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JP2005009649A - ボールねじ - Google Patents

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Abstract

【課題】固体潤滑膜のはく離に起因する発塵が少なく、クリーンルーム等の特殊な環境下でも長期に渡り安定して使用することのできるボールねじを提供する。
【解決手段】ボールねじにおける各軌道溝1u,2uの表面とボール3の表面の少なくとも一方に、ビスアリルナジイミド(BANI)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とからなる被膜5を形成する。この被膜5は、均一で薄く、かつ、強固で耐摩耗性に優れる固体潤滑膜として機能する。以上の構成により、このボールねじは、従来のボールねじに比べ、発塵量を低減できるとともに、発塵寿命を向上させることができる。従って、このボールねじは、真空中やクリーンルーム内など特殊な環境下でも、長期に渡り安定して使用することができる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空中やクリーンルーム内など特殊な環境下での使用においても発塵が少なく、長期に渡りその性能を維持することのできるボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造装置等、所要の清浄度が要求される環境においては、物品の搬送や精密な位置決めに使用されるX−Yテーブルユニット等に用いられているボールねじの潤滑にグリース等の潤滑油を用いると、この油分が飛散や蒸発することによる潤滑機能の低下や使用環境の汚染といった不具合が生じる。従来、このような環境で使用されるボールねじには、グリースの代わりに、軌道溝や転動体の表面(転動部位)に金、銀、鉛、銅などの軟質金属、あるいはカーボンや二硫化モリブデン等の固体潤滑剤等をコーティングしたボールねじが使用されている。
【0003】
しかしながら、これら固体潤滑剤を用いたボールねじにも、摩耗による発塵が多いという欠点があった。そこで、本出願人らは、発塵の少ないボールねじとして、転動部位にポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する)あるいはエチレンテトラフルオロエチレンと、熱硬化性樹脂バインダーとからなる被膜(固体潤滑膜)を有するボールねじを提案している(特許文献1を参照)。
【0004】
この固体潤滑膜は、PTFEとバインダーとなる樹脂を有機溶媒中に分散・混合させた溶液を、部材の軌道溝や転動体の表面に、スプレー等を用いて塗布し、その後加熱処理を行なうことによって硬化させたものである(ボンデッドフィルム法)。有機バインダーには、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの熱硬化性合成樹脂が使用される。
【0005】
この手法は、PTFEの優れた潤滑性・転走部への転着性を利用したものであって、ボールねじの転走部に形成された被膜あるいは転がり運動によって転着した被膜粒子により、ボールねじの潤滑が維持される。また、単独ではボールねじ部材に対する密着力の弱いPTFEに、バインダーを添加することにより、PTFEの被コーティング面への密着力を高めるとともに、後述する加熱処理を経ることによってPTFE間の結合力が高まり、このボールねじからの発塵を低減することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−121563号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、PTFEを用いた固体潤滑膜は、従来スプレー(吹き付け)によるコーティングが主流であり、その被膜を均質なものとするため、ある程度(具体的には、5μm〜数十μm)の膜厚が必要とされている。しかしながら、この手法によって形成された固体潤滑膜は、膜厚が厚いため、潤滑に寄与しない被膜粒子が発塵量を増加させてしまうという問題があった。
【0008】
また、スプレー法で膜厚5μm以下の被膜を形成しようとした場合、膜厚のばらつきが大きく、まったくコーティングされていない領域や極端に厚い箇所が混在して潤滑が不十分になったり、被膜の欠落やはく離等によって発塵量が増加してしまう恐れがある。
【0009】
