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JP2006220574A - 回転体力学量測定装置および回転体力学量計測システム - Google Patents

回転体力学量測定装置および回転体力学量計測システム Download PDF

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Abstract

【課題】疲労や腐食に強く、温度変動の影響を受けにくい回転体力学量測定装置および該装置を用いたシステムを提供する。
【解決手段】特定の結晶方位を長手とする不純物拡散層で構成したホイートストンブリッジ回路を含有する半導体単結晶を回転体に接続する。
【効果】半導体単結晶であるため、疲労や腐食に強く、また単結晶の異方性を考慮したブリッジ回路により温度変動の影響を受けにくい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回転体に生じる力学量を検出する計測システムに関する。
従来、回転体に生じる力学量、特にトルクを測定する際には、回転軸に抵抗線式ひずみゲージを貼り付けて、細い金属薄膜細線の抵抗がひずみで変化することを利用して測定していた。しかしながら、薄膜は高サイクル疲労を起こしやすいため、回転軸のひずみやトルク測定のように高サイクルの変形を伴う用途では長期間の信頼性を確保するのが難しかった。すなわち、自動車の駆動軸など、人命にかかわるために非常に高い信頼性が要求される用途に用いることが難しかった。また、温度補正を行うためにホイートストンブリッジ回路回路を構成する場合にも、抵抗線式ひずみゲージを4枚貼らねばならず、剥離や損傷等による信頼性の低下が問題となっていた。また、金属薄膜は腐食しやすいため、腐食環境下あるいは水分のある環境下での長期間の使用には難があった。
また、回転体のトルクの測定は、抵抗線式ひずみゲージの値を有線でスリップリング等により取り出す、あるいは電源やアンプ、送信部等の回路を準備しワイヤレスで取り出す、等の工夫がなされてきた。しかしながら装置が複雑・大型で重くなりやすく、軸に取り付けると遠心力が大きくなり、落下する等の不具合が起こり易かった。また、軸ブレ等が発生しやすいため、バランスを取り直す等の配慮が必要であった。すなわち、手間をかけて試験的な測定を行うことは可能であるが、信頼性が要求される用途に用いることは難しかった。
特開平6-301881号公報
よって本発明は、前記課題の何れかを抑制することができる回転体力学量計測システムおよび力学量測定装置を提供する。
上記の課題を解決するために、回転体に半導体単結晶の不純物拡散層を利用した回転体力学量測定装置を配置する。
本発明によれば、半導体単結晶を用いていることから高サイクルの負荷に対しても疲労することがない。したがって、長期間の使用に対しても十分な信頼性を確保できる。また単結晶であり粒界が存在しないことから、腐食環境下に置いても、腐食せず信頼性の高い測定が可能である。
さらに、半導体単結晶を用いた回転体力学量測定装置は非常に小さく、軽いことから、回転体に取り付けた場合であっても自身の質量に起因した遠心力が小さく、高強度の特殊な接合方法を必要とせず、信頼性を向上させることができる。特に半導体単結晶は半導体製造技術を用いれば非常に小さく高精度に加工することが可能であり、小さくすることが出来るという特徴を持つ。よって本測定装置を取り付けた後に軸のバランスを取り直す等の処理は一切必要なくなる。
なお、本発明の詳細に関しては主にシリコン単結晶を用いた場合について述べるが、ダイヤモンド構造を持った半導体結晶ならば同様に適用可能である。
本発明により、前期課題の何れかの解決に寄与しうる回転体力学量測定装置および回転体力学量計測システムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に本発明の第一実施例における回転体力学量計測システムの構成を示す。回転軸12の表面に回転体力学量測定装置101が設置されており、該回転体力学量測定装置101を用いて、回転軸中心14を中心に回転軸12が回転した際、回転軸12に生じるトルク量を測定することができる。前記回転体力学量測定装置は、シリコン単結晶によって形成された一片が数百ミクロンから数mm角、厚さが十から数百ミクロンとなるチップ形状を有したものを拡散層等の素子形成面の裏面を回転軸12に貼り付け、ひずみを測定するものである。通常、回転軸のトルク量を計測する際には金属箔によって形成されたひずみゲージが用いられる。しかしながら、ひずみゲージ等に用いられる金属箔は疲労寿命が短いことから、高サイクルでの変形を行う回転軸に取り付けた場合には、長期での使用が困難となる。