JP2004300269A - 再剥離型水性粘着剤組成物及び粘着製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カルボキシル基を含有し、酸価が3〜30である平均粒子径が300nm以下の重合体粒子[X]と、分子中に少なくとも2個のオキサゾリン基を有する化合物[Y]と、アセチレンジオール系界面活性剤[Z]とを含有し、重合体粒子[X]が水中に分散している再剥離型水性粘着剤組成物であって、該再剥離型水性粘着剤組成物から形成される皮膜のガラス転移温度が−25℃以下、前記皮膜のゲル分率が80重量%以上、且つ、前記皮膜の水抽出物の量が2重量%以下であることを特徴とする再剥離型水性粘着剤組成物、これと基材との層とを有してなる粘着製品。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた粘着物性と再剥離性を有し、且つ耐水白化性に優れた再剥離型水性粘着剤組成物におよびこれと基材を有してなる粘着製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
粘着ラベルは様々な分野で使用されているが、中には被着体に貼り付けてから一定時間経過後、被着体から剥がされる用途がある。このとき、粘着剤の一部が被着体に残ることがしばしば起こる。また、基材が紙の場合、紙の強度が弱いため紙破れを起こして被着体から剥がすことが困難になる場合が多い。このようなこと無く被着体から容易に剥離できる再剥離型粘着剤が提案されている。
【0003】
また、近年、環境問題の点で溶剤型樹脂から水性樹脂への移行が進んでいるが、再剥離型粘着剤分野においても、溶剤型粘着剤を水性粘着剤に置換することが望まれている。そして、この水性粘着剤の代表的なものとして各種エチレン性不飽和単量体を重合して得られるエマルジョン型水性粘着剤があるが、水性粘着剤は、水に接触すると白化し易い、すなわち耐水白化性が低いため、溶剤型粘着剤を代替する上で大きな問題となっている。特に、従来から透明フィルムラベル用途に使用されている溶剤型粘着剤をエマルジョン型水性粘着剤に置換する場合は、耐水白化性の改良が最大の課題である。
【0004】
再剥離型粘着剤として、再剥離性の付与のため、カルボキシル基を含有するアクリル共重合体の水分散液に、該アクリル共重合体中のカルボキシル基に対し0.1〜5当量となるオキサゾリン基含有水性架橋剤を添加することで、再剥離性の向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)。この手法でも、溶剤系を代替え可能なエマルジョン型水性粘着剤の最大の課題である耐水白化性の改良は不十分である。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114887号公報(第2−4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、粘着性に優れ、且つ被着体への貼り付け後長時間放置された後でも被着体表面から容易に剥離でき、更には耐水白化性が要求される分野で使用される場合においても、優れた耐水白化性を示す再剥離型水性粘着剤組成物及び粘着製品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
課題を解決すべく、鋭意検討の結果、以下の知見を得た。
(1)水性粘着剤組成物から形成される皮膜の水抽出物量が2重量%以下であり、膜のゲル分率が80重量%以上であると耐水白化性が向上する。
(2)前記水性粘着剤組成物が、水性媒体中に分散するカルボキシル基を含有し、酸価が3〜30の重合体からなる平均粒子径が300nm以下の重合体粒子[X]と、分子中に少なくとも2個のオキサゾリン基を有する水性架橋剤からなる化合物[Y]と、アセチレンジオール系界面活性剤[Z]とからなる水性粘着剤組成物であると、粘着剤被膜の再剥離性と接着力とのバランスが向上する。
(3)前記皮膜のガラス転移温度が−25℃以下であると、粘着剤の接着力と保持力のバランスが良好である。
本発明は、このような知見に基づくものである。
【0008】
即ち、本発明は、カルボキシル基を含有し、酸価が3〜30である平均粒子径が300nm以下の重合体粒子[X]と、分子中に少なくとも2個のオキサゾリン基を有する化合物[Y]と、アセチレンジオール系界面活性剤[Z]とを含有する再剥離型水性粘着剤組成物であって、該再剥離型水性粘着剤組成物から形成される皮膜のガラス転移温度が−25℃以下、前記皮膜のゲル分率が80重量%以上、且つ、前記皮膜の水抽出物の量が2重量%以下であることを特徴とする再剥離型水性粘着剤組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、基材と上記の水性粘着剤組成物の層を有してなる粘着製品をも提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明をさらに詳細に説明する。
