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JP2007087934A - 電子源及び画像表示装置 - Google Patents

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JP2007087934A
JP2007087934A JP2006215176A JP2006215176A JP2007087934A JP 2007087934 A JP2007087934 A JP 2007087934A JP 2006215176 A JP2006215176 A JP 2006215176A JP 2006215176 A JP2006215176 A JP 2006215176A JP 2007087934 A JP2007087934 A JP 2007087934A
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尚史 東
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潤 伊庭
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  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)
  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)

Abstract

【課題】放電電流を持続させることなく速やかに且つ確実に消弧する電極構造を実現し、該電極構造を備えた電子源及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】素子電極2,3と走査配線6,信号配線4との接続領域において素子電極幅を部分的に細く形成し、走査配線6と信号配線4との絶縁を図る絶縁層5を延長して、上記素子電極2,3の幅の細い部分を覆う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、放電を抑制する電極構造を備えた電子源と該電子源を用いてなる画像表示装置に関する。
従来、電子放出素子の利用形態としては、画像表示装置が挙げられる。例えば、冷陰極電子放出素子を多数形成した電子源基板と、電子放出素子から放出された電子を加速するアノード電極及び発光部材としての蛍光体を具備した対向基板とを平行に対向させ、真空に排気した平面型の電子線表示パネルが知られている。平面型の電子線表示パネルは、現在広く用いられている陰極線管(CRT)表示装置に比べ、軽量化、大画面化を図ることができる。また、液晶を利用した平面型表示パネルやプラズマ・ディスプレィ、エレクトロルミネッセント・ディスプレィ等の他の平面型表示パネルに比べて、より高輝度、高品質な画像を提供することができる。
このように、冷陰極電子放出素子から放出された電子を加速するために、アノード電極と素子との間に電圧を印加するタイプの画像表示装置においては、発光輝度を最大限に得るために高電圧を印加するのが有利である。素子の種類によって放出される電子線はアノード電極に到達するまでに発散するので、高解像度のディスプレィを実現しようとすると、リアプレートとフェースプレートとの基板間距離が短いのが好ましい。
しかしながら、基板間距離が短くなると必然的に該基板間が高電界となるため、放電により電子放出素子が破壊される現象が生じ易くなる。特許文献1には、電子放出部を有する導電性膜と素子電極との間に低融点材料からなる過電流防止材を配置して、素子電極間が短絡した際に他の素子に影響を及ぼさないように構成した画像表示装置が開示されている。さらに、特許文献2には、アクティブ領域外にヒューズを配置した画像表示装置が開示されている。また、特許文献3には、FEDにおけるエミッタとゲート間の短絡時の対策として、エミッタとカソード配線間に短絡電流によって溶断する抵抗層を設けることが開示されている。そしてこの抵抗層を絶縁層で覆うことで、抵抗層溶融時のガス発生を防止し、ガスによる2次放電の抑制が可能であることが開示されている。
