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JP2005013045A - 有機性廃棄物からの連続的水素生成方法 - Google Patents

有機性廃棄物からの連続的水素生成方法 Download PDF

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JP2005013045A
JP2005013045A JP2003179864A JP2003179864A JP2005013045A JP 2005013045 A JP2005013045 A JP 2005013045A JP 2003179864 A JP2003179864 A JP 2003179864A JP 2003179864 A JP2003179864 A JP 2003179864A JP 2005013045 A JP2005013045 A JP 2005013045A
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fermenter
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JP2003179864A
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Tatsuya Noike
達也 野池
Masashi Yokoyama
昌司 横山
Takashi Kono
孝志 河野
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Takuma Co Ltd
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Abstract

【課題】微生物を用いて水素生成を効率的に行う方法を提供すること。
【解決手段】水素生成能力を有する微生物と有機廃棄物とを反応させて水素を生成するに際して、水素発酵槽へ供給する基質中の水溶性炭水化物および水溶性タンパク質の濃度を所定の濃度以上に制御しつつ連続培養することによって、有機物から水素を連続的に生成する方法を提供する。さらに、アンモニア態窒素を所定の濃度で供給することにより、水素生産の効率が上昇する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素生成能力を有する微生物を用いて、有機物から、発酵により連続的に水素または水素およびメタンを生成する方法に関する。さらに詳しくは、水素発酵槽へ供給する有機酸の濃度を一定量またはそれ以上となるように制御する、水素、または水素とメタンの連続生成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、化石燃料などのエネルギー源は、枯渇問題とその消費量の増大に基づくCO、NO、SOなどの排出の問題を抱えている。これらの問題に対する対策として、再生可能なエネルギーが注目を浴びている。その中でも、水素は発熱エネルギーが大きいこと、CO、NO、SOなどを排出しないことから、次世代の燃料として期待されている。また、メタンも、COを発生するものの、エネルギー源として期待されている。
【0003】
水素ガスは、炭化水素からの水蒸気改質、水の電気的、熱化学的あるいは放射線分解などの物理化学的方法で生産されているのが現状であり、エネルギーを大量に消費し、また炭化水素からの水蒸気改質においては大量の二酸化炭素を排出するという問題がある。
【0004】
他方、有機廃棄物による環境汚染も問題となっている。水素も、メタンも有機廃棄物から生成されるため、環境汚染を防止しつつ、エネルギー源を確保できるという利点があり、有機廃棄物からの微生物による水素生産およびメタン生産の研究が行われている。
【0005】
微生物による水素生産は、光合成細菌を用いる方法、あるいは非光合成微生物の嫌気培養により行われている。光合成細菌(緑藻類あるいは藍藻類)を用いる方法は、光を必要とする。しかし、太陽光だけでは光量が不足し、光を照射しなければならないためエネルギーを大量使用する、広大な面積を必要とするなどの問題があり、実用化されるに至っていない。
【0006】
他方、非光合成微生物における水素生産は、一般に嫌気性であるため通気が不要であり、大型の発酵槽で水素の生産を行うことができる、あるいは強い有機物分解能を有しているため、バイオマス、有機性廃棄物などから水素を生産できるなどの利点がある。
【0007】
