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JP2007064371A - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

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JP2007064371A JP2005251457A JP2005251457A JP2007064371A JP 2007064371 A JP2007064371 A JP 2007064371A JP 2005251457 A JP2005251457 A JP 2005251457A JP 2005251457 A JP2005251457 A JP 2005251457A JP 2007064371 A JP2007064371 A JP 2007064371A
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Yasunari Matsui
康成 松井
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】 ベルト滑りの発生および燃費の悪化を抑制する。
【解決手段】 ECT_ECUは、狭圧力の急低下が許可されないと(S100にてNO)、K=αとしてなまし係数Kを設定するステップ(S102)と、狭圧力の急低下が許可されると(S100にてYES)、K=βとしてなまし係数Kを設定するステップ(S104)と、最終目標値を算出するステップ(S106)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、一対のプーリと無端ベルトとを含む無段変速機の制御装置に関し、特に、プーリの油圧の目標値が低下するときに、目標値の低下に対して油圧の低下を緩やかにする制御に関する。
従来、ベルト式の無段変速機においては、油圧によりプーリの溝幅を変更することにより、プーリに巻回された無端ベルトの有効係り径が変更され、変速比が制御される。プーリは、スロットル弁の開度や車両の状態に応じて設定される目標値になるようにプーリに供給される油圧が制御されることによりベルトに対する狭圧力が制御されて、所望の溝幅に変更される。この目標値が急激に減少したときには、プーリに供給される油圧変化が緩やかになるように目標値を修正し、修正された目標値に対応するようにプーリに供給される油圧が制御される技術が公知である。
たとえば、特開平3−244863号公報(特許文献1)は、アクセルペダルが一旦踏込操作されてから急に原位置へ戻された場合や、それから再び急に踏込操作された場合でも、伝動ベルトのすべりが発生しない油圧制御装置を開示する。この油圧制御装置は、伝動ベルトが巻き掛けられた一対の可変プーリと、可変プーリに伝動ベルトに対する狭圧力を付与するための油圧アクチュエータとを備える。油圧制御装置は、伝動ベルトを介して動力を伝達する車両用ベルト式無段変速機において、予め定められた関係から少なくともベルト式無段変速機の入力トルクに応じて目標値を算出する目標値算出手段と、油圧アクチュエータに作用させる制御圧が目標値となるように制御圧調圧弁を駆動する制御圧制御手段とを含む。油圧制御装置は、算出された目標値が急速に減少したことを判定する目標値急減少判定手段と、目標値急減少判定手段により算出された目標値が急速に減少したと判定された場合には、算出された目標値よりも緩やかに変化するように目標値を修正する目標値修正手段とを含む。
この公報に開示された油圧制御装置によると、目標圧がスロットル弁開度に関連して急激に減少すると、目標値急減少判定手段により目標値が急激に減少したことが判断されるとともに、目標値修正手段により修正目標値が目標値よりも緩やかに減少させられる。そして、制御圧制御手段により修正目標値が得られるようにライン圧が変化させられる。これにより、ライン圧が目標圧よりも低くなる不足領域の発生が解消され、過渡状態における伝動ベルトのすべりが解消される。
特開平3−244863号公報
しかしながら、プーリの油圧は目標値の減少に応じて速やかに低下させることが望ましい。これは、油圧が速やかに低下しないと、油圧ポンプの作動損失が大きくなり、燃費が悪化する可能性があるからである。特に、無段変速機に入力されるトルク変動が小さい状態においては、目標値が急激に減少してもベルト滑りは発生しにくい状態にある。上述した公報に開示された油圧制御装置においては、無段変速機に入力されるトルクに関わらず、ベルトのトルク伝達容量の確保を優先して目標値が設定されるため、油圧は速やかに低下せず、燃費が悪化するという問題がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ベルト滑りの発生および燃費の悪化を抑制する無段変速機の制御装置を提供することである。
第1の発明に係る無段変速機の制御装置は、車両に搭載され、油圧によりプーリの溝幅を変更して、プーリに巻回された無端ベルトの有効係り径を変更することにより、変速比を制御するベルト式の無段変速機の制御装置である。この制御装置は、無段変速機に入力されるトルクが略一定の状態であるか否かを検知するための検知手段と、車両の走行状態に応じて、油圧の目標値を設定するための設定手段と、設定された目標値になるように油圧を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、目標値が低下するときに、トルクが略一定の状態でないと、予め定められた第1の変化率で低下させるように油圧を制御するための第1のなまし制御手段と、目標値が低下するときに、トルクが略一定の状態であると、第1の変化率よりも急峻な第2の変化率で低下させるように油圧を制御するための第2のなまし制御手段とを含む。
第1の発明によると、第1のなまし制御手段は、目標値が低下するときに(たとえば、目標値の低下量が予め定められた値以上であるときに)、入力されるトルクが略一定の状態でないと、予め定められた第1の変化率(たとえば、目標値の低下に対して油圧を緩やかに低下させる制御時の変化率)で低下させるように制御する。第2のなまし制御手段は、目標値が低下するときに、入力されるトルクが略一定の状態であると(たとえば、動力源に対する出力要求がない状態であって、ニュートラル制御からの復帰後)、第1の変化率よりも急峻な(時間変化率の絶対値が大きい)第2の変化率で低下させるように油圧を制御する。これにより、無段変速機に入力されるトルクの変動が大きいときには、目標値の低下よりも緩やかになるように、第1の変化率で油圧が低下するように制御される。そのため、油圧が緩やかに低下するため、ベルトのトルク伝達容量が確保することができるため、ベルト滑りの発生を抑制することができる。一方、無段変速機に入力されるトルクが略一定の変動の小さい状態であるときには、第1の変化率よりも急峻な第2の変化率で油圧を低下させることにより、油圧を速やかに低下させることができる。そのため、油圧ポンプの作動損失が低減されて、燃費の悪化を抑制することができる。また、無段変速機に入力されるトルクの変動が小さいため、油圧が速やかに低下しても、ベルト滑りが発生しにくい。したがって、ベルト滑りの発生および燃費の悪化を抑制することができる無段変速機の制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る無段変速機の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、検知手段は、車両の動力源から無段変速機に入力されるトルクを検知するための手段と、検知されたトルクの変化量が予め定められた値以下であると、トルクが略一定の状態であると検知するための手段とを含む。
第2の発明によると、検知手段は、検知されたトルクの変化量(たとえば、入力されるトルクに対応する動力源の回転数の変化量あるいはスロットル開度の変化量)が予め定められた値以下であると、入力されるトルクの変動が小さいことを検知することができる。これにより、トルクが略一定の状態であるか否かを検知することができる。
第3の発明に係る無段変速機の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、第1および第2のなまし制御手段は、目標値が予め定められた変化量以上で低下すると、目標値の低下に対して油圧が緩やかに低下するように油圧を制御するための手段を含む。
第3の発明によると、第1および第2のなまし制御手段は、目標値が予め定められた変化量以上で低下すると、目標値の低下に対して油圧が緩やかに低下するように制御する。たとえば、目標値が急激に低下するときには、目標値の低下に対して油圧が緩やかに低下するように、無段変速機に入力されるトルクの変動に応じた変化率を設定することにより、ベルト滑りの発生および燃費の悪化を抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU(Electronic Control Unit)900により実現される。
図1に示すように、動力源100が変速機構200に連結され、その変速機構200の出力軸300がディファレンシャルギヤ400を介して左右の駆動輪500に連結されている。ここで、動力源100は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関あるいはモータなどの電動機、さらにはこれら内燃機関と電動機とを組み合わせた装置など、車両に使用可能な種々の動力源を含む。以下の説明では、動力源100として、燃料をシリンダの内部に直接噴射し、その噴射量およびタイミングを制御することにより均質燃焼や成層燃焼の可能ないわゆる直噴ガソリンエンジン、あるいはスロットル開度を電気的に自由に制御できる電子スロットルバルブを備えたガソリンエンジンを採用した例を説明する(以下、動力源100をエンジン100と記載する)。
