しかしながら、特許文献2に示される構成のホログラム記録媒体200の場合、一つの情報記録層201を2つの位置決め層202で挟んだ層を複数積層する構成であるために、厚み方向に記録できる情報の数を増やそうとすると、ホログラム記録媒体200の厚みが厚く成るといった問題がある。また、情報記録層201の数を複数とするために、ホログラム記録媒体の作製にコストがかかるといった問題もある。
このような点を考慮して、本発明者らは、例えば、図9に示すようなホログラム記録媒体1の開発を検討しているところである。図9は、本発明者らが検討しているホログラム記録媒体1を、半径方向に沿って切った場合の概略断面図である。まず、このホログラム記録媒体1の構成について説明する。
図9に示すように、ホログラム記録媒体1は、円板状の基板2上に、第1位置決め層3a、ギャップ層4a、第2位置決め層3b、ギャップ層4b、ダイクロイックミラー層5、ギャップ層4c、ホログラム記録層6、保護層7が、この順番に積層された構造となっている。
第1位置決め層3a及び第2位置決め層3bは、ホログラム記録媒体1へのホログラム記録を行う際に用いられる信号光及び参照光、あるいはホログラム記録媒体1に記録された情報の再生を行う際に用いられる参照光の照射位置について、位置決めを行うために用いられる層である。第1位置決め層3及び第2位置決め層3bには、それぞれ例えばグルーブから成るトラックTRが形成されている。そして、各トラックTRには、信号光及び参照光を照射する位置を示すマークが形成されている。
なお、位置決め層3a、3bに形成されるトラックTRは、円板状に形成される基板2の中心に対して例えば同心円状に形成されている(別の形態として、例えば螺旋状等としても構わない)。また、第1位置決め層3aと第2位置決め層3bとに形成されるトラックTRは、ホログラム記録媒体1を上から見た場合に同一位置となっている。
第1位置決め層3a及び第2位置決め層3bには、例えばAl、Ag、Au、又はそれらの合金等を用いた反射膜が形成されている。なお、少なくとも第2位置決め層3bに形成される反射膜は、ホログラム記録媒体1に入射した全ての赤色のレーザ光(サーボ用のレーザ光)を反射するのではなく、その一部のみを反射する半反射膜となっている。
ホログラム記録媒体1を構成するギャップ層4a〜4cは、層間に所定厚さのギャップを形成する役割を有し、光の入射を妨げないものから成っている。ギャップ層4a〜4cを構成する材料については特に限定されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネートやポリイミド等のプラスチック、紫外線硬化型のアクリル樹脂などの材料が用いられる。
ホログラム記録層6は、信号光と参照光との干渉による干渉パターンによって情報が記録される層である。このホログラム記録層6は、光が照射されたときに光の強度に応じて屈折率、誘電率、反射率等の光学的特性が変化する材料から成っており、例えばフォトポリマーが用いられる。
ダイクロイックミラー層5は、保護層7側から入射する緑色のレーザ光(参照光及び信号光)を反射し、赤色のレーザ光を透過する。すなわち、ダイクロイックミラー層5によって、ホログラム記録媒体1への記録再生に利用される緑色のレーザ光は、位置決め層3a、3bに達する前に反射される。一方、信号光及び参照光の位置決め(サーボ)のために用いられる赤色のレーザ光は、位置決め層3a、3bに到達することとなる。
なお、ダイクロイックミラー層5は、ホログラム記録媒体1の記録や再生を行うために使用するレーザ光の種類によってその構成を適宜変更して構わない。
保護層7は、ホログラム記録層6を保護するもので、光の入射を妨げないものから成っている。保護層7を構成する材料については特に限定されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネートやポリイミド等のプラスチック、紫外線硬化型のアクリル樹脂などの材料が用いられる。
このようにホログラム記録媒体1においては、第1位置決め層3aと第2位置決め層3bとの2つの位置決め層が別々に形成されている。このために、この位置決め層3a、3bを用いて、信号光及び参照光の照射位置を位置決めすることにより、シフト多重による多重記録に加えて、ホログラム記録媒体1の厚み方向にも多重記録を精度良く行え、情報を高密度に記録可能である。そして、本発明者らが検討しているホログラム記録媒体1は、ホログラム記録層6を1層設けるのみで、ホログラム記録媒体の厚み方向にも多重記録が可能である。
なお、ここでは、位置決め層の数が2つの場合を示したが、位置決め層の数を3つ以上とすれば、さらに情報の高密度化が達成できる。