一方、シリコンに代表される半導体は、降伏強度が一般的な金属箔ひずみゲージに比べて著しく大きいことから、同じ変形量を受けた場合であっても塑性変形成分が小さいので、高サイクルに対する疲労寿命が著しく高い。このため、長期間のトルク量計測を安定して行うことができるという利点がある。さらに、半導体を用いたひずみセンサとしては、多結晶シリコンを用いた半導体ゲージがあるが、多結晶シリコンにおいては、内部に多数の結晶粒界を有するため、結晶粒界において優先的に環境腐食が発生し、測定値の精度低下や断線が発生する。回転体力学量測定素子に単結晶半導体を用いた場合は、結晶粒界を全く含まないことから、結晶粒界における環境腐食の影響を排除することができ、長期信頼性に優れるという利点がある。この単結晶半導体としては、他の電気回路との整合性が良い、破壊強度が大きい、安価である、等の利点があるためシリコン単結晶が最も望ましい。
このトルク量測定機能付き回転軸においては、トルク量測定用センサに半導体単結晶のチップを用い、トルク量を測定する素子となる不純物拡散層をシリコン基板2上に形成したことを特徴とする。図2に本発明に用いる回転体力学量測定装置101を示す。回転体力学量測定装置として、単結晶半導体基板ここでは一例として単結晶シリコン基板2を用いる例を示す。回転体力学量測定装置101を構成する単結晶半導体基板2上には少なくともピエゾ抵抗効果を利用したトルクセンサ1が形成されており、該トルクセンサ1が形成された面に対抗する面、すなわち素子形成面でない裏面が接着面3となっており、回転軸12に接続されている。接着面3と回転軸12は接着材を用いて接着されるのが望ましいが、接合や嵌合でも良い。また接着は「裏面全面」で行われるのが望ましいが、そうでなくともチップ端部等一部分が接着していなくても、若干誤差は大きくなるものの同様な効果は得られる。なお、この実施例では素子形成面と対向する面である裏面を接着面としたが、素子形成面側を接着に用いても良い。この場合には回転軸12と素子形成面が近くなることから精度が向上するという利点がある。前記回転体力学量測定装置101は、図1に示すように、シリコン基板2上にトルクセンサ1と前記トルクセンサ1から配線を引き出したパッド4から形成されたものであっても良いし、図3に示すように、シリコン基板2上に電源5、増幅器6、A/D変換器、アナログ回路8、通信制御部9、アンテナ10が形成され、外部との情報のやり取りを無線形式で行うものであっても良い。この場合、電源5は蓄電池であっても良いし、電磁波を用いて自己発電を行うものであっても良い。無線方式で外部との通信を行うことにより、外部との間に配線が必要なく、回転体運動を阻害することなく回転体力学量測定を行うことができる。図3に示した回転体回転体力学量測定装置101において、外部からの電磁波のエネルギを用いて回路を動作させる場合には、別途電源部を設ける必要が無いので非常な軽量化が図れ、回転軸12に取り付けた場合にも回転バランスが崩れることが無いという利点が生じる。また、図3に示した回転体力学量測定装置101において、内部に蓄電池等のエネルギ蓄積部を有する場合には、瞬間の電力量が多く取れることから、通信距離を長く出来るという利点が生じる。アンテナ10はシリコン基板2上に配置されていても良いし、図4に示すようにシリコン基板2の外部に配置されていても良い。アンテナを外部に設置する場合には、アンテナが取り囲む面積を大きくすることができることから、通信距離を長くすることができる。また、図5に示すように、アンテナ10と回転軸12との間に高透磁率シート31を設置することで、回転軸12が金属体の場合であっても外部との通信を行うことができる。この際、シリコン基板2は回転体12との間に高透磁率シート31をはさまず、シリコン基板2と回転体12が直接に取り付けられていることから、高精度なトルク量計測を行うことができる。以上のように、シリコン基板上にトルクセンサが配置されたもの、シリコン基板上にトルクセンサ、電源5、増幅器6、A/D変換器、アナログ回路8、通信制御部9、アンテナ10を配置したもの、シリコン基板上にトルクセンサ1と電源5、増幅器6、A/D変換器、アナログ回路8、通信制御部9を配置し、外部にアンテナ10を設けたもの、いずれも固有の利点があるが、以下、本発明においては回転体力学量測定装置101として取り扱う。
回転軸にトルクが生じる際、図6に示すように、回転軸の両端で回転量に差が発生し、軸にはせん断応力τが生じる。このことから、せん断応力τを検出することで、回転軸に生じるトルク量を計測することができる。
