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JP2005093159A - 有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 Download PDF

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JP2005093159A JP2003322749A JP2003322749A JP2005093159A JP 2005093159 A JP2005093159 A JP 2005093159A JP 2003322749 A JP2003322749 A JP 2003322749A JP 2003322749 A JP2003322749 A JP 2003322749A JP 2005093159 A JP2005093159 A JP 2005093159A
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Abstract

【課題】 高い発光輝度を示し、且つ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置を提供することにある。特に、青色発光において、素子の発光輝度、発光寿命の両立を目的になされたものである。
【解決手段】 ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
Figure 2005093159

(一般式(1)において、Arは少なくとも一つの窒素原子を含む五員芳香族環を表し、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。mは0以上の整数を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置並びに照明装置に関する。
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機EL素子ともいう)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・りん光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために、省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
今後の実用化に向けた有機EL素子の開発としては、更に低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機EL素子が望まれており、例えば、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成する技術(例えば、特許文献1参照。)が、また8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特許文献2参照。)が、更に、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特許文献3参照。)が報告されている。
上記文献に開示されている技術では、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。
ところが、プリンストン大より励起三重項からのりん光発光を用いる有機EL素子の報告(例えば、非特許文献1参照。)がされて以来、室温でりん光を示す材料の研究(例えば、非特許文献2、特許文献4参照。)が活発になってきている。
励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ、照明用にも応用可能であり注目されている。
The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence (EL ’00、浜松)では、りん光性化合物についていくつかの報告がなされている。例えば、Ikai等はホール輸送性の化合物をりん光性化合物のホストとして用いている。また、M.E.Tompson等は、各種電子輸送性材料をりん光性化合物のホストに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。さらに、Tsutsui等は、正孔阻止層(エキシトン阻止層)の導入により高い発光輝度を得ている。正孔阻止層としては、その他、パイオニア社により、ある種のアルミニウム錯体を使用する例、及びAppl.Phys.Lett.,79巻、156ページ(2001年)において、Ikai等は、ホールブロック層(エキシトンブロック層)としてフッ素置換化合物を用いることにより、高効率な発光を達成している。
その他、ホストとしてビスカルバゾール誘導体をりん光性有機EL素子の発光層に用いて、特定の5配位の金属錯体を正孔阻止層に使用する例(特許文献4)や、ビス、または、トリスカルバゾール誘導体を有機EL素子の正孔阻止層に用いた例がある(特許文献5)。
青〜青緑色のりん光性化合物をドーパントとして用いた場合、CBPのようなカルバゾール誘導体をホスト化合物として使用した例があるが、その外部取り出し量子効率が6%であり、不十分な結果であり(例えば、非特許文献3参照。)、改良の余地が残っている。これに対してヘキサフェニルベンゼン誘導体を青色のりん光性有機EL素子に使用しその効率が7〜10%にもなるという報告(非特許文献4、特許文献6)がある。しかしながら、りん光性有機EL素子の輝度と寿命の特性を十分に両立する構成については今だに得られていないのが現状である。
また、現在のところ単一の発光材料で白色発光を示すものがないため、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得ている。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、赤色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものや、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したもの等が考えられるが、いずれにしても青色を利用する以上、白色に関しても、効率の高い白色発光の素子が発見されていないのが現状である。
特許第3093796号明細書 特開昭63−264692号公報 特開平3−255190号公報 特開2002−8860号公報 特開2003−31371号公報 特開2003−27048号公報 M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154ページ(1998年) M.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750−753ページ(2000年) 第62回応用物理学会学術講演会予稿集12−a−M8 第50回応用物理学関係連合講演会予稿集28p−A−6
本発明の目的は、高い発光輝度を示し、且つ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置を提供することにある。特に、青色発光において、素子の発光輝度、発光寿命の両立を目的になされたものである。
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
(請求項1)
ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2005093159
(一般式(1)において、Arは少なくとも一つの窒素原子を含む五員芳香族環を表し、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。mは0以上の整数を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。)
