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JP2005246704A - 樹脂材料の赤外線加工方法 - Google Patents

樹脂材料の赤外線加工方法 Download PDF

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JP2005246704A JP2004058085A JP2004058085A JP2005246704A JP 2005246704 A JP2005246704 A JP 2005246704A JP 2004058085 A JP2004058085 A JP 2004058085A JP 2004058085 A JP2004058085 A JP 2004058085A JP 2005246704 A JP2005246704 A JP 2005246704A
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Abstract

【課題】
赤外線ビームで樹脂材料を加熱する方法において、溶融接合と切断等異なる加工を一度に行う方法を提供する。
【解決手段】
樹脂材料に赤外線を照射して加熱する方法であって、赤外線透過固体材料を通して赤外線を照射し、
(1)該固体材料が樹脂材料表面に少なくとも2箇所で接触するか、または
(2)該固体材料が赤外線に対する屈折率の異なる少なくとも2種類の材料からなることを特徴とする加熱方法。
本発明の方法はとりわけ熱可塑性樹脂フィルム同士の接着に好適であり、赤外線透過固体材料の接触部のみ溶融接着され、冷却がきかない非接触部分は溶融切断される等、複数の加工を同時に行うことが可能となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は樹脂材料の接触式赤外線加熱方法に関する。さらに詳しくは、赤外線ビームを樹脂材料に向けて照射し加熱する方法において、特定の形状や光学特性を有する赤外線透過材料を用い、溶融接合と切断等異なる加工を一度に行う方法に関する。
熱可塑性樹脂フィルムの溶着する方法として、熱可塑性樹脂樹脂表層をなるべく低温に維持した上で、より内部の被溶着面近傍のみに溶着に必要な高温域を短時間で溶着する試みがなされている。これらの溶着方法として超音波溶着法、高周波溶着法、及び透過材/不透過材を重ね合わせた赤外線溶着(以下、赤外線透過界面選択加熱溶着法という)がある。
超音波溶着法では、超音波発振子より発生した超音波エネルギーが被溶着面で機械振動による摩擦熱に変換され、被溶着面近傍のみが選択的に発熱し溶着する。しかしながら、超音波溶着法では、被溶着材料が軟質樹脂の場合、超音波エネルギーが被溶着面に伝播される前に大幅に減衰するため、溶着が困難となる場合が多い。
高周波溶着法では、樹脂が金属製高周波発振ダイと支持台によって挟み込まれ、適度な圧縮状態が保たれる。ついで、金属製高周波発振ダイと支持台間で高周波を印加すると、交番電界中の樹脂は誘電損失により内部が瞬時に自己発熱する。高周波発振ダイは、熱可塑性樹脂フィルムと比べて高い熱伝導性をもつ金属であり加熱されない。このため、高周波発振ダイが接触する熱可塑性樹脂フィルム表層の熱を効率よく除熱することにより、樹脂表面は低温に維持される。内部の被溶着面近傍は、樹脂の自己発熱と低熱伝導性により高温状態が保たれる。このようにして、高周波溶着では、熱可塑性樹脂フィルム表層での顕著な収縮、破れ、焼爛、熱分解などの熱損傷を抑制し、溶着部の表面性状性に優れた溶着が可能となる。しかしながら、高周波溶着法では、高周波溶着に適した熱可塑性樹脂の材質が、工業用高周波帯域で高誘電損失を示す、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ナイロンなどに限られ、誘電損失が低い、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、フッ素系樹脂などの樹脂に対する溶着は困難である。
