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JP2006228745A - 燃料電池用触媒材料及び燃料電池用触媒材料の製造方法 - Google Patents

燃料電池用触媒材料及び燃料電池用触媒材料の製造方法 Download PDF

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JP2006228745A JP2006085795A JP2006085795A JP2006228745A JP 2006228745 A JP2006228745 A JP 2006228745A JP 2006085795 A JP2006085795 A JP 2006085795A JP 2006085795 A JP2006085795 A JP 2006085795A JP 2006228745 A JP2006228745 A JP 2006228745A
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康広 五戸
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Abstract

【課題】燃料電池の出力特性を向上することが可能な燃料電池用触媒材料を提供する。
【解決手段】平均直径が100〜1000nmの範囲で、かつBET法による比表面積が200〜500m2/gの範囲内の炭素繊維と、前記炭素繊維に担持されると共に、Pt及びRuのうちの少なくとも一方からなる第1の金属元素と30重量%以下の第2の金属元素(前記第1の金属元素以外の元素)とを含有する触媒粒子とを含むことを特徴とする燃料電池用触媒材料。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭素繊維合成用触媒と、この炭素繊維合成用触媒を用いた炭素繊維の製造方法と、前記炭素繊維合成用触媒を用いて作製された燃料電池用触媒材料と、前記炭素繊維合成用触媒を用いた燃料電池用触媒材料の製造方法に関するものである。
燃料電池は、二酸化炭素のエミッションが少なく、環境負荷の少ない発電技術として近年大きく注目されている。
従来の燃料電池の電極構造は、カソード用集電体/カソード電極(空気極)/イオン導電性物質であるプロトン電解質/アノード電極(燃料極)/アノード用集電体という積層構造によって燃料電池スタックである膜電極複合体が構成されている。この電池においては、アノード電極側に供給される水素ガスなどの燃料が、電極中に含まれている触媒によって分解・イオン化され、水素イオンとしてプロトン電解質を経由してカソード電極側に移動し、カソード電極に供給される空気中の酸素と結合して水を生成する。この反応における水素イオンのアノード電極からカソード電極への移動によって発電が行われ、カソード集電体及びアノード集電体から電流を取り出すことができる。
この電極反応において、プロトンと電子の拡散の抵抗をそれぞれ低減することは、電極の効率、つまり、燃料電池全体の効率を向上させるために重要な要素である。
一般に電極の構造としては、燃料電池用触媒である遷移金属の微粒子を、導電性物質であるカーボン上に担持して、集電板上に積層したものが採用されている。この触媒担体であるカーボンとしては、粒子状のものを使用することが多いが、カーボン粒子間が機械的に接触するのみで、抵抗が大きく、電極効率を大きく取れないという問題があった。また、同時に、電極内の空間配置が十分でないため、ガスの拡散が不充分で効率が悪いという問題もあった。さらに、燃料電池用触媒粒子が、カーボン粒子同士の接触部にも存在して、燃料との反応に、関与しないものが多く、触媒の一部が無駄になるという問題もあった。
これらの問題を解決するためには、カーボンを粒子状体から繊維状体に代えることが有効と考えられるようになってきている。
これまでに、すでにE.セオリドら(非特許文献1)、Guangli Chenら(非特許文献2)によって、繊維状カーボンを触媒担体とする技術などが報告されている。
しかし、これまでに発表されたいずれの報告においても、微細な触媒粒子を均一に高密度に担持したカーボンファイバーからなる電極を作製する技術は開発されていないのが現状である。
ところで、従来のカーボン繊維は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバーに代表されるように、直径が100nm以下の微細なもの、または、VGCFのような直径が100〜1000nmのもの、活性炭素繊維のような直径が1μmを超えるものなどが知られている。
触媒の担持体として用いる場合、微細な触媒を高密度に担持させることができ、かつ、担持体同士の間に適当な空間を維持できるようなものが求められてきた。
しかし、比表面積の大きな活性炭素繊維は、直径が数μm以上と太く嵩張るため担体としては適用が困難である。また、VGCFカーボンは直径が数百nmと適当なサイズであるが、比表面積が100m2/gと小さく、触媒担持に不向きである。また、新材料として注目されているカーボンナノチューブは、比表面積は数百m2/g以上と大きいものもあるが、数nmから数10nmと非常に微細であるため、空間を塞いでしまい、好ましくない。
カーボンナノチューブよりややサイズの大きな材料として、グラファイトナノファイバーがあるが、しかし、この材料でも比表面積が250m2/g以下とやや小さく(参考文献の一例;非特許文献3)、さらに直径が100nm以下である。
前記グラファイトナノファイバーのこのような形態は、その合成用触媒の形態に大きく依存する。従来の方法では、共沈法等により作製した微細な触媒前駆体を出発原料として用い、合成直前の触媒粒径が粒成長により1μmと大きく、これが合成中に細分化するために微細なカーボンが生成するものと考えられている(参考文献;例えば非特許文献4)。
上述したように、比表面積とサイズの両方を満足させるカーボン繊維は存在せず、触媒担体として不充分なものを使っていた。
このため、燃料電池等を作製した場合に、十分な出力を有する電池を製造することができなかった。
以上説明したような問題を解決するために、触媒担体として理想的なカーボン繊維を提供して、触媒性能が高く高出力な燃料電池を実現することが要望されている。
Electrochem.Acta.,vol.38,No.6,P.793(1993) Nature vol.393,P346(1998) R.T.K.BakerらのJ.Phys.Chem.B. 105,115-118(2001) R.T.Bakerらの Journal of Catalysis 131, 60-73(1991) J.Mater.Res.,vol.8,No.12(1993)3233
本発明は、燃料電池の出力特性を向上することが可能な炭素繊維合成用触媒、炭素繊維の製造方法、複合炭素材料、燃料電池用触媒材料及び燃料電池用触媒材料の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、燃料電池用触媒の効率が高く、燃料などのガスの拡散性が高く、安定して高出力を生むことができる燃料電池用電極を提供することを目的とする。
また、本発明は、ガス拡散性が高く、触媒利用効率の高い、高出力が得られる自立した燃料電池用触媒シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、ガス拡散性が高く、触媒利用効率の高い、高出力が得られる燃料電池用自立電極層の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、高出力化が可能な燃料電池、あるいは燃料電池の高出力化を可能にする燃料電池用電極を提供することを目的とする。
本発明に係る炭素繊維合成用触媒は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ケイ素からなる一次粒子の平均粒径が500nm以下の難還元性無機材料粒子と、酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも一種類からなるか、酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも一種類と酸化銅からなる一次粒子の平均粒径が500nm以下の還元性無機材料粒子とを粉砕しながら混合した後、この混合物に還元雰囲気下で熱処理を施して前記還元性無機材料粒子を還元することにより得られた平均粒径が1μm未満の金属粒子と前記難還元性無機材料粒子との混合粉末を含むことを特徴とする。
本発明に係る炭素繊維合成用触媒において、前記難還元性無機材料粒子の平均粒径は、前記金属粒子の平均粒径に比較して小さいことが望ましい。
本発明に係る炭素繊維合成用触媒において、前記難還元性無機材料粒子は、酸化アルミニウム粒子であることが望ましい。
本発明に係る燃料電池用触媒材料は、本発明に係る炭素繊維合成用触媒の存在下で異なる温度条件下で合成された少なくとも二種類以上の炭素繊維を含むことを特徴とする。
本発明に係る燃料電池用触媒材料の製造方法は、本発明に係る炭素繊維合成用触媒の存在下で炭化水素を熱分解させることにより炭素繊維を合成する工程と、
前記炭素繊維にコロイド法により触媒粒子を担持させることにより、表面及び内部に触媒粒子が担持された炭素繊維を得る工程と
を具備することを特徴とする。
本発明に係る第1の燃料電池用触媒材料は、平均直径が100〜1000nmの範囲で、かつBET法による比表面積が200〜500m2/gの範囲内の炭素繊維と、
前記炭素繊維に担持されると共に、Pt及びRuのうちの少なくとも一方からなる第1の金属元素と30重量%以下の第2の金属元素(前記第1の金属元素以外の元素)とを含有する触媒粒子と
を含むことを特徴とする。
本発明に係る第1の燃料電池用触媒材料において、前記合金粒子は、Cuと、Ni、Fe及びCoよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素とを含むことが望ましい。
本発明に係る第2の燃料電池用触媒材料は、カーボンナノファイバーと、前記カーボンナノファイバーに担持された触媒粒子とを含む燃料電池用触媒材料において、
表面及び内部に前記触媒粒子が担持されている前記カーボンナノファイバーの存在比率が10%以上であることを特徴とする。
本発明に係る第1の燃料電池用電極は、平均直径が100〜1000nmで、アスペクト比が10以上のカーボンナノファイバーと、直径が100nm以下の難還元性酸化物粉末と、前記カーボンナノファイバー表面に担持される燃料電池用触媒と、イオン導電性物質とを含む膜を備えていることを特徴とするものである。
本発明に係る第2の燃料電池用電極は、平均直径が100〜1000nmで、アスペクト比が10以上のカーボンナノファイバーと、直径が100nm以下の難還元性酸化物粉末と、前記カーボンナノファイバー表面に担持される燃料電池用触媒と、イオン導電性物質とを含有する膜と、前記膜が形成される集電体とを具備することを特徴とするものである。
本発明に係る第1、第2の燃料電池用電極において、前記カーボンナノファイバーの比表面積は、200m/g以上であることが望ましい。
本発明に係る第1、第2の燃料電池用電極において、前記カーボンナノファイバーを構成するグラファイトの結晶のC面が、長手方向に対して45以上、90度以下の角度で配向していることが望ましい。
本発明に係る第1、第2の燃料電池用電極において、前記燃料電池用触媒の平均粒径が、10nm以下であり、前記カーボンナノファイバーに担持されている前記燃料電池用触媒の平均数密度が1×1016個/m以上であることが望ましい。
本発明に係る第1の燃料電池用電極の製造方法は、遷移金属酸化物粉末と難還元性酸化物粉末の混合物を還元して遷移金属粒子と難還元性酸化物粉末の混合物を形成する工程と、
生成した前記遷移金属粒子と前記難還元性酸化物粉末の混合物を加熱し、加熱された前記遷移金属粒子と前記難還元性酸化物粉末との混合物に、炭化水素ガスを主成分とするガスを接触させて、カーボンナノファイバーを合成する工程と、
生成した前記カーボンナノファイバー表面に燃料電池用触媒を担持する工程と、
表面に前記燃料電池用触媒を担持した前記カーボンナノファイバーと前記難還元性酸化物粉末の混合物からなる層にイオン導電性物質を含浸して膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
本発明に係る第1の燃料電池用電極の製造方法においては、多孔質体表面に形成した前記燃料電池用触媒を担持した前記カーボンナノファイバーと前記難還元性酸化物粉末の混合物からなる層に前記イオン導電性物質を含浸することができる。
本発明に係る第1の燃料電池は、プロトン電解質層と、
前記プロトン電解質層の両表面にそれぞれ形成された平均直径が100〜1000nmで、アスペクト比が10以上のカーボンナノファイバーと、直径が100nm以下の難還元性酸化物粉末と、前記カーボンナノファイバー表面に担持される燃料電池用触媒と、イオン導電性物質とを含有する膜状の電極と、
前記電極の両表面にそれぞれ形成された集電体とを備えることを特徴とする。
本発明に係るカーボンナノファイバーの合成方法は、遷移金属酸化物粉末と、平均粒径が100nm以下の難還元性酸化物粉末の混合物に、炭化水素ガスを主成分とするガスを接触させることを特徴とする。
本発明に係る燃料電池用電極層の製造方法は、カーボンナノファイバーで形成された骨格と、前記カーボンナノファイバーに担持された触媒粒子とを含むプロトン導電材料未含浸の電極層に、プロトン導電材料を減圧含浸させる工程を具備し、
前記カーボンナノファイバーのうち表面及び内部に前記触媒粒子が担持されているカーボンナノファイバーの割合が10%以上であることを特徴とする。
本発明に係る第2の燃料電池は、カソード電極と、アノード電極と、前記カソード電極と前記アノード電極との間に配置される電解質膜とを備える燃料電池において、
前記カソード電極及び前記アノード電極のうち少なくとも一方の電極は、表面及び内部に触媒粒子が担持されているカーボンナノファイバーの割合が10%以上である触媒担持カーボンナノファイバーを含むことを特徴とする。
本発明に係る燃料電池用触媒シートは、カーボンナノファイバーを骨格として構成されたシートと、前記カーボンナノファイバー表面に担持された触媒粒子と、前記触媒粒子に接触するように前記カーボンナノファイバー表面に付着されたプロトン導電材料とを具備し、
前記カーボンナノファイバーのBET法による比表面積は200m2/g以上であり、平均繊維径μは100nm以上500nm以下であり、前記平均繊維径μの分布のばらつきσは、下記数式(1)および(2)で表わされることを特徴とする。
Figure 2006228745
Figure 2006228745
本発明に係る燃料電池用自立電極層を作製する方法は、
カーボンナノファイバーに触媒粒子を担持させて、触媒担持カーボンナノファイバーを得る工程と、
前記触媒担持カーボンナノファイバーを水中に懸濁させる工程と、
前記懸濁液を多孔質支持体上に堆積させて、触媒担持カーボンナノファイバー層を形成する工程と、
前記多孔質支持体から前記触媒担持カーボンナノファイバー層を剥離させる工程と、
前記触媒担持カーボンナノファイバー層を、溶媒または水で希釈したプロトン伝導性材料を含む液体中に浸漬させて、前記触媒担持カーボンナノファイバー上に前記プロトン伝導性材料を付着させる工程と
を具備し、
前記カーボンナノファイバーのBET法による比表面積は200m2/g以上であり、平均繊維径μは100nm以上500nm以下であり、前記平均繊維径μの分布のばらつきσは、下記数式(1)および(2)で表わされることを特徴とする。
Figure 2006228745
Figure 2006228745
本発明に係る第3の燃料電池用電極は、小粒径側に存在する第1の粒径分布ピークおよび大粒径側に存在する第2の粒径分布ピークの2つの粒径分布ピークを有する導電性繊維とを含む多孔質触媒担持体と、
前記第1の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維に担持される触媒と、
前記触媒に接触するように前記導電性繊維表面に付着するプロトン伝導性材料とを具備することを特徴とする。
本発明に係る第3の燃料電池用電極において、前記第2の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維を分散させてなる骨格中に、前記第1の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維の集合体が分散していることが望ましい。
本発明に係る第3の燃料電池用電極において、前記第1の粒径分布ピークの粒径値は、前記第2の粒径分布ピークの粒径値に対して5倍以上であることが望ましい。
本発明に係る第3の燃料電池は、一対の電極間にプロトン伝導性膜を挟持した燃料電池において、
前記電極の一方は、小粒径側に存在する第1の粒径分布ピークおよび大粒径側に存在する第2の粒径分布ピークの2つの粒径分布ピークを有する導電性繊維とを含む多孔質触媒担持体と、前記第1の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維に担持される触媒と、前記触媒に接触するように前記導電性繊維表面に付着するプロトン伝導性材料とを具備することを特徴とする。
本発明に係る第4の燃料電池用電極は、触媒を担持した導電性材料と、プロトン伝導性材料とを含有する混合体を含む多孔質体を具備する燃料電池用電極において、
前記多孔質体は、多孔質体の緻密度の異なる2層を有することを特徴とする。
以上詳述したように本発明によれば、燃料電池の出力特性を向上することが可能な炭素繊維合成用触媒、複合炭素材料、炭素繊維の製造方法、燃料電池用触媒材料及び燃料電池用触媒材料の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、燃料電池用触媒の効率が高く、燃料などのガスの拡散性が高く、安定して高出力を生むことができる燃料電池用電極を提供することができる。本発明によれば、ガス拡散性が高く、触媒利用効率の高い、高出力が得られる自立した燃料電池用触媒シートを提供することができる。本発明によれば、ガス拡散性が高く、触媒利用効率の高い、高出力が得られる燃料電池用自立電極層の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、高出力化が可能な燃料電池、あるいは燃料電池の高出力化を可能にする燃料電池用電極を提供することができる。
本発明に係る第1の燃料電池用触媒材料は、平均直径が100〜1000nmの範囲で、かつBET法による比表面積が200〜500m2/gの範囲内の炭素繊維と、
前記炭素繊維に担持されると共に、Pt及びRuのうちの少なくとも一方からなる第1の金属元素(燃料電池用触媒金属元素)と30重量%以下の第2の金属元素(前記第1の金属元素以外の元素)とを含有する触媒粒子と
を含むことを特徴とする。
このような触媒材料によれば、炭素繊維同士を十分に接触させて電子伝導性パスを確保することができると共に、触媒担持量を多くすることができる。その結果、かかる触媒材料を含むアノード電極か、触媒材料を含むカソード電極を備える燃料電池は、出力特性を改善することができる。
炭素繊維の平均直径を100〜1000nmの範囲内に限定する理由を説明する。平均直径を100nm未満にすると、炭素繊維間の電子伝導性パスが不足する。一方、平均直径が1000nmを超えると、触媒担持量が少なくなる。平均直径のさらに好ましい範囲は、200〜500nmである。
また、炭素繊維のBET法による比表面積が200〜500m2/gの範囲内にすることによって、十分な触媒担持量を確保することができる。
さらに、触媒粒子中の第2の金属元素量を30重量%以下にすることによって、燃料電池の出力特性を損なわずに、触媒材料の製造プロセスを簡素化することができる。触媒粒子中の第2の金属元素量のさらに好ましい範囲は、20重量%以下である。
第2の金属元素は、炭素繊維合成用触媒としての機能を有することが望ましい。第2の金属元素としては、燃料電池の出力特性を確保する観点から、Cuと、Ni、Fe及びCoよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素とを含むものが好ましい。
本発明に係る第1の触媒材料は、第1の炭素繊維合成用触媒の存在下で炭化水素を熱分解することにより炭素繊維を合成し、得られた炭素繊維に触媒粒子を担持させることにより得られる。
本発明に係る第1の炭素繊維合成用触媒とその調製方法について説明する。