(請求項2)
前記一般式(1)において、Arが五員環を含む芳香族縮合環を表し、少なくとも一つの窒素原子を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項3)
ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2005093159
(一般式(2)においてR11〜R19のうちn個はアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、(9−n)個は水素原子、または、置換基を表し、少なくとも一つは水素原子を表す。ただし、nは5以上8以下の整数である。)
(請求項4)
ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2005093159
(一般式(3)において、R21〜R25はアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。)
(請求項5)
ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物が、発光層に含有されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項6)
ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層、更に正孔阻止層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物が、正孔阻止層に使用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項7)
りん光性化合物が、オスミウム、イリジウム、ロジウム、または、白金錯体系化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項8)
請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置。
(請求項9)
ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成するいずれかの層に前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物、及び複数のりん光性化合物を含んでなる白色発光の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項10)
請求項9に記載の白色発光の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備してなる照明装置。
本発明により、高い発光効率と長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子が得られ、特に青色発光において高効率、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。これにより高輝度の白色発光が得られる。
次いで、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明を詳しく説明する。本発明者等は、鋭意検討の結果、一般式(1)〜(3)で表される化合物を有機EL素子に使用することにより、高い発光輝度を示し、且つ、発光寿命の長い有機EL素子、及び、該素子を有する表示装置及び照明装置を提供できることを見いだした。
りん光性ドーパントの励起3重項を利用するりん光性ドーパントおよび蛍光性のホスト化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子においては、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(1)で表される化合物を含有することで、高い発光輝度と長い発光寿命を得ることができる。
従来使用されている発光ホストとしては、カルバゾール誘導体が代表的であるが、青色に使用する場合に従来のカルバゾール誘導体の代表例であるCBP(4,4’−ビス(1−カルバゾリル)ビフェニル)では、りん光波長が青色のドーパントよりも長いために十分な効率を得ることが出来ていない。そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、五員環を含む芳香族環で少なくとも一つの窒素原子を含む化合物でアリール基、または、ヘテロアリール基を5個以上導入することにより、立体的な嵩高さによるりん光波長の短波化、及び、エキサイプレックスの生成を抑えることによる高効率化を達成できることを見出した。また、寿命の改善もみられているが、これはアリール基または、ヘテロアリール基が5個以上導入されていることによる効果と推定している。
又、本発明の化合物は、前記発光ホストとして用いるほか、電子輸送材料として優れており、特に電子輸送材料のなかでも正孔阻止材料として、正孔阻止層に用いることで優れた性質を発揮する。
本発明の化合物について更に詳細に説明する。
前記一般式(1)において、Arは少なくとも一つの窒素原子を含む五員芳香族環を表し、具体的には、ピロール環、インドール環、カルバゾール環等が挙げられる。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。mは0以上の整数を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5はアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。具体的にはフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、フェナンスリル基、ビフェニル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、キナゾリル基、アクリジル基、トリアジル基等が挙げられる。好ましくは、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基が挙げられる。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5で表されるアリール基、または、ヘテロアリール基は置換基を有していても良い。置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(メチルスルホニル基等)、ハロゲン原子(フッ素原子等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、メシチル基等)、ヘテロアリール基、アルコキシ基(例えばメトキシ基等)、等が挙げられる。
本発明の一般式(1)においてRは水素原子、または、置換基を表すが、水素原子であることが好ましい。
Rが置換基を表す場合、その置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばエトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、水酸基、アルケニル基(例えば、ビニル基等)、ハロゲン原子(フッ素原子等)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。これらの基はさらに置換されていてもよい。
Rが置換基を表す場合、好ましくは、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、または、アリール基である。
mは0以上の整数である。m=1の場合、Rは水素原子であることが好ましい。また、m≧2の場合は、Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。