このエンジン100は、電気的に制御できるように構成されており、その制御のためのマイクロコンピュータを主体とするエンジンECU800が設けられている。このエンジンECU800は、少なくともエンジン100の出力を制御するように構成されており、その制御のためのデータとして出力軸回転数(エンジン回転数)NEとアクセル開度PAなどの出力要求量とが入力される。
この出力要求量は、エンジン100の出力の増大・減少のための信号であり、運転者が操作するアクセルペダルなどの加減速操作装置700の操作量信号やその操作量を電気的に処理して得た信号を採用することができ、またそれ以外に、車速を設定車速に維持するためのクルーズコントロールシステム(図示せず)などからの出力要求量信号であってもよい。
変速機構200は、流体伝動機構210と、前後進切換機構220と、ベルト式無段変速機(CVT)230とから構成される。
流体伝動機構210は、オイルなどの流体を介して入力側の部材と出力側の部材との間でトルクを伝達するように構成された装置であって、一例として、一般の車両に採用されているトルクコンバータを挙げることができる。また、この流体伝動機構210は、ロックアップクラッチ212を備えている。すなわちロックアップクラッチ212は、入力側の部材と出力側の部材とを摩擦板などの機械的手段で直接連結するように構成されたクラッチであって、緩衝を行なうためのコイルスプリングなどの弾性体からなるダンパー214を備えている。
動力源であるエンジン100によって回転させられ、その回転数に応じて吐出圧が高くなる油圧ポンプが、流体伝動機構210に接近した位置に設けられている。具体的には、流体伝動機構210と前後進切換機構220との間に配置されている。なお、車両が停止している状態であってもエンジン100を駆動させ続けるために流体伝動機構210を設けている場合には、車両の状態に基づいて自動的に断続される自動クラッチを、上記の流体伝動機構210に置換して使用することができる。
流体伝動機構210の入力部材がエンジン100の出力部材に連結され、また流体伝動機構210の出力部材が前後進切換機構220の入力部材に連結されている。この前後進切換機構220は、一例としてダブルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、特には図示しないが、サンギヤとキャリヤとのいずれか一方を入力要素とし、かつ他方を出力要素とするとともに、リングギヤを選択的に固定するブレーキ要素と、サンギヤおよびキャリヤならびにリンクギヤの3要素のうちのいずれか2つの回転要素を選択的に連結して遊星歯車機構の全体を一体化するクラッチ要素とを備えている。すなわちそのクラッチ要素を係合させることに前進状態を設定し、またブレーキ要素を係合させることにより後進状態を設定するように構成される。
図1に示すベルト式無段変速機230は、その入力側の部材の回転数と出力側の部材の回転数との比率すなわち変速比を無段階に(連続的に)変化させることのできるベルト式無段変速機である。そのベルト式無段変速機230の一例を、図2を参照して説明する。
駆動側プーリ(プライマリプーリあるいは入力側プーリともいう)232と、従動側プーリ(セカンダリプーリあるいは出力側プーリともいう)234と、これらのプーリ232,234に巻き掛けられたベルト236とを備えている。これらのプーリ232,234のそれぞれは、固定シーブ238,240と、その固定シーブ238,240に対して接近・離隔する可動シーブ242,244とからなり、可動シーブ242,244を固定シーブ238,240に対して接近する方向に押圧する油圧アクチュエータ246,248が設けられている。これら各シーブ238,240,242,244によって、ベルト236を巻掛けるためのV溝状のベルト巻掛け溝(プーリ溝)250,252が形成されている。
プライマリプーリ232が入力軸290に取り付けられ、その入力軸290と平行に配置された出力軸300にセカンダリプーリ234が取り付けられている。そして、セカンダリプーリ234における油圧アクチュエータ248内部の油圧室256には、アクセル開度PAに代表される出力要求に基づいて求められる要求駆動力に応じた油圧が供給され、可動シーブ244を固定シーブ240側に押圧してベルト236を挟み付けることにより(ベルト236に対して狭圧力を付与することにより)、トルクを伝達するのに必要な張力をベルト236に付与する。
また、プライマリプーリ232の油圧アクチュエータ246内部の油圧室254には、入力軸290の回転数を目標入力回転数に一致させる変速比となるように、作動油が給排されている。すなわち、各プーリ232,234における溝幅(固定シーブ238,240と可動シーブ242,244との間隔)を変化させることにより、各プーリ232,234に対するベルト236の巻き掛け半径(有効係り径)が大小に変化して変速が実行されるようになっている。
