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JP2006035771A - 導電層転写シート - Google Patents

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JP2006035771A JP2004222448A JP2004222448A JP2006035771A JP 2006035771 A JP2006035771 A JP 2006035771A JP 2004222448 A JP2004222448 A JP 2004222448A JP 2004222448 A JP2004222448 A JP 2004222448A JP 2006035771 A JP2006035771 A JP 2006035771A
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秀己 伊藤
Masahito Sakai
将人 坂井
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Abstract

【課題】透明性を有する導電層を成形体に転写することができる導電層転写シートを提供する。
【解決手段】剥離性基材1に極細導電繊維を含んだ導電層2と接着層3とがこの順で形成されていて、導電層2に極細導電繊維2aを含有させることで、透明性を有し表面抵抗率の良好な導電層転写シートとする。極細導電繊維2aが凝集することなく分散して互いに接触しているか、或は、1本ずつ分離した状態で若しくは複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触した導電層2は、極細導電繊維が解けて相互の導通性を良好に維持するので、少ない量で必要な導電性を得ることができるし、導電層2を薄くすることもできる。
【選択図】図1

Description

本発明は、極細導電繊維を含んだ導電層を有する導電層転写シートに関する。
従来より、クリーンルームのパーティション、半導体・液晶製造に用いるキャリアーボックス、製造装置の外板、製造装置の覗き窓のように塵埃を嫌う用途には、静電気を逃がして塵埃の付着を防止する制電性樹脂板が使用されていて、本出願人も透明な熱可塑性樹脂基板の表面に、曲がりくねって絡み合う極細の長炭素繊維を含んだ透明な熱可塑性樹脂の制電層を形成してなる制電性透明樹脂板を提案した(特許文献1)。
一方、導電層を熱転写する方法も知られており、ニッケルやカーボンブラックなどの導電性粉末を含有する熱溶融性インキ層とマット層とをベースフィルムに設けた感熱転写フィルム(特許文献2)や、加熱により接着性が低減する粘着層と導電層を含む転写膜とを有する導電層転写シート(特許文献3)などがある。
特許第3398587号公報 特許第2598895号公報 特許第3015788号公報
しかしながら、上記特許文献1の制電性透明樹脂板は、長炭素繊維を含む塗料を透明樹脂板の表面に直接塗布しており、生産性が悪く、また長尺樹脂板も得難かった。また、長炭素繊維は毛玉状に集合した状態で分散されており、必要な表面抵抗率を得るためにはかなり多量に含有させる必要があった。
また、特許文献2の感熱転写シートは、その導電層は導電性粉末を含有させたものであるから、これら導電性粉末同士の接触が悪く、多くの導電性粉末を含有させることが必要であるし、透明性も得難いものであった。
更に、特許文献3の導電層転写シートにおいても、導電層はニッケルや金などの金属を真空蒸着法或は無電解メッキ法にて形成してなるものであり、生産性が悪い上に、連続性もなく、さらに屈曲性にも劣っていた。
本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、導電層に極細導電繊維を含ませることで、透明性を有する導電層を成形体に転写することができる導電層転写シートを提供することを解決課題としている。
上記目的を達成するため、本発明の導電層転写シートは、剥離性基材に極細導電繊維を含んだ導電層と接着層とがこの順で形成されていることを特徴とするものである。
本発明において、導電層に含まれる極細導電繊維は凝集することなく分散して互いに接触しているか、或は1本ずつ分離した状態で若しくは複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触していることが好ましく、この極細導電繊維としてはカーボンナノチューブであることが望ましい。また、導電層はその550nm波長の光線透過率が50%以上の透明性を有していることが好ましい。そして、接着層がアクリル系接着樹脂又はポリウレタン系接着樹脂で形成されていることも好ましい。