シリコンには応力が作用すると抵抗値が変化するピエゾ抵抗効果と呼ばれる現象がある。シリコンは、抵抗値が著しく大きいことから、通常は図7に示すようにシリコン上に不純物をドーピングした不純物拡散層を形成し、その長手方向に電圧をかけ、応力が発生した際の電流量の変化を計測することで、応力値を計測することができる。さらに、不純物拡散層の抵抗値は温度変動の影響を強く受けることからその補正回路が必要となる。通常、ひずみゲージを用いてひずみ測定を行う場合には図8に示すホイートストンブリッジ回路が温度補償回路として用いられる。その場合にはホイートストンブリッジ回路を、ひずみに対して感度を持つアクティブ抵抗とひずみに対して感度を持たないダミー抵抗によって構成するのが通常であり、アクティブ抵抗はひずみ測定部に設置され、ダミー抵抗はひずみの影響を受けない隔離された場所に設置される。
ところが、ホイートストンブリッジ回路を本発明における回転体力学量測定装置101に用いようとすると、シリコン基板2上にすべての抵抗を配置しなければならず、この場合にはすべての抵抗に対してひずみが加わることからブリッジ回路回路としての機能を正常に果たすことができなくなるという問題が生じる。金属箔ひずみゲージの場合には、抵抗値の変化はひずみによる抵抗の断面積の変化に起因することから、感度は主に抵抗の長手方向のみに発生する。しかしながら、シリコンのピエゾ抵抗効果の場合には、ひずみにより比抵抗が変化し、抵抗の断面積の変化による抵抗変化よりも著しく大きいことから、長手方向以外にも大きな感度を有する。つまり、抵抗形状を利用して、ひずみ感度を打ち消すことができないので、容易ではない。
この問題を解決することが可能となった本発明におけるブリッジ回路回路の構造を図9に示す。図9は、p型の拡散抵抗四本を用いてブリッジ回路回路を形成した際のものである。ホイートストンブリッジ回路としては前述のように、測定する力学量に対して感度を有するアクティブ抵抗と感度を持たないもしくはアクティブ抵抗とは正負反対の出力を生じるダミー抵抗を必要とする。つまり、アクティブ抵抗とダミー抵抗の出力の差分が必要であり、その差分が大きくなればなるほどブリッジ回路回路出力の感度は大きくなる。前述のように、シリコンは、ひずみが加わるとその固有抵抗が変化するいわゆるピエゾ抵抗効果を有している。さらに、シリコン単結晶の場合には、そのピエゾ抵抗効果は結晶方位に依存した直交異方性を有している。つまり、シリコンの結晶方位と、拡散抵抗の配置、ひずみの基準となる座標系の相対関係を変化させることで、ひずみに対する抵抗変化を操作することができる。図9において、ホイートストンブリッジ回路を形成する四本のp型不純物拡散層による抵抗は、対向する一組の抵抗がシリコン単結晶の[-110]方向が長手となるように配置されており、残りの一組の抵抗は、[-110]方向に対して90°回転させた[110]方向が長手となるように配置されている。すなわち、該ホイートストンブリッジ回路を構成する半数の抵抗の各抵抗の両端子102を結ぶ直線が半導体単結晶の<110>方向とほぼ同一となるように形成されるととともに、該半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ直線が該ホイートストンブリッジ回路を構成する残りの半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線に対してほぼ直角が望ましいが、45゜より大きく135°より小さい角度で交わるように配置されればその効果はある。また、図16に示したように、ひずみの基準座標となるxy座標軸、すなわち回転軸に直角平行な方向が、シリコン結晶の[-110]方向に対してほぼ45度回転するように配置する。なお、図16ではチップの辺は<110>に平行となるように描いてあるが、拡散抵抗の方向が<110>ならば、チップの辺の方向は<100>に平行となるようにしてもよい。図15や図16の実施例の場合、[-110]方向に対して平行な拡散抵抗は、せん断ひずみτxyに対して大きな感度を持ち、その他のひずみに対して殆ど感度を持たない。
一方、[110]方向に平行な抵抗もτxyに対してのみ大きな感度を持つが、[-110]方向に配置した抵抗の出力とは正負逆の出力を生じる。つまり、図9に示した配置のホイートストンブリッジ回路を形成することでτxyのみを4倍の感度で計測することのできるセンサを作製することができるという利点がある。また、金属薄膜細線を用いたひずみゲージではτxy以外の応力が存在した場合にその影響が抵抗値変化として表れるが、本回転体力学量測定装置101ではその影響がごく小さいため、高精度なトルク測定が可能となるという利点もある。この利点も本回転体力学量測定装置101がシリコン単結晶で形成されており、この結晶軸方向を考慮して貼り付けたために得られたものである。本ブリッジ回路回路を図9や図11に示したように、シリコン基板上にブリッジ回路回路の中心が四回対称となるようにレイアウトすることで、隣接する抵抗との相対関係を四本の抵抗すべてにおいて等しくすることができる。シリコン上に任意の形状を持った拡散層を形成する際には、エッチングを用いてマスク上にその形状が形成される。