赤外線透過界面選択加熱溶着法は、熱源として赤外線ビーム、該赤外線ビームの透過性が高い樹脂と該赤外線ビームの透過性が極めて低く、吸収性が高い樹脂(以下単にそれぞれ透過性樹脂及び吸収性樹脂という)とを用いた溶着法である。透過性樹脂側より、透過性樹脂と吸収性樹脂が接触する被溶着面に向けて赤外線ビームを照射し、吸収性樹脂側の被溶着面での強い赤外吸収に伴う発熱によって、該透過性樹脂表面の熱損傷を伴うことなく、溶着面近傍を高効率に加熱・溶融させ溶着させる方法である。この場合例えば、赤外線ビームを発生する赤外線光源として、光源波長が0.8μmから0.96μmの半導体レーザー、若しくは光源波長が1.06μmのNdがドープされたYAGレーザー、吸収性樹脂には樹脂自体の赤外線吸収性が高いもの、若しくは赤外線吸収性が極めて高いカーボンブラックなどの無機顔料やシアニン系の有機色素を添加し、該赤外線光源波長域での赤外線吸収性を大幅に高めたものなどを用い、溶着継手を効率良く作製する技術がある。また、赤外線ビーム透過界面選択加熱溶着法の場合、必然として樹脂材料が、使用する赤外線ビームに対し高い透過性をもつものと、高い吸収性をもつ樹脂の組み合わせに限られてしまう。仮に、使用する赤外線ビームに対して高い吸収性をもつ樹脂同士のみを重ね合わせた後、赤外線ビームを非接触で直接照射した場合、赤外線ビーム照射側の樹脂表層で強い赤外吸収に伴う発熱により、被溶着面が溶着する以前に赤外線ビーム照射側の樹脂表層で、顕著な収縮、破れ、焼爛、熱分解などの熱損傷が生じ易くなり、溶着したとしても表面性状の悪化を招くこととなる。
また、軟質及び高周波帯域で誘電損失が低いため、従来の超音波溶着や高周波溶着が困難なものや、赤外線ビームを非接触で直接照射した場合に、赤外線ビーム照射側の樹脂表層での強い赤外吸収・発熱により表面性状が悪化し易いために、従来の赤外線溶着が困難であった材質を含めて幅広い材質の熱可塑性樹脂に対して、良好な溶着部の表面性状を維持しながら、短時間で溶着することができる溶着技術として、熱伝導性固体を接触させる赤外線溶着法がWO03/39843号に提案されている。
しかしながら従来の方法では、樹脂材料中の赤外線照射部位はどこも均一な温度となるため、1度の照射においては照射部全部を接合もしくは切断のどちらか等、1種類の加工しか出来なかった。本発明らは、同時に2種以上の加工が行える方法を鋭意研究した結果、本発明に到達した。
国際公開03/39843号パンフレット
本発明は、赤外線で樹脂を加熱加工する方法であって、樹脂表面の熱損傷を防止しながら、赤外線が照射される部位の温度を制御し、照射部位全部又は一部のみを接合又は接合と切断等、2種以上の加工が同時に行える方法を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の態様は次に示す樹脂の赤外線加熱方法に関する;
(1)樹脂材料に赤外線を照射して加熱する方法であって、赤外線透過固体材料を通して赤外線を照射し、かつ該固体材料が樹脂材料表面に少なくとも2箇所で接触することを特徴とする加熱方法。
本発明に係る第2の態様は次に示す樹脂の赤外線加熱方法に関する;
(2)樹脂材料に赤外線を照射して加熱する方法であって、樹脂材料表面に接触する赤外線透過固体材料を通して赤外線を照射し、かつ該固体材料が赤外線に対する屈折率の異なる少なくとも2種類の材料からなることを特徴とする加熱方法。
(3)前記固体材料が、樹脂材料表面に接触しない溝部を有することを特徴とする加熱方法は(1)の好ましい態様であり、
(4)前記溝部を有する固体材料が少なくとも2種類の赤外線透過材料からなり、樹脂材料表面に接触する部分と、樹脂材料表面に接触しない溝部の、赤外線に対する屈折率が異なることを特徴とする加熱方法は(3)の好ましい態様である。
さらに、本発明の好ましい態様として次の(5)〜(8)があげられる;
(5)少なくとも2層の熱可塑性樹脂材料からなる積層体に、赤外線を照射して加熱し層間を溶融接着する方法であって、赤外線ビーム照射側より、(A)赤外線透過固体材料、(B)第1層目の熱可塑性樹脂材料、(C)第2層目の熱可塑性樹脂材料、及び(D)支持体の順に重ね、(1)から(4)のいずれかに記載の方法により熱可塑性樹脂(B)と(C)を接着する溶融接着方法。