嫌気性細菌を用いる水素生産においては、種々の方法が検討されている。たとえば、特許文献1は、偏性嫌気性かつ水素生産性クロストリジウム属の細菌と酵母とを混合培養することにより水素を生産させることを記載しているが、水素生産量が十分ではない。特許文献2は、クロストリジウム属の細菌と光合成細菌とを暗嫌気条件下共生させて、混合培養することにより水素を生産させる方法が記載されている。この方法では、培養管理が容易でないことなどの問題がある。特許文献3には、シロアリの腸管系微生物群を用いる有機廃棄物からの水素生産方法が記載されているが、これらの微生物はセルラーゼ分解酵素を生産し、専ら、木質材料からの水素生産を意図し、汎用性がないという問題がある。特許文献4は、汚泥コンポスト中の微生物を用いる水素生産方法を記載しているが、滞留時間が長く、実質的に連続発酵が困難であるという問題がある。
【0008】
上記のように、有機物から水素発酵を行った例はあるが、これらの例は、全て有機廃棄物と水素発酵種汚泥を混合し、回分的に水素を生成させる方法に限られており、連続的に実際の有機性廃棄物を反応槽に投入して水素生産を行うことに成功した例は報告されていない。そこで、実用化可能な、連続的に安定して水素を発酵させる方法が望まれている。
【0009】
さらに、水素発酵とメタン発酵とは、同じ微生物で行われることもあるが、発酵条件により、いずれか一方のみが行われる場合が多い。そのため、水素生産とメタン生産を同時に行うことができる方法も、新エネルギー源の確保の点から、待望されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−308591号公報
【特許文献2】
特開平8−294396号公報
【特許文献3】
特開平7−31484号公報
【特許文献4】
特開平7−75588号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、有機性廃棄物から、効率良く、連続的に水素を生産し、さらに、水素生産からの代謝物からメタンを生成して、有機廃棄物を有効利用できる方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素生成能力を有する微生物を用いて、有機物から水素を連続的に生成する方法であって、該微生物を含む水素発酵槽へ供給する基質中の水溶性炭水化物および水溶性タンパク質の濃度を所定の濃度以上に制御する工程を含む、水素の連続生産方法を提供する。
【0013】
好ましい実施態様においては、さらに、アンモニア態窒素を供給する工程を含む。
【0014】
好ましい実施態様においては、前記有機物がオカラであり、前記水溶性炭水化物および水溶性タンパク質がオカラに由来する。
【0015】
また、別の好ましい実施態様においては、前記水溶性炭水化物および水溶性タンパク質が、それぞれ、3000mg/Lまたはそれ以上の濃度に制御して供給される。
【0016】
さらに好ましい実施態様においては、前記水溶性炭水化物および水溶性タンパク質が、それぞれ、3500mg/Lまたはそれ以上の濃度で供給される。
【0017】
別の好ましい実施態様においては、前記微生物がエンテロバクター属に属する微生物である。
【0018】
本発明は、また、水素発酵槽とメタン発酵槽とを備えた水素およびメタンの連続発酵装置であって、
該水素発酵槽には、水素回収手段、有機性廃棄物に由来する水溶性炭水化物および水溶性タンパク質を所定量またはそれ以上の量で供給する基質供給手段、および水素発酵培養液を該メタン発酵槽に供給する培養液供給手段が設けられ、
該メタン発酵槽には、メタン回収手段およびメタン発酵により生成するアンモニアを含むメタン発酵液あるいは排水の一部を該水素発酵槽に循環するアンモニア循環手段が備えられている、水素およびメタンの連続発酵装置を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の有機物からの水素の連続的生成は、水素発酵槽へ供給する基質中の有機物の濃度を所定量またはそれ以上に制御することを特徴とする。
【0020】
本発明に用いられる有機物としては、有機性廃棄物が好ましく用いられる。有機性廃棄物とは、炭水化物(糖類)、タンパク質などの有機物質を含む産業廃棄物あるいは生活排水などをいい、特に制限されない。例えば、豆腐の製造において副生するオカラなどの食品製造時の廃棄物、パルプ製造時の廃棄物、都市下水などが例示されるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明に使用する微生物は、水素発酵能を有する微生物であれば、特に制限がない。光合成を行わず、嫌気性の微生物であることが好ましい。微生物としては、有機性廃棄物中に生息しており、水素生産能力を有する微生物(混合微生物、微生物フローラ)でもよく、水素生産能を有する既知の単離された微生物であってもよい。一般に、有機廃棄物中に生息する微生物としては、シトロバクター(Citrobactor)属、エンテロバクター(Enterobactor)属、クロストリジウム(Clostridium)属、クレブシエラ(Klebsiera)属などに属する微生物、またはメタン生成細菌などが知られているが、これらに制限されない。使用する有機廃棄物中の微生物を用いても良く、有機廃棄物の種類(成分)に応じて、適宜選択し、組合せて使用してもよい。オカラなどの食品製造時の副生物の処理には、エンテロバクター属に属する微生物が好ましく用いられる。
