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JP2005338340A - ホログラフィック記録媒体及びホログラフィック記録媒体の記録装置 - Google Patents

ホログラフィック記録媒体及びホログラフィック記録媒体の記録装置 Download PDF

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JP2005338340A
JP2005338340A JP2004155762A JP2004155762A JP2005338340A JP 2005338340 A JP2005338340 A JP 2005338340A JP 2004155762 A JP2004155762 A JP 2004155762A JP 2004155762 A JP2004155762 A JP 2004155762A JP 2005338340 A JP2005338340 A JP 2005338340A
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Toshio Ando
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Victor Company of Japan Ltd
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Abstract

【課題】 再生信号のS/Nの高い記録再生を行うことのできるホログラフィック記録媒体を提供する。
【解決手段】 基板5表面に形成されたフォーマット信号8上に反射層4、選択層2、ホログラフィック記録層1が順次積層され、レーザ光をホログラフィック記録層1上方から照射して、ホログラフィック記録層1を透過した透過光とホログラフィック記録層1を透過し、選択層2で反射された反射光との干渉により記録が行われるホログラフィック記録媒体10Aにおいて、ホログラフィック記録層1は、400〜500nmの波長範囲のレーザ光のみに感度を有する材料からなり、選択層2は、ホログラフィック記録層1を透過したレーザ光のうち、400〜500nmの波長のみを反射させる材料からなり、反射層4は、ホログラフィック記録層1及び選択層2を透過したレーザ光のうち、フォーマット信号8を検出する650nm以上の波長を反射させる材料からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホログラフィーを利用して情報を記録するためのホログラフィック記録媒体及び、ホログラフィーを利用してホログラフィック記録媒体に情報を記録するホログラフィック媒体の記録装置に関する。
従来、光学的に情報を記録し再生するための媒体として、CD及びDVDが広く普及している。そして、これらの媒体に光記録する方式においては、1ビットごとの情報が、記録媒体に対して平面的に記録される。この記録方式によると、媒体への情報の記録密度は、記録再生に使用する光の回折限界、すなわち、その光のスポットをどれだけ小さく絞れるかによって制限を受ける。
これに対し、ホログラフィー技術(以下、単にホログラフィーともいう)を用いる光記録においては、複数ビットから成る情報(デジタルのページデータである)を所定の厚さを有するホログラフィック記録層に立体的に記録する(体積ホログラム層が形成されるともいう)。しかも、複数のページデータを、その記録条件を変えることによって同一の記録領域に重畳して記録することが可能であリ、これを識別して再生することができる、すなわち情報の多重記録再生が可能である。
これにより、ホログラフィーを使用した光記録(再生)方式(以下、ホログラフィック記録(再生)方式又は方法ともいう)においては、CDなどにおける1ビットごとの記録方式に対して、格段に高密度で大容量の記録が可能である。また、1ビットごとの記録方式では、一度に1ビットしかデータ転送ができないのに対し、ホログラフィック記録方式では、一度に複数ビットから成る1ページ分のデータを記録再生できることから、データ転送速度も飛躍的に大幅に向上する。
ホログラフィック記録再生方法においては、ページデータを有する信号光と、この信号光と同じ波長を有する参照光とを重畳して光情報記録媒体(以下、ホログラフィック記録媒体ともいう)に照射し、両光から形成される干渉縞が信号情報として光情報記録媒体に記録される。干渉縞を形成するには、記録中に、信号光、参照光及び媒体の相対位置関係が、厳密に保持されることが必要であり、これらの光の波長オーダーのズレも許されないが、振動等により、相対位置関係を保持することが極めて困難であり、ホログラフィック記録方法の実用化を阻害する大きな要因の1つになっていた。
この振動に対する弱さを克服することを目的として、以下に説明する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
ここでは、信号光と参照光とを光学系の同軸に配置することによって、振動に対しても位置関係がずれないように工夫してある。
以下、これについて添付図面を参照して説明する。
図17は、従来例のホログラフィック記録再生方法を説明するための図である。
同図において、100は光情報記録再生装置(ホログラフィック記録再生装置)を、101は光情報記録媒体(ホログラフィック記録媒体である)を、102は光源としての半導体レーザを、103、107、110は凸レンズを、105、106はミラーを104、105は偏光ビームスプリッタを、115は空間光変調器を、109は旋光板をそれぞれ示す。
この光情報記録再生装置100による情報の記録方法について説明する。半導体レーザ102から出射した光112は、凸レンズ103を通って平行光となり、偏光ビームスプリッタ104に入射し、偏光膜104Rによって2つの光112R、112Tに分けられ、それぞれ偏光ビームスプリッタ104より出射される。
光112Rは空間光変調器115を通過する。このとき空間光変調器115には、記録されるべき1ページ分のディジタル情報が電気信号として入力されており、空間光変調器115を通過した光は、入力信号に応じた2次元の明暗パターンから成る信号光113として変換される。信号光113はミラー105で反射された後、偏光ビームスプリッタ108に入射し、偏光膜108Rを透過して偏光ビームスプリッタ108より出射される。
一方、偏光ビームスプリッタ104によって分けられた他方の光112Tは、参照光114として作用させるもので、ミラー106で反射されて凸レンズ107を通過した後、偏光ビームスプリッタ108に入射し、偏光膜108Rで反射され、信号光113と合成されて、偏光ビームスプリッタ108より出射される。凸レンズ110は信号光113と参照光114の焦点位置を光の進行方向に対してずらす目的で挿入する。このとき、合成された信号光113と参照光114とは、偏光ビームスプリッタ108の作用によって偏光面が90゜互いにずれているので、干渉しあうことはない。
合成された信号光113と参照光114は、旋光板109及び凸レンズ110を通過して光情報記録媒体101に達し、後述する光情報記録媒体の背面(信号光113等の入射側とは反対側の面)に設けられた図示しない反射層で反射する。このとき旋光板109は、例えば上半分109Rと下半分109Lに分割されていて、上半分109Rを通過した光は右45°、下半分109Lを通過した光は左45°に偏光面が回転するようになっている。こうすることによって光情報記録媒体101の内部では、入射した参照光114と、光情報記録媒体101の背面で反射した信号光113とが選択的に干渉を起こし、干渉縞が形成され、ホログラフィック記録がなされるようになっている。なお、ここで、光情報記録媒体101に達した信号光113の明暗パターンは、空間光変調器115で変調された明暗のパターンが凸レンズ110の作用により、空間的にフーリエ変換されたパターンになっていて、元の明暗のパターンが崩れたパターンになっている。
次に、光情報記録媒体101に記録した情報信号(干渉縞)を再生する方法について説明する。情報を再生するには、情報を記録したときに用いた参照光114のみを記録したときと同じ条件で光情報記録媒体101に照射する。このとき、空間光変調器115を光112Rが透過しないように設定しておけばよい。光情報記録媒体101には記録信号に応じた干渉縞が記録されているので、参照光114を照射することによって記録光113と同じ回折光が得られる。この回折光に、記録するときと同様の方法で旋光板109を作用させ、参照光114と得られた回折光とが干渉し合わないように回折光を図示しない検出器に導く。検出器には、CCDアレイや撮像素子などを用い、これらにより回折光を電気信号に変換することで、記録信号と同じ信号が再現される。
ところで、ホログラフィック記録された信号を再生する際に、所望のページにアクセスするためには、記録したときと同じ場所に正確に参照光114を照射する必要がある。このため、光情報記録媒体101の面上には、位置を特定するための何らかのアドレス情報、フォーマット信号が必要となる。フォーマット信号の形成は、量産性、コストの面から、成型によって光情報記録媒体101を構成する基板に凹凸を設ける方法が一般的である。