(6)赤外線ビーム照射側より、(A)赤外線透過固体材料、(B)第1層目の熱可塑性樹脂材料、(C)第2層目の熱可塑性樹脂材料、及び(D)支持体の順に重ね、(3)または(4)に記載の方法により熱可塑性樹脂を加熱する加工方法であって、固体材料(A)が樹脂材料(B)表面に接触する部分では熱可塑性樹脂間が溶融接着され、固体材料(A)が樹脂材料(B)表面に接触しない溝部では熱可塑性樹脂間が未溶着又は溶融切断される加工方法。
(7)赤外線ビームを発生する赤外線光源として、光源波長が9.6μm若しくは10.6μmの炭酸ガスレーザーを用い、かつ赤外線透過固体材料として、ゲルマニウム(Ge)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、シリコン(Si)若しくは砒素化ガリウム(GaAs)を用いることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の樹脂加工方法。
本発明によれば、熱可塑性樹脂フィルムに対して、溶着部表層での熱損傷、すなわち、顕著な収縮、破れ、バリ、焼爛、熱分解などの発生を極力抑制し、良好な表面性状を維持した上で、自由な形状の溶着が可能となる赤外線溶着方法が提供される。本発明は、赤外線で樹脂を加熱加工する方法であって、樹脂に接する赤外線透過固体材料の形状ないし光学特性によって、照射される部位の温度を制御することができる。これにより、2種以上の加工を同時に行うことができ、特に熱可塑性樹脂間の接合と未接合又は接合と切断を同時に行う方法を提供する。また、熱可塑性樹脂に一度の操作で複数の接合部または切れ目を入れる、熱硬化性樹脂を部分的に硬化させる、等の応用をも提供する。
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体を赤外線溶着するにあたり、赤外線ビーム照射側より、赤外線透過固体材料、熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体、及び支持体を順に重ね、圧縮下に赤外線ビームを赤外線透過固体材料を通して被溶着面に向けて照射することにより溶着又は切断する方法であって、赤外線透過固体材料の熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体に接触する部分としない部分を自由なパターンにすることで接触部と非接触部の加工態様(溶着、未溶着、切断)を自由に選択できる加工方法を提供する。
熱可塑性樹脂フィルムの接触式赤外線溶着とは、熱可塑性樹脂フィルム同士、若しくは熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂成形体の被溶着面同士を重ね合わせた状態で、外部より赤外線ビームを被溶着面に向けて照射し被溶着面を加熱・溶融させ、被溶着面同士を接合する熱可塑性樹脂フィルムの熱接合方法を意味する。
本発明の接触赤外線溶着方法を、実施するための典型的な基本構成要件は、赤外線ビームを発生する赤外線光源、赤外線ビーム、赤外線透過材料、及び支持体である。赤外線透過材料と支持体の間に熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体が置かれ、赤外線透過材料は、同材料に近い熱可塑性樹脂フィルム(以下第一層の熱可塑性樹脂フィルムということがある)の表層に接触している。本発明の赤外線透過材料は、第一層目の熱可塑性樹脂フィルム表層に接触している部分としていない部分を有する構造とされている。赤外線透過材料は、第一層の熱可塑性樹脂フィルムと接触していることにより強いヒートシンク作用を示す。
本発明においては、赤外線ビーム照射側より、赤外線透過材料、溶着を意図する熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体、及び支持体を順に重ね、赤外線透過固体材料と該第一層目の熱可塑性樹脂フィルム、及び被溶着面同士の接触状態を保つように、赤外線透過固体材料と支持体との間に適度な圧縮力を負荷させ、赤外線ビームを被溶着面に向けて赤外線透過固体材料を通して照射して、赤外線加工が行われるが、接触部と非接触は別の加工となる。
