JP2004276035A - 金属複合管の耐コーキング性に優れた溶接継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】原料ナフサを熱分解してエチレン等を製造するための反応管を突合せ溶接接合した場合において、その溶接接合部に良好な耐コーキング性,耐浸炭性を付与することを目的とする。
【解決手段】基材金属管12の内面に耐コーキング性の肉盛溶接層14を積層形成した金属複合管10の突合せ溶接継手であって、肉盛溶接層14を積層形成した内面を、Cr:36〜49%,Ni:35〜63%,Mo:0.5〜5%を含有した(A)溶加材、又はCr:20〜49%,Ni:35〜80%及びAl,Siの1種又は2種をAl+Si合計で1.5〜5%含有した(B)溶加材を用いて溶接するとともに、残部を基材金属管12と同等成分の溶加材を用いて溶接する。
【選択図】 図1
【解決手段】基材金属管12の内面に耐コーキング性の肉盛溶接層14を積層形成した金属複合管10の突合せ溶接継手であって、肉盛溶接層14を積層形成した内面を、Cr:36〜49%,Ni:35〜63%,Mo:0.5〜5%を含有した(A)溶加材、又はCr:20〜49%,Ni:35〜80%及びAl,Siの1種又は2種をAl+Si合計で1.5〜5%含有した(B)溶加材を用いて溶接するとともに、残部を基材金属管12と同等成分の溶加材を用いて溶接する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は化学プラント用配管、例えばナフサをクラッキングしてエチレン,塩化ビニル,エタン等の化学製品素材を製造する装置の反応管等に用いて好適な耐コーキング性に優れた金属複合管、詳しくは基材金属管の内面及び/又は外面に耐コーキング性の肉盛溶接層を積層形成した金属複合管の突合せ溶接継手に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
エチレン,塩化ビニル,エタン等の化学製品素材は、外側からバーナで高温に加熱した反応管の内部に原料ナフサを蒸気の形で通してこれを熱分解させることにより製造している。
この場合、反応管には耐熱性と耐コーキング性,耐浸炭性が要求される。
【0003】
ここでコーキングは、炭化水素の熱分解により炭素が生成して金属の表面、即ち反応管の表面に析出し堆積する現象であり、そしてこのようなコーキングによって炭素が金属表面から内部に拡散浸透して浸炭現象を生ずる。
而してこのような浸炭現象が生ずると金属管、即ち反応管の脆化がもたらされたり耐食性が低下して腐食が進行するなど反応管の劣化が促進されてしまう。
【0004】
この耐熱性と耐コーキング性,耐浸炭性とを、従来反応管等として用いられている金属単管でともに具備することは難しく、そこで下記特許文献1では、金属単管にCr−Ni−Mo系合金の肉盛溶接層を積層し複合化することによって耐熱性と併せてそれら耐コーキング性,耐浸炭性を持たせる点が開示されている。
【0005】
本発明者等はまた、Cr:20〜49重量%,Ni:35〜80重量%(以下何れも重量%)を主成分とし、更にAl,Siの1種又は2種をAl+Si合計で1.5〜5%含有して成る肉盛溶接層を金属単管に積層し複合化して成る金属複合管を案出し、先の特許願(特願2002−316759:未公開)において提案している。
【0006】
ところで、上記反応管は長さが数十mから長いものでは数千mにも及ぶものがあり、従ってこれを製造するには金属複合管を互いに接合することが必要不可欠である。
この場合金属複合管の接合部においても耐コーキング性,耐浸炭性が要求される。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−113389号公報
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属複合管の耐コーキング性に優れた溶接継手はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、基材金属管の内面及び/又は外面に耐コーキング性の肉盛溶接層を積層形成した金属複合管の突合せ溶接継手であって、前記肉盛溶接層を積層形成した前記内面及び/又は外面を、重量%でCr:36〜49%,Ni:35〜63%,Mo:0.5〜5%を含有した(A)溶加材、又はCr:20〜49%,Ni:35〜80%及びAl,Siの1種又は2種をAl+Si合計で1.5〜5%含有した(B)溶加材を用いて溶接するとともに、残部を前記基材金属管と同等成分の溶加材を用いて溶接したことを特徴とする。