本発明に係る第1の炭素繊維合成用触媒は、一次粒子の平均粒径が500nm以下の難還元性無機材料粒子と、一次粒子の平均粒径が500nm以下の還元性無機材料粒子とを粉砕しながら混合した後、この混合物に還元雰囲気下で熱処理を施して前記還元性無機材料粒子を還元することにより得られた平均粒径が1μm未満の金属粒子と前記難還元性無機材料粒子との混合粉末を含むことを特徴とするものである。
本発明における難還元性無機材料とは、金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物等のうち、水素、真空等の還元性雰囲気中での加熱処理によって金属元素に還元されないものである。この中でも酸化物が好ましく、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等を挙げることができる。
また、本発明における還元性無機材料とは、金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物等のうち、水素、真空等の還元性雰囲気中での加熱処理によって金属元素に還元されるものである。中でも、鉄の酸化物、窒化物、炭化物、コバルトの酸化物、窒化物、炭化物、ニッケルの酸化物、窒化物、炭化物の中から選ばれる少なくとも一種類を含むものが好ましい。特に、酸化物が好ましい。具体的には、酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルよりなる群から選択される少なくとも1種類の第1の酸化物と、酸化銅、酸化スズ、酸化ルテニウム及び酸化亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種類の第2の酸化物とを含むものを用いることが望ましい。この中でも、前記第1の酸化物と、前記第2の酸化物として酸化銅との組合せが好ましい。
難還元性無機材料粒子と還元性無機材料粒子とを粉砕しながら混合する機械的な混合方法としては、特に限定しないが、ボールミル法を挙げることができる。
還元性無機材料と難還元性無機材料とを含む混合物において、難還元性無機材料の比率は、1〜20体積パーセントの範囲であることが好ましい。難還元性無機材料の添加量は、炭素繊維合成用触媒に対する量である。例えば、酸化銅粉末と酸化ニッケル粉末からなる還元性無機材料の場合、前記還元性無機材料からの還元後にできる、Cu−Ni合金に対する添加量である。
還元処理の温度は、金属状態に還元できる範囲ならば特に限定されないが、750℃以下の温度で行なうことが好ましい。なぜならこれより高い温度では、還元された金属粒子の成長が大きくなりすぎるからである。
また、還元処理は、炭素繊維合成温度までの昇温過程で行なうと、プロセスが短縮されて良い。この場合、昇温速度を速くしすぎると、還元が不十分となるため考慮する必要がある。
また、二種類以上の還元性無機材料を還元して二元系以上の合金粒子を得る場合には、還元後の合金化が十分に行なわれるように、熱処理条件を選択する必要がある。前述の合金触媒の場合でも、還元、合金化を連続的に昇温過程で行なうと良い。
前述の昇温条件としては、毎分1℃〜10℃の速度範囲が好ましく、さらに毎分3℃〜8℃の範囲が好ましい。
金属粒子の平均粒径を1μm未満にする理由について説明する。平均粒径を1μm以上にすると、炭素繊維の合成過程において炭素繊維合成用触媒粒子の細分化が進みやすいため、平均直径の小さく、平均長さの短い炭素繊維が得られる。その結果、炭素繊維間の電子伝導性が不足したり、炭素繊維によるネットワーク構成が不十分になったり、極端な場合には電極の作製が困難になる。平均粒径のさらに好ましい範囲は、0.5μm以下である。ここで、平均粒径とは、一次粒子と二次粒子の区別なく求めた平均粒径を言う。また、金属粒子は、一次粒子の平均粒径が100nm以下で、かつ二次粒子の平均粒径が500nm以下であることがより好ましい。
還元性無機材料粒子の還元により生成する金属粒子の平均粒径は、前記難還元性無機材料粒子の平均粒径に比較して大きいことが望ましい。なぜなら、還元性無機材料粒子間に難還元性無機材料が分布する確率が高くなるからである。
以下、本発明に係る第1の炭素繊維合成用触媒の調製方法について説明する。
炭素繊維(例えば、カーボンナノファイバー)を合成する際の触媒(以下、CNF合成触媒と略称する)としては、例えば、Ni,FeおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属、Ni,FeおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属とCu,Ag及びMnよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属とを含む合金等を挙げることができる。
これらの金属成分に関しては、例えば非特許文献5(J.Mater.Res.,vol.8,No.12(1993)3233)に詳細に記述されている。本発明者らは、触媒前駆体として酸化物粒子を用いる方法においては、特にニッケルと銅が1:1の比率で含有されている合金が、長さと比表面積の点から優れたカーボンナノファイバーを製造できることを見出した。
以下、NiとCuの合金からなるCNF合成触媒を用いる場合を例にとり説明する。
まず、硝酸ニッケル、硝酸銅等の塩をアンモニア等のアルカリを用いて湿式中で中和して酸化ニッケル粉末と酸化銅粉末を合成する。酸化ニッケル粉末と酸化銅粉末を、還元後に目的としたCNF合成触媒組成となるように秤量する。秤量後は前記2種類の粉末に、さらに、一次粒子の平均粒径が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の酸化アルミニウム粉末を添加する。
秤量後の、酸化ニッケル、酸化銅、酸化アルミニウムの3種類の粉末をボールミル等で混合する。混合は、粉末が100nm以下の1次粒子になるまで粉砕され、また、粉末同士が均一に混合するまで行なう。この工程によりカーボンナノファイバー成長用の触媒粉末の前駆体を作製する。
次いで、前記工程で作製した触媒前駆体である酸化物粉末の混合物を、酸化アルミニウムあるいは酸化シリコン等からなる上皿容器内に入れて、電気炉内に導入し、水素ガスで雰囲気置換を行った後に昇温して、まずより低温で還元される酸化銅を還元し、次いでより高温で還元される酸化ニッケルの順に還元を行なう。還元は純水素雰囲気下でカーボンナノファイバーの成長温度までの昇温過程で行なう。この際、昇温速度は毎分1℃〜10℃の範囲にする事が好ましい。なぜなら、この条件で触媒の還元・合金化が十分に起こるからである。また、この条件では、触媒の還元・合金化が除々に進行することら、酸化アルミ(難還元性無機材料粉末)の分散性が良好となる。
上記工程で酸化アルミニウム粉末を添加する第一の目的は、CNF合成触媒の粒成長を抑制することにある。この酸化アルミニウム粉末の一部が、CNF合成触媒の粒子間に存在して、CNF合成触媒の粒成長を抑制し、最適粒径のCNF合成触媒を合成することができる。すなわち、これにより、CNF合成触媒の一次粒子の粒径も100nm前後に抑制できるとともに、一次粒子が集合して形成する二次粒子の粒径も1000nm以下に抑制することができる。
この酸化アルミニウム粉末の添加量は1〜20体積%が適当である。なぜなら、酸化アルミニウム粉末の添加量が1%以下であると粒成長抑制の効果が少なくなる恐れがあり、また20%以上だと添加量が過剰になり、電極としての導電性が低下する恐れがあるからである。特に、酸化アルミニウム粉末が添加されていないと、CNF合成触媒製造過程で合体粒成長を生じてCu−Ni合金粒子の平均粒径が1μmを越えてしまう可能性が高くなる。Cu−Ni合金粒子の平均粒径が1μm以上になると、触媒粒子の担持に最適な比表面積と長さを有するカーボンナノファイバーが得られ難くなる。添加量のさらに好ましい範囲は、1〜10体積%である。
また、カーボンナノファイバー合成条件を適性化することにより、酸化アルミニウム粉末の添加量を低減させても、好ましいカーボンナノファイバー形態に近づけることができる。この場合、高温度側、低エチレン濃度側、短時間側の合成条件で合成すると良い。具体的には、温度が700℃以上、エチレン濃度が10体積%以下、合成時間を1時間以内とすることが良い。
本実施の形態で用いられる酸化アルミニウム粒子の平均一次粒径は、10〜500nmの範囲内が望ましい。なぜなら、細かい方が粒成長の抑制効果が高いからである。なお、細かすぎると均一に分散させることが困難になる恐れがある。より好ましい範囲は10〜100nmで、さらに好ましい範囲は、10〜50nmである。
上記触媒前駆体を構成する酸化物粒子の平均1次粒径は、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。これは以下に説明する理由によるものである。酸化物粒子の平均一次粒子が500nmを超えると、触媒粒子の径が大きくなりすぎる。このような大きな粒子から成長するカーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバーの成長中に、前記触媒前駆体粒子の細分化が起こり、結果として、平均直径が100nm未満の短いカーボンナノファイバーが多くなり、電極形成に適さないからである。一方、酸化物粒子の平均一次粒子を10nm未満にすると、粒成長の抑制効果が少なく、凝集・粒成長が起こってしまう恐れがある。酸化物粒子の平均一次粒子のより好ましい範囲は、10〜100nmで、さらに好ましい範囲は30nm〜100nmである。
次いで、本発明に係る第1の炭素繊維合成用触媒を用いる燃料電池用触媒担体の合成方法について説明する。
本発明で合成される燃料電池用触媒担体は、表面に細孔が発達した炭素繊維(例えば、カーボンナノファイバー)と、前記第1の炭素繊維合成用触媒の構成成分である難還元性無機材料粒子との混合材料である。
カーボンナノファイバー表面の細孔は、その平均細孔径が1〜10nmの範囲のもであることが好ましい。なぜなら、このサイズの時に表面に触媒金属を効率よく担持できるからである。
また、このような表面を形成するカーボンナノファイバーとして特に、結晶子の平均サイズが10〜50nmのものから構成されるカーボンナノファイバーが好ましい。なぜなら、結晶子間のネットワークが微細な触媒の担持に適しているからである。
このようなカーボンナノファイバーは、600℃以上の高温で合成した場合に多く形成される。
燃料電池用触媒担体の合成の手段は公知の方法を採用することができるが、簡単で安価なプロセスであることから、熱CVD法が最も好ましい方法である。
この熱CVD法によるカーボンナノファイバーの合成は、次のようにして行われる。
すなわち、前述したCNF合成触媒の製造工程に引き続いて、同じ炉を用いて水素ガスを流しながら、炉温をカーボンナノファイバー成長温度にまで加熱する。炉温が成長温度まで上昇したら、炭化水素ガスを主成分とするガスを炉内に供給し、雰囲気ガスを置換して、加熱しながらCNF合成触媒(例えば、Ni−Cu合金と酸化アルミニウム粉末の混合物)上で炭化水素ガスを分解させてカーボンナノファイバーを析出させる。
この工程により、カーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末からなる混合物が製造される。
この工程において、雰囲気ガスは、エチレン、メタン、アセチレン等のガスと、水素、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスとの混合ガスが好ましい。例えば、エチレン:水素=1:5〜1:100の範囲のものが挙げられる。これらの混合ガスを、毎分10mL〜10L程度の流速で流しながら合成を行なう。また、本発明において、カーボンナノファイバー成長温度は500℃〜1000℃の範囲が適当である。
この工程によって製造されるカーボンナノファイバーは、直径が10〜1000nmで、アスペクト比が10以上で、さらに、比表面積が300〜350m/gであり、またその表面には細孔が存在しているものである。この細孔はその平均径が1〜10nmであり、この細孔部分が以後の工程で燃料電池用触媒を効率的に担持するサイトになる。
さらに、上記本実施の形態のカーボンナノファイバーは、0.1原子%以上の水素原子を含んでいる。これらの水素原子は、この後の、燃料電池用触媒の担持に効果的である。
また、合成されたカーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバーを構成するグラファイトの結晶のC面が、長手方向に対して45℃以上90℃以下の角度で配向している、いわゆるPlatelet型、Herringbone型である事が好ましい。なぜなら、上記カーボンナノファイバーは、ファイバーの側面表面に燃料電池用触媒粒子を、微細に高密度に担持することができるからである。
カーボンファイバーを構成するグラファイトの結晶は、六方晶の結晶構造を有しており、C面内の結合力は強く、C軸方向の結合力は弱い。このため、上記Platelet型またはHerringbone型のカーボンナノファイバーにおいては、C面の端部がファイバー側面に位置するため、C面平行方向に凹凸が発達しやすく細孔が形成されやすい。また、同時にC面担部は他の物質に対して強い吸着力を持つため、触媒、または触媒前駆体との親和性の高い物質を有効に吸着させることができる。本発明はさらにこのような効果を利用するものである。
生成するカーボンナノファイバーの型は合成条件により異なる。すなわち、成長速度が遅い場合にはPlatelet型に、また成長速度が速い場合にはHerringbone型が析出する。例えばNi系の成長用触媒を用いる場合、純Ni触媒で、かつ500℃〜600℃の低温側でCVDを行なう場合にはPlatelet型が、また、Ni−Cu合金触媒で、かつ700℃以上の高温側でCVDを行なう場合にはHerringbone型が成長しやすい。
本発明においては、合成温度の異なる方法で製造された2種類以上のカーボンナノファイバーを触媒担体として用いても良い。例えば、直径が10nm〜100nmの小径カーボンナノファイバーと、直径が前記小径カーボンナノファイバーよりも大きく、かつ100nm〜1000nmの範囲内である大径カーボンナノファイバーとからなる2種類以上の異なった径を有する混合体を触媒担体として使用することができる。
このようにして10nm〜1000nmのまでの広い分布径のカーボンナノファイバーを使うことにより、カーボンナノファイバー同士の過剰な凝集を抑制することができる。
次いで、合成された触媒担体に触媒粒子を担持させる方法について説明する。
燃料電池用触媒粒子としては、遷移金属粒子を用いることが望ましい。この遷移金属粒子の平均直径は、10nm以下であることが好ましい。なぜならこのサイズの時に触媒として効率的に機能するからである。
遷移金属粒子としては、例えば、Pt、Pd、Ni、Au、Ru、Rh、Ir、Os、Pd、Mo、Mn、W、Ta及びSnよりなる群から選ばれる金属または合金等が挙げられる。PEM、DMFC等の場合には、PtまたはPtRu合金等の貴金属を主成分とする遷移金属粒子が挙げられる。
これらの遷移金属粒子は、カーボンナノファイバー表面に均一に分散していることが好ましく、カーボンナノファイバーに対して10から50重量%範囲で担持されていることが良い。
以下、Ptを担持触媒として例にとり説明する。
まず、前述した本発明に係る燃料電池用触媒担体(例えば、カーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末との混合物)を純水中に投入し、超音波等を使ってファイバーを分散させる。このとき、カーボンナノファイバーに分散している酸化アルミニウム粉末により、カーボンナノファイバー同士の過剰な凝集を抑制することができる。これが本発明における酸化アルミニウム粉末添加の第二の効果である。
次いで、上記混合物を攪拌しながら煮沸し、その後塩化白金酸等の塩類を加えた後、さらに加熱する。次いで、この混合物に炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のアルカリを加えて弱アルカリ性とした後、加熱を続ける。その後、ろ過し、さらに、純水に入れて煮沸しながら、イオン成分が除去されるまで洗浄する。その後、ろ過してカーボンナノファイバーを溶液中から回収し、乾燥した後、水素含有還元雰囲気中で還元する。このようにして表面にPtの粒子が担持されたカーボンナノファイバーが得られる。
上記工程において、還元条件は、100℃〜500℃の範囲であることが好ましい。この還元温度が、低すぎるとPtを十分に還元することができず、また高すぎるとPt粒子同士が合体粒成長を起こすため好ましくない。
また、この燃料電池用触媒担持工程で、CNF合成触媒を、同時に塩化白金酸等の酸性溶液中に溶出させて、アルカリで中和する過程で、Pt等の触媒金属と混合させて析出させることができる。このような混合状態のものを、上記還元条件で水素還元すると、Ptに合金化させることができる。Ni,Fe,Co等のCNF合成触媒金属は、Pt等の貴金属と合金化させることにより、触媒の効率を向上することができる。本発明では、このようにCNF合成触媒を、燃料電池用触媒金属に合金化させて有効に利用することもできる。
酸化アルミニウムのような難還元性無機材料が分散しているカーボンナノファイバーに担持される触媒粒子には、燃料電池用触媒金属元素と、CuとNi、Fe及びCoよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素とからなる炭素繊維合成用触媒金属元素とが含有されていることが望ましい。燃料電池用触媒金属元素としては、例えば、Pt、Pd、Ni、Au、Ru、Rh、Ir、Os、Pd、Mo、Mn、W、Ta、Snなどを挙げることができる。また、炭素繊維合成用触媒金属元素の存在比は、触媒粒子全体を100重量%とした際に、0.1〜30重量%の範囲内にすることが望ましい。これは、以下に説明するような理由によるものである。存在比を0.1重量%未満にすると、燃料電池用触媒の活性を高める効果が期待できなくなる。一方、合計存在比が50重量%を超えると、燃料電池用触媒金属元素の存在比が不足して触媒活性が低くなる恐れがある。触媒粒子中の炭素繊維合成用触媒金属元素の存在比のさらに好ましい範囲は、1〜10重量%である。
以上の工程で、燃料電池用触媒材料として、燃料電池用触媒粒子と酸化アルミニウム粉末が担持されたカーボンナノファイバーを合成することができる。本実施の形態においては、カーボンナノファイバー表面へのPtの吸着能が高いため、5nm以下の微粒子の状態で、高密度に担持することができる。
次いで、前述した燃料電池用触媒材料を含む燃料電池用電極について説明する。
本発明に係る燃料電池用電極は、本発明に係る燃料電池用触媒材料と、イオン伝導物質とを含む。
プロトン伝導物質には、例えば、パーフルオロスルホン酸重合体のようなイオン交換樹脂が用いられる。このような物質としては、デュポン社から発売されているナフィオン(登録商標)が知られている。
また、燃料電池用電極用複合材料を用いた燃料電池用電極の場合、表面に触媒が担持されたカーボンナノファイバーからなる骨格に、プロトン伝導物質を含浸したもの等を挙げることができる。プロトン伝導物質は、前記骨格の表面を被覆した形態で存在することが好ましい。
電極厚さが10〜500μmで、特にカソードとする場合、開気孔率が30%〜80%であることが好ましい。
燃料電池用電極は、例えば、多孔質体を用いて、燃料電池用触媒と酸化アルミニウム粉末とが担持されたカーボンナノファイバーを薄膜に形成する工程を具備する方法により作製される。
この工程において、多孔質体としては、カーボン、すず酸化物、チタン酸化物や、フッ素樹脂などのプラスチックなどの材料からなる板状、クロス状、フェルト状、ペーパー状の多孔質体を使用することができる。
具体的には、例えば日本カーボン製の厚さが1mm以下のクロスGF−8−P、東レ製カーボンペーパーTGP−H−030、TGP−H−090等、あるいはフッ素樹脂ペーパー(テフロン(登録商標)ペーパー)などを挙げることができる。
本発明においては、燃料電池用電極として燃料電池用触媒を担持したカーボンナノファイバー、酸化アルミニウム粉末、及びイオン導電性物質を導電性支持体上に形成する場合には、この多孔質体をそのまま使用し導電性支持体を兼用させることもできる。この場合に、クロス状またはフェルト状のカーボンを多孔質体として用いることにより、最終的に変形能を有する電極を作製することが可能となる。
前記工程によって作製された還元後の燃料電池用触媒が担持されたカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末との混合体を秤量して、純水中に分散させ、カーボンペーパー等の多孔質体上に堆積させる。この際、吸引ろ過法等の方法をとると堆積時間が短縮されるとともに、堆積層も緻密になるので好ましい。