次に、光情報記録媒体(ホログラフィック記録媒体)の例を図18に示す。
図18は、従来例の光情報記録媒体を示す構成図である。
光情報記録媒体120は、基板123上に、順次、反射層122及びホログラフィック記録層121を形成したものである。基板123の反射層122を形成する側の面上にはフォーマット信号(例えばアドレスを示す)を示す所定のピット124が予め形成されている。ピット124のある領域はフォーマット用エリア(フォーマットエリア)125となり、それ以外は信号記録用エリア(信号記録エリア)126となる。
ここで、ホログラムとして干渉縞を形成し、再生時に参照光を照射して所望の回折光を得るためには、反射層122の面が平滑である必要がある。フォーマット信号の凹凸があるサーボ用エリア125にホログラフィック記録をしようとすると、凹凸が影響して、乱反射、散乱などを起こし、適正なホログラフィック記録が為されない。つまり、基板123にフォーマット信号が形成された凹凸のあるエリア125には、信号を記録することができず、信号記録用エリア126とサーボ用エリア125とを兼用(オーバーラップ)させることができず、分けることが必要であった。
特開平11−311938号公報
ところで、上述したようなデジタルホログラフィック記録においては、「1」と「0」から成るページデータは、空間光変調器などによって、「1」と「0」に応じて光の通る部分と通らない部分とから成る信号光に変換され、光情報記録媒体に照射される。一方、参照光の方は、信号に応じた分布を持たない均一な光として光情報記録媒体に照射される。このとき光情報記録媒体内では、信号光の通った部分のみに干渉縞が形成され、それ以外の部分には参照光のみが照射されるが、参照光のみが照射される部分は参照光によって感光してしまうため、再生時にS/Nを劣化させる原因になる。これを防ぐためには、参照光だけでは感光しないような光情報記録媒体特性及び記録再生光学系が要求され、システム設計におけるマージンが小さくなるという問題がある。
また、従来のホログラフィック記録再生方法においては、記録と再生に用いる光の波長は同一である。特に、特許文献1に示すようなフーリエ変換ホログラムにおいては、再生時には、記録するときに用いた参照光と同じ波長の光を、光情報記録媒体に対して記録時と同じ角度で照射しないと正しく再生できない。このとき、光情報記録媒体は記録光の波長に対して感度が高いので、同じ波長の光で再生した場合、再生過程で光情報記録媒体は感光してしまう。再生することによって、光情報記録媒体が感光されてしまうと、再生を繰り返す毎に再生信号のS/Nが低下し、ついには再生できなくなる。これを防止するには、再生時の参照光のパワーを落とすとか、記録後ダミー光を照射して光情報記録媒体が感光しなくなるまで安定化させるとか、記録後に光情報記録媒体の感光が完了するように記録条件をスケジューリングとかの処理が必要である。しかし、参照光のパワーを落としても光情報記録媒体の感光を完全に防止できないばかりか、パワーを落とすことで再生S/Nが低下する。また、記録後のダミー光照射は、後工程が増加し、かつダミー光照射によってS/Nが低下する危険性もある。また、記録後に感光が完了するように記録条件をスケジューリングするのは、記録条件を極めて制限することになる。つまり、記録の際の露光パワーが少しでも大きいと、記録が完了する前に感光が完了してしまい、多重の記録が行えない。また記録の際の露光パワーが少しでも小さいと、記録が完了しても光情報記録媒体の感光が完了せず、再生光で感光してS/Nが低下し、光情報記録媒体の記録容量が大きく、記録多重度が大きいほど、その低下を生じるという問題がある。
また従来のデジタルホログラフィック記録再生方法においては、同一光源から発射した光を、偏光ビームスプリッタやミラーなどの光学部品を配置して信号光と参照光とに分離する必要がある。このため、記録のための有効な光量の損失が大きい。特に、特許文献1に示される方式では、旋光板といった新たな光学部品が必要で、更に光量の損失が大きくなる。またこのような多数の光学部品を導入することは、記録再生光学系(装置)の複雑化、大型化を引き起こすことになり、好ましくないという問題がある。
一方、従来の光情報記録媒体においては、信号記録エリアとフォーマットエリアとを分離するので、フォーマットエリアを記録エリアとして使用できないため、信号を記録できるエリアが減少してしまい、大容量高密度の記録が行えなくなる。
一方、フォーマットエリアは記録エリア上には設けられないため、記録再生に必要な各種フォーマット信号は、間欠的にしか設けられないことになる。こうなると、安定したサーボが困難となる。特に、ホログラフィック記録再生においては、記録時と再生時で光照射位置を一致させる必要があり、わずかなトラッキング、アドレスのずれが再生時のS/Nを大きく劣化させることにつながる。つまり、記録エリアとフォーマットエリアとを分離させた場合、大容量化とサーボの安定化はトレードオフの関係にあり、両者を同時に満足させることはできないという問題がある。
そこで、本発明は、上記問題点を解決し、簡単な構成を有し、再生信号のS/Nの高い、大きな記録エリアを確保できて、情報の記録密度及び記録容量の大きいホログラフィック記録再生を行うことのできるホログラフィック記録媒体およびホログラフィック記録装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための手段として、第1の発明は、基板5表面に形成されたフォーマット信号8上に反射層4、選択層2、ホログラフィック記録層1が順次積層され、レーザ光をホログラフィック記録層1上方から照射して、ホログラフィック記録層1を透過した透過光とホログラフィック記録層1を透過し、選択層2で反射された反射光との干渉により記録が行われるホログラフィック記録媒体10Aにおいて、
ホログラフィック記録層1は、400〜500nmの波長範囲のレーザ光のみに感度を有する材料からなり、選択層2は、ホログラフィック記録層1を透過したレーザ光のうち、400〜500nmの波長のみを反射させる材料からなり、反射層4は、ホログラフィック記録層1及び選択層2を透過したレーザ光のうち、フォーマット信号8を検出する650nm以上の波長を反射させる材料からなることを特徴とするホログラフィック記録媒体である。
また、第2の発明は、少なくとも基板5上に光源から出射される記録用レーザ光(記録光11a)を反射する選択層2、記録用レーザ光(記録光11a)のみに感度を有するホログラフィック記録層1が順次形成されたホログラフィック記録媒体10Aを用いてホログラフィック記録層1に記録を行うホログラフィック記録媒体10Aの記録装置20において、
記録用レーザ光(記録光11a)を情報信号(記録信号14)に応じて光変調する空間光変調器13と、
空間光変調器13で光変調された記録用レーザ光(記録光束16)の光軸16Aに対して所定の角度で傾斜して設けられたホログラフィック記録媒体10Aと、からなり、
ホログラフィック記録媒体10Aのホログラフィック記録層1を透過した記録用レーザ光(記録光束16)の透過光とホログラフィック記録媒体10Aの選択層2で反射された反射光との干渉によりホログラフィック記録層1に記録を行うことを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録装置である。
本発明のホログラフィック記録媒体は、請求項1記載によれば、基板表面に形成されたフォーマット信号上に反射層、選択層、ホログラフィック記録層が順次積層され、レーザ光を前記ホログラフィック記録層上方から照射して、前記ホログラフィック記録層を透過した透過光と前記ホログラフィック記録層を透過し、前記選択層で反射された反射光との干渉により記録が行われるホログラフィック記録媒体において、
前記ホログラフィック記録層は、400〜500nmの波長範囲のレーザ光のみに感度を有する材料からなり、前記選択層は、前記ホログラフィック記録層を透過したレーザ光のうち、400〜500nmの波長のみを反射させる材料からなり、前記反射層は、前記ホログラフィック記録層及び前記選択層を透過したレーザ光のうち、前記フォーマット信号を検出する650nm以上の波長を反射させる材料からなることにより、記録光とその反射光とによる干渉縞を情報として記録でき、記録時に参照光を必要としないので、ホログラフィック記録媒体の記録光が照射しない部分には参照光を照射しないので、参照光によってホログラフィック記録媒体が不要な感光を起こすことがなく、再生信号のS/Nの高くでき、同一記録エリアに多重の情報を記録可能なので、情報の記録密度及び記録容量の大きいホログラフィック記録媒体を提供できるという効果がある。