より具体的には、実入力回転数と目標入力回転数との回転数偏差(制御偏差)に基づいてプライマリプーリ232の作動油をフィードバック制御することにより変速が実行され、したがってその制御偏差が大きいほど、変速速度が速くなる。
図3に示すように、本実施の形態に係る無段変速機230の油圧制御装置は、油圧ポンプ912により油圧アクチュエータ246,248の油圧室254,256側に供給されるライン圧を調整するプライマリレギュレータバルブ850を含む。オイルは、ストレーナ890を経由して油圧ポンプ912の吸入口910に吸入され、油圧ポンプ912の吐出口920から吐出されたオイルが、油路930を介してプライマリレギュレータバルブ850の入力ポート940に供給される。なお、油路930の中途部位から分岐した油路1540は、チェックバルブの入力ポート(いずれも図示せず)に接続されている。なお、図2および図3の油圧回路において、「1」が付された箇所は、「1」が付された箇所同士で、各油路が接続されていることを意味する。
このプライマリレギュレータバルブ850は、油圧ポンプ912の吐出口920と接続された入力ポート940と、この入力ポート940に連通する逃がしポート950と、入力ポート940と逃がしポート950とを接続または遮断するスプール960と、このスプール960の一端側に設けられたスプリング室990と、スプリング室990に接続され、かつ、リニアソレノイドバルブ1070により調圧された油圧が入力される調圧ポート970と、スプール960の他端側に設けた制御ポート980と、スプリング室990に配置され、かつ、入力ポート940と逃がしポート950とが遮断される方向にスプール960を押圧するスプリング960Aとを含む。また、油路930はオリフィス982を介して制御ポート980に接続されている。
プレッシャリリーフバルブ1100は、油路1090に接続されている。プレッシャリリーフバルブ1100には、ポート1150からリニアソレノイド(SLS)1070の制御圧が導入される。スプール1130が、リニアソレノイド(SLS)1070の制御圧、スプリング1140の付勢力およびポート1110から導入されるライン圧のバランスにより図3において上下に摺動する。リニアソレノイド(SLS)1070の制御圧が導入される制御圧室1120に、スプリング1140が配置されている。
ライン圧による力がリニアソレノイド(SLS)1070の制御圧とスプリング1140の付勢力との合成力に勝ると、スプール1130が図3において下方に移動し、ポート1110を介して油路1090とドレインポート1160とが連通する。これにより、油圧がドレインポート1160からドレインされ、ライン圧が制御される。
リニアソレノイド(SLS)1070には、ライン圧を元圧としてモジュレータバルブ(1)1080により制御された油圧がポート1060から導入される。リニアソレノイド(SLS)1070は、ECT_ECU900から送信されたデューティ信号によって決まる電流値に応じて制御圧を発生させる。なお、リニアソレノイド(SLS)1070の代わりに、デューティーソレノイドを用いてもかまわない。
セカンダリプーリ234の油圧アクチュエータ248の油圧は、ベルト236が滑りを生じないようにモジュレータバルブ(2)1040によって制御される。モジュレータバルブ(2)1040には、軸方向へ移動可能なスプール1018およびそのスプール1018を一方向へ付勢するスプリング1016が設けられている。
油路930の途中から分岐した油路1010は、モジュレータバルブ(2)1040のポート1012に導入される。ポート1014には、油路1050を介して、リニアソレノイド(SLS)1070のの制御圧が導入される。スプール1018は、リニアソレノイド(SLS)1070の制御圧、スプリング1016の付勢力およびポート1012に導入されるライン圧のバランスにより図3において上下に摺動する。スプール1018は、図3において上下に摺動することにより、ポート1012とポート1030とを連通、遮断する。すなわち、リニアソレノイド(SLS)1070の出力油圧をパイロット油圧として、モジュレータバルブ(2)1040のポート1030から出力される油圧を調圧して、ポート1030から油路1020を介して接続されるセカンダリプーリ234の油圧アクチュエータ248内部の油圧室256の油圧を調圧する。これにより、ベルト236の狭圧力が増減させられる。
ここで、無段変速機230の変速比は、車速およびアクセル開度などの条件から判断される車両の加速要求(言い換えれば駆動力要求)、およびECT_ECU900に記憶されているデータ(たとえば、エンジン回転数およびスロットル開度をパラメータとする最適燃費曲線)などに基づいて、エンジン100の運転状態が最適状態になるように制御される。
具体的には、油圧アクチュエータ246の油圧室254の油圧を増速用ソレノイドおよび減速用ソレノイド(いずれも図示せず)により制御することにより、プライマリプーリ232の溝250の幅が調整される。その結果、プライマリプーリ232におけるベルト236の巻き掛け半径が変化し、無段変速機230の入力回転数と出力回転数との比、すなわち変速比が無段階(連続的)に制御される。