特開平9−298030号公報 特開平9−245689号公報 特開平7−94076号公報
しかしながら、上記の特許文献に開示された構成では未だ不十分であり、放電の影響をより一層、確実に抑制する方策が望まれていた。即ち、画像形成部材に印加する電圧をより高く設定すると、放電発生時にヒューズが溶断した部位から新たな放電が発生し、長期間にわたり、より大電流の放電となる場合があった。その場合、ダメージの拡大と共に、パネル内の真空雰囲気の致命的な汚染が発生し、デバイス信頼性の大きな問題となっていた。
本発明は、上記課題を解決し、放電電流を持続させることなく速やかに且つ確実に消弧する電極構造を実現し、該電極構造を備えた電子源及び画像表示装置を提供することにある。
本発明の第一は、一対の素子電極間に電子放出部を有する複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子の一対の素子電極の一方を接続する第一の配線と、該複数の電子放出素子の一対の素子電極の他方を接続し、前記第一の配線と交差する第二の配線と、前記第一の配線と第二の配線との少なくとも交差部を絶縁し、且つ前記一対の素子電極の少なくとも一方の一部を覆う絶縁層とを有する電子源であって、
前記一対の素子電極の一方は、第一の領域と、該第一の領域と前記第一の配線との間に位置し該第一の領域よりも熱断線しやすい第二の領域とを有し、該第二の領域は一部を露出しながら前記絶縁層で覆われていることを特徴とする電子源である。
本発明の第二は、前記本発明第一の電子源と、該電子源から放出された電子の照射により発光する発光部材と該電子を加速するための電圧を印加する電極を少なくとも有する画像形成部材と、を備えたことを特徴とする画像表示装置である。
本発明においては、放電発生時に素子電極に設けた高温部(第二の領域)が溶融し、断線することによって放電が消失し、隣接する電子放出素子への新たな放電も効率よく抑制される。よって、放電による影響が最低限に抑えられ、信頼性の高い画像表示装置が提供される。
本発明の好ましい実施形態について、図1を用いて説明する。図1は本発明の電子源の好ましい一実施態様であり、図中、1はガラス基板(PD200:旭ガラス製、ソーダライムガラス、石英など)、セラミックス基板からなる電子源基板である。電子源基板1は、電子源特性に影響を与えないようアルカリブロック層としてシリカをコーティングすることがある。2,3はそれぞれ、Pt、Au、Ruなどの金属薄膜からなる走査側素子電極と信号側素子電極である。7は電子放出部8を含む導電性膜であり、Pd、Ruなどの金属或いはそれらの酸化物から形成される。
信号側素子電極3は外部ドライバ(不図示)からの表示信号波形を素子に伝える信号配線4に電気的に接続されている。走査側素子電極2は外部ドライバ(不図示)からの走査信号波形を素子に伝える走査配線6に電気的に接続されている。信号配線4、走査配線6は表示品位、消費電力の観点から低抵抗である必要があり、厚膜印刷(スクリーン印刷、オフセット印刷)、感光性印刷ペーストを用いたフォト印刷、鍍金などにより作製する。配線材料としては、Ag、Cuなどが好ましい。
信号配線4と走査配線6の間には電気的な絶縁層もしくは高抵抗層が必要であり、図1においては絶縁層5が設けられている。絶縁層5の作製方法としては、厚膜印刷法やフォトペーストによる印刷があり、材料としてはPbOなどを主成分とする絶縁層が利用される。
図1の電子源の作製工程を図2に示す。
先ず、電子源基板1上に走査側素子電極2を薄膜プロセスにて作製後〔図2(a)〕、信号側素子電極3を同様に作製する〔図2(b)〕。走査側素子電極2、信号側素子電極3はスパッタリング法、真空蒸着法やプラズマCVD法などにより形成される。続いて、図2(c)の通り信号配線4をスクリーン印刷や、感光性材料を用いたフォトペースト印刷などの厚膜印刷プロセスにて作製する。材料としてはAgにガラス成分を混合したものが用いられる。次いで絶縁層5をフォトペースト印刷により、パターン形成する〔図2(d)〕。絶縁層5はパターン精度が必要であるため、感光性材料とガラス成分を混合したフォトペーストにより、塗布、露光、乾燥、現像、焼成して作製される。引き続き走査配線6を厚膜印刷プロセスにて作製し〔図2(e)〕、インクジェット塗布により、Pd等からなる導電性膜7を形成する〔図2(f)〕。