また、本発明のホログラフィック記録媒体の記録装置は、請求項2記載によれば、少なくとも基板上に光源から出射される記録用レーザ光を反射する選択層、前記記録用レーザ光のみに感度を有するホログラフィック記録層が順次形成されたホログラフィック記録媒体を用いて前記ホログラフィック記録層に記録を行うホログラフィック記録媒体の記録装置において、前記記録用レーザ光を情報信号に応じて光変調する空間光変調器と、前記空間光変調器で光変調された記録用レーザ光の光軸に対して所定の角度で傾斜して設けられた前記ホログラフィック記録媒体と、からなり、前記ホログラフィック記録媒体の前記ホログラフィック記録層を透過した前記記録用レーザ光の透過光と前記ホログラフィック記録媒体の選択層で反射された反射光との干渉により前記ホログラフィック記録層に記録を行うことにより、記録時には参照光を必要としないので、ホログラフィック記録媒体の記録光が照射しない部分には参照光を照射しないので、参照光によってホログラフィック記録媒体が不要な感光を起こすことがなく、再生信号のS/Nの高くでき、同一記録エリアに多重の情報を記録可能なので、情報の記録密度及び記録容量の大きいホログラフィック記録再生装置を提供できるという効果がある。
以下、本発明の実施の形態につき、好ましい実施例により、図面を参照して説明する。
まず、本発明のホログラフィック記録媒体及びホログラフィック記録媒体の記録再生装置の基本構成について説明する。
図1は、本発明に係るホログラフィック記録媒体の基本構成を示す図である。
同図に示すように、ホログラフィック記録媒体10は、最低限の構成として、ホログラフィック記録層1と、情報記録を行うための記録光を反射しかつ記録された情報を再生するための再生光を透過する選択層2とからなる。
ホログラフィック記録層1は、記録光とその反射光とが干渉して発生する干渉縞を記録しうるものである。ホログラフィック記録層1としては、光が照射されると透過率、反射率、屈折率等の光学的特性が変化するものであって、フォトポリマー系、フォトリフラクティブ結晶系、カルコゲナイドガラス系等の材料から構成される。干渉縞としては、明暗の分布から成る振幅変調型干渉縞及び屈折率の変化から成る位相変調型干渉縞がある。上記の構成材料において、記録光で感光し、再生光では感光しない材料であると一層好ましい。
選択層2は、情報記録を行うための記録光を反射し、記録された情報を再生するための再生光及び後述するフォーマット信号を検出するためのサーボ用の光とを透過する機能を有する。選択層2としては、波長選択性を有する反射層が用いられる。このような機能を有する反射層は、ダイクロイックフィルタもしくはダイクロイックミラーと呼ばれ、屈折率の異なる誘電体物質を交互に積層させることにより得られる。このとき、各層の厚さ、層数は所定の値にすることにより所望の特性を得ることができる。屈折率が大きい材料としては、例えばNb25、Ta25、ZnS−SiO2、Si34、TiO2などを、屈折率が小さい材料としては、例えばMgF2、SiO2などを用いる。
ここで、選択層2は、R(λW)≧90%、T(λR)≧90%、T(λS)≧90%なる光学特性を有している。但し、Rは反射率を、Tは透過率を示す。また、λW、λR、λSは記録光、再生光、サーボ用の光の波長をそれぞれ示す。なお、λW<λR<λSとする。これは、光のエネルギーは短波長ほど高いため、ホログラフィック記録層1を感光(記録)する波長(記録光)は、感光しない波長(再生光、サーボ用の光)より短くなるためである。
選択層2の構成例の(ケース1)として、高屈折率層Hの材料としてZnS−SiO2(屈折率n=2.15)を、低屈折率Lの材料としてMgF2、(n=1.36)を用い、膜厚が58nmである高屈折率層Hと、膜厚が92nmである低屈折率層Lを、交互に4層づつ積層し、その上に膜厚が58nmである高屈折率層Hを形成し、全部で9層からなる選択層2がある。この(ケース1)の選択層2においては、記録光については波長λWが440nm〜570nmの範囲で、再生光については波長λRが640nm〜670nmの範囲で、サーボ用の光については波長λSが740nm〜780nmの範囲で、上述のR(λW)≧90%、T(λR)≧90%、T(λS)≧90%の光学特性を示す。
さらに、選択層2の構成例の(ケース2)として、高屈折率層Hの材料としてZnS−SiO2(屈折率n=2.15)を、低屈折率Lの材料としてMgF2、(n=1.36)を用い、膜厚が47nmである高屈折率層Hと、膜厚が74nmである低屈折率層Lを、交互に4層づつ積層し、その上に膜厚が47nmである高屈折率層Hを形成し、全部で9層からなる選択層2がある。この(ケース2)の選択層2においては、記録光については波長λWが360nm〜460nmの範囲で、再生光については波長λRが520nm〜540nmの範囲で、サーボ用の光については波長λSが680nm〜715nmの範囲で、上述のR(λW)≧90%、T(λR)≧90%、T(λS)≧90%の光学特性を示す。
以上、ケース1及びケース2の選択層2を構成する各層の膜厚については、垂直入射の場合について示してあるが、垂直から角度θだけずらして入射する場合は、上記の膜厚に1/cosθを乗じた値を膜厚とすればよいが、θが10度以内であれば、誤差が小さいので、上記のケース1及びケース2に示した値を用いて十分である。
高屈折率膜、低屈折率膜及びその層数については、上記光学条件に合うようにほかの材料を適宜選択することが可能である。
例えば、高屈折率膜と低屈折率膜の屈折率の差を小さくすると、反射帯域を小さくできる。また層数を増やすことで、反射率Rおよび透過率Tを大きくすることができる。また適応波長は各層の膜厚を変えることによって制御でき、膜厚を厚くする程、適応波長は長波長側にシフトする。
図2は、本発明に係るホログラフィック記録媒体の第1の構成例を示す図である。
同図に示すように、第1の構成例のホログラフィック記録媒体10Aは、基板5とその上に順次形成された反射層4、分離層3、選択層2及びホログラフィック記録層1とから構成される。選択層2及びホログラフィック記録層1については、上述したものが用いられる。
基板5は、一方の面上に設ける各層を支持する役割を有するとともに、その面上に凹凸形状から成るフォーマット信号(信号ピット)が予め形成されたものである。基板5を構成する材料としては、ガラス系、ポリカーボネートに代表されるプラスチック系、もしくはNi系、Ag系、Al系などの合金から成る金属系の材料を用いることもできる。
反射層4は、フォーマット信号を検出するためのサーボ用の光を反射させるためのものであり、特に、基板5がガラスやプラスチックなどの反射率が低い材料より構成される場合に設けるものである。基板5が例えば金属系の材料から構成されていて、反射率が十分高い場合には省略することもできる。反射層4の材料としては、例えばAg系もしくはAl系の合金を用いる。もしくは、上述の選択層2と同様に、屈折率の異なる誘電体物質を交互に積層させた波長選択性の反射膜より構成すると、反射率が高くなって好適である。ただし、この場合には、サーボ用の光が反射するような構成になるようにする。いずれにしても、反射層4の表面は基板の凹凸が反映されたものとする。
なお、サーボ用の光は、ホログラフィック記録層1側から入射する。サーボ用の光は、ホログラフィック記録層1に与える影響の少ない波長の長い光である。
分離層3は、サーボ用の光を透過し、ホログラフィック記録再生光を反射し、かつフォーマット信号の凹凸の影響を受けない程度に表面が平滑な層である。このような機能を有する層であれば、単独で分離層3とすることができる。
ここで、図4に、本発明に係るホログラフィック記録媒体における、選択層の反射率と透過率及び、ホログラフィック記録層の光感度の光波長依存性のグラフの一例を示す。後述するが、記録光(例えば、波長500nmである)と、再生光(例えば、波長650nmである)とは異なるが、選択層2は記録光を反射し、再生光を透過する。記録光は再生光より波長が短いので(高エネルギーである)、ホログラフィック記録層1は記録光に対し感度は高い(感光する)が、再生光に対しては感度は低い(感光し難い)。
次に、図3に示す、本発明に係るホログラフィック記録媒体の第2の構成例を説明する。
第2の構成例のホログラフィック記録媒体10Bは、ホログラフィック記録媒体10Aにおいて、分離層3に代えて分離層3Aとした以外は、ホログラフィック記録媒体10Aと同様に構成したものである。
ここで、分離層3Aは、反射層4側に形成された平滑層7と、選択層2側に形成された第2選択層6の複合層である。第2選択層6と接する平滑層7の表面は平滑になるように構成されている。第2選択層6は、サーボ用の光を透過し、ホログラフィック記録再生用の光(記録光、再生光)を反射する。第2選択層6は、R(λR)≧90%、T(λS)≧90%なる光学特性を有している。
平滑層7としては、例えば初期状態では流動性があり、加熱、光や紫外線照射、或いは酸化することによって硬化し、かつ硬化後において、サーボ用の光をほぼ透過する光学特性を有する樹脂系材料を用いる。この平滑層7を形成するには、流動性を有する間に反射層4上に塗布し、塗布面を上にして水平に所定の時間保ちつつ硬化させる。つまり樹脂の持つ流動的な性質と重力との作用を利用して平滑な表面を得る。平滑層7としての必要な厚さとしては、樹脂が硬化した後の表面が、ホログラフィック記録を行うのに支障のない程度に平坦になる範囲で選べば良い。平滑層7が薄すぎると、平滑層7の反射層4側の反対側の面には、フォーマット信号の凹凸が残ってしまい、ホログラフィック記録の際に、フォーマット信号の凹凸が影響して、乱反射、散乱などを起こし、適正なホログラフィック記録が為されない。つまり、平滑層7の必要な厚さは、樹脂を塗布してから硬化中の流動度(粘度)とフォーマット信号の凹凸の深さとの兼ね合いで決定されるが、凹凸の溝を基準にして凹凸の深さのおよそ2倍以上であることが望ましい。またそのときの樹脂の粘度は、1cPから10000cPの範囲であることが望ましい。