赤外線透過固体材料が第一層目の熱可塑性樹脂フィルム表層に接触している部分は、赤外線ビーム照射の際に、第一層目の熱可塑製樹脂フィルムの赤外線ビーム照射側表層で生じる赤外吸収に伴う発熱を、赤外線透過固体材料側に放熱させることができるので、過度の温度上昇を抑え、熱可塑性樹脂フィルム表層の熱損傷を防止することができる。
また、非接触部分は、赤外吸収に伴う発熱を、赤外線透過固体材料側に放熱させることができないので、過度の温度上昇がおこり、熱可塑性樹脂フィルムは溶断させれる。
また、「接触部の屈折率>非接触部の屈折率」とすれば、光の「屈折率の大きい方向に曲がる、屈折率の大きい材質の中に閉じ込められる」という性質から、赤外線ビームが赤外線透過材料中を透過中に屈折率の大きい部分(接触部)に集まり、その結果として非接触部を透過し熱可塑性フィルム表層に到達する赤外線ビームのエネルギー密度は小さくなり、その部分は溶着されない。
そのために、本発明では、赤外線透過固体材料は、第一層目の熱可塑性樹脂フィルム表層に接触する部分と非接触部分のパターンを自由にすることで(例えば、市松模様のようなもの)一度の赤外線ビームの照射によって、自由な溶着パターン、溶断パターンが可能になるという効果が発揮される。
本発明の赤外線溶断シール方法を実施するための溶着装置の構成例を図1に示した。図1では赤外線透過固体材料2が溝つきであって、これを通して赤外線ビーム1が照射される。赤外線透過固体材料2は、第一層目の熱可塑性樹脂フィルム5と接触しており、他の熱可塑性樹脂フィルム6が熱可塑性樹脂フィルム5と支持体7の間に置かれている。図1は赤外線透過固体材料の溝部が矩形の例を示したが、曲線で構成されていてもかまわない。
図2は、溝部が多数の線状の溝になっている赤外線透過固体材料の例であり溝部は市松模様のように自由な凹凸であっても良い。
図1、2に示したいずれの場合も、溝部ないし切れ目では赤外線透過固体材料が接触しないため、放熱作用がおきず樹脂表面は接触部に比べてより高温となる。したがって接触部は溶着、非接触部は切断される等、異なる加工を同時に行うことが出来る。
また、図3は白で示す部分と黒で示す部分の屈折率が異なる例を表わす。このように赤外線透過固体は光学特性の異なる複数の材料から構成されていても構わない。照射する赤外線に対する屈折率の異なる材料を組み合わせることで樹脂表面温度を更に制御することができる。特に図1、2において、接触部と溝部にそれぞれ屈折率の異なる材料を用いるのが好ましい態様である。
図1、2、3には一体型の赤外線透過固体に溝ないし凹部を設けて非接触部とする例を示したが、図4のように複数個に分かれた赤外線透過固体材料を用いてもかまわない。
本発明において、熱可塑性樹脂フィルムとは、厚さが1μm以上のフィルム若しくはシート形状の熱可塑性樹脂成形品を意味する。通常熱可塑性樹脂フィルムの製法としては、インフレーション成型法、カレンダー成形法、押出成形法、キャスト成形法、発泡成形法、射出成形法、及び圧縮成形法が上げられる。フィルム単体としては、単一の樹脂組成からなる単層フィルムのみならず、フィルムの断面の樹脂組成が分割・多層化された多層フィルムであってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体とは、前記の熱可塑性樹脂フィルムと異形のもの、すなわち厚さが一様でない部分をもつ熱可塑性樹脂成形体を意味する。通常の製法としては、射出成形法、ブロー成形法、チューブ成形法、異形押出成形法、発泡成形法、及び圧縮成形法が上げられる。
本発明での赤外線ビームを発生する赤外線光源は、光源波長が0.7μm以上1,000μm以下の範囲にあり、かつ赤外線ビームの照射により使用する熱可塑性樹脂の溶着面を溶融温度にまで十分に加熱し得る波長と出力を発生するものが選ばれる。
