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JP6309576B2 - アルミナバリア層を有するエチレン製造用反応管 - Google Patents

アルミナバリア層を有するエチレン製造用反応管 Download PDF

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JP6309576B2 JP2016143108A JP2016143108A JP6309576B2 JP 6309576 B2 JP6309576 B2 JP 6309576B2 JP 2016143108 A JP2016143108 A JP 2016143108A JP 2016143108 A JP2016143108 A JP 2016143108A JP 6309576 B2 JP6309576 B2 JP 6309576B2
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Description

本発明は、アルミナバリア層を有する鋳造製品及びその製造方法に関するものであり、より具体的には、鋳造体どうしを溶接により接合してなるアルミナバリア層を有する鋳造製品及びその製造方法に関するものである。
エチレン製造用反応管や分解管、浸炭熱処理炉のハースロール、ラジアントチューブ、耐メタルダスティング材などの耐熱鋳鋼品では、高温雰囲気に曝されるため、高温強度にすぐれるオーステナイト系の耐熱合金が用いられている。
この種オーステナイト系耐熱合金では、高温雰囲気での使用中に表面に金属酸化物層が形成され、この酸化物層がバリアとなって、高温雰囲気下で母材を保護する。
一方、これら金属酸化物としてCr酸化物(主にCrからなる)が形成されてしまうと、緻密性が低いため、酸素や炭素の侵入防止機能が十分ではなく、高温雰囲気下で内部酸化を起こし、酸化物皮膜が肥大化する。また、これらCr酸化物は、加熱と冷却の繰り返しサイクルにおいて剥離し易く、剥離に到らない場合であっても、外部雰囲気からの酸素や炭素の侵入防止機能が十分でないから、皮膜を通過して母材に内部酸化や浸炭を生じる不都合がある。
これに対し、一般的なオーステナイト系耐熱合金よりもAlの含有量を増やすことで、緻密性が高く、酸素や炭素を透過し難いアルミナ(Al)を主体とする酸化物層を母材の表面に形成することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
しかしながら、Alはフェライト生成元素であるため、含有量が多くなると材料の延性が劣化して高温強度が低下してしまう。この延性の低下傾向は、特にAlの含有量が4%を越えると観察される。
このため、上記特許文献のオーステナイト系耐熱合金は、Alによるバリア機能の向上を期待することはできても、母材の延性低下を招来する不都合がある。
そこで、Al含有量を4%超にすることなくAlの高温安定性を確保することができ、さらに、材料の延性を低下させることなく、高温雰囲気下ですぐれたバリア機能を発揮することのできる鋳造製品を提供するために、特許文献3では、鋳造体の表面粗さ(Ra)が0.05〜2.5μmとなるように内面加工を行なった後、酸化性雰囲気下で熱処理を施すことにより、鋳造体の内面にAlを含むアルミナバリア層が形成され、アルミナバリア層と鋳造体との界面に母材基地よりもCr濃度の高いCr基粒子が分散した鋳造製品を提案している(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3の鋳造製品は、安定したアルミナバリア層の存在により、高温雰囲気下での使用において、すぐれた耐酸化性、耐浸炭性、耐窒化性、耐食性等を長期に亘って維持することができる。
特開昭51−78612号公報 特開昭57−39159号公報 国際公開第WO2010/113830号公報