【0022】
また、水素発酵時に生産される有機酸(酢酸、乳酸など)を資化し得る酵母とともに培養してもよい。この混合培養により、水素生産が促進され得る。このような酵母としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属、ピヒア(Pichia)属、デバリオマイセス(Debariomyces)属、ハンセヌラ(Hansenula)属などに属する酵母が挙げられる。
【0023】
本発明においては、水素生成能力を有する微生物を、水素発酵槽内で有機物(有機性廃棄物)と接触させる。このとき、水素発酵槽へ供給する基質中の水溶性炭水化物および/または水溶性タンパク質の濃度を所定濃度以上に制御しつつ連続培養する。この水溶性炭水化物および/または水溶性タンパク質は、有機性廃棄物に由来する。このとき添加される水溶性炭水化物および/または水溶性タンパク質の濃度は、使用する微生物の種類、量によって変化し、水素生産を停止しないような濃度で供給する。
【0024】
水素発酵に用いる微生物およびその量にも依存するが、水溶性炭水化物および水溶性タンパク質は、好ましくは、それぞれ、3000mg/L以上、より好ましくは3500mg/L以上の濃度で水素発酵槽に供給される。
【0025】
水溶性タンパク質の濃度が3000mg付近では、後述のように窒素枯渇の問題があり、水素生産に影響を与えるので、窒素源を添加することが好ましい。水溶性タンパク質が3500mg/L以上であれば、窒素源はほぼ確保できるので、特に窒素源を供給する必要はない。しかし、窒素源を供給することにより、水素の生産効率(水素収率:生成したHモル数/ヘキソースのモル数)が上昇するので、窒素源を供給することが好ましい。供給する基質中の水溶性タンパク質の濃度が高すぎると、資化されずに排出される量が増加するので、好ましくない。供給する基質中の水溶性タンパク質の最大濃度は、水素発酵の定常状態における排出液中の水溶性タンパク質濃度を考慮して決定すればよい。
【0026】
水溶性炭水化物は、水素発酵の原料となる。供給する基質中の水溶性炭水化物の濃度が3000mg/L以上であれば、水素生産には影響を及ぼさないと考えられる。3500mg/L以上が好ましく、4000mg/L以上がより好ましく、5000mg/L以上がさらに好ましい。しかし、供給する基質中の水溶性炭水化物の濃度が高すぎると、資化されずに排出される量が増加する、あるいは水素吸収を伴う有機酸(例えば、プロピオン酸)の生成が増加するなどの問題があるので、好ましくない。供給する基質中の水溶性炭水化物の最大濃度は、水素発酵の定常状態における排出液中の水溶性炭水化物濃度あるいは有機酸濃度を考慮して決定すればよい。
【0027】
なお、有機性廃棄物を希釈して、いずれかの濃度が規定値以下になった場合に、濃度を調整するために水溶性炭水化物および水溶性タンパク質を添加することも、本発明の範囲に含まれる。
【0028】
本発明においては、上記のように、水溶性タンパク質濃度が低い場合、窒素源を供給することが好ましい。窒素源としては、微生物に利用しやすいアンモニア態窒素(例えば、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウムなど)が好ましく用いられる。窒素源の添加により、水素の生成が促進され、水素収率も上昇する。
【0029】
窒素源としてのアンモニア態窒素も、所定の濃度で供給するように制御することが好ましい。約800〜1500mg−N/Lの濃度で水素発酵槽に供給されることが好ましい。あるいは、水素発酵の定常状態において、培養液中のアンモニア態窒素が、約600〜1000mg−N/Lの濃度、より好ましくは700〜800mg−N/Lの濃度となるように、供給されることが好ましい。このアンモニア態窒素は、水溶性炭水化物および水溶性タンパク質を含む基質に混合して水素発酵槽に供給してもよく、水溶性炭水化物および水溶性タンパク質を含む基質とは別に水素発酵槽に供給してもよい。
【0030】