さらに、油圧アクチュエータ248の油圧室256の油圧を制御することにより、セカンダリプーリ234の溝252の幅が変化する。つまり、ベルト236に対するセカンダリプーリ234の軸線方向の挟圧力(言い換えれば挟持力)が制御される。この挟圧力によりベルト236の張力が制御され、プライマリプーリ232およびセカンダリプーリ234とベルト236との接触面圧が制御される。油圧アクチュエータ248の油圧室256の油圧は、無段変速機230に入力されるトルク、および無段変速機230の変速比などに基づいて制御される。無段変速機230に入力されるトルクは、エンジン回転数、スロットル開度、トルクコンバータ70のトルク比などに基づいて判断される。
ベルト式無段変速機230では、プライマリプーリ232に対するベルト236の巻き掛け半径が最小でかつセカンダリプーリ234に対するベルト236の巻き掛け半径が最大の状態で、最低速側の変速比(最大変速比:最減速状態)が設定され、また、これとは反対にプライマリプーリ232に対するベルト236の巻き掛け半径が最大でかつセカンダリプーリ234に対するベルト236の巻き掛け半径が最小の状態で、最高速側の変速比(最小変速比:最増速状態)が設定される。
変速機構200におけるロックアップクラッチ212の係合・解放ならびに滑りを伴う半係合の各状態の制御および前後進切換機構220での前後進の切り換えならびにベルト式無段変速機230での変速比の制御は、基本的には、車両の走行状態に基づいて制御されるようになっている。その制御のためにマイクロコンピュータを主体として構成されたECT_ECU900が設けられている。
このECT_ECU900は、前述したエンジンECU800とデータ通信可能に接続される一方、制御のためのデータとして車速や変速機構200の入力側の回転数(入力回転数NIN)、出力側の回転数(出力回転数NOUT)などのデータが入力される。回転数センサ600は、ベルト式無段変速機230での変速制御を実行するために、プライマリプーリ232やセカンダリプーリ234などの回転数を検出するセンサであって、一例として、電磁ピックアップの先端側をパルスギヤの歯(それぞれ図示せず)が通過することにより、電磁ピックアップにパルス信号を発生させ、そのパルス信号の間隔やパルス幅などに基づいて上記の入力回転数NINや出力回転数NOUTを求めるように構成される。
変速機構200を停止状態(パーキングポジション:Pポジション)、後進状態(リバースポジション:Rポジション)、中立状態(ニュートラルポジション:Nポジション)、車両の走行状態に応じて変速比を自動的に設定して通常の走行を行なう自動前進状態(ドライブポジション:Dポジション)、エンジン100のポンピングロスを制動力とする状態(ブレーキポジション:Bポジション)ならびに所定値以上の高速側の変速比の設定を禁止する状態(SDポジション)の各状態(ポジション)を選択するシフト装置1000が設けられており、このシフト装置1000がECT_ECU900に電気的に接続されている。
以上のような構成を有するベルト式の無段変速機230に対して、ECT_ECU900は、車速やアクセルペダルの開度等の車両の走行状態に応じてセカンダリプーリ234の狭圧力の目標値(具体的には、油圧室256における油圧の目標値)を設定する。ECT_ECU900は、セカンダリプーリ234の油圧が設定された目標値になるように、リニアソレノイド(SLS)1070に制御指令を出力して、油圧室256おける油圧を制御する。
また、ECT_ECU900は、アクセルペダルが急に開放されたりして、セカンダリプーリ234における油圧の目標値が急激に減少するときには、目標値の低下に対して油圧室256における油圧が緩やかに低下するように制御する。具体的には、ECT_ECU900は、目標値を油圧変化が緩やかになるように目標値を修正し、修正された目標値に追従するように油圧室256における油圧を制御(なまし制御)する。このようにすると、油圧(狭圧力)が急激に低下することを抑制することができるため、ベルト236のトルク伝達容量が確保され、ベルト滑りの発生を抑制することができる。本実施の形態において、ECT_ECU900は、上述したように目標値の低下に対して油圧が緩やかに低下するように制御する方法として、たとえば、最終目標値POPTTGT(I)=前回の最終目標値POPTTGT(I−1)+なまし係数K×(目標値POPTT−前回の最終目標値POPTTGT(I−1))の式より最終目標値POPTTGT(I)を予め定められた時間毎に算出して、算出された最終目標値になるように、リニアソレノイド(SLS)1070に制御指令を出力する。なお、最終目標値が修正された目標値を示す。また、Iは自然数とし、POPTTGT(0)には、初期値が代入されるものとする。さらに、目標値の修正としては、上述の式に特に限定されるものではない。そして、なまし係数Kは、最終目標値が1計算サイクル毎に前回の最終目標値から目標値に一致するように変化するときの増減分の変化率を示す。この変化率が小さいほど1計算サイクル毎の増減分が小さくなり、最終目標値は、変化率が大きい場合よりも緩やか目標値に一致するように変化する。そのため、油圧は緩やかに目標値になるように制御される。
