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JP4389380B2 - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

無段変速機の変速制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、無段変速機の変速比を制御する装置に関し、特に目標入力回転数と実入力回転数との偏差に基づいて変速比のフィードバック制御を実行し、また、その目標入力回転数に限界値が設定されている無段変速機の変速比を制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用の変速機として、従来、有段式の自動変速機と変速比が連続的に変化する無段変速機とが知られている。前者の有段式自動変速機では、固定的に予め決められている変速比を、車両の運転状態に基づいて選択し、その変速比を設定する指示信号を出力することにより変速が実行されるのに対して、後者の無段変速機では、変速比が固定的に予め決められている訳ではないので、入力回転数(エンジンの出力回転数)の目標値を車両の運転状態に基づいて求め、実際の入力回転数がその目標値に一致するように制御し、その結果として所定の変速比となるように制御される。
【0003】
そのため、従来の車両用無段変速機における変速制御は、目標入力回転数と実入力回転数との制御偏差に基づくフィードバック制御によっておこなわれている。その場合、目標追従性を向上させるために、回転数偏差に比例ゲインを掛ける比例動作と併せて、回転数偏差に基づく値を積算してこれに所定のゲインを掛ける積分動作とにより制御量を算出している。
【0004】
その積分動作による制御量が大きい場合には、追従性が増すが、その反面、不安定になる。また、積分動作は制御偏差に応じた値を積算して制御量を求めるものであるから、制御偏差がゼロになっても積分動作の値は直ちにはゼロにはならない。そのため、例えば制御対象が物理的(もしくは機械的)な限界まで動作してしまった場合、制御偏差がゼロになるものの積分動作が未だ積算した値となっているので、制御量が直ちにはゼロもしくは反転しない。具体的には、最大変速比まで変速比が変化した後、アップシフトするべき状態が生じても、積分動作の値がゼロになるまでは最大変速比に維持され、その後にアップシフトし始め、その結果、制御の遅れが生じることになる。
【0005】
従来、このような積分動作に伴う制御限界値での遅れを解消するために、積分動作に特殊な処理を施すことが試みられている。例えば特開平11−278105号公報に記載された発明は、制御対象が物理的(もしくは機械的)な限界まで動作している状態で積分動作が継続することにより積分値が過大になり、前記物理的な限界内の状態に制御する際に制御が遅れることを課題とし、物理的な限界まで動作している状態では積分演算を停止することとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように比例・積分制御によるフィードバック制御では、制御限界に達して制御偏差がゼロになっても積分動作の値(積分項)が直ちにはゼロにならず、積分動作に起因する制御量が残る。上述した公報に記載されている発明では、その積分動作の値が過大になって次の制御の遅れを防止するために、積分動作を停止することとしている。しかしながら、これは、制御対象が物理的な限界まで達し、それ以上に動作しない状態を前提とする制御であり、したがって限界値として、制御対象が更に動作できるものの、所定の条件からの要請で制御上、設けた限界に対しては、これを超えてしまうことになる。
【0007】
例えば、エンジンなどの動力系統の保護のために制御上の上限値を設けてある場合、そのエンジンの出力側に連結された無段変速機の変速比は、エンジンの回転数が上限値を超えないように目標入力回転数を設定して制御される。その場合、上述した比例積分制御によるフィードバック制御をおこない、かつ制御偏差である目標入力回転数と実入力回転数との偏差がゼロになった時点で積分動作を停止したとしても、積分動作による制御量が残っており、しかも物理的(機械的)にはエンジンの回転数を増大させることが可能であるから、入力回転数が目標入力回転数すなわち上限値を超えるまで変速比が制御されてしまう。
【0008】
上述した公報に記載されているように、動作量が限界まで達した後に積分動作を停止する構成では、制御対象が未だその動作を変化させ得る状態の限界値であれば、その限界を超えて動作するいわゆるオーバーシュートが生じてしまう。このような状態は、制御上の下限値を設けた場合も同様であり、その場合には下限値を超えた状態まで制御対象の動作状態が変化するアンダーシュートが生じることがある。
【0009】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機の変速比を積分動作を含むフィードバック制御によって制御するにあたり、いわゆるオーバーシュートあるいはアンダーシュートを未然に回避することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、目標入力回転数と実入力回転数との偏差がゼロもしくはほぼゼロとなった際に積分動作に基づく制御量が生じないように構成したことを特徴とする変速制御装置である。より具体的には、請求項1の発明は、実入力回転数との間で制御偏差を生じさせる目標入力回転数に限界値が設定され、その目標入力回転数に実入力回転数を一致させるよう、これら目標入力回転数と実入力回転数との制御偏差に基づく比例動作による値となる比例項および積分動作による値となる積分項を含むフィードバック制御により変速比を制御する無段変速機の変速制御装置において、前記目標入力回転数を前記限界値まで変化させるとともに実入力回転数をその目標入力回転数に一致させる制御過程で、前記積分項の値を前記積分動作による値から、前記制御偏差がゼロとなった時点ではゼロになる値に置換して設定するガード設定手段を備えていることを特徴とする変速制御装置である。