続いて通電フォーミングと呼ばれる通電処理を行う。通電フォーミングは、走査配線6、信号配線4を介して素子電極2、3間に不図示の電源より通電を行い、導電性膜7を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、構造を変化させた部位を形成させるものである。この局所的に構造変化させた部位を電子放出部8と呼ぶ。
次に通電フォーミングが終了した素子に活性化工程と呼ぶ処理を施すことが望ましい。活性化工程とは、例えば、10-2乃至10-3Pa程度の真空度となるように活性化ガスを導入し、通電フォーミング同様、パルス波高値が一定の電圧パルスを繰り返し印加する処理のことである。これにより、真空中に存在する有機物質に起因する炭素及び炭素化合物を導電薄膜上に堆積させ素子電流If、放出電流Ieを著しく変化させる。活性化工程は素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら、例えば、放出電流Ieが飽和した時点で終了する。また印加する電圧パルスは動作駆動電圧で行うことが好ましい。こうして、ナノギャップからの電子放出を可能として、電子源として完成する。
蛍光体やアルミメタルバックなどの発光部材が配置されたフェースプレートや支持枠などと電子源を気密接合し、内部を真空とすることで、画像表示装置を作製する。
本発明の効果について、図3を用いて具体的に示す。
画像表示装置では、電子放出素子から放出された電子線により発光する発光部材(アノード)に数kVから数十kVの高電圧が印加されるため、真空中放電が発生することがある。放電の原因は未だ完全に解明されていないが、放電が生じて電流が流れると、図3(a)のように電子放出素子にダメージが発生することが多い。導電性膜7及び素子電極2,3上の放電ダメージは陰極点10の跡として残る。陰極点10では、電極材料の溶融、蒸発が生じていると言われており、陰極点10へアノード(不図示)から電流11が流れ込んでいる。
図3(b)に素子電極2,3上の電流12を模式的に示す。図3(b)に示すように陰極点10の先端で電流集中、ジュール熱発生、素子電極の溶融が生じるため、電荷が供給される上流(低電位側)に向かって陰極点が進行していく。電流12はアノード、真空中から陰極点10を流れ、素子電極2,3という経路をとる。素子電極2,3上の急変部13(熱断線しやすい第二領域の端部のうち最も高温となりやすい部分)では、電流集中により大きなジュール熱が発生する。そのため、急変部13でも材料の溶融が始まり、図3(c)に示すように新たな陰極点14が素子電極2,3上の急変部13から発生する。ここに、急変部とは電流が流れる断面積や抵抗が、言葉の通り急に変化する部位を指す。
先に生じていた陰極点10では、上流に生じた陰極点14によって、インピーダンスが高くなり、放電が収束していく(消弧)。一方、急変部13から発生した陰極点14は絶縁層5の近傍に位置しているために、絶縁層5に到達すると〔図3(d)〕、絶縁層5に遮蔽されて、消弧する。遮蔽部材として機能する絶縁層5としては、抵抗が十分に高い或いは絶縁部材であり、且つ、熱容量(比熱×密度)、融点が大きいほど好ましい。
つまり、本発明の効果は、素子電極の一部に他の部分よりも熱断線しやすい部分(第二領域)を設け、この部分が、配線との接続箇所に、絶縁層からその一部が露出するように位置することによって得られる。図3の構成においては、素子電極のうち、急変部13から配線との接続部までに及ぶ、幅の狭い部分が第二領域であり、素子電極のそれ以外の部分が第一の領域である。この構造によって、閾値電流が流れた時に熱断線しやすい第二領域が融点を超える高温となるため、第二領域の露出部に陰極点が移り、その結果、速やかに放電を消失させることが出来る。ここで閾値電流の設定は、上述のとおり、放電電流とするのが良い。尚、画像表示装置の場合、放電電流は、アノードの面積、印加電圧、アノードと電子源との距離、後述するアノードインピーダンス等で決まる。