水素生成能力を有する微生物と上記供給された有機物(有機性廃棄物あるいは水溶性炭水化物および水溶性タンパク質)との嫌気的な条件下における反応により、水素が生成される。水素発酵の温度などの条件は特に制限がなく、当該微生物の最適な条件(一般的には、20〜50℃、好ましくは30〜37℃)で培養される。
【0031】
上記本発明の方法を具体化し得る装置としては、水素発酵槽を備え、この水素発酵槽に、有機性廃棄物に由来する水溶性炭水化物および/または水溶性タンパク質が所定量またはそれ以上の量で供給する基質供給手段が備えられている装置が挙げられる。さらに、アンモニア態窒素を供給し得る手段を備えていることがより好ましい。
【0032】
このような水素生成装置の水素発酵槽は、水素分圧を低下させ、水素を効率的に生成させるために、減圧下、稼動できるように構成されているか、生成した水素ガスを通過させるガス分離膜を備えていることが好ましい。
【0033】
水素発酵においては、水素生成時に有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸など)が同時に生産され、また、利用されなかった水溶性炭水化物が排出される。そこで、これらの有機酸および水溶性炭水化物を利用して、同時にメタンを生産することができる。従って、本発明は、水素およびメタンの連続発酵装置を提供する。
【0034】
本発明の、水素およびメタン連続発酵装置の概念を、図1に示す模式図で説明する。本発明の水素およびメタン連続発酵装置1は、水素発酵槽2とメタン発酵槽3と備えている。水素発酵槽2には、水素回収手段4、基質供給手段5、および培養液供給手段6が設けられている。メタン発酵槽3には、メタン回収手段7およびアンモニア循環手段8が備えられている。
【0035】
水素発酵槽2には、基質供給手段5から有機性廃棄物に由来する水溶性炭水化物および水溶性タンパク質を含む基質が供給され、生成した水素は水素回収手段4で回収され、水素発酵槽内の培養液は、培養液供給手段6によりメタン発酵槽3に供給される。メタン発酵槽3で生成したメタンはメタン回収手段7で回収され、メタン発酵により生成するアンモニアを含むメタン発酵液あるいは排水の一部は、アンモニア循環手段8で、水素発酵槽2に循環される。このように構成することにより、外部から新たにアンモニアなどを添加することなく、有機廃棄物が有効に利用され、エネルギーが回収されるとともに、廃棄物の量も低減する。
【0036】
なお、この装置において、水素発酵槽が、水素を効率的に生成させるために、減圧装置あるいはガス分離膜を備えていることが好ましいのは、上記の通りである。
【0037】
なお、メタン発酵は、メタン発酵に用いられている汚泥、あるいは、例えば、メタン生成細菌といわれる、メタノコッカス(Methanococcus)属、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属、メタノサルシナ(Methanosarcina)属などに属する微生物を用いて行うことができる。本発明においては、水素発酵において生成した有機酸(酢酸、酪酸など)と水溶性炭水化物とが炭素源となる。メタン発酵においては、酢酸からメタンが生成されるため、本発明は効率のよいメタン生成法となる。メタン発酵により生成するアンモニアは、上記のように、水素発酵槽に循環されて、水素発酵に利用される。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、この実施例に制限されない。
【0039】
(基質の調製)
有機物として、オカラを使用した。オカラは全国で年間約75万トン生産されており、その90%以上が焼却処分を受けているため、その有効利用が望まれている。オカラを水道水で希釈し、70℃、30分間の加熱処理を行い、次いで濾布を用いて濾過した。得られた濾液を希釈して、水溶性炭水化物および水溶性タンパク質がそれぞれ、約3000mg/L、約4000mg/L、および約5000mg/Lとなるように基質を調製し、それぞれ、基質A−3000、基質B−4000および、基質C−5000とした。また、基質中の水溶性炭水化物および水溶性タンパク質の濃度がそれぞれ、約3000mg/Lとなるように調製し、塩化アンモニウムを1250mg−N/Lとなるように添加した基質D−3000+Nを調製した。それぞれの基質の組成(成分)を、表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 2005013045
【0041】
(使用した微生物)
微生物としてエンテロバクター属に属する以下の3菌株:エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)IAM12348T株、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)IAM12349T株、およびエンテロバクター・サカザキイ(Enterobacter sakazakii)IAM12660T株の混合菌を用いた。