第2選択層6は上述した選択層2に対応して、構成される。
第2選択層6としては、サーボ用の光とホログラフィック記録再生光との波長を異ならせ、サーボ用の光(波長は最も長く、例えば750nmである)をほぼ透過し、ホログラム再生光(波長は記録光より長くサーボ光より短い、例えば650nmである)を反射するダイクロイックミラーの機能を持った材料が用いられる。このような機能を有するものとしては、選択層2と同様、屈折率の異なる誘電体物質を交互に積層して構成したものがある。
選択層2の構成例の(ケース1)に対応する、第2選択層6の構成例の(ケース1)は以下のようになる。
高屈折率層Hの材料としてZnS−SiO2を、低屈折率Lの材料としてMgF2を用い、膜厚が67nmである高屈折率層Hと、膜厚が105nmである低屈折率層Lを、交互に4層づつ積層し、その上に膜厚が67nmである高屈折率層Hを形成し、全部で9層からなる第2選択層6とする。この(ケース1)の第2選択層6においては、再生光については波長λRが640nm〜670nmの範囲で、サーボ用の光については波長λSが740nm〜780nmの範囲で、上述のR(λR)≧90%、T(λS)≧90%の光学特性を示す。
さらに、選択層2の構成例の(ケース2)に対応する、第2選択層6の構成例の(ケース2)は以下のようになる。
高屈折率層Hの材料としてZnS−SiO2を、低屈折率Lの材料としてMgF2を用い、膜厚が61nmである高屈折率層Hと、膜厚が96nmである低屈折率層Lを、交互に4層づつ積層し、その上に膜厚が61nmである高屈折率層Hを形成し、全部で9層からなる第2選択層6とする。この(ケース2)の第2選択層6においては、再生光については波長λRが520nm〜540nmの範囲で、サーボ用の光については波長λSが680nm〜715nmの範囲で、上述のR(λR)≧90%、T(λS)≧90%の光学特性を示す。
以上、(ケース1)及び(ケース2)の第2選択層6を構成する各層の膜厚については、垂直入射の場合について示してあるが、垂直から角度θだけずらして入射する場合は、上記の膜厚に1/cosθを乗じた値を膜厚とすればよいが、θが10度以内であれば、誤差が小さいので、上記のケース1及びケース2に示した値を用いて十分である。
高屈折率膜、低屈折率膜及びその層数については、上記光学条件に合うようにほかの材料を適宜選択することが可能である。
図5に、本発明に係るホログラフィック記録媒体における、第2選択層の反射率と透過率の光波長依存性を示すグラフの一例を示す。
同図に示すように、第2選択層6は記録光(図示しない。再生光より波長は短い)、再生光を反射し、サーボ用の光を透過する。
以上は、ホログラフィック記録媒体に必要な構成要素であるが、基板5もしくは上記の各層表面に反射防止層を設けると、記録再生時に余計な反射光の影響を防止するのに有効である。更にホログラフィック記録層1を保護するための保護層を設けてもよい。
このように、本発明のホログラフィック記録媒体10A、10Bは、フォーマット信号8に対応する凹凸の形成された基板5上に反射層4、分離層3、選択層2、ホログラフィック記録層1を順次形成してあり、ホログラフィック記録層1は記録光を透過するものであり、選択層2は記録光を反射し再生光を透過するものであり、分離層3は選択層2側の面が入射する光を乱反射しない程度に平坦であり、再生光を反射しサーボ用の光を透過するものであり、記録光、再生光、サーボ用の光の順にその波長が長くなっているので、後述するように、記録光とその反射光とで、ホログラフィック記録層1に干渉縞を記録するが、記録光は選択層2で反射されるのでフォーマット信号8の凹凸に影響されず記録が可能であり、再生光によってはホログラフィック記録層1が感光することが少なくダメージを受けず、また再生光は分離層3で反射するので、フォーマット信号8の凹凸に影響されず、再生が可能であり、さらに、基板5の全面に反射基板5にフォーマット信号8の凹凸が形成されていても、ここに到達するのはサーボ用の光のみなので、ファーマット信号8をいずれの位置に配置しても検出可能であるので、信号を記録する領域とファーマット信号8の領域とを分ける必要がなく、記録領域を大きくとれ、記録密度、記録容量を大きくできる。
次に、上述のホログラフィック記録媒体を用いたホログラフィック記録媒体の記録再生装置について説明する。
図6は、本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録再生装置を示す構成図である。
同図に示すように、本発明に係わるホログラフィック記録再生装置20は、光源11と、光源11から放射される放射光(ここでは記録光となる)11aの光軸16A上に順次、所定の間隔で配置されたコリメータレンズ(以下、CLともいう)12、空間光変調器13、集光器15、ホログラフィック記録媒体10A(または、10B)を所定位置に配置するためのステージ(図示しない)と、光軸16Aとは所定角度方向に配置された再生時に記録エリア18からの回折光を検出する受光アレイとより構成される。
光源11は、放射光(以下、記録光ともいう)11aと放射光(以下、再生光ともいう)21a(図9参照)の光源であり、異なる波長の光を発するレーザを使用する。上述したように、記録光は、再生光より短波長である。レーザの種類としては半導体レーザ(以下、単にLD(レーザダイオード)ともいう)、ガスレーザ、若しくはYAGレーザやTiサファイア・レーザに代表されるパルス発振レーザを用いることもできるが、記録再生装置の小型化の観点から、LDを用いるのが好ましい。特に、1つのデバイス内に2つの異なる波長のレーザを有する2波長レーザや、それらを光学系に組み込んだ波長ピックアップを用いると一層好ましい。
ホログラフィック記録媒体10Aにおける選択層2は、上述のように、記録光11aでは反射し、再生光21aでは透過するような反射率と透過率の波長依存性を有する層とし、ホログラフィック記録層1としては、記録光11aでは感光し、再生光21aでは感光しない材料を使用する。
ホログラフィック記録媒体10Aは、図示しないステージに配置されている。ステージを調整して、ホログラフィック記録媒体10Aと記録光11a(記録光束16と光軸は一致する)との相対位置、角度を記録すべき所定の位置、角度に設定してある。すなわち、ホログラフィック記録媒体10Aの面の法線と記録光束16の光軸16Aとの角度、及び記録光束16がホログラフィック記録媒体10Aに照射されるべき位置(記録エリア18のどの部分とするか)を設定する。
このステージ(配置を設定する手段方法)としては、ホログラフィック記録媒体10Aを図示しないXYステージ上に装着して所定の(x,y)座標に移動させる(図中、紙面の上下、及び紙面から紙背方向への移動を行う)方法や、図示しない回転ステージ上に装着して所定の角度に回転させる(光軸16Aに対してホログラフィック媒体を所定の角度に傾斜させる)方法や、図示しないモータと同軸の回転部分にホログラフィック記録媒体10Aを回転軸に対して媒体面の法線が一致するように装着して回転させる方法や、記録光束16をホログラフィック記録媒体10Aの所定の場所に移動させる方法、及びこれらを組み合わせて移動させる方法を用いる。
光源11から放射された記録光11aは、コリメータレンズ12により並行光にされて、空間光変調器13に入射する。なお、必要に応じて、空間光変調器13の所定のエリアに所定の角度で記録光11aが照射するように、コリメータレンズ12を用いて記録光11aのビームの大きさ、開き具合を調整する。
空間光変調器13には、記録すべき1ページ分の電気信号である記録信号(ページデータ)14が供給されており、空間光変調器13は、電気信号として入力された記録信号14で記録光11aを変調するためのもので、記録されるべき1ページ分のディジタル情報が電気信号として空間光変調器13に入力されると、空間光変調器13を通過(又は反射)した記録光11aは、入力信号に応じた2次元の明暗パターンから成る信号光(記録光束16)に変換される(図6においては、分かり易さのため、1次元方向のみ図示してある)。なお、空間光変調器13には、大別して液晶素子などを用いた透過型と、マイクロミラーなどを用いた反射型(DMD)とがあり、どちらも使用可能であるが、図6には、透過型の例を示してある。
空間光変調器13より出射された記録光束16を、ホログラフィック記録媒体10Aのホログラフィック記録層1の側から照射する。このとき、空間光変調器13から出射された記録光束16をホログラフィック記録媒体10Aに直接照射しても良いが、必要に応じて、集光器15を用いて、照射する照射エリア18を調整する。