しかしながら、油圧室256における油圧は目標値の減少に応じて速やかに低下させることが望ましい。これは、油圧が速やかに低下しないと、油圧ポンプ912の作動損失が大きくなり、燃費が悪化する可能性があるからである。特に、無段変速機230に入力されるトルク変動が小さい状態においては、目標値が急激に減少してもベルト滑りは発生しにくい状態にある。
そこで、本発明は、ECT_ECU900が、上述した目標値が低下するときに、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態でないと、予め定められた変化率αで油圧が低下するように油圧を制御し、入力されるトルクが略一定の状態であると、変化率αよりも急峻な変化率βで油圧が低下するように油圧を制御する点に特徴を有する。
具体的には、ECT_ECU900は、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態であるか否かを検知する。ここで、「トルクが略一定の状態」とは、エンジン100から無段変速機230に入力されるトルクの変動が小さい状態をいう。たとえば、ECT_ECU900は、エンジン100の回転数、スロットル開度および流体伝達機構210におけるトルク比に基づいて、予め定められた期間における無段変速機230に入力されるトルクの変化量を算出する。なお、エンジン100の回転数、スロットル開度およびトルク比のうちの少なくとも1つとトルクとの関係を予めマップとして記憶しておくようにしてもよい。また、トルクの変化量は推定値であってもよい。エンジン100の回転数は、クランクポジションセンサ(図示せず)により検知するようにすればよく、スロットル開度は、スロットルポジションセンサ(図示せず)により検知すればよく、トルク比は、流体伝達機構210における入力軸回転数および出力軸回転数およびメモリに予め記憶されたマップ等を用いて算出するようにすればよい。ここで「変化量」は、たとえば、上述した目標値が低下する以前の予め定められた期間において、算出されたトルクの最大値と最小値との差である。
ECT_ECU900は、算出されたトルクの変化量が予め定められた値以下であると、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態であることを検知する。なお、ECT_ECU900は、予め定められた期間に、無段変速機230に入力されるトルクが予め定められた値以下である状態が継続すると、トルクが略一定の状態であると検知するようにしてもよい。
そして、ECT_ECU900は、予め定められた時間におけるセカンダリプーリ234の狭圧力の目標値が予め定められた変化量以上で低下しているとき、目標値が急激に減少すると判断する。なお、予め定められた時間は、特に限定されない。
ECT_ECU900は、目標値が急激に減少するときに、トルクが略一定の状態でないと、K=αとしてなまし係数Kを設定する。ECT_ECU900は、目標値が急激に減少するときに、トルクが略一定の状態であると、K=βとしてなまし係数Kを設定する。ECT_ECU900は、設定されたなまし係数Kおよび上述の式より、油圧の目標値を修正する。ECT_ECU900は、修正された目標値になるように、リニアソレノイド(SLS)1070に対して出力される制御値を制御する。なお、αおよびβは、予めテーブル等としてメモリに記憶される。
以下、図4を参照して、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECT_ECU900で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECT_ECU900は、狭圧力の急低下が許可されるか否かを判断する。具体的には、ECT_ECU900は、上述したように、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態であるか否かを検知して、トルクが略一定の状態であることを検知すると、狭圧力の急低下が許可されると判断する。狭圧力の急低下が許可されると(S100にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS102に移される。