一例として、アノード面積が0.4m2、印加電圧が10kV、アノードと電子源との距離が1.6mmの場合、インピーダンスにもよるが放電電流は約100A程度となる。また、放電電流を小さく抑えるため、アノードを分割し、分割間を十分に高抵抗化する場合があり、この場合はアノードの分割数Nに応じて、放電電流はオーダ的に約100/N[A]に低減される。また、閾値電流は、例えばドライバの許容電流以下の値に設定することが望ましい。なぜなら、放電時に素子電極が破壊するため単ビットの欠陥を生じるが、ドライバは破壊することなくライン或いはブロックダメージとなることはない。また、より好ましくは、高抵抗側の配線、ここでは信号線と仮定して説明するが、その信号線の抵抗値を勘案した電流値を閾値電流とするのが良い。信号線に放電電流値が流れると、電位が上昇し、信号線に接続された電子放出素子がダメージを受ける。これを回避するためには素子がダメージをうける閾値電圧Vth、信号配線のグランドまでの抵抗Rsig、とすると閾値電流はVth/Rsig以下となる。尚、素子がダメージを受ける閾値電圧とは、後述の表面伝導型放出素子においては、製造工程時に素子に印加する最大電圧であり、後述のフォーミング、活性化工程等での最大印加電圧が閾値電圧と成る。続いて、熱断線しやすい領域(以下高温部という場合あり)の具体的な構造について、詳細に説明する。
〔急変構造・細線構造〕
急変部13の温度上昇は配線材料(素子電極2,3)の電気的物性値(抵抗、温度抵抗係数)と熱的物性値(熱伝導率、密度、比熱)、そして基板の熱的物性値、それらの幾何学形状により求めることができる。例えば、形状と電流を入力した電流場・熱伝導解析を連成させた有限要素ソルバーにより解析を行うことにより、温度が融点に到達したところで陰極点が10から14へ移ることが予測可能となる。新しい陰極点14は絶縁層5の遮蔽効果により速やかに消弧するため、放電電流と持続時間を予測、制御することが可能となる。急変部13の電流集中効果を十分に利用するには、熱断線しやすい高温部として、急変部13の後方(絶縁層5に近い部分)の幅Wを細くした幅細部を形成し、急変部の曲率半径Rを、R<(W/5)〜(W/10)とするのが好ましい。図3(e)に図3(d)の急変部13付近の拡大図を示す。
図4(a)に示すように、ある閾値以上の電流が流れた際に高温となり溶融する急変部13が複数ある場合、そのうちの一部を遮蔽層である絶縁層5で完全に覆う構成でもよい。また、熱断線しやすい領域が複数ある場合も、そのうちの一部は絶縁層に完全に覆われる構成であっても良い。つまり、本発明においては、熱断線しやすい領域の一部が絶縁層から露出していれば十分である。尚、図4(a)の構成においても、熱断線しやすい第二領域(高温部)は、急変部13の後方(絶縁層5に近い部分)の幅Wを細くした幅細部である。
〔凹線構造〕
急変部13,13’を二箇所作っておいて、より確実に陰極点14を発生させるとともに、先に生じた陰極点を確実に消弧する構造を図4(b)に示す。尚、図4(b)、(c)、(d)において、図4(a)と同じ構造には部番号を省略している。図4(b)では素子電極2の一部に幅細部を形成し、熱断線しやすい第二領域(高温部)としている。また図4(c)に示す通り、二箇所の急変部13,13’を全て遮蔽層である絶縁層5で覆うことも可能である。
尚、上述の図4(a)〜(c)では素子電極2についてのみ、種々の実施態様を示したが、全く同様の構成を素子電極3に施しても何ら問題は無い。
〔高抵抗構造〕
図4(d)における素子電極2は、幅細部を設ける代わりに、素子電極2,3の途中の絶縁層5の直下或いは近傍に高抵抗部16を形成し、熱断線しやすい高温部(第二の領域)としている。部分的に高抵抗化する手段としては、他部分より膜厚を薄膜化する、膜質をポーラス或いは粗にするなどが適用できる。他の材料を用いる場合には、高抵抗部16に高抵抗材料を用いると本発明の構成は容易に達成可能となる。尚、図4(d)における素子電極3は高抵抗部と幅細部とを有しており、いずれも熱断線しやすい第二領域を構成している。また、図4(c)、(d)では、複数ある急変部または高抵抗部のうちのいくつかは絶縁層で覆われているが、上述の図4(a)と同様、一部露出する部分があれば十分である。