【0009】
請求項2のものは、請求項1において、前記Niの一部若しくは全部をCoで置換したことを特徴とする。
【0010】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記(B)溶加材を用いた溶接部の不純物成分を、重量%でC:≦0.1%,N:≦0.3%,Mn:≦1.5%,Fe:≦10%に、(A)溶加材を用いた溶接部の不純物成分をC:≦0.1%,N:≦0.3%,Mn:≦1.5%,Fe:≦5%,P+S:≦0.02%,O:≦0.3%にそれぞれ規制したことを特徴とする。
【0011】
【作用及び発明の効果】
以上のように本発明は、金属複合管において耐コーキング性の肉盛溶接層を積層形成した内面若しくは外面又はその両面を、上記組成の(A)溶加材又は(B)溶加材を用いて溶接し、また残部を基材金属管と同等成分の溶加材を用いて突合せ溶接したもので、本発明によれば、金属複合管の接合部に対して良好な耐コーキング性,耐浸炭性を持たせることができる。
【0012】
本発明では、上記Niの一部若しくは全部をCoで置換しておくことができる(請求項2)。
また所定の不純物成分を上記請求項3に規定する範囲内に規制することができる。
【0013】
次に本発明における化学成分の限定理由を以下に詳述する。
(A)溶加材
Cr:36〜49%
耐酸化性を高める上で必要であるとともに、本発明で意図する耐コーキング性の実現に極めて重要な元素である。
こうした効果を得るためには通常36%以上の添加が必要である。
どちらの効果もCr量を高くすれば高まるが、49%を超えるとオーステナイト組織が不安定化になり、加工性が低くなって、曲げ加工等が困難になるから、合金としての実用性が低くなる。
【0014】
Ni:35〜63%
エチレン管のような高温の使用環境で組織を安定に維持し且つ意図する耐コーキング性を得るためには、多くの場合少なくとも35%のNiの存在を必要とする。
Ni量が増大すればそれに伴って効果も増すが、あまり多くしてもそれに対応するわけではなく、不経済になるので63%が実用上の上限である。
【0015】
Mo:0.5〜5%
溶着した金属における割れやブローホール等の欠陥を防止し、また靭延性を高めるために0.5%以上添加する。
但しMoは比較的少量の添加で効果が飽和するし、Mo量が過大になると却って高温における靭延性が低下するから5%までに止める。
【0016】
(B)溶加材
Cr:20〜49%
Crの有する働きは基本的に上記(A)溶加材と同様である。
但しAl,Siの1種又は2種を添加する(B)溶加材では下限値を20%とする。
【0017】
Ni:35〜80%
Niの働きについても基本的に上記(A)溶加材と同様である。
但しこの(B)溶加材では上限値を80%とする。
【0018】
Al+Si:1.5〜5%
Al,Siはそれぞれ酸素と結合して酸化膜を形成し、炭素の拡散浸透、即ち浸炭を抑制するように働く。
また併せて粒界において炭素の移動を抑制してその拡散浸透を抑える。
但し1.5%未満では粒界における炭素の移動の抑制の効果が少ない。一方5%超では延性が低下し、溶接継手部分で割れが発生する可能性がある。そこで本発明ではAl+Siを1.5〜5%とする。
【0019】
Co
Niはその一部若しくは全部をCoで置き換えることができ、置き換えても効果は変わらないか場合によっては耐コーキング性の一層の向上を得ることができる。
尤もCoは材料としてはNiより高価であり、置換えの意義はそれほど高くないから多量に置き換えることは得策とは限らない。通常はNi量の10%、高々50%止まりの置換えが有利である。
【0020】
不純物成分としてのC,N,Mn,Fe,P+S,O
Cは耐食性及び耐コーキング性にとって有害であり、またNの存在は溶接継手の硬質化,脆化をもたらす。
またMnは脱酸剤であるから不可避的に含まれることが多いが耐コーキング性にとって好ましくない。
またFeはコーキングを引き起す成分であり、低含有量とする。
更にP+Sは溶接継手の割れ感受性を高めて溶接性を低くする。
更にOは溶接継手内にブローホールを発生させ、溶接継手を多孔質とする危険がある。
以上のような理由でこれら不純物成分については上記請求項3に規定する範囲内に規制する。
【0021】
