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JP2004213993A - 軟x線光源装置 - Google Patents

軟x線光源装置 Download PDF

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JP2004213993A
JP2004213993A JP2002381256A JP2002381256A JP2004213993A JP 2004213993 A JP2004213993 A JP 2004213993A JP 2002381256 A JP2002381256 A JP 2002381256A JP 2002381256 A JP2002381256 A JP 2002381256A JP 2004213993 A JP2004213993 A JP 2004213993A
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ray
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energy beam
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Application number
JP2002381256A
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Yasuhiko Nishimura
靖彦 西村
Atsushi Sakata
篤 坂田
Hirozumi Azuma
博純 東
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Toyota Macs Inc
Original Assignee
Toyota Macs Inc
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Publication date
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  • Exposure Of Semiconductors, Excluding Electron Or Ion Beam Exposure (AREA)

Abstract

【課題】高輝度かつ多光量の軟X線を取り出すことができるようにする。
【解決手段】ビーム照射手段とターゲット4の間に、エネルギービームを線状に集光してターゲット4に照射する線状集光手段2を配置し、ターゲット表面に線状に集光された集光線の延びる方向をエネルギービームの光軸に対して80〜89゜傾斜させた。
発生する軟X線の取り出し方向が集光線の延びる方向に集中しやすくなり、斜入射光学系などを用いれば、利用できる軟X線の輝度がさらに向上するとともに光量がさらに増大する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザープラズマ軟X線、X線レーザーなどを高輝度かつ多光量で取り出すことが可能な軟X線光源装置に関する。本発明の軟X線光源装置は、光電子分光,X線回折分光,X線顕微鏡などの分析装置に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
近年、真空容器内に配置された所定のターゲットにレーザービームを照射して軟X線を発生させる軟X線光源装置が知られている。例えばターゲットとして平板状あるいは円柱状の固体金属を用い、このターゲットの表面にレーザービームを集光させることによって高密度レーザープラズマを生成し、この自由膨張したプラズマ中から発生する軟X線をX線光学系を介して外部へ導く構造のものが知られている。
【0003】
また近年、10〜 100MW/cm 以上の強度をもつ高エネルギーのレーザー光が開発され、このレーザー光を励起用に用いてレーザープラズマ軟X線を発生させる装置が提案され(特開平07−128500号公報など)、X線リソグラフィやX線顕微鏡などへの応用が期待されている。
【0004】
しかしこのような軟X線光源装置では、過熱による不具合を回避するために数10分以上の間隔をあけて間欠的に励起用レーザー光の照射を行っているのが現状である。これでは連続的に軟X線を取り出すことが困難であるが、近年、特開平07−094296号公報に開示されているように、波形制御されたパルス列の固体レーザーを用いることにより、1Hz又は10Hzの繰り返しでレーザープラズマ軟X線を発生させることができるようになっている。
【0005】