燃料電池用触媒が担持されたカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末との混合体の量は、カーボンペーパー等の多孔質体1cm当り1mg〜10mgの範囲が好ましい。前記量は、単位面積当たりの触媒量から導き出されるものであることが好ましい。
また、カーボンナノファイバーの長さは、1μm以上のものが少なくと50%以上含まれることが好ましい。なぜなら、面内方向のネットワークを形成するためには、1μm以上の長さが必要だからである。これ以下の長さになると、面内のネットワークが形成できずにひび割れがおこり、カーボンナノファイバーを主構成材とする電極層を形成することができない。さらに好ましくは、10μm以上のカーボンナノファイバーが50%以上含まれることが好ましい。
導電性支持体のない、カーボンナノファイバーを主体とする膜、いわゆる自立膜を作製する場合、多孔質体として使うカーボンペーパーには、予め、アルコール等の有機溶剤で溶解する物質を被覆しておくことが好ましい。これによって、この多孔質体からカーボンナノファイバー膜を剥離しやすくなる。また、自立膜を作製する場合は、カーボンペーパー以外に、テフロン(登録商標)製の多孔質ペーパーを用いることもできる。
堆積後は、室温〜100℃程度の温度で乾燥させる。これによりカーボンペーパー上に燃料電池用電極層を形成することができる。
電極層は、燃料等のガスの通気性を良くするため、一定以上の気孔率を有することが好ましい。具体的には、開気孔率で30〜80%の貫通孔が存在することが好ましい。
また、カーボンナノファイバー同士はできるだけ分散性良く存在することが好ましい。なぜなら、表面を有効に利用することができ、触媒の性能を最大限に発揮できるからである。このために、カーボンナノファイバーとともに存在する、酸化アルミニウムの100nm以下の酸化物粉末は有効である。なぜなら、この酸化物粉末の存在が、カーボンナノファイバーの分散性を良好にするからである。
ここまでの工程で、カーボンペーパー等の導電性多孔質体をそのまま電極集電体として使う場合は、このままの形で乾燥後、イオン導伝性物質を含浸するが、自立膜を作製する場合は、燃料電池用触媒が担持されているカーボンナノファイバーと、酸化アルミニウム粉末の混合層を多孔質体から剥離する。
次に多孔質体から燃料電池用触媒が担持されているカーボンナノファイバーと、酸化アルミニウム粉末の混合層を剥離する工程を説明する。
あらかじめ、有機溶剤で溶解する物質が被覆されている、テフロンペーパー、カーボンペーパー等の多孔質ペーパーを使用する。乾燥後の燃料改質用触媒が担持されているカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末の混合層が堆積している多孔質ペーパーをエタノール等の有機溶剤中に浸漬する。これにより、カーボンペーパーのような多孔質体上に被覆されていた被覆材が分解してカーボンナノファイバー膜が遊離する。遊離したカーボンナノファイバー膜は、テフロンペーパー等の撥水性の基板上に載置し乾燥させる。
最後にイオン導伝物質を含浸する工程を説明する。
この工程は、多孔質体である集電体上に形成されているカーボンナノファイバー層を主構成要素とする電極層と、前記電極層を自立膜として剥離したものと共通である。以下自立膜を例にとり説明する。
イオン導伝性物質としては、パーフルオロスルホン酸重合体(デュポン社製:商品名「ナフィオン」)が代表的に用いられている。
カーボンナノファイバーが主構成要素である自立膜を、パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)溶液中に浸漬して、含浸させる。パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)溶液は、1%〜10%の有機溶剤溶液を用いることが好ましい。
さらに真空含浸を使うと良い。何故ならファイバー壁面には細孔が発達しており、この中にナフィオンを短時間で効率的に含浸することができる。含浸は、特に限定しないが、低濃度の溶液を用いた場合は、数回行なうことができる。また、この際、含浸の間で乾燥プロセスを挟むこともできる。含浸量は特に規定しないが、パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)の重量が、カーボンナノファイバーの重量に対して10%以上70%以下、さらには20%以上50%以下であることが好ましい。なぜなら、これ以上では、気孔率が低下してしまい、また、これ以下では導伝パスを良好にとれないからである。
このようにして、平均直径が100nm以上1000nm以下のカーボンナノファイバーと、直径が100nm以下の酸化アルミニウム粉末と、燃料電池用触媒と、イオン導電性物質とから構成される層が、多孔質集電板上に形成されていることを特徴とする、燃料電池用電極層と、前記電極層のみからなる燃料電池自立電極膜を作製することができる。
特に、自立膜に関しては、形状をフレキシブルに変形できることから、これを用いて、同様にフレキシブルなMEAを作製することができる。さらに上記フレキシブルなMEAを使って、円筒形状等の起電部材を作製することができる。
自立膜作製方法としては、前述の方法以外に、予めカーボンナノファイバー粉末をナフィオン含有溶液中に分散させ、粉末状態でナフィオンを含浸させた後に、フェルト状のカーボン支持体上に堆積させる方法が考えられる。堆積後は、カーボンナノファイバー膜のみを剥がして使用しても良いし、フレキシブルなカーボンフェルトと一体で使用しても良い。また、ナフィオンは真空含浸により含浸させるとより効果的である。
以上、本発明の実施の形態においては、CNF合成触媒として、Ni−Cu合金を、また、燃料電池用触媒としてPtを用いた例を示したが、本発明は上記実施の形態において説明した材料を用いることが必須であるわけではなく、他の例示した材料についてもほぼ同等の条件で採用することが可能であり、本発明は上記実施の形態に制限されるものではない。
本発明に係る第1の燃料電池用電極について説明する。
この第1の燃料電池用電極は、平均直径が10〜1000nmで、アスペクト比が10以上のカーボンナノファイバーと、直径が100nm以下の難還元性酸化物粉末と、燃料電池用触媒と、イオン導電性物質とを含む電極層を具備することを特徴とするものである。この燃料電池用電極は、前記電極層が形成される集電体をさらに備えることを許容する。
本発明に係る第1の燃料電池用電極の製造方法は、遷移金属酸化物粉末と、難還元性酸化物粉末の混合物を還元して遷移金属粒子と酸化アルミニウム粉末の混合物を形成する工程と、
生成した遷移金属粒子と該難還元性酸化物粉末の混合物を加熱し、加熱された該遷移金属粒子と該酸化アルミニウム粉末との混合物に、炭化水素ガスを主成分とするガスを接触させて、カーボンナノファイバーを合成する工程と、
生成した該カーボンナノファイバー表面に燃料電池用触媒を担持する工程と、
表面に該燃料電池用触媒を担持した該カーボンナノファイバーと該酸化アルミニウム粉末の混合物からなる層にイオン導電性物質を含浸して膜を形成する工程とを備えたことを特徴とするものである。
この本発明に係る第1の燃料電池用電極の製造方法においては、
多孔質体表面に形成した上記燃料電池用触媒を担持した上記カーボンナノファイバーと上記難還元性酸化物粉末の混合物からなる層に上記イオン導電性物質を含浸させることができる。
本発明に係る第1の燃料電池は、プロトン電解質層と、
この両表面にそれぞれ形成された平均直径が10〜1000nmで、アスペクト比が10以上のカーボンナノファイバーと、直径が100nm以下の難還元性酸化物粉末と、燃料電池用触媒と、イオン導電性物質とを含む膜からなる電極と、
該電極の両表面にそれぞれ形成された集電体とを備えることを特徴とするものである。
本発明に係るカーボンナノファイバーの合成方法は、遷移金属酸化物粉末と、平均粒径が100nm以下の難還元性酸化物粉末の混合物に、炭化水素ガスを主成分とするガスを接触させることを特徴とするものである。
本発明に係る第1の燃料電池用電極及び第1の燃料電池は、本発明に係る第1の炭素繊維合成用触媒の存在下で合成した炭素繊維を用いて作製することができる。炭素繊維の合成法、触媒担持法、電極の作製法等は、本発明に係る第1の燃料電池用触媒材料にて説明したのと同様な方法にて行うことができる。
以上に記載した本発明に係る第1の燃料電池用電極およびその製造方法と、第1の燃料電池及びその製造方法と、本発明に係るカーボンナノファイバーの合成方法によれば、発電効率の優れた燃料電池を実現することができる。
また、本発明に係る第1の燃料電池の製造方法によれば、直径が大きく、長さが長く、かつ、比表面積が大きいカーボンナノファイバーを製造することができ、その結果燃料電池用触媒を高密度に担持することが可能になり、高効率電池の製造を可能にするものである。
本発明において、カーボンナノファイバーとしては、その平均直径が100〜1000nmの範囲のものを採用することが必要である。その直径が上記範囲を上回った場合、カーボンナノファイバーの比表面積が低下し、触媒担持能力が低下するために好ましくない。一方、その直径が上記範囲を下回った場合、その機械的強度が不十分であり取り扱いに不都合が生じるため好ましくない。
また、カーボンナノファイバーの長さと直径の比であるアスペクト比は、10以上であることが望ましい。このアスペクト比が上記範囲を下回った場合、十分な柔軟性及び相互の絡み易さを有するファイバーとならないため、ガス透過性を有するシートとすることが困難となり、好ましくない。
本発明で用いるカーボンナノファイバーの比表面積は、200m/g以上であることが望ましい。
その理由は、これ以下では燃料電池用触媒の担持能が低くなるためだからである。さらに好ましくは300m/g以上が良い。なぜならこの時に触媒担持能がさらに向上するからである。
前記カーボンナノファイバーを構成するグラファイトの結晶のC面は、長手方向に対して45〜90度の角度で配向しているものであることが望ましい。
その理由は、このカーボンナノファイバーは、ファイバーの側面表面のC面端部にそって細孔が発達しやすくなり、金属触媒粒子を、微細に高密度に担持することができるからである。
前記カーボンナノファイバーは、水素元素を0.5原子%以上含有するものであることが望ましい。
その理由は、カーボンナノファイバーに水素原子が含まれると吸着した不純物sが離脱しやすくなるからである。
本発明で用いられる難還元性酸化物とは、カーボンナノファイバーの合成用触媒よりも還元性の低い材料であり、例えば酸化アルミニウムや、酸化シリコンが挙げられる。
本発明で用いられるイオン導電性物質は、結着性があり、かつ水素イオンの移動を阻害しない物質であり、パーフルオロスルホン酸重合体のようなイオン交換樹脂が用いられる。このような物質としては、デュポン社から発売されているナフィオン(商標名)が知られている。
本発明において、このイオン導電性物質は、カーボンナノファイバーに対して、10〜70重量%の範囲で用いることが好ましい。イオン導電性物質の配合量がこの範囲を上回った場合、この電極のガス透過性が失われて発電性能が低下する。一方、イオン導電性物質の配合量が上記範囲を下回った場合、プロトン導伝性が低下する可能性が高くなるだけでなく、カーボンナノファイバー相互の接触が低下する結果、この電極の内部抵抗が増加して発電効率が低下するばかりでなく、電極の機械的強度が低下してしまう欠点がある。
本発明において用いられる燃料電池用触媒としては、Pt,Pd,Ni,Au,Ru,Rh,Ir,Os,Pd,Mo,Mn,W,Ta,Sn等の中から選ばれる金属または合金等が挙げられる。これらの内で、PtまたはPt合金が触媒活性の点で好ましい。この燃料電池用触媒は、カーボンナノファイバー表面に均一に分布していることが望ましく、またその粒径は、1〜10nmの範囲が望ましい。この燃料電池用触媒の平均粒径が上記範囲を下回った場合、十分な触媒機能を果たし得ない問題があり、一方、上記範囲を上回った場合、比表面積低下の問題がありそれぞれ好ましくない。
この燃料電池用触媒の電極への添加量は、カーボンナノファイバーに対して数密度にして1×1016個/m以上であることが望ましい。さらに5×1016〜1×1017個/mであることが望ましい。燃料電池用触媒の量が上記範囲を下回った場合、触媒効率が低下して、発電効率が悪化するために好ましくない。一方、燃料電池用触媒の量が上記範囲を上回った場合、触媒量の増加に見合った発電効率の向上が望めず、不経済であり好ましくない。
前記燃料電池用触媒は、燃料電池用触媒成分とカーボンナノファイバー合成触媒成分との合金であることが望ましい。
その理由は、合金化により触媒の性能を向上させることができるからである。
本発明の燃料電池用電極の開気孔率は、30〜80体積%であることが望ましい。
開気孔率がこの範囲を下回った場合には、燃料ガスや空気を効果的に流通させることができないため好ましくない。一方、開気孔率がこの範囲を上回った場合には、燃料電池用電極の機械的強度が低下するため好ましくない。
なお、本発明において、開気孔率は、次のような方法によって測定される。すなわち、予め、電極の単位空間当りに存在する各部材(カーボンナノファイバー、燃料電池用触媒、酸化物粒子)の存在重量が既知のものに対して、含浸したイオン導伝性物質の量を正確に測定し、それぞれの密度を基に残空間量を測定する。
本発明の燃料電池用電極の膜厚は、10〜500μmであることが望ましい。
その理由は、この範囲以上では、電解質からの距離が離れた部分が多くなり無駄ができる。また、この範囲以下では、触媒量を十分にすることができないからである。
図1が本発明を適用することのできる燃料電池用電極構造体の概略図であり、本発明の燃料電池用電極は、図1に示す燃料電池の膜電極集合体中のカソード電極3、及びアノード電極5に関するものである。以下、その構造及び製造方法について詳述する。
本発明の燃料電池用電極は、表面に遷移金属を主成分とする燃料電池用触媒粒子が担持されており、直径が100〜1000nmでアスペクト比が10以上のカーボンナノファイバーと、直径が100nm以下の難還元性酸化物粉末を、イオン導電性物質で結着した膜状体を備えるものである。
本発明の実施の形態における燃料電池用電極は、それ自身で自己形状保持性を有しているため支持体を特に必要とはしないが、機械的強度が必要な用途に用いる場合には、カーボンペーパーやカーボンクロスのような導電性支持体の表面に、遷移金属を主成分とする燃料電池用触媒粒子を担持した上記カーボンナノファイバーと、難還元性酸化物粉末と、イオン導電性物質からなる層を積層して電極とすることもできる。
この導電性支持体としては、カーボン、すず酸化物、チタン酸化物等の材料で形成されたクロス状や、板状のカーボンの多孔質体が好ましく、例えば日本カーボン製の厚さが1mm以下のクロスGF−8−P、東レ製カーボンペーパーTGP−H−030、TGP−H−090等をあげることができる。クロス状またはフェルト状のカーボンを導電性支持体として用いる場合は、最終的に変形能を有する電極を作成することが可能となる。また、この導電性支持体は、図1における電極集電体2,3を兼ねて使用することもできる。
本燃料電池用電極は、図1に示すように、プロトン電解質4を挟んで、その両面に配置されて使用される。そして、その両側には、セパレータを兼ねた集電体2,6が配置され、膜電極複合体(MEA)1が形成される。なお、集電体2,6と電極3,5との間に、燃料ガス及び空気の分散を均一にするために導電性多孔質シートのガス拡散層を配置することもできる。このガス拡散層としては、カーボンペーパーあるいはカーボンクロスが用いられる。
次いで、本発明に係る第2の燃料電池用触媒材料について説明する。
この第2の燃料電池用触媒材料は、カーボンナノファイバーと、前記カーボンナノファイバーに担持された触媒粒子とを含む燃料電池用触媒材料において、
表面及び内部に前記触媒粒子が担持されている前記カーボンナノファイバーの存在比率が10%以上であることを特徴とするものである。
表面及び内部に触媒粒子が担持されているカーボンナノファイバーは、ファイバー内部にもカーボンと触媒とプロトン導電材料とからなる三相界面を形成することが可能である。よって、表面及び内部に触媒粒子が担持されているカーボンナノファイバーの存在比率を10%以上にすることによって、十分な量の三相界面を確保することができるため、触媒利用効率と酸化剤利用率を改善することができる。存在比率のより好ましい範囲は、30%以上で、さらに好ましい範囲は50%以上である。
カーボンナノファイバーは、例えば、ニッケル、鉄、コバルトなどの金属や、金属酸化物、またその混合物や合金などを触媒として、原料ガスにハイドロカーボンなどを用い、熱CVDで作製される。作製後、触媒は酸などに溶解させて除去することが好ましいが、触媒の種類によっては燃料電池用触媒の活性を向上することができるため、この場合には取り除かない方が望ましい。また、ファイバー合成後に雰囲気ガス中で処理を行うことで、ファイバー表面を改質することも出来る。さらに、ファイバー作製中の触媒の粒子径によって、ファイバー径を制御することが出来る。具体的には、触媒前駆体である金属酸化物を還元し、得られた触媒粒子の存在下でカーボンナノファイバーを合成する過程において触媒粒子の粒成長が起きないように、触媒前駆体に粒成長抑制剤である難還元性の金属酸化物微粒子を添加することによって、カーボンナノファイバーの径を制御することができる。粒成長抑制剤としては、例えば、アルミナ微粒子などを挙げることができる。
報告されているカーボンナノチューブや、カーボンペーパーなどに用いられているカーボン繊維は、カーボンの結晶面が長さ方向に対して平行である。これに対して、金属酸化物を含む触媒前駆体に粒成長抑制剤である難還元性の金属酸化物微粒子を添加し、還元処理により調製された触媒を用いて作製したカーボンファイバーは、カーボン結晶面のc面(端面)がファイバーの長さ方向に対して、角度を持つ。このカーボンファイバーの結晶面の端面は、白金または白金合金などの触媒金属微粒子を均一で微細に担持することができる。触媒微粒子は、単位表面積あたりの数密度が高いことが望まれるために、20nm以下の微細な粒子径であると良い。このためカーボンファイバーの端面の角度は30°から90°が好ましく、更に45°から90°の範囲は非常に良い。
カーボンナノファイバーは、10〜50nmの大きさの結晶粒が集合して出来た多結晶構造で、表面にはナノオーダーの凹凸が存在していることが、良好な触媒粒子担持および良好なプロトン導電体存在状態、つまり理想的な三相界面を作製するのに必要となる。構造を詳細に説明すると、触媒は多結晶粒の表面に担持されて存在し、表面凹凸およびその粒界の空隙に入り込んでいる。そのため、横断面から観察をしたときにはファイバー内部まで担持触媒が浸入しているように見える。また、プロトン導電体も多結晶粒の表面を覆うように、ファイバー内部まで入り込んだ構造をしている。プロトン導電体がファイバー内部まで浸入しているため、担持された触媒表面およびファイバー表面への密着性を非常に高くすることができる。
また、触媒粒子をファイバー表面に、より高密度で担持するためには、ファイバーの比表面積(BET法によって測定)は200m2/g以上であることが望まれる。高密度で触媒粒子を担持すると、より薄い層で電極を作製することができるため、ガス拡散性向上や材料費の低減、コンパクト化にも良い。
カーボンナノファイバーの平均直径は、100nm〜1000nmの範囲内にすることが望ましい。ファイバー平均径が100nm以下であると、ファイバー長も短く、ファイバー同士でネットワークを組んで電極層としての形状を保つことができず、電極が割れてしまう恐れがある。平均径が1000nmを超えると、比表面積が低下し、ファイバー上への白金担持量が低下し、気孔径が大きくなることで空間を有効に利用できない。また、ファイバー長が1μm以上のファイバーが50%以上含まれているとなお良い。ファイバー径、ファイバー長を調整するためにファイバーを合成後、分級を行うと更に良い。
また、電極触媒層の気孔率は30%以上であることが望まれる。30%以下だと、ガスの拡散がしにくくなり、出力が低下する恐れがある。
このファイバーに担持させる燃料直接改質用触媒としては、例えば、白金粒子や、白金族元素、第4周期および第5周期遷移金属の中から選ばれた一種類以上の元素と白金との合金粒子などを挙げることができる。白金族元素としては、Ru、Rh、Ir、Os、Pd、が挙げられる。触媒としての具体例としては、Pt、Pt−Ru、Pt−Ru−Ir、Pt−Ru−Ir−Os、Pt−Ir、Pt−Mo、Pt−Fe、Pt−Co、Pt−Ni、Pt−W、Pt−Sn、などが挙げられる。
次に担持触媒を作製する方法について述べる。
