JP2004308694A - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】減速機構の小型軽量化を図り、装置を小型軽量化することができる車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ機構部2を作動させる駐車ブレーキアクチュエータ3は、電動モータ21及び複数のギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)を用いて構成される減速機構22を有している。その減速機構22を構成する各ギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)において、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能な第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aが該樹脂にて形成されるとともに、その他のピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34が金属にて形成される。
【選択図】 図1
【解決手段】ブレーキ機構部2を作動させる駐車ブレーキアクチュエータ3は、電動モータ21及び複数のギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)を用いて構成される減速機構22を有している。その減速機構22を構成する各ギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)において、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能な第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aが該樹脂にて形成されるとともに、その他のピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34が金属にて形成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両用ブレーキ装置には、車輪内に設けられ制動力を発生させるブレーキ機構部が主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキ時においては電動モータにて作動するように構成されているものが、例えば特許文献1にて開示されている。
【0003】
特許文献1のブレーキ装置は、ブレーキキャリパ内にブレーキピストンが出没可能に配設され、該ピストンの突出に伴って摩擦材をブレーキのロータに圧接させることで制動力を得るように構成されている。ブレーキピストンの反摩擦材側には液圧室が設けられ、該液圧室にはブレーキピストンを作動させる作動液が供給される。そして、主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にてブレーキピストンが作動される。
【0004】
又、液圧室内にはスピンドル及びナットが収容されており、スピンドルは該ブレーキ装置に一体に備えられる電動機により回転される。このスピンドルは外周面にネジが形成され、回転不能に設けられるナットと螺合している。つまり、電動機によるスピンドルの回転がナットの直線運動に変換され、該ナットの直線運動に伴って前記ブレーキピストンが作動するように構成されている。そして、駐車ブレーキ時においては電動機にてブレーキピストンが作動される。
【0005】
尚、駐車ブレーキ時においてはロータに対してブレーキバッドが圧接するため、該パッドには反力(ロータから離間する方向の力)が作用してブレーキピストンが没入しようとするが、スピンドルとナットとの間のセルフロッキング作用により、該ピストンが没入することが防止される。これにより、電動機への電源供給が遮断されてもブレーキピストンの作動位置が維持され、摩擦材の圧接力、即ち制動力が維持されるようになっている。
【0006】
ところで、駐車ブレーキに必要な制動力を得るためには、ロータに対して摩擦材を強く圧接する必要があるため、ブレーキピストンに対して大きな押圧力を付与する必要がある。そのため、スピンドルと駆動源である電動機との間には、高減速・高トルク化可能な減速機構が必要である。
【0007】
そのため、特許文献1の減速機構には、コンパクトでありながら高減速・高トルク化が得られる遊星歯車減速機構やハーモニックドライブ減速機構等が用いられており、特許文献2の減速機構には、複数の平ギヤを用いた平面歯車機構が用いられている。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−510760号公報
【特許文献2】
特開平5−60157号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両用ブレーキ装置には軽量化することが要求されている。そのため、このブレーキ装置に備えられる減速機構も同様に軽量化することが要求されているため、減速機構を構成する各ギヤを樹脂化して該減速機構を軽量化することが考えられている。
【0010】
しかしながら、樹脂製のギヤは、同じ駆動力(トルク)を扱う金属製のギヤと比べて直径、歯幅及び歯厚等を大きくする必要があり、大型化する。そのため、減速機構が大型化し、ひいてはブレーキ装置が大型化してしまう。車両用ブレーキ装置は軽量化だけでなく小型化も要求されているため、該ブレーキ装置に備えられる減速機構は小型軽量化の両立を図る必要があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、減速機構の小型軽量化を図り、装置を小型軽量化することができる車両用ブレーキ装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1に記載の発明は、摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有し、該モータの回転を該減速機構にて減速して前記ブレーキ機構部に伝達し、前記摩擦材が前記回転体に圧接するように該ブレーキ機構部を作動させる電動アクチュエータと、を備えた車両用ブレーキ装置であって、前記減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成されていることをその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置において、前記ギヤは、少なくとも歯部を含んだ所定部位が前記樹脂にて形成されていることをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ装置において、前記ギヤは、入力側の大径ギヤ部と出力側の小径ギヤ部とが同軸上に一体回転可能に構成されており、該大径ギヤ部が前記樹脂にて形成されるとともに、該小径ギヤ部が前記金属にて形成されていることをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用ブレーキ装置において、前記大径ギヤ部の一側面には金属プレートが配設され、該金属プレートの外周部が該大径ギヤ部の径方向外側の所定部位と連結されており、前記小径ギヤ部は、前記大径ギヤ部及び前記金属プレートに対してそれぞれ連結されていることをその要旨とする。
【0016】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ブレーキ機構部を作動させる電動アクチュエータは、電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有している。その減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成される。つまり、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位は金属を用いなくとも該樹脂にて強度を十分に確保できるので、このようなギヤ若しくはギヤの所定部位を該樹脂にて形成することで、ギヤが軽量化される。又、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位、即ち所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応不能なギヤ若しくはギヤの所定部位は金属を用いないと同寸法内で強度を十分に確保できないので、このようなギヤ若しくはギヤの所定部位を該金属にて形成することで、ギヤが小型化される。これらにより、減速機構が小型軽量化され、ひいてはブレーキ装置の小型軽量化に貢献できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、ギヤは、少なくとも歯部を含んだ所定部位が樹脂にて形成される。そのため、樹脂にて形成することで噛み合い音が小さく抑えられるので、減速機構、ひいてはブレーキ装置の静粛性が高くなる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ギヤは、入力側の大径ギヤ部と出力側の小径ギヤ部とが同軸上に一体回転可能に構成され、大径ギヤ部が樹脂にて形成されるとともに、小径ギヤ部が金属にて形成される。つまり、入力側の大径ギヤ部にかかる駆動力の方が出力側の小径ギヤ部にかかる駆動力に比べて小さいので、一方のギヤ部に応じて両ギヤ部を樹脂若しくは金属のいずれかとすれば、ギヤは大型化若しくは重量が重くなる。そのため、大径ギヤ部を樹脂、小径ギヤ部を金属にてそれぞれ形成することで、ギヤが確実に小型軽量化される。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、大径ギヤ部の一側面には金属プレートが配設され、金属プレートの外周部が大径ギヤ部の径方向外側の所定部位と連結される。小径ギヤ部は、大径ギヤ部及び金属プレートに対してそれぞれ連結される。そのため、大径ギヤ部が小径ギヤ部から受ける荷重は、小径ギヤ部が直接的に連結される部分と金属プレートを介して連結される径方向外側の所定部位とで分散される。従って、大径ギヤ部においては、小径ギヤ部が直接的に連結される部分にかかる荷重が低減されるとともに、金属プレートを介して連結される径方向外側の部位にかかる荷重は小さい。その結果、樹脂製である大径ギヤ部は金属製と比べて強度が低下するが、小径ギヤ部から受ける荷重が分散かつ低減されるので、大径ギヤ部の破損が未然に防止され、大径ギヤ部の耐久性が向上される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、本実施形態の車両用ブレーキ装置1を示す。尚、図1は、図2のA−A断面図である。
【0021】
車両用ブレーキ装置1は、図示しない車輪(例えば、各後輪)内にそれぞれ配設されている。ブレーキ装置1は、ブレーキペダル(図示略)の操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキスイッチ(図示略)の操作に基づいた駐車ブレーキ時においては後述の電動モータ21にて作動するように構成されている。
【0022】
ブレーキ装置1は、ブレーキ機構部2と、電動アクチュエータとしての駐車ブレーキアクチュエータ3とを備えている。
ブレーキ機構部2は浮動型のブレーキキャリパ4を備え、該キャリパ4にはピストン収容部5が形成されている。ピストン収容部5には、ブレーキピストン6が回転不能かつ出没可能(軸方向に移動可能)に収容されている。ブレーキピストン6の基端部とピストン収容部5とで囲まれた空間は液圧室7となっており、該液圧室7には作動液が供給される。
【0023】
ブレーキピストン6の先端部には、摩擦材としてのブレーキパッド8が固定されている。このブレーキパッド8と対向する前記ブレーキキャリパ4の所定部位には該パッド8と対をなす摩擦材としてのブレーキパッド9が固定されている。これらブレーキパッド8,9間には、車輪(後輪)と一体回転するように設けられる回転体としてのブレーキディスク10が位置している。