ところが励起用レーザー光を用いた軟X線光源装置では、ターゲットから燃焼分解物や破砕物からなる飛散粒子(以下、デブリという)がX線と同時に放出され、広範囲の領域に飛散する。また10MW/cm 以上の高エネルギーの励起用レーザー光の場合は、デブリの速度が特に大きくなり、一層広範囲に飛散あるいは浮遊する。そしてこのデブリがX線光学系に付着すると、装置から取り出されるX線量が減少したり、X線光学系の要素を劣化させる場合がある。またレーザー光学系にデブリが付着すると、励起用レーザー光の利用効率が低減する。さらにテープ形状のターゲットを用いるなどして、長時間繰り返してレーザープラズマ軟X線を発生させる場合には、短時間の間に多量のデブリが爆発的に発生してX線光学系やレーザー光学系に付着するという問題がある。
【0006】
そのため従来のX線光源装置では、数十から数千回の励起用レーザー照射毎に真空容器を常圧に戻し、X線光学系やレーザー光学系に付着したデブリを除去している。したがって長時間連続してX線を取り出すことが困難であり、作業性及び生産性が低いという問題があった。
【0007】
そこで特開平08−194100号公報には、ターゲットとX線光学系との間に高分子フィルムを介在させ、高分子フィルムを通してX線をX線光学系へ照射する構成の装置が開示されている。また特開平10−026699号公報には、励起用レーザー入射窓へのデブリの付着を阻止するために、ポリエチレンなどからなる高分子フィルムを用いることが提案されている。このようにすれば、デブリは高分子フィルムに付着して捕捉されるので、デブリがX線光学系やレーザー光学系に付着するのが防止され、上記不具合を解決することができる。
【0008】
また特開平10−055899号公報には、微粒子状の金属を励起用レーザー照射位置へ噴射・回収することで連続的に軟X線を発生する方法が開示され、特開平10−221499号公報には微粒子状の金属を含むガスを噴射・回収する装置を用いて軟X線を発生させる方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平07−128500号
【特許文献2】特開平07−094296号
【特許文献3】特開平08−194100号
【特許文献4】特開平10−026699号
【特許文献5】特開平10−055899号
【特許文献6】特開平10−221499号
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記公報に開示された軟X線光源装置においては、発生する軟X線の輝度が低く、また光量も少ないために、光電子分光、X線回折分光、X線顕微鏡などに利用した場合に種々の支障が生じている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高輝度かつ多光量の軟X線を取り出すことができるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の軟X線光源装置の特徴は、真空容器と、真空容器内に配置されたターゲットと、ターゲットにエネルギービームを照射するビーム照射手段と、真空容器と連通して設けられたX線光学系と、からなる軟X線光源装置において、ビーム照射手段とターゲットの間には、エネルギービームを線状に集光してターゲットに照射する線状集光手段を有し、ターゲット表面に線状に集光された集光線の延びる方向がエネルギービームの光軸に対して80〜89゜傾斜していることにある。
【0013】
X線光学系は斜入射光学系であり、軟X線の入射方向が集光線の延びる方向に対して1〜10゜傾斜していることが望ましい。
【0014】
ターゲットは、高分子フィルムと高分子フィルムに保持されたターゲット材料と、からなるシート形状又はテープ形状をなすことが好ましく、ターゲットは、高分子フィルムからなり厚さ30μm〜 100μmのフィルム層と、ターゲット材料からなりフィルム層に積層された厚さ10μm以下のターゲット層とよりなることが望ましい。さらに、ターゲットをエネルギービームの照射位置に連続的又は間欠的に供給するターゲット駆動装置を有することが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の軟X線光源装置は、ビーム照射手段とターゲットの間に、エネルギービームを線状に集光してターゲットに照射する線状集光手段を有し、線状に集光されたエネルギービームがターゲットに照射される。またさらに、ターゲット表面に線状に集光された集光線の延びる方向が、エネルギービームの光軸に対して80〜89゜傾斜している。これにより、従来の点状に集光されたエネルギービームを照射した場合に比べて、高輝度かつ多光量の軟X線が発生する。
【0016】