尚本発明は、耐熱性の基材金属管の内面若しくは外面又はその両面にCr:36〜49%,Ni:35〜63%,Mo:0.5〜5%を含有した肉盛溶接層を積層形成して成る金属複合管、或いはCr:20〜49%,Ni:35〜80%,Al+Si:1.5〜5%を含有した肉盛溶接層を積層形成して成る金属複合管の溶接継手として適用することができる。
【0022】
ここで耐熱性の基材金属管として以下のものを例示することができる。
・8%以上のCrを含有する鉄基合金、代表的な鋼種は、SUS403,SUS410,SUS304,SUS316,SUH3及びSUH4
・耐熱鋳鋼、代表的にはSCH15及びSCH16
・HK材、特にHK−40材(25Cr−20Ni−0.4C)
・HP材、特にHP−40材(25Cr−35Ni−0.4C)
・HP調整材(25Cr−35Ni−0.4C−Nb/W)
【0023】
【実施例】
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
図1における金属複合管10の基材金属管12を表1の化学組成を有するHP材にて構成し、その内面に表1に示す組成の肉盛粉末を粉末プラズマ溶接により溶接して、耐コーキング性の肉盛溶接層14を積層形成した。
【0024】
【表1】
【0025】
そして一対の金属複合管10を突合せ配置するとともに端部に開先16を加工形成し、同部分において一対の金属複合管10の内面を溶接接合、即ち肉盛溶接層14同士を表3に示す各種組成の溶加材を用いて突合せ溶接接合した。
【0026】
詳しくは表3に示す化学組成を与える溶加材1〜溶加材30を用いて内面層即ち初層を溶接接合し、そして残部(残りの層)を表2に示す組成の溶加材0、即ちHP材から成る母材(基材金属管12)と同等成分の溶加材0を用いて突合せ溶接接合して溶接継手とした。
【0027】
ここで突合せ溶接はTIG溶接(4層盛)により行った。
そしてその溶接継手の耐コーキング性,耐浸炭性及び曲げ強度の評価を行った。結果が表4に示してある。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
尚、金属複合管10は外径63.5mm,厚み8.5mm,長さ300mmで、内面に肉盛溶接層14を積層形成した後、金属複合管10における内周面を機械加工して最大面粗さ12.5μm以下としたものを用いた。
また耐コーキング試験,耐浸炭性試験,曲げ試験は以下に従って行った。
【0032】
<耐コーキング試験>
一対の金属複合管10を突合せ溶接した後、エチレン製造用の実験炉に入れ、温度1100℃に加熱した状態で管内にナフサを気化させて得た蒸気を流速0.5m/秒で通過させる試験を100時間続けた。
そして上記の流通試験が終わった後、一対の金属複合管10の接続管を冷却してその重量を測定し、そこから管自体の重量を差し引いて堆積した炭素量を求めた。
但しここでは溶接継手を10mm幅で切断し、その部分で試験前後の重量変化を求めて堆積した炭素量を求めた。
以下の耐浸炭性試験においても同様である。
【0033】
<耐浸炭性試験>
上記の接続管を固形浸炭剤「KG13」(デグサ社製)とともに加熱炉に入れ、温度1100℃に200時間加熱した。
そしてこれを取り出して、溶接継手における炭素の増加量を測定した。
【0034】
<曲げ試験>
曲げ試験はJIS Z 3122に準拠して行い、表曲げ,裏曲げ,側曲げを実施した。
ここで表曲げ,裏曲げ,側曲げの各試験は、雌型と雄型とを有する治具を用いて所定寸法の板状の試験片を強制的に曲げ変形させるもので、それぞれの試験片の寸法は下記の通りである。
表曲げ:w19mm×t8.5mm×L200mm
裏曲げ:w19mm×t8.5mm×L200mm
側曲げ:w8.5mm×t8.5mm×L200mm
【0035】
表4の結果にみられるように、各比較例は耐コーキング性,耐浸炭性,曲げ強度の何れかが不十分であるのに対し、上記(A)溶加材,(B)溶加材を用いたNo.1〜No.24の実施例のものはそれぞれ耐コーキング性,耐浸炭性,曲げ強度の何れも良好な結果が得られている。
【0036】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は基材金属管12の外面に若しくは内面と外面との両方に肉盛溶接層14を積層形成した場合においても適用可能であるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において行った突合せ溶接の説明図である。