本発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、固体潤滑膜のはく離に起因する発塵が少なく、クリーンルーム等の特殊な環境下でも長期に渡り安定して使用することのできるボールねじを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
半導体製造工程においては、製造環境の清浄度が製品の歩留まり(ひいては製造コスト)に影響するため、このような特殊な環境で使用されるボールねじは、更なる低発塵化が求められている。また、半導体製造装置のみならず、製品の製造に使用する装置類に用いられるねじは、工程の稼働率向上のために、メンテナンスフリーで、かつ、寿命が長いことが望まれている。
【0011】
このような要望に応えるため、本願の発明者らは、固体潤滑膜を形成したボールねじについて、種々研究を重ねてきた。そして、固体潤滑膜の膜厚のばらつきが発塵量に関与していることに注目し、PTFEを固定化するのに最適なバインダー種を検討した結果、ビスアリルナジイミド(以下、BANIと略称する)を用いることによって、均一で薄く、かつ、耐摩耗性に優れる固体潤滑膜が形成可能であることを見出した。
【0012】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明によれば、外周面に螺旋状の内側軌道溝を有するねじ軸と、内周面に前記内側軌道溝に対向する螺旋状の外側軌道溝を有するボールナットと、これら内側・外側軌道溝の間に形成される螺旋状空間に配置された複数のボールとを備えるボールねじにおいて、各軌道溝の表面とボールの表面の少なくとも一方に、ビスアリルナジイミドとポリテトラフルオロエチレンとからなる固体潤滑膜を形成することにより、特殊な環境下での使用においても極めて発塵が少なく、かつ、寿命の長いボールねじとすることができる。
【0013】
本発明において固体潤滑膜形成のバインダーに使用されるビスアリルナジイミド(BisAllylNadic Imide)は、一般式(1)で表されるモノマー単位を有するポリイミド樹脂である。
【0014】
【化1】
Figure 2005009649
【0015】
一般式(1)中のRは脂肪族系または芳香族系の2価の炭化水素連結基を表す。このような2価の炭化水素連結基Rとしては、例えばC〜C20アルキレン基、C〜Cシクロアルキレン基、C〜C12芳香族基、−Aa−C−A’(aは0または1で、AおよびA’はそれぞれ独立してC〜Cのアルキレン基を示す)で表されるアルキレン・フェニレン基、−C−T−C−(Tは、メチレン基,エチリデン基,プロピリデン基を示す)で表される基等が挙げられる。中でも、下記式(2)、(3)、(4)で表される2価の炭化水素連結基が好ましい。
【0016】
【化2】
Figure 2005009649
【0017】
このBANIは、熱硬化性イミド樹脂の一種であり、以下のような特徴を備えている。イ.硬化前のBANIは、脂肪族アルコール,脂肪族炭化水素を除く殆どの有機溶剤に可溶で、特に、汎用溶剤に高い溶解性を示す。ロ.フッ素樹脂を含む多くの樹脂との相溶性に優れる。ハ.溶液状態での貯蔵安定性に優れる。ニ.金属だけでなく、エンジニアリングプラスチックへの密着性も良好。ホ.硬化後のBANIは、ガラス転移点が300℃以上と高い耐熱性を示し、機械的特性(曲げ強さ,弾性率,硬度,破壊靭性値等)にも優れる。
【0018】
また、固体潤滑膜の形成に用いられるPTFEは、一般に、平均分子量数十万から数百万のポリマーまたは2500以下のテルマーのいずれかで、粒子径が10〜20μmのものが広く用いられている。しかしながら、本発明に使用されるPTFEは、薄く均一な被膜を得るために、平均粒子径3μm以下(平均分子量1000〜10000)のポリマーを使用することが好ましく、更に好ましくは、平均粒子径1μmのポリマーを用いる。
【0019】
本発明における固体潤滑膜の膜厚は、好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは1〜3μmである。また、この固体潤滑膜の表面粗さは、±1μmとすることが望ましい。このように平滑で強固な被膜を可能な限り薄く形成することにより、このボールねじは、低発塵性と長寿命とを両立させることができる。
【0020】