四つの抵抗値を等しくするためには、マスク上に形成されるすべての抵抗の形状を等しくする必要があるが、エッチングの際、周囲の環境によってマスク上のエッチングガスの濃度が変化し、形状作製の精度に大きな影響を及ぼす。図9や図11に示した拡散抵抗のレイアウトにすることにより、四本すべての抵抗は周囲の影響をすべて等しくすることができることから、四本の抵抗のマスク形状を同一にエッチングすることができる。このため、不純物拡散層を形成した際に四本の抵抗値を均一にすることができ、ホイートストンブリッジ回路のオフセットを小さくすることを可能とし、精度の高いひずみ量測定を行うことができる。一方、図10に示すように対向する二本の抵抗をも一方の対向する抵抗の間に設置する場合、上述した配置に比べてエッチング精度は劣るものの、例えば、シリコン基板2を可能な限り小さくして極小の回転体力学量測定装置101を作製する場合や、前述のように無線通信回路等の他回路をシリコン基板2上に同載する場合のように、ブリッジ回路の配置面積が限られる場合には、ブリッジ回路の占有する面積を小さくできるという点で望ましい。
また、上記においてはp型拡散層の場合を例に挙げてその配置方法を説明したが、n型拡散層の場合も同様の効果を得ることができる。n型拡散層を用いた回転体力学量測定装置101は感度が大きいという利点がある。ブリッジ回路を構成する抵抗がn型拡散層の場合には、図12に示すように、対向する一組の抵抗はシリコン単結晶の[100]方向が長手となるように配置され、残りの一組の抵抗は、[100]方向に対して90°回転させた[010]方向が長手となるように配置されている。すなわち、該ホイートストンブリッジ回路を構成する半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が半導体単結晶の<100>方向とほぼ同一となるように形成されるととともに、該半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が該ホイートストンブリッジ回路を構成する残りの半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線に対してほぼ直角が望ましいが、45゜より大きく135°より小さい角度で交わるように配置されればその効果はある。また、図17や図18に示したように、ひずみの基準座標となるxy座標軸、すなわち回転軸に直角平行な方向が、結晶の[100]方向に対してほぼ45度回転させた方向と一致するように配置する。なお、図17、図18ではチップの辺は<110>に平行となるように描いてあるが、拡散抵抗の方向が<100>ならば、チップの辺の方向は<100>に平行となるようにしてもよい。この場合には拡散層以外の素子が<100>に平行直角に形成できることから、ひずみの影響を受けにくいという利点がある。図17の実施例の場合、[100]方向に対して平行な抵抗は、せん断ひずみτxyに対して大きな感度を持ち、その他のひずみに対して殆ど感度を持たない。 一方、[010]方向に平行な抵抗もτxyに対してのみ大きな感度を持つが、[010]方向に配置した抵抗の出力とは正負逆の出力を生じる。つまり、図9に示した配置のホイートストンブリッジ回路を形成することでτxyのみを高精度に計測することのできるセンサを作製することができる。また、n型拡散層の場合もp型拡散層の場合と同様に、図12及び図14に示すように四本の抵抗をブリッジ回路回路における四回対称軸を中心になるよう配置することでマスク作製時に抵抗形状のばらつきを排除することができるため、ブリッジ回路のオフセット量を低減させることができる。また、図13のように配置した場合には、ブリッジ回路の占有面積を小さくすることができるという利点が生じる。
なお、以上に説明した抵抗である不純物拡散層配置において、[100]方向が長手となるように配置されていること、とは該抵抗に接続される2個のビア電極を結ぶ方向が[100]方向に近く配置されており、マクロに見た場合に[100]方向が長手となることを意味し、この2個のビア電極をつなぐ経路において、拡散層の形状が抵抗値をかせぐためにジグザグな形状を取ってもよい。この定義はn型不純物、p型不純物どちらにも適用されるものである。
