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JP2006035773A - 粘接着性導電成形体 - Google Patents

粘接着性導電成形体 Download PDF

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JP2006035773A
JP2006035773A JP2004222450A JP2004222450A JP2006035773A JP 2006035773 A JP2006035773 A JP 2006035773A JP 2004222450 A JP2004222450 A JP 2004222450A JP 2004222450 A JP2004222450 A JP 2004222450A JP 2006035773 A JP2006035773 A JP 2006035773A
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Junichi Nakanishi
純一 中西
Hidemi Ito
秀己 伊藤
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Takiron Co Ltd
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Takiron Co Ltd
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Abstract

【課題】カーボンナノチューブなどの極細導電繊維の量を少なくして透明性を向上させても良好な導電性を発揮することができる導電層を有する粘接着性導電成形体を提供する。
【解決手段】樹脂やガラス等よりなる基材11の一方の表面に極細導電繊維2を含んだ透明な導電層12を形成し、他の表面に粘接着層13を形成した粘接着性成形体1とする。導電層12には、極細導電繊維2が凝集することなく分散して互いに接触しているか、或は、1本ずつ分離した状態で若しくは複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触させて含有されている。粘着層13にはアクリル系粘着剤が用いられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性と粘接着性とを具備した成形体に関し、特に、透明性が高く、透過する光の色調を変えることがない粘接着性導電成形体に関する。
従来より、クリーンルームのパーテーションやクリーンルーム内で使用する製造装置の覗き窓のように透視が可能で塵埃を嫌う用途には、静電気を逃がして塵埃の付着を防止する透明な制電性樹脂板が使用されていて、本出願人も透明な熱可塑性樹脂基板の表面に、曲がりくねって絡み合う極細の長炭素繊維を含んだ透明な熱可塑性樹脂の制電層を形成してなる制電性透明樹脂板を提案した(特許文献1)。この制電性透明樹脂板は、表面抵抗率のバラツキが少なく、適度な制電性を有し、透明性も良好なものであった。
一方、ブラウン管(陰極線管)ディスプレイ(CRTディスプレイ)や液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)などの表示装置の前面に配置し、静電気を逃がして塵埃の付着を防止する帯電防止フィルムも知られていて、透明基材の片面に表面抵抗率が1×1011Ω/□以下であるハードコート層を、他面に粘着層を設けたものが提案されている(特許文献2)。
さらに、上記表示装置から発生する電磁波をシールドするために、アクリル板にITO皮膜などの導電膜を形成した光学フィルタも知られている。(特許文献3)。
特開2001−62952号公報 特開2001−316504号公報 特開平10−117081号公報
しかしながら、上記特許文献1の制電性透明樹脂板は、透明樹脂板の片面に制電層を設けたのみであり、覗き窓などにはボルト・ナットなどを使用して取り付ける必要があり、時間と労力を必要としていた。さらに、制電層中の長炭素繊維の分散性が悪く、その含有量をある程度多くしなければ、その表面抵抗率を1010Ω/□以下に設定できないという問題があった。
一方、特許文献2の帯電防止フィルムは、その片面に粘着層を有しているが、導電材料として金属微粒子やウイスカーなどを10〜80重量%含ませているため、導電材料に起因するハードコート層の着色の為に補色関係にある色相を粘着層に与える必要がある、という問題を含んでいた。