前記重合体粒子[X]中のカルボキシル基の含有量は、酸価として3〜30の範囲となる量であることが必要である。酸価がかかる範囲にあれば、重合体粒子[X]の水性媒体中での分散安定性および粘着剤被膜の再剥離性と接着力をバランス良く付与でき、且つ耐水白化性も向上する。なお、酸価が30を超える場合、粘着製品を基材に貼付後、経時で接着力が向上するが、再剥離性が低下し、また、酸価が3未満の場合は、密着性の低下が生じやすく、共に好ましくない。なお、重合体粒子[X]は、カルボキシル基の一部又は全部を中和して、分散安定性を向上させたものも含まれる。
【0011】
また本発明に使用する重合体粒子[X]の平均粒子径は、良好な耐水白化性を示す水性粘着剤を得るために、300nm以下であることが必要である。平均粒子径が300nmを超えると、耐水白化性が低下して好ましくない。これらの中でも、10〜300nmが特に好ましい。ここで粒子の平均粒子径とは、エマルジョン粒子の体積基準での50%メジアン径をいい、数値は後述の動的光散乱法により測定して得られる値に基づくものである。
【0012】
次に、本発明中のオキサゾリン基含有化合物剤[Y]は水系架橋剤として働き、分子内にオキサゾリン基を有するものであれば、特に制限なく使用できる。オキサゾリン基は、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基、4−オキサゾリン基のいずれでも良いが、通常は、2−オキサゾリン基を有するものが好ましく用いられている。2−オキサゾリン基を有するものとしては、2位の炭素位置に不飽和炭素―炭素結合を持った置換基を有する付加重合性の2−オキサゾリンと他の不飽和単量体との共重合物が挙げられ、具体的には、特公平7−68499号公報に記載された2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。市販品としては、日本触媒(株)の商品名「エポクロス WS−500」等を挙げることが出来る。
【0013】
オキサゾリン基含有化合物剤[Y]の再剥離型水性粘着剤組成物中の含有比率は、前記重合体(X)中のカルボキシル基1当量当たり、オキサゾリン基含有化合物剤[Y]中のオキサゾリン基が、0.1〜5当量となるように調整することが好ましい。この中でも0.1〜3当量であることが好ましい。
【0014】
本発明の再剥離型水性粘着剤組成物に用いるアセチレンジオール系界面活性剤[Z]はレベリング剤として働き、例えば、サーフィノール104PA、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール504、サーフィノール504、サーフィノールPSA204、サーフィノールPSA216、サーフィノールPSA336、ダイノール604(エアープロダクツ・ジャパン(株)製)が挙げられ、これらの1種以上の混合物を使用することができる。
【0015】
前記アセチレンジオール系界面活性剤[Z]の再剥離型水性粘着剤組成物中の含有比率は重合体(X)の固形分100重量部当たり、0.1〜5重量部(固形分)が好ましく、0.1〜3重量部が好ましい。なお、アセチレンジオール系界面活性剤[Z]は、前記重合体[X]の重合時に添加しても良い。
【0016】
本発明の再剥離型水性粘着剤組成物を調製するには、前記重合体[X]とオキサゾリン基含有化合物剤[Y]とアセチレンジオール系界面活性剤[Z]とを混合しても良いし、前述のようにアセチレンジオール系界面活性剤[Z]を予め重合体[X]の製造時に添加しても良い。
【0017】
本発明の再剥離性水性粘着剤組成物から形成される皮膜は、ガラス転移温度(以下、Tgと記す。)が−25℃以下であることが必要である。更に、−25〜−60℃であることが、とくに好ましい。前記Tgがこの範囲であると、粘着剤としての物性、即ち接着力や保持力等の物性のバランスに優れる。Tgが−25℃を超えると、接着力や保持力が低下して、好ましくない。ここで、本発明におけるTgは後述する測定方法で得られる。
【0018】
また、本発明の再剥離型水性粘着剤組成物から形成される被膜のゲル分率は、80重量%以上であることが、粘着剤の接着力と再剥離性のバランスから必要である。ゲル分率が80重量%未満の場合、再剥離性が低下し、好ましくない。これらの中でも、通常80〜98重量%で制御するが好ましい。前記ゲル分率とは、水性粘着剤組成物の被膜のトルエンに対する不溶解分の比率を意味する。ゲル分率は、後述する測定方法及び式により求められる。
【0019】
また、本発明の再剥離型水性粘着剤組成物から形成される水抽出物量が2重量%以下であることが必要である。水抽出物量は少ないほど好ましく、通常0.1〜1.7重量%に制御することが好ましい。水抽出物量が2重量%を超えると、再剥離型水性粘着剤皮膜の耐水白化性が低下して好ましくない。
【0020】
次いで、本発明の再剥離型水性粘着剤組成物中の重合体粒子[X]は、例えば、後述する単量体成分を乳化共重合して得られる。具体的には、重合体粒子[X]が、全単量体類当たり、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a)0.5〜4重量%と炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)64〜99.4重量%とを必須成分とした重合性単量体混合物を乳化共重合して得られる共重合体が挙げられる。それ以外の重合性単量体混合物としては、後述の(a)及び(b)以外の不飽和単量体(c)を0.1〜44重量%の範囲で併用することができる。
【0021】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)としては、分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するものであれば特に限定されず使用することができる。かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレート、及びこれらの塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、特に、単量体成分の重合時の安定性及び耐水白化性に優れる点で、メタクリル酸を用いることが好ましい。かかる、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体の重合性単量体混合物に占める割合は0.5〜4重量%の範囲となる量であることが好ましい。この範囲にある時、接着力と再剥離性をバランス良く付与できる。
【0022】
次に、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらのうち、炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、重合性が良好であり好ましい。かかる、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの重合性単量体混合物に占める割合は45〜99.4重量%の範囲となる量であることが好ましい。この範囲にある時、前述した粘着剤皮膜のTgを所望の範囲に調整でき、粘着物性をバランス良く付与できるため好ましい。
【0023】
また、前記(a)及び(b)以外の不飽和単量体(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、特に、単量体成分の重合時の安定性に優れる点で、(メタ)アクリル酸エステル類を用いることが好ましい。
【0024】
さらに前記(a)及び(b)以外の不飽和単量体(c)として、水性粘着剤のゲル分率を所望の範囲まで向上させることを目的として、カルボニル基やカルボキシル基以外の架橋性反応基を含有するエチレン性不飽和単量体(c1)を使用することもでき、具体的には、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基またはそのアルコキシ化物含有重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基含有重合性単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有重合性単量体;アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有重合性単量体等が挙げられる。
【0025】
これらの単量体成分からなる重合体の架橋性反応基によって、重合体同士で架橋することで、後述する水性粘着剤組成物から形成される被膜のゲル分率を80重量%以上に調整することができる。
【0026】
また、前記(a)及び(b)以外の不飽和単量体(c)としては、水性粘着剤のゲル分率を所望の範囲まで向上させることを目的として、分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を含有する多官能性エチレン性不飽和単量体(c2)を使用することもでき、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
これら多官能性エチレン性不飽和単量体を使用すると粘着剤の凝集力を向上させ、保持力が良好なものとなるが、接着力と保持力のバランスを良好なものとするためには、多官能性エチレン性不飽和単量体の使用量は、前述の如く粘着剤皮膜のゲル分率が80重量%以上となる量で使用することが好ましい。
【0028】
さらに前記(a)及び(b)以外の不飽和単量体(c)として、乳化重合時の安定性、エマルジョンの貯蔵安定性を向上させることを目的として、得られる水性粘着剤の耐水白化性を低下しない範囲で、スルホン酸基、サルフェート基、リン酸基およびリン酸エステル基からなる群から選ばれる1種以上の官能基またはその塩を含有するエチレン性不飽和単量体(c3)を併用することができる。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のビニルスルホン酸類またはその塩、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸等のアリル基含有スルホン酸類またはその塩、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホプロピル等の(メタ)アクリレート基含有スルホン酸類またはその塩、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド基含有スルホン酸類またはその塩、リン酸基を有する「アデカリアソープPP−70、PPE−710」(旭電化工業(株)製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0029】