【0011】
そのガード設定手段は、請求項2に記載してあるように、前記目標入力回転数が前記限界値に達したときに前記積分項の値をゼロにするように構成することができる。
【0012】
あるいは前記ガード設定手段は、請求項3に記載してあるように、前記積分項の絶対値が前記目標入力回転数と前記限界値との偏差よりも大きくならないように積分項の値を制限するように構成することができる。
【0013】
したがって請求項1ないし3の発明では、無段変速機の変速比が、目標入力回転数と実入力回転数との偏差に基づいてフィードバック制御される。そのフィードバック制御には、比例動作による値となる比例項および積分動作による値となる積分項が含まれる。そして、目標入力回転数が予め定められている限界値に達し、また前記の制御偏差がゼロになった時点では、積分動作に基づく制御量がゼロになる。言い換えれば、積分項に相当する値がゼロになる。ここで、「ゼロ」は、ほぼゼロあるいはゼロに近い値を含む。そのため、実入力回転数が目標入力回転数に達した際に、実入力回転数をそれ以上に変化させる制御量がなく、その結果、オーバーシュートあるいはアンダーシュートが防止もしくは抑制される。特に請求項2または3の発明では、目標入力回転数と前記限界値との偏差がゼロとなった後は、積分動作が実質的に生じないので、実入力回転数のオーバーシュートおよびアンダーシュートを確実に防止できる。
【0017】
らに、この請求項1ないし3の発明では、請求項4に記載してあるように、前記ガード設定手段は、前記積分項の値を、前記制御偏差がゼロになる前に、前記目標入力回転数と前記実入力回転数との制御偏差に基づく値から前記限界値と前記目標入力回転数との差に置き換える手段を含むことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明が対象とする車両の動力伝達系統の一例を説明すると、図8において、動力源1が変速機構2に連結され、その変速機構2の出力軸3がディファレンシャル4を介して左右の駆動輪5に連結されている。ここで、動力源1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関あるいはモータなどの電動機、さらにはこれら内燃機関と電動機とを組み合わせた装置など、車両に使用可能な種々の動力源を含む。以下の説明では、動力源1として、燃料をシリンダの内部に直接噴射し、その噴射量およびタイミングを制御することにより均質燃焼や成層燃焼の可能ないわゆる直噴ガソリンエンジン、あるいはスロットル開度を電気的に自由に制御できる電子スロットルバルブを備えたガソリンエンジンを採用した例を説明する。
【0019】
このエンジン1は電気的に制御できるように構成されており、その制御のためのマイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(E−ECU)6が設けられている。この電子制御装置6は、少なくともエンジン1の出力を制御するように構成されており、その制御のためのデータとして出力軸回転数(エンジン回転数)NE とアクセル開度PAなどの出力要求量とが入力されている。
【0020】
この出力要求量は、要は、エンジン1の出力の増大・減少のための信号であり、運転者が操作するアクセルペダルなどの加減速操作装置7の操作量(アクセル開度)信号やその操作量を電気的に処理して得た信号を採用することができ、またそれ以外に、車速を設定車速に維持するためのクルーズコントロールシステム(図示せず)などからの出力要求量信号を含む。
【0021】
また、変速機構2は、流体伝動機構8と、前後進切換機構9と、無段変速機(CVT)10とから構成されている。その流体伝動機構8は、要は、オイルなどの流体を介して入力側の部材と出力側の部材との間でトルクを伝達するように構成された装置であって、一例として、一般の車両に採用されているトルクコンバータを挙げることができる。また、この流体伝動機構8は、直結クラッチ11を備えている。すなわち直結クラッチ11は、入力側の部材と出力側の部材とを摩擦板などの機械的手段で直接連結するように構成されたクラッチであって、緩衝をおこなうためのコイルスプリングなどの弾性体からなるダンパー12を備えている。なお、車両が停止している状態であってもエンジン1を駆動させ続けるために流体伝動機構8を設けている場合には、車両の状態に基づいて自動的に断続される自動クラッチを、上記の流体伝動機構8に置換して使用することができる。
【0022】
その流体伝動機構8の入力部材がエンジン1の出力部材に連結され、また流体伝動機構8の出力部材が前後進切換機構9の入力部材に連結されている。この前後進切換機構9は、一例としてダブルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、特には図示しないが、サンギヤとキャリヤとのいずれか一方を入力要素とし、かつ他方を出力要素とするとともに、リングギヤを選択的に固定するブレーキ手段と、サンギヤおよびキャリヤならびにリンクギヤの3要素のうちのいずれか2つの回転要素を選択的に連結して遊星歯車機構の全体を一体化するクラッチ手段とを備えている。すなわちそのクラッチ手段を係合させることに前進状態を設定し、また前記ブレーキ手段を係合させることにより後進状態を設定するように構成されている。