【符号の説明】
10 金属複合管
12 基材金属管
14 肉盛溶接層
【発明の属する技術分野】
この発明は化学プラント用配管、例えばナフサをクラッキングしてエチレン,塩化ビニル,エタン等の化学製品素材を製造する装置の反応管等に用いて好適な耐コーキング性に優れた金属複合管、詳しくは基材金属管の内面及び/又は外面に耐コーキング性の肉盛溶接層を積層形成した金属複合管の突合せ溶接継手に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
エチレン,塩化ビニル,エタン等の化学製品素材は、外側からバーナで高温に加熱した反応管の内部に原料ナフサを蒸気の形で通してこれを熱分解させることにより製造している。
この場合、反応管には耐熱性と耐コーキング性,耐浸炭性が要求される。
【0003】
ここでコーキングは、炭化水素の熱分解により炭素が生成して金属の表面、即ち反応管の表面に析出し堆積する現象であり、そしてこのようなコーキングによって炭素が金属表面から内部に拡散浸透して浸炭現象を生ずる。
而してこのような浸炭現象が生ずると金属管、即ち反応管の脆化がもたらされたり耐食性が低下して腐食が進行するなど反応管の劣化が促進されてしまう。
【0004】
この耐熱性と耐コーキング性,耐浸炭性とを、従来反応管等として用いられている金属単管でともに具備することは難しく、そこで下記特許文献1では、金属単管にCr−Ni−Mo系合金の肉盛溶接層を積層し複合化することによって耐熱性と併せてそれら耐コーキング性,耐浸炭性を持たせる点が開示されている。
【0005】
本発明者等はまた、Cr:20〜49重量%,Ni:35〜80重量%(以下何れも重量%)を主成分とし、更にAl,Siの1種又は2種をAl+Si合計で1.5〜5%含有して成る肉盛溶接層を金属単管に積層し複合化して成る金属複合管を案出し、先の特許願(特願2002−316759:未公開)において提案している。
【0006】
ところで、上記反応管は長さが数十mから長いものでは数千mにも及ぶものがあり、従ってこれを製造するには金属複合管を互いに接合することが必要不可欠である。
この場合金属複合管の接合部においても耐コーキング性,耐浸炭性が要求される。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−113389号公報
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属複合管の耐コーキング性に優れた溶接継手はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、基材金属管の内面及び/又は外面に耐コーキング性の肉盛溶接層を積層形成した金属複合管の突合せ溶接継手であって、前記肉盛溶接層を積層形成した前記内面及び/又は外面を、重量%でCr:36〜49%,Ni:35〜63%,Mo:0.5〜5%を含有した(A)溶加材、又はCr:20〜49%,Ni:35〜80%及びAl,Siの1種又は2種をAl+Si合計で1.5〜5%含有した(B)溶加材を用いて溶接するとともに、残部を前記基材金属管と同等成分の溶加材を用いて溶接したことを特徴とする。
【0009】
請求項2のものは、請求項1において、前記Niの一部若しくは全部をCoで置換したことを特徴とする。
【0010】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記(B)溶加材を用いた溶接部の不純物成分を、重量%でC:≦0.1%,N:≦0.3%,Mn:≦1.5%,Fe:≦10%に、(A)溶加材を用いた溶接部の不純物成分をC:≦0.1%,N:≦0.3%,Mn:≦1.5%,Fe:≦5%,P+S:≦0.02%,O:≦0.3%にそれぞれ規制したことを特徴とする。
【0011】
【作用及び発明の効果】
以上のように本発明は、金属複合管において耐コーキング性の肉盛溶接層を積層形成した内面若しくは外面又はその両面を、上記組成の(A)溶加材又は(B)溶加材を用いて溶接し、また残部を基材金属管と同等成分の溶加材を用いて突合せ溶接したもので、本発明によれば、金属複合管の接合部に対して良好な耐コーキング性,耐浸炭性を持たせることができる。
【0012】
本発明では、上記Niの一部若しくは全部をCoで置換しておくことができる(請求項2)。
また所定の不純物成分を上記請求項3に規定する範囲内に規制することができる。
【0013】