以下、本発明の軟X線光源装置を構成要件毎に説明する。
【0017】
真空容器の真空度は、10−10 〜10−3Paの範囲が一般的に用いられる。
【0018】
ターゲットは、アルミニウム、銅、鉄、錫、チタン、ベリリウムなどの金属あるいは硫黄や炭素を含んだゴムなどの固体ターゲット材料、あるいはヘリウム、ネオン、キセノン、アルゴン、クリプトンなどの気体ターゲット材料を用いることができる。各ターゲット材料によって発生する軟X線のスペクトルが異なるので、ターゲット材料の種類とX線光学系の種類及び位置を選択することにより、所望のほぼ単波長の軟X線を取り出すことが可能となる。
【0019】
ターゲットは、上記した固体ターゲット材料又は気体ターゲット材料をそのまま、あるいはエネルギービームを透過する容器に詰めて用いてもよい。しかしこれらのターゲットを用いた場合には、デブリが発生する恐れがある。そこでターゲットを、高分子フィルムと高分子フィルムに保持されたターゲット材料と、からなる構成とすることが望ましい。
【0020】
高分子フィルムにエネルギービームが照射されると、そのエネルギーによってプラズマ化されるだけでなく、ある種類の高分子フィルムでは、照射位置の周囲はガス化するだけでデブリは発生しないことが明らかとなった。したがってこの種の高分子フィルムを用いることにより、飛散微粒子の発生を抑制することができる。
【0021】
高分子フィルムの材質としては、エネルギービームが照射されたときに容易にガス化するものが望ましく、炭素、水素、酸素及び窒素から選ばれる元素から構成されたものが望ましい。このような高分子フィルムを用いれば、エネルギービームが照射されたときにCO、CO 、HO 、Nなどとなって容易にガス化し、デブリが生じない。このような高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、パリレンなどが例示される。
【0022】
この高分子フィルムの厚さは、30μm以上であることが望ましい。厚さが30μm未満であると、エネルギービームの照射位置の周囲が広範囲にわたって破断するため、後述のターゲット駆動装置などを用いて連続的又は間欠的にターゲットを供給することが困難となる。30μm以上の厚さであれば、エネルギービームの照射位置が溶融するだけで、その周囲の破断を防止することができる。なお厚さの上限は制限されないが、ターゲット駆動装置による供給のし易さ、製造のし易さなどを考慮すると、 100μm以下とするのが好ましい。
【0023】
ターゲット材料を高分子フィルムに保持するには、前述の固体ターゲットを微粒子状として高分子フィルム中に保持してもよいし、前述の固体ターゲットを膜状にしターゲット層として高分子フィルム表面あるいは内部に積層することもできる。微粒子状として高分子フィルム中に保持する場合は、粒子径を 0.1〜80μmとし、高分子フィルムの厚さ方向に5〜10μmの厚さとなるように保持することが望ましい。粒子径が 0.1μm未満であると発生する軟X線の強度が小さくなり、80μmを超えるとプラズマ化しなかった部分がエネルギービームのエネルギーによって溶融し、粒子どうしが融合して部分的に粒子径が 100μm以上の粗大粒子が生成するため、デブリが発生するようになる。
【0024】
またターゲット粒子が高分子フィルムの厚さ方向に5μm未満となるように保持されていると、量が少なすぎて発生する軟X線の強度が小さく、10μmを超える厚さとなるように保持されていると、量が過剰となってデブリが発生するようになる。
【0025】
保持されるターゲット粒子の形状は、箔状、球状、不定形など特に制限されない。そして粒子は高分子フィルム全体に分散保持してもよいし、表面のみに保持することもできる。高分子フィルム表面に保持するのであれば粒子は箔状とするのが望ましく、高分子フィルム中に保持するのであれば球状とするのが特に望ましい。
【0026】
微粒子状の金属粒子を製造するには、アトマイズ法、粉砕法、爆砕法などが例示される。アトマイズ法にはガスアトマイズ法、水アトマイズ法、遠心アトマイズ法があり、溶融金属を真空中や溶液中に吹出したり、遠心力により飛散させて微粒子状の金属粒子を製造することができる。粉砕法は目的とする金属とそれより硬い金属とを容器中に入れて容器ごと回転あるいは振動させて粉砕する方法であり、また爆砕法は金属片と爆薬を容器中に入れて爆発させることで微粒子を製造する方法である。このうちアトマイズ法によれば比較的整った球状の微粒子を製造することができ、爆砕法によれば比較的硬質の金属から微粒子状の金属粒子を製造することができる。
【0027】
