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JP2007070310A - 第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法 - Google Patents

第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法 Download PDF

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JP2007070310A JP2005261872A JP2005261872A JP2007070310A JP 2007070310 A JP2007070310 A JP 2007070310A JP 2005261872 A JP2005261872 A JP 2005261872A JP 2005261872 A JP2005261872 A JP 2005261872A JP 2007070310 A JP2007070310 A JP 2007070310A
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Abstract

【解決課題】 第二級ホスフィン−ボラン錯体を、工業的な規模で、安価に製造できる第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ホスホニウム塩と、水素化ホウ素アルカリ金属塩又はアミン−ボラン錯体とを反応させ、第二級ホスフィン−ボラン錯体を得ることを特徴とする第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、医薬、農薬、触媒等の化学品の中間原料、特にリン原子上に不斉中心を有するビスホスフィン配位子の製造原料として有用な、第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法に関する。
従来より、第二級ホスフィン−ボラン錯体は、医薬、農薬、触媒等の化学品の中間原料として用いられてきた。そして、近年、第二級ホスフィン−ボラン錯体は、リン原子上に不斉中心を有するビスホスフィン配位子の製造原料として有用であることが報告されている。
具体的には、J.Am.Chem.Soc.1998,120,1635〜1636頁(非特許文献1)、特開平11−80179号公報(特許文献1)等には、リン原子上に不斉中心を有する1,2−ビス(ホスフィノ)エタンを基本骨格とするビスホスフィン配位子が、不斉選択性及び触媒活性に優れた不斉水素化反応の触媒の配位子であることが開示されており、そして、特開2003−300988号公報(特許文献2)、特開2001−253889号公報(特許文献3)及びBull.Chem.Soc.,Jpn.,75,1359−1365(2002)(非特許文献2)には、第二級ホスフィン−ボラン錯体が、1,2−ビス(ホスフィノ)エタンを基本骨格とするビスホスフィン配位子の中間原料として有用であることが示されている。
そのため、第二級ホスフィン−ボラン錯体の効率の良い製造方法の開発が望まれている。
第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法としては、特許文献2には、下記反応式(5):
(式中、R及びR’は、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Yは、ハロゲン原子を示す。)
に示すように、第一級ホスフィン−ボラン錯体(6)と、ハロゲン化物(7)とを、n−ブチルリチウム等の塩基の存在下で反応させ、第二級ホスフィン−ボラン錯体(8)を得る方法(以下、従来の製造方法(I)とも記載する。)が開示されている。また、特許文献3には、特許文献2と同様に、第一級ホスフィン−ボラン錯体と、ハロゲン化物とを、塩基の存在下で反応させ、第二級ホスフィン−ボラン錯体を得る方法が開示されている。
また、他の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法としては、下記反応式(9):
(式中、R及びR’は、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
に示すように、第二級ホスホニウム塩(10)を出発原料として、該第二級ホスホニウム塩(10)をアルカリで中和して、第二級ホスフィン(11)を得る中和工程、及び該第二級ホスフィン(11)を、ボラン−THF錯体と反応させて、第二級ホスフィン−ボラン錯体(12)を得る錯体形成工程を経る方法(以下、従来の製造方法(II)とも記載する。)が挙げられる。該第二級ホスホニウム塩(10)から、該第二級ホスフィン(11)を得る中和工程は、例えば、特開2004−210672号公報(特許文献4)に開示されている。
特開平11−80179号公報 特開2003−300988号公報 特開2001−253889号公報 特開2004−210672号公報 J.Am.Chem.Soc.1998,120,1635〜1636頁 Bull.Chem.Soc.,Jpn.,75,1359−1365(2002)
該従来の製造方法(I)では、リン原子に置換基を導入するにあたり、n−ブチルリチウム等のアルキルリチウム又はフェニルリチウム等のアリールリチウムを塩基として用いる必要があるが、これらは一般には高価であり大量に使用するのは経済的に不利であることに加え、その危険性のために取り扱いには細心の注意を払う必要がある。従って、該従来の製造方法(I)は、工業規模では実施することが困難であるという問題があった。