ところで、集光器15としては、記録光束16を、ホログラフィック記録媒体10Aの所望の位置で所望のビーム径になるように集光させる機能を有するものであればよく、凸レンズ、フレネルレンズ、ホログラムレンズ、あるいは反射型の凹面鏡などを用いることができる。
ただし、集光するビーム径が、集光前の明暗部分が分布した状態をホログラフィック記録媒体10Aの位置で保てる大きさになるように集光器15を選択、配置することが必要である。ビーム径を小さくし過ぎると、空間光変調器13による回折の影響が大きくなったり、記録光束16がフーリエ変換されたりして、元の明暗の状態がくずれてしまうので好ましくない。
記録光束16のビーム径をどこまで小さくできるかは、集光器15に入射する直前の記録光束16における明暗パターンの最小幅dと、集光器15の焦点位置Fからホログラフィック記録媒体10Aホログラフィック記録層1の一部(記録エリア18)までの距離aとの関係で決まる。
これを、図7に示す。図7は、本発明に係るホログラフィック記録方法における集光器とホログラフィック記録媒体との位置関係を説明するための図である。
同図において、
a > f・λ/d (1)
の関係を満たすような、集光器15の焦点位置Fから集光器15側に距離a離れた位置に、ホログラフィック記録媒体10Aのホログラフィック記録層1の厚み方向の一部(ホログラフィック記録層1の厚さ方向の所定の位置)がかかるように配置する。ここで、fは集光器15からその焦点位置Fまでの距離、λは記録光束光16の波長である。
式(1)書き直すと、
d > λ・f/a (2)
となり、これは記録光束16が回折される影響を少なくする条件も含んでいる。距離aである位置は、焦点位置Fから集光器15側と集光器15の反対側の2ヶ所存在するが、これはどちらであっても良い。
集光器15は、多重記録を行う場合にも重要な役割を果たす。つまり集光器15を用いることによって、ホログラフィック記録媒体10Aの位置での記録光束16が非平行光となり、記録の多重化が可能となる。これが平行光であると多重記録が行えない。つまり、あるページデータを記録した後、スポット径以下の範囲でホログラフィック記録媒体10Aの位置をずらせて次のページデータを記録する場合、平行光だと前ページと重なりあった部分が同じ干渉条件となってしまい、再生時にページの分離ができなくなる。これが非平行光であると重なりあった部分の干渉条件が異なるため、それぞれ個別の干渉縞が形成され、再生時に分離が可能になる。
さらに、このとき、後述するように、ホログラフィック記録媒体10A面と記録光束16の光軸16Aとのなす角を、直角からずらした配置にすることにより、再生時に回折光(再生光)と反射光とを分離しやすくなり、良好な再生が可能となる。
ホログラフィック記録層1に記録光束16を照射する時間は、ホログラフィック記録層1の感度、ダイナミックレンジ、記録光束16のパワー、記録の多重度を考慮して定める。
空間光変調器13からの記録光束16は、記録信号14に応じて明るい部分と暗い部分とが分布した(例えば明るい部分が「l」、暗い部分が「0」)記録光束16に変換され、ホログラフィック記録媒体10Aに達する。ホログラフィック記録媒体10Aにおいては、記録光束16はホログラフィック記録層1を透過し、選択層2において反射し、再びホログラフィック記録層1に達する。そしてホログラフィック記録層の内部には、「1」の部分にのみ、入射光(記録光束16)と反射光(同じ記録光束16の反射光)による干渉光が照射され、干渉縞としてホログラフィック記録層1に記録される。このとき、ホログラフィック記録層1において、入射光束を構成するそれぞれのビームが通過する領域の少なくとも一部分を再び反射光が通過することが必要で、これによって媒体内で入射光と反射光が干渉を起こし、媒体内に干渉縞が記録されることになる。
以上のホログラフィック記録層における記録の様子を、図8に示す。
図8は、本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録再生装置における記録媒体への記録を説明するための図である。
同図には、理解の容易のために、1次元の記録光束16しか示していないが、記録光束16は、実際には2次元である。記録光束16は、ページデータのうち「1」を示す記録光束16a,16b,16cから構成される。ページデータのうち「0」を示すものは、記録光が空間光変調器13で遮断されるので、光がない。記録光束16は、ホログラフィック記録媒体10Aに対して所定の角度を有して入射するので、各記録光束16a,16b,16cはホログラフィック記録層1に入射した後、それぞれ選択層2で反射され、記録光束16a,16b,16cとはそれぞれ異なる方向への反射光17a,17b,17cとして出射される。このとき、記録光束16a,16b,16cと反射光17a,17b,17cとはそれぞれ干渉して、ホログラフィック記録層1の記録エリア18に干渉縞18a,18b,18cを形成し、情報が記録される。
一方、「0」の部分には全く光が照射されないので、その部分のホログラフィック記録層1は感光することなく保持される。すなわち、従来のホログラフィック記録方法のように、参照光によってホログラフィック記録層1が感光してしまう危険性がなく、従って、後述するが、高いS/Nで再生可能であり、また記録多重度も多くすることができ、記録容量を増大することができる。
以上のように、ホログラフィック記録媒体10Aに信号(情報)を干渉縞として記録していく。
次に、記録された信号を再生する方法を、図9を用いて説明する。
図9は、本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録再生装置における再生方法を説明するための図である。
同図に示すように、再生時には、上述したホログラフィック記録再生装置20の動作が記録時とは、異なってくる。
すなわち、光源11からは、記録光11aより波長の長い所定波長の放射光(再生光になる。再生光26とも一致する)21aが出射される。ここで、再生光21aの光軸26aは光軸16a(図6)と一致する。
ホログラフィック記録媒体10Aと再生光21aとの相対位置関係は、図示しないステージにより記録時と同一に調整されている。
光源11から出射した放射光21aを、ホログラフィック記録媒体10Aに照射する。ただし、このとき、記録過程では使用した空間光変調器13は、コリメータレンズ12と集光器15との間に挿入しないか、挿入する場合は、入射する光が全て透過(反射型の場合は全て反射)する再生光26になるよう記録信号14を入力する。
また、ホログラフィック記録媒体10Aのホログラフィック記録層1の記録エリア18に形成された干渉縞18a,18b,18cからの回折光が正しく得られるよう、コリメータレンズ12、集光器15を選択、配置してある。具体的には、上述した、記録光束16におけるそれぞれのビーム(記録光束16a,16b,16c)に対して、
λw・cosθr=λr・cosθw (3)
の関係を満たすようにする。ここで、λw、λrはそれぞれ、上述した記録光束16、再生光26の波長、θw、θrはそれぞれ、記録光束16、再生光26のホログラフィック記録媒体10Aの媒体面への入射角である。つまり、記録光16と再生光26とで波長が異なっていても、(3)式を満たすことで、ブラッグの条件が満たされるので、記録された干渉縞18a,18b,18cの記録パターンを回折光として再生できる。
再生光26としてホログラフィック記録層1を感光させないものを選ぶ(記録光より長い波長の光)と、照射する再生光26のパワーは、再生に都合がよい値に比較的大きな値を選ぶことができる。
このように、ホログラフィック記録層1にはすでに、記録光16a,16b,16cに応じた干渉縞18a,18b,18cが形成されているので、ホログラフィック記録層1を通過した再生光26は、干渉縞18a,18b,18cが形成された部分でのみ回折光(再生光束)27を発生する。つまりここで得られる再生光束27は、記録過程における記録光束16と同じパターンとして再生された光束である。
この再生の様子を、図10に示す。
図10は、本発明に係るホログラフィック記録再生装置における記録媒体からの再生を説明するための図である。
同図においては、理解の容易のため、1次元の再生光束27しか示していないが、再生光束27は、実際には2次元である。再生光26がホログラフィック記録媒体10Aの記録エリア18に対して所定の角度で照射されると、記録エリア18に「1」の情報に対応して形成されている干渉縞18a,18b,18cから回折光27a,27b,27cがそれぞれ得られる。
そして、図9に示すように、得られた再生光束(回折光)27をCCDやC−MOSセンサといった受光アレイ28に導いて検出し、記録信号14(図6参照)と同じ電気信号として再生する。ここで、干渉縞の形成されていないホログラフィック記録層1の部分では再生光26は透過するので、回折光27を効率良く検出することができ、高いS/Nの再生信号を得ることができる。
また、上述のように、記録の際に、ホログラフィック記録媒体10Aの媒体面と記録光16の光軸16Aとの成す角を、直角からずらしてあるので、再生の際に、回折光27が入射側の光学系に戻ることがなく、再生するのに都合が良い。
以上のように、記録された信号を再生する。