【0024】
そして、ブレーキペダル(図示略)の踏み込み量が増加すると、その増加量に応じて液圧室7内の作動液圧が高くなり、その圧力増加によりブレーキピストン6が押圧されて突出する。すると、ブレーキピストン6に固定されるブレーキパッド8がブレーキディスク10の一側面に圧接するとともに、その圧接に基づいてブレーキキャリパ4が移動して他方のブレーキパッド9が該ディスク10の他側面に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)に制動力が生じるようになっている。
【0025】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなり、その圧力減少によりブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接することで生じる反力等によりブレーキピストン6が没入する。すると、ブレーキディスク10に対するブレーキパッド8,9の圧接力が減少し、制動力が減少する。そして、ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間するようになっている。
【0026】
前記ブレーキキャリパ4内には、運動変換機構11が収容されている。運動変換機構11は、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aの回転運動を往復直線運動に変換してブレーキピストン6に伝達し、該ピストン6を作動させるものである。運動変換機構11は、スクリューシャフト12とナット部材13とを備えている。
【0027】
スクリューシャフト12は、基端部(反ブレーキピストン6側端部)から先端部に向かって順にシャフト部12a、フランジ部12b及びスクリュー部12cを備えている。
【0028】
シャフト部12aは、その外周面がラジアル滑り軸受14を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。シャフト部12aの基端部はブレーキキャリパ4から突出し、その突出する部分には該シャフト12の軸方向に突出する連結凸部12dが形成されている。この連結凸部12dは、2面幅をなしている。即ち、連結凸部12dは、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aと回転方向において係合し、該出力軸部34aの回転をスクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0029】
フランジ部12bは、前記液圧室7内に位置しており、該液圧室7内において反ブレーキピストン6側の面がスラストボール軸受15を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。
【0030】
スクリュー部12cは、外周面にネジが形成されており、そのネジの断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。スクリュー部12cは、ナット部材13と螺合される。即ち、ナット部材13の内周面に形成されるネジにおいても、その断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。尚、このスクリュー部12cとナット部材13とは、セルフロッキング作用が生じる構成となっている。
【0031】
ここで、前記ブレーキピストン6には、スクリュー部12c及びナット部材13を収容すべく基端部から先端部に向かって凹状をなす中空部6aが形成されている。中空部6aは、ナット部材13の先端側端面と軸方向において係合する段差部6bを有している。因みに、中空部6aは、前記液圧室7と連通しており、該液圧室7の一部をなしている。ナット部材13にはキー16が組み付けられており、そのキー16によりナット部材13はブレーキピストン6に対して回転不能に連結されている。又、ナット部材13は、ブレーキピストン6に対して段差部6bに当接するまで軸方向に移動可能となっている。
【0032】
そして、スクリューシャフト12が一方に回転されると(正転駆動されると)、ブレーキピストン6に対して回転不能に連結されているナット部材13は、スクリュー部12cの先端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6の段差部6bを押圧して該ピストン6を突出させる。一方、スクリューシャフト12が他方に回転されると(逆転駆動されると)、ナット部材13はスクリュー部12cに基端部側に向かって移動する。尚、ナット部材13が同方向に移動する際、該ナット部材13とブレーキピストン6とは係合しないので、該ナット部材13は該ピストン6を作動させない。
【0033】
又、上記したように作動液によりブレーキピストン6が突出する場合、ナット部材13とブレーキピストン6とは軸方向に係合しないため、該ピストン6のみが突出するようになっている。尚、ナット部材13の所定部位には軸方向に貫通する貫通孔13aが形成されており、該貫通孔13aは液圧室7内の作動液を中空部6a内に導入するためのものである。つまり、ブレーキピストン6において液圧を受ける面積が増大するように構成されている。
【0034】
このようなブレーキ機構部2には、駐車ブレーキアクチュエータ3が複数の取付ボルト(図示略)により一体に組み付けられている。駐車ブレーキアクチュエータ3は、直流モータ等の電動モータ21と、該モータ21の回転を減速する減速機構22とを備えている。これら電動モータ21及び減速機構22は、収容ケース23内に設けたモータ収容部23a及び減速機構収容部23bにそれぞれ収容され、蓋部材24により閉塞される。蓋部材24は、収容ケース23に対して複数の取付ボルト25にて固定される。
【0035】
電動モータ21は、モータ収容部23aに嵌挿されて固定されている。電動モータ21は、その軸線L2が前記ブレーキピストン6(スクリューシャフト12)の軸線L1と平行をなし、かつ回転軸21aが該ピストン6とは反対側に突出するように配置されている。回転軸21aには、後述する第1〜第4減速ギヤ31〜34に応じて、はすばギヤ又は平ギヤよりなる金属製のピニオン30が固定されている。
【0036】
ここで、ピニオン30は、減速機構22の最も入力段に位置するギヤであるが小径のギヤであるため、該ピニオン30の歯部30bにかかる駆動力(トルク)は比較的大きい。そのため、ピニオン30を形状的観点等から設定される所望の寸法(直径、歯幅及び歯厚等)に従って本実施形態で用いる樹脂(後述する第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aを形成するための樹脂)にて形成しても十分な強度が得られない。つまり、この樹脂を用いてピニオン30を形成する場合には、該ピニオン30においては寸法(直径、歯幅及び歯厚等)を大きくして対応する必要がある。従って、このピニオン30は金属にて形成され、該ピニオン30の大型化が防止されている。尚、前記設定寸法においてピニオン30が扱う駆動力に余裕があれば、該ピニオン30の歯部30bの歯数を少なくすることができ、更なる小型化を図ることが可能である。
【0037】
そして、電動モータ21は、駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチ(図示略)がオン操作されると、ブレーキ機構部2にて所望の制動力が生じるまで(ブレーキディスク10にブレーキパッド8,9が所望の圧接力で圧接するまで)電源が供給されて正転駆動され、その後、電源供給が遮断される。一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、ブレーキ機構部2にて生じていた制動力がゼロになるまで(ブレーキディスク10からブレーキパッド8,9が離間するまで)電源が供給されて逆転駆動され、その後、電源供給が遮断される。
【0038】
減速機構22は、減速機構収容部23b内に収容され、前記運動変換機構11の反ブレーキピストン6側に配置されている。減速機構22は、はすばギヤ又は平ギヤよりなる第1〜第4減速ギヤ31〜34を備え、平面歯車機構をなしている。尚、前記ピニオン30及び各ギヤ31〜34の噛み合い音の観点から言えば、はすばギヤを用いた方が噛み合い音が小さく抑えられるため、有利である。
【0039】
第1減速ギヤ31は、樹脂製の大径ギヤ部31aと金属製の小径ギヤ部31bとが同軸上に一体回転可能に連結されており、電動モータ21の回転軸21a(スクリューシャフト12)と平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸35により回転可能に支持されている。この第1減速ギヤ31の大径ギヤ部31aは、ピニオン30と噛合されている。
【0040】
第2減速ギヤ32は、樹脂製の大径ギヤ部32aと金属製の小径ギヤ部32bとが同軸上に一体回転可能に連結されており、後述する第4減速ギヤ34に固定される支軸37にて回転可能に支持されている。この第2減速ギヤ32の大径ギヤ部32aは、第1減速ギヤ31の小径ギヤ部31bと噛合されている。
【0041】
ここで、第2減速ギヤ32及び前記第1減速ギヤ31は、具体的には図3に示すように同様に構成されている。尚、第2減速ギヤ32を代表として説明する。小径ギヤ部32b(31b)は、金属よりなり、支軸37(35)を挿通するための挿通孔38を有している。この小径ギヤ部32b(31b)には、軸方向一方に突出する連結筒部39が形成されている。連結筒部39の外周面には、それぞれ同形状をなす4個の嵌合凸部39aが周方向に等間隔に形成されている。この嵌合凸部39aは、小径ギヤ部32b(31b)の歯部32d(31d)より内側に位置している。
【0042】
これに対し、大径ギヤ部32a(31a)は、樹脂よりなり、その中心部には前記連結筒部39が嵌挿される連結孔40が形成され、この連結孔40には前記嵌合凸部39aと嵌合するための4個の嵌合凹部40aが周方向に等間隔に形成されている。又、大径ギヤ部32a(31a)における小径ギヤ部32b(31a)とは反対側の面には、金属プレート42を装着するための装着凹部41が該プレート42の厚み分の深さで凹設されている。装着凹部41には、大径ギヤ部32a(31a)の外周縁近傍まで設けられている。又、装着凹部41には、径方向内側に突出する4個の嵌合凸部41aが周方向に等間隔に設けられている。
【0043】
金属プレート42は、略円板状をなしている。金属プレート42の中心部には前記連結筒部39が嵌挿される連結孔42aが形成され、この連結孔42aには前記嵌合凸部39aと嵌合するための4個の嵌合凹部42bが周方向に等間隔に形成されている。又、金属プレート42の外周部には、前記嵌合凸部41aと嵌合するための4個の嵌合凹部42cが周方向に等間隔に形成されている。
【0044】
そして、小径ギヤ部32b(31b)の連結筒部39が大径ギヤ部32a(31a)の連結孔40に嵌挿され、該筒部39の嵌合凸部39aと該連結孔40の嵌合凹部40aとが嵌合される。又、大径ギヤ部32a(31a)の装着凹部41に金属プレート42が装着され、該凹部41の嵌合凸部41aと該プレート42の嵌合凹部42cとが嵌合されるとともに、該プレート42の連結孔42aの嵌合凹部42bと連結筒部39の嵌合凸部39aとが嵌合される。尚、金属プレート42の連結孔42aと小径ギヤ部32b(31b)の連結筒部39とは、圧入により固定されている。こうして大径ギヤ部32a(31a)と小径ギヤ部32b(31b)とが一体回転可能に連結され、第2減速ギヤ32及び前記第1減速ギヤ31が構成されている。
【0045】
このような第1,第2減速ギヤ31,32は、減速機構22の入力寄り(電動モータ21寄り)に位置するギヤであるので、扱う駆動力が比較的小さい。更に、これら各減速ギヤ31,32においても、入力側の大径ギヤ部31a,32aの歯部31c,32cにかかる駆動力の方が出力側の小径ギヤ部31b,32bの歯部31d,32dにかかる駆動力に比べて小さい。
【0046】