ところが、アルミナバリア層を形成した鋳造製品を作製し、得られた鋳造製品どうしを溶接により接合した場合、溶接時の熱影響を受け易い所謂熱影響部に残留応力や歪みが生じる。この結果、予め形成されていたアルミナバリア層が一部剥離してしまう虞がある。
また、表面処理を施した鋳造製品どうしを溶接した後に、熱処理を行なうことでアルミナバリア層を形成することも考えられるが、この場合、特に溶接部において、Cr酸化物主体の金属酸化物が形成されてしまい、十分な耐浸炭性を有するアルミナバリア層を形成することができない。
従来技術では、アルミナバリア層が形成された鋳造体と比較し、アルミナバリア層が形成されない溶接部は、外部雰囲気からの酸素、炭素、窒素等の侵入を許し酸化、炭化、窒化等を長時間にわたって防止することができなかった。
本発明の目的は、上記問題点を解消する為、溶接部を含む鋳造体表面全体にアルミナバリア層が形成された鋳造製品及びその製造方法を提供することである。
本発明に係るエチレン製造用反応管は、
質量%にて、Cr15%以上Ni18%以上を含有し、Alを2〜4%含有する耐熱合金の第1鋳造体と第2鋳造体を溶接してなるエチレン製造用反応管であって、
第1鋳造体と第2鋳造体の溶接部は、厚み0.5μm以上のAlを含むアルミナバリア層で被覆されている。
アルミナバリア層は、第1鋳造体、溶接部及び第2鋳造体で連続的に繋がっていることが望ましい。
また、第1鋳造体と第2鋳造体は、質量%にて、C:0.05〜0.7%、Si:0%を越えて2.5%以下、Mn:0%を越えて3.0%未満、Cr:15〜50%、Ni:18〜70%、Al:2〜4%、希土類元素:0.005〜0.4%、並びに、W:0.5〜10%及び/又はMo:0.1〜5%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることが望ましい。
第1鋳造体と第2鋳造体は、さらに、質量%にて、Ti:0.01〜0.6%、Zr:0.01%〜0.6%及びNb:0.1〜3.0%の少なくとも一種を含有することが望ましい。
第1鋳造体と第2鋳造体は、さらに、質量%にて、B:0.01%を越えて0.1%以下を含有することが望ましい。
本発明の鋳造製品の製造方法によれば、第1鋳造体と第2鋳造体を溶接により接合した後に、表面処理を施すことで、溶接部の表面粗さを調整している。このとき、溶接により生じた熱影響部や溶金部分を含む溶接部だけでなく、第1鋳造体と第2鋳造体の表面も表面粗さを調整してもよい。
このように溶接部の表面粗さの調整を行なった後に熱処理を施すことで、熱影響部や溶金部分を含む溶接部にAlを含むアルミナバリア層を形成することができる。このとき、表面処理が施された第1鋳造体と第2鋳造体と溶接部を同時に熱処理できる。
従って、得られた鋳造製品は、第1鋳造体、第2鋳造体のみならず、溶接部に亘る連続した表面全体にAlを含むアルミナバリア層が形成されることとなるから、高温雰囲気での使用において、鋳造体表面だけでなく溶接部も、酸素、炭素、窒素等が侵入することを効果的に防止できる。
また、鋳造体の耐熱合金は、Al含有量が4%を超えていないので、延性低下は抑制され、すぐれた高温強度を具える。
このように、本発明の鋳造製品は、鋳造体の表面のみならず、溶接部にも安定したAlを含むアルミナバリア層が存在するから、高温雰囲気下での使用において、すぐれた繰返し耐酸化性、耐浸炭性、耐窒化性、耐食性等を長期にわたって維持することができる。