次いで、乳化共重合について説明する。乳化共重合の際に用いる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等が挙げられる。
【0030】
重合体は、これら過酸化物のみを用いてラジカル重合するか、或いは上記過酸化物に還元剤を併用したレドックス重合開始剤系によっても、得ることができる。
【0031】
またさらに重合開始剤として、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することもできる。
【0032】
上記の重合開始剤の中でも、特に、有機過酸化物系重合開始剤を使用すると、粘着剤被膜の耐水白化性を著しく向上するため好ましい。
【0033】
有機過酸化物類として、具体的には、例えば過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等が挙げられる。
【0034】
また、上記のレドックス重合開始剤系に使用する還元剤としては、例えば、アスコルビン酸およびその塩、エリソルビン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、クエン酸およびその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩等が挙げられる。
【0035】
また、重合体の分子量を調整するため、分子量調整剤として連鎖移動能を有する化合物を用いることが好ましい。これらの化合物としては、例えば、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等のメルカプタン類、またはα−メチルスチレン・ダイマー等が挙げられる。
【0036】
水性媒体中で重合体を製造する際に、粘着剤被膜の耐水性等を低下させない範囲で必要に応じて、乳化剤やその他の分散安定剤を使用することができる。
乳化剤としては、陰イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤等が挙げられるが、中でも陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤が好ましい。
【0037】
前記陰イオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩等が挙げられる。また非イオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0038】
更に、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和二重結合を分子内に有する乳化剤を使用することもできる。このような反応性乳化剤の市販品としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180」[(花王(株)製)、「エレミノールJS−2、RS−30」[三洋化成工業(株)製]等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンHS−10、HS−20」[第一工業製薬(株)製]、「アデカリアソープSE−10、SE−20」[旭電化工業(株)製]等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」[第一工業製薬(株)製]等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」[第一工業製薬(株)製]等が挙げられる。
【0039】
また、乳化剤以外のその他の分散安定剤を使用することもできる。かかる分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、繊維素エーテル、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性ポリウレタン樹脂等の合成或いは天然の水溶性高分子物質が挙げられる。
【0040】
上記乳化剤及び分散安定剤は、得られる粘着剤被膜の耐水性や接着力等の面から、その使用量を極力少なくすることが好ましく、その使用量は重合体の固形分に対して、2重量%以下とすることが好ましい。
【0041】
