモル数で表されるモル混合比(A)/(B)は、0.4以上2.0以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. さらに少なくとも一種の無機充填材を含む(D)無機充填材成分を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解したことを特徴とする樹脂溶液
  8. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材に塗工、含浸したことを特徴とするプリプレグ。
  9. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物によって形成された樹脂層を少なくとも1層含んでなることを特徴とする積層体。
  10. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を有していることを特徴とする回路基板。
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