図1は、発明例の供試管No.4を軸方向に切断して撮影した断面写真である。 図2は、比較例の供試管No.13を軸方向に切断して撮影した断面写真である。 図3は、発明例の供試管No.4から得られた供試片を溶接部と垂直な断面写真である。 図4は、比較例の供試管No.13から得られた供試片を溶接部と垂直な断面写真である。 図5は、発明例の供試管No.4の断面SEM分析による写真である。 図6は、比較例の供試管No.13の断面SEM分析による写真である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、Cr15%以上Ni18%以上を含有し、Alを2〜4%含有する耐熱合金の第1鋳造体と第2鋳造体を溶接し、接合された第1鋳造体と第2鋳造体の溶接部に表面処理を施し、その後、溶接部に熱処理を施すことにより、溶接部がAlを含む所謂「アルミナバリア層」で形成された鋳造製品を得るものである。なお、本明細書において、「%」は、特に表示がないときは、全て質量%である。
<成分限定理由の説明>
Cr:15%以上
Crは、高温強度及び繰返し耐酸化性の向上への寄与の目的のため、15%以上含有させる。しかし、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は50%とする。なお、Crの含有量は23〜35%がより望ましい。
Ni:18%以上
Niは、繰返し耐酸化性及び金属組織の安定性の確保に必要な元素である。また、Niの含有量が少ないと、Feの含有量が相対的に多くなる結果、鋳造体の表面にCr−Fe−Mn酸化物が生成され易くなるため、アルミナバリア層の生成が阻害される。このため、少なくとも18%以上含有させるものとする。70%を超えて含有しても増量に対応する効果が得られないので、上限は70%とする。なお、Niの含有量は28〜45%がより望ましい。
Al:2〜4%
Alは耐浸炭性及び耐コーキング性の向上に有効な元素である。また、本発明では、鋳造体の表面にアルミナバリア層を生じさせるために必要不可欠の元素である。このため、少なくとも2%以上含有させる。しかし、含有量が4%を超えると、前述したように延性が劣化するため、本発明では上限を4%に規定する。なお、Alの含有量は2.5〜3.8%がより望ましい。
その他、下記の成分を含有することが好適である。
C:0.05〜0.7%
Cは、鋳造性を良好にし、高温クリープ破断強度を高める作用がある。このため、少なくとも0.05%を含有させる。しかし、含有量があまり多くなると、Crの一次炭化物が幅広く形成され易くなり、アルミナバリア層を形成するAlの移動が抑制されるため、鋳造体の表面部へのAlの供給不足が生じて、アルミナバリア層の局部的な寸断が起こり、アルミナバリア層の連続性が損なわれる。また、二次炭化物が過剰に析出するため、延性、靱性の低下を招く。このため、上限は0.7%とする。なお、Cの含有量は0.3〜0.5%がより望ましい。
Si:0%を超えて2.5%以下
Siは、溶湯合金の脱酸剤として、また溶湯合金の流動性を高めるために含有させるが、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は2.5%とする。なお、Siの含有量は2.0%以下がより望ましい。
Mn:0%を超えて3.0%以下
Mnは、溶湯合金の脱酸剤として、また溶湯中のSを固定するために含有させるが、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は3.0%とする。なお、Mnの含有量は1.6%以下がより望ましい。
希土類元素:0.005〜0.4%
希土類元素とは、周期律表のLaからLuに至る15種類のランタン系列に、YとScを加えた17種類の元素を意味するが、本発明の耐熱合金に含有させる希土類元素は、Ce、La及びNdからなる群のうち少なくとも一種以上が含まれることが好ましい。この希土類元素は、アルミナバリア層の生成と安定化の促進に寄与する。
アルミナバリア層の生成を高温の酸化性雰囲気下での加熱処理によって行なう場合は、希土類元素を0.005%以上含有させることでアルミナバリア層生成に有効に寄与する。
一方、あまりに多く含有すると、延性、靱性が悪化するので、上限は0.4%とする。