更に、特許文献3の電磁波シールドフィルムは、ITO皮膜が若干黄色に着色するため、表示装置の表示色調が変わるという問題を内在していた。また、湾曲した表示装置に取り付ける場合などにおいては、該ITO皮膜にクラックなどが生じて導電性が低下し電磁波シールド機能を発揮できなくなるという問題もあった。
本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、カーボンナノチューブなどの極細導電繊維の量を少なくして透明性を向上させても良好な導電性を発揮することができる導電層を有する粘接着性導電成形体を提供することを解決課題としている。
上記目的を達成するため、本発明の粘接着性導電成形体は、基材の片面に極細導電繊維を含んだ導電層が形成され、基材の他面に粘接着層が形成されていることを特徴とするものである。
本発明において、成形体の表面抵抗率が10〜1011Ω/□で、全光線透過率が40%以上であり、JIS Z8729に定められているLが表示系の透過色度におけるa及びbが−2.5〜2.5であることが好ましく、さらに、導電層は、その550nm波長の光線透過率が75%以上の透明性を有していることが好ましい。一方、導電層に含まれる極細導電繊維は凝集することなく分散して互いに接触していたり、1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触していることが好ましい。そして、これらの極細導電繊維としてカーボンナノチューブを用いることが好ましいのである。また、粘接着層はアクリル系粘着剤よりなることが好ましい。
なお、本発明で「凝集することなく」とは、導電制電層を光学顕微鏡で観察し、平均径が0.5μm以上の凝集塊がないことを意味する用語である。また、「接触」とは、極細導電繊維が現実に接触している場合と、極細導電繊維が導通可能な微小間隔をあけて近接している場合の双方を意味する用語である。さらに、「導電性」とはJIS K 7194(ASTM D 991)(抵抗が10Ω以下)あるいはJIS K 6911(ASTM D 257)(抵抗が10Ω以上)で測定し、表面抵抗率が10〜1011Ω/□の範囲であることを意味する。
本発明の粘接着性導電成形体は、基材の片面に導電層を、他面に粘接着層を形成しているので、粘接着層で対象物に粘接着することができ、対象物に制電機能や導電機能や電磁波シールド機能などを簡単に付与することができる。そして、極細導電繊維を導電材料として使用しているので導電層の着色が抑制され、a及びbを−2.5〜2.5の範囲にした無色透明な成形体とすることができ、粘接着した対象物の色調を損なうことがない。そして、導電層の550nm波長の光線透過率を50%以上有するものにすることができるし、成形体の全光線透過率も40%以上とすることができ、高透明の成形体とすることができる。
特に、導電層に含まれる極細導電繊維が凝集することなく分散して互いに接触していると、該繊維が凝集していない分だけ、極細導電繊維が解けて相互の十分な導通を確保できるので良好な導電性を得ることができる。また、導電層の極細導電繊維が1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触していると、分散した1本若しくは1束の極細導電繊維相互の接触機会が多くなり、十分な導通を確保でき良好な導電性を得ることができる。
そのため、極細導電繊維量を少なくしても優れた導電性を確保でき、且つ極細導電繊維量を少なくした分だけ透明性を向上させることができるし、導電層の厚みも薄くすることもできる。一方、極細導電繊維量を同じにすると、極細導電繊維が解れて凝集がなくなった分だけ、導通に寄与する極細導電繊維の本数が増え、今まで以上に優れた導電性を得ることができる。そして、極細導電繊維がカーボンナノチューブであると、該カーボンナノチューブが細くて長いので、これら相互の接触がさらに良好に確保でき、表面抵抗率を10〜1011Ω/□の範囲で容易にコントロールできるし、また高い透明性も保持でき、制電性機能を有する成形体とすることも、導電性機能を有する成形体とすることも、或は電磁波シールド機能を有する成形体とすることも可能となる。
以下、図面を参照して本発明の代表的な実施形態を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は本発明の粘接着性導電成形体の一実施形態を示す断面図、図2の(A)は導電層内部における極細導電繊維の分散状態を示す概略断面図、図2の(B)は導電層表面における極細導電繊維の他の分散状態を示す概略断面図、図3は導電層を平面から見た極細導電繊維の分散状態を示す概略平面図である。