なお、この固体潤滑膜の塗布方法は、特に限定されるものではないが、例えば、溶媒に所要量のBANIとPTFEを溶解させた処理溶液中に、被コーティング部材を浸漬(ディッピング)する方法が好適である。また、この方法は、固体潤滑膜の膜厚を、溶媒に溶解させたBANIおよびPTFEの濃度によって、容易に調節することができるというメリットもある。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態において例に挙げたボールねじは、多数のボールが、螺旋状に形成されたボール軌道を転動し、このボール軌道の軸方向両端を結ぶように配設されたチューブ状部材の中を通って、再びボール軌道に戻るチューブ式循環方式(あるいは外部循環方式)のボールねじである。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態におけるボールねじの構造を示す模式的断面図であり、図2は図1のP部拡大断面図である。なお、図2において、各部材の表面に形成された被膜5は、その厚みを誇張して描かれている。
【0023】
このボールねじは、ねじ軸1と、ボールナット2と、多数のボール3と、リターンチューブ4とを主体として構成されている。ねじ軸1の外周面1xには、内側軌道溝1uとなる螺旋状の溝が形成されているとともに、このねじ軸1の周囲に配置されたボールナット2の内周面2yには、前記内側軌道溝1に対向する螺旋状の外側軌道溝2uが形成されている。また、このボールナット2外周の軸方向両端近傍には、外周面2xから内周面2yに貫通する孔2h,2hが設けられており、ボールナット2の外側には、これらの孔2h,2hを接続するリターンチューブ4が配設されている。このリターンチューブ4は、ねじ軸1とボールナット2の相対回転により、いずれか一方のボールナット2端部に達したボール3を、他方のボールナット2端部に循環させる機能を有する。
【0024】
これらねじ軸1、ボールナット2およびボール3を形成する材料には、ステンレス鋼、軸受鋼、あるいはセラミックス等を使用することができる。また、リターンチューブ4を形成する材料は、ステンレス鋼の他、合成樹脂材料とすることもできる。
【0025】
本実施の形態におけるボールねじの特徴は、図2の拡大断面図に示すように、ねじ軸1,ボールナット2およびボール3の全表面とリターンチューブ4の内外面に、ビスアリルナジイミド(BANI)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とからなる被膜5が形成されている点である。この被膜5は、その成分であるPTFEの潤滑作用によって、固体潤滑膜として機能する。
【0026】
次に、この固体潤滑膜の形成方法の一例を説明する。
固体潤滑膜を形成するBANIとPTFEを溶解させる溶媒には、メタノール(メチルアルコール)が好適に使用される。まず、この溶媒に対し例えば5wt%の割合で、上記のBANIとPTFE(樹脂の割合=1:1)を分散・溶解させ、これらの樹脂をボールねじに付着させるための処理溶液とする。そして、組み立てられた完成状態のボールねじを、この処理溶液に浸漬してボールナット2を回転させ、軸方向に数回移動させることにより、ねじ軸1・ボールナット2・ボール3の全面およびリターンチューブ4の内外面に液状膜を付着させる(付着処理)。その後、この処理溶液から引き上げたボールねじを、40〜50℃で約1分間加熱し、液状膜に含まれている溶媒を除去する(乾燥処理)。そして、液状膜が付着したボールねじを、100〜200℃において数十分間加熱することにより、強固な被膜が形成される(硬化処理)。
【0027】
バインダーであるBANIの特徴は、溶媒に対する溶解性の高さと、薄膜状で硬化させる場合、比較的温和な条件で硬化させることができる点である。従って、このBANIを用いることによって、非常に薄く均一で強固な被膜を、容易に形成することが可能になった。
【0028】
このBANIとPTFEとを溶解させる溶媒には、脂肪族アルコール,脂肪族炭化水素を除く殆どの有機溶剤を使用することが可能である。本実施の形態で用いたメタノールの他に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP),ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン系極性溶剤類、アセトン,シクロヘキサン等のケトン類、酢酸メチル,酢酸エチル等のエステル類、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルクロロホルム,トリクロロエチレン等の有機ハロゲン化合物類を使用することができる。
【0029】
また、本実施の形態におけるBANIの好適な具体例としては、一般式(1)においてRが式(3)の構造のモノマー単位を有するポリイミド樹脂(丸善石油化学社製の「BANI−H(商品名)」)あるいは、一般式(1)においてRが式(4)の構造のモノマー単位を有するポリイミド樹脂(丸善石油化学社製の「BANI−X(商品名)」)を挙げることができる。