赤外線光源としては、赤外線ランプ、若しくは赤外線レーザーのどちらを用いてもよく、赤外線ランプの種類としては、光源波長が0.7μm以上の赤外線をもつハロゲンランプ、若しくはキセノンランプ、一方、赤外線レーザーの種類としては、前記の光源波長範囲内の赤外線を発生する固体レーザー、半導体レーザー、気体レーザー、色素レーザー、及び化学レーザーのいずれを用いてもよい。より具体的には、固体レーザーの場合、光源波長が0.94μmから1.4μmの範囲にあるNdがドープされたYAGレーザー(以下、Nd:YAGレーザーと称する)、及び半導体レーザーの場合、光源波長0.8μmから0.96μmの範囲にあるAlGaAsレーザー、InGaAsレーザーが上げられる。
これらのNd:YAGレーザー及び半導体レーザーはともに平均出力が数十W以上の高出力タイプのものが存在するため、該レーザーからの赤外線ビームの照射により容易に発熱する熱可塑性樹脂フィルムとを組み合わせて用いる。ただし、これらNd:YAGレーザー、及び半導体レーザーは、溶着を意図したい熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体が、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどの可視光域での透過性が極めて高い透明性樹脂の場合、該透明性樹脂に赤外線ビームを照射しても、透過性が高く加熱が困難な場合がある。
このため、これらの透明性樹脂を含めて幅広い種類の熱可塑性樹脂に対しても、比較的強い加熱作用をもち溶着を可能とする赤外線レーザーを用いるのが好ましいといえる。このような要件を備える赤外線レーザーとしては次に示すものがある。
すなわち、その一つは固体レーザーの一つで光源波長が1.9〜2.94μmの範囲にあるHo、Er、若しくはTmをドープしたYAGレーザー(以下、Ho、Er、Tm:YAGレーザーと仮称する)、もう一つは気体レーザーの一つで光源波長が9.6μm若しくは10.6μmの炭酸ガスレーザーである。
とくに、後者の炭酸ガスレーザーは全ての熱可塑性樹脂に対して強い加熱作用をもつ上に、発振器の平均出力が数Wから数十KWに及ぶ高出力化が可能であるため、本発明の赤外線光源として好適である。実際、同レーザーは、全ての熱可塑性樹脂に対する強い加熱作用と高出力化が可能な特長を活かし、非接触による穴あけや切断加工分野で普及している。
本発明の赤外線光源としては、前記に例示した赤外線ランプ及び赤外線レーザーに限らず、赤外線光源波長が、前記の0.7μm以上1,000μm以下の範囲にあり、かつ照射により使用する熱可塑性樹脂の溶着面を溶融温度まで十分に加熱し得る波長と出力を発生するものであればよい。
本発明の赤外線透過固体材料は、赤外線ビームを透過させること、及び熱可塑性樹脂フィルム表層での強い赤外吸収により発生した熱の一部を効率よく吸収し得る強いヒートシンク作用によって、赤外線ビーム照射側の熱可塑性樹脂フィルム表面の過熱を抑え、熱損傷を防止する役割を果たす。
赤外線透過固体材料としては、赤外線ビーム照射中、溶融したり、熱衝撃による割れなどの破損が生じにくい材質であり、かつ繰り返し連続使用しても容易に除熱可能であって、蓄熱性が低い性質をもつ材質でことが好ましい。本発明の赤外線透過固体材料の材質上としては、使用する光源波長に対して高い透過性をもつことが必須であり、加えて高い熱伝導性、機械的強度及び耐熱性を備えていることが望ましい。
本発明の赤外線透過固体材料は、使用する光源波長によって適宜選択することができる。具体的には、光源波長が0.7μm以上の赤外線をもつハロゲンランプ及びキセノンランプ、光源波長が0.8μmから0.96μmの範囲にある半導体レーザー、及び光源波長が0.94μmから1.4μmのNd:YAGレーザー、及び光源波長が1.9μmから2.94μmの範囲にあるHo、Er、Tm:YAGレーザーの場合、透明アルミナ(Al、熱伝導度=36W/m・K)、透明ベリリア(BeO、熱伝導度=270W/m・K)、透明マグネシア(MgO、熱伝導度=48W/m・K)、及び透明石英(SiO、熱伝導度=1から10W/m・K)から選ばれる酸化物系の赤外結晶材料を用いるのが好ましい。