図4(d)のように急変部を含む部分を全て高抵抗部16とした形態のほかに図5(a)〜(d)に示すように、一部を高抵抗部16に置換した構造とすることも可能である。こうした構造により、高抵抗部16を避けて電流が流れようとするために、急変部13に電流集中が生じ、周囲に比べより高い温度とすることができる。即ち、抵抗が大きな部分を小さな部分の中に挿入した構成とすることにより、電流集中部を作り、その電流集中部を高温とすることができる。よって図5の構成の場合、熱断線しやすい第二領域(高温部)は、高抵抗部16に隣接する幅細部となる。
〔構成〕
一方で、電気的特性ではなく、熱伝導率、熱拡散係数、比熱、密度を周囲とは変えることで高温部とすることができる。即ち、図4(d)、図5(a)〜(d)の高抵抗部16の熱伝導率を小さくすると良く、これは熱拡散係数、比熱、密度を小さくすることにより達成される。
また、高抵抗部16の融点が絶縁層5の融点よりも低い材料を用いる方が、より消弧を確実に行うことが出来る。なぜなら、高抵抗部16の融点が絶縁層5より高い場合は、高抵抗部16が溶融した際に絶縁層5も溶融する可能性があるからである。このような状況では、絶縁層5は陰極点14の遮蔽効果が低減する。そして、高抵抗部16の融点と絶縁層5の融点との差が500℃以上あるとより好ましい。絶縁層5が溶融しても遮蔽効果を得るためには、絶縁層に十分な厚みを持たせなければならない。つまり、絶縁層5の融点が高ければ、絶縁層をより薄膜で形成することが出来る。絶縁層5はSiO2やアルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)等の高融点材料が好ましい。高抵抗部16はInを含むITOや鉛、亜鉛、アルミ等の低融点材料が好ましい。
〔沿面距離規定〕
さらに、前記図3〜5中の高抵抗部16或いは急変部13の露出部の、絶縁層5に対する好ましい位置について図6を用いて説明する。尚、図6(b)は(a)中の中央の素子の素子電極2の絶縁層5に覆われた領域近傍の拡大図である。
図6(b)に示すように、配線に通電した際に、陰極点14は電子放出部8を除いて最も高温となる急変部13から絶縁層5へ向かい進行した後、電気的な遮蔽効果により絶縁層5の際で陰極点が滞る。急変部13から絶縁層5までの距離をL、高温部(熱断線しやすい第二の領域)の露出部と絶縁層5との境界部における該露出部の幅(素子電極の絶縁層による被覆幅)をWとする。この場合、陰極点14は消弧するまでに最も高温となる急変部13から最大でも距離(W+L)まで進むことが分かる。消弧までの時間τとして見積もると、陰極点14の進行速度Varc(=200m/s)とすると、τ=(W+L)/Varcとなる。
一方、陰極点14から生じたガスは、周囲に下記の式で決まるVgasで拡散し、隣接の電子放出素子に到達し、そこのガス分圧が上昇すると隣接電子放出素子が放電する場合がある。
gas=(2RT/M)1/2
〔ここで、
R:気体定数=8.314772J/molK
T:電極(本発明の場合Pt)の融点温度=2042.15K
M:噴出するガスの質量数(本発明のガスはArとPtであるが、Arの質量数39.948g/molを採用する。)である。〕
この場合、当該電子放出素子と隣接電子放出素子が連続してダメージを受け、欠陥として目立ってしまう。これを避けるには、陰極点14から隣接電子放出素子の電子放出部8までの距離Pと、ガス分子の速度Vgasとで決まる到達時間(P/Vgas)が、先に述べた消弧までの時間τよりも大きいことが必要条件となる。尚、陰極点14の位置は急変部13に移動するため、急変部13の位置で代用可能である。また、走査線の選択時間1Hよりも消弧時間τが小さい(短い)ことも重要な条件となる。1Hは、一般にスクロール周波数f[Hz]、走査線数Nとすると、1H=(f×N)-1[sec]である。尚、通常、ガス到達時間の方が1Hよりも小さい(短い)ため、前者(ガス到達時間より消弧時間τが小さい(短い))を満たせば十分である。
即ち、P/Vgas≧(W+L)/Varcであり、高温部から絶縁層5までの距離Lと電極幅Wが満足すべき条件は、距離W+L≦P・Varc/Vgasである。