また、重合の際、親水性溶剤、疎水性溶剤を加えること、及び公知の添加剤を加えることも可能であるが、使用量は得られる粘着剤被膜に悪影響を及ぼさない範囲に抑えることが好ましい。重合体を重合する際の温度は、使用する単量体の種類、重合開始剤の種類等によって異なるが、水性媒体中で重合する場合は、通常30〜90℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0042】
重合体の具体的な製造方法としては、(1)水、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a)、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを必須の成分とする重合性単量体(b)、必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体(c)を含有する重合性単量体混合物、重合開始剤、必要に応じて乳化剤、分散安定剤を一括混合して重合する方法、(2)水、前記重合性単量体混合物、乳化剤を予め混合した混合物の一部を反応器に加え、残り混合物を滴下して乳化重合する方法(プレエマルジョン法)、(3)モノマー滴下法等の方法が挙げられる。これらの中でも、特に重合時の安定性の点から(2)のプレエマルジョン法で製造することが、カルボキシル基を含有し、酸価が3〜30であり、平均粒子径が300nm以下である重合体粒子[X]が分散している水性分散体を容易に得ることが出来るため好ましい。
【0043】
上記(2)の具体的な方法としては、例えば、滴下漏斗の付いた攪拌式反応器に、水、重合開始剤、重合体を入れ、次いで、重合温度まで反応器の温度を上げ、滴下漏斗より単量体成分を滴下する方法が挙げられる。この際、反応器内は、開放系であってもよいが、窒素等の不活性ガスで置換されていることが好ましい。また、重合温度は、使用する単量体の種類、重合開始剤の種類等によって異なるが、通常は30〜90℃の温度範囲が適当であり、より好ましくは40℃〜85℃の範囲である。単量体成分の滴下速度は、重合体と単量体成分との比率、及び得られる重合体水性分散液の固形分濃度により適宜調節することが好ましく、特に制限されない。
【0044】
また、上記乳化重合の際、本発明の効果を損なわない範囲で親水性溶剤、疎水性溶剤及び種々の添加剤を加えることも可能である。
【0045】
また、本発明の再剥離型水性粘着剤組成物には、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、充填剤、顔料、pH調整剤、皮膜形成助剤、後述するレベリング剤、増粘剤、撥水剤、粘着付与剤、消泡剤等の種々のものを適宜添加して使用することができる。
【0046】
本発明の再剥離型水性粘着剤組成物は、種々の粘着製品、特に耐水白化性と再剥離性が要求される製品に応用することができる。
【0047】
前記粘着製品(粘着テープ、粘着ラベル等)を製造する場合、テープまたはラベルに使用される基材に、再剥離型水性粘着剤組成物を直接塗工した後に剥離紙と貼り合わせる方法と、再剥離型水性粘着剤組成物を剥離紙に塗工し乾燥した後に該基材へ転写する方法があるが、特に、後者の剥離紙に再剥離型水性粘着剤組成物を塗工する方法では、剥離紙の表面エネルギーが低いため、従来の溶剤型粘着剤では問題の無かった塗工が、水性粘着剤では塗工時にハジキやチジミが発生し易いという問題がある。これらの現象を抑制するためには、水性粘着剤の剥離紙に対する濡れ性を向上して平滑な塗工面を得る必要があり、従来、濡れ性向上剤(以下レベリング剤という)として界面活性剤を添加して問題を解決している。
【0048】
レベリング剤としては、前記アセチレンジオール系界面活性剤[Z]以外にも、必要に応じて、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等を加えることができる。前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系界面活性剤等が挙げられ、陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。また、上記の界面活性剤の他に、特殊界面活性剤として、フッ素系界面活性剤や、シリコーン系界面活性剤を使用することもできる。
【0049】
前記の界面活性剤の中でも、陰イオン性界面活性剤としてはコハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩系の界面活性剤が、フッ素系界面活性剤としてはメガファックF−142D、メガファックF−1405(大日本インキ化学工業(株)製)、或いはZONYL FSN(デュポン(株)製)等のパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物が、シリコーン系界面活性剤としてはSILWETFZ−2166(日本ユニカー(株)製)、BYK 348(ビックケミー・ジャパン(株)製)等のポリエーテル変性ジメチルシロキサンが好ましい。これらの1種または2種以上の混合物を使用する事が、塗工性に優れる点から好ましい。
【0050】