ただし、透明石英(SiO、熱伝導度≒1から10W/m・K)は、これら近赤外領域での透光性に優れるものの、一般に熱伝導性が低い材料であるため、上記の透明アルミナ、透明ベリリア、及び透明マグネシアと比べ、赤外線ビーム照射中及び照射後の蓄熱作用が強く、効率的な除熱の面で劣る。そのため、より好ましくは、高い熱伝導性をもつ透明アルミナ、透明ベリリア、及び透明マグネシアなどの酸化物系の赤外結晶材料を用いるのことが好ましい。
一方、光源波長が9.6μm若しくは10.6μmの炭酸ガスレーザーを用いる場合、Ge(ゲルマニウム、熱伝導度=59W/m・K)、ZnSe(セレン化亜鉛、熱伝導度=19W/m・K)、ZnS(硫化亜鉛、熱伝導度=27W/m・K)、Si(シリコン、熱伝導度=150W/m・K)、GaAs(砒素化ガリウム、熱伝導度=54W/m・K)などの赤外結晶材料が上げられる。
赤外線透過固体材料は、使用する赤外線を透過させる性質、これに加えより好ましくは、高い熱伝導性、機械的強度及び耐熱性を備えていれば、前記に例示した赤外結晶材料に限らず、その他の赤外結晶材料、若しくは赤外ガラス材料を用いてもよい。ここで、赤外結晶材料及び赤外ガラス材料とは、それぞれ、該赤外線透過固体材料の中で、結晶性無機材料及び非晶性無機材料であるものを意味する。
赤外ガラス材料としては、石英(SiO2)を主成分とする石英系ガラス材料、ゲルマニア(GeO)を主成分とするゲルマネート系ガラス材料、アルミナ(Al)を主成分とするアルミネート系ガラス材料の酸化物系ガラス材料のほかに、硫化物系ガラス材料、及びカルコゲナイドガラス材料が上げられる。
赤外結晶材料及び赤外ガラス材料の厚さの適正な範囲の目安として、圧縮力に対する耐圧性、赤外線透過率、及びヒートシンクとしての放熱作用を考慮して、0.1mm以上100mm以下の範囲から選ばれる。
本発明の赤外線溶着に用いる支持体とは、赤外線ビームを照射中、前記の赤外線透過固体材料と熱可塑性樹脂フィルム及び被溶着面同士が安定して接触状態を保つためのものであり、その機能をもつ限りにおいて材質や形状には特に制限はない。例えば、圧縮力によっても塑性変形が生じにくく、適度な剛性をもつスチール、アルミニウム合金、銅合金などの金属製のブロックや板が挙げられる。
また、赤外線ビームが熱可塑樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体を透過し、支持体まで達する場合、赤外線ビーム照射側の金属製支持体の表面を鏡面とし、赤外線ビームの反射率を高め、熱可塑性樹脂フィルム側に赤外線ビームを効率よく反射させることによって、被溶着面を再加熱する工夫がなされてもよい。またこれとは逆に、透過した赤外線ビームが支持体表面で反射しないように、支持体の赤外線ビーム照射側表面に赤外線吸収塗料や赤外線吸収性を高めるその他の表面処理を施す工夫がなされてもよい。
支持体は、その赤外線ビーム照射側表層がゴム緩衝層であってもよい。厚さが薄い、若しくは熱収縮性が高い熱可塑性樹脂フィルム同士を溶着するにあたって、熱可塑性樹脂フィルム自身の表面起伏などにより、赤外線透過固体材料と熱可塑性樹脂フィルム、及び被溶着面同士の物理的接触状態(接触圧力及び接触面積)が不足し、溶着後に溶着部でボイドや破れ、顕著な収縮などの欠陥が生じやすい場合がある。このようなとき、支持体の赤外線ビーム照射側表層が該ゴム緩衝層であることによって、赤外線透過固体材料と熱可塑性樹脂フィルム、及び被溶着面同士の物理的接触状態を改善し、溶着後の溶着部にボイドや破れ、顕著な収縮どの欠陥を抑えることができる。なお、該ゴム緩衝層は耐熱性を備えていることが好ましい。このような要件を備えるものとしては、例えば、耐熱性シリコーンゴムが上げられる。該シリコーンゴムは、硬度として、ショアA硬度で40以上90以下、厚さの目安として、0.1mm以上のものを用いる。