このように本発明のホログラフィック記録媒体の記録装置(及び再生装置)では、記録時に参照光を照射しないようにしてあるので、ホログラフィック記録媒体の記録光が照射しない部分は不要な感光を起こすことがなく、再生時には、ホログラフィック記録媒体からの回折光のみを効率良く検出できるので、再生信号のS/Nを高くすることができ、エラーレートを低く抑えることができ、参照光だけでは感光しないような特性のホログラフィック記録媒体及び記録再生光学系が要求されることがなく、記録再生システム設計、特に記録パワー、多重度、記録時間といった記録におけるスケジューリングの設計マージンを大きく取れる。
さらに、記録時に参照光を用いないので、従来のホログラフィック記録のように、同一光源から発射した光を、偏光ビームスプリッタやミラーなどの光学部品を配置して記録光と参照光とに分離する必要がなくなるので、記録のための光量損失が少なく、効率がよい。このように、従来必要であった多数の光学部品が不要となることによって、ホログラフィック記録再生装置を簡素化、単純化、小型化できる。
更に、本発明のホログラフィック記録媒体10A、10Bを用いれば、フォーマット信号8が形成されたエリアであっても、記録光は選択層2で反射し、再生光は分離層3、3Aで反射するので、フォーマット信号の凹凸の影響を受けることはなく、ホログラフィック記録するための記録エリアを設けることができ、大容量化が可能である。また、フォーマット信号も記録エリアを気にすることなく、ホログラフィック記録媒体全面に設けることも可能であり、高精度で安定したサーボが可能となる。
すなわち、
(1)光学系がシンプルで、装置を構成する部品点数を大幅に削減できる。
(2)光源から発生する光の損失が少ない。
(3)記録再生時の振動に対して強い。
(4)記録再生システム設計、特に記録におけるスケジューリングの設計マージンを大きく取れる。
(5)装置を小型・軽量にできる。
(6)低コスト化できる。
(7)媒体内で記録エリアが大きくとれ、記録密度、容量を大きくできる。
(8)高精度で安定したサーボが実現できる。
本実施例1においては、ホログラフィック記録媒体として、図11に示す構成のホログラフィック記録媒体10Cを用いた。
同図に示すように、ホログラフィック記録媒体10Cは、基板5A上に、順次、選択層2及びホログラフィック記録層1を形成し、その上を、基板9で覆ったものである。
基板5Aとしては、反射防止膜付きの所定サイズのガラスを使用する。
基板5A上に選択層2として、次の構造の多層膜を形成した。まず、屈折率が2.15であり、厚さ58nmのZnS−SiO2を形成し、次いで屈折率が1.36であり、厚さが92nmであるMgF2を形成する。次いで、厚さ58nmのZnS−SiO2を形成し、その上に、厚さが92nmであるMgF2を形成し、その上に、同様の膜を2回繰り返して形成した後、最後に厚さ58nmのZnS−SiO2を形成し、ZnS−SiO2とMgF2の合計9層から成る積層構造とする。
この選択層2における反射率と透過率の波長依存性を図12に示す。図12の(a)には反射率を、図12の(b)には透過率をそれぞれ示す。これより、波長500nm(記録光)における反射率は96.7%で、波長650nm(再生光)における透過率は91.8%であり、500nmの波長の光を反射し、650nmの波長の光を透過する選択層2が得られる。
その上にホログラフィック記録層1として、500nm付近の波長の光が照射されると屈折率が変化する、厚さ200μmのフォトポリマーを形成する。なお、この材料は、形成時はモノマー状態で、500nm付近の波長の光が照射されるとポリマー化し、屈折率が変化する。感度としては、200mJ/cm2の露光量に対してほぼポリマー化が完了するものである。またこの材料は650nm以上の波長の光では感光しない。
次に、ホログラフィック記録層1上に、基板5Aと同様の基板9Aをかぶせて、ホログラフィック記録媒体10Cを得る。
次に、以下のように、ホログラフィック記録媒体10Cに情報を記録し再生した。
記録再生装置としては、上述のホログラフィック記録再生装置20(図6参照)と同様の構成のものを使用した。
光源11としては、波長500nmの記録光と、波長650nmの再生光を放射する2波長LDを使用する。
まず、図6に示したように、上述したステージ(図示しない)上に装着したホログラフィック記録媒体10Cを、記録光束16のビームが記録すべき所定の位置にくるようにステージを設定する。このとき、記録光束16の光軸16Aとホログラフィック記録媒体10C媒体面の法線とのなす角を−7.5度とする。
次に、透過型の空間光変調器13に記録すべき1ページ分の記録信号(電気信号)14を入力し、また記録用光源11からの放射光11aを空間光変調器13に入射させる。このとき、空間光変調器13の所定のエリアに平行光が照射するよう、コリメータレンズ12の位置調整をする。空間光変調器13から記録光束16が出射されるが、記録光束16における明暗幅の最小単位(図7におけるd)が10μmとなるように、空間光変調器13のピクセル、電気信号の組み合わせを選ぶ。
次に、空間光変調器13から出射された記録光束16を、ホログラフィック記録媒体10Cのホログラフィック記録層1の側から照射させる。このとき、集光器15(再生の場合も同様である)としてf=100mmの凸レンズを用いる。そして、ホログラフィック記録媒体10Cの記録ポイントからこのレンズの焦点Fまでの距離(図7におけるa)を10mmとする。
この結果、
f・λ/d=100×500×10-9/(10×10-6)=5mm
となり、上述の(1)式及び(2)式を満たしているので、空間光変調器13による回折の影響が大きくなったり、記録光束16がフーリエ変換されたりして、元の明暗の状態がくずれてしまうことはなく、空間光変調器13で得られた記録信号14に対応した明暗のパターンがそのままホログラフィック記録媒体10Cの媒体面に投影される。
ホログラフィック記録層1での記録光束16のパワー密度は50mW/cm2とし、ホログラフィック記録層1に記録光束16を照射するさせる時間は、100msecとする。
これによって、ホログラフィック記録層1内で入射光(記録光束16)とその反射光が干渉を起こし、ホログラフィック記録層1内に干渉縞が記録される。
以上、3回繰り返し、ホログラフィック記録層1に記録していく。ただし、ホログラフィック記録媒体10Cの媒体面に記録光束16を照射する位置は変更せず、記録光束16の光軸16Aと媒体面の法線とのなす角を、2回目は−2.5度、3回目は+5度とした。これによって、ホログラフィック記録層1の同一スポット(エリア)に異なるページデータが3ページ分記録される。
このとき、1回あたりのホログラフィック記録層1への露光量は、50×100/1000=5mJ/cm2であり、3回分合計しても15mJ/cm2であり、ポリマー化が完了する200mJ/cm2よりもはるかに小さい。
次に、記録された信号の再生について説明する。
まず、図9に示したように、図示しないステージ上に装着されたホログラフィック記録媒体10Cを、再生光26がホログラフィック記録層1の記録がなされた所定の位置にくるようにステージを設定する。このとき、再生光26の光軸26Aとホログラフィック記録媒体10Cの媒体面の法線とのなす角を一回目の記録時と同じ−7.5度とする。
次に、光源11から出射する放射光21a(再生光26である)を、ホログラフィック記録媒体10Cに照射する。ここで、再生光26は記録光16とは異なる波長を有する(波長650nm)ので、ホログラフィック記録層1に記録された干渉縞から回折光27が得られるよう、コリメータレンズ22、集光器25を選択して配置してある。
具体的には、記録光束16におけるそれぞれのビームに対応する媒体位置に対して、(3)式を満たすように、
cosθr=(λr/λw)・cosθw=1.3・cosθw (4)
の関係を満たす光学系を組む。
再生光26の波長では、ホログラフィック記録層1は感光しない(図12参照)ので、再生光26のパワーとして、10mW/cm2という比較的大きな値を選ぶ。
ホログラフィック記録層1を通過した再生光26は、干渉縞が形成された部分でのみ回折して回折光が発生する。つまり、ここで得られた再生光束(回折光)27は、記録過程における記録光束16と同じパターンとして再生された光束である。
再生された回折光27をC−MOSセンサから成る受光アレイ28に導いて検出し、記録信号14と同じ電気信号として再生する。ここで、干渉縞の無い部分では、再生光16は透過するので、ホログラフィック記録媒体10Cの媒体面からの反射光の影響は比較的小さく、回折光27を比較的効率良く検出することができ、高いS/Nの再生信号29が得られる。
以上、3回繰り返して、ホログラフィック記録層1に記録した信号を再生していく。ただし、ホログラフィック記録媒体10Cの媒体面に再生光26を照射する位置は変更せず、再生光26の光軸26Aとホログラフィック記録媒体10Cの媒体面の法線とのなす角を、記録時と同様に、2回目は−2.5度、3回目は+5度とする。これによって、ホログラフィック記録層1の同一スポット(記録エリア)に記録されている異なる3ページ分のページデータが再生される。