また、該従来の製造方法(II)では、該中和工程で、水酸化ナトリウム等のアルカリを用いて中和を行うため、反応系中に水が残存する。そして、該錯体形成工程において、反応系中に水が存在すると、該ボラン−THF錯体と水が反応してしまうため、該錯体形成工程を行う前に、該中和工程で得られた該第二級ホスフィン(11)の脱水工程を行わなければならない。そして、該脱水工程は、蒸留又はトルエン等の水と共沸混合物を作る溶媒との共沸蒸留であるが、水及びトルエンと沸点が近いために、完全に脱水することが難しい第二級ホスフィン(11)もあった。すわなち、該従来の製造方法(II)には、該脱水工程を設けなければならないので、コストアップになるという問題があり、加えて、第二級ホスフィン−ボラン錯体の種類によっては、前駆体である第二級ホスフィンの脱水を充分に行えないために、製造できないものがあるという問題があった。
従って、本発明の目的は、第二級ホスフィン−ボラン錯体を、工業的な規模で、安価に製造できる第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、第二級ホスフィンのホスホニウム塩と、水素化ホウ素アルカリ金属塩又はボラン−アミン錯体とを反応させることにより、該ホスホニウム塩から、第二級ホスフィン−ボラン錯体が、高純度且つ高収率で得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
(式中、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RとRは、同一の基であっても異なる基であってもよく、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
で表されるホスホニウム塩と、水素化ホウ素アルカリ金属塩又はボラン−アミン錯体とを反応させ、下記一般式(2):
(式中、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RとRは、同一の基であっても異なる基であってもよい。)
で表される第二級ホスフィン−ボラン錯体を得る第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法を提供するものである。
本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法によれば、第二級ホスフィン−ボラン錯体を、工業的な規模で、安価に製造することができる。
本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法は、ホスホニウム塩と、水素化ホウ素アルカリ金属塩又はボラン−アミン錯体とを反応させ、第二級ホスフィン−ボラン錯体を得る方法である。
本発明に係るホスホニウム塩は、下記一般式(1):
(式中、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RとRは、同一の基であっても異なる基であってもよく、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
で表されるホスホニウム塩である(以下、ホスホニウム塩(1)とも記載する。)。つまり、該ホスホニウム塩(1)は、第二級のホスフィンのホスホニウム塩であり、第二級ホスフィンのリン原子の非共有電子対にプロトンが配位子しているホスホニウムイオン(カチオン)と、ハロゲン化物イオン(アニオン)との塩である。
該ホスホニウム塩(1)のR及びRは、炭素数1〜18の基であり、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。そして、該ホスホニウム塩(1)のR及びRに係るアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ドデシル基、iso−ドデシル基、n−オクタデシル基、iso−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
該ホスホニウム塩(1)のRとRは、同一の基であっても異なる基であってもよい。また、リン原子上に不斉中心を有する光学活性なホスフィンである1,2−ビス(ホスフィノ)エタンの製造原料として用いられる第二級ホスフィン−ボラン錯体を製造する場合には、該ホスホニウム塩(1)のRとRは、異なる基である。
該ホスホニウム塩(1)のXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、これらのうち、Xがヨウ素原子であることが、該ホスホニウム塩(1)の反応性が高くなる点で好ましい。該ホスホニウム塩(1)の好ましい一例としては、エチルメチルホスホニウムヨーダイド、イソプロピルメチルホスホニウムヨーダイド、n−プロピルメチルホスホニウムヨーダイド、イソブチルメチルホスホニウムヨーダイド、n−ブチルメチルホスホニウムヨーダイド、tert−ブチルメチルホスホニウムヨーダイド、sec−ブチルメチルホスホニウムヨーダイド、イソヘプチルメチルホスホニウムヨーダイド、n−ヘプチルメチルホスホニウムヨーダイド、イソヘキシルメチルホスホニウムヨーダイド、n−ヘキシルメチルホスホニウムヨーダイド、シクロペンチルメチルホスホニウムヨーダイド、シクロヘキシルメチルホスホニウムヨーダイド、ベンジルメチルホスホニウムヨーダイド、イソプロピルエチルホスホニウムヨーダイド、n−プロピルエチルホスホニウムヨーダイド、イソブチルエチルホスホニウムヨーダイド、n−ブチルエチルホスホニウムヨーダイド、tert−ブチルエチルホスホニウムヨーダイド、sec−ブチルエチルホスホニウムヨーダイド、イソヘプチルエチルホスホニウムヨーダイド、n−ヘプチルエチルホスホニウムヨーダイド、イソヘキシルエチルホスホニウムヨーダイド、n−ヘキシルエチルホスホニウムヨーダイド、シクロペンチルエチルホスホニウムヨーダイド、シクロヘキシルエチルホスホニウムヨーダイド、ベンジルエチルホスホニウムヨーダイド、イソプロピル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、イソブチル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、n−ブチル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、tert−ブチル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、sec−ブチル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、イソヘプチル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、n−ヘプチル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、イソヘキシル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、n−ヘキシル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、シクロペンチル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、シクロヘキシル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、ベンジル−n−プロピルホスホニウムヨーダイド、イソブチルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、n−ブチルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、tert−ブチルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、sec−ブチルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、イソヘプチルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、n−ヘプチルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、イソヘキシルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、n−ヘキシルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、シクロペンチルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、シクロヘキシルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、ベンジルイソプロピルホスホニウムヨーダイド、イソブチル−tert−ブチルホスホニウムヨーダイド、n−ブチル−tert−ブチルホスホニウムヨーダイド、sec−ブチル−tert−ブチルホスホニウムヨーダイド、ベンジル−tert−ブチルホスホニウムヨーダイド、tert−オクチルメチルホスホニウムヨーダイド、アダマンチルメチルホスホニウムヨーダイド及びn−テトラデシル−tert−ブチルホスホニウムヨーダイド等が挙げられる。これらのうち、tert−ブチルメチルホスホニウムヨーダイド、シクロヘキシルメチルホスホニウムヨーダイド、tert−オクチルメチルホスホニウムヨーダイド、アダマンチルメチルホスホニウムヨーダイドは、リン原子に結合している2つの基RとRのうち、一方がかさ高く且つ他方のかさが低いので、不斉水素化反応用の触媒の配位子の製造原料として用いられる場合に、優れた立体選択性を発揮する配位子を提供できる点で、特に好ましい。なお、上記の具体的な化合物は、本発明の好ましい形態、すなわち、ホスホニウムイオンとヨウ化物イオンとの塩であるが、本発明においては、該ホスホニウム塩(1)の具体的な化合物として、他に、上記ヨウ化物イオンが、塩化物イオン又は臭化物イオンであるホスホニウム塩が挙げられる。
本発明に係る水素化ホウ素アルカリ金属塩は、MBHの化学式(式中、Mはアルカリ金属原子を示す。)で表され、好ましくは水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素カリウム(KBH)である。
本発明に係るボラン−アミン錯体は、BH・R (3−n)Nの化学式(式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアリール基を示し、同一の基であっても異なる基であってもよく、nが2以上の時は2つのRで環を形成していてもよく、nは、0〜3の整数である。)で表される錯体、すなわち、ボラン(BH)と、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミンとの錯体である。該ボラン−アミン錯体としては、具体的には、ボラン−アンモニア錯体、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−4−エチルモルホリン錯体、ボラン−2,6−ルチジン錯体、ボラン−モルホリン錯体、ボラン−4−メチルモルホリン錯体、ボラン−4−フェニルモルホリン錯体、ボラン−ピペラジン錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン−N,N−ジイソプロピルアニリン錯体等が挙げられる。