また、以上に説明した回転体力学量測定装置は、拡散層の長手方向の結晶方位のみを考えると、圧力センサに用いている公知例と似るが、その構造および作動原理は全く異なる。圧力センサでは、シリコン基板に孔を形成することによってダイヤフラムを形成し、圧力負荷時の該ダイヤフラムの変形をシリコン基板表面に形成したひずみセンサによって検知する。すなわち、ダイヤフラムの圧力による局所的な変形をホイートストンブリッジ回路を構成する4本の拡散層抵抗のうちの2本で検知し、他の2本の拡散層抵抗はダミーとして、ダイヤフラムの変形の影響を受けにくい場所や方向に配置される。しかしながら本回転体力学量測定装置では、シリコン基板内の4本の拡散層抵抗が受けるひずみ場は原理的に全て同じとなるため、圧力センサの場合のように局所的な変形の違いを利用してダミーの拡散層抵抗を作るのは容易でない。しかしながら発明者らは、回転軸のトルク測定の場合のみ、上記のように工夫することによってせん断ひずみのみをうまく取り出せることに気付き、本発明に至ったものである。本発明の場合には圧力センサの場合と異なり、シリコン基板内に均一なひずみ場が発生するのが好ましい。よって、シリコン基板の素子形成面の対面であり、被測定物に直接あるいは間接的に接触させる面であるシリコン基板裏面には、圧力センサの場合のように該拡散層の短辺より広い幅の孔が存在するとシリコン基板に複雑なひずみ場が発生するので望ましくない。またシリコン基板裏面には若干の凹凸や孔が存在しても被測定物との接着力向上に役立つが、該シリコン基板の厚さの半分以上もの深い孔が存在すると、同様にシリコン基板に複雑なひずみ場が発生するので望ましくない。
本発明における回転体力学量測定装置101は、数ミリ角のシリコン基板2上に、半導体プロセスを用いて数ミクロン単位の微細な薄膜構造物を形成することで作製されているため、該回転体力学量測定装置101において目視で拡散層を識別することは困難である。本センサの特徴は、ひずみを取る方向と結晶の結晶方位、不純物拡散抵抗の配置方向を考慮したものであるから、実使用の現場においては、回転体力学量測定装置101をひずみの取りたい方向に対してどのように配置するかということが重要となってくる。そこで、図21に示すように、回転体力学量測定装置101に目印となる印17をつける。図21においては、p型拡散層を用いたブリッジ回路を有する回転体力学量測定装置において、回転軸における回転中心軸方向に矢印をつけた例を示す。使用者は、矢印を回転軸の回転中心軸と平行に位置するよう回転体力学量測定装置を設置することで回転軸に発生したトルク量を正確に計測することができる。印17は薄膜によるマーキングでもよく、また後からインキや塗料等によるマーキングを施しても良い。形状も矢印のほか、点や線などでも良い。また、図22にはn型不純物拡散層を用いて回転体力学量測定装置を作製した場合の例を示す。図中においては、シリコン基板2の辺方向に平行となるように印17がつけてある。使用者は、本回転体力学量測定装置に取り付けられた印と回転体の回転中心軸が平衡となるよう配置することで、正確なトルク量測定を実施することができる。また、図23、図24のように、チップでなくアンテナを支持しているフィルム等のアンテナ支持部11に方向を示すマーキングが施されていても良い。
図25には本発明の第三の実施例である回転体力学量計測システムの例を示す。図25では回転軸12を断面方向から見た模式図を示すが、無線通信機能を持つ回転体力学量測定装置101が回転軸12の周辺に複数個貼り付けられたものである。回転体力学量測定装置101より発信された電波は受信アンテナ18で受信され、受信部19でひずみ量やトルク値として変換される。回転軸12が金属等の導電体で構成されている場合には、軸の裏手に電波が回りこみにくい。そこで本実施例においては回転軸の周辺に複数個の回転体回転体力学量測定装置101を貼り付け、常に測定を可能としたものである。本実施例においては、電波が受信できないためにひずみ量が測定不可能となる領域が存在することがないという利点がある。
図26には本発明の他の回転体力学量計測システムの例を示す。本実施例は回転軸12を取り囲むように受信アンテナ18が配置されたことを特徴とする。回転体力学量測定装置101からの電磁波は、回転体力学量測定装置101がどの位置に存在しても受信アンテナ18で受信できる。よって本実施例においては、電波が受信できないためにひずみ量が測定不可能となる領域が存在することがないという利点がある。また、図27のように回転体力学量測定装置101のアンテナ10が回転軸12の周囲を囲むように設けられていても良い。この場合には受信アンテナの取り付けが容易になるという利点がある。
図17は本発明の他の回転体力学量計測システムの例であり、回転体が円板である場合の該円板のせん断ひずみを測定する場合を示す。円板の表面に回転体力学量測定装置101を貼り付けることで円板に生じているせん断ひずみを測定することが可能となる。本実施例では、上記の回転軸トルク測定において得られる利点の他に、回転体力学量測定装置101が非常に小さいために円板の面積が小さい場合にも測定が可能となるという利点がある。本実施例は、回転が可能な円板20の回転運動中において、物体21を押し付けることによって運動を阻害する摩擦力が作用する場合に特に有効である。回転体力学量測定装置101は、例えば図11に示したp型拡散層のパターンの場合には、図29や図30に示すように円板の周方向がシリコン結晶の<100>結晶軸とほぼ一致するように配置し、拡散層の長手方向は<110>となるようにする。また、例えば図12にしたn型拡散層のパターンの場合には、図31や図32に示すように円板の周方向がシリコン結晶の<110>結晶軸とほぼ一致するように配置し、拡散層の長手方向は<100>となるようにする。