S102にて、ECT_ECU900は、K=αとしてなまし係数Kを設定する。αは、予め定められた値であって、入力されたトルクの変動が大きくても、ベルト滑りが生じない油圧を確保できる値であれば、特に限定されない。S104にて、ECT_ECU900は、K=βとしてなまし係数Kを設定する。βは、αよりも油圧の変化が急峻な、すなわち、時間変化率の絶対値が大きい値であって、入力されたトルクの変動が略一定の状態にベルト滑りが生じない油圧を確保できる値であれば特に限定されない。なお、βは、入力されたトルクに応じて異なる値にしてもよい。すなわち、入力されるトルクが略一定状態であって、入力されるトルクが低いときは、より急峻な値とし、入力されるトルクが高いときには、より緩やかな値とするようにしてもよい。
S106にて、ECT_ECU900は、設定されたなまし係数Kに基づいて最終目標値POPTTGT(I)を算出する。ECT_ECU900は、1計算サイクル毎に最終目標値POPTTGT(I)を算出して、算出された最終目標値になるように、リニアソレノイド(SLS)1070に対して制御指令を出力する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECT_ECU900の動作について図5を用いて説明する。
図5(A)に示すように、時間T(0)において、車両の状態に基づく要求より、目標値がP(0)からP(1)に上昇する。その後、時間T(1)において、車両の状態に応じて、目標値がP(1)からP(0)に低下する。このとき、図5(B)に示すように、11たとえば、エンジン100のアイドリング状態であるなどして、時間T(1)以前の予め定められた期間(T’(1)からT(1)の期間)における、エンジン回転数、スロットル開度およびトルク比に基づくトルクの変化量が、予め定められた値以下であると、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態であるとして、狭圧力の急低下が許可される(S100にてYES)。このとき、K=βとして、なまし係数Kが設定される(S104)。
図5(A)のT(1)からT(2)間の実線に示すステップ状に変化する目標値は、上述した式により図5(A)の破線に示す最終目標値になるように修正される(S106)。そして、狭圧力が最終目標値になるように、リニアソレノイド(SLS)1070に制御指令が出力される。
一方、図5(B)に示すように、時間T(2)以降に、再び車両の状態に基づく要求により、無段変速機230に入力されるトルクがTQ(0)からTQ(1)に上昇するとともに、時間T(3)において、目標ベルト値がP(0)からP(1)に上昇する。その後、時間T(4)において、目標ベルト値がP(1)からP(0)に低下する。このときに、時間T(4)以前の予め定められた期間(T’(4)からT(4)の期間)における、エンジン回転数に基づくトルクの変化量が、予め定められた値よりも大きいと、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態ではないとして、狭圧力の急低下が許可されない(S100にてNO)。このとき、K=αとして、なまし係数Kが設定される(S102)。
図5(A)のT(4)以降の実線に示すステップ状に変化する目標値は、上述した式により図5(A)の破線に示す最終目標値になるように修正される(S106)。そして、油圧室256における油圧が最終目標値になるように、リニアソレノイド(SLS)1070に制御指令が出力される。
図5(A)のT(1)からT(3)間の破線に示す最終目標値の変化は、図5(A)のT(4)以降の破線に示す最終目標値の変化よりも急峻な変化を示す。したがって、油圧室256における油圧も速やかに低下するように制御される。
また、本実施の形態において、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態のまま、油圧の目標値が上下する車両の状態の一例として、ニュートラル制御からの復帰時の車両の状態が挙げられる。
以下、図6を参照して、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECT_ECU900が実行するニュートラル制御復帰時に目標値の低下に対して油圧を緩やかに低下させる制御の動作について説明する。
ECT_ECU900は、車両の停車中に予め定められた条件を満足すると、ニュートラル制御を実行する。具体的には、ECT_ECU900は、シフト装置1000においてDポジションが選択された状態で、かつ、車速が略ゼロの停止状態であって、さらに、ブレーキペダルが踏込まれた状態であることを検知すると、前後進切換機構220におけるクラッチ要素を半係合状態になるように変速機構200を制御する。予め定められた条件は、上述の3つの状態を検知することに特に限定されるものではない。