この粘接着性導電成形体1は、合成樹脂やガラスなどよりなる薄い基材11の片面(上面)に極細導電繊維2を含んだ透明な導電層12を積層し、基材11の他面(下面)に粘接着層13を積層形成した成形体である。
基材11としては、熱可塑性樹脂、熱や紫外線や電子線や放射線などで硬化する硬化性樹脂、ガラスなどが使用される。これらの中で、透明性を有する成形体1を得るためには、透明性熱可塑性樹脂や透明性硬化性樹脂やガラスが使用される。前記透明性熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ニトロセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシクロヘキサンテレフタレート、芳香族ポリエステル等のエステル系樹脂、ABS樹脂、これらの樹脂の共重合体樹脂、これらの樹脂の混合樹脂などが使用される。また、前記透明硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などが使用される。
これらの中でも、厚さ100μmであるときの全光線透過率が90%以上、好ましくは95%以上を有し、ヘーズが5%以下の樹脂が特に好ましく使用される。このような樹脂としては、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシクロヘキサンテレフタレート、あるいはその共重合体樹脂、これらの樹脂の混合樹脂、更には硬化型アクリル樹脂などが用いられるが、特に好ましい樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、環状ポリオレフィンである。その他、ガラスも全光線透過率が95%以上と透明性が非常に良好であるので、透明性成形体1を得るうえで好ましく用いられる。
そして、上記の樹脂よりなる基材11の厚さを30〜500μmにすることにより、柔軟性を有するフィルム状の透明性成形体1とすることができ、粘接着対象物が湾曲したり屈曲したりしていても、この形状に追従させて粘接着することができる。
上記合成樹脂製基材11には可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤等が適宜配合され、成形性、熱安定性、耐候性等が高められる。更に、これらの基材11に顔料や染料を添加して不透明にしたり、半透明にしたりしてもよく、この場合は不透明成形体1或は半透明成形体1となるが、導電層12が透明であるため、その色調を損なうことがない。
基材11の厚さは、用途に応じた厚さとすればよいが、通常は0.003〜2mm(3〜2,000μm)程度の厚さの基材11が使用される。柔軟性を有する成形体1とする場合は0.003〜0.5mm(3〜500μm)とし、ある程度の柔軟性を有する成形体1とする場合は0.5〜2.0mmとする。なお、剛性を有する成形体1が必要になれば2.0〜10.0mmの厚さとすればよく、必要に応じて適宜の厚みが選択される。
この基材11の片面に形成された導電層12は、極細導電繊維2を含んだ透明層であって、極細導電繊維2が凝集することなく分散して互いに接触しているか、或は、極細導電繊維2が絡み合うことなく1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で、分散して互いに接触しているか、或は、これらの分散状態が混在した状態で接触している。導電層12が主に極細導電繊維2と透明なバインダーとで形成されていると、図2の(A)に示すように、該極細導電繊維2はバインダーの内部に上記の分散状態で分散し互いに接触しているか、或は図2の(B)に示すように、極細導電繊維2の一部がバインダー中に入り込み他の部分がバインダー表面から突出乃至露出して上記分散状態で分散し互いに接触しているか、或は極細導電繊維2の一部は図2の(A)のようにバインダーの内部に、他の極細導電繊維2は図2の(B)のように表面から突出乃至露出している状態で分散し互いに接触していることとなる。