本発明は、回転体のトルクを計測する装置に利用できる。
本発明の実施例の測定システムを示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置を示す模式図である。 本発明の実施例の測定システムを示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置を示す模式図である。 本発明の実施例の測定システムを示す模式図である。 トルク測定の原理の説明に用いた模式図である。 不純物拡散層の説明に用いた模式図である。 ホイートストンブリッジ回路の説明に用いた模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置と結晶軸方向と座標軸の関係を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置と結晶軸方向と座標軸の関係を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置と結晶軸方向と座標軸の関係を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置と結晶軸方向と座標軸の関係を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置と結晶軸方向と座標軸の関係を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置と結晶軸方向と座標軸の関係を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。 本発明における単結晶シリコンの外形と感度の関係を説明するのに用いた模式図である。 本発明における単結晶シリコンの外形と感度の関係を説明するのに用いた模式図である。 本発明における単結晶シリコン上に形成される印の例を示した図である。 本発明における単結晶シリコン上に形成される印の例を示した図である。 本発明における回転体力学量測定装置に形成される印の例を示した図である。 本発明における回転体力学量測定装置に形成される印の例を示した図である。 本発明の実施例の測定システムを示す模式図である。 本発明の実施例の測定システムを示す模式図である。 本発明の実施例の測定システムを示す模式図である。 本発明の実施例の測定システムを示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。 本発明の実施例における回転体力学量測定装置の拡散層配置に応じた貼り付け方法を示す模式図である。
符号の説明
1.トルクセンサ
2.シリコン単結晶基板
3.接着面
4.パッド
5.電源
6.増幅器
7.A/D変換器
8.アナログ回路
9.通信制御部
10.アンテナ
11.アンテナ支持部
12.回転軸
14.回転軸中心
15.不純物拡散抵抗
16.ホイートストンブリッジ回路
17.印
18.受信アンテナ
19.受信部
20.円板
21.物体
31.高透磁率シート
101.回転体力学量測定装置

Claims (25)

  1. 単結晶半導体基板の一主面である素子形成面に、p型不純物拡散層の抵抗から構成されるホイートストンブリッジ回路を有し、該ホイートストンブリッジ回路を構成する半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が半導体単結晶の<110>方向とほぼ同一となるように形成されるととともに、該半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が該ホイートストンブリッジ回路を構成する残りの半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線に対して45゜より大きく135°より小さい角度で交わるように配置され、該単結晶半導体基板の裏面に該ホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗の該p型不純物拡散層の短辺より広い幅の孔が存在しないことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  2. 