また、前記一般式(1)において、Arは少なくとも一つの窒素原子を含む五員芳香族環を表すが、Arが五員環を含む芳香族縮合環であり、少なくとも一つの窒素原子を含む場合が好ましく、具体的には、インドール環、カルバゾール環等の含窒素芳香族縮合環が挙げられる。
一般式(2)においてR11〜R19のうちn個はアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、(9−n)個は水素原子、または、置換基を表し、少なくとも一つは水素原子を表す。nは5以上8以下の整数である。
11〜R19が置換基を表す場合、具体的にはRで示したものと同義である。好ましくは、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、または、アリール基である。
一般式(3)においてR21〜R25はアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。R21〜R25が表すアリール基、ヘテロアリール基としては、具体的には前記Ar1〜Ar5であげられた基を表す。
なお、一般式(2)、(3)において、R19、R25を構成する置換基は、それぞれ炭素原子数が11個以下である場合が好ましい。
一般式(2)、(3)では一般式(3)の方が好ましい。
以下に、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物の具体例を示すがこれに限定されない。
Figure 2005093159
Figure 2005093159
Figure 2005093159
Figure 2005093159
Figure 2005093159
Figure 2005093159
また、以下に本発明係わる前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物は従来公知の方法によって製造が可能である。以下に代表的な合成例を例示する。
(合成例)
化合物(4)の製造
カルバゾール10gを酢酸300mlに溶解し,反応液を0℃に保ちながら臭素13mlを滴下した。滴下が終了した時点で、80℃に加熱し7時間攪拌した。その後、結晶を濾取した。次いで、トルエンで再結晶しTBC(1,3.6,8−テトラブロモカルバゾール)を3.2g得た。TBCを3.2g、パラジウム触媒を用いて、テトラヒドロフラン溶媒中、塩基として炭酸カリウムを使用し、フェニルボロン酸と反応させ、12時間加熱攪拌した。反応終了後、水を加えて有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去してからカラムクロマトグラフィーで精製した後、酢酸エチルで再結晶し、TPCを2.2gを得た。TPC2.2gをジメチルホルムアミド100mlに溶解し、銅0.5g、炭酸カリウム1.4g、ヨードベンゼン1.0gで150℃で17時間加熱攪拌した。反応終了後、水を加えて有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去してからカラムクロマトグラフィーで精製した後、酢酸エチルで再結晶し、化合物(4)を0.4g得た。NMRスペクトル、マススペクトルにより化合物(4)であることを確認した。
Figure 2005093159
《ホスト化合物》:発光層中の主成分
本発明に係るホスト化合物について説明する。
ここで、「ホスト化合物」とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物」という。例えば、発光層を化合物a、化合物bという2種で構成し、その混合比がa:b=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に、発光層を化合物a、化合物b、化合物cの3種から構成し、その混合比がa:b:c=5:10:85であれば、化合物a、化合物bがドーパント化合物であり、化合物cがホスト化合物である。
本発明に係るホスト化合物として、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物を、また従来公知の蛍光性化合物、後述する蛍光性化合物等を用いることができる。
《りん光性化合物》:発光層中のドーパント化合物の一種
本発明に係る、ドーパント化合物として用いられるりん光性化合物について説明する。
「りん光性化合物」とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、りん光量子収率が、25℃において0.001以上の化合物である。りん光量子収率は好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上である。
上記りん光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのりん光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るりん光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記りん光量子収率が達成されることが好ましい。
本発明に係るりん光性化合物としては、元素周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物が好ましく、より好ましくは、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウムまたは白金錯体系化合物等が挙げられ、更に好ましくは、オスミウム、イリジウム、ロジウムまたは白金錯体系化合物であり、中でも最も好ましく用いられるのはイリジウム錯体系化合物である。
ホスト化合物及びドーパント化合物としてりん光性化合物を各々含有する発光層を有する本発明の有機EL素子において、有機EL素子を構成するいずれか1層には、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物を有し、発光極大波長が500nm以下であることが好ましい。
本発明に用いられるホスト材料の最低励起三重項エネルギー準位は、発光材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも高く、発光材料の最低励起三重項エネルギー準位の1.05〜1.38倍であることが好ましい。ホスト材料の最低励起三重項エネルギー準位は、68kcal/mol(284.9kJ/mol)〜90kcal/mol(377.1kJ/mol)であることが好ましい。
本発明の有機EL素子において、発光層に隣接する層に含まれる有機材料の最低励起三重項エネルギー準位は、発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも高く、発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位の1.05〜1.38倍であることが好ましい。本発明の有機EL素子において、発光層に隣接する層に含まれる有機材料の最低励起三重項エネルギー準位が、68kcal/mol(284.9kJ/mol)〜90kcal/mol(377.1kJ/mol)であることが好ましい。
以下に、本発明に係るりん光性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。また、これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
Figure 2005093159
Figure 2005093159
Figure 2005093159