微粒子状の粒子を高分子フィルムに保持するには、高分子フィルム内に埋設してもよいし、高分子フィルム表面に付着させることもできる。いずれの場合も、均一に分散して保持されていることが望ましい。埋設する場合には、高分子溶液中に粒子を混合してスピンコート法などで成膜する方法、溶融高分子中に粒子を混合してフィルム成形する方法、ラミネート法により2枚の高分子フィルムの間に粒子を挟持する方法などを採用することができる。また高分子フィルムの表面に粒子を保持するには、溶融した高分子フィルムの表面に粒子を供給して溶着させる方法、あるいは接着剤を用いる方法などを採用することができる。
【0028】
また固体ターゲットを膜状にして高分子フィルム表面あるいは内部に積層する場合、固体ターゲット層の厚さは10μm以下とすることが望ましい。固体ターゲット層の厚さが10μmを超えると、エネルギービームを照射した際にデブリが発生するようになる。なお、固体ターゲット層を形成するには、固体ターゲット材料を厚さ10μm以下に加工し、高分子フィルムと溶着あるいは接着することにより行うことができる。また、蒸着法などを用いて固体ターゲット層を形成することもできる。
【0029】
ターゲットは、シート形状又はテープ形状をなすことが望ましい。このようなターゲットとすることにより、ターゲット駆動装置を用いて、ターゲットをエネルギービームの照射位置に連続的又は間欠的に供給することができる。したがって真空容器の真空を解除することなく、長時間連続して軟X線を発生させることが可能となる。
【0030】
このターゲット駆動装置は、例えば一対のリールを用意し、テープ状のターゲットが巻回された一方のリールから他方のリールに巻き取る構成のものが例示される。リールの回転駆動を連続的にすれば、ターゲットをエネルギービームの照射位置に連続的に供給でき、回転駆動を間欠的にすれば間欠的に供給することができる。
【0031】
またターゲットを比較的面積の大きなシート状とし、それを回転駆動あるいは平行移動させることで連続的又は間欠的に供給することもできる。あるいは円柱状の部材表面にシート状のターゲットを巻き付け、その部材を回転させてもよい。
【0032】
ビーム照射手段としては、強度が10MW/cm 以上のレーザー光を照射する装置を利用することができ、レーザー光の種類としては 100MW/cm 以上のものが特に好ましく、YAGレーザー、ガラスレーザー、エキシマレーザー、CO ガスレーザーなどのレーザー光を利用できる。 100MW/cm 以上の強度のレーザー光を用いれば、2〜40nmの波長の軟X線を効率よく発生させることができる。
【0033】
ビーム照射手段とターゲットの間に配置される線状集光手段は、エネルギービームを線状に集光してターゲットに照射するものであり、例えばシリンドリカルレンズと平凸レンズを組み合わせて線状に集光する方法,分割プリズムを用いてエネルギービームを分割し、それぞれを平凸レンズあるいは重ね合わせレンズなどで点集光し、それぞれを線状に並べて線集光とする方法などを用いることができる。この線状集光手段は、真空容器内に配置してもよいし、真空容器外に配置することもできる。
【0034】
ターゲット上に線状に集光されたエネルギービームの集光線の幅は、0.05〜 0.5mm程度とするのが望ましい。集光幅が0.05mm未満では点集光と同様に軟X線の光量が低下し、 0.5mmを超えると線状に集光した意味をなさず発生する軟X線が低下する。また集光線の長さは特に制限されないが、1mmもあれば十分である。
【0035】
本発明の軟X線光源装置では、ターゲット表面に線状に集光された集光線の延びる方向が、エネルギービームの光軸に対して80〜89゜傾斜している。線状に集光された集光線の延びる方向をこのように傾斜させることで、発生する軟X線の取り出し方向が集光線の延びる方向に集中しやすくなり、斜入射光学系などを用いれば、利用できる軟X線の輝度がさらに向上するとともに光量がさらに増大する。
【0036】
集光線の延びる方向をこのように傾斜させるには、エネルギービームの線集光光軸を傾斜させてもよいし、逆に集光照射位置におけるターゲットの表面をエネルギービームの光軸に対して80〜89゜となるように傾斜させてもよい。
【0037】
発生した軟X線は空間アパーチャー及びスリットの開孔は通過するが、開孔以外を通過することは困難である。したがってターゲットから発生した軟X線は、先ず空間アパーチャーの開孔を通過し、その後他のX線光学系に入射される。そして空間アパーチャーの開孔を所定幅としておくことにより、生成されたプラズマの特定領域だけを取り出すことができ、使用するターゲットによっては、狭帯域スペクトル化された軟X線がX線光学系に入射する。
【0038】