【0023】
図8に示してある無段変速機10は、その入力側の部材の回転数と出力側の部材の回転数との比率すなわち変速比を無段階に(連続的に)変化させることのできる機構であり、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機などを採用することができる。そのベルト式無段変速機10の一例を図9を参照して簡単に説明すると、駆動側プーリー(プライマリープーリー)20と、従動側プーリー(セカンダリープーリー)21と、これらのプーリー20,21に巻き掛けられたベルト22とを備えている。これらのプーリー20,21のそれぞれは、固定シーブ23,24と、その固定シーブ23,24に対して接近・離隔する可動シーブ25,26とからなり、可動シーブ25,26を固定シーブ23,24に対して接近する方向に押圧する油圧アクチュエータ27,28が設けられている。
【0024】
上記の駆動側プーリー20が入力軸29に取り付けられ、その入力軸29と平行に配置された出力軸30に従動側プーリー21が取り付けられている。そして、従動側プーリー21における油圧アクチュエータ28には、アクセル開度PAに代表される出力要求に基づく要求駆動力に応じてデューティ制御される油圧が供給され、トルクを伝達するのに必要な張力をベルト22に付与するようになっている。また、駆動側プーリー20の油圧アクチュエータ27には、入力軸29の回転数を目標入力回転数に一致させるための変速比となるように、油圧が給排されている。
【0025】
すなわち、各プーリー20,21における溝幅(固定シーブ23,24と可動シーブ25,26との間隔)を変化させることにより、各プーリー20,21に対するベルト22の巻き掛け半径が大小に変化して変速が実行されるようになっている。より具体的には、実入力回転数と目標入力回転数との偏差に基づいて駆動プーリー20側の油圧をフィードバック制御することにより変速が実行され、したがってその偏差が大きいほど、変速速度が速くなる。
【0026】
その油圧は、実入力回転数NINと目標入力回転数NINTとの回転数偏差(制御偏差)に基づいてデューティ制御され、その制御量であるデューティ比DSFTFBは、一例として
DSFTFB=K×|NINT−NIN+KISFT|
KISFT(i)=KISFT(i-1)+(NINT−NIN)/TSFT
但し、−KISFTGD<KISFT<KISFTGD
として求められる。ここで、Kは係数、TSFTは回転数偏差を求める間隔の時間(積分時間)、KISFTGDはKISFTの予め定めた限界値である。したがって制御量であるデューティ比DSFTFBは、比例動作(比例項)(K×|NINT−NIN|)と積分動作(積分項)(K×|KISFT|)とに基づいて算出される。
【0027】
図9に示す無段変速機10では、駆動側プーリー20に対するベルト22の巻き掛け半径が最小でかつ従動側プーリー21に対するベルト22の巻き掛け半径が最大の状態で、最低速側の変速比(最大変速比)γmax が設定され、また、これとは反対に駆動側プーリー20に対するベルト22の巻き掛け半径が最大でかつ従動側プーリー21に対するベルト22の巻き掛け半径が最小の状態で、最高速側の変速比(最小変速比)γmin が設定される。
【0028】
これを、車速SPDと入力回転数NINとの関係で示せば、図3のとおりである。なお、エンジン1の過剰な回転(オーバーレブ)を防止するために、目標入力回転数NINT(もしくは入力回転数NIN)の上限値NINGRDHが設定されている。これは、アクセルペダルを最も大きく踏み込むなどのことによる出力要求量が最大となった場合でもこれを超えないように設定してある回転数である。また、エンジン1の自律回転を維持するために目標入力回転数NINT(もしくは入力回転数NIN)の下限値NINGRDHLが設定されている。したがってこれらの上限値NINGRDHおよび下限値NINGRDHLは、制御対象である無段変速機10がこれを超えて動作することができるが、エンジン1の過剰な回転などの何らかの理由で制御上、設定した限界値である。
【0029】
上記の変速機構2における直結クラッチ11の係合・解放ならびに滑りを伴う半係合の各状態の制御および前後進切換機構9での前後進の切り換えならびに無段変速機10での変速比の制御は、基本的には、車両の走行状態に基づいて制御されるようになっている。その制御のためにマイクロコンピュータを主体として構成された電子制御装置(T−ECU)13が設けられている。
【0030】
この電子制御装置13は、前述したエンジン用の電子制御装置6とデータ通信可能に連結される一方、制御のためのデータとして車速SPDや変速機構2の出力回転数No 、入力回転数NINなどのデータが入力されている。また、変速機構2を停止状態(パーキングポジション:P)、後進状態(リバースポジション:R)、中立状態(ニュートラルポジション:N)、車両の走行状態に応じて変速比を自動的に設定して通常の走行をおこなう自動前進状態(ドライブポジション:D)、エンジン1のポンピングロスを制動力とする状態(ブレーキポジション:B)ならびに所定値以上の高速側の変速比の設定を禁止する状態(SDポジション)の各状態(ポジション)を選択するシフト装置14が設けられており、このシフト装置14が電子制御装置13に電気的に連結されている。
【0031】
