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JP2004315940A - Cu−Ni−Si合金およびその製造方法 - Google Patents

Cu−Ni−Si合金およびその製造方法 Download PDF

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泰靖 石川
Hisahiro Niimi
壽宏 新見
Takatsugu Hatano
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Abstract

【課題】高強度及び高導電性を両立させた電子材料用Cu−Ni−Si合金を提供する。
【解決手段】Niを1.0〜4.5質量%(以下%とする)、Siを0.25〜1.5%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅基合金において、NiとSiの質量濃度を[Ni]、[Si]とした場合のNiとSiの質量濃度比(以下[Ni]/[Si]とする)が4〜6で、且つ、(式1)で定義するχが0.1〜0.45となるような[Ni]、[Si]であることを特徴とする高強度および高導電性を両立させたCu−Ni−Si合金、
([Ni]−4χ)([Si]−χ)=1/8……(式1)。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強度および導電性に優れた電子材料などの電子部品の製造に使用するCu−Ni−Si合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リードフレーム、電子機器の各種端子、コネクタなどに使用される銅合金は、高い強度および高い導電性を両立させることが要求される。更に、近年、リードフレーム、電子機器の各種端子、コネクタなどにおいて、リード数などの増加、狭ピッチ化が進み、電子部品の高密度実装性、高信頼性が要求されている。これら、電子部品に使用される材料においても、薄板化、加工性が良いこと、高導電率など、要求される特性は益々厳しくなってきている。
【0003】
リードフレーム、電子機器の各種端子、コネクタなどに使用される材料は、高い強度および高い導電性が必要で、従来のりん青銅、黄銅などに代表される固溶強化型合金に代わり、電子機器類および部品の軽量化、高強度、高導電性の観点から、時効硬化型の銅合金の使用量が増加している。時効硬化型の銅合金は、溶体化処理された過飽和固溶体を時効処理することにより、微細粒子が均一に析出して引張強さや耐力、ばね限界値などの機械的特性が向上し、同時に、銅中の固溶元素量が減少し導電率が向上する。
【0004】
時効硬化型銅合金のうち、Cu−Ni−Si合金は高強度と高導電性を併せ持つ代表的な銅合金である。この銅合金は、微細なNi−Si系金属間化合物粒子が析出して強度と導電性に優れ、リードフレーム、電子機器の各種端子、コネクタなどの材料として実用化されている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特願2000−018319
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
Cu−Ni−Si合金はNi−Si系金属間化合物粒子が析出することによって、強度と導電性が向上する。しかしながら、一般的に合金の強度と導電率とは相反する関係であり、強度が高いと導電性は低下し、導電性が高いと強度は低下する。Cu−Ni−Si合金の場合、添加するNi及びSiを低濃度にするとNi−Si系金属間化合物粒子の析出物を形成しない固溶元素が少なくなり十分な導電性は得られるものの、低濃度であるので析出量は少なくなり強度が不十分になる。一方、高濃度にすると析出量が多くなり十分な強度は得られるものの、Ni−Si系金属間化合物粒子の析出物を形成しない固溶元素が多くなり導電性が不十分になるという不具合があった。
本発明は上述した問題解決のためになされたもので、高強度及び高導電性を両立させた電子材料用Cu−Ni−Si合金を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために本発明者らは、Cu−Ni−Si合金の研究を重ねたところ、高強度および高導電性を両立させたCu−Ni−Si合金の開発に成功した。
【0008】
即ち本発明は、
(1)Niを1.0〜4.5%、Siを0.25〜1.5%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅基合金で、NiとSiの質量濃度を[Ni]、[Si]とした場合のNiとSiの[Ni]/[Si]が4〜6で、且つ、(式1)で定義するχが0.1〜0.45となるようなうな[Ni]、[Si]であることを特徴とする高強度および高導電性を両立させたCu−Ni−Si合金、
([Ni]−4χ)([Si]−χ)=1/8……(式1)
(2)Mgを0.05〜0.3%含有することを特徴とする上記(1)に記載のCu−Ni−Si合金、