一般に、陰極点の速度Varcは10〜500m/s(HANDBOOK OF VACUUM ARC SCIENCE AND TECHNOLOGY,NOYES PUBLICATIONS,1995,pp86)と報告がある。本発明の構成ではVarc=200m/s程度であった。ガス速度Vgasは〔(2RT/M)1/2:ここでRは気体定数(8.314772J/molK)〕である。本発明の場合には白金電極材料や白金電極材成膜時に取り込まれるArなどのガスが支配的であり、Tとしては白金の融点から沸点(2042〜4100K)、M=39.95より、約1000m/s程度となる。ゆえに、距離(W+L)≦P/5であり、さらに詳細には高精細な画像表示装置では、P=200μm程度となるためW+L≦40μmが必要条件となる。
(実施例1)
図1に示す構成の電子源を図2の工程に従って作製した。
先ず、板厚2.8mmのガラス(PD200:旭ガラス製)に、電子源特性に影響を与えないよう厚さ400nmのシリカコートをアルカリブロック層としてスパッタリング法により形成して電子源基板1とした。
上記電子源基板1に、厚さ5nmのTiを形成した後、厚さ20nmのPt薄膜をスパッタにより作製し、フォトレジスト塗布、露光、現像、エッチングを行うことでパターンニングし素子電極2、3を形成した。
続いて、Agを含有した感光性印刷ペーストをスクリーン印刷にて塗布後、乾燥させ、露光、現像、焼成を行い、信号配線4を作製した。次いで、高い位置精度を得るため、ガラス成分と感光性材料からなるPbOなどを主成分とするフォトペーストをスクリーン印刷によって塗布し、乾燥、露光、現像、焼成を行い、絶縁層5を形成した。図1に示すように、絶縁層5は信号配線4を被覆するように設置した。その上に、Agを含有する印刷ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、乾燥後、焼成して走査配線6を作製した。
次いで、該基板を洗浄後、PdOからなる導電性膜7をインクジェットプロセスにより塗布し、焼成して作製した。
このとき、急変部13から絶縁層5までの距離Lは15μm、絶縁層5の素子電極2,3被覆幅Wは20μm、また急変部13から隣接する電子放出素子までの距離P(急変部13から電子放出部8までの距離P)=175μmとした。
続いて、フォーミング、活性化処理を行い、電子源を得た。その後、この電子源基板と不図示の発光部材を有するフェースプレートとを封着、接合を行い、画像表示装置を作製後、不図示の駆動ドライバ、高圧電源と電気的に接続し、所定の電圧を印加することにより画像を表示した。
図8に特許文献1に示されている電子源の構成を示す。図8中、21は基板、22,23は素子電極、24は導電性膜(素子膜)、25は電子放出部、26は過電流防止膜(ヒューズとして機能する低融点材料)である。本実施例との違いは、単にヒューズ(低融点材料)26が設置されていて、高温部が遮蔽材としての絶縁層に一部を覆われるように配置されていないため消弧構造とならないことである。つまり、放電が生じるとヒューズ部に陰極点が移動するが、そこで放電が持続してしまい、電圧が印加された隣接素子へガスが飛翔、隣接素子でも放電発生・ダメージというサイクルが発生してしまう場合があった。つまり、ヒューズの断線位置を制御できないため、断線までに時間がかかるとともに、ガスが大量に発生し、結果、隣接素子での新たな放電を生じさせる場合があった。
本発明の画像表示装置においても、印加する電圧を上昇させていくと、放電が発生する場合がある。その際の放電ダメージを詳細に観察し、放電ダメージが一素子で収まっている割合を従来例と比較すると、本実施例の場合が圧倒的に高く、本発明の効果を確認することができた。
また、参考例として、次の構成の画像表示装置を検討した。
図1中の急変部13から絶縁層までの距離Lを20μm
絶縁層の素子電極被覆幅Wを50から100μm
電圧が印加された隣接する電子放出素子までの距離P(急変部13から電子放出部8までの距離P)=175μm
その結果、本実施例の方がいずれの参考例よりも放電ダメージが一素子で収まっている割合が高いことが分かった。
(実施例2)
図7に示す構成の電子源を作製した。