【0030】
【化3】
Figure 2005009649
【0031】
【化4】
Figure 2005009649
【0032】
以上の方法により、平均膜厚=1μm、表面粗さRa=0.5μmの被膜5(固体潤滑膜)を、ボールねじの露出面全面に形成することができた。
【0033】
なお、この実施の形態においては、完成状態のボールねじを処理溶液に浸漬したが、ボールねじを構成する部材を1つずつ単品で付着処理を行ない、その後乾燥処理、硬化処理を行なった上で、ボールねじを組み立てても良い。
【0034】
また、この固体潤滑膜は、必ずしもボールねじの露出面全体に形成する必要はなく、マスキング等を使用することにより、ボールねじの転動部位、すなわち各軌道溝1u,2uの表面とリターンチューブ4の内面、およびボール3の表面のどちらか一方あるいは両方に形成しても良い。しかしながら、これら部材の全表面に形成すると、この被膜5が、半導体製造工程等で使用される腐食性ガスに対する耐食性を向上させるため、好適である。
【0035】
また、これら固体潤滑膜が形成される各部材の表面には、あらかじめ硬質な被膜を別途形成しておいても良い。この硬質被膜の具体例としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜,TiC(炭化チタン)膜,TiN(窒化チタン)膜あるいはTiCN膜等が好ましい。
【0036】
この硬質被膜の好適な膜厚は、0.1〜5μm程度であり、PVD(物理的蒸着)法またはCVD(化学的蒸着)法等により、前記固体潤滑膜が形成される領域あるいは各部材の全表面に、容易に形成することが可能である。また、この硬質被膜は、前記固体潤滑膜の下地層として、ボールねじ転走面の耐摩耗性を向上させ、ボールねじの更なる長寿命化を図ることもできる。
【0037】
次に、以上の実施の形態における固体潤滑膜の効果を確認すべく、実際にボールねじの発塵寿命を測定した実験結果について述べる。なお、試料の作製に用いたボールねじは、呼び番号1404.7TS3.5C7で、ねじ軸1の軸径14.2mm、ボール3の直径を2mm(3.5巻/列)、リード4.76mmであり、ねじ軸1とボールナット2およびボール3は、JIS規格SUS440Cのステンレス鋼製、リターンチューブ4は、JIS規格SUS304のステンレス鋼製である。
【0038】
図3は、ボールねじからの発塵量を測定する装置の概略を示す説明図である。この図中の符号1はねじ軸、2はボールナットであり、集塵管22を備えたカバー(アクリル製)21内に配置されている。また、符号11はボールねじを支える支柱、12はねじ軸1の回転サポート軸受、13は負荷用ばね、14はボールナット2の移動案内用レール、15はボールナット2のスライドサポート軸受である。このボールねじのねじ軸1の一端(図示右方)は、モータ等(図示省略)の駆動源に連結されており、負荷用ばね13によりアキシャル(スラスト)方向の荷重が与えられた状態で、ねじ軸1の回転により、ボールナット2が左右に往復運動するように設計されている。
【0039】
集塵管22には、発塵個数計測装置(パーティクルカウンター)23が接続されており、粒子径0.1μm以上の粒子の個数がカウントされ、その結果がレコーダ等(図示省略)に記録されるようになっている。なお、負荷用ばね13による荷重は、負荷圏にある各ボールの軌道溝に対する面圧が、どのボールねじにおいても最大1.6GPaになるように調整されている。
【0040】
発塵寿命試験条件
雰 囲 気:大気中(クリーンベンチ内:クラス10)
または 真空中(5×10−5Pa)
環 境 温 度:室温
ストローク:80mm
回 転 速 度:120rpm
なお、ボールナットの移動開始後、3分あたりの発塵量が1000個/cfに達した時点で試験を終了し、この間の経過時間を発塵寿命とした。
【0041】
発塵寿命の測定は、固体潤滑膜のバインダーの種類を変えて作製した2つの試料について行なった。
実施例1:BANIとPTFEからなる固体潤滑膜が、
膜厚0.5〜1μmに形成されたボールねじを使用。
比較例1:ポリアミドイミドとPTFEからなる固体潤滑膜が、
膜厚5±2μmに形成されたボールねじを使用。
【0042】
これらの試料の発塵寿命を比較した結果を図4に示す。このグラフは、「比較例1」の発塵寿命を基準として、「実施例1」の発塵寿命レベルを比較したものである。
【0043】
このグラフから明らかなように、本発明のボールねじは、従来の固体潤滑膜を有するボールねじに比べ、大幅に発塵寿命が向上している。特に、真空雰囲気下においては、大気雰囲気下より寿命が低下している比較例1に対し、本発明の実施例1は、大気雰囲気下より発塵寿命が向上していることが見てとれる。