なお、本発明で「凝集することなく」とは、導電層を光学顕微鏡で観察し、平均径が0.5μm以上の凝集塊がないことを意味する用語である。また、「接触」とは、極細導電繊維が現実に接触している場合と、極細導電繊維が導通可能な微小間隔をあけて近接している場合の双方を意味する用語である。さらに、「導電性」とはJIS K 7194(ASTM D 991)(抵抗が10Ω以下)あるいはJIS K 6911(ASTM D 257)(抵抗が10Ω以上)で測定し、表面抵抗率が10〜1011Ω/□の範囲であることを意味する。
本発明の導電層転写シートは、導電層に極細導電繊維を含んでいるので、当該極細導電繊維が相互に接触して導通し、繊維の量を少なくしても導通性を確保して、表面抵抗率を10〜1011Ω/□の範囲で容易にコントロールでき、また高い透明性の導電層とすることもできる。そのため、極細導電繊維量を少なくしても必要な導電性を確保でき、極細導電繊維量が減少した分だけ透明性を向上させることができるし、導電層の厚みを薄くすることもできる。特に、極細導電繊維がカーボンナノチューブであると、該カーボンナノチューブが細くて長いので、これら相互の接触がさらに良好に確保でき、優れた導電性と透明性とを兼備した導電層転写シートとすることができる。そして、本発明の導電層転写シートを用いれば、成形体に転写するだけ導電性成形体或は制電性成形体とすることができる。
そして、導電層の550nm波長の光線透過率が50%以上であると、透明性に優ぐれた導電層転写シートとすることができ、透明成形体に転写することで透明導電性成形体或は透明制電性成形体とすることが容易にできて、透明性が特に要求される表示装置の前面体などにも使用可能となる。
また、導電層に含まれる極細導電繊維が凝集することなく分散して互いに接触していると、該繊維が凝集していない分だけ、極細導電繊維が解けて相互の十分な導通を確保できるので良好な導電性有する導電層転写シートを得ることができる。また、導電層の極細導電繊維が1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触していると、分散した1本若しくは1束の極細導電繊維相互の接触機会が多くなり、十分な導通を確保でき、良好な導電性の導電層転写シートを得ることができる。
さらに、接着層がアクリル系接着樹脂又はポリウレタン系接着樹脂で形成されていると、当該接着層の透明性も良好であるので、これを転写された成形体の透明性も良くすることができる。
以下、図面を参照して本発明の代表的な実施形態を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は本発明の導電層転写シートの一実施形態を示す断面図、図2(A)は導電層内部における極細導電繊維の分散状態を示す概略断面図、図2(B)は導電層表面における極細導電繊維の他の分散状態を示す概略断面図、図3は導電層を平面から見た極細導電繊維の分散状態を示す概略平面図である。
この導電層転写シートは、薄い基材1の片面(上面)に極細導電繊維を含んだ透明な導電層2を積層し、さらに当該導電層2の上面に接着層3を積層形成したものである。
基材1としては、転写の際の剥離性と強度とが要求されるので、この剥離性と強度とを有するフィルムであれば限定されるものではないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、アクリルなどの樹脂類、または金属箔などが適宜用いられる。この中で、特に2軸延伸したポリエチレンテレフタレートが最も好ましく使用される。
そして、剥離性を向上させるために、基材1の表面にフッ素系、シリコン系、アルキド系などの剥離剤で表面処理などを行うことができる。この基材1の厚さは30〜500μmとしてあり、紙管等に巻回できるようにしている。
この基材1の片面に形成された導電層2には、極細導電繊維2aが分散して含有されている透明層である。この極細導電繊維2aは凝集することなく分散して互いに接触しているか、或は、極細導電繊維2aが絡み合うことなく1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で、分散して互いに接触しているか、或は、これらの分散状態が混在した状態で接触している。導電層2が主に極細導電繊維2aと透明な樹脂バインダー2bとで形成されていると、図2の(A)に示すように、該極細導電繊維2aは樹脂バインダー2bの内部に上記の分散状態で分散し互いに接触しているか、或は図2の(B)に示すように、極細導電繊維2aの一部が樹脂バインダー2bの内部に入り込み、他の部分が樹脂バインダー2bの表面から突出乃至露出して接着層3の内部にまで入り込んで上記分散状態で分散し互いに接触しているか、或は極細導電繊維2aの一部は図2の(A)のように樹脂バインダー2bの内部に、他の極細導電繊維2aは図2の(B)のように一部が表面から突出乃至露出して接着層3内部に入り込んだ状態で分散し互いに接触していることとなる。