W:0.5〜10%及び/又はMo:0.1〜5%
W、Moは、基地中に固溶し、基地のオーステナイト相を強化することにより、クリープ破断強度を向上させる。この効果を発揮させるために、W及びMoの少なくとも一種を含有させるものとし、Wの場合は0.5%以上、Moの場合は0.1%以上含有させる。
しかし、W及びMoは、含有量があまり多くなると、延性の低下や、耐浸炭性の劣化を招く。また、Cが多い場合と同じように、(Cr,W,Mo)の一次炭化物が幅広く形成され易くなり、アルミナバリア層を形成するAlの移動が抑制されるため、鋳造体の表面部分へのAlの供給不足が生じ、アルミナバリア層の局部的な寸断が起こり、アルミナバリア層の連続性が損なわれ易くなる。また、WやMoは原子半径が大きいため、基地中に固溶することにより、AlやCrの移動を抑制してアルミナバリア層の生成を妨げる作用がある。
このため、Wは10%以下、Moは5%以下とする。なお、両元素を含有する場合でも、合計含有量は10%以下とすることが好ましい。
Ti:0.01〜0.6%、Zr:0.01〜0.6%及びNb:0.1〜3.0%の少なくとも一種
Ti、Zr及びNbは、炭化物を形成し易い元素であり、WやMoほど基地中には固溶しないため、アルミナバリア層の形成には特段の作用は認められないが、クリープ破断強度を向上させる作用がある。必要に応じて、Ti、Zr及びNbの少なくとも一種を含有させることができる。含有量は、Ti及びZrが0.01%以上、Nbが0.1%以上である。
しかし、過剰に添加すると、延性の低下を招く。Nbは、さらに、アルミナバリア層の耐剥離性を低下させる。このため、上限は、Ti及びZrは0.6%、Nbは3.0%とする。
B:0.1%以下
Bは、鋳造体の粒界を強化する作用があるので、必要に応じて含有させることができる。なお、含有量が多くなるとクリープ破断強度の低下を招くため、添加する場合でも0.1%以下とする。
本発明の鋳造体を構成する耐熱合金は、上記成分を含み、残部Feであるが、合金の溶製時に不可避的に混入するP、Sその他の不純物は、この種の合金材に通常許容される範囲であれば存在しても構わない。
<鋳造体>
本発明の鋳造製品を構成する第1鋳造体及び第2鋳造体は、溶湯を溶製し、遠心力鋳造、静置鋳造等により上記組成に鋳造される。
得られた第1鋳造体及び第2鋳造体は、溶接接合を行なうことで目的とする用途に応じた形状とすることができる。
なお、溶接を行なう前に、必要に応じて開先加工等を施すこともできる。
また、本発明において溶接方法や溶接時に用いられる溶接棒の組成は制約されるものではなく、本発明の鋳造体を溶接可能な方法として、TIG溶接、アーク溶接等が例示できる。
溶接により接合された鋳造体には、事前の表面処理の有無に関らず、その接合部分に熱影響部と溶金部を含む溶接部が形成される。この熱影響部には、残留応力や歪みが生じており、熱影響部の歪み線を伝ってCrが移動し、Cr酸化物が優先されて出来易く、Alが出来難い。
このような溶接部には、後工程にて熱処理を施したとしても、アルミナバリア層を構成するAlを十分に形成することはできない。
そこで、本発明では、鋳造体どうしを溶接した後、製品使用時に高温雰囲気と接触することとなる対象部位に表面処理を行ない、該部位の表面粗さを調整した上で、酸化雰囲気中での加熱処理を行なうようにしている。
<表面処理>
表面処理は、研磨処理を例示することができる。この表面処理は、製品使用時に高温雰囲気と接触することとなる対象部位の全体に行なうことが望ましい。ただし、対象部位全体を同時に行う必要はなく、溶接部以外は予め表面処理等を行なって表面粗さを調整し、溶接部のみ又は溶接部とその近傍のみに表面処理を施してもよい。