このとき、3ページ分の再生信号29のS/Nは、後述する比較例に対する相対値で、+12dBである。12dBの内訳は、再生光26のパワーを10倍にできることで+9dB、記録の際に参照光を照射しないことによる貢献が+3dBである。
また、再生光26ではホログラフィック記録層1は感光しないため、再生光26を1時間照射しても再生信号29のS/Nの劣化はない。
本実施例2においては、ホログラフィック記録媒体として、図13に示す構成のホログラフィック記録媒体10Dを用いた。
同図に示すように、ホログラフィック記録媒体10Dは、基板5上の予め凹凸形状のフォーマット信号8が形成された面上に、順次形成した反射層4、分離層3A、選択層2及びホログラフィック記録層1と、その上を覆った基板9より構成される。
基板5には、深さ10nmからから100nmの凹凸から成るフォーマット信号8が全面施された円盤状のポリカーボネートを使用する。
基板5のフォーマット信号8の形成された面上に、サーボ信号を読み取るためのAlから成る反射層4を形成する。
その上に、平滑層7として、厚さ1μmである紫外線硬化樹脂層を設け、紫外線を照射して硬化させる。平滑層7の厚みはフォーマット信号の凹凸に比べて十分厚いので、硬化後、フォーマット信号の凹凸の影響のない平滑な表面が得られる。
平滑層7の上に、第2選択層6を形成する。第2選択層6として、次の構造の多層膜を形成した。まず、屈折率が2.15であり、厚さ67nmのZnS−SiO2を形成し、次いで屈折率が1.36であり、厚さが105nmであるMgF2を形成する。次いで、厚さ67nmのZnS−SiO2を形成し、その上に、厚さが105nmであるMgF2を形成し、その上に、同様の膜を2回繰り返して形成した後、最後に厚さ67nmのZnS−SiO2を形成し、ZnS−SiO2とMgF2の合計9層から成る積層構造とする。
この第2選択層6における反射率と透過率の波長依存性を図14に示す。図14の(a)には反射率を、図14の(b)には透過率をそれぞれ示してある。同図に示すように、第2選択層6においては、波長650nmにおける反射率は91.8%であり、波長750nmにおける透過率は97.88%である。すなわち、第2選択層6は、650nmの波長の光を反射し、750nmの波長の光を透過する。
この第2選択層6上に、選択層2として、実施例1の選択層2と同様の選択層を設ける。上述のように、選択層2は、500nmの波長の光を反射し、650nmの波長の光を透過する。
選択層2の上に、実施例1におけると同様のホログラフィック記録層1を設け、最後にフォーマット信号の無い円盤状のポリカーボネートからなる基板9をかぶせて、ホログラフィック記録媒体10Dを得る。
次に、以下のように、ホログラフィック記録媒体10Dに情報を記録し再生した。
記録再生装置としては、上述のホログラフィック記録装置20(図6参照、再生の説明では図9参照)と同様の構成のものを使用した。
光源11としては、波長500nmの記録光と、波長650nmの再生光を放射する2波長LDを使用する。更にフォーマット信号8を検出するためのサーボ用の光の光源として波長750nmの光を放射するLDを使用する。
まず、ステージとして図示しないスピンドルモータを用い、このスピンドルモータに装着されたホログラフィック記録媒体10Dを、フォーマット信号8を参照しながら記録光束16が記録すべき所定の位置にくるように光学系、モータを設定する。
それ以外は、実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体10Dに情報を記録していく。
記録は3回にわたり行った。ただし、ホログラフィック記録媒体10Dの媒体面の記録光束16が照射する位置を、前回記録したスポットの1/3だけ移動させ、記録光束16の光軸16Aとホログラフィック記録媒体10Dの媒体面との角度関係(−7.5度である)は変更しない。これによって、ホログラフィック記録媒体10Dの各点で3回ずつのシフト多重記録がなされることになる。
このとき、1回あたりのホログラフィック記録層1への露光量は、50×100/1000=5mJ/cm2であり、3回分合計しても15mJ/cm2であり、ポリマー化が完了する200mJ/cm2よりもはるかに小さい。
次に、図9を参照して、再生について説明する。記録時と同様に、図示しないスピンドルモータにホログラフィック記録媒体10Dを装着する。そして、ホログラフィック記録媒体10Dをフォーマット信号8を参照しながら再生光26が記録された所定の位置にくるように光学系、モータを設定する。
そして、実施例1と同様に再生を行った。
再生は、記録された位置を検出して3回繰り返して行った。
このとき、3ページ分の再生信号29の平均S/Nは、後述する比較例に対する相対値で、+9dBである。9dBの内訳は、再生光26のパワーを10倍にできることで+9dB、記録の際に参照光を照射させないことによる貢献が+3dBであるが、再生光26が反射層4で反射する影響でノイズが増え、−3dBである。
また、再生光26ではホログラフィック記録層1は感光しないため、1時間照射しても、再生信号29のS/Nの劣化はない。
<比較例>
比較例のホログラフィック記録媒体10Eは、実施例1のホログラフィック記録媒体10Cにおいて、選択層2を設けたのに代えて、選択層2を設けない以外は実施例1のホログラフィック記録媒体と同様に構成したものである。
すなわち、比較例のホログラフィック記録媒体10Eは、反射防止膜つきのガラスからなる基板5A上に、実施例1におけると同様のホログラフィック記録層1を形成し、この上に、実施例1におけると同様の基板9Aをかぶせたものである。
次に、ホログラフィック記録媒体10Eを用いたホログラフィック記録再生方法について説明する。ここでは、従来例と同様に、記録時に、記録光と参照光を同時に照射するものである。
図15は、ホログラフィック記録媒体の記録再生装置の比較例を説明するための図である。
同図に示す比較例のホログラフィック記録再生装置40は、光源31と、光源31から出射される波長500nmの放射光(記録光)31aの光路上に順次、所定の間隔で配置されたコリメータレンズ(以下、CLともいう)32、ハーフミラー51、空間光変調器33、集光器35、ホログラフィック記録媒体10Eを保持するステージ(図示しない)、受光アレイ48と、ハーフミラー51によって反射された光を反射するミラー52、ミラー52により反射された光を集光する集光器53とから構成される。
光源31から放射された放射光31aは、コリメータレンズ32により平行光にされ、ハーフミラー51に入射する。ハーフミラー51で一部の放射光31aは反射されて光束31cとなり、残りの放射光31aは透過されて光束31bとなる。光束31bは透過型の空間光変調器33を通過することにより、ページデータ34により変調され、集光器35で収束されて、記録光束36となり、ホログラフィック記録媒体10Eの記録エリア38に照射される。一方、ハーフミラー51で反射された放射光31aの光束31cはミラー52で反射され集光器53で集光されて参照光54となり、記録エリア38に照射される。
まず、記録エリア38への情報の記録について述べる。
図示しないステージ上に装着されたホログラフィック記録媒体10Eに、記録光束36が記録すべき所定の位置にくるように、ステージを調整設定する。ここで、ステージはホログラフィック記録媒体10Eの面の法線と記録光束36の光軸36Aとの角度を任意に調整できるものである。このとき、記録光束36の光軸36Aとホログラフィック記録媒体10Eの媒体面の法線とのなす角を−7.5度とする。
次に、空間光変調器33に、記録すべき1ページ分の電気信号である記録信号34を入力し、また、光源31からの光束31bを空間光変調器33に入射させる。このとき、コリメータレンズ32により、空間光変調器33の所定のエリアに平行な光束31bが照射される。光束31bは空間光変調器33で変調され、記録光束36として出射されるが、記録光束36における明暗幅の最小単位(上述の図7におけるd)が10μmとなるように、空間光変調器33のピクセル、電気信号34の組み合わせで選ぶ。
次に、空間光変調器33から出射された記録光束36を、ホログラフィック記録媒体10Eのホログラフィック記録層1の側から照射する。このとき、集光器35として焦点距離f=100mmの凸レンズを用いる。そして、ホログラフィック記録媒体10Eの記録ポイントから集光器35の焦点までの距離(上述の図7におけるa)を10mmとする。
この結果、f・λ/d=100×500×10-9/(10×10-6)=5mmとなり、(1)式、(2)式を満たしているので、空間光変調器33による回折の影響が大きくなったり、記録光束36がフーリエ変換されたりして、元の明暗の状態がくずれてしまうことはなく、空間光変調器33で得られた明暗のパターンがそのまま、ホログラフィック記録層1の記録エリア38に投影される。
一方、ハーフミラーで分割して得られた光束31cを参照光54としてミラー52、集光器53を介して、記録光束36を照射する場所に、記録光束36とは異なる角度から照射する。
ホログラフィック記録媒体10Eの記録エリア38位置での記録光束36、参照光54のパワー密度は、いずれも50mW/cm2、記録光束36を照射する時間は、100msecとする。