そのため、大径ギヤ部31a,32aを所望の寸法(直径、歯幅及び歯厚等)に従って本実施形態で用いる樹脂にて形成しても十分な強度が得られるため、該ギヤ部31a,32aはこの樹脂を用いて形成されている。これに対し、小径ギヤ部31b,32bを所望の寸法に従って本実施形態で用いる樹脂(大径ギヤ部31a,32aで用いた樹脂)にて形成した場合、十分な強度が得られない。つまり、この樹脂を用いて小径ギヤ部31b,32bを形成する場合、該ギヤ部31b,32bにおいては寸法(直径、歯幅及び歯厚等)を大きくして対応する必要がある。従って、この小径ギヤ部31b,32bは、金属にて形成されている。こうして第1,第2減速ギヤ31,32は大径ギヤ部31a,32aを樹脂製、小径ギヤ部31b,32bを金属製とすることで、該ギヤ31,32の大型化を防止しながら軽量化が図られている。
【0047】
又、第1,第2減速ギヤ31,32は、上記したように減速機構22の入力寄り(電動モータ21寄り)に位置するギヤであるので、高速で回転する。そのため、噛み合い音が多数発生するが、大径ギヤ部31a,32aを樹脂製としたことで、該大径ギヤ部31aとピニオン30との間、及び該大径ギヤ部32aと小径ギヤ部31bとの間で生じる噛み合い音が小さく抑えられる。従って、大径ギヤ部31a,32aを樹脂製とすることで、減速機構22の静粛性も同時に向上することができる。尚、大径ギヤ部31a,32aが樹脂製となることで、ギヤ部31a,32aを金属製とした場合に比べて僅かながらも減速機構22が熱を吸収し難くなる。
【0048】
更に、大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとの連結において、それぞれ金属プレート42が用いられている。つまり、大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとは、その連結孔40と連結筒部39とが連結するだけでなく、その連結部分と協働して該連結孔40より径方向外側に位置する部位(嵌合凸部41a)と該連結筒部39とが金属プレート42を介して連結する。そのため、大径ギヤ部31a,32aが小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重は、その連結孔40と該連結孔40より径方向外側に位置する部位(嵌合凸部41a)とで分散される。従って、大径ギヤ部31a,32aにおいては、連結孔40にかかる荷重が低減されるとともに、嵌合凸部41aにかかる荷重は該連結孔40より径方向外側に位置するため小さい。その結果、樹脂製である大径ギヤ部31a,32aは金属製と比べて強度が低下するが、小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重が分散かつ低減されるので、特に大きな荷重がかかり易い連結孔40部分の破損が未然に防止され、大径ギヤ部31a,32aの耐久性が向上されている。
【0049】
因みに、第1,第2減速ギヤ31,32(大径ギヤ部31a,32a及び小径ギヤ部31b,32b)をはすばギヤとした場合、該ギヤ31,32に駆動力がかかると軸線方向にその力の一部が作用する。そのため、ブレーキピストン6を突出させるべく電動モータ21を回転させた際に、大径ギヤ部31a,32aが金属プレート42側に押圧されるように歯部31c,31d,32c,32dのねじれる方向が設定されている。そのため、ブレーキピストン6の突出時、即ち駐車ブレーキを作動させる場合には、長時間にわたり第1,第2減速ギヤ31,32に駆動力がかかったままとなる。従って、このような場合に樹脂製の大径ギヤ部31a,32aが金属プレート42側に押圧されるように構成すれば、該金属プレート42にて該ギヤ部31a,32aが撓むことが防止される。従って、大径ギヤ部31a,32aが長時間にわたって撓むことによって生じる該ギヤ部31a,32aの変形や破損が未然に防止される。又、このようにはすばギヤとした場合、該ギヤ31,32に駆動力がかかると軸線方向にその力の一部が作用するため、上記したように金属プレート42と小径ギヤ部31b,32bとを固定することで、樹脂製の大径ギヤ部31a,32aに無用な力が作用することが防止される。
【0050】
第3減速ギヤ33は、ともに金属製の大径ギヤ部33aと小径ギヤ部33bとが同軸上に一体回転可能に連結されており、前記回転軸21aと平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸36により回転可能に支持されている。この第3減速ギヤ33の大径ギヤ部33aは、第2減速ギヤ32の小径ギヤ部32bと噛合されている。
【0051】
尚、第3減速ギヤ33も前記第1,第2減速ギヤ31,32と同様に、小径ギヤ部33bより扱う駆動力が小さい大径ギヤ部33aを樹脂製とすることが考えられる。しかしながら、この第3減速ギヤ33は、前記第1減速ギヤ31及び第2減速ギヤ32よりも出力寄り(スクリューシャフト12寄り)に位置するギヤであるので、扱う駆動力が比較的大きくなる。つまり、小径ギヤ部33bの歯部33dにかかる駆動力も当然ながら大きくなるが、大径ギヤ部33aの歯部33cにかかる駆動力も比較的大きくなる。
【0052】
そのため、大径ギヤ部33aを所望の寸法(直径、歯幅及び歯厚等)に従って本実施形態で用いる樹脂にて形成した場合、十分な強度が得られない。つまり、この樹脂を用いて大径ギヤ部33aを形成する場合、該ギヤ部33aにおいては寸法(直径、歯幅及び歯厚等)を大きくして対応する必要がある。従って、第3減速ギヤ33はこの大径ギヤ部33aも金属にて形成することで、該ギヤ33の大型化が防止されている。
【0053】
第4減速ギヤ34は、金属製である。即ち、第4減速ギヤ34は、減速機構22の最も出力段に位置するギヤであるため、該ギヤ34の歯部34cにかかる駆動力は大きい。従って、この第4減速ギヤ34は、前記第3減速ギヤ33と同様、強度上の理由から金属にて形成され、該ギヤ34の大型化が防止されている。
【0054】
この第4減速ギヤ34は、中心部に出力軸部34aが形成されている。出力軸部34aには、軸方向一方に突出するように支軸37が固定されている。この支軸37は、前記第2減速ギヤ32を支持するとともに、その先端が蓋部材24に対して回転可能に支持されている。又、この支軸37は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。つまり、第4減速ギヤ34及び前記第2減速ギヤ32は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。出力軸部34aの軸方向他端部は、収容ケース23に対して回転可能に支持されている。出力軸部34aの軸方向他端部には、連結凹部34bが形成されている。この連結凹部34bは断面2面幅をなし、該連結凹部34bには前記スクリューシャフト12の連結凸部12dが嵌挿される。つまり、この連結凹部34bは、該スクリューシャフト12の連結凸部12dと回転方向において係合して、出力軸部34aの回転を該スクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0055】
前記蓋部材24には、前記ピニオン30の先端面に対向する位置に貫通孔24aが形成されている。これに対し、前記ピニオン30の先端面には、工具(図示略)と連結するための工具連結孔30aが形成されている。即ち、貫通孔24aから工具を挿入して工具連結孔30aに嵌挿して該工具とピニオン30とを連結し、該工具によりピニオン30が回転できるように構成されている。そのため、電動モータ21によりブレーキピストン6を突出させて駐車ブレーキを作動させた状態で該モータ21が作動不能に陥った場合に、工具によりピニオン30を回転させて駐車ブレーキの作動を解除すべくブレーキピストン6を没入させることが可能となっている。そして、貫通孔24aはネジ孔となっており、通常は該貫通孔24aにボルト26が螺入されて、該ボルト26にて該貫通孔24aが閉塞されている。
【0056】
このように構成されたブレーキ装置1は、ブレーキペダルの操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時には液圧で作動し、駐車ブレーキスイッチの操作に基づいた駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する。
【0057】
[主ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
ブレーキペダルの踏み込み量が増加すると、その増加量に応じてブレーキ機構部2の液圧室7内の作動液圧が高くなる。すると、その圧力を受けてブレーキピストン6が押圧されて突出し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)にブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が生じる。
【0058】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなる。すると、ブレーキパッド8,9が受ける反力等によりブレーキピストン6が没入し、制動力が減少する。ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間する。即ち、制動力がゼロとなる。
【0059】
[駐車ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチがオン操作されると、電動モータ21に正転のための電源が供給され該モータ21は正転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を正転駆動させる。スクリューシャフト12が正転駆動されると、ナット部材13はブレーキピストン6を突出させるように押圧し、その押圧に基づいてブレーキピストン6はブレーキパッド8,9をブレーキディスク10に圧接させて制動力を発生させる。そして、車両を駐車するのに必要な所望の制動力が生じるまで電動モータ21に電源が供給された後、該モータ21への電源供給が遮断される。
【0060】
このとき、ブレーキピストン6はブレーキディスク10に圧接するブレーキパッド8,9から反力を受けて没入しようとするが、スクリューシャフト12(スクリュー部12c)とナット部材13との間でセルフロッキング作用が生じる構成となっているため、該ピストン6が没入することが防止されている。これにより、電動モータ21への電源供給が遮断されてもブレーキピストン6の突出位置が維持され、ブレーキパッド8,9の圧接力、即ち制動力が維持される(駐車ブレーキ作動)。
【0061】
一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、電動モータ21に逆転のための電源が供給され該モータ21は逆転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を逆転駆動させる。スクリューシャフト12が逆転駆動されると、ナット部材13はスクリュー部12cの基端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなる。ブレーキピストン6がナット部材13から押圧力を受けなくなると、ブレーキパッド8,9から受ける反力等により該ピストン6が没入し、制動力が減少する。そして、電動モータ21はブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に対して所定距離だけ離間するようにナット部材13がスクリュー部12cの所定位置に配置されるまで逆転駆動され、その後、該モータ21への電源供給が停止される。これに伴ってブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10から所定距離だけ離間し、制動力がゼロとなる(駐車ブレーキの作動解除)。
【0062】