この発明に係る変速制御装置は、前述したように、実入力回転数NINを目標入力回転数NINTに一致させるように無段変速機10の変速比をフィードバック制御するが、その目標入力回転数NINTは、アクセル開度などの出力要求量に基づいて算出される。具体的には、アクセル開度と車速とに基づいて要求駆動力が算出され、その要求駆動力を最適燃費で出力するエンジン回転数すなわち目標入力回転数がマップなどから求められる。この目標入力回転数は車両の運転状態に基づいたいわゆる基本目標入力回転数であって、変速比を制御するためには、変速ショックや制御の遅れなどを生じない範囲で基本目標入力回転数に応じて設定した目標入力回転数が使用される。一例として、基本目標入力回転数に対して一次遅れで設定した目標入力回転数が、時々刻々の変速比の制御に使用される。
【0032】
したがって図3におけるA点で示す走行状態からアクセルペダルを最大限まで踏み込んだ場合、その出力要求量と車速とに基づいて算出される基本目標入力回転数が、制御上設けた上限値NINGRDHを超えていると、その上限値NINGRDHが基本目標入力回転数NINCとして設定される。そしてその上限値である基本目標入力回転数NINCに対して一次遅れの目標入力回転数NINTが算出され、実入力回転数NINがその目標入力回転数NINTに一致するように無段変速機10の変速比が制御される。その変速比の制御のための制御量であるデューティ比は、前述した比例項と積分項とを含むフィードバック制御の演算式に基づいて求められる。
【0033】
このような制御は、アップシフトする場合も同様であって、図3のB点で示す運転状態からアクセル開度をゼロにした場合、基本目標入力回転数NINCが、制御上設けた下限値NINGRDHLに設定される。そして、その下限値である基本目標入力回転数NINCに対して一次遅れの目標入力回転数NINTが算出され、実入力回転数NINがその目標入力回転数NINTに一致するように無段変速機10の変速比が制御される。その変速比の制御のための制御量であるデューティ比は、前述した比例項と積分項とを含むフィードバック制御の演算式に基づいて求められる。
【0034】
このようなフィードバック制御による変速比の制御の過程で、積分動作(積分項)の値が次第に蓄積されるので、この発明に係る変速制御装置は、その積分動作による影響を避けるために、以下に述べる制御を実行するように構成されている。図1はその制御例において積分項を算出するルーチンの一例を示すフローチャートであって、先ず、目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差、積分時間から積分項KISFTが算出される(ステップS1)。ついで、その積分項KISFTが、基本目標入力回転数NINCである上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差より大きいか否かが判断される(ステップS2)。
【0035】
積分項(積分動作)は、上記の例では、目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差を積分時間で割った値を積算したものであるから、その絶対値は、変速比のフィードバック制御の進行に伴って次第に大きい値になる。これに対して目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHに次第に近づくから、アクセルペダルを踏み込んだパワーオンの状態では、変速比のフィードバック制御を開始した後の所定の時期に、積分項KISFTが、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差より大きくなり、ステップS2で肯定的に判断される。その場合には、積分項KISFTとして、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差が採用される(ステップS3)。
【0036】
このような変速制御の過程における各値の変化の一例を図2に示してある。図2は、所定の車速および変速比で走行している際にアクセル開度が最大限まで増大させられた場合の例を示しており、t0 時点にアクセル開度が最大限まで増大すると、その後のt1 時点にその判断の成立に伴い基本目標入力回転数NINCが変更させられ、基本目標入力回転数NINCとして制御上設けた上限値NINGRDHが設定される(t2 時点)。その基本目標入力回転数NINCに対して一次遅れの目標入力回転数NINTが算出され、実入力回転数NINがその目標入力回転数NINTに一致するように無段変速機10の変速比がフィードバック制御される。
【0037】
したがって基本目標入力回転数NINCがステップ的に増大させられた状態に設定されるのに対して、目標入力回転数NINTがその基本目標入力回転数NINCに一次遅れで追従して増大し、さらに実入力回転数NINがその目標入力回転数NINTに対して所定の遅れをもって次第に増大する。その変速制御の当初は、積分項KISFTの値が、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差より小さいが、制御が進行することに伴って前者の積分項KISFTが次第に増大するのに対して、後者の前記差が次第に減少するので、t3 時点に両者の大小の関係が反転する。
【0038】
その結果、積分項KISFTの値は、前述した目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差を積分時間で除した値を積算した値から、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に置き換えられる。そのため、本来の積算される積分項の値は更に増大するが、ステップS3の制御によって置換された積分項KISFTの値、すなわち上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に制限された積分項KISFTK値は、目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCに近づくに従って次第に小さくなり、目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCに一致するt4 時点では、その値がゼロになる。