ところで、ホログラム記録媒体1の厚み方向に情報を多重に記録した場合、再生時に、参照光がホログラム記録層6の厚み方向に記録された複数のホログラムに照射されることになるが、再生対象のホログラムに対して参照光がなす角と、再生対象でないホログラムに対して参照光がなす角とが異なることから、理論的には、情報を再生しようとするホログラムについてのみ情報の再生が可能となる。これについて、特許文献2の記載を参考にして、以下に説明しておく。
まず、図10を参照して、ホログラム(体積ホログラム)におけるレリーフとそれに対する入射角の関係について説明する。図10に示すように周期Λでレリーフ302が形成された厚みTのホログラム301に、レリーフ302との角度θiで、波長λ0の光303が入射する場合を考える。
なお、このホログラム301におけるレリーフ302に直交する方向xについての屈折率分布n(x)は、次の式で表されるものとする。
n(x)=n0+n1sin(K・x)
ただし、K=2π/Λである。
この時、このホログラム301による一次回折光の回折強度I1は、次式で求められる。
I1=(κT・(sinσ/σ))2
ただし、
κ=πn1/λ0
σ=(1/4)・√(Q2(1−2α)2+4(2κT)2)
Q=2πλ0T/n0Λ2
α=(−1/2)・(sinθi/sinθB)
である。
なお、θBは、ブラッグ(Bragg)角であり、次式を満たす。
2ΛsinθB=λ0/n0
ここで、λ0≒0.5μm、Λ≒λ0、T≒50Λ、n1≒1/100、cosθB≒1、n0≒1.5とすると、回折強度I1は、次の式のようになる。
I1≒((πn1T/λ0)Sinc(πλ0Tδ/2n0Λ2))2
sinθi=sin(θB+δ)
Sinc(x)=sinx/x
ここで、δは、ブラッグ角からのずれを表す。また、δ=0を中心として、負側において回折強度I1が最初に0となるときのδから、正側において回折強度I1が最初に0になるときのδまでの幅である分離幅Δは、次の式で与えられる。
Δ=4n0Λ2/λ0T
以上から、ホログラム301ではレリーフ302に対して光303がブラッグ角付近で入射したときにのみ再生光が得られることがわかる。従って、ホログラム記録媒体1のホログラム記録層6に、厚み方向に記録される各ホログラムは、記録時における参照光と同じ角度付近の角度で参照光が照射されたときにのみ、再生光を発生することがわかり、情報を再生しようとするホログラムのみから情報を再生することが可能であることがわかる。
しかしながら、本発明者らの検討により、ホログラム記録媒体1について、その厚み方向に情報を多重記録した場合、厚み方向に多重記録されるホログラム間でクロストークノイズが発生し、再生像のS/Nが劣化し、良好な再生像が得られないことがわかった。なお、この点は、再生像の劣化の度合いに差があっても、特許文献2に示される構成のホログラム記録媒体200においても起きる現象と考えられる。
なお、シフト多重方式において、トラック間のクロストークの影響を抑制する技術については、従来報告がある(特許文献3参照)。しかしながら、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録した場合に発生するクロストークの影響については、従来報告がなく、その対応策は検討されていない状況である。また、本発明者らが検討しているホログラム記録媒体は、従来報告がない構成のものであり、そのクロストークの影響が問題となることは知られていない状況である。
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録でき、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるようにホログラム記録を行うホログラム記録装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのようにホログラムが記録されたホログラム記録媒体から情報を高品質に再生可能なホログラム再生装置を提供することである。
上記目的を達成するために本発明は、参照光と情報を担持した信号光との干渉による干渉パターンによって前記情報をホログラム記録媒体に記録するホログラム記録装置において、前記ホログラム記録媒体は、情報を記録するホログラム記録層を1つのみ有し、前記参照光及び前記信号光の照射位置を位置決めするための位置決め層を前記ホログラム記録層の一方の面側に複数有するホログラム記録媒体であって、前記参照光及び前記信号光となる光を出射し、その発振波長が可変である第1光源と、前記参照光及び前記信号光を前記ホログラム記録媒体に集光する集光レンズと、前記集光レンズを前記ホログラム記録媒体の厚み方向に移動するアクチュエータと、前記第1光源とは異なる波長の光を出射する第2光源と、前記第2光源から出射されて前記位置決め層で反射された反射光を受光する光検出部と、前記第1光源から出射される光の波長の変更を制御する波長変更制御部と、を備え、前記光検出部からの情報を用いて、前記アクチュエータによって前記集光レンズを移動し、前記参照光及び前記信号光の照射位置を移動することで、前記厚み方向に情報を多重に記録し、前記照射位置が移動される場合に、前記波長変更制御部は前記第1光源から出射される光の波長を変更し、前記厚み方向に多重に記録される情報は、それぞれ異なる波長の光を用いて記録されることを特徴としている。