尚、上記したように、駐車ブレーキが作動した状態で何らかの原因で電動モータ21が作動不能に陥った場合、このままの状態では駐車ブレーキが作動したまま維持されてしまい、次に車両を発進若しくは移動させる際に支障を来す場合がある。そこで、このような場合には、蓋部材24の貫通孔24aに螺着されているボルト26を抜き取り、その貫通孔24aから工具を挿入してピニオン30の先端面に設けられる工具連結孔30aに嵌挿する。そして、工具を操作してスクリューシャフト12が逆転するようにピニオン30を回転させ、ナット部材13をスクリュー部12cの基端部側に移動させる。すると、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなり、ブレーキパッド8,9から受ける反力等によりブレーキピストン6が没入する。このようにして、外部から工具によりブレーキパッド8,9をブレーキディスク10から離間させ、駐車ブレーキの作動を解除することが可能となっている。
【0063】
次に、本実施形態のブレーキ装置1の特徴的な作用効果を述べる。
(1)ブレーキ機構部2を作動させる駐車ブレーキアクチュエータ3は、電動モータ21及び複数のギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)を用いて構成される減速機構22を有している。その減速機構22を構成する各ギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)において、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能な第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aが該樹脂にて形成されるとともに、その他のピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34が金属にて形成される。つまり、第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aは所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能、即ち金属を用いなくとも該樹脂にて強度を十分に確保できるので、この大径ギヤ部31a,32aを該樹脂にて形成することで、第1,第2減速ギヤ31,32が軽量化される。又、その他のピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34は所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応不能、即ち金属を用いないと同寸法内で強度を十分に確保できないので、これらを該金属にて形成することで、これらピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34ギヤが小型化される。これらにより、減速機構22を小型軽量化することができ、ひいてはブレーキ装置1の小型軽量化に貢献することができる。
【0064】
(2)第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aは、歯部31c,32cが樹脂となっている。そのため、歯部31c,32cが樹脂よりなるので、大径ギヤ部31aとピニオン30との間、及び大径ギヤ部32aと小径ギヤ部31bとの間で生じる噛み合い音が小さく抑えられるので、減速機構22、ひいてはブレーキ装置1の静粛性を向上することができる。
【0065】
(3)第1,第2減速ギヤ31,32は、入力側の大径ギヤ部31a,32aと出力側の小径ギヤ部31b,32bとが同軸上に一体回転可能に構成され、大径ギヤ部31a,32aが樹脂にて形成されるとともに、小径ギヤ部31b,32bが金属にて形成される。つまり、入力側の大径ギヤ部31a,32aにかかる駆動力の方が出力側の小径ギヤ部31b,32bにかかる駆動力に比べて小さいので、一方のギヤ部31a,31b,32a,32bに応じて両ギヤ部31a,31b,32a,32bを樹脂若しくは金属のいずれかとすれば、ギヤ31,32は大型化若しくは重量が重くなる。そのため、大径ギヤ部31a,32aを樹脂、小径ギヤ部31b,32bを金属にてそれぞれ形成することで、ギヤ31,32を確実に小型軽量化することができる。
【0066】
(4)大径ギヤ部31a,32aの一側面には金属プレート42が配設され、金属プレート42の外周部(嵌合凹部42c)が大径ギヤ部31a,32aの径方向外側の所定部位(嵌合凸部41a)と連結される。小径ギヤ部31b,32bは、大径ギヤ部31a,32a及び金属プレート42の連結孔40,42aに対してそれぞれ連結される。そのため、大径ギヤ部31a,32aが小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重は、小径ギヤ部31b,32bが直接的に連結される部分(連結孔40)と金属プレート42を介して連結される径方向外側の所定部位(嵌合凸部41a)とで分散される。従って、大径ギヤ部31a,32aにおいては、小径ギヤ部31b,32bが直接的に連結される部分(連結孔40)にかかる荷重が低減されるとともに、金属プレート42を介して連結される径方向外側の部位(嵌合凸部41a)にかかる荷重は小さい。その結果、樹脂製である大径ギヤ部31a,32aは金属製と比べて強度が低下するが、小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重が分散かつ低減されるので、大径ギヤ部31a,32aの破損を未然に防止することができ、大径ギヤ部31a,32aの耐久性を向上することができる。
【0067】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、金属プレート42を用いて大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとを連結するようにしたが、この金属プレート42の形状や該プレート42が連結される部分の形状はこれに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。又、図4に示すように、例えば、小径ギヤ部32b(31b)に金属プレート43を一体に形成してもよい。
【0068】
即ち、金属製の小径ギヤ部32b(31b)には金属プレート43が一体に形成される。この金属プレート43の外周部には、4個の嵌合凹部43aが周方向に等間隔に形成されている。又、小径ギヤ部32b(31b)は大径ギヤ部32a(31a)側に突出する円筒状の連結筒部44を有している。大径ギヤ部32a(31a)は、その中心部には前記連結筒部44が嵌挿される連結孔45が形成されている。又、大径ギヤ部32a(31a)における小径ギヤ部32b(31a)側の面には、金属プレート43を装着するための装着凹部46が該プレート43の厚み分の深さで凹設されている。装着凹部46には、大径ギヤ部32a(31a)の外周縁近傍まで設けられている。又、装着凹部46には、径方向内側に突出し前記嵌合凹部43aと嵌合するための4個の嵌合凸部46aが周方向に等間隔に設けられている。そして、大径ギヤ部32a(31a)における小径ギヤ部32b(31a)とは反対側の面には、小径ギヤ部32b(31a)を大径ギヤ部32a(31a)に固定するための固定リング47が前記連結筒部44に固着される。このように第1,第2減速ギヤ31,32を構成することもできる。
【0069】
尚、各ギヤ部31a,31b,32a,32bをはすばギヤとした場合、上記実施形態と同様に、ブレーキピストン6を突出させるべく電動モータ21を回転させた際に、大径ギヤ部31a,32aが金属プレート43側に押圧されるように歯部31c,31d,32c,32dのねじれる方向を設定する。このようにすれば、上記実施形態と同様に、金属プレート43にて大径ギヤ部31a,32aが撓むことが防止される。従って、大径ギヤ部31a,32aが長時間にわたって撓むことによって生じる該ギヤ部31a,32aの変形や破損が未然に防止される。
【0070】
又、大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとの連結部分の強度が十分得られれば、金属プレート42を省略してもよい。
○上記実施形態では、金属プレート42の連結孔42aと小径ギヤ部31b,32bの連結筒部39とを圧入により固定したが、圧入以外に、例えば、かしめ、溶接及び接着等により固定するようにしてもよい。
【0071】
○上記実施形態のブレーキ装置1は、主ブレーキ時には作動液による液圧にて作動させ、駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する構成であったが、液圧による作動を省略し、主ブレーキ時及び駐車ブレーキ時の両場合においても電動モータ21にて作動するような構成であってもよい。
【0072】
○上記実施形態のブレーキ装置1の構成は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、ブレーキ装置1はディスクブレーキ装置であってが、ドラムブレーキ装置であってもよい。又、ブレーキ機構部2や駐車ブレーキアクチュエータ3の構成を適宜変更してもよい。又、駐車ブレーキアクチュエータ3を構成する電動モータ21や減速機構22の構成を適宜変更してもよい。尚、減速機構22の構成を変更した場合、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位を該樹脂にて形成し、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位を金属にて形成すれば、減速機構の小型軽量化を図ることができる。
【0073】
上記各実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ) ブレーキキャリパ内にブレーキピストンを出没可能に配設し、該ピストンの突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、
電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有し、該モータの回転を該減速機構にて減速して前記回転ネジ部材に伝達し該回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0074】
このように構成されるブレーキ装置であっても、前記請求項1と同様の効果を得ることができる。
(ロ) ブレーキキャリパ内に出没可能に配設されるブレーキピストンを作動させるための作動液が供給される液圧室を有し、該液圧室内の作動液圧を高くすることで該ブレーキピストンを突出させ、その突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、
電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有し、該モータの回転を該減速機構にて減速して前記回転ネジ部材に伝達し該回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0075】
このように構成されるブレーキ装置であっても、前記請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0076】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、減速機構の小型軽量化を図り、装置を小型軽量化することができる車両用ブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【図2】アクチュエータの内部を説明するための図。
【図3】第1及び第2減速ギヤの構成を説明するための模式図。
【図4】別例の第1及び第2減速ギヤの構成を説明するための模式図。
【符号の説明】