カーボンナノファイバーを水中に懸濁させ加熱し、上記の触媒前駆体である塩類を加えた後、アルカリを加え弱アルカリ性として加熱を続ける。その後ろ過し、沈殿物を洗浄する。さらに、沈殿物をフラスコに入れ純水を加えしばらく加熱し、濾過する。これを何回か繰り返し、その後沈殿物を乾燥機で乾燥させる。乾燥させた沈殿物を、雰囲気炉中に入れ、還元雰囲気、例えば水素を含む不活性ガスなどを流しながら加熱する。この時の炉の温度は、100℃から900℃の範囲がよく、特に200℃から500℃がよい。100℃以下だと、触媒の結晶化が不十分であるために活性も低く、電極に使用した際には経時的に触媒粒子の粒成長が起こりやすくなる。900℃以上であると、触媒粒子の粒成長が顕著になり触媒活性が極端に落ちる。担持量は担持体に対して触媒重量が3wt%から80wt%の範囲が良い。3wt%以下だと電池性能が出なく、80wt%だと担持体表面に担持出来ず、触媒同士で凝集してしまうために、触媒利用効率が低下するためである。
次いで、本発明に係る燃料電池用電極層の製造方法について説明する。
この燃料電池用電極層の製造方法は、カーボンナノファイバーで形成された骨格と、前記カーボンナノファイバーに担持された触媒粒子とを含むプロトン導電材料未含浸の電極層に、プロトン導電材料を減圧含浸させる工程を具備する燃料電池用電極層の製造方法であり、
前記カーボンナノファイバーのうち表面及び内部に前記触媒粒子が担持されているカーボンナノファイバーの割合が10%以上であることを特徴とする。
本発明に係る触媒材料を含むプロトン導電材料未含浸の電極層に、電解質を有機溶媒で希釈し減圧で含浸することによって、カーボンナノファイバー内部にまでプロトン導電材料を浸透させることができるため、担持体カーボンと触媒とプロトン導電材料で形成される三相界面を理想的に構築することができる。その結果、触媒利用率および酸化剤利用率を大幅に改善することができ、高性能かつ低コストを実現出来、また、燃料電池運転中での触媒の物質移動が起きにくいために長期安定性にも優れた電極を提供することができる。
本発明に係る触媒材料とプロトン導電材料とを含む電極層には、電気導電性を向上させるために導電性物質をさらに含有させることができる。
プロトン導電性物質は、プロトンを伝達できるものであれば何でも良い。具体例を以下に挙げるが、それに限定されるわけではない。例えば、スルホン酸基を持つフッ素系樹脂(ナフィオン、フレミオン、アシプレックなど)や、タングステン酸、リンタングステン酸などの無機物などが挙げられる。
プロトン導電性物質は、触媒材料(触媒担持ファイバー)100重量部に対して、1から200重量部であり、特に10から120重量部が良い。1重量部だとプロトン導電性物質が不足し、抵抗が上昇し電池性能が低下する。また、本研究で用いたファイバーの場合200重量部以上では電子抵抗が上昇する上に、気孔がプロトン導電体物質で埋められてしまうために、燃料の拡散も低下し、電池性能が低下する。
プロトン導電性物質を含浸させる方法としては、プロトン導電性物質を有機溶剤もしくは水などで希釈し、電極層を浸漬させたのち減圧にして含浸させる。希釈したプロトン導電性物質を含む溶液は、プロトン導電性物質が5重量%以下の濃度であることが必要である。5重量%よりも濃いと、溶液の粘度が高くなり、含浸プロセス中に電極層内の気泡が抜けにくく、理想的な三相界面が形成されにくい。また、1重量%以下の濃度の場合には、電極層内に残留するプロトン導電性物質が十分でない可能性が高いため、繰り返し含浸作業を行うほうが良い。また、その際には熱処理をしても良い。含浸作業を行う際に、プロトン導電性物質を含む溶液から、電極層を引き上げ後、ろ紙やスポンジなどの溶液吸収力のある材料の上で乾燥させても良い。電極の支持体(カーボンペーパーなど)中の余分なプロトン導電体物質を取り除く効果があるためである。
導電性担持体物質としては、次に具体例を挙げるがこれに限定されるものではない。
例えば、カーボン、導電性金属酸化物、無機物上に導電性物質をコーティングした材料(全て、粒子、ファイバー、チューブを含む)などである。
導電性の添加物質としては、導電性がある物質であれば何でもよく、形状も粒子、ファイバー、チューブ、など請求項に記載されている条件さえ満たしていれば、限定されない。
これらの電極組成物を有する電極を作製する方法は、いくつかあるがそのうち2種類について述べる。まず、条件に合うように混合された触媒担持ファイバーを水の中に分散機で分散させる。次に、集電体の機能を持つ導電性多孔質体上に吸引ろ過もしくは紙漉きのような方法で、分散液中のファイバーを膜状に電極を形成し、乾燥する。その後上記のプロトン導電性物質が溶解もしくは懸濁している液体中に浸し、減圧中で含浸し、その後引き上げ乾燥させる。触媒担持ファイバーは、プロトン導電性物質を含浸させる前であれば、ファイバーの形で還元してもよいし、多孔質体上に形成してから多孔質体ごと還元処理を行っても良い。
次に湿式法といわれるスラリーを作製する方法であるが、上記の組成物を水もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物からなる溶液中に分散して作製したスラリー組成物を、導電性を有した多孔質体(集電体)上に種々の方法を用いて塗布した後、乾燥して作製する。そのときのスラリー組成物の溶媒量は、固形分が5から60%になるように調整する。5%以下だと電極内の電子導電性が低下し電池性能を低下させ、60%以上だとスラリーの粘度が高すぎ膜が形成しにくい上に、電極を乾燥させた際にひび割れ、剥離が顕著となる。
上記のような方法で作製した電極を用いて、プロトン導電性固体膜をアノード電極とカソード電極ではさんで、ロールまたはプレスによって熱圧着し、膜電極複合体(MEA)を作製した。具体的には、アノード電極の触媒には、メタノールや一酸化炭素に対する耐性が強いPt-Ru系、カソード電極にはPtを用いて作製した電極を用いた。この際の熱圧着の条件は、温度が70℃以上180℃以下で、圧力は10から200kg/cmとし、圧着時間は1分以上30分以下とする。圧力や温度が低かったり時間が短かった場合には、圧着が不十分で電極部としての抵抗が高いために、電池性能が悪くなるが、高圧、高温、長時間、などの条件だと、固体膜や電極層の変形や分解が起き、燃料および酸化剤がうまく供給されなくなると共に膜が破壊される可能性があり、電池特性も低下する。
次いで、本発明に係る燃料電池用触媒シートについて説明する。
この燃料電池用触媒シートは、カーボンナノファイバーを骨格として構成されたシートと、前記カーボンナノファイバー表面に担持された触媒粒子と、前記触媒粒子に接触するように前記カーボンナノファイバー表面に付着されたプロトン導電材料とを具備し、
前記カーボンナノファイバーのBET法による比表面積は200m2/g以上であり、平均繊維径μは100nm以上500nm以下であり、前記平均繊維径μの分布のばらつきσは、下記数式(1)および(2)で表わされることを特徴とする。
Figure 2006228745
Figure 2006228745
また、本発明に係る燃料電池用自立電極層の製造方法について説明する。
この製造方法は、カーボンナノファイバーに触媒粒子を担持させて、触媒担持カーボンナノファイバーを得る工程と、
前記触媒担持カーボンナノファイバーを水中に懸濁させる工程と、
前記懸濁液を多孔質支持体上に堆積させて、触媒担持カーボンナノファイバー層を形成する工程と、
前記多孔質支持体から前記触媒担持カーボンナノファイバー層を剥離させる工程と、
前記触媒担持カーボンナノファイバー層を、溶媒または水で希釈したプロトン伝導性材料を含む液体中に浸漬させて、前記触媒担持カーボンナノファイバー上に前記プロトン伝導性材料を付着させる工程と
を具備し、
前記カーボンナノファイバーのBET法による比表面積は200m2/g以上であり、平均繊維径μは100nm以上500nm以下であり、前記平均繊維径μの分布のばらつきσは、下記数式(1)および(2)で表わされることを特徴とするものである。
Figure 2006228745
Figure 2006228745
以下、本発明の触媒シートに用いた、繊維状電子導電体、およびそれを用いた電極、燃料電池について順次詳しく説明する。
まず、燃料電池用触媒について説明する。
燃料電池用の触媒は、電子導電体に担持されている場合と、担持されていない場合との2種類が挙げられる。電子導電体に担持されていない場合には、集電体に触媒が直接塗布されているために、使用される触媒量が減らせず、担持した場合と比較して触媒粒子径が大きく重量当たりの活性が低い。一方、担持体を用いた場合には、数nm程度の細かい触媒粒子が表面に担持される可能性があり、触媒使用重量当たりの活性が高い触媒を得ることができる。
ここでは、電子導電体としてカーボンを例に挙げて、このカーボンに触媒を担持させた触媒について詳しく説明するが、同様の構造および導電性を実現することができれば、電子導電体の材料はカーボンに限定されない。例えば、酸化チタン、酸化錫、および酸化亜鉛などの酸化物半導体や、絶縁体セラミックスなどの表面に導電性材料をコーティングしたものなどを、電子導電体として用いることもできる。
本発明者らは、触媒担体としてカーボンナノファイバーを用い、ファイバー作製法を工夫することによって、独立した触媒層を作製するのが可能であること、さらに、こうした触媒層をアノード電極またはカソード電極として用いた燃料電池は電池性能が著しく向上することを見出した。
カーボンナノファイバーは、ニッケル、鉄、およびコバルトなどの金属や、金属酸化物、またはその混合物や合金などを触媒として、原料ガスとしてハイドロカーボンなどを用い、熱CVDにより作製することができる。作製後には、酸などを用いて触媒を溶解してできる限り取り除くことが好ましいが、取り除かなくてもよい。また、ファイバー合成後に雰囲気ガス中で処理を行なうことによって、ファイバー表面を改質することもできる。さらに、ファイバー作製中の触媒の粒子径を変更することによって、ファイバー径を制御することが可能である。また、ファイバー径を制御して、還元・合成工程において触媒粒子の粒成長が起きないように、粒成長抑制剤である還元されにくい金属酸化物粒子を原料粉末に添加することができる。粒成長抑制剤としては、例えばアルミナ微粒子などを用いることができる。
報告されているカーボンナノチューブや、カーボンペーパーなどに用いられているカーボン繊維は、カーボンの結晶面がチューブの長さ方向に対して平行である。これに対して、上述した手法により作製されたカーボンナノファイバーにおいては、カーボンの結晶面のc面(端面)がファイバーの長さ方向に対して角度を有する。このカーボンナノファイバーの結晶面の端面は、白金または白金合金などの触媒金属微粒子を均一で微細に担持できることが見出された。触媒微粒子は、単位表面積当たりの数密度が高いことが望まれるために、その粒子径が20nm以下の微細な粒子であることが望ましい。このため、カーボンナノファイバーの端面の角度は30°から90°が好ましく、さらには45°から90°の範囲は非常に好ましい。
また、触媒粒子をファイバー表面により高密度で担持するためには、ファイバーの比表面積(BET法によって測定)は、200m2/g以上であることが必要である。比表面積が200m2/g未満のファイバーは、触媒担持能が低く、担持触媒粒径が大きいもしくは担持されず、触媒活性が低下する。そのため、電池性能も低下する。200m2/g以上の比表面積を有するファイバーを用いるので高密度で触媒粒子を担持することができ、それによって、より薄い層で電極を作製することができる。このため、ガス拡散性向上や材料費の低減、コンパクト化にもつながる。
このように作製されたカーボンナノファイバーの平均繊維径は、1nmから1000nmの範囲となる。カーボンナノファイバーを用いて自立した電極を作製するためには、こうしたファイバーから特定の範囲の径を有するナノファイバーを選択して用いることが要求される。以下に、本発明におけるカーボンナノファイバーの平均繊維径について詳細に説明する。
カーボンナノファイバーの平均繊維径を測定したところ、正規分布で近似が可能な一山の分布となることが実験的に確認された。ファイバー径の分布が正規分布であると仮定すると、ファイバーの平均繊維径μと、その平均繊維径μの分布ばらつきを示す値σとは、下記数式(3)および(4)を用いて表わすことができる。
Figure 2006228745
Figure 2006228745
実測値は、実験的にファイバー径を測定して、その分布および平均の径から得ることができる。こうしたμとσとの関係が下記数式(1)および(2)で表わされる範囲のファイバーを用いた場合、自立した電極層を作製可能であることが見出された。
Figure 2006228745
Figure 2006228745
以上の数式は、次のようにして導くことができる。
ファイバーの平均繊維径μの分布が正規分布で示されると、μとσとの間には下記数式(5)で表わされる関係が成り立つ。
Figure 2006228745
このとき、Zを下記数式(6)で表わす。
Figure 2006228745
さらに、以下のように算出される。
Figure 2006228745
80nm以下のファイバーの含有率が10%以下であって、850nm以上のファイバーの含有率が5%以下というファイバー径分布が、電池性能の高い自立電極膜を作製するのに必要であることが実験的に確認された。80nm以下のファイバーが10%より多く存在している場合には、自立膜を作製する過程で電極の形状を保つことができず、電極表面に亀裂が生じてしまう。一方、850nm以上のファイバーが5%より多い場合には、ファイバーの比表面積が低下するため、触媒の担持量が減少し、しかも気孔径が大きくなる。したがって、触媒活性の点で不利になるため、電池性能が低下することになる。これらに基づいて、以下の数式(8)が導かれる。
Figure 2006228745
前述の数式(8)から解を算出すると、下記数式(9)が得られる。
Figure 2006228745
さらに、下記数式(10)が得られる。
Figure 2006228745
前述の数式(9)および数式(10)に基づいて、図7のようなグラフを描くことができる。斜線の範囲内のファイバー平均繊維径μおよび分布のばらつきσを有するファイバーが、本発明において用いられるものである。
なお、ファイバーの平均繊維径μは、100nm以上500nm以下であることが必要である。平均繊維径が100nm未満のファイバーであると、ファイバー長も短く、ファイバー同士でネットワークを組んで電極層としての形状を保つことができない。こうして作製された電極には、割れが生じてしまう。一方、ファイバーの平均繊維径が500nmを越える場合には比表面積が低下して、ファイバー上への白金担持量が低下する。その結果、気孔径が大きくなることにより空間を有効に利用することができない。
また、1μm以上の長さを有するファイバーが50%以上含まれていると、より好ましい。この場合には、ファイバー同士でのネットワーク強度が高まり、より割れにくく、電極層強度が向上する。上述したようにファイバー径およびファイバー長を調整するためには、ファイバーを合成後、分級を行なうことがより好ましい。
こうしたファイバーに担持させる燃料直接改質用触媒としては、白金粒子、または白金族元素および第4周期および第5周期遷移金属のなかから選ばれた一種以上の元素と白金との合金粒子などが挙げられる。白金族元素としては、Ru、Rh、Ir、OsおよびPdが挙げられる。以下に、具体的な例を挙げるが、これに限定されるものではない。例えば、Pt、Pt−Ru、Pt−Ru−Ir、Pt−Ru−Ir−Os、Pt−Ir、Pt−Mo、Pt−Fe、Pt−Co、Pt−Ni、Pt−W、およびPt−Snなどである。
担持触媒は、以下のような手法によりカーボンナノファイバーに触媒粒子を担持させて作製することができる。
まず、すでに説明したようなカーボンナノファイバーを水中に懸濁させて加熱し、上述した触媒の前駆体である塩類を加える。その後、アルカリを加えて弱アルカリ性として加熱を続ける。次いで、ろ過して沈殿物を洗浄する。さらに、沈殿物をフラスコに収容して純水を加えしばらく加熱し、濾過する。これを何回か繰り返した後、沈殿物を乾燥機で乾燥させる。乾燥させた沈殿物を、雰囲気炉中に収容して、還元雰囲気、例えば水素を含む不活性ガスなどを流しながら加熱する。この時の炉の温度は、100℃以上900℃以下の範囲が好ましく、200℃以上500℃以下の範囲がより好ましい。100℃未満の場合には、触媒の結晶化が不十分であるために活性も低く、電極に使用した際には、経時的に触媒粒子の粒成長が起こりやすくなる。一方、900℃を越えると触媒粒子の粒成長が顕著になって、触媒活性が極端に低下する。
触媒の担持量は、担持体としてのカーボンナノファイバーに対して、触媒重量が3wt%以上80wt%以下の範囲とすることが好ましい。3wt%未満の場合には、十分な電池性能を得ることが困難となる。一方、80wt%を越えると、担持体表面に担持することが困難となって触媒同士で凝集してしまうために、触媒利用効率が低下するおそれがある。
上述した手法で得られた触媒担持ファイバーは、電極組成物として用いることができる。この電極組成物について、以下に説明する。
電極組成物は、触媒担持ファイバーと、プロトン導電性物質とを含有するが、電気導電性を高めるために導電性物質を加えてもよい。この際、プロトン導電性物質としては、プロトンを伝達できる任意のものを用いることができる。具体例としては、例えば、スルホン酸基を持つフッ素系樹脂(ナフィオン、フレミオン、アシプレックなど)や、タングステン酸、およびリンタングステン酸などの無機物などが挙げられる。
プロトン導電性物質の添加量は、触媒担持カーボンナノファイバー100重量部に対して、1重量部以上400重量部以下であることが好ましく、10重量部以上200重量部以下であることがより好ましい。1重量部未満の場合には、プロトン導電性物質が不足して抵抗が上昇し、電池性能が低下する。一方、プロトン導電性物質の添加量が400重量部を越えると、電子抵抗が上昇するうえに気孔がプロトン導電体物質で埋められてしまう。このために、燃料の拡散も低下して電池性能が低下する。
導電性担持体物質としては、例えば、カーボン、導電性金属酸化物、無機物上に導電性物質をコーティングした材料(いずれも、粒子、ファイバー、およびチューブを含む)などが具体例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
導電性の添加物質としては、導電性を有する任意の物質を用いることができる。そのような添加物質の形状は、粒子、ファイバー、およびチューブなど、特に限定されない。
これらの電極組成物を用いて電極を作製する方法は、いくつかあるがそのうち2種類について述べる。まず、条件に適合するように混合された触媒担持カーボンナノファイバーを、分散機を用いて水中に分散させる。次に、多孔質体からなる支持体上に吸引ろ過する、もしくは紙漉きのような方法によって、分散液中のファイバーから膜状の電極を形成して、これを乾燥する。乾燥後の電極は、溶剤中に浸漬して支持体から剥離させる。さらに、上述したプロトン導電性物質が溶解または懸濁した液体を調製し、この液体中に触媒担持カーボンナノファイバーを浸して真空含浸した後、引き上げ乾燥させる。触媒担持ファイバーは、ファイバーの形で還元してもよいし、多孔質支持体上に形成してから多孔質体ごと還元処理を行なってもよい。
あるいは、湿式法といわれるスラリーを作製する方法を採用することもできる。この場合には、まず、上述の電極組成物を水もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物からなる溶液中に分散してスラリー組成物を調製する。得られたスラリー組成物を、種々の手法を用いてフィルム上に塗布した後、乾燥して電極を作製する。スラリー組成物における溶媒量は、固形分が5%以上60%以下になるように調整することが好ましい。5%未満の場合には塗膜が剥がれやすくなり、一方、60%を越えるとスラリーの粘度が高すぎて、フィルム上に膜を形成することが困難となる。そのフィルム上に形成された膜をプロトン導電性の膜の上に転写して、電極層が得られる。
こうした電極層の気孔率は30%以上であることが望まれる。30%未満の場合には、ガスが拡散しにくくなって出力が低下するおそれがある。
上述したような方法で作製された電極を用いて、膜電極複合体(MEA)を製造することができる。この場合には、プロトン導電性固体膜をアノード電極とカソード電極とで挟んでロールまたはプレスにより熱圧着して、MEAが得られる。具体的には、アノード電極の触媒としては、メタノールや一酸化炭素に対する耐性が強いPt−Ru系を用い、カソード電極の触媒としてはPtを用いて、電極を作製する。この際の熱圧着の条件は、温度が70℃以上180℃以下で、圧力は10kg/cm2以上200kg/cm2以下とし、圧着時間は1分以上30分以下とすることが好ましい。圧力や温度が低い場合、あるいは時間が短い場合には、圧着が不十分で電極部としての抵抗が高い。このため、電池性能が低下する。一方、高圧、高温、あるいは長時間などの条件の場合には、固体膜や電極層の変形や分解が生じて、燃料および酸化剤が良好に供給されなくなる。さらに、電極層等が破壊されるおそれがあり、電池特性も低下する。