前記レベリング剤の使用量は、塗工時のハジキやチヂミが十分に抑制され、平滑な塗工面を得ることができれば特に限定されないが、水性粘着剤の固形分に対して0.1〜2重量部の範囲で使用すると、粘着剤の接着力等の粘着物性に悪影響を与えないため好ましい。
【0051】
また、前記レベリング剤の使用方法は、重合体粒子[X]を得た後、重合体粒子[X]の分散する水性分散液に添加する方法の他に、前述の重合体粒子[X]の製造時の乳化重合用界面活性剤として使用する方法も挙げられ、得られる水性粘着剤皮膜の耐水白化性を損なうことなく重合安定性を付与できる点で好ましい。
【0052】
次に本発明の粘着製品について説明する。本発明の粘着製品は、基材と上記の再剥離型水性粘着剤組成物の層とから構成されている。かかる基材としては、紙、プラスチックフィルム、不織布等が挙げられる。特に、本発明の再剥離型水性粘着剤組成物は耐水白化性に優れるため、透明基材を用いた粘着製品の製造に好適に用いることができる。透明基材としては具体的には、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0053】
本発明の再剥離型水性粘着剤組成物を用いて粘着剤組成物の層を形成する方法としては、上記基材の上に、該水性粘着剤組成物を直接塗工して乾燥させる直接法、シリコーン等で離型処理された紙、またはプラスチックフィルム等の離型材の上に、該水性粘着材組成物を塗工して乾燥させ、粘着剤層を形成させた後、該粘着剤層の上に基材を重ねて加圧し、該基材上に粘着剤層を転写する転写法が挙げられる。
【0054】
塗工方法としては、塗工機としてロールコーター、コンマコーター、リップコーター、ファウンテンダイコーター、グラビアコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0055】
本発明の再剥離型水性粘着剤組成物は、固形分濃度が50〜70重量%、粘度が10〜10,000mPa・s(BM型粘度計、60回転、25℃)、pHが6〜9であることが好ましい。上記の直接法で塗工する場合には、塗工方法の種類にもよるが、一般的により高速に塗工するためには低粘度であることが求められることが多い。また転写法で塗工する場合には、粘度が300〜10,000mPa・s(同上)のものが好ましい。
【0056】
本発明の粘着製品は、接着力と耐水白化性に優れるので、粘着ラベル、粘着テープ、特殊粘着シート等に好適である。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「%」は重量%、「部」は重量部をそれぞれ示すものとする。
【0058】
本発明で用いた評価方法について以下に述べる。
[酸価の測定方法]
ガラス板上に3milアプリケーターにて後記実施例で得られた水性粘着剤組成物を塗工し、常温で1時間乾燥して半乾きの粘着剤被膜(試料)を作成後、得られた粘着剤被膜をガラス板から剥がし、この粘着剤被膜1gを精秤してテトラヒドロフラン(THF)100gに溶解したものを測定試料とした。測定方法は、水酸化カリウム水溶液による中和滴定法で行った。なお、テトラヒドロフランに溶解しなかった試料については、本方法での測定が不可能であるので、再剥離型水性粘着剤組成物製造時に使用したカルボキシル基含有単量体の仕込量から求めた計算値を酸価として求めた。
【0059】
[平均粒子径の測定方法]
日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて測定した平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)の値を求めた。
【0060】
[Tgの測定方法]
再剥離型水性粘着剤組成物を乾燥後の膜厚が0.3mmとなるようにガラス板に塗工し、25℃で24時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に100℃で5分間乾燥したものを試料とし、直径5mm、深さ2mmのアルミニウム製円筒型セルに試料約10mgを秤取し、TAインスツルメント社製のDSC−2920モジュレイテッド型示差走査型熱量計を用い、窒素雰囲気下で−150℃から昇温速度20℃/分で100℃まで昇温した時の吸熱曲線を測定して求めた。
【0061】
[ゲル分率の測定方法]
ガラス板上に乾燥後の膜厚が0.3mmとなるように後記実施例で得られた再剥離型水性粘着剤組成物を塗工し、25℃で24時間乾燥した後、得られた皮膜をガラス板から剥離し、更に100℃で5分間乾燥したものを50mm角に切り取り、これを試料とした。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の重量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に常温で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残さの重量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率を求めた。
ゲル分率(重量%)=G2/G1×100
【0062】