2…ブレーキ機構部、3…電動アクチュエータとしての駐車ブレーキアクチュエータ、8,9…摩擦材としてのブレーキパッド、10…回転体としてのブレーキディスク、21…電動モータ、22…減速機構、30…ギヤとしてのピニオン、31〜34…ギヤとしての第1〜第4減速ギヤ、31a,32a…大径ギヤ部、31b,32b…小径ギヤ部、31c,32c…歯部、42,43…金属プレート。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両用ブレーキ装置には、車輪内に設けられ制動力を発生させるブレーキ機構部が主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキ時においては電動モータにて作動するように構成されているものが、例えば特許文献1にて開示されている。
【0003】
特許文献1のブレーキ装置は、ブレーキキャリパ内にブレーキピストンが出没可能に配設され、該ピストンの突出に伴って摩擦材をブレーキのロータに圧接させることで制動力を得るように構成されている。ブレーキピストンの反摩擦材側には液圧室が設けられ、該液圧室にはブレーキピストンを作動させる作動液が供給される。そして、主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にてブレーキピストンが作動される。
【0004】
又、液圧室内にはスピンドル及びナットが収容されており、スピンドルは該ブレーキ装置に一体に備えられる電動機により回転される。このスピンドルは外周面にネジが形成され、回転不能に設けられるナットと螺合している。つまり、電動機によるスピンドルの回転がナットの直線運動に変換され、該ナットの直線運動に伴って前記ブレーキピストンが作動するように構成されている。そして、駐車ブレーキ時においては電動機にてブレーキピストンが作動される。
【0005】
尚、駐車ブレーキ時においてはロータに対してブレーキバッドが圧接するため、該パッドには反力(ロータから離間する方向の力)が作用してブレーキピストンが没入しようとするが、スピンドルとナットとの間のセルフロッキング作用により、該ピストンが没入することが防止される。これにより、電動機への電源供給が遮断されてもブレーキピストンの作動位置が維持され、摩擦材の圧接力、即ち制動力が維持されるようになっている。
【0006】
ところで、駐車ブレーキに必要な制動力を得るためには、ロータに対して摩擦材を強く圧接する必要があるため、ブレーキピストンに対して大きな押圧力を付与する必要がある。そのため、スピンドルと駆動源である電動機との間には、高減速・高トルク化可能な減速機構が必要である。
【0007】
そのため、特許文献1の減速機構には、コンパクトでありながら高減速・高トルク化が得られる遊星歯車減速機構やハーモニックドライブ減速機構等が用いられており、特許文献2の減速機構には、複数の平ギヤを用いた平面歯車機構が用いられている。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−510760号公報
【特許文献2】
特開平5−60157号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両用ブレーキ装置には軽量化することが要求されている。そのため、このブレーキ装置に備えられる減速機構も同様に軽量化することが要求されているため、減速機構を構成する各ギヤを樹脂化して該減速機構を軽量化することが考えられている。
【0010】
しかしながら、樹脂製のギヤは、同じ駆動力(トルク)を扱う金属製のギヤと比べて直径、歯幅及び歯厚等を大きくする必要があり、大型化する。そのため、減速機構が大型化し、ひいてはブレーキ装置が大型化してしまう。車両用ブレーキ装置は軽量化だけでなく小型化も要求されているため、該ブレーキ装置に備えられる減速機構は小型軽量化の両立を図る必要があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、減速機構の小型軽量化を図り、装置を小型軽量化することができる車両用ブレーキ装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1に記載の発明は、摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有し、該モータの回転を該減速機構にて減速して前記ブレーキ機構部に伝達し、前記摩擦材が前記回転体に圧接するように該ブレーキ機構部を作動させる電動アクチュエータと、を備えた車両用ブレーキ装置であって、前記減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成されていることをその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置において、前記ギヤは、少なくとも歯部を含んだ所定部位が前記樹脂にて形成されていることをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ装置において、前記ギヤは、入力側の大径ギヤ部と出力側の小径ギヤ部とが同軸上に一体回転可能に構成されており、該大径ギヤ部が前記樹脂にて形成されるとともに、該小径ギヤ部が前記金属にて形成されていることをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用ブレーキ装置において、前記大径ギヤ部の一側面には金属プレートが配設され、該金属プレートの外周部が該大径ギヤ部の径方向外側の所定部位と連結されており、前記小径ギヤ部は、前記大径ギヤ部及び前記金属プレートに対してそれぞれ連結されていることをその要旨とする。
【0016】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ブレーキ機構部を作動させる電動アクチュエータは、電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有している。その減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成される。つまり、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位は金属を用いなくとも該樹脂にて強度を十分に確保できるので、このようなギヤ若しくはギヤの所定部位を該樹脂にて形成することで、ギヤが軽量化される。又、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位、即ち所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応不能なギヤ若しくはギヤの所定部位は金属を用いないと同寸法内で強度を十分に確保できないので、このようなギヤ若しくはギヤの所定部位を該金属にて形成することで、ギヤが小型化される。これらにより、減速機構が小型軽量化され、ひいてはブレーキ装置の小型軽量化に貢献できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、ギヤは、少なくとも歯部を含んだ所定部位が樹脂にて形成される。そのため、樹脂にて形成することで噛み合い音が小さく抑えられるので、減速機構、ひいてはブレーキ装置の静粛性が高くなる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ギヤは、入力側の大径ギヤ部と出力側の小径ギヤ部とが同軸上に一体回転可能に構成され、大径ギヤ部が樹脂にて形成されるとともに、小径ギヤ部が金属にて形成される。つまり、入力側の大径ギヤ部にかかる駆動力の方が出力側の小径ギヤ部にかかる駆動力に比べて小さいので、一方のギヤ部に応じて両ギヤ部を樹脂若しくは金属のいずれかとすれば、ギヤは大型化若しくは重量が重くなる。そのため、大径ギヤ部を樹脂、小径ギヤ部を金属にてそれぞれ形成することで、ギヤが確実に小型軽量化される。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、大径ギヤ部の一側面には金属プレートが配設され、金属プレートの外周部が大径ギヤ部の径方向外側の所定部位と連結される。小径ギヤ部は、大径ギヤ部及び金属プレートに対してそれぞれ連結される。そのため、大径ギヤ部が小径ギヤ部から受ける荷重は、小径ギヤ部が直接的に連結される部分と金属プレートを介して連結される径方向外側の所定部位とで分散される。従って、大径ギヤ部においては、小径ギヤ部が直接的に連結される部分にかかる荷重が低減されるとともに、金属プレートを介して連結される径方向外側の部位にかかる荷重は小さい。その結果、樹脂製である大径ギヤ部は金属製と比べて強度が低下するが、小径ギヤ部から受ける荷重が分散かつ低減されるので、大径ギヤ部の破損が未然に防止され、大径ギヤ部の耐久性が向上される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、本実施形態の車両用ブレーキ装置1を示す。尚、図1は、図2のA−A断面図である。
【0021】
車両用ブレーキ装置1は、図示しない車輪(例えば、各後輪)内にそれぞれ配設されている。ブレーキ装置1は、ブレーキペダル(図示略)の操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキスイッチ(図示略)の操作に基づいた駐車ブレーキ時においては後述の電動モータ21にて作動するように構成されている。
【0022】
ブレーキ装置1は、ブレーキ機構部2と、電動アクチュエータとしての駐車ブレーキアクチュエータ3とを備えている。
ブレーキ機構部2は浮動型のブレーキキャリパ4を備え、該キャリパ4にはピストン収容部5が形成されている。ピストン収容部5には、ブレーキピストン6が回転不能かつ出没可能(軸方向に移動可能)に収容されている。ブレーキピストン6の基端部とピストン収容部5とで囲まれた空間は液圧室7となっており、該液圧室7には作動液が供給される。
【0023】
ブレーキピストン6の先端部には、摩擦材としてのブレーキパッド8が固定されている。このブレーキパッド8と対向する前記ブレーキキャリパ4の所定部位には該パッド8と対をなす摩擦材としてのブレーキパッド9が固定されている。これらブレーキパッド8,9間には、車輪(後輪)と一体回転するように設けられる回転体としてのブレーキディスク10が位置している。
【0024】
そして、ブレーキペダル(図示略)の踏み込み量が増加すると、その増加量に応じて液圧室7内の作動液圧が高くなり、その圧力増加によりブレーキピストン6が押圧されて突出する。すると、ブレーキピストン6に固定されるブレーキパッド8がブレーキディスク10の一側面に圧接するとともに、その圧接に基づいてブレーキキャリパ4が移動して他方のブレーキパッド9が該ディスク10の他側面に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)に制動力が生じるようになっている。
【0025】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなり、その圧力減少によりブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接することで生じる反力等によりブレーキピストン6が没入する。すると、ブレーキディスク10に対するブレーキパッド8,9の圧接力が減少し、制動力が減少する。そして、ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間するようになっている。
【0026】
前記ブレーキキャリパ4内には、運動変換機構11が収容されている。運動変換機構11は、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aの回転運動を往復直線運動に変換してブレーキピストン6に伝達し、該ピストン6を作動させるものである。運動変換機構11は、スクリューシャフト12とナット部材13とを備えている。
【0027】
スクリューシャフト12は、基端部(反ブレーキピストン6側端部)から先端部に向かって順にシャフト部12a、フランジ部12b及びスクリュー部12cを備えている。
【0028】