ホログラフィック記録媒体10E内では、記録光束36と参照光36とが干渉を起こし、媒体10E内に干渉縞が記録されることになる。
以上の記録を3回繰り返して、ホログラフィック記録媒体10Eに記録していく。ただし、ホログラフィック記録媒体10Eに記録光束36を照射する位置は変更せず、記録光束36の光軸36Aと媒体10Eの面の法線とのなす角を、2回目は−2.5度、3回目は+5度とする。これによって、媒体10Eの同一の記録エリア38に異なるページデータが3ページ分記録される。
このとき、1回あたりの記録層への露光量は、50×100/1000=5mJ/cm2で、3回分合計しても15mJ/cm2で、ポリマー化が完了する200mJ/cm2よりもはるかに小さい。
次に、記録した信号の再生について説明する。
図16は、ホログラフィック記録媒体の記録再生装置の比較例における再生を説明するための図である。
同図に示すように、再生時には、上述したホログラフィック記録再生装置50の動作が記録時とは異なるものとなる。
まず、ハーフミラーが放射光31aの光路からは外れて、放射光31aのすべてが空間光変調器33に入射する。空間光変調器33には、入射した光をすべて透過して再生光46として出射するべく記録信号34が供給される。
ここで、図示しないステージ上に装着されたホログラフィック記録媒体10Eを、再生光46が記録エリア38の所定の位置にくるようにステージを調整設定する。このとき、再生光46の光軸とホログラフィック記録媒体10Eの面の法線とのなす角を−7.5度とする。
次に、再生光46をホログラフィック記録媒体10Eに照射する。再生光46の波長は記録光36のそれと同じで、500nmであり、照射する再生光46のパワー密度を、1mW/cm2とする。
これによって、記録エリア38のホログラフィック記録層1を通過した再生光46は、干渉縞が形成された部分でのみ回折して、回折光47として透過する。ここで得られた回折光47は、記録過程における記録光束36と同じパターンとして再生された光束である。
再生された回折光47をC−MOSセンサから成る受光アレイ49に導いて検出し、記録時の記録信号34と同じ電気信号(再生信号)49として再生する。
以上、3回繰り返して、ホログラフィック記録媒体10Eに記録した信号を再生していく。ただし、ホログラフィック記録媒体10Eの面への再生光46を照射する位置は変更せず、再生光46の光軸と媒体10Eの面の法線とのなす角を、記録時と同様2回目は−2.5度、3回目は+5度とする。これによって、ホログラフィック記録媒体10Eの同一記録エリア38に記録された異なる3ページ分のページデータが再生される。
以上のようにして得られた3ページの再生信号49の平均S/Nを0dBとする。
再生光46を照射し続けていると再生信号は次第に劣化していき、数分後には再生信号を検出できなくなった。これは、ホログラフィック記録媒体10Eが再生光46で感光してしまうためである。
本発明に係るホログラフィック記録媒体の基本構成を示す図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体の第1の構成例を示す図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体の第2の構成例を示す図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体における、選択層の反射率と透過率及び、ホログラフィック記録層の光感度の光波長依存性を示すグラフ図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体における、第2の選択層の反射率と透過率の光波長依存性を示すグラフ図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録再生装置を示す構成図である。 本発明に係るホログラフィック記録方法における集光器とホログラフィック記録媒体との位置関係を説明するための図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録再生装置における記録媒体への記録を説明するための図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録再生装置における再生方法を説明するための図である。 本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録再生装置における記録媒体からの再生を説明するための図である。 本発明のホログラフィック記録媒体の実施例1を示す構成図である。 本発明のホログラフィック記録媒体の実施例1における選択層の反射率と透過率の波長依存性示した図である。 本発明のホログラフィック記録媒体の実施例2を示す構成図である。 本発明のホログラフィック記録媒体の実施例2における第2の選択層の反射率と透過率の波長依存性示した図である。 ホログラフィック記録媒体の記録再生装置の比較例を説明するための図である。 ホログラフィック記録媒体の記録再生装置の比較例における再生を説明するための図である。 従来例のホログラフィック記録再生方法を説明するための図である。 従来例の光情報記録媒体を示す構成図である。
符号の説明
1…ホログラフィック記録層、2…選択層、3,3A…分離層、4…反射層、5…基板、6…第2選択層、7…平滑層、8…フォーマット信号、10,10A,10B,10C,10D,10E…光情報記録媒体(ホログラフィック記録媒体)、11…光源、11a…放射光(記録光)、12…コリメータレンズ、13…空間光変調器、14…記録信号(ページデータ)、15…集光器、16,16a,16b,16c…記録光束、16A…光軸、17,17a,17b,17c…反射光、18…記録エリア、18a,18b,18c…干渉縞、20…ホログラフィック記録再生装置、21a…放射光、26…再生光、26A…光軸、27,27a,27b,27c…回折光、28…受光アレイ、29…再生信号(ページデータ)、31…光源、31a…放射光、31b…光束、31c…光束、32…コリメータレンズ、33…空間光変調器、34…記録信号(ページデータ)、35…集光器、36…記録光束、36A…光軸、17,17a,17b,17c…反射光、38…記録エリア、40…ホログラフィック記録再生装置、46…再生光、46A…光軸、47…回折光、48…受光アレイ、49…再生信号(ページデータ)、51…ハーフミラー、52…ミラー、53…集光器、54…参照光、100…光情報記録再生装置、101…光情報記録媒体、102…半導体レーザ、103…凸レンズ、104…偏光ビームスプリッタ、104R…偏光膜、105…ミラー、106…ミラー、107…凸レンズ、108…偏光ビームスプリッタ、108R…偏光膜、109…2分割旋光板、109L,109R…旋光板、110…凸レンズ、112…記録光(再生光)、113…信号光、114…参照光、115…空間光変調器、120…光情報記録媒体、121…ホログラフィック記録層、122…反射層、123…基板、124…ピット、125…フォーマット用エリア、126…記録信号用エリア、F…焦点位置。

Claims (2)

  1. 基板表面に形成されたフォーマット信号上に反射層、選択層、ホログラフィック記録層が順次積層され、レーザ光を前記ホログラフィック記録層上方から照射して、前記ホログラフィック記録層を透過した透過光と前記ホログラフィック記録層を透過し、前記選択層で反射された反射光との干渉により記録が行われるホログラフィック記録媒体において、
    前記ホログラフィック記録層は、400〜500nmの波長範囲のレーザ光のみに感度を有する材料からなり、前記選択層は、前記ホログラフィック記録層を透過したレーザ光のうち、400〜500nmの波長のみを反射させる材料からなり、前記反射層は、前記ホログラフィック記録層及び前記選択層を透過したレーザ光のうち、前記フォーマット信号を検出する650nm以上の波長を反射させる材料からなることを特徴とするホログラフィック記録媒体。
  2. 少なくとも基板上に光源から出射される記録用レーザ光を反射する選択層、前記記録用レーザ光のみに感度を有するホログラフィック記録層が順次形成されたホログラフィック記録媒体を用いて前記ホログラフィック記録層に記録を行うホログラフィック記録媒体の記録装置において、
    前記記録用レーザ光を情報信号に応じて光変調する空間光変調器と、
    前記空間光変調器で光変調された記録用レーザ光の光軸に対して所定の角度で傾斜して設けられた前記ホログラフィック記録媒体と、からなり、
    前記ホログラフィック記録媒体の前記ホログラフィック記録層を透過した前記記録用レーザ光の透過光と前記ホログラフィック記録媒体の選択層で反射された反射光との干渉により前記ホログラフィック記録層に記録を行うことを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録装置。

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