以上のほか、下記に示す公開特許公報に記載されている化合物を使用することもできる。WO 00/70655、特開2002−280178、同2001−181616、同2002−280179、同2001−181617、同2002−280180、同2001−247859、同2002−299060、同2001−313178、同2002−302671、同2001−345183、同2002−324679、WO 02/15645、特開2002−332291、同2002−50484、同2002−332292、同2002−83684、特表2002−540572、特開2002−117978、同2002−338588、同2002−170684、同2002−352960、同WO 01/93642、同2002−50483、同2002−100476、同2002−173674、同2002−359082、同2002−175884、同2002−363552、同2002−184582、同2003−7469、特表2002−525808、特開2003−7471、特表2002−525833、特開2003−31366、同2002−226495、同2002−234894、同2002−235076、同2002−241751、同2001−319779、同2001−319780、同2002−62824、同2002−100474、同2002−203679、同2002−343572、同2002−203678等。
《蛍光性化合物》
本発明に用いられる蛍光性化合物について説明する。
本発明では、ホスト化合物とりん光性化合物の他に、蛍光性化合物を少なくとも1種含有してもよい。この場合、ホスト化合物またはりん光性化合物からのエネルギー移動等で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物からの発光が得られる。蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上であることが好ましく、更に好ましくは、30%以上である。
具体的な蛍光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または、希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
ここでの蛍光量子収率も、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することができる。
前記りん光性化合物は、前記のようなりん光量子収率が、25℃において0.001以上であるほか、前記ホストの最低励起三重項エネルギーよりも低いそれを有するものであり、つまりより長波長なりん光極大波長を有するものである。りん光性化合物のりん光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができる。
本発明に用いられるりん光性化合物、蛍光性化合物が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
《有機EL素子の層構成》
本発明に係る有機EL素子の層構成について説明する。
本発明の有機EL素子は、一対の電極(陽極、陰極)の間に、少なくとも1層の発光層を挟持した構造を有する。ここで、発光層は、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことであり、具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する化合物を含有する層のことを指す。
本発明の有機EL素子は、必要に応じ発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層及び陰極バッファー層等を有し、陰極と陽極で挟持された構造をとる。具体的には以下に示されるような構造が挙げられる。
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(vi)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vii)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(viii)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《発光層》
本発明に係る発光層について説明する。
本発明では、上記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物をホスト化合物として用いて発光層を形成することが好ましい。即ち、本発明に係る前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物をホスト化合物として、前記りん光性化合物(ドーパント)と組み合わせて用いる。
発光層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜を形成することができるが、本発明では、特に分子堆積膜が好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態、または液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と、凝集構造、高次構造の相違やそれに起因する機能的な相違により区別することができる。
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂等の結着材と共に発光材料として上記化合物を溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により塗布して薄膜形成することにより得ることができる。
(発光層の膜厚)
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲に膜厚調整することが好ましい。
次に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等、発光層と組み合わせて有機EL素子を構成するその他の層について説明する。
《正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層》
本発明に用いられる、正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、その上、発光層に陰極、電子注入層、または電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上する等発光性能の優れた素子となる。
《正孔注入材料、正孔輸送材料》
この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料という)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝性材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔注入材料、正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更に、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、または、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
または、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
(正孔注入層の膜厚、正孔輸送層の膜厚)
正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度での範囲に調整することが好ましい。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
《電子輸送層、電子輸送材料》
本発明に係る電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
または、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーまたはメタルフタロシアニン、更には、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。または、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