シャフト部12aは、その外周面がラジアル滑り軸受14を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。シャフト部12aの基端部はブレーキキャリパ4から突出し、その突出する部分には該シャフト12の軸方向に突出する連結凸部12dが形成されている。この連結凸部12dは、2面幅をなしている。即ち、連結凸部12dは、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aと回転方向において係合し、該出力軸部34aの回転をスクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0029】
フランジ部12bは、前記液圧室7内に位置しており、該液圧室7内において反ブレーキピストン6側の面がスラストボール軸受15を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。
【0030】
スクリュー部12cは、外周面にネジが形成されており、そのネジの断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。スクリュー部12cは、ナット部材13と螺合される。即ち、ナット部材13の内周面に形成されるネジにおいても、その断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。尚、このスクリュー部12cとナット部材13とは、セルフロッキング作用が生じる構成となっている。
【0031】
ここで、前記ブレーキピストン6には、スクリュー部12c及びナット部材13を収容すべく基端部から先端部に向かって凹状をなす中空部6aが形成されている。中空部6aは、ナット部材13の先端側端面と軸方向において係合する段差部6bを有している。因みに、中空部6aは、前記液圧室7と連通しており、該液圧室7の一部をなしている。ナット部材13にはキー16が組み付けられており、そのキー16によりナット部材13はブレーキピストン6に対して回転不能に連結されている。又、ナット部材13は、ブレーキピストン6に対して段差部6bに当接するまで軸方向に移動可能となっている。
【0032】
そして、スクリューシャフト12が一方に回転されると(正転駆動されると)、ブレーキピストン6に対して回転不能に連結されているナット部材13は、スクリュー部12cの先端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6の段差部6bを押圧して該ピストン6を突出させる。一方、スクリューシャフト12が他方に回転されると(逆転駆動されると)、ナット部材13はスクリュー部12cに基端部側に向かって移動する。尚、ナット部材13が同方向に移動する際、該ナット部材13とブレーキピストン6とは係合しないので、該ナット部材13は該ピストン6を作動させない。
【0033】
又、上記したように作動液によりブレーキピストン6が突出する場合、ナット部材13とブレーキピストン6とは軸方向に係合しないため、該ピストン6のみが突出するようになっている。尚、ナット部材13の所定部位には軸方向に貫通する貫通孔13aが形成されており、該貫通孔13aは液圧室7内の作動液を中空部6a内に導入するためのものである。つまり、ブレーキピストン6において液圧を受ける面積が増大するように構成されている。
【0034】
このようなブレーキ機構部2には、駐車ブレーキアクチュエータ3が複数の取付ボルト(図示略)により一体に組み付けられている。駐車ブレーキアクチュエータ3は、直流モータ等の電動モータ21と、該モータ21の回転を減速する減速機構22とを備えている。これら電動モータ21及び減速機構22は、収容ケース23内に設けたモータ収容部23a及び減速機構収容部23bにそれぞれ収容され、蓋部材24により閉塞される。蓋部材24は、収容ケース23に対して複数の取付ボルト25にて固定される。
【0035】
電動モータ21は、モータ収容部23aに嵌挿されて固定されている。電動モータ21は、その軸線L2が前記ブレーキピストン6(スクリューシャフト12)の軸線L1と平行をなし、かつ回転軸21aが該ピストン6とは反対側に突出するように配置されている。回転軸21aには、後述する第1〜第4減速ギヤ31〜34に応じて、はすばギヤ又は平ギヤよりなる金属製のピニオン30が固定されている。
【0036】
ここで、ピニオン30は、減速機構22の最も入力段に位置するギヤであるが小径のギヤであるため、該ピニオン30の歯部30bにかかる駆動力(トルク)は比較的大きい。そのため、ピニオン30を形状的観点等から設定される所望の寸法(直径、歯幅及び歯厚等)に従って本実施形態で用いる樹脂(後述する第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aを形成するための樹脂)にて形成しても十分な強度が得られない。つまり、この樹脂を用いてピニオン30を形成する場合には、該ピニオン30においては寸法(直径、歯幅及び歯厚等)を大きくして対応する必要がある。従って、このピニオン30は金属にて形成され、該ピニオン30の大型化が防止されている。尚、前記設定寸法においてピニオン30が扱う駆動力に余裕があれば、該ピニオン30の歯部30bの歯数を少なくすることができ、更なる小型化を図ることが可能である。
【0037】
そして、電動モータ21は、駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチ(図示略)がオン操作されると、ブレーキ機構部2にて所望の制動力が生じるまで(ブレーキディスク10にブレーキパッド8,9が所望の圧接力で圧接するまで)電源が供給されて正転駆動され、その後、電源供給が遮断される。一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、ブレーキ機構部2にて生じていた制動力がゼロになるまで(ブレーキディスク10からブレーキパッド8,9が離間するまで)電源が供給されて逆転駆動され、その後、電源供給が遮断される。
【0038】
減速機構22は、減速機構収容部23b内に収容され、前記運動変換機構11の反ブレーキピストン6側に配置されている。減速機構22は、はすばギヤ又は平ギヤよりなる第1〜第4減速ギヤ31〜34を備え、平面歯車機構をなしている。尚、前記ピニオン30及び各ギヤ31〜34の噛み合い音の観点から言えば、はすばギヤを用いた方が噛み合い音が小さく抑えられるため、有利である。
【0039】
第1減速ギヤ31は、樹脂製の大径ギヤ部31aと金属製の小径ギヤ部31bとが同軸上に一体回転可能に連結されており、電動モータ21の回転軸21a(スクリューシャフト12)と平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸35により回転可能に支持されている。この第1減速ギヤ31の大径ギヤ部31aは、ピニオン30と噛合されている。
【0040】
第2減速ギヤ32は、樹脂製の大径ギヤ部32aと金属製の小径ギヤ部32bとが同軸上に一体回転可能に連結されており、後述する第4減速ギヤ34に固定される支軸37にて回転可能に支持されている。この第2減速ギヤ32の大径ギヤ部32aは、第1減速ギヤ31の小径ギヤ部31bと噛合されている。
【0041】
ここで、第2減速ギヤ32及び前記第1減速ギヤ31は、具体的には図3に示すように同様に構成されている。尚、第2減速ギヤ32を代表として説明する。小径ギヤ部32b(31b)は、金属よりなり、支軸37(35)を挿通するための挿通孔38を有している。この小径ギヤ部32b(31b)には、軸方向一方に突出する連結筒部39が形成されている。連結筒部39の外周面には、それぞれ同形状をなす4個の嵌合凸部39aが周方向に等間隔に形成されている。この嵌合凸部39aは、小径ギヤ部32b(31b)の歯部32d(31d)より内側に位置している。
【0042】
これに対し、大径ギヤ部32a(31a)は、樹脂よりなり、その中心部には前記連結筒部39が嵌挿される連結孔40が形成され、この連結孔40には前記嵌合凸部39aと嵌合するための4個の嵌合凹部40aが周方向に等間隔に形成されている。又、大径ギヤ部32a(31a)における小径ギヤ部32b(31a)とは反対側の面には、金属プレート42を装着するための装着凹部41が該プレート42の厚み分の深さで凹設されている。装着凹部41には、大径ギヤ部32a(31a)の外周縁近傍まで設けられている。又、装着凹部41には、径方向内側に突出する4個の嵌合凸部41aが周方向に等間隔に設けられている。
【0043】
金属プレート42は、略円板状をなしている。金属プレート42の中心部には前記連結筒部39が嵌挿される連結孔42aが形成され、この連結孔42aには前記嵌合凸部39aと嵌合するための4個の嵌合凹部42bが周方向に等間隔に形成されている。又、金属プレート42の外周部には、前記嵌合凸部41aと嵌合するための4個の嵌合凹部42cが周方向に等間隔に形成されている。
【0044】
そして、小径ギヤ部32b(31b)の連結筒部39が大径ギヤ部32a(31a)の連結孔40に嵌挿され、該筒部39の嵌合凸部39aと該連結孔40の嵌合凹部40aとが嵌合される。又、大径ギヤ部32a(31a)の装着凹部41に金属プレート42が装着され、該凹部41の嵌合凸部41aと該プレート42の嵌合凹部42cとが嵌合されるとともに、該プレート42の連結孔42aの嵌合凹部42bと連結筒部39の嵌合凸部39aとが嵌合される。尚、金属プレート42の連結孔42aと小径ギヤ部32b(31b)の連結筒部39とは、圧入により固定されている。こうして大径ギヤ部32a(31a)と小径ギヤ部32b(31b)とが一体回転可能に連結され、第2減速ギヤ32及び前記第1減速ギヤ31が構成されている。
【0045】
このような第1,第2減速ギヤ31,32は、減速機構22の入力寄り(電動モータ21寄り)に位置するギヤであるので、扱う駆動力が比較的小さい。更に、これら各減速ギヤ31,32においても、入力側の大径ギヤ部31a,32aの歯部31c,32cにかかる駆動力の方が出力側の小径ギヤ部31b,32bの歯部31d,32dにかかる駆動力に比べて小さい。
【0046】
そのため、大径ギヤ部31a,32aを所望の寸法(直径、歯幅及び歯厚等)に従って本実施形態で用いる樹脂にて形成しても十分な強度が得られるため、該ギヤ部31a,32aはこの樹脂を用いて形成されている。これに対し、小径ギヤ部31b,32bを所望の寸法に従って本実施形態で用いる樹脂(大径ギヤ部31a,32aで用いた樹脂)にて形成した場合、十分な強度が得られない。つまり、この樹脂を用いて小径ギヤ部31b,32bを形成する場合、該ギヤ部31b,32bにおいては寸法(直径、歯幅及び歯厚等)を大きくして対応する必要がある。従って、この小径ギヤ部31b,32bは、金属にて形成されている。こうして第1,第2減速ギヤ31,32は大径ギヤ部31a,32aを樹脂製、小径ギヤ部31b,32bを金属製とすることで、該ギヤ31,32の大型化を防止しながら軽量化が図られている。
【0047】
又、第1,第2減速ギヤ31,32は、上記したように減速機構22の入力寄り(電動モータ21寄り)に位置するギヤであるので、高速で回転する。そのため、噛み合い音が多数発生するが、大径ギヤ部31a,32aを樹脂製としたことで、該大径ギヤ部31aとピニオン30との間、及び該大径ギヤ部32aと小径ギヤ部31bとの間で生じる噛み合い音が小さく抑えられる。従って、大径ギヤ部31a,32aを樹脂製とすることで、減速機構22の静粛性も同時に向上することができる。尚、大径ギヤ部31a,32aが樹脂製となることで、ギヤ部31a,32aを金属製とした場合に比べて僅かながらも減速機構22が熱を吸収し難くなる。
【0048】