これらの極細導電繊維2の平面から見た分散状態を図3に概略的に示す。この図3から理解されるように、極細導電繊維2は多少曲がっているが1本ずつ或は1束ずつ分離し、互いに複雑に絡み合うことなく即ち凝集することなく、単純に交差した状態で導電層12の内部に或は表面に分散され、それぞれの交点で接触している。このように分散していると、凝集している場合に比べて、繊維が解れて広範囲に存在しているので、これら繊維同士の接触する機会が著しく増加し、その結果導通して導電性を著しく高めることができる。極細導電繊維が解れずに分散されているとお互いの接触機会が少なくなり、10〜1011Ω/□の導電性を得るためには多量に含有させる必要があり、その結果導電層を低透明にしかすることができなかった。しかし、極細導電繊維を上記分散状態にすることで極細導電繊維2の量を減少させても同じ接触機会を得ることができ、その分、極細導電繊維2の量を少なくすることができるのである。その結果、透明性を阻害する極細導電繊維2の量が少なくなった分だけ透明性が向上するし、また、導電層12を薄くすることもでき、一層透明性を向上させることができる。
なお、極細導電繊維2は完全に1本ずつ或は1束ずつ分離し分散している必要はなく、一部に絡み合った小さな凝集塊があっても良いが、その大きさは平均粒径が0.5μm以上でないことが好ましい。
一方、凝集して分散した場合と同じ量の極細導電繊維2を導電層12に含ませると、上記分散状態にすることで、多くの繊維同士の接触機会を得ることができるので、導電性を著しく向上させることができ、10Ω/□以下とすることができる。
さらに、極細導電繊維2を導電層12に含ませて該導電層12の厚みを5〜500nmと薄くしても、導電性を高めることが可能となる。従って、導電層12の厚みを上記の範囲で薄くすることが好ましく、更に好ましくは5〜200nmにすることが望ましい。
導電層12に使用される極細導電繊維2としては、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、ナノワイヤなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、ナノワイヤなどの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで長さが0.1〜20μm、好ましくは長さが0.1〜10μmである導電性極細繊維が好ましく用いられる。これらの極細導電繊維2は、これが凝集することなく1本ずつ或は1束ずつ分散することにより、該導電層12の表面抵抗率が10〜10Ω/□である時にはその光線透過率が50%以上であるものが得られるし、表面抵抗率が10〜10Ω/□である時には光線透過率が75%以上のものが得られるし、表面抵抗率が10〜10Ω/□である時には光線透過率が85%以上のものが得られるし、表面抵抗率が10〜1011Ω/□である時には光線透過率が90%以上のものが得られる。なお、上記光線透過率は分光光度計による550nmの波長の光の透過率を示す。
これらの極細導電繊維2の中で、カーボンナノチューブは直径が0.3〜80nmと極めて細いので、1本或は1束ずつ分散することで該カーボンナノチューブが光透過を阻害することが少なくなり、550nm波長の光線透過率が50%以上の透明な導電層2を得るうえで特に好ましいのである。これらの極細導電繊維2は、導電層12の内部に、或は表面に、凝集することなく、1本ずつ或は1束ずつ分散し、互いに接触して導通性を確保している。そのため、該極細導電繊維2を導電層12に1.0〜450mg/mの目付け量に相当する量を含ませることで、その表面抵抗率を10〜1011Ω/□の範囲内で自由にコントロールすることができる。該目付け量は、導電層12を電子顕微鏡で観察し、その平面面積に占める極細導電繊維2の面積割合を測定し、これに電子顕微鏡で観察した厚みと極細導電繊維の比重(極細導電繊維がカーボンナノチューブである場合は、グラフィトの文献値2.1〜2.3の平均値2.2を採用)を掛けることで計算した値である。
上記カーボンナノチューブには、中心軸線の周りに直径が異なる複数の円筒状に閉じたカーボン壁を同心的に備えた多層カーボンナノチューブや、中心軸線の周りに単独の円筒状に閉じたカーボン壁を備えた単層カーボンナノチューブがある。
前者の多層カーボンナノチューブは、上記のように直径が異なる複数の円筒状に閉じたカーボン壁からなるチューブが中心軸線の周りに多層になって構成されており、カーボン壁は、カーボンの六角網目構造にて形成されている。その他、上記カーボン壁が渦巻き状に多層に形成されているものもある。好ましい多層カーボンナノチューブは、このカーボン壁が2〜30層重なったものであり、そのような多層カーボンナノチューブを上記の如き分散状態で分散させると、光線透過率を良好にすることができる。より好ましくはカーボン壁が2〜15層重なったものが用いられる。該多層カーボンナノチューブは1本ずつ分離した状態で分散しているものが殆どであるが、2〜3層カーボンナノチューブは、束になって分散している場合もある。