例えば空間スリットは、隙間を開けて並べられた平行な2枚の金属板と枠とで構成され、細長い隙間以外の部分は軟X線を遮断し、隙間の長手方向が波長分散方向に対して垂直となっている。細長い隙間の幅によりスペクトル幅が限定でき、隙間の長さを長くすることにより多くの軟X線を透過させることができる。なお、空間アパーチャーの存在によりデブリを遮蔽することができるので、X線光学系へのデブリの侵入を抑制することもできる。
【0039】
空間アパーチャーのスリットあるいはピンホールからなる開孔の幅は、 0.1〜5mmとすることが望ましい。開孔の幅が 0.1mmより小さくなると軟X線が開孔を通過することが困難となり、5mmより大きくなるとスペクトル幅の限定が困難となるとともに、デブリが開孔を通過するようになるため好ましくない。開孔幅の値は、例えばターゲットからX線集光ミラーまでの距離と、X線集光ミラーからスリットまでの距離との比率などによって決められる。
【0040】
X線光学系の入射光学系は、斜入射光学系であり、軟X線の入射方向が集光線の延びる方向に対して1〜10゜傾斜していることが特に望ましい。これにより発生した軟X線の大部分を他の光学系に導くことができ、利用できる軟X線をさらに高輝度かつ多光量とすることができる。斜入射光学系は、斜入射型(全反射型)のX線集光ミラーを用いて構成することができる。なお、斜入射型のX線集光ミラーを用いた場合には、不要な波長の軟X線あるいは軟X線以外の不要な光も入射されてしまうので、空間アパーチャーなどを用いて必要な軟X線のみが通過するように構成することが望ましい。
【0041】
真空容器には、真空容器と連通してX線光学系が配置される。X線光学系は入射光学系と集光光学系に大別され、入射光学系には集光ミラーなどがある。また集光光学系には波長分散装置,波長選択装置などがある。一般には、入射光学系のX線流れの下流側に集光光学系が配置される。
【0042】
波長分散装置としては、分光器,回折格子などが例示される。そして波長選択装置としては、多層膜ミラー,フィルタなどが代表的に例示される。
【0043】
波長分散装置は、固定として特定の波長の軟X線を取り出すように構成してもよいが、波長分散された軟X線の波長分散方向に移動可能とすることが好ましい。これにより各種波長の軟X線を選択して取り出すことができ、各種波長の軟X線を照射できる単色X線光源として多様に利用することができる。
【0044】
例えば波長分散装置に回折格子を用いた場合、回折格子に入射される軟X線の入射角度(α)と波長分散された所定波長(λ)の軟X線の出射角度(β)との間には次(1)式の関係がある。なお次(1)式において、Nは回折格子の溝の数、kは次数である。
したがって(1)式から所定波長(λ)の軟X線の出射角度(β)を求めることができるので、回折格子から波長選択装置までの距離Lを用いて、次式(2)によって回折格子面から結像位置までの高さ(H)が算出でき、波長選択装置をその結像位置へ移動可能とすることにより、波長分散された中から任意の波長の軟X線を取り出すことができる。
【0045】
Nkλ= sinα+ sinβ (1)
H=L cotβ (2)
そして波長選択装置で選択された特定波長の軟X線は、波長選択装置の先にX線CCDカメラ、マイクロチャンネルプレート、ストリークカメラなどのX線検出器を配置しておくことで観察することができ、X線顕微鏡、X線(EUV)リソグラフィ評価装置、光電子分光装置などを配置しておくことで、単色軟X線光源としてそれぞれの分野に利用することができる。
【0046】
また本発明の軟X線光源装置は、ターゲットとX線光学系との間に高次の次数の軟X線をカットする規制部材が配置されていることが望ましい。このようにすれば、規制部材により高次の次数の軟X線がカットされ、その軟X線が波長分散装置及び波長選択装置に入射されることによって、狭帯域の波長の軟X線をいっそう確実に取り出すことができる。この規制部材としては、窒化ケイ素膜などを用いることができる。
【0047】
さらに本発明の軟X線光源装置は、少なくともX線光学系へのデブリの侵入を抑制するデブリ除去装置をもつことが望ましい。これにより、何らかの事情によってターゲットからデブリが発生した場合でもそれがX線光学系に付着するのを阻止することができ、いっそう長時間の連続運転を行うことができる。このデブリ除去装置としては、特開平08−194100号公報などに開示された高分子フィルムなどを用いることができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0049】
(実施例1)