表面処理は、対象部位の表面粗さ(Ra)が0.05〜2.5μmとなるように実施することができる。より望ましくは、表面粗さ(Ra)は0.5〜1.0μmとする。表面粗さ(Ra)が0.05μm未満であると、CrがAlに優先して酸化するが、0.05μm以上であると、Cr酸化物スケールの生成を抑えることができ、続く熱処理によりより好適にアルミナバリア層を形成することができる。2.5μm以上となると加工歪みが発生することによってCr酸化物スケールが生成されやすくなると考えられる。また、このとき表面処理により表面粗さを調整することによって、熱影響部の残留応力や歪みも同時に除去することができる。
表面処理を研磨処理により行なう場合、番手12〜220にてペーパー研磨を行なった後、さらに番手240〜1200にて仕上げ研磨することが望ましい。
酸処理の場合、対象部位を腐食液に所定時間浸漬することや、腐食液を塗布することで表面処理を行なうことができる。酸処理に用いられる酸には、酸以外にもアルコールを含んでいてもよい。なお、酸処理の後、対象部位に付着している腐食液は水洗い等により洗浄することが望ましい。
<熱処理>
溶接により接合された鋳造体に表面処理を施した後、以下の条件の熱処理を行なう。
熱処理は、酸化性雰囲気下にて加熱処理を施すことで実施される。
酸化性雰囲気とは、酸素を20体積%以上含む酸化性ガス、又はスチームやCOが混合された酸化性環境である。また、加熱処理は、900℃以上、好ましくは1000℃以上、より好ましくは1050℃以上の温度で行ない、加熱時間は1時間以上である。
<鋳造製品>
上記のように、溶接部に対して、溶接、表面処理及び熱処理を順に行なうことで、溶接により生ずる鋳造体の熱影響部と溶金部を含む溶接部にアルミナバリア層が安定して形成された鋳造製品を得ることができる。
<アルミナバリア層>
本発明の鋳造製品に形成されるAlを含むアルミナバリア層は、緻密性が高く、外部から酸素、炭素、窒素の母材への侵入を防ぐバリアとしての作用を有する。本発明では、上述のように、鋳造体を、目的とする用途の鋳造体どうしを溶接した後、製品使用時に高温雰囲気と接触することとなる部位に表面処理を行ない、該部位の表面粗さを調整し、その後に、前記部位を酸化性雰囲気中で加熱処理することにより、鋳造製品の溶接部を挟んで連続する前記表面に、アルミナバリア層として、連続してAlが形成されるようにする。これにより、鋳造体の表面にアルミナバリア層が形成されるだけでなく、溶接により鋳造体の突合せ面に生じる熱影響部を含む溶接部にもアルミナバリア層を形成することができる。
鋳造体に形成されるアルミナバリア層の厚さは、バリア機能を効果的に発揮するために、0.05μm以上3μm以下に形成され、平均1μm程度となることが好適である。より望ましくは、アルミナバリア層の厚さは、0.5μm以上1.5μm以下である。
上記Cr−Ni−Al系耐熱合金の組成を有する鋳造体は、溶接を行なった後、表面処理することなく酸化性雰囲気下で加熱処理を行なうと、特に表面粗さの大きい溶接部にアルミナバリア層が形成されない。このため、溶接部から酸化や浸炭等の影響を受ける。
また、鋳造体の最表面にCrを主体とするCr酸化物スケールが分散して形成されて、前述したように剥離し易く、剥離する際にその下にあるアルミナバリア層が一緒に剥がれることもある。
そこで、本発明では、上述のとおり、鋳造体どうしを溶接した後に、熱処理によるアルミナバリア層形成前の鋳造製品の表面処理によって表面粗さを調整することにより、溶接により生ずる鋳造体の熱影響部を含む溶接部にアルミナバリア層を安定して形成することができる。
なお、本発明の鋳造製品の表面をSEM/EDXで調べたとき、アルミナバリア層の上にCr酸化物スケールが一部形成されることがある。その理由として、アルミナバリア層の内部に形成されたCr酸化物スケールが、Alにより製品表面まで押し上げられるからである。しかしながら、この酸化物スケールは少ない方がよく、製品表面の20面積%未満となるようにして、Alが80面積%以上を占めるようにすることが好適である。