そして、ニュートラル制御が実行された後、時間T(5)において、ブレーキペダルの踏み込みを中止するなどして、ニュートラル制御から復帰する条件が成立すると、、変速機構200内のクラッチ要素が半係合状態から係合状態になるように変速機構200を制御する。このとき、クラッチ要素が係合状態になることから変速機構200内においてトルクが変動するため、目標値が上昇するように設定される。時間T(6)において、クラッチ要素が係合状態になり、ニュートラル制御から復帰するとき、運転者によりアクセルペダルが踏込まれたりして、エンジン100の出力が要求されない限り、目標値は急激に減少する。このとき、時間T(6)以前の予め定められた期間(T’(6)からT(6)までの期間)における、トルクの変化量が予め定められた値以下であると、無段変速機230に入力されるトルクが略一定の状態であるとして、狭圧力の急低下が許可される(S100にてYES)。このとき、K=βとして、なまし係数Kが設定される(S104)。
図6(A)のT(6)以降の実線に示す油圧は、図6(A)のT(6)以降の破線に示すようにK=αとしたときの最終目標値の変化に基づく油圧の変化よりも急峻な変化となり、油圧室256における油圧は速やかに低下する。
以上のようにして、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置によると、無段変速機に入力されるトルクの変動が大きいときには、目標値の低下よりも緩やかになるように、変化率αで油圧が低下するように制御される。そのため、油圧が緩やかに低下するため、ベルトのトルク伝達容量が確保することができるため、ベルト滑りの発生を抑制することができる。一方、無段変速機に入力されるトルクが略一定の変動の小さい状態であるときには、変化率αよりも急峻な変化率βで油圧を低下させることにより、油圧を速やかに低下させることができる。そのため、油圧ポンプの作動損失が低減されて、燃費の悪化を抑制することができる。また、無段変速機に入力されるトルクの変動が小さいため、油圧が速やかに低下しても、ベルト滑りが発生しにくい。したがって、ベルト滑りの発生および燃費の悪化を抑制することができる無段変速機の制御装置を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る自動変速機の制御ブロック図である。 図1に示すCVTの詳細図である。 CVTの変速制御のための油圧回路の一部を示す図である。 本発明の実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECT_ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECT_ECUの動作を示すタイミングチャート(その1)である。 本発明の実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECT_ECUの動作を示すタイミングチャート(その2)である。
符号の説明
100 エンジン、200 変速機構、210 流体伝動機構、212 ロックアップクラッチ、214 ダンパー、220 前後進切換機構、230 無段変速機、232 プライマリプーリ、234 セカンダリプーリ、236 ベルト、290 入力軸、300 出力軸、400 ディファレンシャルギヤ、500 駆動輪、600 回転数センサ、700 加減速操作装置、800 エンジンECU、850 プライマリレギュレータバルブ、900 ECT_ECU、912 オイルポンプ、1000 シフト装置、1040,1080 モジュレータバルブ、1070 リニアソレノイド、1100 プレッシャリリーフバルブ。

Claims (3)

  1. 車両に搭載され、油圧によりプーリの溝幅を変更して、前記プーリに巻回された無端ベルトの有効係り径を変更することにより、変速比を制御するベルト式の無段変速機の制御装置であって、
    前記無段変速機に入力されるトルクが略一定の状態であるか否かを検知するための検知手段と、
    前記車両の走行状態に応じて、前記油圧の目標値を設定するための設定手段と、
    前記設定された目標値になるように前記油圧を制御するための制御手段とを含み、
    前記制御手段は、
    前記目標値が低下するときに、前記トルクが略一定の状態でないと、予め定められた第1の変化率で低下させるように前記油圧を制御するための第1のなまし制御手段と、
    前記目標値が低下するときに、前記トルクが略一定の状態であると、前記第1の変化率よりも急峻な第2の変化率で低下させるように前記油圧を制御するための第2のなまし制御手段とを含む、無段変速機の制御装置。
  2. 前記検知手段は、
    前記車両の動力源から前記無段変速機に入力されるトルクを検知するための手段と、
    前記検知されたトルクの変化量が予め定められた値以下であると、前記トルクが略一定の状態であると検知するための手段とを含む、請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
  3. 前記第1および第2のなまし制御手段は、前記目標値が予め定められた変化量以上で低下すると、前記目標値の低下に対して前記油圧が緩やかに低下するように制御するための手段を含む、請求項1または2に記載の無段変速機の制御装置。
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