単結晶半導体基板の一主面に、n型不純物拡散層の抵抗から構成されるホイートストンブリッジ回路を有し、該ホイートストンブリッジ回路を構成する半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が半導体単結晶の<100>方向とほぼ同一となるように形成されるととともに、該半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が該ホイートストンブリッジ回路を構成する残りの半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線に対して45゜より大きく135°より小さい角度で交わるように配置され、該単結晶半導体基板の素子形成面と対向する裏面に該ホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗の該n型不純物拡散層の短辺より広い幅の孔が存在しないことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  3. 単結晶半導体基板の一主面である素子形成面に、p型不純物拡散層の抵抗から構成されるホイートストンブリッジ回路を有し、該ホイートストンブリッジ回路を構成する半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が半導体単結晶の<110>方向とほぼ同一となるように形成されるととともに、該半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が該ホイートストンブリッジ回路を構成する残りの半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線に対して45゜より大きく135°より小さい角度で交わるように配置され、該単結晶半導体基板の素子形成面と対向する裏面に該単結晶基板の厚さの半分以上深い孔が存在しないことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  4. 単結晶半導体基板の一主面に、n型不純物拡散層の抵抗から構成されるホイートストンブリッジ回路を有し、該ホイートストンブリッジ回路を構成する半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が半導体単結晶の<100>方向とほぼ同一となるように形成されるととともに、該半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線が該ホイートストンブリッジ回路を構成する残りの半数の抵抗の各抵抗の両端子を結ぶ線に対して45゜より大きく135°より小さい角度で交わるように配置され、該単結晶半導体基板の素子形成面と対向する裏面に該単結晶基板の厚さの半分以上深い孔が存在しないことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  5. 請求項1において、
    該ホイートストンブリッジ回路からの信号を増幅してデジタル信号に変換する増幅変換回路と、変換された該デジタル信号を該半導体基板の外部に電送するための伝送回路と、該半導体基板の外部から受けた電磁波エネルギを電源として供給する電源回路と、をさらに設けたことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  6. 請求項2において、
    該ホイートストンブリッジ回路からの信号を増幅してデジタル信号に変換する増幅変換回路と、変換された該デジタル信号を該半導体基板の外部に電送するための伝送回路と、該半導体基板の外部から受けた電磁波エネルギを電源として供給する電源回路と、をさらに設けたことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  7. 請求項1において、
    該ホイートストンブリッジ回路からの信号を増幅してデジタル信号に変換する変換回路と、該デジタル信号を前記半導体基板の外部に電送するための伝送回路と、前記半導体基板の外部から受けた太陽光、温度差、誘導起電力、電池の少なくともいずれかに基づいて前記各回路に電源を供給する電源回路と、をさらに備えたことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  8. 請求項2において、
    該ホイートストンブリッジ回路からの信号を増幅してデジタル信号に変換する変換回路と、該デジタル信号を前記半導体基板の外部に電送するための伝送回路と、前記半導体基板の外部から受けた太陽光、温度差、誘導起電力、電池の少なくともいずれかに基づいて前記各回路に電源を供給する電源回路と、をさらに備えたことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  9. 請求項1から請求項8のいずれかの回転体力学量測定装置において、該不純物拡散層の形状が四回対称に近い状態で配置されることを特徴とする回転体力学量測定装置。