これらの極細導電繊維2aの平面から見た分散状態を図3に概略的に示す。この図3から理解されるように、極細導電繊維2aは多少曲がっているが1本ずつ或は1束ずつ分離し、互いに複雑に絡み合うことなく即ち凝集することなく、単純に交差した状態で導電層2の内部に或は表面に分散され、それぞれの交点で接触している。このように分散していると、凝集している場合に比べて、繊維が解れて広範囲に存在しているので、これら繊維同士の接触する機会が著しく増加し、その結果導通して導電性を著しく高めることができる。
極細導電繊維2aが解れずに分散されているとお互いの接触機会が少なくなり、10〜1011Ω/□の導電性を得るためには多量に含有させる必要があり、その結果導電層2の透明性が悪くなる。しかし、極細導電繊維2aを上記分散状態にすることで極細導電繊維2aの量を減少させても同じ接触機会を得ることができ、その分、極細導電繊維2a量を少なくすることができるのである。その結果、透明性を阻害する極細導電繊維2aの量が少なくなった分だけ透明性が向上するし、また、導電層2を薄くすることもでき、一層透明性を向上させることができる。
なお、極細導電繊維2aは完全に1本ずつ或は1束ずつ分離し分散している必要はなく、一部に絡み合った小さな凝集塊があっても良い。このような1本ずつ或は1束ずつ分離し分散しているか否かは、導電層2を光学顕微鏡で観察し、凝集している塊があれば、その長径と短径とを測定し、その平均値が0.5μm以下である場合を分散しているという。
一方、凝集して分散した場合と同じ量の極細導電繊維2aを導電層2に含ませると、上記分散状態にすることで、多くの繊維相互の接触機会を得ることができるので、導電性を著しく向上させることができ、10Ω/□以下とすることができる。
さらに、極細導電繊維2aを導電層2に含ませて該導電層2の厚みを5〜500nmと薄くしても、導電性を高めることが可能となる。従って、導電層2の厚みを上記の範囲で薄くすることが好ましく、更に好ましくは5〜200nmにすることが望ましい。
導電層2に使用される極細導電繊維2aとしては、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、ナノワイヤなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、ナノワイヤなどの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで長さが0.1〜20μm、好ましくは長さが0.1〜10μmである導電性極細繊維が好ましく用いられる。これらの極細導電繊維2aは、これが凝集することなく1本ずつ或は1束ずつ分散することにより、該導電層2の表面抵抗率が10〜10Ω/□である時には導電層2の光線透過率が50%以上であるものが得られるし、表面抵抗率が10〜10Ω/□である時には光線透過率が75%以上のものが得られるし、表面抵抗率が10〜10Ω/□である時には光線透過率が85%以上のものが得られるし、表面抵抗率が10〜1011Ω/□である時には光線透過率が93%以上のものが得られる。なお、上記光線透過率は分光光度計による550nmの波長の光の透過率を示す。
これらの極細導電繊維2aの中で、カーボンナノチューブは直径が0.3〜80nmと極めて細いので、1本ずつ或は1束ずつ分散することで該カーボンナノチューブが光透過を阻害することが少なくなり、光線透過率が50%以上の透明な導電層2を得るうえで特に好ましいのである。これらの極細導電繊維2aは、導電層2の内部に或は表面に、凝集することなく、1本ずつ或は1束ずつ分散し、互いに接触して導通性を確保している。そのため、該極細導電繊維2aを導電層2に1.0〜450mg/mの目付け量に相当する量を含ませることで、その表面抵抗率を10〜1011Ω/□の範囲内で自由にコントロールすることができる。
該目付け量は、導電層2を電子顕微鏡で観察し、その平面面積に占める極細導電繊維の面積割合を測定し、これに電子顕微鏡で観察した厚みと極細導電繊維の比重(極細導電繊維がカーボンナノチューブである場合は、グラフィトの文献値2.1〜2.3の平均値2.2を採用)を掛けることで計算した値である。
上記カーボンナノチューブには、中心軸線の周りに直径が異なる複数の円筒状に閉じたカーボン壁を同心的に備えた多層カーボンナノチューブや、中心軸線の周りに単独の円筒状に閉じたカーボン壁を備えた単層カーボンナノチューブがある。
前者の多層カーボンナノチューブは、上記のように直径が異なる複数の円筒状に閉じたカーボン壁からなるチューブが中心軸線の周りに多層になって構成されており、カーボン壁は、カーボンの六角網目構造にて形成されている。その他、上記カーボン壁が渦巻き状に多層に形成されているものもある。好ましい多層カーボンナノチューブは、このカーボン壁が2〜30層重なったものであり、そのような多層カーボンナノチューブを上記の如き分散状態で分散させると、光線透過率を良好にすることができる。より好ましくはカーボン壁が2〜15層重なったものが用いられる。該多層カーボンナノチューブは1本ずつ分離した状態で分散しているものが殆どであるが、2〜3層カーボンナノチューブは、束になって分散している場合もある。