【0042】
(培養条件)
連続培養は、温度35℃、基質の滞留時間が6時間となるように行った。培養液のpHは3N−NaOHで5.5±0.1となるように制御した。培養方法としては、水素発酵槽への基質の流入と水素発酵槽からの培養液の流出を常時等流量で行う、連続培養方法を採用した。図2に、培養装置の概略図を示す。
【0043】
(分析)
ガス生成量は、ガスホルダーのメモリの変化で測定し、その体積を標準状態(0℃、1気圧)におけるガス量に換算した。発生ガス中の水素と二酸化炭素濃度は、TCD−ガスクロマトグラフ(SHIMAZU GC−8A)を用いて測定した。アンモニア濃度、有機酸濃度は、キャピラリー電気泳動装置を用いて測定した。水溶性炭化水素はフェノール硫酸法により、水溶性タンパク質はローリー法により測定した。全固形分濃度(TS)と揮発性固形分濃度(VS)は、適量の試料を105℃および600℃のオーブン中で乾燥させ、重量差を求めることにより測定した。連続培養中の分析は、流出した培養液を用いて行った。
【0044】
(実験結果)
それぞれの基質を用いた場合の水素生成速度、水溶性炭水化物および水溶性タンパク質の経時変化を、図3〜6に示す。基質A−3000を用いた場合、図3に示すように、水溶性炭水化物は90%以上が分解された。培養開始当初は水素生成が認められたが、培養開始後50時間目以降は、水素吸収反応が起こり、以降、水素生成が認められなかった。この水素吸収の間も、水溶性タンパク質の濃度は減少し続けた。
【0045】
基質B−4000を用いた場合、図4に示すように、培養開始後225時間目以降は、平均約12ml/L/hrの速度で、水素を生成した。水素生成速度が安定すると、培養液中の水溶性タンパク質濃度もほぼ1000mg/Lに維持された。水素収率は、0.16であった。
【0046】
基質C−5000を用いた場合、図5に示すように、培養開始後160時間目以降は、平均約50ml/L/hrの速度で、水素を生成した。水素生成速度が安定すると、培養液中の水溶性タンパク質濃度もほぼ一定に維持された。特に、培養開始から280時間目以降は、培養液中の水溶性タンパク質濃度がほぼ1200mg/Lに維持され、水素生成速度もほぼ一定となった。水素収率は、0.52であった。
【0047】
基質D−3000+Nを用いた場合、図6に示すように、同じ水溶性タンパク質濃度で、塩化アンモニウムを添加しない基質A−3000と比べると、基質D−3000+Nは、水素吸収が起こることがなく、水素生成が継続した。実験開始後225時間目以降は、平均約35ml/L/hrの速度で水素を生成し、水溶性タンパク質の濃度も、約1000mg/Lに維持されていた。水素収率は0.62であった。
【0048】
安定状態における基質D−3000+Nの水素生成速度は、基質B−4000を用いた場合よりも大きかった。また、塩化アンモニウムを添加することにより、培養液中の水溶性タンパク質の濃度が一定に維持され、水素生成が行われること、および基質A−3000では、水溶性タンパク質の濃度が低下し続け、水素生産が水素吸収に変化したことから、図3においては、窒素源の枯渇が水素生成に影響を与えたと推定された。また、基質D−3000+Nは、基質B−4000およびC−5000と比較して、水素生成速度と有機酸濃度が安定する時間が早く、水素収率も高かった。これらのことから、基質として利用しやすい窒素源を用いることにより、水素生成の安定性を高め、同時に水素収率も向上させることができると考えられる。
【0049】
また、各基質を用いた場合の水素生成速度と有機酸濃度の経時変化を図7〜10に示す。基質A−3000を用いた場合、図7に示すように、水素生成から水素吸収に転じた後でも、酢酸とプロピオン酸の濃度は、徐々に増加し、その他の有機酸(ギ酸、乳酸、酪酸)の濃度も一定しなかった。
【0050】
基質B−4000を用いた場合、図8に示すように、実験開始後288時間目以降は、各有機酸の濃度が一定となり、酢酸、プロピオン酸、酪酸の順で、濃度が高かった。
【0051】
基質C−5000を用いた場合、図9に示すように、実験開始後320時間以降に、各有機酸の濃度が一定となり、酢酸、酪酸、プロピオン酸の順で、濃度が高かった。
【0052】
基質D−3000+Nを用いた場合、図10に示すように、実験開始後220時間以降に、各有機酸の濃度が一定となり、酢酸、酪酸、プロピオン酸の順で、濃度が高かった。
【0053】