(電子輸送層の膜厚)
電子輸送層の膜厚は特に制限はないが、5nm〜5μmの範囲に調整することが好ましい。この電子輸送層は、これらの電子輸送材料一種または二種以上からなる一層構造であってもよいし、或いは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
また、本発明においては、蛍光性化合物は発光層のみに限定することはなく、発光層に隣接した正孔輸送層、または電子輸送層に前記りん光性化合物のホスト化合物となる蛍光性化合物と同じ領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよく、それにより更にEL素子の発光効率を高めることができる。これらの正孔輸送層や電子輸送層に含有される蛍光性化合物としては、発光層に含有されるものと同様に蛍光極大波長が330〜440nm、更に好ましくは360〜410nmの範囲にある蛍光性化合物が用いられる。
本発明において、有機EL素子が正孔阻止(ホールブロック)層を有している場合、本発明に係わる一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物を発光層に隣接して上記のような正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、発光層に隣接して設けられ、正孔阻止層は電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい電子輸送材料(正孔阻止材料)からなる層である。電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子に係る基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、特に限定はなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名:JSR(株)製)或いはアペル(商品名:三井化学(株)製)といったノルボルネン系(またはシクロオレフィン系)樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等をあげることが出来る。有機無機ハイブリッド樹脂としては、有機樹脂とゾルゲル反応によって得られる無機高分子(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等)を組み合わせて得られるものが挙げられる。
樹脂フィルムの表面には無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
被膜の具体例としてはゾル−ゲル法により形成されたシリカ層、ポリマーの塗布等により形成された有機層(たとえば重合性基を有する有機材料膜に紫外線照射や加熱等の手段で後処理を施した膜を含む)、DLC膜、金属酸化物膜または金属窒化物膜などが挙げられる。金属酸化物膜、金属窒化物膜を構成する金属酸化物、金属窒化物としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、窒化珪素などの金属窒化物、酸窒化珪素、酸窒化チタンなどの金属酸窒化物が挙げられる。
前記、表面に無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成された樹脂フィルムの水蒸気透過率は、0.01g/m2・day・atm以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
次に、有機EL素子を作製する好適な例を説明する。例として、前記の陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなるEL素子の作製法について説明する。
まず適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させて陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる薄膜を形成させる。
更に、陽極と発光層または正孔注入層の間、及び、陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
陽極バッファー層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
更に上記基本構成層の他に必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、前記正孔阻止(ホールブロック)層(例えば特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されている)のような機能層を有していてもよい。
《電極》
次に有機EL素子の電極について説明する。有機EL素子の電極は、陰極と陽極からなる。この有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。
上記陽極は蒸着やスパッタリング等の方法によりこれらの電極物質の薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、或いはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、または、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が好適である。上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。または、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極の何れか一方が、透明または半透明であれば発光効率が向上するので好都合である。
《有機EL素子の作製方法》
次に、有機EL素子の作製方法について説明する。
薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、蒸着法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法が好ましい。薄膜化に真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−3Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
前記の様に、適当な基板上に所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させて陽極を作製した後、該陽極上に前記の通り正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる各層薄膜を形成させた後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させて陰極を設け、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫してこの様に正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。または、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお印加する交流の波形は任意でよい。
《表示装置》
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図2は、表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図3は、画素を構成する駆動回路の等価回路図である。