一方、後者の単層カーボンナノチューブは、上記のように中心軸線の周りに円筒状に閉じた単独のカーボン壁から構成されており、カーボン壁はカーボンの六角網目構造にて形成されている。このような単層カーボンナノチューブは1本ずつ分離した状態では分散されにくく、2本以上集まって束になり、それが1束ずつ分離して、束同士が複雑に絡み合うことなく凝集せずに、単純に交差した状態で導電層の内部若しくは表面に分散され、それぞれの交点で接触している。好ましくは、10〜50本の単層カーボンナノチューブが集まって束になったものが用いられる。
なお、単層カーボンナノチューブが1本ずつ分散している状態を除外するものではない。
上記のように極細導電繊維2aが絡み合うことなく凝集せずに分散してお互いに接触している導電層2は、極細導電繊維2aの目付け量を1〜450mg/mとすると、導電層2の厚みを5〜500nmと薄くしても、極細導電繊維2aが解れているので相互の十分な導通が確保され、表面抵抗率が10〜1011Ω/□の範囲となって良好な導電性を発現できるようになる。そして、極細導電繊維2aが解れて凝集塊がないので光透過を阻害せず透明性が良好になると共に、導電層2の厚みを薄くして極細導電繊維2aの目付け量を少なくした分だけ透明性が向上するようになる。
そして、極細導電繊維2aの目付け量を1〜30mg/mと少なくしても、10〜1011Ω/□の表面抵抗率を得ることができるうえに、高透明(光線透過率が85%以上)の導電層2とすることができる。
また、極細導電繊維2aの目付け量を30〜250mg/m程度に増加すると、10〜10Ω/□の表面抵抗率を得ることができ、透明(光線透過率が75%以上)の導電層2を得ることができる。
更に極細導電繊維2aの目付け量を250〜450mg/m程度に増加すると、10〜10Ω/□の導電性能に優れたものとすることができるうえ、導電層2の透明性(光線透過率が50%以上)も維持できる。
なお、導電層2の光線透過率は、測定に分光光度計を用い、導電層2のみを形成し接着層3を形成していない基材の550nmにおける光線透過率を、基材1を透過する光線透過率で補正することにより得ることができる。
また、全光線透過率及びヘーズはASTM D1003に準拠して測定した値である。
極細導電繊維2aを多量に導電層2中に含ませ、より良好な導電性及び透明性を発現させるためには、極細導電繊維2aの分散性を高め、さらに作製した塗液の粘度を下げて作業性を向上させて、薄い導電層2を形成することが大切であり、そのためには、分散剤を併用して分散性を向上することが重要である。このような分散剤としては、酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液や3級アミン修飾アクリル共重合物やポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合物などの高分子系分散剤、カップリング剤等が好ましく使用される。
なお、この導電層2には紫外線吸収剤、表面改質剤、安定剤等の添加剤を適宜加えて、耐候性その他の物性を向上させても良い。
導電層2に使用する樹脂バインダー2bとしては、透明な熱可塑性樹脂、特にポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、弗化ビニリデンが、また熱や紫外線や電子線や放射線などで硬化する透明な硬化性樹脂、特にメラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂などの透明性樹脂が使用され、これらの透明な樹脂バインダー2bと上記極細導電繊維2aとからなる導電層2が透明層となるようになされている。なお、これらの樹脂バインダーにはコロイダルシリカのような無機材が添加されてもよい。
上述したように、導電層2における極細導電繊維2aの目付け量を1〜450mg/mとし、導電層2の厚みを5〜500nmと薄くして、極細導電繊維2aを凝集することなく1本ずつ或は1束ずつ分散させることで、表面抵抗率が10〜1011Ω/□の良好な導電性及び透明性が発現される。より好ましい極細導電繊維2aの目付け量は1〜200mg/m、導電層2の厚みは5〜200nmである。なお、極細導電繊維の他に導電性金属酸化物の粉末を30〜50質量%程度含有させてもよい。
導電層2の上側に設けた接着層3は、感熱接着層、感圧接着層のいずれかからなる接着層である。感熱接着層であれば、転写時に熱を加えることで成形体に転写することができるし、感圧接着層であれば圧力を加えることで転写することができる。
上記接着層3に使用する接着樹脂としては、公知のアクリル系、ポリウレタン系、酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、塩化ビニル系などの樹脂が全て使用できるが、特に透明性に優れるアクリル系、ポリウレタン系の接着樹脂が好ましく使用される。