これによれば、ホログラム記録媒体が参照光及び信号光の照射位置を位置決めする位置決め層を複数有しおり、この位置決め層を用いて、ホログラム記録媒体の厚み方向に、精度良く情報を多重に記録できる。そして、ホログラム記録媒体の厚み方向に多重に記録される情報は、それぞれ異なる波長の光(参照光及び信号光)を用いて記録されるために、厚み方向の情報について、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるように情報を記録することが可能となる。
また、上記目的を達成するために本発明は、参照光と情報を担持した信号光との干渉による干渉パターンによって前記情報をホログラム記録媒体に記録するホログラム記録装置において、前記ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録できるように設けられ、前記厚み方向に多重に記録される情報は、それぞれ異なる波長の光を用いて記録されることを特徴としている。
これによれば、ホログラム記録媒体の厚み方向に多重に記録される情報は、それぞれ異なる波長の光(参照光及び信号光)を用いて記録されるために、厚み方向の情報について、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるように情報を記録することが可能となる。
また、本発明は、上記構成のホログラム記録装置において、前記ホログラム記録媒体は、前記情報を記録するホログラム記録層と、前記参照光及び前記信号光の照射位置を位置決めするための位置決め層と、を備え、前記位置決め層を用いることによって、前記厚み方向に情報を多重に記録することとしても良い。
これによれば、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録する場合、厚み方向の記録を精度良く行えるために、更に良好な再生像が得られるように情報を記録できる。
また、本発明は、上記構成のホログラム記録装置において、前記ホログラム記録媒体は、前記ホログラム記録層を1つのみ有し、前記位置決め層は、前記ホログラム記録層の一方の面側に少なくとも1つ設けられることとしても良い。
これによれば、ホログラム記録媒体を薄型化、更に低コスト化して、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録することができ、その場合に、厚み方向の情報について、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるように情報を記録することが可能となる。
また、本発明は、上記構成のホログラム記録装置において、前記参照光及び前記信号光となる光を出射し、その発振波長が可変である第1光源と、前記参照光及び前記信号光を前記ホログラム記録媒体に集光する集光レンズと、前記集光レンズを前記厚み方向に移動するアクチュエータと、前記第1光源から出射される光の波長の変更を制御する波長変更制御部と、を備え、前記アクチュエータによって前記集光レンズを移動し、前記参照光及び前記信号光の照射位置を移動することで、前記厚み方向に情報を多重に記録し、前記照射位置が移動される場合に、前記波長変更制御部は前記第1光源から出射される光の波長を変更することとしても良い。
これによれば、例えば、信号光と参照光とを同一の光軸方向から入射させるコリニア方式の光学系を有するホログラム記録装置について、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録することが可能となり、更に、厚み方向の情報について、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるように情報を記録することが可能となる。
また、本発明は、上記構成のホログラム記録装置において、前記ホログラム記録媒体は、前記参照光及び前記信号光の照射位置を位置決めするための位置決め層を有し、前記第1光源とは異なる波長の光を出射する第2光源と、前記第2光源から出射されて前記位置決め層で反射された反射光を受光する光検出部と、を更に備え、前記光検出部からの情報を用いて、前記照射位置を移動することで、前記厚み方向に情報を多重に記録することとしても良い。
これによれば、位置決め層を用いてホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録する構成を容易に実現できる。そして、この場合にも、厚み方向の情報について、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるように情報を記録することが可能となる。