【0039】
このt4 時点では、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTに一致していずに両者の偏差が未だ残っているので、変速制御が更に進行する。その場合、目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCに一致して積分動作が停止し、かつその積分項KISFTとしてゼロの値が採用されているので、t4 時点以降の変速比のフィードバック制御は、比例動作(比例項)のみの制御となる。そのため、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTにほぼ一致するt5 時点では、制御量であるデューティ比あるいはその変化量が、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTを超える量にならない。その結果、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTを上回るオーバーシュートが未然に回避される。
【0040】
なおその場合、回転数偏差に基づいた本来の積分動作は継続しているが、その値は変速比のフィードバック制御には採用されない。その意味で、上記の変速比の制御は、前記t3 時点以降で、積分動作を無視する制御と言うことができる。
【0041】
上記のステップS2およびステップS3ならびに図2に示す例は、出力要求量が最大限増大してダウンシフトする場合の例であるが、変速の制御過程で積分動作を停止し、あるいはその値をゼロとする処理をおこなうことは、出力要求量が最小限まで低下してアップシフトする場合も同様である。すなわち、図1のステップS2で否定的に判断された場合、積分項KISFTが基本目標入力回転数NINCの下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差より小さいか否かが判断される(ステップS4)。
【0042】
このステップS4で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくこのルーチンから抜け、また反対に肯定的に判断された場合には、積分項KISFTとして基本目標入力回転数NINCの下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差が採用される(ステップS5)。すなわち積分項KISFTが、回転数偏差に基づく本来の計算値から、基本目標入力回転数NINCの下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差に置き換えられる。言い換えれば、下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差に制限される。
【0043】
その結果、アップシフトの際の目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCに一致した時点以降は、基本目標入力回転数NINCの下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差が積分項KISFTとして採用され、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTに一致もしくはほぼ一致した時点では、実質的に比例動作のみによる変速比の制御となり、その結果、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTを下回るアンダーシュートが生じることが回避される。
【0044】
なお、以上説明した例では、積分動作KISFTを基本目標入力回転数NINCと目標入力回転数NINTとの差に置き換える例を示したが、この発明は上記の例に限定されないのであって、要は、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTに一致し、もしくはほぼ一致した時点で積分動作がゼロもしくはほぼゼロになっていればよく、このような制御上の処理をおこなう手段を設けた構成であればよい。したがって上述した図1のステップS2,〜S5の機能的手段がこの発明のガード設定手段に相当する。
【0045】
上述した制御装置において、目標入力回転数NINTが制御上設定した限界値NINGRDH,NINGRDHLに達した後に積分動作の値をゼロにすることがあり、そうした場合には、それ以降の制御が、目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差に基づいて比例動作のみによるフィードバック制御となる。その場合、変速比を制御する機器、例えば駆動側プーリー20の油圧を制御するシフトバルブなどの油圧装置(図示せず)に個体差があると、変速指令値であるデューティ比に対する出力圧が、本来の圧力よりも高くなったり、あるいは反対に低くなったりし、その結果、目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの間に定常的な偏差が生じる場合がある。すなわち、実入力回転数NINが上限側の限界値NINGRDHより低い回転数にとどまったり、あるいは実入力回転数NINが下限側の限界値NINGRDHLより高い回転数にとどまったりすることがある。実入力回転数NINのオーバーシュートやアンダーシュートを回避しつつ、このような定常偏差を解消するための制御例を以下に説明する。