粒子状カーボンを触媒担持体として用いて、上述したようなセルを作製した場合には、多孔質体またはフィルム上にスラリーを塗布乾燥させた際に電極層に割れが生じて、転写することができない。フィルム上にスラリーを薄く塗布した場合に限って転写は可能であるものの、触媒層が薄いために触媒量が不足する。しかも、その後フレキシブルMEAとして形状に加工を施した場合には、触媒層に亀裂が生じてしまう。本発明のようにカーボンナノファイバーを担持体として用いた場合には、上述したような割れは生じることはなく、フレキシブルMEAを作製することが可能である。
以上説明したように、本発明においては、触媒担持体カーボンとして特定の範囲の平均繊維径を有するカーボンナノファイバーが用いられるので、粒子状カーボンを担持体に用いたときには実現不可能であった、自立したフレキシブルな電極層を作製することが可能となった。このように自立したカーボンファイバー電極層を燃料電池に適用することによって、電極層の燃料・ガス拡散性の向上を図ることができる。また、集電体が存在しない、または集電体の形状や撥水性などが制限されないことに起因して、燃料供給、ガス供給の面で有利となり高出力が望める。さらに、膜・電極複合体がフレキシブルとなるために、様々な形状の電池を作製することが可能となった。
本発明に係る第2の燃料電池用電極は、小粒径側に存在する第1の粒径分布ピークおよび大粒径側に存在する第2の粒径分布ピークの2つの粒径分布ピークを有する導電性繊維とからなる多孔質触媒担持体と、少なくとも前記第1の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維に担持される触媒と、前記触媒に接触するように前記導電性繊維表面に付着するプロトン伝導性材料とを具備することを特徴とするものである。
前記第2の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維を分散させてなる骨格中に、前記第1の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維の集合体が分散していることが望ましい。
前記第2の粒径分布ピークの粒径値は、前記第1の粒径分布ピークの粒径値に対して5倍以上であることが望ましい。
本発明に係る第2の燃料電池は、一対の電極間にプロトン伝導性膜を挟持した燃料電池において、
前記電極の少なくとも一方は、小粒径側に存在する第1の粒径分布ピークおよび大粒径側に存在する第2の粒径分布ピークの2つの粒径分布ピークを有する導電性繊維とからなる多孔質触媒担持体と、少なくとも前記第1の粒径分布ピークに属する前記導電性繊維に担持される触媒と、前記触媒に接触するように前記導電性繊維表面に付着するプロトン伝導性材料とを具備することを特徴とする。
本発明に係る第3の燃料電池用電極は、触媒を担持した導電性材料と、プロトン伝導性材料とを含有する混合体からなる多孔質体を具備する燃料電池用電極において、前記多孔質体は、多孔質体の緻密度の異なる2層を有することを特徴とする。
まず、本発明に係る燃料電池の一例を図4に示す。
図4においては、アノード電極21、スルホン酸基を有するフッ素系高分子などからなるプロトン伝導性膜22、カソード電極23が順次積層されて燃料電池が構成されている。
また、図4に示すアノード電極21およびカソード電極23は、それぞれ集電体21−1および触媒層21−2、集電体23−1および触媒層23−2から形成されている。
例えば、アノード電極21にメタノールおよび水からなる混合燃料が、カソード電極23に酸化剤ガス(空気や酸素ガス)が供給されると、それぞれの触媒層21−2,23−2において化学式(1)および化学式(2)で示す触媒反応が生じる。
アノード:CH3 OH+H2 O→CO2 +6H+ +6e- (1)
カソード:6H+ +(3/2)O2 +6e- →3H2 O (2)
このように、アノード触媒層21−2で発生したプロトンはプロトン伝導性膜22へ、電子は一方のアノード集電体21−1へ移動し、カソード触媒層23−2ではカソード集電体23−1から供給される電子とプロトン伝導性膜22から供給されるプロトンと酸素とを反応させることで、電極間に電流を流す。
集電体21−1あるいは23−1は、触媒層21−2あるいは23−2の反応に寄与する電子の伝導パスとして機能するものであり、触媒層21−2あるいは23−2の電子に伝導性が高い場合には必ずしも必要ではなく、触媒層21−2あるいは23−2のみによって電極層を構成することもできる。また、集電体21−1あるいは23−1を透過して、燃料あるいは酸素を触媒層21−2あるいは23−2へ供給するため、集電体は燃料あるいは酸素を通過させるに十分な開口をもった多孔質材料で形成される。
図5に、触媒層21−2あるいは23−2の骨格を概念的に示した拡大断面図であり、本発明の実施形態の一例を説明する。
触媒層は、小粒径側に存在する第1の粒径分布ピークおよび大粒径側に存在する第2の粒径分布ピークの2つの粒径分布ピークを有する導電性繊維を有している。以下、第1の粒径分布ピークに属する粒径をもった導電性繊維を担体繊維、第2の粒径分布ピークに属する粒径をもった導電性繊維を骨格繊維と呼んで第1の実施形態を説明する。
触媒層は、例えば短径100nm〜1μm程度、長径1μm〜1000μmの比較的粒径の大きなカーボンファイバーなどの導電性繊維24によってその骨格が形成されている。この導電性繊維24は、その粒径が大きいために、触媒層としての骨格を保持し易く、また触媒層の電子伝導性を高める。
一方、骨格繊維24で形成される骨格の隙間の一部には、例えば短径5nm〜100nm程度の比較的粒径の小さなカーボンファイバーなどの担体繊維25がお互いに絡みあうように塊(集合体)となって存在している。そしてこの担体繊維25の表面には、微細な触媒が緻密に担持される。
すなわち、骨格繊維24から形成された骨格には比較的大きな隙間が形成され、その隙間のうちのいくつかには担体繊維25の集合体が詰まる。そのため、触媒層中には担体繊維の集合体が分散して形成され、骨格繊維で形成され、かつ担体繊維の詰まっていない大きな気孔と、担体繊維25の集合体中に形成される小さな気孔とからなる複合気孔をもつ触媒層が形成される。
その結果、塊のない隙間によって、触媒層中の燃料などの拡散性が保たれると共に、担体繊維によって触媒層中の触媒量を確保することが可能になる。
なお、骨格繊維24および担体繊維25表面には、プロトン伝導性材料が形成され、触媒層にプロトン伝導性を付与するとともに、このプロトン伝導性材料が各繊維同士の接着層として機能して触媒層の形状保持に役立つ。
また、粒径の小さな導電性繊維を担体繊維と呼んだが、これは粒径の大きな導電性繊維よりも触媒を高密度に担持できることを意味しているに過ぎず、骨格繊維に触媒を担持させることを否定するものではなく、骨格繊維にも触媒を担持させ、より触媒量を増加させることが好ましい。
図5に示したような骨格繊維および担体繊維を有する触媒層は、2つ以上の粒径分布をもつ導電性繊維によって形成でき、通常は、粒径の大きな導電性繊維(骨格繊維24)上に粒径の小さな導電性繊維(担体繊維)が選択的に積層することで得られるが、本発明の電極あるいは燃料電池は、この製造方法によって得られたものに限定されるものではない。
本発明に係る導電性繊維は、前述のように2つ以上の粒径分布を持つ導電性繊維である。
例えば、アスペクト比1:10〜1000の繊維で、第1の粒径分布ピークの粒径値に対し、第2の粒径分布ピークの粒径値が5倍〜500倍程度であることが好ましい。
すなわち、第2の粒径分布ピークの粒径値が5倍よりも小さいと、骨格繊維と担体繊維が均一に混合されて担体繊維の集合体が形成されなくなる恐れがある。その結果、触媒層中に形成される気孔が均一化されてしまう。
一方、ピーク粒径の差が500倍よりも大きいと、骨格繊維で形成される骨格中の隙間が大きくなりすぎ、担体繊維が骨格繊維の隙間に保持されなくなる恐れがある。
具体的には、骨格繊維の粒径分布ピークの長径が1μm〜10μm、担体繊維の粒径分布ピークの長径が50nm〜1μm程度の導電性繊維、あるいは骨格繊維の粒径分布ピークの短径が100nm〜1μm、担体繊維の粒径分布ピークの短径が5nm〜100nm程度の導電性繊維を用い、触媒中の骨格繊維によって形成される平均気孔径が100nm〜10μm、担体繊維によって形成される平均気孔径が1nm〜100nm程度の触媒層を形成し、触媒層として、1nm〜10μm程度の気孔径分布を持たせることが好ましい。触媒層中の気孔径が10μmを超えると、担体繊維の含有率が低下し、ひいては触媒層中の単位体積あたりの触媒量が低下する。触媒層中の気孔径が1nmよりも小さくなると、担体繊維の塊の中に燃料などが拡散しにくくなり、触媒の使用効率が低下する。
導電性繊維に使用される材料としては、炭素材料、金属材料や、半導電性あるいは絶縁性材料に導電性材料をコーティングしたものを使用することもできるが、前述したような形状とすることを考慮するとカーボン材料、特に所謂カーボンナノファイバーが最適な材料として挙げられ、以下にその製造方法を説明する。
カーボンナノファイバーは、ニッケル、鉄、コバルトなどの金属や、これらの金属の酸化物、またその混合物や合金などの粉末を生成用触媒とし、この生成用触媒にハイドロカーボンなどの原料を500℃〜1000℃程度の加熱雰囲気下で触媒させることで、原料ガスを分解しファイバー状のカーボンを析出することで得られる。
なお、電界が印加された環境でカーボンナノファイバーを生成すると、カーボンナノファイバーは電界方向に配向して比較的直線的な形状に成長するが、本発明にカーボンナノファイバーを使用する場合は、カーボンナノファイバー同士間に間隙を形成しやすくなるために配向性は持たせないことが好ましく、したがって、電界を印加しない状態でカーボンナノファイバーを成長させることが好ましい。
カーボンナノファイバーの短径は、例えば生成用触媒粉末の粒径によって制御することができ、通常生成用触媒粉末の粒径と得られるカーボンナノファイバーの短径は同程度となる。
したがって、骨格繊維を製造する場合には粒径100nm〜1μm程度の生成用触媒粉末を使用し、担体繊維を製造する場合には粒径5〜100μm程度の生成用触媒粉末を使用することが望ましい。
一方、カーボンナノファイバーの長径は、供給する原料ガス濃度、生成温度、生成時間と生成用触媒の粒径によって異なる。例えば原料ガス濃度15%、生成温度700℃、生成時間1hとした時、生成用触媒の粒径が5nmの場合には長径5nm〜1μmのカーボンナノファイバーが、生成用触媒の粒径が100nmの場合には長径1μm〜10μmのカーボンナノファイバーが生成される。
また、カーボンナノファイバーを生成する時の加熱により、生成用触媒が粒成長して粗大化し、所望サイズのカーボンナノファイバーが得られなくなる恐れがある。このような生成用触媒の粒成長が起きないように、原料粉末に粒成長抑制剤である還元されにくい金属酸化物微粒子、例えば生成用触媒と同程度の粒径のアルミナ粉末を添加することが出来る。
粒径の異なる成長用触媒を、別々の反応装置を用いて製造した後に両カーボンナノファイバーを混合・成膜して触媒層用に使用しても良いし、粒径の異なる成長用触媒の混合粉末を用い、粒径の異なるカーボンナノファイバーの混合粉末(混合繊維)を作製し、この混合粉末を成膜して触媒層用に使用しても良い。これは、通常触媒層を成膜するときに骨格繊維を均一に分布させるために、後述する成膜方法に記載するように、一度導電性繊維(骨格繊維および担体繊維)を液体中に均一に分散させる。その結果、カーボンナノファイバーを生成した状態での混合状態は最終的に触媒層を形成した時の分散状態とは異なるためである。
また、異なる粒径のカーボンナノファイバーの混合粉末を得る方法として、生成用触媒として、複数の1次粒子を造粒して得られた2次粒子を使用する方法もある。
例えば、粒径10nm程度の1次粒子を凝集して得られた粒径100μm程度の2次粒子を生成用触媒として使用した場合、まず、2次粒子径に依存する100μm程度の短径のカーボンナノファイバーが生成した後、2次粒子が分解して1次粒子となり、その後は1次粒子に依存する10nm程度の短径のカーボンナノファイバーが成長する。生成用触媒としてこのような2次粒子が入手できれば、粒径分布を2つ以上もつカーボンナノファイバーの混合粉末を容易に製造できる。
なお、この生成用触媒は、電極としては不要のものであり、電極用触媒と合金化して電極用触媒の特性を低下させる恐れがあるため、カーボンナノファイバーを生成した後、例えば酸性液中にカーボンナノファイバーを浸漬して生成用触媒を溶解除去することが好ましい。また、酸性液で処理した場合、酸性液の成分がカーボンナノファイバー表面に付着し、電極用触媒の担持性が低下する恐れがあるため、必要に応じ、カーボンナノファイバーを水素雰囲気中で加熱し、カーボンナノファイバーに水素を付着させることで、カーボンナノファイバーに付着させる電極用触媒の担持性を向上させることが好ましい。
一方、前述したようにして得られるカーボンナノファイバーは、使用する生成用触媒の種類、原料ガス、あるいは加熱条件などによって、カーボンの結晶面のc面がファイバーの繊維長方向に並行になるものと(所謂カーボンナノチューブ)、繊維長方向にc面を積み重ねた形状のもの(所謂ヘリングボーン構造やプレートレット構造のカーボンナノファイバー)とがあることが報告されている。
一方、c面の側端には、後述する触媒(電極用の触媒)の担持方法によって、微細な触媒を生成することを本発明者らは確認した。すなわち、導電性繊維、特に担体繊維としてヘリングボーン構造のカーボンナノファイバー、あるいはプレートレット構造のカーボンナノファイバーのように、c面を繊維長方向に積み重ね、繊維の側面にc面の側端に露出させ、c面側端の露出率の高いカーボンナノファイバーが好適であることが分かった。具体的には、繊維長方向に対してc面が30°〜90°、好ましくは45°〜90°傾いた構造のカーボンナノファイバーを導電性繊維として使用することで、触媒(電極用の触媒)担持量を向上することができる。
次に、カーボンナノファイバーなどの導電性繊維に、本発明に係る触媒(電極用触媒)を担持させる方法を説明する。
まず、電極用触媒としては、前述の式(1)あるいは式(2)に示す反応を活性化させる材料が使用され、例えば、白金粒子、または白金族元素(例えばRu、Rh、Ir、OsあるいはPd)および第4周期および第5周期遷移金属の中から選ばれた一種類以上の元素と白金との合金粒子などが使用できる。
より具体的には、アノード電極用触媒としてはPt−Ruが、カソード電極用触媒としては、Ptが挙げられるが、特にこれらのものに限定されるものではなく、他にもPt−Ru−Ir、Pt−Ru−Ir−Os、Pt−Ir、Pt−Mo、Pt−Fe、Pt−Co、Pt−Ni、Pt−W、Pt−Snなどが挙げられる。
また、これらの触媒は、その粒径が小さいほど触媒活性が高くなる。そのため、導電性繊維に形成される触媒の粒径は20nm以下とすることが好ましい。
このような電極用触媒を導電性繊維表面に担持させる方法の一例を説明する。
まず、導電性繊維を水中に懸濁させ、40℃〜100℃程度に加熱した後に、電極用触媒の前駆体を添加する。
電極用触媒の前駆体としては、電極用触媒の塩類を使用すればよく、例えば触媒として白金粒子を得る場合には、例えば塩化白金酸(H2 PtCl6 )を用いればよい。
このような前駆体を懸濁液中に溶解することで、懸濁液を酸性溶液とする。
酸性化された懸濁液にアルカリを加え、適宜加熱を続けることで中和し、例えばPt(OH)4 など、電極用触媒を構成する材料の水酸化物を生成し、この水酸化物を導電性粒子表面に担持させる。さらにこの懸濁液を濾過・乾燥してPt(OH)4 などが担持された触媒担体を得る。必要に応じこの触媒粒子に水洗・濾過を繰り返し、中和反応により生成される不純物イオンの除去をさらに施してもよい。
Pt(OH)4 などの水酸化物が担持された導電性繊維を還元雰囲気下に入れ、Pt(OH)4 などの水酸化物を還元して白金などの電極用触媒を生成することで、導電性繊維表面に電極用触媒粒子が担持される。
還元雰囲気としては、水素などの還元ガスを含むガス雰囲気中で、100℃〜900℃、好ましくは200℃〜500℃の温度域とすればよい。還元温度が100℃より低いと白金系金属粒子の結晶化が不充分となり、電極に使用した際、粒子径の増大が起こり易く成る。還元温度が900℃よりも高いと白金軽金属粒子の粒子径の増大が起こり比表面積の低下により重量当たりの触媒活性が低下する。
導電性繊維に対する電極用触媒の担持量は、5wt%から80wt%とすることが望ましい。5wt%よりも少ないと電池性能がでず、80wt%以上だと触媒担体上にうまく担持できなくなる。
次に、導電性繊維表面にプロトン伝導性材料からなる膜を形成すると共に、触媒層を形成する方法を説明する。
まず、プロトン伝導性材料としては、プロトンを伝達できるものであれば何でも良い。具体例を以下に挙げるが、それに限定されるわけではない。例えば、スルホン酸基を持つフッ素系樹脂や、タングステン酸、リンタングステン酸などの無機物などが挙げられる。
プロトン伝導性材料は、導電性繊維100重量部に対して、1重量部〜400重量部であり、特に10重量部から200重量部が良い。1重量部だとプロトン伝導性物質が不足し、抵抗が上昇し電池性能が低下する。また、400重量部以上では電子抵抗が上昇する上に、気孔がプロトン伝導性物質で埋められてしまうために、燃料の拡散も低下し、電池性能が低下する。
前述したような比率で、導電性繊維(骨格繊維および担体繊維)およびプロトン伝導性材料を水、有機溶剤、あるいはその混合液中に投入し、分散機などによって水中に均一に分散・溶解してスラリーを調整する。
例えば、集電体(カーボンペーパーやカーボンクロスなど)などを支持体とし、この支持体表面を撥水処理した後に得られたスラリーを塗布し、この塗布されたスラリーを乾燥させることで触媒を担持した導電性繊維表面に、プロトン伝導性材料で形成された層を付与することができる。
一方、スラリーを乾燥させる時、骨格繊維によって触媒層の骨格が形成され、骨格中の例えば小さな隙間の部分に担体繊維が絡まる。担体繊維が絡まった部分では、さらに隙間が小さくなるため、さらに他の担体繊維が絡まりやすくなる。その結果、骨格繊維で形成される隙間のうち、一度担体繊維が絡まった隙間には選択的に担体繊維密度が高まり、最終的に得られる触媒層中においては担体繊維密度に分布ができる。
なお、スラリー中の固形成分の量が、5wt%〜60wt%となるように、各スラリー成分を調整することが好ましい。固形成分の量が5wt%より少ないと集電体上に成膜ができず、集電体の開口を通過してしまう恐れがある。一方60wt%を超えると、得られる触媒層が集電体から剥がれてしまう恐れがある。
また、導電性繊維を成膜した後に、プロトン伝導性材料を付与する方法もある。
まず、導電性繊維を水あるいは有機溶剤中に均一に分散させた分散液を、例えば集電体(カーボンペーパーやカーボンクロスなど)などの支持体表面に塗布する。分散液は集電体によって濾過され、集電体上には導電性繊維の層が形成される。必要に応じ紙漉きのような手法を用いて層厚を均一化させた後、導電性繊維の層を乾燥する。
得られた導電性繊維は、前述したように骨格繊維で形成される隙間のうち、一度担体繊維が絡まった隙間には選択的に担体繊維密度が高まる。
このようにして導電性繊維を成膜した後に、この膜をプロトン伝導性材料の溶解液もしくは懸濁液中に含浸し、乾燥することで、導電性繊維表面にプロトン伝導性材料の膜が形成される。
また、骨格繊維と担体繊維を混合する場合に、混合してから分散させるのではなく、各種ごとに分散し吸引濾過もしくは紙漉きを行っても良い。
なお導電性繊維表面に担持される電極用触媒の前述した還元処理は、触媒層を形成するための乾燥処理時に行うことで、電極の製造工程を簡略化することも可能である。
このようにして作製される触媒層の厚さは、電池に要求される特性によって異なるが、通常10μm〜500μm厚程度の層を形成すればよい。
次に、本発明の実施形態の別な例について説明する。
例えばメタノールと水とを燃料とした燃料電池においては、アノード電極に液体状の燃料が供給される。一方、アノード電極では、電極内部の触媒を効率的に使用するために、多孔質材料でできたアノード電極が使用される。
アノード電極中の気孔を透過して液体燃料がプロトン伝導性膜に達すると、液体燃料はプロトン伝導性膜を伝わり、カソード電極にまで達してしまう。その結果、燃料とカソード電極に供給される酸素が直接反応してしまい、電池として機能しなくなる恐れがある。