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子がなく、製造コストの低減が計れる。
本発明に係わるカルバゾール誘導体化合物は、また、実質白色の発光を生じる有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることが出来る。
有機EL素子は現在のところ単一の発光材料で白色発光を示すものがないため、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得ている。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでも良いし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでも良い。
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のりん光または蛍光で発光する材料を、複数組み合わせたもの、蛍光またはりん光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでも良い。
例えば、発光層の材料として、発光ホストとして、本発明に係わるカルバゾール誘導体をもちい、りん光性ドーパントとして、複数のりん光性ドーパント、即ち、前記りん光性ドーパントのなかから、補色の関係にあるドーパントを混合して用いることにより、白色発光を得ることができる。発光ホストとして本発明の一般式(1)〜(3)で表される化合物を用いることで高い発光効率を得ることができ、好ましい。
発光層にホスト材料としてこれまで知られている化合物を併用して用いることができるほか、正孔輸送層を設ける場合は、材料に特に制限はないが、陽極からの正孔を、発光する層に伝達する機能を有していれば良く、前記の、従来、光導電材料において、正孔の電荷注入材料として慣用されているものや、EL素子の正孔輸送層に用いられている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
電子輸送層を設ける場合においても、特に制限がなく、カソード電極からの電子を発光する層に伝達する機能を有していれば、従来公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができる。
白色有機エレクトロルミネッセンス素子は、基本的には発光が補色の関係にあるドーパントを混合するだけでよく、発光部のパターニングのみで発光材料を得ることが出来る。従って、発光層もしくは正孔輸送層或いは電子輸送層等の形成時のみマスクにより塗り分ければよく、他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、形成が容易であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で例えば電極膜を形成でき、生産性も向上するる。この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が発光白色である。
このようにして得られた白色表示素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、白色の発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
白色発光有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレー、各種発光光源に用いることができるが、家庭用照明用、車内照明、また露光光源のような一種のランプ(照明装置)として、また液晶表示装置のバックライトとして表示装置にも有用に用いられる。
その他、時計等のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等、更には表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《有機EL素子OLED1−1の作製》
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をiso−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、モリブデン製抵抗加熱ボートに、α−NPD、CBP、Ir−12、BCP、Alq3をそれぞれ入れ、真空蒸着装置に取付けた。
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDを透明支持基板に膜厚50nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入/輸送層を設けた。さらに、CBPの入った前記加熱ボートとIr−12の入ったボートをそれぞれ独立に通電してCBPとIr−12の蒸着速度が100:7になるように調節し膜厚30nmになるように蒸着し、発光層を設けた。
ついで、BCPを蒸着し厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。さらに、Alq3を蒸着し膜厚40nmの電子輸送層を設けた。
Figure 2005093159
次に、前記の如く電子注入層まで製膜した素子を真空のまま第2真空槽に移した後、電子注入層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクが配置されるように装置外部からリモートコントロールして設置した。
第2真空槽を2×10-4Paまで減圧した後、フッ化リチウム入りのボートに通電して蒸着速度0.01〜0.02nm/秒で膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、次いでアルミニウムの入ったボートに通電して蒸着速度1〜2nm/秒で膜厚150nmの陰極をつけた。さらにこの有機EL素子を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスで置換したグローブボックス)へ移し、図5に示したような封止構造にして、有機EL素子OLED1−1を作製した。なお、補水剤である酸化バリウム25は、アルドリッチ社製の高純度酸化バリウム粉末を、粘着剤付きのフッ素樹脂系半透過膜(ミクロテックス S−NTF8031Q日東電工製)でガラス製封止缶24に貼り付けたものを予め準備して使用した。封止缶24と有機EL素子の接着には紫外線硬化型の接着剤27を用い、紫外線ランプを照射することで両者を接着し封止した封止構造を有する素子を作製した。図において21は透明電極を設けたガラス基板、22が前記正孔注入/輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等からなる有機EL層、23は陰極を示す。
《有機EL素子OLED1−2〜1−13の作製》
上記の有機EL素子OLED1−1の作製において、発光層の作製に用いたCBPを表1に記載の化合物に替えた以外は同様にして、有機EL素子OLED1−2〜1−13を各々作製した。
得られた有機EL素子の各々について下記のような評価を行った。
〔評価〕
(発光輝度)
有機EL素子OLED1−1では、発光層のドーパントであるりん光性化合物からの青色の発光を示した。有機EL素子OLED1−1の温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で2.5mA/cm2の電流を供給した時の発光輝度をミノルタ製CS−1000を用いて測定し、この値を100としたときの有機EL素子各試料それぞれの発光輝度の比(相対値)を表1に示す。
(寿命)
また、有機EL素子OLED1−1の温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下、初期輝度を100cd/m2としたときの、輝度の半減する時間を100としたときの有機EL素子各試料それぞれの輝度の半減する時間の比(相対値)を表1に示す。