高周波誘導溶解炉の大気溶解により溶湯を溶製し、金型遠心力鋳造により、下記表1に掲げる合金化学組成の管体(外径59mm、肉厚8mm、長さ3000mm)を夫々2本ずつ鋳造し、管体の一辺に開先加工を施して、対となる同じ組成の管体どうしを突合せ溶接により接合した。
なお、表1中、「REM」は希土類元素を表わす。
得られた供試管は、供試管No.1は参考例、供試管No.2〜No.8が本発明の実施例、供試管No.11〜No.13が比較例である。より具体的には、比較例は、供試管No.11が本発明の合金化学組成に対してAlを多く含む比較例、供試管No.12は本発明の合金化学組成に対してNiが少ない比較例、供試管No.13は合金化学組成が本発明に含まれるが、溶接部に表面処理を施していない比較例である。
<表面処理>
これら供試管に対し、管内面側の溶接部を中心として幅方向に約20mm〜40mmの範囲に粗加工であるスカイビングを行なった。
さらに、供試管No.1〜No.8、No.11及びNo.12(即ち、供試管No.13以外)については、ペーパー研磨による表面処理を行なった。
各供試管の溶接部における表面粗さ(Ra)を表1に示している。
<熱処理前の目視観察>
発明例である供試管No.4と、比較例である供試管No.13について、供試管を軸方向に切断した写真を夫々図1及び図2に示す。
図1と図2を比較すると、本発明例である供試No.4は、溶接部に光沢があり、面処理により溶接部の凹凸が低減していることがわかる。
<熱処理>
表面処理の後、すべての供試管について、大気中(酸素約21%)、1000℃、10時間の加熱を施し、加熱後、炉冷する処理を行なった。
<表面測定>
前記処理を行なった後の各試験管について、溶接部を含む幅20mm×長さ30mmの供試片を切り出し、供試片の内側の溶接部に形成されたアルミナバリア層の皮膜厚さ(μm)とAlの面積率(%)を測定した。その測定方法を以下に示し、また、これらの測定結果を表2中に「皮膜厚さ」、「面積率」として記載している。
<皮膜厚さの測定>
供試片の溶接部表面に対するアルミナバリア層の層厚の測定は、SEM(走査型電子顕微鏡)により行なった。なお、アルミナバリア層が生成されなかったもの、アルミナバリア層の一部に厚さ0.05μm未満(厚さゼロを含む)の箇所が断続的に存在するものは、表2中、「N」の文字を付している。
<皮膜の面積率測定>
供試片の溶接部表面に対するAlの面積率は、SEM/EDX(走査型分析電子顕微鏡)測定試験機を用いた。測定は、供試片の溶接部表面の1.35mm×1mmの領域について実施し、Alの分布状況を面分析して、その分布量を面積率に換算した。
<延性試験>
供試管から引張試験片をJIS Z2201に準拠して試験片を作製し、延性試験を行なった。
具体的には、試験片は、溶接部を含む平行部径10mm、平行部長さ50mmを加工し、JIS Z2241の金属材料引張試験方法に従って延性試験を行なった。なお、試験は室温で行なったが、その理由は、高温で行なうよりも差が明確に現れるためである。
上記各試験の結果を表2に示す。なお、表2中、「−」の表示は、測定又は試験を行わなかったことを示す。
<試験結果の考察>
表2を参照すると、参考例である供試管No.1、発明例である供試管No.2〜No.8は、比較例である供試管No.11〜No.13に比して、アルミナバリア層の皮膜厚さ及び面積率は何れも良好であることが判る。
発明例について考察すると、皮膜厚さは、何れも0.5μm以上3μm以下の好適な範囲に入っていることが判る。また、引張延性も十分であることが判る。
発明例どうしを比較したときに、供試管No.7及びNo.8は、皮膜厚さ及び面積率の点で他の発明例に比べて劣るが、これは、供試管No.7の表面処理による表面粗さが粗く、供試管No.8の表面処理における表面粗さが細かすぎるためである。従って、溶接部のアルミナバリア層が80面積%以上となるには、溶接部に施す表面処理は、表面粗さ(Ra)を0.05〜2.5μmとすることが好適であることが判る。