【0044】
次に、BANIとPTFEとからなる固体潤滑膜の膜厚を変化させた場合の初期発塵量について、比較試験を行なった結果について述べる。なお、ボールねじからの発塵量を測定する装置には、前述の発塵寿命試験で用いた装置と同じものを用いた。
【0045】
初期発塵量試験条件
雰 囲 気:大気中(クリーンベンチ内:クラス10)
環 境 温 度:室温
ストローク:80mm
回 転 速 度:120rpm
測 定 時 間:ボールナットの移動開始後、600分間
なお、発塵量は、計測120回の平均値である。
【0046】
初期発塵量の測定は、固体潤滑膜の膜厚を変えて作製した5つの試料について行なった。
実施例2:BANIとPTFEからなる固体潤滑膜が、
膜厚1μm以下に形成されたボールねじを使用。
実施例3:BANIとPTFEからなる固体潤滑膜が、
膜厚1〜3μmに形成されたボールねじを使用。
実施例4:BANIとPTFEからなる固体潤滑膜が、
膜厚3〜5μmに形成されたボールねじを使用。
実施例5:BANIとPTFEからなる固体潤滑膜が、
膜厚5〜10μmに形成されたボールねじを使用。
実施例6:BANIとPTFEからなる固体潤滑膜が、
膜厚10μm以上に形成されたボールねじを使用。
【0047】
これらの試料の初期発塵量を比較した結果を図5に示す。このグラフは、「実施例2」の初期発塵量を基準として、これらの初期発塵レベルを比較したものである。
【0048】
このグラフから明らかなように、膜厚5μm以下の実施例2から実施例4にかけて、初期発塵量の低減効果が顕著であることが分かる。従って、膜厚のばらつきや形成の容易さ,コスト等も考慮した場合、本発明におけるBANIとPTFEからなる固体潤滑膜の膜厚は、好ましくは5μm以下、更に好ましくは1〜3μmである。
【0049】
なお、以上の実施の形態においては、循環するボールがボール軌道の軸方向両端を結ぶように配設されたチューブ状部材の中を通って、再びボール軌道に戻るチューブ式(あるいは外部循環方式)のボールねじを例に説明したが、本発明は、このボールが螺旋状の軌道溝のランド部(山部)を乗り越えて元の軌道溝に戻るこま式(あるいは内部循環式)や、その他リターンプレート式あるいはエンドキャップ式のボール循環方法を採用するボールねじにも、適用可能であることは言うまでもない。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ボールねじの転動部位に、ビスアリルナジイミドとポリテトラフルオロエチレンからなる固体潤滑膜を形成することにより、従来のボールねじに比べ、その発塵量を大幅に低減することができる。従って、このボールねじは、真空中やクリーンルーム内など特殊な環境下でも、長期に渡り安定して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるボールねじの構造を示す模式的断面図である。
【図2】図1のP部拡大断面図である。
【図3】ボールねじの発塵量を測定する装置の概略を示す説明図である。
【図4】本発明の固体潤滑膜を有するボールねじと従来の固体潤滑膜を有するボールねじの発塵寿命を比較するグラフである。
【図5】本発明のボールねじにおいて、固体潤滑膜の膜厚を変化させた場合の初期発塵量を比較するグラフである。
【符号の説明】
1 ねじ軸
1u 内側軌道溝
1x 外周面
2 ボールナット
2u 外側軌道溝輪
2x 外周面
2y 内周面
3 ボール
4 リターンチューブ
4x 外面
4y 内面
5 被膜
11 支柱
12 回転サポート軸受
13 負荷用ばね
14 移動案内用レール
15 スライドサポート軸受
21 カバー
22 集塵管
23 パーティクルカウンター

Claims (2)

  1. 外周面に螺旋状の内側軌道溝を有するねじ軸と、内周面に前記内側軌道溝に対向する螺旋状の外側軌道溝を有するボールナットと、これら内側・外側軌道溝の間に形成される螺旋状空間に配置された複数のボールとを備えるボールねじにおいて、
    前記各軌道溝の表面と前記ボールの表面の少なくとも一方に、ビスアリルナジイミドとポリテトラフルオロエチレンとからなる被膜が形成されていることを特徴とするボールねじ。
  2. 前記被膜の膜厚が、5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ。
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