[水抽出物量の測定方法]
再剥離型水性粘着剤組成物を乾燥後の膜厚が0.3mmとなるようにガラス板に塗工し、25℃で24時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に120℃で5分間加熱処理して残存する水分を蒸発させた。そのフィルムを20mm角に切り取り重量(W1)を測定し試験フィルムとした。試験フィルムを25℃水中に7日間浸漬し、引き上げてフィルム表面の水分を軽く拭き取った後、そのフィルムを110℃で1時間乾燥し、放冷後、重量(W2)を測定し、以下の式に従ってフィルムの水抽出物量を求めた。
水抽出物量(重量%)=[(W1−W2)/W1]×100
【0063】
[耐水白化性試験の測定方法]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後における膜厚が25μmとなるように再剥離型水性粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥して粘着シートを作成し試料とした。粘着剤塗工面が暴露される様に30℃の水中に試料を24時間浸漬し、水浸漬前と水浸漬後の試料の濁度を濁度計で測定し、その濁度の変化度合いをW値として求め、耐水白化性を評価した。
【0064】
濁度計;日本電飾工業(株)製濁度計NDH−300A
測定光源;ハロゲンランプ
受光素子;JIS K7105に準拠するシリコンフォトセル
濁度および水浸漬前後の濁度の変化度合いは下記の式に従って求めた。
濁度 H=[DF/TL]×100
TL;全透過率(%)
DF;拡散透過率(%)
【0065】
濁度の変化度合い W値=H1/H0
H0;水浸漬前の濁度
H1;水浸漬後の濁度
○;濁度の変化度合いW値が5未満
△;濁度の変化度合いW値が5以上で且つ30未満
×;濁度の変化度合いW値が30以上
【0066】
[接着力の測定方法]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後における膜厚が25μmとなるように再剥離型水性粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥して粘着シートを作成した。粘着シートおよび被着体としてステンレス板を用い、JIS Z−0237に準じて23℃、50%RHの雰囲気下で180度剥離強度を測定し、接着力とした。
【0067】
[保持力の測定方法]
接着力測定時と同様にして粘着シートを作成し、ステンレス板に接着面積が25mm×25mmとなるように粘着シートを貼付け、40℃にて1kgの荷重をかけて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間を保持力とした。また、300分後にも保持されていた場合には、保持時間を300分以上とし、初期貼付け位置からのずれ幅を測定し併記した。(なお、表1及び2中の保持力0mmとは、300分後まで保持され、且つずれ幅が0mmであったことを示す。)
【0068】
[再剥離性の測定方法]
接着力測定時と同様にして粘着シートを作成し、ステンレス板に接着面積が25mm×25mmとなるように粘着シートを貼付け、23℃、65%RHの雰囲気に30日間放置後、引っ張り試験機にて引っ張り速度300mm/分で剥離して、剥離後の被着体表面の状態を目視にて判定した。
○;糊残りや紙破れなくきれいに剥離できる。
△;糊残りや紙破れが部分的にある。
×;全面に糊残りや紙破れがある。
【0069】
[タックの測定方法]
接着力測定時と同様にして粘着シートを作成し、JIS Z−0237の球転法に準じて23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。
【0070】
実施例1
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水45部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。攪拌下、続いてt−ブチルハイドロパーオキサイド0.02部、L−アスコルビン酸0.01部を添加し、続いて2−エチルヘキシルアクリレート88部、メチルメタクリレート10部、メタクリル酸2部、ラウリルメルカプタン1部からなる単量体混合物に、ラテムルE−118B[花王(株)製:有効成分25%]1.6部と脱イオン水15部を加えて乳化させたモノマープレエマルジョン(前記単量体混合物と乳化剤と水でモノマーを乳化状態にしたものを云う)の一部(3部)を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。引き続き、反応容器内温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(114.6部)と、t−ブチルハイドロパーオキサイドの水溶液(有効成分1%)15部、L−アスコルビン酸の水溶液(有効成分0.5%)15部を、各々別の滴下漏斗を使用して、反応容器内温度を75℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合せしめた。