さらに具体的には、上記感熱接着剤としては、例えばエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、低融点の共重合ナイロンなどの接着性樹脂の中から適宜選択して使用できる。また、上記感圧接着剤としては、例えばアクリル系エマルジョン、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス、シリコーン系、放射線硬化性のアクリル系感圧接着剤などの中から適宜選択して使用できる。
この接着層3は、厚みを0.1〜200μmとなるように、塗布などの方法で導電層2の上面に積層形成される。より好ましい厚さは0.1〜50μm、最も好ましい厚さは1〜10μmである。
以上のような導電層転写シートは、次の方法で効率良く量産することができる。例えば、導電層形成用の前記樹脂バインダー2bを揮発性溶剤に溶解した溶液に極細導電繊維2aを均一に分散させて導電塗液を調製し、この導電塗液をポリエチレンテレフタレートなどの剥離性を有する基材1の上面に塗布、固化させて導電層2を形成し、さらに当該導電層2の上面に上記接着樹脂からなる接着塗液を塗布、固化させて接着層3を形成することにより、基材1と導電層2と接着層3とがこの順で積層された導電層転写シートを製造することができる。なお、接着層3の上面にさらにシリコンなどで処理した保護フィルムを設けることもでき、特に感圧接着層3を用いた場合は上記保護フィルムを設けることが好ましい。
このようにして得られた導電層転写シートは、例えば、押出し成形されている合成樹脂板の片面若しくは両面に、当該転写フィルムを重ね合せてロールにて熱又は/及び圧力を加え、接着層2と導電層1とを樹脂板に転写することで導電性樹脂板とするために使用される。また、合成樹脂板の上に導電層転写シートを重ね合せた後、熱或は圧力を加えて、接着層2と導電層1とを樹脂板に転写することで導電性樹脂板とするために使用される。
次に、本発明の更に具体的な実施例を挙げる。
[実施例1]
溶媒としてのイソプロピルアルコール/水混合物(混合比3:1)中に単層カーボンナノチューブ(文献Chemical Physics Letters,323(2000)P580−585に基づき合成した物、直径1.3〜1.8nm)と分散剤としてのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合物を加えて均一に混合、分散させ、単層カーボンナノチューブを0.003質量%、分散剤を0.05質量%含む塗液を調整した。
この塗液を、市販の厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(全光線透過率90.9%、ヘーズ0.5%)の片側の表面に塗布して乾燥後、更に、メチルイソブチルケトンで600分の1に希釈した熱硬化性のウレタンアクリレート溶液を塗布して乾燥することにより導電層を形成した。
この導電層形成PETフィルムと、元のPETフィルムの波長550nmにおける光線透過率を、島津製作所製島津自記分光光度計UV−3100PCを用いてそれぞれ測定し、それらの差を導電層の550nm波長の光線透過率とした。その結果、550nm波長の導電層の光線透過率は、60.5%であった。
さらに、この導電層の表面にアクリル系接着剤を塗布して、厚さ2.5μmの接着層を形成し、実施例1の導電層転写シートを得た。
この導電層転写フィルムの接着層側の表面抵抗率を三菱化学社製のロレスタ−EPで測定したところ、表面抵抗率が8.7×10Ω/□であった。
また、この導電層転写シートの全光線透過率とヘーズとを、ASTM D1003に準拠して、スガ試験機社製の直読ヘーズコンピューターHGM−2DPで測定したところ、全光線透過率が55.2%、ヘーズが4.5%であった。
さらに、この導電層転写シートの導電層を光学顕微鏡で観察したところ、0.5μm以上の凝集塊は存在しておらず、単層カーボンナノチューブの分散が十分に行われていた。そこで、このシートの導電層を走査電子顕微鏡で観察したところ、単層カーボンナノチューブの分散が十分に行われていて、この電子顕微鏡観察においても凝集塊は存在していなかった。そして、多数のカーボンナノチューブが1束ずつ分離した状態で均一に分散し、単純に交差した状態で接触していることがわかった。
そして、単層カーボンナノチューブの目付け量を測定したところ、265mg/mであった。
さらに、この導電層転写シートを、その接着層が押出し成形中の厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板の表面側となるように重ね合せ、ポリシングロールで圧着させた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのみを剥離した。そして、導電性ポリカーボネート樹脂板の表面抵抗率を測定したところ、1.32×10Ω/□の表面抵抗率を有していて、導電層転写シートの導電層が転写されていることがわかった。