一方、後者の単層カーボンナノチューブは、上記のように中心軸線の周りに円筒状に閉じた単独のカーボン壁から構成されており、カーボン壁はカーボンの六角網目構造にて形成されている。このような単層カーボンナノチューブは1本ずつ分離した状態では分散されにくく、2本以上集まって束になり、それが1束ずつ分離して、束同士が複雑に絡み合うことなく凝集せずに、単純に交差した状態で導電層の内部若しくは表面に分散され、それぞれの交点で接触している。好ましくは、10〜50本の単層カーボンナノチューブが集まって束になったものが用いられる。なお、単層カーボンナノチューブが1本ずつ分散している状態を除外するものではない。
上記のように極細導電繊維2が絡み合うことなく凝集せずに導電層12に分散してお互いに接触している成形体1では、導電層12における極細導電繊維2の目付け量を1〜450mg/mとすると、導電層12の厚みを5〜500nmと薄くしても、極細導電繊維2が解れているので相互の十分な導通が確保され、表面抵抗率が10〜1011Ω/□の範囲となって良好な導電性を発現できるようになる。そして、極細導電繊維2が解れて凝集塊がなくなり光透過を阻害しないので透明性が良好になると共に、導電層12の厚みを薄くして極細導電繊維2の目付け量を少なくした分だけ透明性が向上するようになる。
そして、極細導電繊維2の目付け量を1〜40mg/mと少なくしても、10〜1011Ω/□の表面抵抗率を得ることができるうえに、高透明(光線透過率が85%以上)の導電層12とすることができる。そのため、透明性樹脂或はガラスを基材11に使用すると、制電機能を有する透明成形体とすることができる。
一方、極細導電繊維2の目付け量を増加して40〜250mg/m程度にすると、10〜10Ω/□の表面抵抗率を得ることができ、透明(光線透過率が75%以上)の導電層12を得ることができる。そのため、透明性樹脂或はガラスを基材1に使用すると、電磁波シールド機能を有する透明成形体とすることができる。
更に極細導電繊維2の目付け量を増加して250〜450mg/m程度にすると、10〜10Ω/□の導電性能に優れたものとすることができるうえ、導電層12の透明性(光線透過率が50%以上)も維持でき、基材11に透明性樹脂を使用することで導電機能を有する透明成形体とすることができる。
なお、導電層12の光線透過率は、測定に分光光度計を用い、550nmにおける粘接着層を形成していない成形体の光線透過率を、基材11とを透過する光線透過率で補正することにより得ることができる。また、全光線透過率及びヘーズはASTM D1003に準拠して測定した値である。
極細導電繊維2を多量に導電層12中に含ませ、より良好な導電性及び透明性を発現させるためには、極細導電繊維2の分散性を高め、さらに作製した塗液の粘度を下げて作業性を向上させて、薄い導電層12を形成することが重要であり、そのためには、分散剤を併用して分散性を向上することが重要である。このような分散剤としては、酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液や3級アミン修飾アクリル共重合物やポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合物などの高分子系分散剤、カップリング剤等が好ましく使用される。
なお、この導電層12には紫外線吸収剤、表面改質剤、安定剤等の添加剤を適宜加えて、耐候性その他の物性を向上させても良い。
導電層12に使用するバインダーとしては、透明な熱可塑性樹脂、特にポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、弗化ビニリデンが、また熱や紫外線や電子線や放射線などで硬化する透明な硬化性樹脂、特にメラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂などの透明性樹脂が使用され、これらの透明バインダーと上記極細導電繊維2とからなる導電層12が透明層となるようになされている。なお、これらのバインダーにはコロイダルシリカのような無機材が添加されてもよい。基材11が透明な熱可塑性樹脂で形成されていれば、これと同種の透明な熱可塑性樹脂、又は相溶性のある異種の透明な熱可塑性樹脂が、互いの積層性に優れ、透明成形体1を得るうえで好ましく使用される。また、バインダーとして硬化性樹脂やコロイダルシリカを含むバインダーを使用すると耐磨耗性などに優れる成形体1を得ることができる。このように、導電層12は基材11の表面に形成されるものであるから、要求される耐候性、表面硬度、耐摩耗性などに適したバインダーを選択使用することが望ましい。