次に本発明における化学成分の限定理由を以下に詳述する。
(A)溶加材
Cr:36〜49%
耐酸化性を高める上で必要であるとともに、本発明で意図する耐コーキング性の実現に極めて重要な元素である。
こうした効果を得るためには通常36%以上の添加が必要である。
どちらの効果もCr量を高くすれば高まるが、49%を超えるとオーステナイト組織が不安定化になり、加工性が低くなって、曲げ加工等が困難になるから、合金としての実用性が低くなる。
【0014】
Ni:35〜63%
エチレン管のような高温の使用環境で組織を安定に維持し且つ意図する耐コーキング性を得るためには、多くの場合少なくとも35%のNiの存在を必要とする。
Ni量が増大すればそれに伴って効果も増すが、あまり多くしてもそれに対応するわけではなく、不経済になるので63%が実用上の上限である。
【0015】
Mo:0.5〜5%
溶着した金属における割れやブローホール等の欠陥を防止し、また靭延性を高めるために0.5%以上添加する。
但しMoは比較的少量の添加で効果が飽和するし、Mo量が過大になると却って高温における靭延性が低下するから5%までに止める。
【0016】
(B)溶加材
Cr:20〜49%
Crの有する働きは基本的に上記(A)溶加材と同様である。
但しAl,Siの1種又は2種を添加する(B)溶加材では下限値を20%とする。
【0017】
Ni:35〜80%
Niの働きについても基本的に上記(A)溶加材と同様である。
但しこの(B)溶加材では上限値を80%とする。
【0018】
Al+Si:1.5〜5%
Al,Siはそれぞれ酸素と結合して酸化膜を形成し、炭素の拡散浸透、即ち浸炭を抑制するように働く。
また併せて粒界において炭素の移動を抑制してその拡散浸透を抑える。
但し1.5%未満では粒界における炭素の移動の抑制の効果が少ない。一方5%超では延性が低下し、溶接継手部分で割れが発生する可能性がある。そこで本発明ではAl+Siを1.5〜5%とする。
【0019】
Co
Niはその一部若しくは全部をCoで置き換えることができ、置き換えても効果は変わらないか場合によっては耐コーキング性の一層の向上を得ることができる。
尤もCoは材料としてはNiより高価であり、置換えの意義はそれほど高くないから多量に置き換えることは得策とは限らない。通常はNi量の10%、高々50%止まりの置換えが有利である。
【0020】
不純物成分としてのC,N,Mn,Fe,P+S,O
Cは耐食性及び耐コーキング性にとって有害であり、またNの存在は溶接継手の硬質化,脆化をもたらす。
またMnは脱酸剤であるから不可避的に含まれることが多いが耐コーキング性にとって好ましくない。
またFeはコーキングを引き起す成分であり、低含有量とする。
更にP+Sは溶接継手の割れ感受性を高めて溶接性を低くする。
更にOは溶接継手内にブローホールを発生させ、溶接継手を多孔質とする危険がある。
以上のような理由でこれら不純物成分については上記請求項3に規定する範囲内に規制する。
【0021】
尚本発明は、耐熱性の基材金属管の内面若しくは外面又はその両面にCr:36〜49%,Ni:35〜63%,Mo:0.5〜5%を含有した肉盛溶接層を積層形成して成る金属複合管、或いはCr:20〜49%,Ni:35〜80%,Al+Si:1.5〜5%を含有した肉盛溶接層を積層形成して成る金属複合管の溶接継手として適用することができる。
【0022】
ここで耐熱性の基材金属管として以下のものを例示することができる。
・8%以上のCrを含有する鉄基合金、代表的な鋼種は、SUS403,SUS410,SUS304,SUS316,SUH3及びSUH4
・耐熱鋳鋼、代表的にはSCH15及びSCH16
・HK材、特にHK−40材(25Cr−20Ni−0.4C)
・HP材、特にHP−40材(25Cr−35Ni−0.4C)
・HP調整材(25Cr−35Ni−0.4C−Nb/W)
【0023】
【実施例】
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
図1における金属複合管10の基材金属管12を表1の化学組成を有するHP材にて構成し、その内面に表1に示す組成の肉盛粉末を粉末プラズマ溶接により溶接して、耐コーキング性の肉盛溶接層14を積層形成した。
【0024】
【表1】
【0025】
そして一対の金属複合管10を突合せ配置するとともに端部に開先16を加工形成し、同部分において一対の金属複合管10の内面を溶接接合、即ち肉盛溶接層14同士を表3に示す各種組成の溶加材を用いて突合せ溶接接合した。