この図8〜図10の、水素生成が継続し、かつ安定した状態におけるデータから、それぞれの水溶性有機炭素(DOC)物質収支を計算すると、基質B−4000では、プロピオン酸の占める割合が高いのに対して、基質C−5000および基質D−3000+Nでは、酢酸と酪酸の占める割合が高いことが判明した。水素生成速度は、基質C−5000および基質D−3000+Nを用いた方が、基質B−4000を用いた場合より高い。このことから、可溶性炭水化物の濃度を高くして、プロピオン酸の合成を回避することにより、水素生成を促進すること、あるいは、可溶性炭水化物の濃度を維持したまま、利用されやすい窒素源を添加することも、水素生成を促進し、安定化することが可能であることが理解される。
【0054】
【発明の効果】
本発明の、供給する可溶性炭化水素および/または可溶性タンパク質の濃度を所定の濃度以上に制御する方法により、水素を安定的に、効率良く生産することができる。また、アンモニア態窒素を添加することにより、有機酸の生成と水素の生成が安定化し、水素収率がさらに上昇する。さらに、水素発酵槽とメタン発酵槽を備えた、水素生産とメタン生産を同時に行う装置では、水素発酵の培養液をメタン発酵の基質として用い、メタン発酵により生成するアンモニアを含有するメタン発酵培養液の一部を水素発酵槽に循環することにより、有機廃棄物から有効に、水素およびメタンという2種類のエネルギーガスを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素およびメタンの連続発酵装置を示す模式図である。
【図2】水素発酵装置の模式図である。
【図3】基質A−3000を用いた水素生成速度と水溶性炭水化物および水溶性タンパク質濃度の経時変化を示すグラフである。
【図4】基質B−4000を用いた水素生成速度と水溶性炭水化物および水溶性タンパク質濃度の経時変化を示すグラフである。
【図5】基質C−5000を用いた水素生成速度と水溶性炭水化物および水溶性タンパク質濃度の経時変化を示すグラフである。
【図6】基質D−3000+Nを用いた水素生成速度と水溶性炭水化物および水溶性タンパク質濃度の経時変化を示すグラフである。
【図7】基質A−3000を用いた水素生成速度と各種有機酸濃度の経時変化を示すグラフである。
【図8】基質B−4000を用いた水素生成速度と各種有機酸濃度の経時変化を示すグラフである。
【図9】基質C−5000を用いた水素生成速度と各種有機酸濃度の経時変化を示すグラフである。
【図10】基質D−3000+Nを用いた水素生成速度と各種有機酸濃度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 水素およびメタン連続発酵装置
2 水素発酵槽
3 メタン発酵槽
4 水素回収手段
5 基質供給手段
6 培養液供給手段
7 メタン回収手段
8 アンモニア循環手段

Claims (7)

  1. 水素生成能力を有する微生物を用いて、有機物から水素を連続的に生成する方法であって、該微生物を含む水素発酵槽へ供給する基質中の水溶性炭水化物および水溶性タンパク質の濃度を所定の濃度以上に制御する工程を含む、方法。
  2. さらに、アンモニア態窒素を供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記有機物がオカラであり、前記水溶性炭水化物および水溶性タンパク質がオカラに由来する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記水溶性炭水化物および水溶性タンパク質が、それぞれ、3000mg/Lまたはそれ以上の濃度に制御して供給される、請求項2または3に記載の方法。
  5. 前記水溶性炭水化物および水溶性タンパク質が、それぞれ、3500mg/Lまたはそれ以上の濃度で供給される、請求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
  6. 前記微生物がエンテロバクター属に属する微生物である、請求項1から5のいずれかの項に記載の方法。
  7. 水素発酵槽とメタン発酵槽とを備えた水素およびメタンの連続発酵装置であって、
    該水素発酵槽には、水素回収手段、有機性廃棄物に由来する水溶性炭水化物および水溶性タンパク質を所定量またはそれ以上の量で供給する基質供給手段、および水素発酵培養液を該メタン発酵槽に供給する培養液供給手段が設けられ、
    該メタン発酵槽には、メタン回収手段およびメタン発酵により生成するアンモニアを含むメタン発酵液あるいは排水の一部を該水素発酵槽に循環するアンモニア循環手段が備えられている、
    水素およびメタンの連続発酵装置。
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