更に、大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとの連結において、それぞれ金属プレート42が用いられている。つまり、大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとは、その連結孔40と連結筒部39とが連結するだけでなく、その連結部分と協働して該連結孔40より径方向外側に位置する部位(嵌合凸部41a)と該連結筒部39とが金属プレート42を介して連結する。そのため、大径ギヤ部31a,32aが小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重は、その連結孔40と該連結孔40より径方向外側に位置する部位(嵌合凸部41a)とで分散される。従って、大径ギヤ部31a,32aにおいては、連結孔40にかかる荷重が低減されるとともに、嵌合凸部41aにかかる荷重は該連結孔40より径方向外側に位置するため小さい。その結果、樹脂製である大径ギヤ部31a,32aは金属製と比べて強度が低下するが、小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重が分散かつ低減されるので、特に大きな荷重がかかり易い連結孔40部分の破損が未然に防止され、大径ギヤ部31a,32aの耐久性が向上されている。
【0049】
因みに、第1,第2減速ギヤ31,32(大径ギヤ部31a,32a及び小径ギヤ部31b,32b)をはすばギヤとした場合、該ギヤ31,32に駆動力がかかると軸線方向にその力の一部が作用する。そのため、ブレーキピストン6を突出させるべく電動モータ21を回転させた際に、大径ギヤ部31a,32aが金属プレート42側に押圧されるように歯部31c,31d,32c,32dのねじれる方向が設定されている。そのため、ブレーキピストン6の突出時、即ち駐車ブレーキを作動させる場合には、長時間にわたり第1,第2減速ギヤ31,32に駆動力がかかったままとなる。従って、このような場合に樹脂製の大径ギヤ部31a,32aが金属プレート42側に押圧されるように構成すれば、該金属プレート42にて該ギヤ部31a,32aが撓むことが防止される。従って、大径ギヤ部31a,32aが長時間にわたって撓むことによって生じる該ギヤ部31a,32aの変形や破損が未然に防止される。又、このようにはすばギヤとした場合、該ギヤ31,32に駆動力がかかると軸線方向にその力の一部が作用するため、上記したように金属プレート42と小径ギヤ部31b,32bとを固定することで、樹脂製の大径ギヤ部31a,32aに無用な力が作用することが防止される。
【0050】
第3減速ギヤ33は、ともに金属製の大径ギヤ部33aと小径ギヤ部33bとが同軸上に一体回転可能に連結されており、前記回転軸21aと平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸36により回転可能に支持されている。この第3減速ギヤ33の大径ギヤ部33aは、第2減速ギヤ32の小径ギヤ部32bと噛合されている。
【0051】
尚、第3減速ギヤ33も前記第1,第2減速ギヤ31,32と同様に、小径ギヤ部33bより扱う駆動力が小さい大径ギヤ部33aを樹脂製とすることが考えられる。しかしながら、この第3減速ギヤ33は、前記第1減速ギヤ31及び第2減速ギヤ32よりも出力寄り(スクリューシャフト12寄り)に位置するギヤであるので、扱う駆動力が比較的大きくなる。つまり、小径ギヤ部33bの歯部33dにかかる駆動力も当然ながら大きくなるが、大径ギヤ部33aの歯部33cにかかる駆動力も比較的大きくなる。
【0052】
そのため、大径ギヤ部33aを所望の寸法(直径、歯幅及び歯厚等)に従って本実施形態で用いる樹脂にて形成した場合、十分な強度が得られない。つまり、この樹脂を用いて大径ギヤ部33aを形成する場合、該ギヤ部33aにおいては寸法(直径、歯幅及び歯厚等)を大きくして対応する必要がある。従って、第3減速ギヤ33はこの大径ギヤ部33aも金属にて形成することで、該ギヤ33の大型化が防止されている。
【0053】
第4減速ギヤ34は、金属製である。即ち、第4減速ギヤ34は、減速機構22の最も出力段に位置するギヤであるため、該ギヤ34の歯部34cにかかる駆動力は大きい。従って、この第4減速ギヤ34は、前記第3減速ギヤ33と同様、強度上の理由から金属にて形成され、該ギヤ34の大型化が防止されている。
【0054】
この第4減速ギヤ34は、中心部に出力軸部34aが形成されている。出力軸部34aには、軸方向一方に突出するように支軸37が固定されている。この支軸37は、前記第2減速ギヤ32を支持するとともに、その先端が蓋部材24に対して回転可能に支持されている。又、この支軸37は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。つまり、第4減速ギヤ34及び前記第2減速ギヤ32は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。出力軸部34aの軸方向他端部は、収容ケース23に対して回転可能に支持されている。出力軸部34aの軸方向他端部には、連結凹部34bが形成されている。この連結凹部34bは断面2面幅をなし、該連結凹部34bには前記スクリューシャフト12の連結凸部12dが嵌挿される。つまり、この連結凹部34bは、該スクリューシャフト12の連結凸部12dと回転方向において係合して、出力軸部34aの回転を該スクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0055】
前記蓋部材24には、前記ピニオン30の先端面に対向する位置に貫通孔24aが形成されている。これに対し、前記ピニオン30の先端面には、工具(図示略)と連結するための工具連結孔30aが形成されている。即ち、貫通孔24aから工具を挿入して工具連結孔30aに嵌挿して該工具とピニオン30とを連結し、該工具によりピニオン30が回転できるように構成されている。そのため、電動モータ21によりブレーキピストン6を突出させて駐車ブレーキを作動させた状態で該モータ21が作動不能に陥った場合に、工具によりピニオン30を回転させて駐車ブレーキの作動を解除すべくブレーキピストン6を没入させることが可能となっている。そして、貫通孔24aはネジ孔となっており、通常は該貫通孔24aにボルト26が螺入されて、該ボルト26にて該貫通孔24aが閉塞されている。
【0056】
このように構成されたブレーキ装置1は、ブレーキペダルの操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時には液圧で作動し、駐車ブレーキスイッチの操作に基づいた駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する。
【0057】
[主ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
ブレーキペダルの踏み込み量が増加すると、その増加量に応じてブレーキ機構部2の液圧室7内の作動液圧が高くなる。すると、その圧力を受けてブレーキピストン6が押圧されて突出し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)にブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が生じる。
【0058】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなる。すると、ブレーキパッド8,9が受ける反力等によりブレーキピストン6が没入し、制動力が減少する。ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間する。即ち、制動力がゼロとなる。
【0059】
[駐車ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチがオン操作されると、電動モータ21に正転のための電源が供給され該モータ21は正転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を正転駆動させる。スクリューシャフト12が正転駆動されると、ナット部材13はブレーキピストン6を突出させるように押圧し、その押圧に基づいてブレーキピストン6はブレーキパッド8,9をブレーキディスク10に圧接させて制動力を発生させる。そして、車両を駐車するのに必要な所望の制動力が生じるまで電動モータ21に電源が供給された後、該モータ21への電源供給が遮断される。
【0060】
このとき、ブレーキピストン6はブレーキディスク10に圧接するブレーキパッド8,9から反力を受けて没入しようとするが、スクリューシャフト12(スクリュー部12c)とナット部材13との間でセルフロッキング作用が生じる構成となっているため、該ピストン6が没入することが防止されている。これにより、電動モータ21への電源供給が遮断されてもブレーキピストン6の突出位置が維持され、ブレーキパッド8,9の圧接力、即ち制動力が維持される(駐車ブレーキ作動)。
【0061】
一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、電動モータ21に逆転のための電源が供給され該モータ21は逆転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を逆転駆動させる。スクリューシャフト12が逆転駆動されると、ナット部材13はスクリュー部12cの基端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなる。ブレーキピストン6がナット部材13から押圧力を受けなくなると、ブレーキパッド8,9から受ける反力等により該ピストン6が没入し、制動力が減少する。そして、電動モータ21はブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に対して所定距離だけ離間するようにナット部材13がスクリュー部12cの所定位置に配置されるまで逆転駆動され、その後、該モータ21への電源供給が停止される。これに伴ってブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10から所定距離だけ離間し、制動力がゼロとなる(駐車ブレーキの作動解除)。
【0062】
尚、上記したように、駐車ブレーキが作動した状態で何らかの原因で電動モータ21が作動不能に陥った場合、このままの状態では駐車ブレーキが作動したまま維持されてしまい、次に車両を発進若しくは移動させる際に支障を来す場合がある。そこで、このような場合には、蓋部材24の貫通孔24aに螺着されているボルト26を抜き取り、その貫通孔24aから工具を挿入してピニオン30の先端面に設けられる工具連結孔30aに嵌挿する。そして、工具を操作してスクリューシャフト12が逆転するようにピニオン30を回転させ、ナット部材13をスクリュー部12cの基端部側に移動させる。すると、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなり、ブレーキパッド8,9から受ける反力等によりブレーキピストン6が没入する。このようにして、外部から工具によりブレーキパッド8,9をブレーキディスク10から離間させ、駐車ブレーキの作動を解除することが可能となっている。
【0063】
次に、本実施形態のブレーキ装置1の特徴的な作用効果を述べる。
(1)ブレーキ機構部2を作動させる駐車ブレーキアクチュエータ3は、電動モータ21及び複数のギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)を用いて構成される減速機構22を有している。その減速機構22を構成する各ギヤ(ピニオン30,第1〜第4減速ギヤ31〜34)において、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能な第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aが該樹脂にて形成されるとともに、その他のピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34が金属にて形成される。つまり、第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aは所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能、即ち金属を用いなくとも該樹脂にて強度を十分に確保できるので、この大径ギヤ部31a,32aを該樹脂にて形成することで、第1,第2減速ギヤ31,32が軽量化される。又、その他のピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34は所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応不能、即ち金属を用いないと同寸法内で強度を十分に確保できないので、これらを該金属にて形成することで、これらピニオン30、第1,第2減速ギヤ31,32の小径ギヤ部31b,32b、第3,第4減速ギヤ33,34ギヤが小型化される。これらにより、減速機構22を小型軽量化することができ、ひいてはブレーキ装置1の小型軽量化に貢献することができる。