このように、該ホスホニウム塩(1)と反応させる化合物は、水素化ホウ素アルカリ金属塩、又はBH若しくはBHとアミンとからなる錯体である。該ホスホニウム塩(1)と反応させる化合物のうち、水素化ホウ素ナトリウムが、工業的に入手が容易且つ安価であり、取り扱いも容易である点で、特に好ましい。
本発明に係る水素化ホウ素アルカリ金属塩及びボラン−アミン錯体の使用量は、該ホスホニウム塩(1)1モルに対して、好ましくは1〜2モル、特に好ましくは1〜1.5モルである。該水素化ホウ素アルカリ金属塩及びボラン−アミン錯体の使用量が、上記範囲にあることにより、第二級ホスフィン−ボラン錯体を、工業的な規模で、安価に製造できるという本発明の効果が高まる。
該ホスホニウム塩(1)と、該水素化ホウ素アルカリ金属塩及びボラン−アミン錯体との反応は、溶媒の存在下で行われる。該溶媒としては、該ホスホニウム塩(1)、該水素化ホウ素アルカリ金属塩、該ボラン−アミン錯体及び生成物である第二級ホスフィン−ボラン錯体に対して不活性であれば、特に制限されず、例えば、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)等のエーテル類等が挙げられる。これらのうち、エーテル類が、該ホスホニウム塩(1)、該水素化ホウ素アルカリ金属塩及び該ボラン−アミン錯体の溶解能が比較的高く、その結果、反応性が高まる点で好ましい。また、これらの溶媒は単独で用いても、あるいは、混合溶媒として用いてもよい。
該ホスホニウム塩(1)と、該水素化ホウ素アルカリ金属塩及びボラン−アミン錯体との反応の際の反応温度は、好ましくは−40〜150℃、特に好ましくは0〜80℃である。該反応温度が−40℃未満だと、反応速度が遅くなり過ぎて反応の完結に時間がかかり非効率となり易く、また、150℃を越えると、生成物である第二級ホスフィン−ボラン錯体が分解し易くなる。また、該ホスホニウム塩(1)と、該水素化ホウ素アルカリ金属塩及びボラン−アミン錯体との反応の際の反応時間は、好ましくは1〜48時間、特に好ましくは6〜24時間である。
該ホスホニウム塩(1)と、該水素化ホウ素アルカリ金属塩又はボラン−アミン錯体との反応終了後、必要に応じて、反応に使用されなかった該水素化ホウ素アルカリ金属塩又はボラン−アミン錯体を、アルコール又は水で分解する分解操作、溶媒抽出、洗浄、濃縮を実施することができる。また、更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、蒸留操作、有機溶媒からの再結晶等により精製を行うことができる。
このようにして得られる第二級ホスフィン−ボラン錯体は、下記一般式(2):
(式中、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RとRは、同一の基であっても異なる基であってもよい。)
で表される第二級ホスフィン−ボラン錯体である(以下、第二級ホスフィン−ボラン(2)とも記載する。)。つまり、該第二級ホスフィン−ボラン錯体(2)は、第二級ホスフィンのリン原子の非共有電子対にボラン(BH)が配位している錯体である。
また、本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法に用いられる該ホスホニウム塩(1)を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(3):
(式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
で表される第一級ホスフィン(以下、第一級ホスフィン(3)とも記載する。)と、下記一般式(4):
(式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Rは、Rと同一の基であっても異なる基であってもよく、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
で表されるハロゲン化物(以下、ハロゲン化物(4)とも記載する。)とを反応させることにより得られる。
該第一級ホスフィン(3)のR及び該ハロゲン化物(4)のRは、前記ホスホニウム塩(1)のR及びRと同様である。また、該第一級ホスフィン(3)のRと該ハロゲン化物(4)のRは、同一の基であっても異なる基であってもよい。また、リン原子上に不斉中心を有する光学活性なホスフィンの製造原料として用いられる第二級ホスフィン−ボラン錯体を製造する場合には、該第一級ホスフィン(3)のRと該ハロゲン化物(4)のRは、異なる基である。また、該第一級ホスフィン(3)のR及び該ハロゲン化物(4)のRの組合わせとしては、該第一級ホスフィン(3)のR及び該ハロゲン化物(4)のRのいずれか一方がtert−ブチル基、他方がメチル基の組合わせ、いずれか一方がシクロヘキシル基、他方がメチル基の組み合わせ、いずれか一方がtert−オクチル基、他方がメチル基の組合わせ、及びいずれか一方がアダマンチル基、他方がメチル基の組合わせであることが、該第一級ホスフィン(3)のR及び該ハロゲン化物(4)のRのうち、いずれか一方がかさ高く且つ他方のかさが低いので、不斉合成触媒用の配位子の製造原料として用いられる場合に、優れた立体選択性を有する配位子を提供できる点で好ましい。
該第一級ホスフィン(3)と、該ハロゲン化物(4)との反応において、該ハロゲン化物(4)の使用量は、該第一級ホスフィン(3)1モルに対して、好ましくは0.5〜10モル、特に好ましくは1〜1.1モルである。