支持体の赤外線ビーム照射側表層は、赤外線ビーム照射側より順に、金属製赤外線反射薄膜層及びゴム緩衝層が重ね合わされた構造であってもよい。これにより、金属製赤外線反射薄膜層が無い場合と比べ、熱可塑性樹脂フィルムを透過した赤外線ビームによるゴム緩衝層の発熱を防止することができる。ただし、金属製赤外線反射薄膜層は、圧縮力負荷のもとゴム緩衝層による赤外線透過固体材料と熱可塑性樹脂フィルム表面、及び被溶着面同士の接触状態の改善効果がなるべく損われないように、熱可塑性樹脂フィルムの形状に合わせて、容易に追従変形する金属材料を選ぶことが重要である。このような要件を具備する金属製赤外線反射薄膜層として、例えば厚さが1μm以上100μm以下の範囲にあるアルミニウム、銅、及びステンレス鋼製の箔が上げられる。
赤外線透過固体材料及び支持体には、冷却器を設けることにより、赤外線ビーム照射により加熱された熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体からの熱伝導によって、それぞれに蓄積した熱を効率良く取り除く工夫、またこれとは逆に補助加熱器を設けることにより一定の温度に保持する工夫がなされてもよい。
赤外線透過固体材料、熱可塑性樹脂フィルム若しくは熱可塑性樹脂成形体と支持体を重ね圧縮した状態を保つのは、赤外線ビーム照射中、赤外線透過固体材料と支持体とによって、赤外線透過固体材料と熱可塑性樹脂フィルム表面、及び被溶着面同士が物理的接触状態を維持しておく必要があるためである。このときの圧縮力としては例えば、バネ、油圧、空気圧などを利用した機械的加圧機構がある。
前記の圧縮した状態とは、赤外線ビームを被溶着面に向けて赤外線透過材料を通して照射し、かつ移動する間は、少なくとも赤外線ビーム照射方向にある赤外線透過固体材料と熱可塑性樹脂フィルム表面、及び被溶着面同士が接触し、圧縮状態が保たれていればよいことを意味する。
圧縮する程度としては、圧縮力不足により溶着後の溶着部にボイドや破れ、顕著な収縮などの欠陥が生じないこと、また反対に過剰な圧縮力により熱可塑性樹脂フィルム、若しくは熱可塑性樹脂成形体の破損が生じない程度の圧縮応力を保持させればよい。例えば、圧縮応力の適正な範囲の目安として、0.01MPaから10MPaが挙げられる。
前記の赤外線光源である赤外線ランプ若しくは赤外線レーザーより発生した赤外線ビームの伝送・照射方法としては、光学ミラー、ファイバー、レンズ、及びマスクなどを用いる方法がある。
本願発明の赤外線加工方法の基本構成図 本願発明の加工方法に用いる赤外線透過固体材料の構成図 本願発明の加工方法に用いる赤外線透過固体材料の構成図 本願発明の加工方法に用いる赤外線透過固体材料の構成図
符号の説明
1 赤外線レーザビーム
2 溝(又は切れ目)付赤外線透過固体材料
5、6 熱可塑性樹脂フィルム
7 支持台
図1の装置を用い、熱可塑性樹脂フィルムに対する溶断シール加工性を実証した。赤外線光源として、広範囲な熱可塑性樹脂に対して強い加熱作用をもつ炭酸ガスレーザー(波長=10.6μm、最大出力=100W、連続波発振、加工面におけるビーム径=約2mm)を用いた。赤外線透過固体材料としてGe(ゲルマニウム、熱伝導度=59W/m・K、直径=15mm、炭酸ガスレーザー透過率=98%@Φ15mm)、支持体として、アルミニウム板を用いた。熱可塑性樹脂フィルムのサイズは600mm×700mmとし、二枚に重ねたものを前述アルミニウム板の上に固定し、圧力空気を用いて圧力が約0.1MPaとなるように溝付Geを押付けた。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製、ウルトゼックス4020、融点=125℃、厚さ=300μm)を用いた。
溶着強度の評価:溶着後の熱可塑性樹脂フィルムに対し、溶着ビードと垂直な方向に幅15mmの試験片を切り出した。引張試験機を用い、チャック間距離を20mm、引張速度200mm/分で試験片を引張った。破断に至るまでの最大荷重を溶着強度とした。
図1に示した装置にフィルムを設置し、炭酸ガスレーザービームを溝にそって速度約20mm/秒で移動させた。レーザー出力は約20Wであった。炭酸ガスレーザービーム照射後は、溶着した熱可塑性樹脂フィルムを装置から直ちにとり出した。とり出したGeが接触している部分の溶着幅は約2mmであり、その間の非接触部は溶断されていた。溶着強度は50N/15mmであった。引張試験中、溶着不足を意味する溶着界面での剥離は認められなかった。溝付赤外線透過固体材料を用いた接触式炭酸ガスレーザー溶断シール法により、溶着と溶断が同時にできた。