本実施形態は、このような問題を解消するものであり、以下に本実施形態の電極の断面図を示すと共にその説明をする。
図6に示す電極は、集電体31表面に気孔径が大きいあるいは気孔率の高い触媒層32(以下、疎な触媒層と呼ぶ)と、疎な触媒層32に比べ気孔径が小さいあるいは気孔率の低い緻密な触媒層33(以下、密な触媒層と呼ぶ)を順次積層してなる積層触媒層が形成されている。
この電極は、図4に示すアノード電極21として使用され、密な触媒層33がプロトン伝導性膜と隣接するようにして配置される。
多孔質材料で形成された集電体31に供給された液体燃料は、集電体31の開口を通過して疎な触媒層32中の気孔に浸透するが、気孔径が小さく、気孔率の少ない密な触媒層33は通過しにくく、したがって、プロトン伝導性膜に燃料が到達しない恐れがある。
疎な触媒層32は、第1の実施形態で述べた電極用触媒を担持させた骨格繊維を導電性繊維として使用し、骨格を形成する導電性繊維に第1の実施形態と同様にしてプロトン伝導性材料を成膜した構造としても良いし、さらに担体繊維を骨格繊維中に分布をもって分散させ、さらに骨格繊維および担体繊維表面にプロトン伝導性材料を成膜した第1の実施形態と全く同様な構造とすることもできる。
得られた疎な触媒層中としては、気孔率50%〜90%程度、平均気孔径100〜1μm程度で、この範囲内で広く気孔径が分布しているものが好ましい。気孔率が50%より少ない、平均気孔径が100μmよりも小さいと、燃料が疎な触媒層32中に拡散しにくくなり、気孔率が90%より多い、あるいは気孔率が1μmよりも大きいと、疎な触媒層32中の触媒密度が低下してしまう。
密な触媒層33は、例えば第1の実施形態で述べた担体繊維を使用することもできるが、繊維からなる粉末は一般に気孔率が高くなり、気孔径が大きくなる傾向にあるため、通常の扁平の少ない導電性粒子を使用することが好ましい。
具体的には、平均粒径10nm〜100nm程度、アスペクト比1:1〜5の導電性粒子で密な触媒層33を形成することが好ましく、得られた密な触媒層の気孔率は30%以下、平均気孔径10nm〜50nm程度とすることが好ましい。導電性触媒担体は粒径が10nmのものを得ることが困難であり、その粒径が100nmを越えると気孔率が30%を超えたり、気孔径が50nmを超える恐れがあり、その結果密な触媒層33を液体燃料が透過してしまう恐れがある。
導電性粒子の材質としては、導電性を有するものであれば特に限定されずに使用でき、例えばカーボンブラックなど、カーボンナノファイバー以外の炭素材料が使用できる。
密な触媒層33中に存在する気孔は、平均細孔径1μm以下で、気孔率50%以下、さらには両者ともより小さい値であることが望ましい。平均細孔径あるいは気孔率が前述した値よりも大きいと、液体燃料が密な触媒層33の細孔中を通過してしまう恐れがある。
また密な触媒層33における電極用触媒は、疎な触媒層32との界面に存在する触媒以外は燃料の供給性が低く、触媒としての機能を十分に発揮できないため、疎な触媒層32の膜厚に対して、1/5以下の膜厚とすることが好ましい。すなわち、密な触媒層33の膜厚が疎な触媒層32の膜厚の1/5よりも大きいと、触媒の使用効率が低下し、電極体積あたりの電池発電量が低下してしまう。具体的な膜厚値としては、100μm以下とすることが好ましい。
また、密な触媒層の膜厚は、1μm以上とすることが望ましい。膜厚が1μmより小さいと、液体燃料が密な触媒層を通過してしまう恐れがある。
導電性繊維の製造方法、導電性繊維への触媒担持方法、疎な触媒層の形成方法などは、第1の実施形態において触媒層を形成した方法と同様にして行えば良い。
導電性粒子への触媒の担持方法も、第1の実施形態に準じ、第1の実施形態において使用した導電性繊維に代えて、導電性粒子を使用することを除き、第1の実施形態と同様に処理すればよい。
疎な触媒層表面に、直接密な触媒層を形成することは困難であるため、密な触媒層は別途準備された表面平滑な転写基体表面に成膜した後、成膜された密な触媒層を転写基体表面から疎な触媒層表面に転写すればよい。なお、転写基体表面に密な触媒層を形成する方法は、第1の実施形態に準じ、第1の実施形態において使用した導電性繊維に代えて、導電性粒子を使用することを除き、第1の実施形態と同様に処理すればよい。
第1あるいは第2の実施形態に示した電極を用いてた燃料電池の作製方法を説明する。
第1の実施形態に示したカソード電極およびアノード電極、あるいは第2の実施形態に示したアノード電極および任意のカソード電極からなる一対の電極と、カルボン酸基を有するフッ素系高分子材料などのプロトン伝導性材料で形成されたプロトン伝導性膜とを準備する。例えばカルボン酸基を有するフッ素系高分子材料であるナフィオン117(商品名:デュポン社製)をプロトン伝導性膜として使用する場合、その膜厚は50μm〜200μm程度とすればよい。
このプロトン導電性膜を一対の電極で挟持した積層体を、ロールまたはプレスによって熱圧着することで燃料電池(膜電極複合体:MEA)を作製することができる。この際の熱圧着の条件は、温度が70℃以上180℃以下で、圧力は10kg/cm2 〜200kg/cm2 とし、圧着時間は1分〜30分程度とすればよい。圧力、温度あるいは時間がこれらの値より低くい、あるいは短かい場合には、圧着が不十分で電極部としての抵抗が高いために、電池性能が悪くなる恐れがある。一方、前述の値よりも高圧、高温、長時間などの条件の場合、プロトン伝導性膜の変形や分解、また集電体の変形が大きくなり、燃料および酸化剤がうまく各電極内に供給されなくなったり、プロトン伝導性膜の特性が低下する恐れがある。
[実施例]
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
一次粒子の平均粒径が50nmの酸化ニッケル(高純度化学研究所製の商品名がNI004PB、純度99.97%)と酸化銅(関東化学製の商品名がJIS特級粉末)を、還元後のNiとCuの原子比が1対1になるように秤量して、平均粒径が30nmのδ相の酸化アルミニウム(日本アエロジル製)を、NiとCuの体積に対して5vol%になるように混合して、原料粉末を作製した。
次いで、酸化ニッケルと酸化銅と酸化アルミニウムの3種類の粉末からなる混合粉末を、アルミナ製のボールと容器からなる遊星ボールミルを使って、2日間混合・粉砕した。
混合後、粉末を石英製のボート内に入れて、管状炉内に導入した。導入後、管状炉内を毎分1000mlの水素とアルゴンの1対1の混合ガスを流して置換し、200℃まで毎分10℃で昇温して、10分間保持した。その後、徐々にガスの混合比を変えて、最終的に毎分1000mlの水素ガス100%として、毎分5℃の昇温速度で700℃まで昇温した。この昇温過程で酸化ニッケルと酸化銅はすべて還元され、また合金化された。この合金粒子の平均粒径は0.1μmであった。
反応炉内が、700℃に到達したところで、水素ガスに70ml/minのエチレンガスを混合して、水素対エチレン混合ガス雰囲気下で熱CVDによりカーボンナノファイバーを成長させた。
この熱CVD工程が完了した後、炉中で冷却して試料を取り出し、重量変化を測定したところ、Ni−Cuからなる触媒に対して重量比で約10倍のカーボンナノファイバーが生成した。
上記カーボンナノファイバーを電子顕微鏡で観察したところ、ファイバー長手方向に対して、ほぼ45℃でC面が配置している、Herringbone型のカーボンナノファイバーが生成していることが分かった。また、このカーボンナノファイバーは、直径が200〜700nmの範囲で80%以上を占めることが分かった。
また、このカーボンナノファイバーをTCD法で分析したところ、0.7重量%の水素元素を含有することが分かった。また、その灰分の元素分析を行なったところ、酸化アルミニウムが検出された。また、生成したカーボンナノファイバーの比表面積は、310m/gであった。
次いで、カーボンナノファイバーを、塩化白金酸水溶液中に浸析した。塩化白金酸の濃度はカーボンナノファイバーに対して10wt%のPtになるように換算した。その後1時間煮沸した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を約30分間かけて滴下した。滴下後、そのまま2時間還流させた。尚、炭酸水素ナトリウムは塩化白金酸に対して重量で3.2倍の量として、溶液がアルカリ性になるまで滴下した。その後、試料を純水中に移し、さらに煮沸して洗浄した。
洗浄後、カーボンナノファイバーが分散している水溶液を少量採取し、面積10cmの東レ製カーボンペーパーTGP−H−030上に吸引ろ過法を使って、100mgのカーボンナノファイバー層を堆積させた。
次いでカーボンナノファイバーが堆積しているカーボンペーパーを、乾燥機内に移し、100℃で12時間乾燥させた。この試料を雰囲気炉内に導入して、100%の水素を用いて、200ml/minで流通した雰囲気下で、200℃で10時間還元を行った。
上記工程で還元を行なった試料をTEMで観察したところ、カーボンナノファイバーの壁面に平均粒径2〜3nmのPtの微粒子が、平均で5×1016個/m付いていた。
また、同時にTEM−EDXを用いて元素分析を行ったところ、NiとCuとPtが1:1:9で合金化していることが分かった。また、さらに、酸化アルミニウムの粒子がファイバーと混合している部分が観察された。
次いで、上記カーボンナノファイバー層が形成されているカーボンペーパーを、2%のナフィオン溶液中に浸漬して、ナフィオンを含浸した。含浸後は試料を溶液から引き出し、100℃の乾燥機内で乾燥した。この含浸プロセスを3回繰り返して、含浸を行った。含浸後重量を測定したところ、30mgの増量があった。
これにより、パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)が含浸されており、Ptの微粒子が表面に高密度に分散してカーボンナノファイバーと酸化物粒子から構成される電極層を、カーボンペーパーからなる集電板上に形成することができた。
一方、AKZO NOBEL社製のケッチェンブラックECを触媒担体として30wt%Pt−Ru触媒を担持したものと、20%パーフルオロスルホン酸重合体膜(商品名:ナフィオン)溶液と、2−エトキシエタノールとからなるスラリーを、東レ製カーボンペーパーTGP−H−090上に塗布して作製したアノード電極を使ってパーフルオロスルホン酸重合体膜(商品名:ナフィオン117)を挟んで、100℃で、100kg/cmの圧力で、膜電極複合体(MEA)を作製した。
このMEAを使って、燃料電池の評価を行った。評価は試験温度70℃、メタノール燃料濃度2mol/l、燃料供給速度1ml/min、カソード空気量200ml/minで行った。その結果、80mW/cmの出力が得られた。
また、この燃料電池のカソード電極層の一部を切り出し、化学分析により含有成分を分析したところ、カーボンナノファイバーに対してCu−Ni成分が0.2重量%以上、20重量%以下の割合で含まれていた。また、カソード電極層からAl成分を検出することができた。
(比較例1)
AKZO NOBEL社製のケッチェンブラックECを、水中に分散させて超音波をつかって30分間分散性を高めた後、実施例1のカーボンファイバー当りの白金量と等しくなるように、塩化白金酸と、塩化ニッケルと、塩化銅の混合水溶液中に浸析して、煮沸して、1時間煮た後、炭酸水素ナトリウム約3mlの水に溶かしたものを約30分間かけて滴下した。滴下後、そのまま2時間還流させた。その後、試料を純粋中に移し、さらに煮沸して洗浄した。洗浄後は試料を、乾燥機内に移し、100℃で12時間乾燥させた。
次いで試料を雰囲気炉内に導入して、100%水素、200ml/minで流した雰囲気下で、300℃で1時間還元を行った。
還元後TEMにて観察を行ったところ、ケッチェンブラック表面に粒径が3〜5nmの粒子がついていることが分かった。また上記金属粒子の組成を分析により測定したところNiとCuとPtが1:1:9で合金化していることが分かった。
このようにして作製したPt合金が担持されたカーボン粒子を20%のパーフルオロスルホン酸重合体膜(商品名:ナフィオン)溶液と2−エトキシエタノールを加えてスラリー化して、東レ製のカーボンペーパーTGP−H−030上に塗布して乾燥させてカソード電極を作製した。
上記カソード電極と、実施例1で作製したのと同様のアノード電極とを使って、実施例1と同様のプロセスで、パーフルオロスルホン酸重合体膜(商品名:ナフィオン117)を挟んでMEAを作製した。
このMEAを使って、実施例1と同じ燃料電池の評価を行ったところ、70℃で40mW/cmの出力が得られた。
(実施例2)
実施例1と同様のプロセスで、カーボンペーパーの代わりに、10cmの多孔質フッ素樹脂(テフロン(登録商標))シート上に吸引ろ過法を使って、100mgのカーボンナノファイバー層を堆積させた。
堆積後、カーボンナノファイバーが堆積している多孔質フッ素樹脂(テフロン(登録商標))シートごと、100℃の乾燥機内で12時間乾燥させた。乾燥後、乾燥機から取り出したところ、乾燥したカーボンナノファイバー層が、多孔質フッ素樹脂(テフロン(登録商標))シートから膜上に分離していた。
次いで、上記カーボンナノファイバー自立膜を、石英板上に乗せ雰囲気炉内に導入して、100%水素、200ml/minで流した雰囲気下で、200℃で10時間還元を行った。
次いで、上記カーボンナノファイバー自立膜を、2%のパーフルオロスルホン酸重合体(ナフィオン(登録商標))溶液中に浸析して、パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)を含浸した。含浸後は自立膜を溶液から引き出し、100℃の乾燥機内で乾燥した。この含浸プロセスを3回繰り返し、含浸を行った。含浸後重量を測定したところ、20mgの増量があった。
これにより、パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)が含浸されており、Ptの微粒子が表面に高密度に分散してカーボンナノファイバーと酸化物粒子から構成される自立電極膜を形成することができた。
一方、AKZO NOBEL社製のケッチェンブラックECを触媒担体として30wt%Pt−Ru触媒を担持したものと、20%パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)溶液と、2−エトキシエタノールとからなるスラリーを、東レ製カーボンペーパーTGP−H−090上に塗布して作製したアノード電極を使ってパーフルオロスルホン酸重合体膜(商品名:ナフィオン117)を挟んで、100℃で、100kg/cmの圧力で、膜電極複合体(MEA)を作製した。
このMEAを使って、燃料電池の評価を行った。評価は試験温度70℃、メタノール燃料濃度2mol/l、燃料供給速度1ml/min、カソード空気量200ml/minで行った。その結果、85mW/cmの出力が得られた。
(実施例3)
前述した実施例1で説明したのと同様な方法により合成したカーボンナノファイバーを酸性溶液で洗浄した。合成触媒のNi−Cu合金は、酸性溶液中に溶解するため、酸処理によりNi−Cu合金が除去され、表面に酸化アルミニウム粒子が分散しているカーボンナノファイバーを触媒担体として得た。
得られた触媒担体に前述した実施例1で説明したのと同様な方法によってPtの微粒子を担持させ、得られた触媒材料から前述した実施例1で説明したのと同様にして燃料電池を製造した。
(実施例4)
前述した実施例3で説明したのと同様な方法により、表面に酸化アルミニウム粒子が分散しているカーボンナノファイバーを触媒担体として得た。この触媒担体を用いること以外は、前述した実施例2で説明したのと同様にして燃料電池を製造した。
(実施例5)
CNF合成触媒の前駆体として酸化ニッケルと酸化銅を使用する代わりに酸化鉄を用い、前述した実施例1で説明したのと同様な方法によってFe金属粒子と酸化アルミニウム粒子との混合物からなるCNF合成触媒を得た。このCNF合成触媒を用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして燃料電池を製造した。
(実施例6)
実施例5で合成したCNF合成触媒を用いること以外は、前述した実施例2で説明したのと同様にして燃料電池を製造した。
(比較例2)
粒径1μmの酸化ケイ素粉末を大量の純水中に分散したのち、硝酸Cuと硝酸NiをCuとNiが原子比で1対1になるように煮沸しながら溶かして水溶液とした。その後、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)を加えてCuとNiを酸化ケイ素粉末表面に沈降させた。得られた触媒を観察したところ、粒径が数十nmのCuNi粒子が酸化ケイ素粉末表面に付着していることが分かった。
得られた触媒を炭素繊維合成用触媒として用い、水素対エチレン混合ガス雰囲気(700℃)下で熱CVDによりカーボンナノファイバーを成長させた。
この熱CVD工程が完了した後、炉中で冷却して試料を取り出し、重量変化を測定したところ、Ni−Cuからなる触媒に対して重量比で約15倍のカーボンナノファイバーが生成した。
上記カーボンナノファイバーを電子顕微鏡で観察したところ、ファイバー長手方向に対して、ほぼ45℃でC面が配置している、Herringbone型のカーボンナノファイバーが生成していることが分かった。また、このカーボンナノファイバーは、直径が10〜50nmの範囲で90%以上を占めることが分かった。
また、生成したカーボンナノファイバーの比表面積は、50m/gであった。
次いで、得られたカーボンナノファイバーに、前述した実施例1で説明したのと同様にして平均粒径2〜3nmのPtの微粒子を担持させた。
この触媒担持カーボンナノファイバーを用いて前述した実施例1、2で説明したのと同様にしてカソード電極を作製しようと試みたところ、いずれの方法においてもカソード電極を作製することができなかった。
以上の実施例及び比較例について、その結果を表1に示す。
なお、表1において、各用語の定義、あるいは測定法は次の通りである。
カソード気孔率は、単位体積当りに充填されている各材料の重量と密度より算出した。
CNF合成触媒粒子の前駆体、CNF合成触媒粒子、燃料電池用触媒粒子の平均粒径については、透過型電子顕微鏡(TEM)を使い、20〜100万倍の倍率で写真を撮影し、10〜50個の粒子をランダムに選んで粒径を測定し、この操作を5〜10の異なる視野で行ない、算出した。
燃料電池用触媒の担持量は、担持前後のカーボンナノファイバー重量差より算出した。
カーボンファイバーの水素含有量については、TCD、MS等定量性のある質量分析法により求めた。
燃料電池触媒組成は、TEM―EDX、原子吸光法等の定量性のある分析法により求めた。
燃料電池の70℃での出力は、アノード燃料として2Mのメタノールを使用し、供給量を毎分2mol/Lにし、カソードに空気を毎分200ml/minで送った場合の出力である。電極面積が10cm2の単セルで評価した。
Figure 2006228745
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例によれば、本発明に従って作製された燃料電池の70℃での出力の値が、いずれも70mWを上回る値を示しているのに対して、比較例の結果は、いずれも55mWに満たない値しか示さず、本発明の燃料電池の発電効率が優れていることを示している。
これに対し、共沈法により合成された触媒を用いた熱CVDによりカーボンナノファイバーを合成する比較例2によると、実施例2のような自立膜を形成することができないばかりか、実施例1のようなスラリー法によっても電極層を作製することができず、燃料電池としての特性を評価することができなかった。
(実施例8)
一次粒子の平均径が40nmの酸化ニッケルと酸化銅を、還元後のニッケルと銅の原子比が1対1となるように秤量し、平均粒径が30nmの酸化アルミニウムを、ニッケルと銅の体積に対して4vol%となるように混合して原料粉末とした。
上記の原料混合粉末を遊星ボールミルを使用して、アルミナ製のボールと容器内で2日間混合・粉砕し原料粉とした。
混合後、粉末を石英製のボート内に入れて管状炉内に導入した。導入後、まず管状炉内を毎分1Lの水素とアルゴン1:1の混合ガスで置換し、200℃まで昇温して10分間保持した。その後徐々に、毎分1Lの水素ガス100%になるまでガスの混合比を変化させ、500℃まで昇温し、酸化ニッケルと酸化銅を全て還元した。還元後、500℃で30分保持して十分に合金化した後、さらに700℃まで昇温した。得られたCu−Ni合金の平均粒径は、0.1μmであった。
700℃になったら、水素ガスに200ccのエチレンガスを混合し、熱CVDにより10分間カーボンナノファイバーを成長させた。成長させたナノファイバーは炉冷してから取り出し、重量を測定したところ、原料粉末に対して約60倍の重量になっていた。