上述したように、導電層12における極細導電繊維2の目付け量を1〜450mg/mとし、導電層12の厚みを5〜500nmと薄くして、極細導電繊維2を凝集することなく1本ずつ或は1束ずつ分散させることで、表面抵抗率が10〜1011Ω/□の良好な導電性及び透明性が発現される。より好ましい極細導電繊維2の目付け量は1〜200mg/m、導電層12の厚みは5〜200nmである。なお、極細導電繊維の他に導電性金属酸化物の粉末を30〜50質量%程度含有させてもよい。
一方、基材11の下面に設けた粘接着層13は、感熱接着剤や感圧接着剤(粘着剤)などからなる層であることが好ましい。感熱接着層であれば、粘接着対象物に貼りつけるときに熱を加えて接着すればよいし、感圧接着層であれば貼りつけるときに圧力を加えて接着すればよい。また、粘接着層13が粘着性を有していれば、その表面に剥離材を設け、使用時に該剥離材を剥がし取って粘接着対象物に貼りつけることができる。
上記粘接着層に使用する粘接着樹脂としては、公知のアクリル系、ゴム系、ポリビニールエーテル系、シリコーン系など粘接着樹脂が全て使用できるが、特に透明性に優れるアクリル系、シリコーン系の粘接着樹脂が好ましく使用される。さらに具体的には、上記感熱接着剤としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、低融点の共重合ナイロンなどの中から適宜選択して使用できる。また、上記感圧接着剤としては、アクリル系エマルジョン、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス、シリコーン系、放射線硬化性のアクリル系感圧接着剤などの中から適宜選択して使用できる。
この粘接着層13は、厚みを1〜200μmとなるように、塗布などの方法で基材11の下面に積層形成される。
このような構成の粘接着性導電成形体1は、基材11として透明樹脂やガラスを使用すれば、導電層12が極細導電繊維を凝集することなく1本ずつ或は1束ずつ分散し、互いに接触して導通性を確保して透明性を有し、且つ粘接着層13が透明性を有しているので、その全光線透過率を40%以上とすることが可能となる
さらに、上記導電層12は、極細導電繊維2が上記の如く分散したものであるので、該繊維2が色調に影響を与えずに黄色味や青色味に偏ることがなくて無色透明のクリアーな層となる。そのため、粘接着性導電成形体1のJIS Z8729に定められるL表色系における透過色度におけるa及びbは、後述する実施例からわかるように、共に−2.5〜2.5の範囲となり、黄色味や青色味に偏ることのない透明性を保持している。また、JIS K7103に基づく導電層12の黄色度(YI)においても0〜6の範囲となり、黄色味のない導電層となる。好ましくは、aが−0.1〜0.1、bが−2.5〜2.5、YIが0〜6の範囲となるように同時に満たすことである。このような範囲のa、b及びYIであると、粘接着対象物、例えば液晶ディスプレイの前面に粘接着しても、ディスプレイの表示内容、特に色相が変化することなく見ることができることとなる。なお、L、a、bは、JIS Z8722に基づいて測定される。
以上のような粘接着性導電成形体1は、例えば次の方法で効率良く量産することができる。例えば、導電層形成用の前記バインダーを揮発性溶剤に溶解した溶液に極細導電繊維2を均一に分散させて塗液を調製し、この塗液を基材11の片面に塗布、固化させて導電層12を形成すると共に、基材11の他面に粘接着剤を塗布、固化させて粘接着層13を形成することにより製造することができる。或は、基材11と同種の熱可塑性樹脂フィルム又は相溶性のある異種の熱可塑性樹脂フィルムの表面に、上記塗液を塗布、固化させて導電層12を形成した導電性フィルムを作製すると共に、粘接着剤を剥離フィルムに塗布、固化させて粘接着層13を形成した転写粘接着フィルムを作製し、この導電性フィルムを基材11の片面に、粘接着フィルムを基材11の他面に夫々重ねて熱プレスやロールプレスで熱圧着し、その後に剥離フィルムを剥がし取ることにより製造することもできる。さらに、ポリエチレンテレフタレートなどの剥離フィルムに上記塗料を塗布、固化させて導電層12を形成し、必要であればさらに接着層を形成して転写導電フィルムを作製すると共に、粘接着層13を形成した転写粘接着フィルムを作製し、この転写導電フィルム及び転写粘接着フィルムを基材11の上下の表面に重ねて圧着して導電層12若しくは接着層と導電層12とを転写すると共に粘接着層13を転写することにより製造することもできる。なお、その他の公知の製法によっても製造され得ることは言うまでもない。