また、本発明は、上記構成のホログラム記録装置によって情報を記録されたホログラム記録媒体を再生するホログラム再生装置であって、前記厚み方向に多重に記録された情報を再生する場合に、それぞれ異なる波長の参照光を用いて情報の再生を行うことを特徴としている。
これによれば、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるように記録された厚み方向の情報について、高品質に再生可能である。
本発明によれば、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録可能であって、厚み方向に情報を多重に記録する場合に、クロストークの影響を低減して良好な再生像が得られるように情報の記録が可能なホログラム記録装置を提供できる。また、本発明によれば、そのように情報が記録されたホログラム記録媒体から、情報を高品質に再生できるホログラム再生装置を提供できる。
以下、本発明の内容について実施形態を挙げ、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態のホログラム記録装置及びホログラム再生装置として機能するホログラム記録再生装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のホログラム記録再生装置21は、前述の図9に示すホログラム記録媒体1を記録再生可能に設けられている。以下、このホログラム記録再生装置21の構成について説明する。
22はスピンドルモータであり、ホログラム記録媒体1はスピンドルモータ22の先端に設けられるチャック部(図示せず)にチャックされ、これにより記録再生時に回転される。スピンドルモータ22の回転制御はスピンドルモータ駆動回路23によって行われる。
24は光ピックアップであり、これにより、ホログラム記録媒体1に対して信号光と参照光とを照射して情報を記録することが可能となるとともに、ホログラム記録媒体1に対して参照光を照射して、ホログラム記録媒体1に記録されている情報の再生が可能となる。図2は、ホログラム記録再生装置21が備える光ピックアップ24の光学系の構成を示す概略図である。なお、本実施形態においては、信号光と参照光とを同一の光軸方向から入射させる所謂コリニア方式の光学系となっている。
図2に示すように、光ピックアップ24は、第1光源41と、シャッタ42と、コリメートレンズ43と、空間光変調器44と、反射ミラー45と、第1ビームスプリッタ46と、ダイクロイックプリズム47と、対物レンズ48と、検出レンズ49と、2次元イメージセンサ50と、第2光源51と、第2ビームスプリッタ52と、フォトディテクタ53と、を備える。
第1光源41は、出射されるレーザ光の波長を変更可能に設けられる波長可変レーザである。本実施形態においては、レーザ素子として、波長532nmの緑色のレーザ光を出射するNd−YAGレーザを用いる構成となっている。第1光源41で変更される波長の振り幅は、少なくとも1nmであり、ホログラム記録媒体1のホログラム記録層6に情報が記録される範囲内で波長が変更される。第1光源41の波長の変更に関する命令は、システム制御部31(図1参照)によって行われるが、この点については後述する。
なお、第1光源41は、これに限らず、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更できる。すなわち、例えば、レーザ素子として、波長405nmの青色(正確には青紫色)のレーザ光を出射する半導体レーザ等としても構わない。
シャッタ42は、第1光源41から出射されたレーザ光の通過と遮蔽を適宜切り替えるものである。これにより、ホログラム記録媒体1に照射される信号光や参照光の照射タイミングが制御される。コリメートレンズ43は、第1光源41から出射されたレーザ光を平行光に変換する。
空間光変調器44は、記録時においては、入射光の中央側の光を、後述する記録情報処理部25(図1参照)によって生成されたページデータ(2次元データ)に応じて光強度変調された2次元の光強度変調パターンを有する信号光として取り出す。そして、入射光の外周側については、ページデータに応じた光強度変調を行わず、所定の光強度パターンを有する参照光として取り出す。図3は、空間光変調器44を経たレーザ光の構成を模式的に示した図である。図3に示すように、空間光変調器44を経たレーザ光は、その中心部に信号光が存在し、その周囲に参照光が存在する構成となる。