実施例1との違いは、高抵抗部16(抵抗値の急変部)を設け、さらに該高抵抗部16の幅を細くしており、部材としてITOを用いていることである。よって、高抵抗部16は陰極点が発生すると還元反応により、被覆材の絶縁層5よりも低融点の材料となり易い。高抵抗部16を、こうした低融点材で構成することにより、被覆材である絶縁層5を安定な状態に保ち、より消弧の安定性を高めることができる。
ITOはスパッタリング法により作製し、パターニングを行った。その他の作製方法は実施例1と同様である。
尚、本実施例では、高温となる高抵抗部16の急変部13から絶縁層5までの距離Lは10μm、絶縁層の素子電極被覆幅Wは20μm、また電圧が印加された隣接する電子放出素子までの距離P(急変部分13から電子放出部8までの距離)は160μmとした。
本例の画像表示装置と従来例に示された電子源を用いた画像表示装置に印加する電圧を上昇させて、放電を発生させ、放電ダメージを詳細に観察したところ、放電ダメージが一素子で収まっている割合が、本例の場合が圧倒的に高く、本発明の効果を確認できた。
本発明の電子源の一実施形態の平面模式図である。 図1の電子源の作製工程を示す平面模式図である。 本発明の効果を詳細に説明する図である。 本発明にかかる高温部の具体例を示す模式図である。 本発明にかかる高温部の具体例を示す模式図である。 本発明にかかる高温部の好ましい構成例を示す模式図である。 本発明の実施例2で作製した電子源の平面模式図である。 従来例の電子源の平面模式図である。
符号の説明
1 電子源基板
2 走査側素子電極
3 信号側素子電極
4 信号配線
5 絶縁層
6 走査配線
7 導電性膜
8 電子放出部
10 陰極点
12 電流
13 急変部
14 陰極点
16 高抵抗部

Claims (8)

  1. 一対の素子電極間に電子放出部を有する複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子の一対の素子電極の一方を接続する第一の配線と、該複数の電子放出素子の一対の素子電極の他方を接続し、前記第一の配線と交差する第二の配線と、前記第一の配線と第二の配線との少なくとも交差部を絶縁し、且つ前記一対の素子電極の少なくとも一方の一部を覆う絶縁層とを有する電子源であって、
    前記一対の素子電極の一方は、第一の領域と、該第一の領域と前記第一の配線との間に位置し該第一の領域よりも熱断線しやすい第二の領域とを有し、該第二の領域は一部を露出しながら前記絶縁層で覆われていることを特徴とする電子源。
  2. 前記第二の領域の露出部から絶縁層までの距離L、該露出部と絶縁層との境界部における該露出部の幅W、該露出部から隣接する電子放出素子までの距離Pが、以下の関係を満たす請求項1に記載の電子源。
    W+L≦(P/5)
  3. 前記第二の領域の幅が、前記第一の領域の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の電子源。
  4. 前記第二の領域の厚さが、前記第一の領域の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子源。
  5. 前記第二の領域の抵抗値が、前記第一の領域の抵抗値より大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子源。
  6. 前記第二の領域が、前記第一の領域よりも高抵抗な材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子源。
  7. 前記第二の領域が、前記第一の領域よりも熱拡散係数が小さい材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の電子源と、該電子源から放出された電子の照射により発光する発光部材と該電子を加速するための電圧を印加する電極を少なくとも有する画像形成部材と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
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