このようにして得られた成形体1は、例えばクリーンルームのパーテーションやクリーンルーム内で使用する試験装置の覗き窓、或は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(陰極線管)ディスプレイ(CRT)などのディスプレイなどの対象物に、粘接着層13を貼り付けることにより成形体1を取り付け、塵の付着を防止したり、電磁波をシールドしたり、画像の乱れを引き起こす表示部の帯電を防いだりして、対象物に各種機能を付加する。
このように粘接着する際に、対象物が湾曲したり、屈曲したりしていて、これに沿うように成形体1を湾曲或は屈曲させても、導電層12に含有している極細導電繊維2の一部の曲がった部分が伸びたり、或は一旦接触が離れても近傍の他の繊維と再接触するので、繊維の接触状態がそれほど変わらず、表面抵抗率に変化は見られない。従って、このような状態で粘接着してもその前後での機能は維持できる。曲率半径が1mmであっても3mmであっても元の1.1倍以下の増加しか見られず、湾曲或は屈曲しても表面抵抗率が変化することがない。
図4は、本発明の他の実施形態を示す成形体の断面図である。
この成形体10は、基材11の片面に導電層12と機能層14とを形成し、他面に粘接着層13を形成してなるものである。機能層14は、表面を傷つきにくくするハードコート層、或は表示を見易くする防眩層などであり、成形体10の機能をさらに高めるために付加されるものである。
なお、基材11と導電層12と粘接着層13は、前記実施形態と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
以上の実施形態は薄い基材を使用した成形体について説明したが、厚い基材を使用した成形体、異形形状の基材を使用した成形体などの他形状の成形体であってもよいことはいうまでもない。
次に、本発明の更に具体的な実施例を挙げる。
[実施例1]
溶剤としてのシクロヘキサノンに、熱可塑性樹脂として塩化ビニル樹脂の粉末を1.7質量%添加して溶解した。この溶液中に単層カーボンナノチューブ(カーボンナノテクノロジーズ社製、直径0.7〜2nm)と分散剤としての酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液を加えて均一に混合、分散させ、カーボンナノチューブを0.3質量%、分散剤を0.18質量%含む塗液を調整した。
この塗液を市販の厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(全光線透過率90.9%、ヘーズ0.8%)の表面に塗布し、乾燥硬化した。さらに、この導電層付PETフィルムの他の表面にアクリル系粘着剤(東洋インキ製造社製オリバインBPS5296、BXX4773)を塗布して、厚さ28μmの粘接着層を形成し、実施例1の透明粘接着性導電PETフィルムを得た。
この透明粘接着性導電PETフィルムの表面抵抗率を三菱化学社製のロレスタ−UP(MCP−HT450)で測定したところ、表1に示すように、表面抵抗率が1.29×10Ω/□であった。
また、このPETフィルムの全光線透過率とヘーズとを、ASTM D1003に準拠して、スガ試験機社製の直読ヘーズコンピューターHGM−2DPで測定したところ、表1に示すように、全光線透過率が85.6%、ヘーズが5.2%であった。
また、導電層の550nm波長の光線透過率を、島津製作所製島津自記分光光度計UV−3100PCを用いて、粘接着層を形成する前の導電層付きPETフィルムと、元のPETフィルムの波長550nmにおける光線透過率をそれぞれ測定し、それらの差を導電層の光線透過率とした。この光線透過率は、表1に示すように、92.0%であった。
さらに、この透明粘接着性導電PETフィルムの導電層を光学顕微鏡で観察したところ、0.5μ以上の凝集塊は存在しておらず、単層カーボンナノチューブの分散が十分に行われていた。そこで、このフィルムの導電層を走査電子顕微鏡で観察したところ、多数のカーボンナノチューブが1束ずつ分離した状態で均一に分散し、単純に交差した状態で接触していることがわかった。そして、透明粘接着性導電PETフィルムの導電層の単層カーボンナノチューブの目付け量を測定したところ、26.6mg/mであった。