(3)Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、またはBeのうち1種類以上を総量で0.005〜2.0%含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のCu−Ni−Si合金
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明において銅合金の組成範囲を上記の通りに限定した理由を具体的に説明する。
Ni及びSi濃度
Ni及びSiは、時効処理を行うことによりNiとSiが微細なNiSiを主とした金属間化合物の析出粒子を形成し、合金の強度を著しく増加させる一方、導電性も高く向上する。ただし、Ni濃度が1.0%未満の場合、または、Si濃度が0.25%未満の場合は、他方の成分を添加しても所望とする強度が得られない。また、Ni濃度が4.5%を超える場合、またはSi濃度が1.5%を超える場合は十分な強度が得られるものの、導電性が低くなり、更には強度の向上に寄与しない粗大なNi−Si系粒子(晶出物及び析出物)が母相中に生成し、曲げ加工性、エッチング性及びめっき性の低下を招く。よって、Ni濃度を1.0〜4.5%、Si濃度を0.25〜1.5%と定めた。
【0010】
Ni Si 質量濃度比
合金中の固溶Ni量および固溶Si量が減少すると導電率が増加する。Cu−Ni−Si合金に時効処理を施すと、NiSiが析出して固溶Ni量および固溶Si量が減少することにより、導電率が向上する。時効後の固溶Ni量および固溶Si量は後述する溶解度積の関係(式1)に従って増減する。例えば、合金中のNi濃度およびSi濃度の比([Ni]/[Si])が増加すると、固溶Ni量が増加し、固溶Si量が減少する。一方、導電率低下への影響度を比較すると、固溶Siの方が固溶Ni量よりかなり大きい。従って、最大の導電率を与える[Ni]/[Si]は、析出物NiSiにおけるNi/Si比(=4.18)とは一致しない。
【0011】
本発明者らは[Ni]/[Si]と送電率との関係を実験により検討し、高い導電率を得る為には[Ni]/[Si]を4〜6の範囲に調整することが必要であり、4.2〜4.7の範囲に調整することが最も好ましいことを明らかにした。この組成は、NiSiの組成に対し、Niが若干過剰となる組成である。
[Ni]/[Si]が4未満では固溶Si量が増えるため、導電率が著しく低下するのに加え、熱処理時に材料表面にSi酸化膜が生成しやすくなり半田付け性およびメッキ性の劣化の原因なる。一方、[Ni]/[Si]が6を超えると固溶Ni量が増えるために所望とする導電率が得られない。
【0012】
(式1)について
Cu−Ni−Si合金はNiSi粒子が析出することによって、強度が向上する。先述したように導電率の観点からは、NiSi組成に対してNi量が若干過剰気味が良い。このようにNiが過剰な場合、NiSi粒子の析出量はSi濃度によって決定されると見なすのが従来の考え方であった。即ち、Ni過剰組成の場合には、時効後の強度がSi濃度によって決定されると考えられてきた。
【0013】
本発明者らは、高導電率が得られるNi過剰組成をベースとして、NiおよびSi濃度と強度との関係について研究を重ねた結果、同じSi濃度でも[Ni]/[Si]が違うと大きい場合で数十MPaもの強度さが生じ、また、Si濃度と強度に必ずしも相関は見られないことを知見した。いいかえれば、Ni2Siの析出量を決定するパラメータは、Si濃度ではないことを見出したのである。
そして、溶解度積の考えに基づき実験データを解析を行った結果、NiおよびSi濃度とNiSiの析出量との関係について、以下の実験式を得た。
([Ni]−4χ)([Si]−χ)=1/8……(式1)
ここで、χは析出量を示すパラメータである。より具体的には、χは析出したし濃度に相当し、4χは析出したNi濃度に相当する。したがって、([Ni]−4χ)は固溶しているに濃度に相当し、([Si]−χ)は固溶したSi濃度に相当する。
時効後の強度はこのχと強い相関を示す。すなわち、χを適正な値に調整することにより所望の強度が得られ、そのためには(式1)を用いて[Ni]および[Si]を適正な値にすればよい。以上のように、χという析出の状態を示すパラメータを導入し、溶解度積の関係に基づいてNiとSi濃度を調整することにより、時効後の強度を制御する技術は、本発明で初めて見出された物である。
【0014】
溶解度積の値((式1)の右辺)は、温度による関数である。低温ではこの値は小さく、即ち、低温にて時効処理を行えば、理論的には析出物の量が多くなり、高強度で高導電率の材料が得られることになるが、これはあくまでも平衡状態での理論である。低温にて金属材料を平衡状態まで時効処理を行うためには、無限に近い時効時間が必要となる。本発明者らは、種々の組成および析出の状態を調べ、工業的な時効処理に対する溶解度積の適正値は1/8であり、この場合におけるχの値が0.1〜0.45であれば、高強度、高導電率の材料が工業的に安定して得られることを明らかにした。
【0015】
Mg濃度
Mgは応力緩和特性を大幅に改善する効果及び熱間加工性を改善する効果があるが、0.05%未満ではその効果が得られず、0.30%を超えると鋳造性(鋳肌品質の低下)、熱間加工性及びめっき耐熱剥離性が低下するためMgの濃度を0.05〜0.3%と定める。
【0016】
Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、またはBe
Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、またはBeには、Cu−Ni−Si合金の強度及び耐熱性を改善する作用がある。また、これらの中でZnには、半田接合の耐熱性を改善する効果もあり、Feには組織を微細化する効果もある。更にTi、Zr、Al及びMnは熱間圧延性を改善する効果を有する。この理由は、これらの元素が硫黄との親和性が強いため硫黄と化合物を形成し、熱間圧延割れの原因であるインゴット粒界への硫黄の偏析を軽減するためである。Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、またはBeの濃度が総量で0.005%未満であると上記の効果は得られず、総含有量が2.0%を越えると導電性が著しく低下する。そこで、これらの含有量を総量で0.005〜2.0%と定める。
【0017】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。大気溶解炉にて表1に示す各種成分組成の銅合金を溶製し、厚さ30mmのインゴットに鋳造した。
【0018】
【表1】
Figure 2004315940
【0019】
次に厚さ9mmまで熱間圧延を行い、表面スケール除去の為面削を施した後、冷間圧延により厚さ1mmの板とした。その後、750℃〜850℃の温度で溶体化処理を行った後、厚さ0.4mmまで冷間圧延した。そして各合金の組成につき、引張強さが最大となる温度で3時間の時効処理を行った。この温度は400〜600℃の範囲であった。更に、冷間圧延で厚さ0.25mmの板とした。最終熱処理後の試料の強度は、引張試験機において引張強さにより評価した。導電性は四端子法にて導電率(%IACS)により評価した。また、[Ni]/[Si]およびχの値が、請求項1の範囲内を(○)、範囲外を(×)として評価した。表1に結果を示す。
【0020】
表1から分かるように発明例No.1〜No.13は[Ni]/[Si]およびχの値を全てが請求項1の範囲内である。従って、発明例は、引張強さで720MPa以上、導電率で45%IACS以上であり、高強度、高導電性を有している。
さらに応力緩和特性を改善するためにMgを添加した発明例No.2、4、6、7、8でも、Mgを添加しないものと同様に、高い強度と導電率が得られている。
また、Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、またはBeのうち1種類以上を総量で0.005〜2.0%添加した発明例No.7〜13は添加されていない発明例No.1〜6に比べて導電性はやや劣るものの、強度の面では優れている。
【0021】
一方、比較例を見ると、No.14及び16は、χの値が0.45より高いため、強度はそれほど増加せず、導電率が低くなった。これは、強度に寄与しない粗大なNi−Si系粒子(晶出物及び析出物)が生成するためである。No.15は、高い導電率を示したが、析出量を意味するχの値が低いため、強度が低くなった。No.17は、[Ni]/[Si]が低く、Si過剰となり導電率が低くなった。No.18は、[Ni]/[Si]が高く、固溶Niが多く、導電率が低くなった。No.19は、χの値が高く、更に[Ni]/[Si]が低いので、導電率が著しく低下した。
No.20は、Mgの添加量が多すぎるため、熱間圧延での加工性が悪く、割れが発生し、後工程を進めることができなかった。
No.21〜23では、Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、またはBeのうち1種類以上の元素が添加された時の総量が2.0%を超えているため、導電率が著しく悪かった。
【0022】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明合金は、優れた強度と導電性を有しており、リードフレーム、端子、コネクターなどの電子材料用銅合金として好適である。

Claims (3)

  1. Niを1.0〜4.5質量%(以下%とする)、Siを0.25〜1.5%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅基合金において、NiとSiの質量濃度を[Ni]、[Si]とした場合のNiとSiの質量濃度比(以下[Ni]/[Si]とする)が4〜6で、且つ、(式1)で定義するχが0.1〜0.45となるような[Ni]、[Si]であることを特徴とする高強度および高導電性を両立させたCu−Ni−Si合金、
    ([Ni]−4χ)([Si]−χ)=1/8……(式1)。
  2. Mgを0.05〜0.3%含有することを特徴とする請求項1に記載のCu−Ni−Si合金。
  3. Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、またはBeのうち1種類以上を総量で0.005〜2.0%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のCu−Ni−Si合金。
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