空間光変調器44は、再生時においては、記録時に信号光を取り出した部分について消光し、レーザ光を取り出さないようにする。また、記録時に参照光を取り出した部分については、記録時と同一の光強度パターンを有するレーザ光を参照光として取り出すようにする。すなわち、再生時においては、空間光変調器44によってドーナツ形状を有する参照光のみが取り出されることとなる。
以上のような機能を発揮する空間光変調器44としては、電気光学素子や磁気光学素子や液晶を用いて制御するデバイスや、いわゆるDMD(Digital Micromirror Device;登録商標)等が用いられる。
反射ミラー45は、空間光変調器44から送られてきたレーザ光を反射して第1ビームスプリッタ46に送る。第1ビームスプリッタ46は、反射ミラー45から送られてきたレーザ光を反射してホログラム記録媒体1側へ導くとともに、ホログラム記録媒体1で反射された反射光を透過して、後述する2次元イメージセンサ50側へと導く。ダイクロイックプリズム47は、第1光源41から出射される緑色のレーザ光を透過し、後述する第2光源51から出射される赤色のレーザ光を反射する。
対物レンズ48は、信号光及び参照光(記録時)、又は参照光(再生時)を集光する機能を有する。そして、記録時においては、対物レンズ48によって集光された信号光と参照光との干渉によって形成される干渉縞が、屈折率変化あるいは透過率変化としてホログラム記録媒体1のホログラム記録層6(図9参照)に書き込まれる。この屈折率変化あるいは透過率変化は回折格子として作用する。一方、再生時においては、対物レンズ48によって集光された参照光は、ホログラム記録層6に書き込まれた回折格子によって回折作用を受け、ホログラム記録媒体1から再生光として出射される。
なお、本実施形態では、再生光はダイクロイックミラー層5(図9参照)により反射されるために、ホログラム記録媒体1から反射光として取り出される。
また、対物レンズ48は、アクチュエータ54に搭載されており、このアクチュエータ54により、対物レンズ48はフォーカス方向(ホログラム記録媒体1の厚み方向と平行な方向)、及びトラッキング方向(ホログラム記録媒体1の半径方向と平行な方向)に移動可能となっている。そして、これにより、信号光及び参照光をホログラム記録媒体1の所望の位置に正しく位置決めして照射することが可能となる。
なお、アクチュエータ54の構成としては、例えばCDやDVD等の光ディスクに使用される対物レンズアクチュエータと同様に、磁石とコイルを用いて駆動する構成等とでき、このような対物レンズアクチュエータの構成については公知であるために、ここではその説明は省略する。
ホログラム記録媒体1から取り出された再生光は、対物レンズ48、ダイクロイックプリズム47、第1ビームスプリッタ46の順に透過し、検出レンズ49によって、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等から成る2次元イメージセンサ50へと導かれる。2次元イメージセンサ50は、後述する再生情報処理部26(図1参照)へ画像信号を送り、これによりホログラム記録媒体1に記録されるページデータの再生が行われる。
第2光源51は、例えば赤色のレーザ光を出射する半導体レーザである。第2光源51から出射されるレーザ光を赤色としている理由は、この第2光源51から出射されるレーザ光は、ホログラム記録媒体1に形成される位置決め層3a、3b(図9参照)を用いて前述の信号光及び参照光の位置決め(サーボ)を行えるようにするものであり、ホログラム記録層6に用いるフォトポリマーに対して感受性がないレーザ光であることが望まれるためである。
第2ビームスプリッタ52は、第2光源51から出射されたレーザ光を透過するとともに、第2光源52から出射され対物レンズ48を経てホログラム記録媒体1の位置決め層3a、3bに集光されたのち反射された赤色の戻り光を反射してフォトディテクタ53へと導く。フォトディテクタ53は、ホログラム記録媒体1の位置決め層3a、3bで反射された赤色レーザ光を受光して電気信号へと変換する。そして、この信号により、後述のサーボ制御や、ホログラム記録媒体1の厚み方向に情報を多重に記録するために行う対物レンズ48の移動の制御等が行われる。
図1に戻って、光源駆動回路34は、第1光源41を制御する第1光源駆動回路と、第2光源51を制御する第2光源駆動回路とから成り、第1光源41及び第2光源51のレーザパワーの制御等を行う。また、上述のように第1光源41は、波長可変レーザであり、システム制御部31から指令により、第1光源駆動回路は第1光源41から出射されるレーザ波長について制御する。
記録情報処理部25は、図示しないECCエンコーダとSLM(空間光変調器)ドライバとを備える。ECCエンコーダは、外部から入力されたメインデータを所定のエンコーディング方式によってエラー訂正符号化する。SLMドライバは、ECCエンコーダから送られてきたデータに基づいて形成されたページデータに応じて空間光変調器(SLM)44を駆動する。