  10. 請求項1から請求項8のいずれかの回転体力学量測定装置において、該不純物拡散層の形状が鏡面対称に近い状態で配置されることを特徴とする回転体力学量測定装置。
  11. 請求項1から請求項10のいずれかの回転体力学量測定装置において、半導体基板の素子形成面に回転軸の軸方向もしくは周方向を示す目視可能なマークを設けたことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  12. 請求項1から請求項10のいずれかの回転体力学量測定装置において、該単結晶半導体基板の主面の裏面に被測定物との接着部を形成したことを特徴とする回転体力学量測定装置。
  13. 回転体力学量測定装置の力学量測定部を表面に接続した回転体において、該力学量測定部は表面に不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該半導体単結晶の不純物拡散層形成面の裏面を回転体に接続することを特徴とする回転体。
  14. 請求項13において、該力学量測定部は表面にp型不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該p型不純物拡散層を形成した該半導体単結晶の<100>方向が回転軸とほぼ平行となることを特徴とする回転体。
  15. 請求項13において、該力学量測定部は表面にn型不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該n型不純物拡散層を形成した該半導体単結晶の<110>方向が回転軸とほぼ平行となることを特徴とする回転体。
  16. 請求項1、請求項3、請求項5、請求項7、請求項13、請求項14のいずれかの回転体力学量測定装置の付着した回転体において、該回転体の回転軸方向が、該半導体結晶の<100>方向とほぼ平行となることを特徴とする回転体。
  17. 請求項2、請求項4、請求項6、請求項8、請求項13、請求項15のいずれかの回転体力学量測定装置の付着した回転体において、該回転体の回転軸方向が、該半導体結晶の<110>方向とほぼ平行となることを特徴とする回転体。
  18. 回転体力学量測定装置の力学量測定部が回転体に接続され、該力学量測定部で測定されて電磁波情報に変換された力学量データを、アンテナと受信部によって受信し、回転体の力学量を検知する回転体力学量計測システムにおいて、該力学量測定部が表面に不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該半導体単結晶の不純物拡散層形成面の裏面を回転体に接続することを特徴とする回転体力学量計測システム。
  19. 請求項18において、該力学量測定部は表面にp型不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該p型不純物拡散層を形成した半導体単結晶の<100>結晶軸と上記回転体の回転軸とがほぼ平行となるように設置されたことを特徴とする回転体力学量計測システム。
  20. 請求項18において、該力学量測定部は表面にp型不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該p型不純物拡散層を形成した半導体単結晶の<110>結晶軸と上記回転体の回転軸とがほぼ平行となるように設置されたことを特徴とする回転体力学量計測システム。
  21. 請求項18から20のいずれかの回転体力学量計測システムにおいて、1つの回転軸に複数の回転体力学量測定装置が設置してあることを特徴とする回転体力学量計測システム。
  22. 請求項18から20のいずれかの回転体力学量計測システムにおいて、回転軸の外周の半分以上にアンテナが巻き付けてあることを特徴とする回転体力学量計測システム。
  23. 請求項18から20のいずれかの回転体力学量計測システムにおいて、回転軸の外周の半分以上を覆うように受信アンテナが配置されていることを特徴とする回転体力学量計測システム。
  24. 請求項18において、上記回転体は円板であり、該力学量測定部は表面にp型不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該p型不純物拡散層を形成した半導体単結晶の<100>結晶軸が上記円板の周方向とほぼ一致することを特徴とする回転体力学量計測システム。
  25. 請求項18において、上記回転体は円板であり、該力学量測定部は表面にn型不純物拡散層を形成した半導体単結晶を含み、該n型不純物拡散層を形成した半導体単結晶の<110>結晶軸が上記円板の周方向とほぼ一致することを特徴とする回転体力学量計測システム。
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