【0071】
滴下終了後、同温度にて120分間攪拌し、内容物を冷却し、pH8.0となるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整した。ここで得られた重合体粒子[X]の水性分散液は、固形分濃度52.0%、粘度200mPa・s、平均粒子径270nmであり、酸価が13であった。
【0072】
上記の重合体粒子[X]の水性分散液に、レベリング剤としてサーフィノール420(エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製:有効成分100%)1.2部、エポクロスWS−500(オキサゾリン基当量:220g・solid/eq.)2.0部を添加した後、100メッシュ金網で濾過し、再剥離型水性粘着剤組成物を得た。前記再剥離型水性粘着剤組成物を用いて得た被膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)、水抽出物量、および粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、再剥離性、タックの評価結果を表1に示した。
【0073】
実施例2〜5
単量体混合物として第1表に示したものを用いた以外は、実施例1と全く同様にして再剥離型水性粘着剤組成物を得た。この再剥離型水性粘着剤組成物に含まれる重合体粒子の酸価、平均粒子径(50%メジアン径)、固形分濃度、粘度は第1表に記載した通りであった。また、この再剥離型水性粘着剤組成物から得られた被膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)、水抽出物量、および粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、再剥離性、タックの評価結果を表1に記載した通りであった。
【0074】
比較例1〜4
単量体混合物として表2に示したものを用いた以外は、実施例1と全く同様にして再剥離型水性粘着剤組成物を得た。この再剥離型水性粘着剤組成物中に含まれる重合体粒子の酸価、ゲル分率、平均粒子径、固形分濃度、粘度は表2に記載した通りであった。また、この再剥離型水性粘着剤組成物から得られた被膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)、水抽出物量、および粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、再剥離性、タックの評価結果を表2に記載した通りであった。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
第1表中の略号の正式名称を下記に示す。
2−EHA ;2−エチルヘキシルアクリレート
BA ;ブチルアクリレート
nBMA ;n―ブチルメタクリレート
MMA ;メチルメタクリレート
MAA ;メタクリル酸
AA ;アクリル酸
L−SH ;ラウリルメルカプタン
TBHP ;t−ブチルハイドロパーオキサイド
KPS ;過硫酸カリウム
WS−500;(株)日本触媒製 エポクロスWS−500
OT−75 ;三井サイテック(株)製 AEROSIL OT−75
【0078】
【発明の効果】
本発明は、優れた耐水白化性、接着力及び再剥離性を有する水性粘着剤組成物(再剥離型水性粘着剤組成物)を与える。また、本発明の再剥離型水性粘着剤組成物と基材から構成されてなる本発明の粘着製品は、耐水白化性及び接着力、再剥離性に優れ、粘着ラベル、粘着テープ、特殊粘着シート等として好適である。
Claims (4)
- カルボキシル基を含有し、酸価が3〜30である平均粒子径が300nm以下の重合体粒子[X]と、分子中に少なくとも2個のオキサゾリン基を有する化合物[Y]と、アセチレンジオール系界面活性剤[Z]とを含有し、重合体粒子[X]が水中に分散している再剥離型水性粘着剤組成物であって、該再剥離型水性粘着剤組成物から形成される皮膜のガラス転移温度が−25℃以下、前記皮膜のゲル分率が80重量%以上、且つ、前記皮膜の水抽出物の量が2重量%以下であることを特徴とする再剥離型水性粘着剤組成物。
- 前記重合体粒子[X]が、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a)0.5〜4重量%と炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)64〜99.4重量%とを含有する重合性単量体混合物を乳化共重合して得られるものである請求項1記載の再剥離型水性粘着剤組成物。
- 前記重合体粒子[X]が、有機過酸化物系重合開始剤を使用して乳化共重合された重合体である請求項1記載の再剥離型水性粘着剤組成物。
- 基材と請求項1、2又は3に記載の再剥離型水性粘着剤組成物の層とを有してなる粘着製品。
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