【0046】
図4に示す制御例は、目標入力回転数NINTが限界値NINGRDH,NINGRDHLに達した後の積分動作の値を予め定めた値とするように構成した例であり、したがって前述した図1に示す制御例との相違は、実入力回転数NINを上限側に制御する場合には、積分項KISFTに予め定めた値K1が加算され、下限値側に制御する場合には、積分項KISTFから予め定めた値K2が減算されるようになっている。より具体的には、先ず、目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差、積分時間から積分項KISFTが算出される(ステップS11)。ついで、その積分項KISFTが、基本目標入力回転数NINCである上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に予め定めた値K1を加算した値より大きいか否かが判断される(ステップS12)。
【0047】
積分項(積分動作)は、上記の例では、目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差を積分時間で割った値を積算したものであるから、その絶対値は、変速比のフィードバック制御の進行に伴って次第に大きい値になる。これに対して目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHに次第に近づくから、アクセルペダルを大きく踏み込んだパワーオンの状態では、変速比のフィードバック制御を開始した後の所定の時期に、積分項KISFTが、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に予め定めた値K1を加算した値より大きくなり、ステップS2で肯定的に判断される。その場合には、積分項KISFTとして、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に予め定めた値K1を加算した値が採用される(ステップS13)。すなわち積分項KISFTが該値に制限される。
【0048】
ここで上記の予め定めた値K1は、ゼロに近い値であって、一例として車速SPDに応じて変化する値としてマップ化して用意されている。その例を図5に概念的に示してある。すなわち、この値K1は、車速SPDが高い場合には、低車速の場合に比較して小さい値に設定される。なお、この値K1は、エンジン1の負荷(スロットル開度)に応じて変化する値として設定することもでき、例えば図7に鎖線で示すように、アイドル・オフの場合に比較してアイドル・オンの場合に大きい値としてもよい。
【0049】
このような変速制御の過程におけるアクセル開度、基本目標回転数NINC、目標入力回転数NINT、実入力回転数NIN、上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差、積分項KISFTの変化の一例を図6に示してある。図6は、所定の車速および変速比で走行している際にアクセル開度が最大限まで増大させられた場合の例を示しており、アクセル開度が最大限まで増大すると、その後のt11時点にその判断の成立に伴い基本目標入力回転数NINCが変更させられ、基本目標入力回転数NINCとして、制御上設けた上限値NINGRDHが設定される(t12時点)。その基本目標入力回転数NINCに対して一次遅れの目標入力回転数NINTが算出され、実入力回転数NINがその目標入力回転数NINTに一致するように無段変速機10の変速比がフィードバック制御される。
【0050】
したがって基本目標入力回転数NINCが、ステップ的に増大させられた状態に設定されるのに対して、目標入力回転数NINTがその基本目標入力回転数NINCに一次遅れで追従して増大し、さらに実入力回転数NINがその目標入力回転数NINTに対して所定の遅れをもって次第に増大する。その変速制御の当初は、積分項KISFTの値が、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に前記の値K1を加えた値より小さいが、制御が進行することに伴って前者の積分項KISFTが次第に増大するのに対して、後者の前記差が次第に減少するので、t13時点に両者の大小の関係が反転する。
【0051】
その結果、積分項KISFTの値は、前述した目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差を積分時間で除した値を積算した値から、基本目標入力回転数NINCの上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に前記値K1を加算した値に置き換えられる。言い換えれば、該値に制限される。
【0052】
そのため、本来の積算される積分項の値は更に増大するが、ステップS13の制御によって置換された積分項KISFTの値、すなわち上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に前記値K1を加算した値に制限された積分項KISFTK値は、目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCに近づくに従って次第に小さくなる。そして、目標入力回転数NINTが基本目標入力回転数NINCに一致するt14時点では、積分項KISFTは、前述した予め定めた値K1に設定される。