以上のように、接触部は、Geによる放熱効果により溶着され、溝部は、放熱がないため溶断された。
また、接触部と溝部の屈折率を変えることで、接触部と非接触部のレーザビーム密度を変えることでそれぞれに適したエネルギー密度に変えることができる。接触部をGe(屈折率4、@10.6μ)、非接触部をZnSe(屈折率2.4、@10.6μ)とすると、レーザビームは屈折率の大きいGeに集まる。これは、光ファイバーと同じ原理である。それにより、接触部は溶着され、非接触部は、レーザビームのエネルギーが小さくなるため、未溶着となる。図3のような構成の固体材料に適用すれば、一度のビーム照射で複数の溶着線を得ることができる。また市松模様であれば、市松模様の溶着が一度のレーザ照射で達成できることになる。
図3に示した構成の固体材料を用いた他は、実施例1と同様の装置にフィルムを設置した。接触部をGe、非接触をZnSeとし溝(ZnSe部)にそってレーザビームを約20mm/秒で移動させた、レーザー出力は約20Wであった。炭酸ガスレーザービーム照射後は、溶着した熱可塑性樹脂フィルムを装置から直ちにとり出した。Geが接触している部分の溶着幅は約2mmであり、その間の非接触部は未溶着であった。溶着強度は50N/15mmであった。引張試験中、溶着不足を意味する溶着界面での剥離は認められなかった。溝付赤外線透過固体材料を用いた赤外線加工法により、複数の溶着が同時にできた。











Claims (7)

  1. 樹脂材料に赤外線を照射して加熱する方法であって、赤外線透過固体材料を通して赤外線を照射し、かつ該固体材料が樹脂材料表面に少なくとも2箇所で接触することを特徴とする加熱方法。
  2. 樹脂材料に赤外線を照射して加熱する方法であって、樹脂材料表面に接触する赤外線透過固体材料を通して赤外線を照射し、かつ該固体材料が赤外線に対する屈折率の異なる少なくとも2種類の材料からなることを特徴とする加熱方法。
  3. 前記固体材料が、樹脂材料表面に接触しない溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の加熱方法。
  4. 前記溝部を有する固体材料が少なくとも2種類の赤外線透過材料からなり、樹脂材料表面に接触する部分と、樹脂材料表面に接触しない溝部の、赤外線に対する屈折率が異なることを特徴とする請求項3に記載の加熱方法。
  5. 少なくとも2層の熱可塑性樹脂材料からなる積層体に、赤外線を照射して加熱し層間を溶融接着する方法であって、赤外線ビーム照射側より、(A)赤外線透過固体材料、(B)第1層目の熱可塑性樹脂材料、(C)第2層目の熱可塑性樹脂材料、及び(D)支持体の順に重ね、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法により熱可塑性樹脂(B)と(C)を接着することを特徴とする溶融接着方法。
  6. 赤外線ビーム照射側より、(A)赤外線透過固体材料、(B)第1層目の熱可塑性樹脂材料、(C)第2層目の熱可塑性樹脂材料、及び(D)支持体の順に重ね、請求項3または請求項4に記載の方法により熱可塑性樹脂を加熱する加工方法であって、固体材料(A)が樹脂材料(B)表面に接触する部分では熱可塑性樹脂間が溶融接着され、固体材料(A)が樹脂材料(B)表面に接触しない溝部では熱可塑性樹脂間が溶融切断されることを特徴とする加工方法。
  7. 赤外線ビームを発生する赤外線光源として、光源波長が9.6μm若しくは10.6μmの炭酸ガスレーザーを用い、かつ赤外線透過固体材料として、ゲルマニウム(Ge)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、シリコン(Si)若しくは砒素化ガリウム(GaAs)を用いることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の樹脂加工方法。
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