図1に本発明の一実施例の軟X線光源装置の平面図を、図2にその鳥瞰図を示す。この軟X線光源装置は、一側壁にレーザー入射窓10を備え、その側壁と90度に交差する側壁に分光器接続ポート11をもつ真空容器1と、真空容器1外部に配置された線状集光手段としてのシリンドリカルレンズ2(線集光光学系)と、真空容器1内に配置されたターゲット供給機構3と、ターゲット供給機構3に配置されたテープ状のターゲット4と、分光器接続ポート11に連結された平面結像型斜入射分光器5と、から構成されている。
【0050】
そして平面結像型斜入射分光器5は、全反射型のX線集光ミラー50とスリット51を備え、その先に集光光学系としての回折格子6と、CCD検出器7が備えられている。
【0051】
真空容器1には図示しない排気装置が接続され、真空容器1内を10−4Paまで減圧可能とされている。またレーザー入射窓10は石英ガラスから形成され、真空容器1の側壁に真円形状に形成されている。
【0052】
シリンドリカルレンズ2は、真空容器1外部でレーザー光入射窓10と同軸的に配置されている。そしてターゲット4と、レーザー光入射窓10及びシリンドリカルレンズ2が同一直線(レーザー光軸)上に位置し、その延長線上に図示しないレーザー光源が配置されている。このレーザー光源は、10Hzの繰り返し周波数で数 100MW/cm の高エネルギーの励起用レーザー光 100を照射するものである。
【0053】
シリンドリカルレンズ2によって集光されたレーザー光は、レーザー光入射窓10を通過してターゲット4の表面で幅 0.1mmの線状に集光される。図3に模式的に示すように、ターゲット4の表面に線状に集光した集光線は、この場合には、ターゲット4の表面に平行でレーザー光軸に対して角度θ(85゜)だけ傾斜している。そして平面結像型斜入射分光器5は、集光線の延びる方向に配置されている。
【0054】
ターゲット供給機構3は、一対のリール31,32と、一対のリール31,32間に介装されたターゲット4と、図示しないモータとから構成されている。ターゲット4は、ポリエチレンからなるフィルム層と、フィルム層表面に積層された金属Al層とからなる二層構造をなし、テープ状に形成されている。そしてターゲット4は一方のリール31に巻回され、モータの連続駆動によって一方のリール31から他方のリール32に巻き取られるように構成されている。したがって励起用レーザー光が照射された部分はリール32に巻き取られるので、ターゲット4は常に新しい部分がレーザー光 100の集光位置に表出するようになっている。
【0055】
ターゲット4のフィルム層は厚さが60μmであり、金属Al層41は10μmの厚さとされている。このターゲット4は、ポリエチレンからなるフィルム層と金属Al層とが接合されて構成され、金属Al層がレーザー光 100に対向するように配置されている。
【0056】
なお1回のレーザー光 100の照射で、ターゲット4は移動方向に約 500μm剥ぎ取られることがわかっている。したがってレーザー光を10Hzの繰り返し周波数で照射する場合には、ターゲット4の送り速度は5mm/秒程度であれば十分である。
【0057】
レーザー光 100がターゲット4に集光照射されることで、レーザープラズマが発生し軟X線が発生する。発生した軟X線は、集光線の延びる方向にベクトルをもち、そちら側に配置された平面結像型斜入射分光器5に入りやすい。また真空容器1内には空間アパーチャ12が配置され、発生した軟X線は空間アパーチャ12を通過した後に平面結像型斜入射分光器5に入る。
【0058】
平面結像型斜入射分光器5内のX線集光ミラー50は、集光線の延びる方向に対して5゜傾斜し(図3では水平)、斜入射したX線が全反射してスリット51を通過するように設計されている。スリット51を通過して余分な光がカットされた軟X線は、回折格子6でさらに集光され、CCD検出器7によって検出される。
【0059】
また、この軟X線光源装置によれば、リール31,32の回転駆動を連続的にすることにより、ターゲット4を励起用レーザー光 100の線状集光位置に連続的に供給でき、回転駆動を間欠的にすれば間欠的に供給することができる。したがって長時間の連続駆動が可能となる。
【0060】
そしてこの軟X線光源装置によれば、フィルム層と金属Al層とからなるテープ状のターゲット4を用いているので、デブリの発生を抑制することができる。これによりレーザー入射窓10や平面結像型斜入射分光器5にデブリや浮遊粒子が付着するのが抑制され、長時間安定して軟X線を発生・利用することができる。
【0061】
<試験例1>
さて、上記軟X線光源装置において、CCD検出器7で観察された軟X線のピーク強度を測定し、結果を図4に示す。また比較のために、シリンドリカルレンズ2に代えてターゲット4表面に点状に集光する集光レンズを用いたこと以外は同様にして、CCD検出器7で観察された波長13nmの軟X線のピーク強度を図4に示す。なお、ターゲット4に線状又は点状に集光照射されるレーザー光の強度は 100GW/cm である。