上記のカーボンナノファイバーを透過型電子顕微鏡で観察したところ、ファイバーの長手方向に対して約45°でC面が配置しているHerringbone構造のカーボンナノファイバーが成長していた。また、走査型電子顕微鏡にて観察したところ、多結晶構造が観察された。さらに、このカーボンナノファイバーは、直径が100〜200nmの範囲で50%以上を占めることが分かった。
ナノファイバーには酸化アルミニウム微粉末が分散して存在していた。
このファイバーの比表面積は400m2/gだった。また、このファイバーのラフネスファクターは40であった。
このファイバーを沸水中に分散し、熱しながら塩化白金酸を加えた。塩化白金酸は、ファイバーに対して白金が15wt%となるように換算して加えた。再沸騰してから30分後、炭酸水素ナトリウム溶液をこれにpH9となるまで1時間かけて滴下した。滴下後2時間還流させ吸引ろ過をし、沈殿物に純水を加え煮沸して洗浄した。
洗浄し濾過された沈殿物を、100℃の乾燥機に入れ10時間乾燥させた。その後雰囲気炉に導入し、3%水素−97%窒素ガスを200ml/minで流した雰囲気下で、200℃10時間還元した。
還元後、試料を電子顕微鏡で観察したところ、カーボンナノファイバーの壁面に、粒径1〜3nmの白金微粒子が担持されていた。
この試料のX線回折分析を行ったところ、白金の結晶は確認されたが、ニッケルや銅は確認されなかった。また、EDXで元素分析を行ったところ、主成分として白金と、ニッケル、銅、カーボンが認められ、またアルミもICP分析によって微量認められた。
白金が担持されたカーボンナノファイバー100mgを純水中に分散させて、導電性多孔質集電体板上に、吸引ろ過法を用いて堆積させた。堆積後乾燥させて、2%ナフィオン溶液に浸漬し、減圧して含浸させた。その後試料をナフィオン中から取り出し、ろ紙上に乗せて1分空気中で乾燥させた後、シャーレ上に乗せ室温で10時間乾燥させた。含浸後、電極重量は25mg増加した。
また、この電極層を切断し、薄片化して透過型電子顕微鏡にて観察した結果、カーボンナノファイバーの縦断面,横断面およびプロトン導電体の存在状態が観察できた。カーボンナノファイバーの縦断面の模式図を図2に示す。図2に示すように、カーボンナノファイバー11と白金触媒12、また、ナフィオン層13は、界面で剥離を起こすことも無く、非常に接合性良く接合していた。更に高倍にて観察すると、白金触媒12はカーボン11の内部まで存在しており、カーボン11中にナフィオンが浸透している様子が観察できた。
ファイバー中に担持触媒よびプロトン導電体が浸入しているかどうか判断するために、横断面を800000倍で20本観察し、内部に担持触媒およびプロトン導電体が浸入しているファイバー本数を測定し、その割合を求めたところ、内部に担持触媒およびプロトン導電体が浸入しているファイバーの全ファイバーに占める比率が10%以上であることを確認した。なお、ここで、ファイバーの内部とは、ファイバー表面からの深さがファイバー半径の20%以上になる領域を意味する。
この電極をカソードとし、アノードには東レ製のカーボンペーパー上に、カーボンブラックを担持体としてPt-Ruが触媒として30wt%担持されている触媒とナフィオンを混合して作製したスラリーから作製した電極を使用して、ナフィオン117を電解質として電極で挟み込み、カソード側の集電体として気孔率95%以上のカーボンクロスを用いて、120℃で100kg/cm2の圧力でプレスし、MEAを作製した。このMEAを用いて、燃料電池の評価を行った。
(比較例3)
カソード電極のカーボンファイバーとして、下記表2に示す平均直径と長さを有するナノホーンを用意した。このナノホーンに実施例8で行った方法で白金触媒を担持させ、同様の方法で触媒層の形成を試みたが、カーボンペーパー上にろ過し、乾燥した際にひび割れ剥離し、触媒層を形成することが出来なかった。比較のため、剥離した試料の触媒層を、実施例8と同様の条件でナフィオンを含浸させ、透過型電子顕微鏡にて観察を行った。カーボンナノファイバーの縦断面図の模式図を図3に示す。図3に示すように、透過型電子顕微鏡での観察では、カーボンファイバー11と触媒粒子12、およびナフィオン13の密着性が悪く、特にナフィオン13が触媒面に接していない部分が目立った。
(比較例4)
カソード電極のカーボンファイバーとして、下記表2に示す平均直径と長さを有するカーボンファイバーを用意した。このカーボンファイバーに実施例8で行った方法で白金触媒を担持させ、同様の方法で触媒層の形成を試みたが、カーボンペーパー上にろ過し、乾燥した際にひび割れ剥離し、触媒層を形成することが出来なかった。比較のため、剥離した試料の触媒層を、実施例8と同様の条件でナフィオンを含浸させ、透過型電子顕微鏡にて観察を行った。透過型電子顕微鏡での観察では、カーボンファイバーと触媒、およびナフィオンの密着性が悪く、特にナフィオンが触媒面に接していない部分が目立った。
(比較例5)
カソード電極のカーボンファイバーとして、下記表2に示す平均直径と長さを有する気相成長炭素(VGCF)を用いること以外は、前述した実施例8で説明したのと同様にして燃料電池を製造した。
この燃料電池の触媒層を透過型電子顕微鏡にて観察を行ったところ、透過型電子顕微鏡での観察では、カーボンファイバーと触媒、およびナフィオンの密着性が悪く、特にナフィオンが触媒面に接していない部分が目立った。
Figure 2006228745
比較例3,4に関しては、電極に出来なかったので、実施例8のアノードと同様の手順でスラリーを作製し、カーボンペーパー上に塗布した。白金担持カーボンファイバーとナフィオンの比は、実施例8のカソードと同量とした。塗布した結果、比較例4に関してはカーボンペーパーから剥離しどちらの方法でも電極に出来なかった。よって、燃料電池特性の評価を行うことができなかった。
比較例3〜5について、実施例8で行ったように、ファイバー内部に担持触媒およびプロトン導電体が存在するかどうか確認を行った。透過型電子顕微鏡にて電極切断面を観察したところ、ファイバーの横断面20本を観察したが,どのファイバーもファイバー表面のみに触媒が担持されており,内部まで触媒が浸入しているようすはなかった。また、ファイバー表面に担持された触媒も凝集が目立ち、凝集していない担持触媒でも粒子径が10nm程度であり、実施例8に記載のファイバー上に担持された触媒と比較すると3〜4倍程度大きかった。更に、触媒担持密度も低く、単位面積あたりの触媒量が、実施例8に記載のファイバーと比較して数分の1程度しか存在していなかった。
比較例3、5のカソード電極と、実施例8と同様のアノード電極と組み合わせて、実施例8と同様にMEAを作製し、燃料電池の試験を行った。
(比較例6)
カソード用カーボンナノファイバーにナフィオンを含浸させる際に用いる、ナフィオン溶液が10%であることを除いては、実施例8と同様に電極を作製した。その結果、電極層をナフィオン溶液に浸漬して減圧すると、カーボンペーパーから電極層が半分剥離した。ナフィオン溶液から引き上げ、カーボンペーパーに再び貼り付けるようにして乾燥させ、実施例8と同様の手順でMEAを作製し、電池性能を測定した。
上記電池性能を測定したカーボンナノファイバーカソードと同様の試料を作製し、スライスして透過型電子顕微鏡にて構造を観察した。その結果、ナフィオンがカーボンナノファイバーおよび担持されている白金粒子と密着していない部分が目立ち、電極層内に気泡が多く見られた。
(比較例7)
実施例8のアノード電極に使用したものと同様の担持体カーボン(粒子状)を用いて、カソード電極を作製した。白金担持量は15%、ナフィオン量は白金担持カーボンに対して25%と同様の比とした。このカソード電極と、実施例8で用いたアノード電極を組み合わせてMEAを作製した。
この電極を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粒子状カーボンから剥離した触媒が目立ち、また、ナフィオンの分布が不均一であり、カーボン表面にナフィオンが存在していない部分が目立った。
実施例8及び比較例3〜7の燃料電池について、触媒利用率と酸化剤利用率を測定し、その結果を下記表3に示す。酸化剤利用率を測定した条件は、メタノール燃料濃度1モル、カソード空気流量60ml/min、触媒利用率を測定した条件は、メタノール燃料濃度1モル、カソード空気流量500ml/minである。
Figure 2006228745
表3から明らかなように、実施例8の燃料電池は、酸化剤利用率と触媒利用率の双方が、比較例3、5〜7に比較して高いことがわかる。
また、実施例8で作製したMEAと、比較例7で用いたMEAを、上記条件にて定電流(100mA/cm2)を流し500時間運転させた。その結果、実施例8のMEAに関しては、電圧の降下は3%程度であったが、比較例7に関しては50%程度の降下が見られた。このことから、カーボンナノファイバー上の触媒は長期安定性に優れていることが分かった。
(実施例8−1)
一次粒子の平均粒径が50nmの酸化ニッケル(高純度化学研究所製の商品名がNI004PB、純度99.97%)と酸化銅(関東化学製の商品名がJIS特級粉末)を、還元後のNiとCuの原子比が1対1になるように秤量して、平均粒径が30nmのδ相の酸化アルミニウム(日本アエロジル製)を、NiとCuの体積に対して10vol%になるように混合して、原料粉末を作製した。
次いで、酸化ニッケルと酸化銅と酸化アルミニウムの3種類の粉末からなる混合粉末を、アルミナ製のボールと容器からなるボールミルを使って、2日間混合・粉砕した。
混合後、粉末を石英製のボート内に入れて、管状炉内に導入した。導入後、管状炉内を毎分1000mlの水素とアルゴンの1対1の混合ガスを流して置換し、200℃まで毎分10℃で昇温して、10分間保持した。その後、徐々にガスの混合比を変えて、最終的に毎分1000mlの水素ガス100%として、毎分5℃の昇温速度で700℃まで昇温した。この昇温過程で酸化ニッケルと酸化銅はすべて還元され、また合金化された。この合金粒子の平均粒径は0.1μmであった。
反応炉内が、700℃に到達したところで、水素ガスに70ml/minのエチレンガスを混合して、水素対エチレン混合ガス雰囲気下で熱CVDによりカーボンナノファイバーを成長させた。
この熱CVD工程が完了した後、炉中で冷却して試料を取り出し、重量変化を測定したところ、Ni−Cuからなる触媒に対して重量比で約10倍のカーボンナノファイバーが生成した。
上記カーボンナノファイバーを電子顕微鏡で観察したところ、ファイバー長手方向に対して、ほぼ45℃でC面が配置している、Herringbone型のカーボンナノファイバーが生成していることが分かった。また、このカーボンナノファイバーは、直径が200〜500nmの範囲で80%以上を占めることが分かった。
また、このカーボンナノファイバーをTCD法で分析したところ、0.7原子%の水素元素を含有することが分かった。また、その灰分の元素分析を行なったところ、酸化アルミニウムが検出された。また、生成したカーボンナノファイバーの比表面積は、350m/gであった。
次いで、カーボンナノファイバーを、塩化白金酸水溶液中に浸析した。塩化白金酸の濃度はカーボンナノファイバーに対して15wt%のPtになるように換算した。その後1時間煮沸した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を約2時間かけて滴下した。滴下後、そのまま2時間還流させた。尚、炭酸水素ナトリウム水溶液を、溶液がpH9になるまで滴下した。その後、試料を純水中に移し、さらに煮沸して洗浄した。
洗浄し、ろ過された沈殿物を、100℃の乾燥機内で10時間乾燥させた。その後、雰囲気炉に導入し、100%水素を200ml/minで流した雰囲気下、200℃で3時間還元し、触媒担持カーボンナノファイバーを得た。
還元後のファイバーを100mg純水中に分散させて、面積10cmの東レ製カーボンペーパーTGP−H−060上に吸引ろ過法を使って、カーボンナノファイバー層を堆積させた。
次いで、上記カーボンナノファイバー層が形成されているカーボンペーパーを、2%のナフィオン溶液中に浸漬して、ナフィオンを含浸した。含浸後は試料を溶液から引き出し、空気中で乾燥した。含浸後重量を測定したところ、30mgの増量があった。
これにより、パーフルオロスルホン酸重合体(商品名:ナフィオン)が含浸されており、Ptの微粒子が表面に高密度に分散してカーボンナノファイバーと酸化物粒子から構成される電極層を、カーボンペーパーからなる集電板上に形成することができた。
一方、AKZO NOBEL社製のケッチェンブラックECを触媒担体として30wt%Pt−Ru触媒を担持したものと、20%パーフルオロスルホン酸重合体膜(商品名:ナフィオン)溶液と、2−エトキシエタノールとからなるスラリーを、東レ製カーボンペーパーTGP−H−030上に塗布して作製したアノード電極を使ってパーフルオロスルホン酸重合体膜(商品名:ナフィオン117)を挟んで、100℃で、100kg/cmの圧力で、膜電極複合体(MEA)を作製した。
このMEAを使って、燃料電池の評価を行った。評価は試験温度70℃、メタノール燃料濃度2mol/l、燃料供給速度1ml/min、カソード空気量200ml/minで行った。その結果、80mW/cmの出力が得られた。
上記工程で還元を行なった試料をTEMで観察したところ、カーボンナノファイバーの壁面に平均粒径1〜3nmのPtの微粒子が、平均で2×1016個/m付いていた。
また、同時にTEM−EDXを用いて元素分析を行ったところ、NiとCuとPtが合金化微粒子としてファイバーに担持されていることが分かり、酸化アルミニウムの粒子がファイバー間に存在している様子が観察された。更に、この試料のX線回折分析を行ったところ、白金の結晶は確認されたが、Ni,Cuのピークは確認されなかった。
この燃料電池のカソード電極層の一部を切り出し、ICP発光分光法(セイコー電子工業社製、SPS1200AR)および赤外線吸収法(LECO社製、CS444LS)による化学分析により含有成分を分析した。カーボンナノファイバー(炭素原子)に対してCu−Ni成分が0.2重量%以上、20重量%以下の割合で含まれていた。また、カソード電極層からAl成分を検出することができた。
また、この電極層を切断し、薄片化して透過型電子顕微鏡にて観察した結果、カーボンナノファイバーの縦断面,横断面およびプロトン導電体の存在状態が観察できた。前述した図2に示すように、カーボンナノファイバー11と白金触媒12、また、ナフィオン層13は、界面で剥離を起こすことも無く、非常に接合性良く接合していた。更に高倍にて観察すると、白金触媒12はカーボン11の内部まで存在しており、カーボン11中にナフィオンが浸透している様子が観察できた。
ファイバー中に担持触媒よびプロトン導電体が浸入しているかどうか判断するために、横断面を800000倍で20本観察し、内部に担持触媒およびプロトン導電体が浸入しているファイバー本数を測定し、その割合を求めたところ、内部に担持触媒およびプロトン導電体が浸入しているファイバーの全ファイバーに占める比率が10%以上であることを確認した。なお、ここで、ファイバーの内部とは、ファイバー表面からの深さがファイバー半径の20%以上になる領域を意味する。
(実施例9)
一次粒子の平均径が40nmの酸化ニッケルと酸化銅とを、還元後のニッケルと銅との原子比が1対1となるように秤量した。さらに、平均粒径が30nmの酸化アルミニウムを、酸化ニッケルと酸化銅との合計体積に対して4vol%となるように混合して、原料粉末を調製した。
得られた原料混合粉末を、遊星ボールミルを用いてアルミナ製のボールと容器内で2日間混合・粉砕し、その後造粒を行い、炭素繊維合成用触媒として平均粒径が90μmのNi−Cu合金粒子を得た。
混合後の粉末は、石英製のボート内に収容して管状炉内に導入した。導入後、まず、毎分1Lの水素とアルゴンとの1:1の混合ガスで管状炉内を置換し、200℃まで昇温して10分間保持した。その後、毎分1Lの水素ガス100%になるまでガスの混合比を徐々に変化させつつ、500℃まで昇温した。これにより、酸化ニッケルおよび酸化銅を全て還元した。還元後、500℃で30分間保持して十分に合金化した後、さらに700℃まで昇温した。
700℃に達したところで、水素ガスに400ml/minのエチレンガスを混合し、熱CVDによりカーボンナノファイバーを成長させた。成長させたナノファイバーは炉冷してから取り出し、重量を測定した。その重量は、原料粉末の重量に対して約20倍となっていた。
得られたカーボンナノファイバーを電子顕微鏡により観察したところ、ファイバーの長手方向に対して約45°でC面が配置しているHerringbone構造のカーボンナノファイバーが成長していた。
その後、ファイバーを水に分散させてメッシュに通し、ファイバー径80nm以下のファイバーをふるい落とした。得られたナノファイバーの平均繊維径μは230nmであり、ファイバー径の分布のばらつきσは110であった。ナノファイバー中には、酸化アルミニウム微粉末が分散して存在していた。
BET法によりこのファイバーの比表面積を測定したところ、240m2/gであった。
このファイバーを沸水中に分散し、熱しながら塩化白金酸を加えた。塩化白金酸は、ファイバーに対して白金が15wt%となるように換算して加えた。再沸騰してから30分後、pH9となるまで炭酸水素ナトリウム溶液を1時間かけて滴下した。滴下後、2時間還流させて吸引ろ過を行ない、沈殿物に純水を加え煮沸して洗浄した。
洗浄し濾過された沈殿物を、100℃の乾燥機内で10時間乾燥させた。その後、雰囲気炉に導入し、3%水素−97%窒素ガスを200ml/minで流した雰囲気下、200℃で10時間還元した。
還元後、試料を電子顕微鏡で観察したところ、カーボンナノファイバーの壁面には、平均粒径1から3nmの白金微粒子が担持されていた。
この試料のX線回折分析を行なったところ、白金の結晶は確認されたが、ニッケルや銅は確認されなかった。また、EDXによる元素分析の結果、主成分としての白金と、ニッケル、銅、カーボンが認められ、またアルミもICP分析によって微量認められた。
白金が担持されたカーボンナノファイバー100mgを純水中に分散させて、アルコール溶解性の有機物を表面に塗布したテフロン(Teflon(登録商標))多孔質板上に、吸引ろ過法を用いて堆積させた。テフロン(登録商標)多孔質板は、カーボンナノファイバー層を堆積させるための支持体である。堆積後のカーボンナノファイバー層(触媒層)は乾燥させ、エタノール溶液中に浸漬させた後、減圧した。触媒層が多孔質体から剥離したところで大気圧に戻し、テフロンフィルムで触媒層をすくって乾燥させた。続いて、1%ナフィオン溶液に真空含浸させた。その後、試料をナフィオン溶液から取り出して、100℃の乾燥機内で乾燥させた。この含浸プロセスを全部で3回繰り返した。含浸後、重量は25mg増加した。
こうして得られた電極をカソード電極として用いて、MEAを作製した。アノード電極は、以下のような手法により作製した。まず、担持体としてのカーボンブラックにPt−Ruが30wt%担持されている触媒とナフィオンとを混合して、スラリーを調製した。このスラリーを、カーボンペーパー(東レ製)上に塗布してアノード電極を得た。こうして得られたアノード電極と前述のカソード電極とで、電解質としてのナフィオン117を挟み込み、カソード電極側の集電体として気孔率95%以上のカーボンクロスを用いて、120℃で100kg/cm2の圧力でプレスして、MEAを作製した。
このMEAを用いて、燃料電池の性能を評価した。
(実施例10)
合成温度を650℃に変更した以外は前述の実施例9と同様の方法により、カーボンナノファイバーを作製し、分級した。得られたファイバーの平均繊維径μは150nmであり、ファイバー径の分布のばらつきσは50であった。
こうして得られたファイバーに、担持触媒としてのPt−Ruを担持させて、触媒担持カーボンナノファイバーを作製した。担持に当たっては、塩化白金酸および塩化ルテニウムを、白金とルテニウムとの比で1:1になるように、また、ファイバーに対して30wt%になるように秤量して添加した。さらに、溶液がpH8となるまで炭酸水素ナトリウムを添加した。
作製されたファイバーは、実施例9と同様の条件で還元し、カーボンペーパー上に堆積させた後、ナフィオンを真空含浸させた。含浸させる際、減圧下におくとカーボンペーパーから触媒層が剥離するので、実施例9の場合と同様に、テフロンシートですくって乾燥機に収容し、乾燥させた。これを実施例9の場合と同様に繰り返し、ナフィオンを同量含浸させた。アノード集電体(実施例9のカソード側集電体と同様)/ファイバーアノード/電解質膜/カソード電極/カソード集電体(カーボンペーパー)となるように積層して、前述の実施例9と同様の条件でMEAを作製した。