Figure 2005093159
Figure 2005093159
表1より、比較の化合物に比べて、本発明の化合物は、輝度と寿命を両立させていることがわかる。
更に、りん光性化合物であるIr−12をIr−1またはIr−9に変更した以外は有機EL素子1−1〜1−13と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。なお、Ir−1を用いた素子からは緑色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
実施例2
実施例1において、BCPを表2に記載の化合物に置換えた以外は実施例1と同様にして有機EL素子OLED2−1〜2−11を作製した。発光輝度、発光寿命の測定も実施例1にならって行った。この時、いずれもOLED2−1の値を100としたときの有機EL素子各試料それぞれの相対値で表している。OLED2−1はOLED1−1と同一の構成である。
結果を表2に示す。
Figure 2005093159
Figure 2005093159
表2より、比較の正孔阻止材料に比べて、本発明の材料を使用した素子では、発光輝度、発光寿命の両立がなされていることが分かった。
更に、りん光性化合物であるIr−12をIr−1またはIr−9に変更した以外は有機EL素子2−1〜2−11と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。なお、Ir−1を用いた素子からは緑色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
実施例3
《フルカラー表示装置の作製》
〈フルカラー表示装置(1)〉
(青色発光有機EL素子)
実施例1で作製した有機EL素子1−5を用いた。
(緑色発光有機EL素子)
実施例1で作製した有機EL素子1−5において、Ir−12に替えてIr−1を用いた以外は、有機EL素子1−5と同様の方法で作製した有機EL素子1−5Gを用いた。
(赤色発光有機EL素子)
実施例1で作製した有機EL素子1−5において、Ir−12に替えてIr−9を用いた以外は、有機EL素子1−5と同様の方法で作製した有機EL素子1−5Rを用いた。
上記の赤色、緑色及び青色発光有機EL素子を、同一基板上に並置し、図1に記載の形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製し、図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数の画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
該フルカラー表示装置を駆動することにより、発光輝度、発光効率が高く、長寿命なフルカラー動画表示が得られることを確認することができた。
実施例4
実施例1で作製した有機EL素子1−5において、Ir−12に替えてIr−12、Ir−9(Ir−12:Ir−9=1:4)を用いた以外は、有機EL素子1−5と同様の方法で作製した有機EL素子1−5Wを作製した。
有機EL素子1−14Wの非発光面をガラス製封止缶で覆い、照明装置とした。照明装置は、発光輝度、発光効率が高く、長寿命である白色光を発する薄型の照明装置として使用することができた。図6は照明装置の概略図で、図7は照明装置の断面図である。図6,7において、110はガラス製封止缶102に貼り付けた補水剤である酸化バリウム(アルドリッチ社製の高純度酸化バリウム粉末)であり、封止缶と有機EL素子の接着には紫外線硬化型の接着剤を用い、紫外線ランプを照射することで両者を接着し封止した。図において108は透明電極107を設けたガラス基板、106が前記正孔注入/輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等からなる有機EL層、105は陰極を示す。103、104は陰極、陽極にそれぞれ接続されたリード線を表す。
有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。 表示部Aの模式図である。 画素を構成する駆動回路の等価回路図である。 パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。 有機EL素子OLED1−1の封止構造の概略模式図である。 照明装置の概略図である。 照明装置の断面図である。
符号の説明
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部
21 透明電極付きガラス基板
22 有機EL層
23 陰極
24 ガラス製封止缶
25 酸化バリウム(捕水剤)
27 紫外線硬化型接着剤

Claims (10)

  1. ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2005093159
    (一般式(1)において、Arは少なくとも一つの窒素原子を含む五員芳香族環を表し、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。mは0以上の整数を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。)
  2. 前記一般式(1)において、Arが五員環を含む芳香族縮合環を表し、少なくとも一つの窒素原子を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2005093159
    (一般式(2)においてR11〜R19のうちn個はアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、(9−n)個は水素原子、または、置換基を表し、少なくとも一つは水素原子を表す。ただし、nは5以上8以下の整数である。)
  4. ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成する何れかの層に下記一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2005093159
    (一般式(3)において、R21〜R25はアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。)
  5. ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物が、発光層に含有されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層、更に正孔阻止層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物が、正孔阻止層に使用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. りん光性化合物が、オスミウム、イリジウム、ロジウム、または、白金錯体系化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置。
  9. ホスト化合物、及び、りん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該素子を構成するいずれかの層に前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物、及び複数のりん光性化合物を含んでなる白色発光の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 請求項9に記載の白色発光の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備してなる照明装置。
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