【0062】
さらに、金属Al層に代えて金属Si層,金属Cu層,金属Sn層をそれぞれ同様の厚さで形成したターゲット4をそれぞれ用い、上記と同様にして線状集光及び点状集光した場合に発生した波長13nmの軟X線のピーク強度を図4に示す。
【0063】
図4に示すように、ターゲットの金属種に関わらず、線状に集光することによって点状に集光した場合に比べて軟X線ピーク強度が増大し、約 1.3倍程度高くなっていることが明らかである。すなわち本実施例の軟X線光源装置によれば、高輝度かつ多光量の軟X線を発生させることができる。
【0064】
<試験例2>
次に、金属Al層をもつターゲット4と金属Cu層をもつターゲット4とを用い、試験例1と同様にして波長13nmの軟X線のピーク強度をそれぞれ測定した。また比較のために、X線集光ミラー50を用いなかったこと以外は実施例と同様の軟X線光源装置を用い、同様にして波長13nmの軟X線のピーク強度を測定した。結果を図5に示す。
【0065】
図5より、ターゲットの金属種に関わらず、全反射型の集光ミラー50をもつ斜入射光学系を用いることで、軟X線ピーク強度が最大 1.5倍程度増大していることが明らかである。
【0066】
<試験例3>
さらに、ターゲット供給機構3を移動させ、ターゲット4の表面の集光線の延びる方向とレーザー光の光軸とのなす角度(図3におけるθ)を、40゜から90゜まで2度刻みで可変させたこと以外は試験例1と同様にして、それぞれ波長13nmの軟X線のピーク強度を測定した。結果を図6に示す。
【0067】
図6より、角度が85゜近傍で最もピーク強度が高くなり、集光線の延びる方向とレーザー光の光軸とのなす角度は、80〜89゜傾斜しているのが最適であることが明らかである。
【0068】
【発明の効果】
すなわち本発明の軟X線光源装置によれば、高輝度かつ多光量の軟X線を取り出すことが可能となる。またターゲットをシート状又はテープ状とすることで、高頻度で繰り返して高輝度かつ多光量の軟X線を取り出すことができ、長時間の連続運転が可能となる。したがって光電子分光、X線回折分光、X線顕微鏡などに最適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の軟X線光源装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例の軟X線光源装置の要部の鳥瞰図である。
【図3】本発明の一実施例の軟X線光源装置の模式的構成を示す説明図である。
【図4】ターゲットの種類と軟X線ピーク強度との関係を示すグラフである。
【図5】全反射型集光ミラーの有無による軟X線ピーク強度の差を示すグラフである。
【図6】軟X線の取り出し角度と軟X線ピーク強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:真空容器 2:シリンドリカルレンズ 3:ターゲット供給機構
4:ターゲット 5:平面結像型斜入射分光器 6:回折格子
7:CCD検出器 12:空間アパーチャ 50:X線集光ミラー
51:スリット

Claims (5)

  1. 真空容器と、該真空容器内に配置されたターゲットと、該ターゲットにエネルギービームを照射するビーム照射手段と、真空容器と連通して設けられたX線光学系と、からなる軟X線光源装置において、
    該ビーム照射手段と該ターゲットの間には、該エネルギービームを線状に集光して該ターゲットに照射する線状集光手段を有し、該ターゲット表面に線状に集光された集光線の延びる方向が該エネルギービームの光軸に対して80〜89゜傾斜していることを特徴とする軟X線光源装置。
  2. 前記X線光学系は斜入射光学系であり、軟X線の入射方向が前記集光線の延びる方向に対して1〜10゜傾斜している請求項1に記載の軟X線光源装置。
  3. 前記ターゲットは、高分子フィルムと該高分子フィルムに保持されたターゲット材料と、からなるシート形状又はテープ形状をなすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟X線光源装置。
  4. 前記ターゲットは、前記高分子フィルムからなり厚さ30μm〜 100μmのフィルム層と、前記ターゲット材料からなり該フィルム層に積層された厚さ10μm以下のターゲット層とよりなる請求項3に記載の軟X線光源装置。
  5. 前記ターゲットを前記エネルギービームの照射位置に連続的又は間欠的に供給するターゲット駆動装置を有する請求項3又は請求項4に記載の軟X線光源装置。
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