ここでのカソード電極は、カーボンブラック上に15wt%の白金を担持し、ナフィオンと混合してスラリーとした後、カーボンペーパー上に塗布して乾燥させることにより作製した。その際のカーボン:白金:ナフィオン(固形分)の混合割合は、実施例9におけるファイバーカソードと同様の比になるように調整した。
このMEAを用いて、燃料電池の性能を評価した。
(実施例11)
実施例9と同様の手法により作製されたカーボンナノファイバーからなる自立したカソード電極と、実施例10と同様の手法により作製されたカーボンナノファイバーからなる自立したアノード電極とを作製した。これらのアノード電極およびカソード電極で電解質膜を挟み込み、カソード側にはフレキシブルなカーボンクロスを重ねてホットプレスして、フレキシブルなMEAを得た。
得られたMEAは、中心に穴を有する円筒状の親水性多孔質プラスチックの側面に、アノード側を内側にして巻きつけた。これを固定し、円筒状のセルとして燃料電池の性能を評価した。なお、多孔質プラスチックの中心に設けられた穴は、燃料を導入するための穴である。
(実施例12)
実施例9と同様の手法により作製されたカーボンナノファイバーからなる自立したカソード電極と、実施例10と同様の手法により製造されたカーボンナノファイバーからなる自立したアノード電極とを作製した。これらのアノード電極およびカソード電極で電解質膜を挟み込み、アノード側にはフレキシブルなカーボンクロスを重ねてホットプレスして、フレキシブルなMEAを得た。
得られたMEAは、中心に穴を有する円筒状の親水性多孔質プラスチックの側面に、カソード側を内側にして巻きつけた。これを固定し、円筒状のセルとして燃料電池の性能を評価した。なお、多孔質プラスチックの中心に設けられた穴は、酸化剤ガスを導入するための穴である。
(実施例13)
市販のカーボンナノファイバー(μ=80nm、σ=500)を分級して、平均繊維径μ=100nm、ばらつきσ=15となるように調整した。その後、実施例9と同様の手法により自立したカソード電極を作製したところ、自立膜を得ることができた。さらに、実施例9と同様の手法によりカーボンブラックアノード電極を作製した。上述したように作製した自立膜カソードには、厚み80μmのカーボンクロスを重ねて集電体とし、実施例9と同様の条件にてMEAを作製した。
(比較例8)
実施例9と同様のアノード電極、実施例10と同様のカソード電極、および電解質膜としてのナフィオン117を用いて、実施例と同様の条件でMEAを作製した。得られたMEAについて、燃料電池の性能を試験した。
(比較例9)
実施例9と同様のアノード電極を用意した。カソード電極としては、市販のカーボンファイバーを担持体として用いて、市販のファイバー(ファイバー径平均50nm、ファイバー長さ平均1μm、σ=100)に、実施例9と同様の方法で白金触媒を担持した。さらに、こうして得られた触媒担持カーボンファイバーを用いて実施例9と同様の方法により触媒層の形成を試みた。しかしながら、カーボンペーパー上にろ過し、乾燥した際にひび割れが生じてしまい、自立した触媒層を形成することができなかった。
(比較例10)
実施例9と同様のカーボンナノファイバーを用いて、自立していない電極を作製した。白金担持カーボンナノファイバーは水に分散させ、カーボンペーパー上にろ過して、電極を形成した。次いで、1%ナフィオン溶液中に浸漬し、100℃の窒素中で乾燥させた。さらに、1%ナフィオン溶液中で真空含浸を2回繰り返してカソード電極層を得た。その後のプロセスは実施例9の場合と同様に行なって、MEAを作製した。
(比較例11)
市販のカーボンナノファイバー(μ=1500nm、σ=200)を用いて、実施例9と同様の手法により電極を作製したところ、自立した膜を作製することができた。ナフィオン溶液は1%のものを用いて、実施例9と同様の手法によりMEAを作製した。
燃料電池の試験は、実施例9、13、および比較例8のMEAについては、メタノール濃度2mol/L、燃料供給速度は5ml/minと一定とし、カソード空気量は50ml/min、300ml/min、および1000ml/minと変化させて、試験温度70℃で行なった。その結果を下記表1に示す。
Figure 2006228745
実施例10および比較例8のMEAについては、メタノール濃度2mol/L、カソード空気量3000ml/minと一定とし、燃料供給速度は1ml/min、5ml/min、10ml/minと変化させて、試験温度70℃で行なった。その結果を下記表5に示す。
Figure 2006228745
また、実施例11のMEAに関しては、室温で、メタノール濃度5mol/L、燃料供給は円筒の中心に一同供給しただけとし、カソード側の空気は、補器を用いることなく自然に大気から取り込むこととした。実施例13のMEAについては、室温で、メタノール濃度2mol/L、カソード側の空気は、円筒の中心にポンプにて500ml/minで送り込んだ。
上記表4に示されるように、カーボンナノファイバーを用いたカソード電極を含むMEA(実施例9および実施例13)では、比較例8で使用した粒子状カーボンを担持体としたカソード電極を有するMEAと比較して、カソード空気流量が少なくても高出力であった。
実施例12の場合には、カーボンペーパーへの空気の導入がされにくいことから、実施例9の自立膜と比較して、少ない流量下における出力が大幅に低下している。
実施例13に関しては、実施例9と比較して空気流量が少ない部分で特に性能の向上が見られた。しかしながら、流量を過剰に増加させてしまうと、電極に存在している水を蒸発させてしまうため、抵抗が上昇して出力が低下した。
表5に示された条件は、カソード側の空気流量を3000ml/minまで増加させているので、カソードの空気供給律速にならない条件である。実施例10のようにアノード電極としてカーボンナノファイバーを用いた場合には、燃料流量を増加させるにしたがって出力は向上したが、比較例8の場合には、流量を増加させても出力にはあまり影響がなかった。これは、比較例8の場合、アノードの供給流量を増加させても、実際には触媒層へ燃料が供給されていない、または触媒層へ燃料が染み込んでいかないために、反応サイトが減少しているからであると考えられる。
また、実施例11のMEAでは、最高出力は20mW/cm2であった。補器を使用しない室温で駆動させる直接メタノール型燃料電池として、かなりの高出力を得られた。
実施例12で示したセルでは、最高出力は40mW/cm2であった。
いずれの場合も、カーボンナノファイバーからなる電極を含むMEAでは、十分な出力が得られることが確認された。
以上詳述したように、実施例9〜13によれば、ガス拡散性が高く、触媒利用効率の高い、高出力が得られる自立した燃料電池用触媒シートが提供される。また本発明によれば、ガス拡散性が高く、触媒利用効率の高い、高出力が得られる燃料電池用自立電極層の製造方法が提供される。
本発明を用いることによって、今まで実現できなかった、集電体に依存しない燃料拡散の優れた触媒利用効率の高い、高出力が得られる燃料電池用電極が得られ、その工業的価値は絶大である。
実施例14
導電性繊維の製造
カーボンナノファイバー生成用触媒原料としての酸化ニッケル粉末(一次粒子の平均粒径が80nm)および酸化銅粉末(一次粒子の平均粒径が80nm)と、生成用触媒の粒成長を抑制するための平均粒径30nmの1次粒子からなる酸化アルミニウム粉末からなる混合粉末を準備した。
なお、酸化ニッケル粉末と酸化銅粉末の比率はニッケル元素と銅元素の比率が1:1となる比率とし、酸化ニッケル粉末および酸化銅粉末の総量に対する酸化アルミニウムの比率を4vol%とした。
この混合粉末を遊星ボールミルを使用して、アルミナ製のボールと容器内で2日間混合・粉砕し、各種の粒子を均一に分散させた。
均一に分散した混合粉末を石英製のボート内に入れて管状炉内に導入し、まず管状炉内を毎分1Lの水素とアルゴン1:1の混合ガスで置換し、炉内温度を200℃まで昇温して10分間保持した。その後徐々に、毎分1Lの水素ガス100%になるまでガスの混合比を変化させ、炉内温度を500℃まで昇温し、酸化ニッケルと酸化銅を全て還元すると共に、さらに500℃で30分保持して十分に合金化して平均粒径が200nmのCu−Ni合金からなる生成用触媒粒子を作製した。
引続き、以下のようにして生成用触媒からカーボンナノファイバー(導電性繊維)を生成した。
生成用触媒粒子を収納した炉内の温度を500℃から700℃まで昇温した後、水素ガスが導入されている炉内に原料ガスとしてのエチレンガスを200ml/minの流量で導入し、Cu−Ni合金粒子を触媒としてカーボンを析出させ、導電性繊維であるカーボンナノファイバーを生成した。
炉冷してからカーボンナノファイバーを取り出し、その重量を測定したところ、原料粉末に対して約10倍の重量になっていた。
得られたカーボンナノファイバーを電子顕微鏡で観察したところ、ファイバーの長手方向に対して約45゜の角度をもったC面を、ファイバー長手方向に積層した、所謂ヘリングボーン構造のカーボンナノファイバーが得られていることを確認した。
また、得られたカーボンナノファイバーは短径500nmに短径分布のピークを持ち、かつ長径50μmに長径分布のピークを持つ形状のものと(短径400nm〜600nm、長径20μm〜70μm)、短径50nmに短径分布のピークを持ち、かつ長径5μmに長径ピークを持つ形状のもの(短径40nm〜60nm、長径1μm〜10μm)との粒径の異なる2種類が作製されていた。
また、カーボンナノファイバー中には酸化アルミニウム微粉末が分散して存在していた。
なお、確認実験として、生成用触媒粒子形成までの処理を全く同様にして行い、得られたCu−Ni合金について調べたところ、平均粒径50nmの1次粒子から造粒された平均粒径500nmの二次粒子からなるCu−Ni合金粒子であることが分かり、このことから、二次粒子径に応じた短径のカーボンナノファイバーと、1次粒子径に応じた短径のカーボンナノファイバーとが生成されていることが分かる。
このようにして、2種類の粒径分布を持つ導電性繊維を得た。
導電性繊維への電極用触媒の担持
導電性触媒である粒径の異なるカーボンナノファイバーを水中に分散し、分散液を得た。
分散液を加熱し沸騰させ、電極用の触媒原料である塩化白金酸を加えた。塩化白金酸は、導電性繊維の総量に対して白金成分が15wt%となるように換算して加えた。
塩化白金酸を加えてから20分後、更に炭酸水素ナトリウム溶液分散液を、pH10となるまで1時間かけて滴下し、塩化白金酸と炭酸水素ナトリウムとを反応させて白金の水酸化物を生成して導電性繊維表面に担持させた。なお、滴下後2時間還流させて十分に反応を進めた。
次にこの分散液を吸引濾過して得られた白金の水酸化物を担持する導電性繊維を純水中に投入し、これを煮沸して導電性繊維を洗浄した後、再度濾過し表面に付着する不純物を除去した。
洗浄し濾過された導電性粒子を、100℃の乾燥機に入れ10時間乾燥させた。乾燥した導電性粒子を雰囲気炉に導入し、雰囲気炉に3%水素−97%窒素ガスを200ml/minで流しながら、200℃、10時間加熱することで、導電性粒子表面に担持される白金の水酸化物を還元して白金化した。
還元後、試料を電子顕微鏡で観察したところ、導電性繊維であるカーボンナノファイバーの壁面に、平均粒径1nm〜3nmの電極用触媒としての白金微粒子が担持されていることが確認できた。
この試料のX線回折分析を行ったところ、白金の結晶は確認されたが、ニッケルや銅は確認されなかった。
カソード電極の作製
白金が担持されたカーボンナノファイバー100mgを純水中に分散させて分散液を調整し、この分散液を集電体としての多孔質カーボンペーパー(東レ社製:製品名GPH090)の上に塗布し、カーボンペーパーによって濾過することで、カーボンペーパー上に導電性繊維を堆積させた後、導電性繊維を乾燥した。
プロトン伝導性材料(スルホン酸基を有するフッ素系樹脂、ナフィオン:デュポン社製)を1%溶解した溶液を準備した。次に、試料(導電性繊維を堆積させたカーボンペーパー)をこの溶液中に真空含浸させた(含浸処理)。溶液から試料を取り出し100℃の乾燥機内で乾燥させた(乾燥処理)。この含浸処理および乾燥処理からなるプロセスを3回繰り返して、導電性繊維表面にプロトン伝導性材料を付着させた。なお、プロトン伝導性材料を付着する前後において30mgの重量増加が確認されたことから、プロトン伝導性材料が30mg付着したものと考えられる。
このようにして、触媒を担持させた2種類の粒径分布ピークを持つ導電性繊維とプロトン導電性材料とからなる触媒層を集電体表面に形成した電極を作製した。
得られた電極中の触媒層の厚さは300μmであった。
また触媒層を電子顕微鏡で確認したところ、粒径の大きな導電性繊維の隙間に、粒径の小さな導電性繊維の塊が分散して存在しており、触媒層中に存在する気孔は、粒径の小さな導電性繊維によって形成される気孔径40〜60nm程度のものと、粒径の大きな導電性繊維によって形成される400〜600nm程度のものとが存在した。
燃料電池の作製
上述したようにして作製された電極をカソード電極として使用した。
導電性繊維に代えて平均粒径100nmのカーボン粒子(平均のアスペクト比1:1)を使用し、電極用の触媒原料である塩化白金酸に代えて塩化白金酸とRuの化合物からなり、白金元素とルテニウム元素の比率が1:1となるような組成の混合物を使用したことを除き、カソード電極と同様にしてアノード電極を作製した。得られたアノード触媒層はPt−Ru合金を担持したカーボン粒子から形成された多孔質体であり、その気孔率は20%、平均気孔径は200nm程度の緻密な層であり、その膜厚は100μmであった。
プロトン伝導性膜(ナフィオン117:デュポン社製)をカソード電極およびアノード電極によって挟持し、120℃で100kg/cm2 の圧力でプレスし、燃料電池を作成した。
得られた燃料電池のアノード電極に、メタノールと水とからなる液体燃料を100ml/minで供給し、カソード電極には酸素を500ml供給した時に発電される電圧と電流との関係を調べた。その結果を図8に示す。
実施例15
疎な触媒層の形成
電極用の触媒原料である塩化白金酸に代えて塩化白金酸と塩化ルテニウムからなり、白金元素とルテニウム元素の比率が1:1となるような組成の混合物を使用したことを除き、実施例14のカソード電極と同様の作製方法でアノード電極を作製した。すなわち、実施例14の導電性繊維表面に担持される触媒が白金粒子に代わってPt−Ru合金粒子である触媒層を集電体表面に形成し、この触媒層を疎な触媒層とした。
密な触媒層の形成
電極用の触媒原料である塩化白金酸に代えて塩化白金酸と塩化ルテニウムからなり、白金元素とルテニウム元素の比率が1:1となるような組成の混合物を使用したこと、また担持体をカーボンナノファイバーではなく平均粒子径が70nmのカーボンブラックを用いたことを除き、実施例14のアノード電極の作製方法と同様にしてカーボンペーパー(転写用の基体)表面に触媒層(密な触媒層)を形成した。得られた触媒層はPt−Ru合金を担持したカーボン粒子から形成された多孔質体であり、その気孔率は20%、平均気孔径は200nm程度の緻密な層であり、その膜厚は50μmであった。
次に、実施例14と同じプロトン伝導性膜表面を準備し、密な触媒層を転写用の基体であるカーボンペーパー上からプロトン伝導性膜上に転写した。プロトン伝導性膜上に、密な触媒層を介して転写用の基体を重ね、この積層体をカーボンペーパーのみを剥がすことで密な触媒層をプロトン伝導性膜上に転写した。
プロトン伝導性膜表面に転写された密な触媒層を電子顕微鏡で観察すると、気孔率は20%、平均気孔径は200nm程度の緻密な層であり、また膜厚は50μmであった。
カソード電極の作製
実施例14と同様にして導電性繊維を作製し、得られた導電性繊維を分級して短径40nm〜60nm、長径1μm〜5μmの導電性繊維(担体繊維)のみからなる粉末を得た。
この担体繊維のみを導電性繊維として用い、この担体繊維の量を、実施例14における導電性繊維の総量と同じにしたことを除き、実施例14と同様にしてカソード電極を作製した。得られたカソード電極の触媒層を観察したところ、ほとんどの気孔径は40nm〜60nm程度であり、気孔径の分布は小さなものであった。
燃料電池の作製
疎な触媒層が形成された集電体、密な触媒層が形成されたプロトン伝導性膜およびカソード電極(集電体および触媒層)を、集電体/疎な触媒層/密な触媒層/プロトン伝導性膜/触媒層/集電体の順に積層されるように積み重ねた後、この積層体を実施例1と同様に熱プレスして燃料電池を作製した。
この燃料電池の特性評価を行った結果を図8に示す。
比較例12
実施例14で使用したアノード電極およびプロトン伝導性膜と、実施例15で使用したカソード電極とを、実施例14と同様にして熱プレスして燃料電池を作製した。
この燃料電池の特性評価を行った結果を図8に示す。
実施例14および比較例12とを比較した時、実施例14のカソード触媒層は、大粒径の導電性繊維が存在する分、触媒担持率は低減しているのにもかかわらず、気孔径に分布がみられるためにガス拡散性が向上した結果、カソード触媒の使用効率が向上し、ひいては電池出力を向上させたからである。
実施例15の燃料電池は、および比較例12の燃料電池は出力が向上している。これは、燃料のクロスオーバーが低減された点では量燃料電池に共通であるが、実施例15の燃料電池では、アノード触媒層中に大きな気孔が存在するために、液体燃料の拡散性が向上した結果、アノード触媒の使用効率が向上し、ひいては電池性能を向上させたからである。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明に係る燃料電池で用いられる膜電極集合体の一例の概略を示す模式図。 実施例8の燃料電池用触媒材料の縦断面を示す模式図。 比較例3〜7の燃料電池用触媒材料の縦断面を示す模式図。 本発明に係る燃料電池の一例を示す模式図。 本発明に係る燃料電池で用いられる触媒層の一例を示す拡大図。 本発明に係る燃料電池用電極の一例を示す断面図。 カーボンナノファイバーの平均繊維径μと、平均繊維径μとの分布のばらつきσとの関係を示す特性図。 実施例で得られた燃料電池の特性評価図。
符号の説明
1…膜電極集合体、2…カソード用集電体、3…カソード電極、4…プロトン電解質、5…アノード電極、6…アノード用集電体、11…カーボンナノファイバー、12…触媒粒子、13…イオン伝導性物質、21…アノード電極、21−1…集電体、21−2…触媒層、22…プロトン伝導性膜、23…カソード電極、23−1…集電体、23−2…触媒層、24…骨格繊維、25…担体繊維、31…集電体、32…疎な触媒層、33…密な触媒層。

Claims (4)

  1. 酸化アルミニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ケイ素からなる一次粒子の平均粒径が500nm以下の難還元性無機材料粒子と、酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも一種類からなるか、酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも一種類と酸化銅からなる一次粒子の平均粒径が500nm以下の還元性無機材料粒子とを粉砕しながら混合する工程と、
    得られた混合物に還元雰囲気の炉内において熱処理を施して前記還元性無機材料粒子を還元することにより、平均粒径が1μm未満の金属粒子と前記難還元性無機材料粒子との混合粉末を炭素繊維合成用触媒として得る工程と、
    前記炭素繊維合成用触媒の存在下で炭化水素を熱分解させることにより炭素繊維を合成する工程と、
    前記炭素繊維にコロイド法により触媒粒子を担持させることにより、表面及び内部に触媒粒子が担持された炭素繊維を得る工程と
    を具備することを特徴とする燃料電池用触媒材料の製造方法。
  2. 平均直径が100〜1000nmの範囲で、かつBET法による比表面積が200〜500m2/gの範囲内の炭素繊維と、
    前記炭素繊維に担持されると共に、Pt及びRuのうちの少なくとも一方からなる第1の金属元素と30重量%以下の第2の金属元素(前記第1の金属元素以外の元素)とを含有する触媒粒子と
    を含むことを特徴とする燃料電池用触媒材料。
  3. 前記第2の金属元素は、Ni、Fe及びCoよりなる群から選択される少なくとも1種類と、Cuとを含むことを特徴とする請求項2記載の燃料電池用触媒材料。
  4. カーボンナノファイバーと、前記カーボンナノファイバーに担持された触媒粒子とを含む燃料電池用触媒材料において、
    表面及び内部に前記触媒粒子が担持されている前記カーボンナノファイバーの存在比率が10%以上であることを特徴とする燃料電池用触媒材料。
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