【0026】
詳しくは表3に示す化学組成を与える溶加材1〜溶加材30を用いて内面層即ち初層を溶接接合し、そして残部(残りの層)を表2に示す組成の溶加材0、即ちHP材から成る母材(基材金属管12)と同等成分の溶加材0を用いて突合せ溶接接合して溶接継手とした。
【0027】
ここで突合せ溶接はTIG溶接(4層盛)により行った。
そしてその溶接継手の耐コーキング性,耐浸炭性及び曲げ強度の評価を行った。結果が表4に示してある。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
尚、金属複合管10は外径63.5mm,厚み8.5mm,長さ300mmで、内面に肉盛溶接層14を積層形成した後、金属複合管10における内周面を機械加工して最大面粗さ12.5μm以下としたものを用いた。
また耐コーキング試験,耐浸炭性試験,曲げ試験は以下に従って行った。
【0032】
<耐コーキング試験>
一対の金属複合管10を突合せ溶接した後、エチレン製造用の実験炉に入れ、温度1100℃に加熱した状態で管内にナフサを気化させて得た蒸気を流速0.5m/秒で通過させる試験を100時間続けた。
そして上記の流通試験が終わった後、一対の金属複合管10の接続管を冷却してその重量を測定し、そこから管自体の重量を差し引いて堆積した炭素量を求めた。
但しここでは溶接継手を10mm幅で切断し、その部分で試験前後の重量変化を求めて堆積した炭素量を求めた。
以下の耐浸炭性試験においても同様である。
【0033】
<耐浸炭性試験>
上記の接続管を固形浸炭剤「KG13」(デグサ社製)とともに加熱炉に入れ、温度1100℃に200時間加熱した。
そしてこれを取り出して、溶接継手における炭素の増加量を測定した。
【0034】
<曲げ試験>
曲げ試験はJIS Z 3122に準拠して行い、表曲げ,裏曲げ,側曲げを実施した。
ここで表曲げ,裏曲げ,側曲げの各試験は、雌型と雄型とを有する治具を用いて所定寸法の板状の試験片を強制的に曲げ変形させるもので、それぞれの試験片の寸法は下記の通りである。
表曲げ:w19mm×t8.5mm×L200mm
裏曲げ:w19mm×t8.5mm×L200mm
側曲げ:w8.5mm×t8.5mm×L200mm
【0035】
表4の結果にみられるように、各比較例は耐コーキング性,耐浸炭性,曲げ強度の何れかが不十分であるのに対し、上記(A)溶加材,(B)溶加材を用いたNo.1〜No.24の実施例のものはそれぞれ耐コーキング性,耐浸炭性,曲げ強度の何れも良好な結果が得られている。
【0036】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は基材金属管12の外面に若しくは内面と外面との両方に肉盛溶接層14を積層形成した場合においても適用可能であるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において行った突合せ溶接の説明図である。
【符号の説明】
10 金属複合管
12 基材金属管
14 肉盛溶接層
Claims (3)
- 基材金属管の内面及び/又は外面に耐コーキング性の肉盛溶接層を積層形成した金属複合管の突合せ溶接継手であって、
前記肉盛溶接層を積層形成した前記内面及び/又は外面を、重量%でCr:36〜49%,Ni:35〜63%,Mo:0.5〜5%を含有した(A)溶加材、又はCr:20〜49%,Ni:35〜80%及びAl,Siの1種又は2種をAl+Si合計で1.5〜5%含有した(B)溶加材を用いて溶接するとともに、残部を前記基材金属管と同等成分の溶加材を用いて溶接したことを特徴とする金属複合管の耐コーキング性に優れた溶接継手。 - 請求項1において、前記Niの一部若しくは全部をCoで置換したことを特徴とする金属複合管の耐コーキング性に優れた溶接継手。
- 請求項1,2の何れかにおいて、前記(B)溶加材を用いた溶接部の不純物成分を、重量%でC:≦0.1%,N:≦0.3%,Mn:≦1.5%,Fe:≦10%に、(A)溶加材を用いた溶接部の不純物成分をC:≦0.1%,N:≦0.3%,Mn:≦1.5%,Fe:≦5%,P+S:≦0.02%,O:≦0.3%にそれぞれ規制したことを特徴とする金属複合管の耐コーキング性に優れた溶接継手。
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