一方、比較例については、供試管No.11は、好適なアルミナバリア層が形成されているが、引張延性の点で劣る。これは、合金化学組成中のAlの含有量が4%を越えているためである。従って、Alの含有量は4%以下が好適であることあることが判る。
また、供試管No.12及びNo.13は、十分なアルミナバリア層が形成されていない。供試管No.12は、合金化学組成中のNiの含有量が18%よりも低いためであり、その結果、Feの含有量が相対的に多くなり、鋳造体の表面にCr−Fe−Mn酸化物が生成され易くなって、アルミナバリア層の生成が阻害されたためである。供試No.13は、合金化学組成は本発明の範囲に含まれるが、表面処理を行わなかった結果、表面粗さが粗く、アルミナバリア層の生成が阻害されたためである。
上記より、発明例である供試管は、比較例である供試管に比して、好適なアルミナバリア層が形成されていることがわかる。
<断面分析>
また、本発明の実施例である供試管No.4と、比較例である供試管No.13から得られた供試片について、溶接部に対して垂直な断面写真を撮影すると共に、断面SEM分析を行なった。断面SEM分析に際し、供試片にNiメッキを施して、ステンレス鋼シートで覆い、さらにその上から樹脂被覆を施した。
得られた発明例と比較例の断面写真を夫々図3及び図4に、発明例と比較例の断面SEM分析による拡大写真を夫々図5及び図6に示す。
図を参照すると、発明例は、皮膜厚さ0.5μmのアルミナバリア層が基材の表面に均一に形成されていることがわかる。一方、比較例は、表面の凹凸が大きく、アルミナバリア層が上手く形成されていないことが判る。
これら断面写真からも本発明の優位性が理解されるであろう。
上記実施例に示されるように、本発明の鋳造体は、溶接部に表面処理を施した後、熱処理を行なったことで、溶接部を含めた鋳造体の表面全体に均一なアルミナバリア層を形成できるから、外部雰囲気からの酸素、炭素、窒素等の侵入は効果的に防止され、溶接部を含む鋳造体全体として、高温におけるすぐれた繰返し耐酸化性、耐浸炭性、耐窒化性、耐食性等を長期にわたって維持することができる。
本発明は、溶接部にもアルミナバリア層が形成された鋳造製品及びその製造方法として有用である。

Claims (4)

  1. 質量%にて、Cr15%以上Ni18%以上を含有し、Alを2〜4%含有する耐熱合金の第1鋳造体と第2鋳造体である管体どうし突合せ溶接してなるエチレン製造用反応管であって、前記管体の管内面側の溶接部は、表面粗さ(Ra)が0.05〜2.5μmであって、表面が厚み0.5μm以上のAlを含むアルミナバリア層で被覆されており、前記アルミナバリア層は、前記管体の管内面側で連続的に繋がっている、
    ことを特徴とするエチレン製造用反応管。
  2. 第1鋳造体と第2鋳造体は、質量%にて、C:0.05〜0.7%、Si:0%を越えて2.5%以下、Mn:0%を越えて3.0%未満、Cr:15〜50%、Ni:18〜70%、Al:2〜4%、希土類元素:0.005〜0.4%、並びに、W:0.5〜10%及び/又はMo:0.1〜5%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる請求項1に記載のエチレン製造用反応管。
  3. 第1鋳造体と第2鋳造体は、さらに、質量%にて、Ti:0.01〜0.6%、Zr:0.01%〜0.6%及びNb:0.1〜3.0%の少なくとも一種を含有する請求項に記載のエチレン製造用反応管。
  4. 第1鋳造体と第2鋳造体は、さらに、質量%にて、B:0.01%を越えて0.1%以下を含有する請求項又は請求項に記載のエチレン製造用反応管。
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