【0064】
(2)第1,第2減速ギヤ31,32の大径ギヤ部31a,32aは、歯部31c,32cが樹脂となっている。そのため、歯部31c,32cが樹脂よりなるので、大径ギヤ部31aとピニオン30との間、及び大径ギヤ部32aと小径ギヤ部31bとの間で生じる噛み合い音が小さく抑えられるので、減速機構22、ひいてはブレーキ装置1の静粛性を向上することができる。
【0065】
(3)第1,第2減速ギヤ31,32は、入力側の大径ギヤ部31a,32aと出力側の小径ギヤ部31b,32bとが同軸上に一体回転可能に構成され、大径ギヤ部31a,32aが樹脂にて形成されるとともに、小径ギヤ部31b,32bが金属にて形成される。つまり、入力側の大径ギヤ部31a,32aにかかる駆動力の方が出力側の小径ギヤ部31b,32bにかかる駆動力に比べて小さいので、一方のギヤ部31a,31b,32a,32bに応じて両ギヤ部31a,31b,32a,32bを樹脂若しくは金属のいずれかとすれば、ギヤ31,32は大型化若しくは重量が重くなる。そのため、大径ギヤ部31a,32aを樹脂、小径ギヤ部31b,32bを金属にてそれぞれ形成することで、ギヤ31,32を確実に小型軽量化することができる。
【0066】
(4)大径ギヤ部31a,32aの一側面には金属プレート42が配設され、金属プレート42の外周部(嵌合凹部42c)が大径ギヤ部31a,32aの径方向外側の所定部位(嵌合凸部41a)と連結される。小径ギヤ部31b,32bは、大径ギヤ部31a,32a及び金属プレート42の連結孔40,42aに対してそれぞれ連結される。そのため、大径ギヤ部31a,32aが小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重は、小径ギヤ部31b,32bが直接的に連結される部分(連結孔40)と金属プレート42を介して連結される径方向外側の所定部位(嵌合凸部41a)とで分散される。従って、大径ギヤ部31a,32aにおいては、小径ギヤ部31b,32bが直接的に連結される部分(連結孔40)にかかる荷重が低減されるとともに、金属プレート42を介して連結される径方向外側の部位(嵌合凸部41a)にかかる荷重は小さい。その結果、樹脂製である大径ギヤ部31a,32aは金属製と比べて強度が低下するが、小径ギヤ部31b,32bから受ける荷重が分散かつ低減されるので、大径ギヤ部31a,32aの破損を未然に防止することができ、大径ギヤ部31a,32aの耐久性を向上することができる。
【0067】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、金属プレート42を用いて大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとを連結するようにしたが、この金属プレート42の形状や該プレート42が連結される部分の形状はこれに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。又、図4に示すように、例えば、小径ギヤ部32b(31b)に金属プレート43を一体に形成してもよい。
【0068】
即ち、金属製の小径ギヤ部32b(31b)には金属プレート43が一体に形成される。この金属プレート43の外周部には、4個の嵌合凹部43aが周方向に等間隔に形成されている。又、小径ギヤ部32b(31b)は大径ギヤ部32a(31a)側に突出する円筒状の連結筒部44を有している。大径ギヤ部32a(31a)は、その中心部には前記連結筒部44が嵌挿される連結孔45が形成されている。又、大径ギヤ部32a(31a)における小径ギヤ部32b(31a)側の面には、金属プレート43を装着するための装着凹部46が該プレート43の厚み分の深さで凹設されている。装着凹部46には、大径ギヤ部32a(31a)の外周縁近傍まで設けられている。又、装着凹部46には、径方向内側に突出し前記嵌合凹部43aと嵌合するための4個の嵌合凸部46aが周方向に等間隔に設けられている。そして、大径ギヤ部32a(31a)における小径ギヤ部32b(31a)とは反対側の面には、小径ギヤ部32b(31a)を大径ギヤ部32a(31a)に固定するための固定リング47が前記連結筒部44に固着される。このように第1,第2減速ギヤ31,32を構成することもできる。
【0069】
尚、各ギヤ部31a,31b,32a,32bをはすばギヤとした場合、上記実施形態と同様に、ブレーキピストン6を突出させるべく電動モータ21を回転させた際に、大径ギヤ部31a,32aが金属プレート43側に押圧されるように歯部31c,31d,32c,32dのねじれる方向を設定する。このようにすれば、上記実施形態と同様に、金属プレート43にて大径ギヤ部31a,32aが撓むことが防止される。従って、大径ギヤ部31a,32aが長時間にわたって撓むことによって生じる該ギヤ部31a,32aの変形や破損が未然に防止される。
【0070】
又、大径ギヤ部31a,32aと小径ギヤ部31b,32bとの連結部分の強度が十分得られれば、金属プレート42を省略してもよい。
○上記実施形態では、金属プレート42の連結孔42aと小径ギヤ部31b,32bの連結筒部39とを圧入により固定したが、圧入以外に、例えば、かしめ、溶接及び接着等により固定するようにしてもよい。
【0071】
○上記実施形態のブレーキ装置1は、主ブレーキ時には作動液による液圧にて作動させ、駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する構成であったが、液圧による作動を省略し、主ブレーキ時及び駐車ブレーキ時の両場合においても電動モータ21にて作動するような構成であってもよい。
【0072】
○上記実施形態のブレーキ装置1の構成は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、ブレーキ装置1はディスクブレーキ装置であってが、ドラムブレーキ装置であってもよい。又、ブレーキ機構部2や駐車ブレーキアクチュエータ3の構成を適宜変更してもよい。又、駐車ブレーキアクチュエータ3を構成する電動モータ21や減速機構22の構成を適宜変更してもよい。尚、減速機構22の構成を変更した場合、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位を該樹脂にて形成し、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位を金属にて形成すれば、減速機構の小型軽量化を図ることができる。
【0073】
上記各実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ) ブレーキキャリパ内にブレーキピストンを出没可能に配設し、該ピストンの突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、
電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有し、該モータの回転を該減速機構にて減速して前記回転ネジ部材に伝達し該回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0074】
このように構成されるブレーキ装置であっても、前記請求項1と同様の効果を得ることができる。
(ロ) ブレーキキャリパ内に出没可能に配設されるブレーキピストンを作動させるための作動液が供給される液圧室を有し、該液圧室内の作動液圧を高くすることで該ブレーキピストンを突出させ、その突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、
電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有し、該モータの回転を該減速機構にて減速して前記回転ネジ部材に伝達し該回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0075】
このように構成されるブレーキ装置であっても、前記請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0076】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、減速機構の小型軽量化を図り、装置を小型軽量化することができる車両用ブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【図2】アクチュエータの内部を説明するための図。
【図3】第1及び第2減速ギヤの構成を説明するための模式図。
【図4】別例の第1及び第2減速ギヤの構成を説明するための模式図。
【符号の説明】
2…ブレーキ機構部、3…電動アクチュエータとしての駐車ブレーキアクチュエータ、8,9…摩擦材としてのブレーキパッド、10…回転体としてのブレーキディスク、21…電動モータ、22…減速機構、30…ギヤとしてのピニオン、31〜34…ギヤとしての第1〜第4減速ギヤ、31a,32a…大径ギヤ部、31b,32b…小径ギヤ部、31c,32c…歯部、42,43…金属プレート。
Claims (4)
- 摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
電動モータ及び複数のギヤを用いて構成される減速機構を有し、該モータの回転を該減速機構にて減速して前記ブレーキ機構部に伝達し、前記摩擦材が前記回転体に圧接するように該ブレーキ機構部を作動させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記減速機構を構成する各ギヤにおいて、所望の寸法に対し用いる樹脂にて対応可能なギヤ若しくはギヤの所定部位が該樹脂にて形成されるとともに、その他のギヤ若しくはギヤのその他の部位が金属にて形成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 請求項1に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記ギヤは、少なくとも歯部を含んだ所定部位が前記樹脂にて形成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記ギヤは、入力側の大径ギヤ部と出力側の小径ギヤ部とが同軸上に一体回転可能に構成されており、該大径ギヤ部が前記樹脂にて形成されるとともに、該小径ギヤ部が前記金属にて形成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 請求項3に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記大径ギヤ部の一側面には金属プレートが配設され、該金属プレートの外周部が該大径ギヤ部の径方向外側の所定部位と連結されており、
前記小径ギヤ部は、前記大径ギヤ部及び前記金属プレートに対してそれぞれ連結されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
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