【0053】
このt14時点では、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTに一致していずに両者の偏差が未だ残っているので、比例動作(比例項)と積分動作(積分項)とによるフィードバック制御が継続される。したがって目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差が更に減少するが、制御量には、積分項KISFTとして前述した値K1が加算されているので、比例項のみによるフィードバック制御では、制御機器の個体差などが原因となって、定常偏差が生じる場合であっても、その定常偏差が解消もしくは抑制され、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTに完全にもしくはほぼ一致する。
【0054】
その場合、積分項KISFTの値が予め定めた値K1に維持され、その値K1に応じた制御量が継続して出力されることになるが、前述したように、目標入力回転数NINTが上限値NINGRDHに達した後に設定される積分項KISFTの値K1は、ゼロに近い小さい値であって、制御機器の個体差などによる定常偏差を解消できる程度の値であるから、実入力回転数NINのオーバーシュートが生じることはない。
【0055】
また、積分項KISFTとして予め定められた上記の値K1は、図5に示すように、低車速のときに高車速のときに比較して大きい値とされるから、実入力回転数NINを目標入力回転数NINTに一致させるための制御量が低車速ほど大きくなり、その結果、前述したいわゆる定常偏差を迅速かつほぼゼロとなるように解消することができる。
【0056】
なお、積分項KISFTを、上限値NINGRDHと目標入力回転数NINTとの差に前記値K1を加算した値に制限した後であっても、前述した図1に示す制御例におけると同様に、回転数偏差に基づいた本来の積分動作が継続しているが、その値は変速比のフィードバック制御には採用されない。
【0057】
上記のステップS12およびステップS13ならびに図6に示す例は、出力要求量が最大限増大してダウンシフトする場合の例であるが、変速の制御過程で積分動作を停止し、あるいはその値を予め定めた値とする処理をおこなうことは、出力要求量が最小限まで低下してアップシフトする場合も同様である。すなわち、図4のステップS12で否定的に判断された場合、積分項KISFTが基本目標入力回転数NINCの下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差から予め定めた値K2を減算した値より小さいか否かが判断される(ステップS14)。
【0058】
このステップS14で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくこのルーチンから抜け、また反対に肯定的に判断された場合には、積分項KISFTとして基本目標入力回転数NINCの下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差から前記の値K2を減算した値が採用される(ステップS15)。すなわち積分項KISFTが、回転数偏差に基づく本来の計算値から、基本目標入力回転数NINCの下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差から前記の値K2を減算した値に置き換えられる。言い換えれば、下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差から前記の値K2を減算した値に制限される。
【0059】
ここで、その減算する予め定めた値K2は、ゼロに近い値であって、その一例として車速SPDに応じて変化する値としてマップ化されて用意されている。その例を図7に概念的に示してある。すなわち、この値K2は、高車速側で大きい値をとるように設定されている。なお、この値K2は、エンジン1の負荷(スロットル開度)に応じて変化する値として設定することもでき、例えば図7に鎖線で示すように、アイドル・オンの場合に比較してアイドル・オフの場合に大きい値としてもよい。
【0060】
図4に示す制御によれば、アップシフトの際においても、目標入力回転数NINTが下限値NINGRDHL(基本目標入力回転数NINC)に一致した後は、積分項KISFTが(−K2)に制限され、その値による積分動作と、目標入力回転数NINTと実入力回転数NINとの偏差に基づく比例動作とによって変速比がフィードバック制御される。したがってその比例動作をおこなう前記偏差が小さくなっても、制御量には積分動作が反映されているので、比例動作のみによるフィードバック制御では、制御機器の個体差などが原因となって定常偏差が生じる場合であっても、その定常偏差が解消もしくは抑制され、実入力回転数NINが目標入力回転数NINTに完全に一致もしくはほぼ一致する。
【0061】
その場合、積分項KISFTの値が予め定めた値(−K2)に維持され、その値(−K2)に応じた制御量が継続して出力されることになるが、前述したように、目標入力回転数NINTが下限値NINGRDHLに達した後に設定される積分項KISFTの値(−K2)は、ゼロに近い小さい値であって、制御機器の個体差などによる定常偏差を解消できる程度の値であるから、実入力回転数NINのアンダーシュートが生じることはない。
【0062】