なお、上述のように、空間光変調器44はホログラム記録媒体1を再生する場合にも使用されるので、SLMドライバは、記録時のみならず再生時にも空間光変調器44を適宜駆動する。
再生情報処理部26は、図示しない画像信号処理部とECCデコーダと、を備える。画像信号処理部は、2次元イメージセンサ50から送られてきた画像信号の2値化処理等を行う。ECCデコーダは、2値化処理された信号データについてエラー訂正復号化処理を行う。これにより、ホログラム記録媒体1に記録されるページデータの再生が行われる。
サーボ用検出回路27は、フォトディテクタ53から送られてきた信号に基づいて、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号等を生成する。なお、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号は、例えばCD、DVD等の光ディスクにおいてフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を得る公知の手法と同様の手法を用いて生成することができる。
生成されたフォーカス信号及びトラッキング信号はサーボ駆動回路28、スライドモータ駆動回路29に送られる。また、サーボ用検出回路27は、フォトディテクタ53から送られる電気信号から位置決め層3a、3bで反射された反射光の反射率に関する情報を得て、これをシステム制御部31に送信する。
サーボ駆動回路28は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて、アクチュエータ54(図2参照)を制御し、対物レンズ48のフォーカス方向とトラッキング方向のサーボ制御を行う。また、スライドモータ駆動回路29は、トラッキングエラー信号及びシステム制御部31からの指令に基づいて、光ピックアップ24をホログラム記録媒体1の半径方向に移動する駆動装置(図示せず)の制御を行う。
このサーボ駆動回路28及びスライドモータ駆動回路29による制御により、対物レンズ48が適宜所望の位置に位置決めされ、信号光及び参照光の照射位置について、正しく位置決めすることが可能となる。
シャッタ駆動回路30は、システム制御部31からの指令に基づいて、シャッタ42(図2参照)位置におけるレーザ光(緑色)の通過と遮蔽の切り替えを制御する。なお、システム制御部31は、前述したサーボ用検出回路28から送られてきた反射率に関する情報により、信号光及び参照光(記録時)、或いは参照光(再生時)を照射するタイミングを決定する。
システム制御部31は、以上に示した働きの他に、ホログラム記録再生装置21のシステム全体の制御を行う。なお、上述したように第1光源41から出射されるレーザ光の波長は一定ではなく、システム制御部31からの指令で、第1光源41から出射されるレーザ光の波長は変更されることになっており、システム制御部31は、第1光源41から出射されるレーザ光の波長の変更を制御する波長変更制御部として機能する。システム制御部31が、波長変更制御部として機能する場合の詳細については以下に述べる。
なお、システム制御部31には、ROM(Read Only Memory)32及びRAM(Random Access Memory)33が備えられている。ROM32には、システム制御部31が各種処理を行う上で必要となる各種のパラメータや動作プラグラムが記憶される。RAM33は、システム制御部31によるワーク領域として用いられ、また、各種必要な情報の格納領域とされる。
次に、ホログラム記録再生装置21を用いてホログラム記録媒体1に記録再生を行う方法の一例について説明する。まず、ホログラム記録媒体1に記録を行う方法について、図4を用いて説明する。図4は、ホログラム記録再生装置21による記録方法を説明するための模式図である。
ホログラム記録媒体1にホログラム記録を行う場合、スピンドルモータ22(図1参照)によってホログラム記録媒体1が回転され、第2光源51(図2参照)から赤色のレーザ光が常時出射された状態となり、第2位置決め層3bを用いて対物レンズ48のサーボ制御(フォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御)が行われる。そして、先の記録位置に対して記録位置をトラックに沿って所定量シフトさせて多重記録を行う(いわゆるシフト多重方式による多重記録を行う)。この際、シフト量は、例えば、10μm程度で、信号光と参照光が形成するスポットサイズ以下に設定される。