また、この透明粘接着性導電PETフィルムを屈曲させたときの表面抵抗率の変化を調べるために、該フィルムを導電層が外側となるようにして、所定の半径の線材に半円分以上沿わせ1分間保持した後、沿わせた部分を含んだ表面抵抗率を測定した。その屈曲させる前の表面抵抗率を1(100%)としたときの表面抵抗率の増加を表1に記載した。
更に、この透明粘接着性導電PETフィルムの色相を調べるために、JIS Z8722に基づいて、日本電色工業株式会社製の色差計 ZE−2000を用いて、当該フィルムの色相を測定した。表1に示すように、L:89.82、a:−0.04、b:2.39、YI:5.04であった。
更に、この透明粘接着性導電PETフィルムをガラスに粘着させたところ、ガラスに強力に粘着し、簡単に剥がすことができなかった。
Figure 2006035773
表1から分かるように、実施例1は1.29×10Ω/□の表面抵抗率を有し、制電機能を十分に有している。そして、85.6%の全光線透過率を有していて、導電、粘着処理前のPETフィルム(全光線透過率90.9%)と比べても遜色ない透視性を有していることが分かる。
さらに、実施例1は、色度で黄色味を表すbが2.39、YIが5.04であり、黄色味が少ないことが分かる。このような実施例1を画像表示装置に組み込むと、画像の色の補正をすることなく表示色調どおりに見ることができるので、画像表示装置の前面に置かれるフィルムとしては有用な性能である。
また、表1から分かるように、実施例1の表面抵抗率が1.29×10Ω/□であるフィルムは、沿わせる線材の半径が3mmの場合は試験後の表面抵抗率の増加は1.04倍でしかなく、さらには1mmの場合でも1.08倍でしかないことがわかる。このことより、実施例1のフィルムは、曲率半径が1〜10mmであるような曲げ加工を行っても、元フィルムの1.1倍以下の表面抵抗率の増加しかなく、帯電防止機能を有することが分かった。
これらのことより、本発明の粘接着性導電成形体は屈曲による表面抵抗率の変化が少なく、例え屈曲しても屈曲前の表面抵抗率を保持するため、屈曲が可能な制電性成形体、導電性成形体、電磁波シールド性成形体として、屈曲部への使用、複雑な構造体への展開が可能となった。
本発明に係る粘接着性導電成形体の一実施形態を示す断面図である。 (A)は本発明の導電層内部での極細導電繊維の分散状態を示す概略断面図であり、(B)は本発明の導電層表面での極細導電繊維の分散状態を示す概略断面図である。 本発明の導電層を平面から見た極細導電繊維の分散状態を示す概略平面図である 本発明の他の実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1、10 粘接着性導電成形体
11 基材
12 導電層
13 粘接着層
2 極細導電繊維

Claims (7)

  1. 基材の片面に極細導電繊維を含んだ導電層が形成され、基材の他面に粘接着層が形成されていることを特徴とする粘接着性導電成形体。
  2. 成形体の表面抵抗率が10〜1011Ω/□で、全光線透過率が40%以上であり、JIS Z8729に定められているL表示系の透過色度におけるa及びbが−2.5〜2.5であることを特徴とする請求項1に記載の粘接着性導電成形体。
  3. 導電層は、その550nm波長の光線透過率が50%以上の透明性を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘接着性導電成形体。
  4. 導電層に含まれる極細導電繊維が、凝集することなく分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘接着性導電成形体。
  5. 導電層に含まれる極細導電繊維が、1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘接着性導電成形体。
  6. 極細導電繊維がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の粘接着性導電成形体。
  7. 粘接着層がアクリル系粘着剤よりなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の粘接着性導電成形体。
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