また、アップシフトの際に積分項KISFTを制限するために採用される上記の値K2は、図7に示すように、高車速側で大きい値に設定され、あるいはこれに加えてエンジン負荷が大きい場合に大きい値とされるから、前述したように制限された積分項KISFTの絶対値が、車速SPDおよびエンジン負荷に応じて大きくなる。そのため、実入力回転数NINのアンダーシュートを抑制しつつ、いわゆる定常偏差を小さくする制御をきめ細かくおこなうことができる。すなわち、積分動作をおこなわない場合には、定常偏差がエンジン負荷によって変化するからである。
【0063】
なお、積分項KISFTを、下限値NINGRDHLと目標入力回転数NINTとの差から前記値K2を減算した値に制限した後であっても、前述した図1に示す制御例におけると同様に、回転数偏差に基づいた本来の積分動作が継続しているが、その値は変速比のフィードバック制御には採用されない。
【0064】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図1に示すステップS2,〜S5の機能的手段および図4に示すステップS12,〜S15の機能的手段が、この発明のガード設定手段に相当する。
【0065】
なお、上記の具体例では、ベルト式の無段変速機を備えた車両を対象とする制御装置について説明したが、この発明は上記の具体例に限らず、トロイダル式などの他の形式の無段変速機を備えた車両を対象とする制御装置に適用することができる。また、前記積分項KISFTの制限値である予め定めた値K1,K2を変更して設定するためのパラメータは、車速SPDやエンジン負荷に限られず、これらに相当する制御データであってもよい。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、目標入力回転数と実入力回転数との偏差に基づいた変速比のフィードバック制御の際に、目標入力回転数が予め定められている限界値に達し、また前記の制御偏差がゼロになった時点では、積分項に基づく制御量がゼロになり、言い換えれば、積分項に相当する値がゼロになるため、実入力回転数が目標入力回転数に達した際に、実入力回転数をそれ以上に変化させる制御量がなく、その結果、オーバーシュートあるいはアンダーシュートを確実に防止もしくは抑制することができる。
【0067】
特に請求項2または3の発明によれば、目標入力回転数が限界値に達した後は、積分項の値の絶対値がゼロに設定されるので、実入力回転数のオーバーシュートやアンダーシュートを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の変速制御装置による積分項の算出ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図2】 基本目標入力回転数が上限値に制限されたダウンシフトの場合の積分項の変化を説明するための線図である。
【図3】 入力回転数もしくは目標入力回転数に制御上の上限値および下限値を設けた場合の変速可能領域を示す線図である。
【図4】 この発明の変速制御装置による積分項の算出ルーチンの他の例を示すフローチャートである。
【図5】 図4に示す制御で使用される目標入力回転数の上限側での積分項の制限値を定めたマップの一例を概念的に示す図である。
【図6】 基本目標入力回転数が上限値に制限されたダウンシフトの場合の図4に示す制御による積分項の変化を説明するための線図である。
【図7】 図4に示す制御で使用される目標入力回転数の下限側での積分項の制限値を定めたマップの一例を概念的に示す図である。
【図8】 この発明で対象とする車両の駆動系統およびその制御系統を模式的に示すブロック図である。
【図9】 その無段変速機の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…変速機構、 6…電子制御装置、 7…加減速操作装置、 10…無段変速機、 13…電子制御装置。

Claims (4)

  1. 実入力回転数との間で制御偏差を生じさせる目標入力回転数に限界値が設定され、その目標入力回転数に実入力回転数を一致させるよう、これら目標入力回転数と実入力回転数との制御偏差に基づく比例動作による値となる比例項および積分動作による値となる積分項を含むフィードバック制御により変速比を制御する無段変速機の変速制御装置において、
    前記目標入力回転数を前記限界値まで変化させるとともに実入力回転数をその目標入力回転数に一致させる制御過程で、前記積分項の値を前記積分動作による値から、前記制御偏差がゼロとなった時点ではゼロになる値に置換して設定するガード設定手段を備えていることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  2. 前記ガード設定手段は、前記目標入力回転数が前記限界値に達したときに前記積分項の値をゼロにするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
  3. 前記ガード設定手段は、前記積分項の絶対値が前記目標入力回転数と前記限界値との偏差よりも大きくならないように積分項の値を制限するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の無段変速機の変速制御装置。
  4. 前記ガード設定手段は、前記積分項の値を、前記制御偏差がゼロになる前に、前記目標入力回転数と前記実入力回転数との制御偏差に基づく値から前記限界値と前記目標入力回転数との差に置き換える手段を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無段変速機の変速制御装置。
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