この導電性ポリカーボネート樹脂板の全光線透過率は53.5%、ヘーズは5.3%であった。
[実施例2]
溶剤としてのシクロヘキサノンに、熱可塑性樹脂として塩化ビニル樹脂の粉末を1.7質量%添加して溶解した。この溶液中に単層カーボンナノチューブ(カーボンナノテクノロジーズ社製、直径0.7〜2nm)と分散剤としての酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液を加えて均一に混合、分散させ、カーボンナノチューブを0.3質量%、分散剤を0.18質量%含む塗液を調整した。この塗液を実施例1で用いたのと同じ市販の厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片側の表面に塗布して乾燥することにより導電層を形成した。
この導電層形成PETフィルムの導電層の550nm波長の光線透過率を、実施例1と同様にして測定したところ、95.5%であった。
さらに、この導電層の表面にポリエステルウレタン接着剤を塗布して、厚さ1.5μmの接着層を形成し、実施例2の導電層転写シートを得た。
この導電層転写シートの表面抵抗率を三菱化学社製のハイレスタ−UPで測定したところ、表面抵抗率が6.3×10Ω/□であった。
また、この導電層転写シートの全光線透過率は87.2%、ヘーズは0.7%であった。
さらに、この導電層転写シートの導電層には0.5μ以上の凝集塊は存在しておらず、導電層の単層カーボンナノチューブの目付け量は17mg/mであった。
さらに、この導電層転写シートを、その接着層が押出し成形中の厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板の表面側となるように重ね合せ、ポリシングロールで圧着させた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのみを剥離した。そして、導電性ポリカーボネート樹脂板の表面抵抗率を測定したところ、2.2×10Ω/□の表面抵抗率を有していて、転写シートの導電層が転写されていることがわかった。この導電性ポリカーボネート樹脂板の全光線透過率は83.1%、ヘーズは1.2%であった。
また、この導電層転写シートを、その接着層が押出し成形中の厚さ5mmの非晶質ポリエステル樹脂板の表面側となるように重ね合せ、ポリシングロールで圧着させた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのみを剥離した。そして、導電性非晶質ポリエステル樹脂板の表面抵抗率を測定したところ、1.6×10Ω/□の表面抵抗率を有していて、導電層転写シートの導電層が転写されていることがわかった。この導電性非晶質ポリエステル樹脂板の全光線透過率は79.3%、ヘーズは1.8%であった。
この実施例2で、転写後の表面抵抗率が転写前の表面抵抗率より減少した理由は、転写する時の圧力により、導電層のバインダー内で上下方向に分散して接触していなかったカーボンナノチューブ同士が圧縮されて接触したり、導通可能な間隔まで狭くなって導通し、表面抵抗率が減少したためか、あるいは、カーボンナノチューブが導電層の表面に突出して導通するため表面抵抗率が減少したためであると考えられる。
本発明に係る導電層転写シートの一実施形態を示す断面図である。 (A)は導電層転写シートの導電層内部での極細導電繊維の分散状態を示す概略断面図であり、(B)は導電層転写シートの導電層表面での極細導電繊維の分散状態を示す概略断面図である。 導電層転写シートの導電層を平面から見た極細導電繊維の分散状態を示す概略平面図である。
符号の説明
1 基材
2 導電層
2a 極細導電繊維
3 接着層

Claims (6)

  1. 剥離性基材に極細導電繊維を含んだ導電層と接着層とがこの順で形成されていることを特徴とする導電層転写シート。
  2. 導電層に含まれる極細導電繊維が、凝集することなく分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載の導電層転写シート。
  3. 導電層に含まれる極細導電繊維が、1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載の導電層転写シート。
  4. 極細導電繊維がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電層転写シート。
  5. 導電層は、その550nm波長の光線透過率が50%以上の透明性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電層転写シート。
  6. 接着層が、アクリル系接着樹脂又はポリウレタン系接着樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電層転写シート。
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