該第一級ホスフィン(3)と、該ハロゲン化物(4)との反応を、無溶媒下又は溶媒の存在下のいずれでも行うことができるが、該第一級ホスフィン(3)と、該ハロゲン化物(4)を溶解することができ、且つ該ホスホニウム塩(1)をほとんど溶解しない溶媒の存在下で行うことが、該ホスホニウム塩(1)が結晶物として得られるため、該ホスホニウム塩(1)を反応系から容易に分離回収でき、工業的に有利な点で好ましい。溶媒の存在下で該反応を行う場合、該溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられ、これらは1種又は2種以上の併用のいずれでもよく、これらのうち、トルエンが、該第一級ホスフィン(3)及び該ハロゲン化物(4)を溶解できる一方、生成する該ホスホニウム塩(1)をほとんど溶解せず、反応後の該ホスホニウム塩(1)が結晶として析出するため、濾過等の簡単な操作によって、該ホスホニウム塩(1)を高純度且つ高収率で得られる点で、特に好ましい。
また、該第一級ホスフィン(3)と、該ハロゲン化物(4)との反応の際の反応温度は、好ましくは50〜100℃、特に好ましくは70〜90℃であり、反応時間は、好ましくは1〜48時間、特に好ましくは10〜24時間である。また、反応終了後、必要に応じ、洗浄、極性有機溶媒からの再結晶等による精製を行うことができる。
そして、該第一級ホスフィン(3)と、該ハロゲン化物(4)とを反応させることにより、工業的な規模で且つ容易に、高収率且つ高純度の該ホスホニウム塩(1)を製造することができる。従って、該第一級ホスフィン(3)と、該ハロゲン化物(4)とを反応させて得られるホスホニウム塩を、本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法に係る該ホスホニウム塩(1)として用いることが、第二級ホスフィン−ボラン錯体を、工業的な規模で且つ安価に製造できるという本発明の効果が高まる点で、特に好ましい。
このようにして得られる該第二級ホスフィン−ボラン錯体(2)は、医薬、農薬、触媒等の化学品の中間原料に用いられ、特に、該ホスフィン−ボラン錯体(2)のRとRが異なる基であるものは、リン原子上に不斉中心を有するビスホスフィン配位子の中間原料として好適に使用される。
本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法では、安価且つ取扱いが容易な該水素化ホウ素アルキル金属塩又は該ボラン−アミン錯体を用いるので、該従来の製造方法(I)に比べ、工業的な規模で且つ安価に、第二級ホスフィン−ボラン錯体を製造できる。また、該従来の製造方法(II)は、ホスホニウム塩を出発原料に、アルカリによる中和工程、脱水工程及び錯体形成工程と、三段の反応工程を経て、第二級ホスフィン−ボラン錯体を製造する方法であるのに対し、本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法は、ホスホニウム塩を出発原料に、一段の反応工程で、第二級ホスフィン−ボラン錯体を製造する方法であるので、本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法によれば、従来の製造方法(II)に比べ、製造コストを低くできる。すなわち、本発明の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法によれば、工業的な規模で且つ安価に、第二級ホスフィン−ボラン錯体を製造できる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明は、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
<tert−ブチルメチルホスホニウムヨーダイドの合成>
tert‐ブチルホスフィン450g(6mol)のトルエン2500ml溶液に、ヨウ化メチル780g(5.5mol)を1時間かけて滴下し、反応液を、75℃で、20時間熟成させた。生じた白色固体を、ろ過し、ヘキサン洗浄、乾燥を行ない、tert−ブチルメチルホスホニウムヨーダイド948gを収率68%で得た(下記反応式(13))。
<tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン錯体の合成>
マグネチックスターラー並びに上部に3方コック及び窒素風船をつけたコンデンサーを備えた300mlの2口フラスコに、上記のようにして得たtert-ブチルメチルホスホニウムヨーダイド24.3g(105mmol)と水素化ホウ素ナトリウム4.6g(160mmol、1.53当量)を秤量し、系内を十分に窒素置換した。次いで、系内に窒素を流しながら3方コックを解放し、ここに脱水THF100mlをカニュラにて加えた。水素発生が落ち着いたら3方コックを閉めて密閉系にし、70〜80℃のオイルバス中で加熱し、リフラックスさせ13時間反応を行った。反応終了後、反応液に10mlのメタノールを加え、次いで、反応液を氷100g中に慎重に注いだ。ここに更に1M HCl水溶液50mlを少しずつ添加し、発泡が完全になくなるまで約1時間攪拌した。次いで、酢酸エチル100mlを加えて、有機層と水層を分離した。水層に1M HCl水溶液50mlを加え、次いで、酢酸エチル50mlを用いて2回抽出を行った。得られた有機層を全て集めて、1M HCl水溶液50mlで2回、飽和食塩水50mlで2回洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで脱水した。次いで、エバポレーターにて濃縮し、tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン錯体11.3gを収率91%で得た(下記反応式(14))。得られたtert−ブチルメチルホスフィン−ボラン錯体のTLC分析(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=5:1)を実施したところ、生成物以外のスポットは観察されなかった。
(tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン錯体の分析結果)
1H NMR(300.4 MHz, CDCl3)δ = 0.51(q, J = 97.6 Hz, 3H), 1.22(d, J = 14.9 Hz, 9H), 1.32(dd, J = 10.8 Hz, J = 6.1 Hz, 3H), 4.41(dq, J = 355 Hz, J = 6.1 Hz, 1H)
31P NMR(121.5 MHz, CDCl3)δ = 12.3(d, J = 355 Hz)
(実施例2)
<tert−ブチルメチルホスホニウムヨーダイドの合成>
実施例1と同じ操作で、tert−ブチルメチルホスホニウムヨーダイドを合成した。
<tert−ブチルメチルホスフィンボランの合成>
良く乾燥した100mLの4口フラスコに、マグネチックスターラー、窒素風船を設置し、上記のようにして得たtert-ブチルメチルホスホニウムヨーダイド 2.32g(10mmol)を秤量し、系内を十分に窒素置換した。次いで、脱水THF30mlを加え、反応系を氷浴で冷却した。ここにシリンジを用いて、ボラン−ピリジン錯体(BH・CN)10ml(11mmol)を加えた。0℃で1時間撹拌した後、湯浴を用いて、反応系を徐々に50℃まで昇温させ、6時間反応させた。反応終了後、反応液を、窒素雰囲気下、グラスフィルター(4G)で濾過し、生成したピリジニウム塩を除去した。濾液を氷20gを含んだ1M HCl水溶液20ml中に慎重に注ぎ、発泡が完全になくなるまで約1時間攪拌した。次いで、酢酸エチル50mlを用いて2回抽出を行った。得られた有機層を全て集めて、1M HCl水溶液50mlで2回、飽和食塩水50mlで2回洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで脱水した。次いで、エバポレーターにて濃縮し、tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン錯体732mgを、収率62%で得た(下記反応式(15))。得られたtert−ブチルメチルホスフィン−ボラン錯体のTLC分析(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=5:1)を実施したところ、生成物以外のスポットは観察されなかった。
(tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン錯体の分析結果)
1H NMR(300.4 MHz, CDCl3)δ = 0.51(q, J = 97.6 Hz, 3H), 1.22(d, J = 14.9 Hz, 9H), 1.32(dd, J = 10.8 Hz, J = 6.1 Hz, 3H), 4.41(dq, J = 355 Hz, J = 6.1 Hz, 1H)
31P NMR(121.5 MHz, CDCl3)δ = 12.3(d, J = 355 Hz)

Claims (6)

  1. 下記一般式(1):

    (式中、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RとRは、同一の基であっても異なる基であってもよく、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
    で表されるホスホニウム塩と、水素化ホウ素アルカリ金属塩又はボラン−アミン錯体とを反応させ、下記一般式(2):

    (式中、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RとRは、同一の基であっても異なる基であってもよい。)
    で表される第二級ホスフィン−ボラン錯体を得ることを特徴とする第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法。
  2. 前記一般式(1)で表されるホスホニウム塩のRとRは、異なる基であることを特徴とする請求項1記載の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法。
  3. 前記水素化ホウ素アルカリ金属塩が、水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法。
  4. 前記一般式(1)で表されるホスホニウム塩が、下記一般式(3):


    (式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
    で表される第一級ホスフィンと、下記一般式(4):

    (式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Rは、Rと同一の基であっても異なる基であってもよく、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
    で表されるハロゲン化物とを反応させて得られるホスホニウム塩であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法。
  5. 前記第一級ホスフィンと前記ハロゲン化物との反応を、溶媒の存在下で行うことを特徴とする請求項4記載の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法。
  6. 前記一般式(3)で表される第一級ホスフィンのRと前記一般式(4)で表されるハロゲン化物のRは、異なる基であることを特徴とする請求項4又は5いずれか1記載の第二級ホスフィン−ボラン錯体の製造方法。
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