第2位置決め層3bのトラックTRを用いたサーボ制御を行いながら、ホログラム記録を行い、第2位置決め層3bの全てのトラックTRに沿ってホログラム記録が完了すると、次に、第1位置決め層3aを用いたサーボ制御を開始するようにシステム制御部31(図1参照)からの指令が出される。本実施形態では、第2位置決め層3bによるサーボ制御から第1位置決め層3aによるサーボ制御に切り換わる際に、システム制御部31からサーボ駆動回路28(図1参照)に指令が出され、これによりアクチュエータ54によって対物レンズ48の位置が移動されて、第1位置決め層3aを用いたサーボ制御が開始される。
システム制御部31は、第1位置決め層3aによるサーボ制御を開始するように指令を出すとほぼ同時に、第1光源41から出射されるレーザ光を、先に使用していた波長λ0のレーザ光から波長λ1のレーザ光に変更するように光源駆動回路34(正確には第1光源駆動回路)に指令を送る。そして、指令を送られた光源駆動回路34は、第1光源41から出射されるレーザ光の波長を変更し、その後、第1位置決め層3aのトラックTRを用いたサーボ制御が行われながら、ホログラム記録が開始される。
なお、システム制御部31が光源駆動回路34に指令を送るタイミングは、本実施形態のタイミングに限られる趣旨ではない。第2位置決め層3bによるサーボ制御を行いながらのホログラム記録が終了し、第1位置決め層3aによるサーボ制御を行いながらのホログラム記録が開始されるまでの間に、第1光源41から出射されるレーザ光の波長が変更されるタイミングであれば、いずれのタイミングでも構わない。
以上のように、本実施形態のホログラム記録再生装置21においては、いわゆるシフト多重方式による多重記録に加えて、対物レンズ48の位置をホログラム記録媒体1の厚み方向に移動することにより、ホログラム記録媒体1に対する参照光及び信号光の照射位置を移動して、ホログラム記録媒体1の厚み方向に情報を多重に記録できるようになっている。
そして、ホログラム記録媒体1の厚み方向に情報を多重記録できる構成とするに当って、サーボ制御に用いる位置決め層3a、3bが変更されると、それに応じて参照光及び信号光となる光を出射する第1光源41の波長を変更する構成となっている。このために、ホログラム記録媒体1の厚み方向に記録される各干渉パターンについて、その違いをより明確なものとすることができる。従って、再生時において、ホログラム記録媒体1の厚み方向に記録されるホログラムの間で発生するクロストークの影響を低減して良好な再生像を得ることが可能となる。
なお、第1光源41から出射されるレーザ光の波長を変更するにあたって、その変更量は1nm以上とすれば良い。波長を1nm以上変更すれば、ホログラム記録媒体1の厚み方向に記録されるホログラムの間で発生するクロストークの影響を低減して良好な再生像を得ることが可能となる。同一の位置に重ねて情報を記録する波長多重方式においては、一般的に2nm以上波長を変更して多重記録すると言われている。しかし、本実施形態の場合、参照光及び信号光の照射位置をホログラム記録媒体1の厚み方向に移動して情報を多重記録する構成であり、波長を1nm以上変更することにより効果を得ることができる。
ホログラム記録媒体1に記録された情報を再生する場合には、スピンドルモータ22によってホログラム記録媒体1が回転され、第2光源51から赤色レーザ光が常時出射された状態となり、第2位置決め層3bによってサーボ制御が行われる。そして、ホログラム記録媒体1に記録を行った時と、同じレーザ波長(λ0)を有する参照光を照射しながら、情報の再生が行われる。
第2位置決め層3bのトラックTRを用いたサーボ制御を行いながら、ホログラム記録媒体1に記録された情報の再生を行い、第2位置決め層3bの全てのトラックTRに沿って情報の再生を行うと、次に、第1位置決め層3aを用いたサーボ制御を開始するようにシステム制御部31(図1参照)からの指令が出される。本実施形態では、第2位置決め層3bによるサーボ制御から第1位置決め層3aによるサーボ制御に切り換わる際に、システム制御部31からサーボ駆動回路28(図1参照)に指令が出され、これによりアクチュエータ54によって対物レンズ48の位置が移動されて、第1位置決め層3aを用いたサーボ制御が開始される。
システム制御部31は、第1位置決め層3aによる制御を開始するように指令を出すとほぼ同時に、第1光源41から出射されるレーザ光について、先に使用していた波長λ0のレーザ光から波長λ1のレーザ光に変更するように光源駆動回路34(正確には第1光源駆動回路)に指令を送る。そして、指令を送られた光源駆動回路34によって、第1光源41から出射されるレーザ光の波長が変更され、第1位置決め層3aのトラックTRを用いたサーボ制御が行われながら、ホログラム記録媒体1に記録された情報の再生が開始される。
以上のように、本実施形態のホログラム記録再生装置21は、いわゆるシフト多重方式によって記録されたホログラム情報を再生できるとともに、対物レンズ48の位置をホログラム記録媒体1の厚み方向に移動することにより、ホログラム記録媒体1に対する参照光の照射位置を移動して、ホログラム記録媒体1の厚み方向に多重記録された情報を再生可能となっている。
そして、ホログラム記録媒体1の厚み方向に記録された情報を再生する際に、記録時に合わせて参照光の波長を変更して情報の再生を行うために、ホログラム記録媒体1の厚み方向に記録された情報を高品質で再生可能となる。
なお、本実施形態においては、第2位置決め層3bに形成されるトラックTRの全てに従ってホログラム記録を行った後に、第1位置決め層3aに形成されるトラックTRに従ってホログラム記録を行う構成としているが、これに限定される趣旨ではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
すなわち、例えば、第1位置決め層3aに形成されるトラックTRに従ってホログラム記録を行った後に、第2位置決め層3bに形成されるトラックTRに従ってホログラム記録を行うようにしても構わない。また、例えば、トラック一周ごとに、第1位置決め層3aによるサーボ制御と第2位置決め層3bによるサーボ制御とを切り替えながら、ホログラム記録を行う構成等としても構わない。
また、以上においては、図9に示すようなホログラム記録媒体1に対して記録再生を行えるホログラム記録再生装置の場合について示した。しかし、本発明は、図9に示すホログラム記録媒体1の記録や再生を行う装置に限定される趣旨ではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
すなわち、例えば、図5に示すようなホログラム記録媒体や図6に示すホログラム記録媒体に対して記録や再生を行う装置に対しても適用可能である。なお、図5及び図6は、本発明の他の実施形態を説明するための図で、先に示した実施形態と重複する構成要素については、同一の符号を付している。
まず、図5に示す実施形態について説明する。図5に示すホログラム記録媒体は、先に示したホログラム記録媒体1(図9参照)と異なり、位置決め層3が一つしか設けられていない。このようなホログラム記録媒体であっても、次のようにすれば、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録可能である。そして、厚み方向に情報を多重に記録できるために、先に示した場合と同様に、厚み方向の多重に記録される情報について、それぞれ異なる波長の光(参照光及び信号光)を用いてホログラム記録することが可能となる。すなわち、先に示した実施形態の場合と同様に、ホログラム記録媒体の厚み方向についても、高品質の記録再生が可能となる。
図5に示すホログラム記録媒体1を用いて厚み方向に多重に情報を記録する方法について説明する。まず、第2光源51から出射される赤色レーザ光のフォーカスが、位置決め層3に合うように対物レンズ48の制御を行って、ホログラム記録を行う。次に、先に対物レンズ48のフォーカス位置を調整するためにアクチュエータ54に対して与えられた電圧値に、一定のバイアス電圧を加える。このようにすれば、対物レンズ48の位置が所定の量だけ移動し、参照光及び信号光の照射位置を所定の量だけずらせる。このために、ホログラム記録媒体の厚み方向に多重に情報を記録することが可能となる。
次に、図6に示す実施形態について説明する。図6に示すホログラム記録媒体は、先に示したホログラム記録媒体1(図9参照)と異なり、複数のホログラム記録層6a、6bが設けられ、ホログラム記録層6a、6bと位置決め層3a、3bとが交互に配置されている。このようなホログラム記録媒体においては、位置決め層3aを用いて対物レンズ48のサーボ制御を行いながらホログラム記録層6aにホログラム記録を行い、位置決め層3bを用いて対物レンズ48のサーボ制御を行いながらホログラム記録層6bにホログラム記録を行うといったことが可能である。すなわち、ホログラム記録媒体の厚み方向に情報を多重に記録が可能である。このため、厚み方向の多重に記録される情報について、それぞれ異なる波長の光(参照光及び信号光)を用いてホログラム記録することが可能となり、先に示した実施形態の場合と同様に、ホログラム記録媒体の厚み方向についても、高品質の記録再生が可能となる。
(その他)
以上に示した実施形態においては、位置決め層の数が1つ又は2つである場合について示したが、これに限定される趣旨でなく、位置決め層の数は3つ以上であっても、もちろん構わない。
また、以上に示した実施形態においては、ホログラム記録媒体に対して照射した光を反射して、情報の記録や再生を行う反射型の構成を示したが、これに限定される趣旨ではなく、透過型の構成の場合にも本発明は適用可能である。
更に、以上に示した実施形態では、ホログラム記録再生装置(ホログラム記録装置及びホログラム再生装置)の光学系についてコリニア方式とした。しかし、本発明はコリニア方式の場合に限らず、信号光と参照光とを別々の方向からホログラム記録媒体に入射させる2光束方式を採用する構成の場合にも適用可能である。