JP2004246459A - 指紋画像間の回転ズレ角算出方法及び指紋画像照合装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】背景領域を有しない指紋画像であっても、指紋画像間の回転ズレを補正することを可能とする。
【解決手段】まず、照合対象となっている2つの指紋画像のx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を求める。つぎに、照合対象となっている一方の指紋画像の中心(基準点)を決め、他方の指紋画像の中心を位置ズレ量(δx,δy)で補正する。一方の指紋画像と補正された他方の指紋画像から回転方向のスペクトルパターンを求める。そして、回転方向のスペクトルパターンを移動照合することで、照合対象となっている2つの指紋画像の回転ズレ角δθを求める。
【選択図】 図1
【解決手段】まず、照合対象となっている2つの指紋画像のx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を求める。つぎに、照合対象となっている一方の指紋画像の中心(基準点)を決め、他方の指紋画像の中心を位置ズレ量(δx,δy)で補正する。一方の指紋画像と補正された他方の指紋画像から回転方向のスペクトルパターンを求める。そして、回転方向のスペクトルパターンを移動照合することで、照合対象となっている2つの指紋画像の回転ズレ角δθを求める。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、指紋画像の照合を行なう指紋照合技術に関し、詳しくは、照合される指紋画像間の回転ズレを補正するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】指紋照合装置では、指紋採取部への指の置き方によって採取される指紋画像が異なるものとなる。例えば、指紋採取部に対して異なる向きで指が置かれると、得られた指紋画像の間には回転ズレが発生する。照合する指紋画像間に回転ズレがあると、両指紋画像が同一指から採取されたものであっても同一と判断されないことが生じる。このため、従来から指紋画像間の回転ズレを補正するための技術が開発されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。前者の文献に開示された技術では、指紋画像(指紋領域と背景領域を含むもの)が入力される入力層と、指紋の重心位置(x,y)と傾きθを出力する出力層と、入力層と出力層を接続する中間層とでニューラルネットワークが構築される。学習用データには傾いていない指紋画像を使用し、その指紋画像の位置と傾きを人工的に変えながら学習を行わせる。学習後のニューラルネットワークに指紋画像を入力すると、その指紋画像の傾きが出力される。各指紋画像の傾きが分かれば、それらの値から指紋画像間の回転ズレ角を算出することができる。
一方、後者の文献に開示された技術では、指紋画像を指紋が写っている指紋領域と、それ以外の背景領域に分類する。次に、指紋領域と背景領域の境界線(すなわち、指紋領域の輪郭線)を楕円に近似する。そして、近似された楕円についてその傾きを求め、その求めた傾きを指紋画像の傾きとする。この方法によっても、各指紋画像の傾きが求められ、それらの傾きから指紋画像間の回転ズレ角を算出することができる。
なお、指紋照合とは異なる画像(例えば印鑑画像)に対して回転補正を行う技術として特許文献3に開示された技術も知られている。この技術では、照合する2つの印鑑画像にそれぞれエッジ強調・2値化処理を行い、処理後の画像からエッジ上の点を抽出する。そして、その抽出されたエッジ上の点に対してハフ変換・フーリエ変換を行い、変換後のパターンを照合することで回転ズレ角を算出する。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−76144
【特許文献2】
特開2001−76145
【特許文献3】
特開平9−245167号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した特許文献1と特許文献2の技術では、指紋画像毎に傾きを求めなければならず、傾きを求めるためには対象となる指紋画像に指紋領域と背景領域が含まれていることが条件となる。このため、指紋採取部の面積が小さい等の理由によって背景領域を有しない指紋画像の場合は、その傾き(ひいては、指紋画像間の回転ズレ角)を求めることができないという問題があった。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、背景領域を有しない指紋画像でもそれら指紋画像間の回転ズレを補正することが可能となる技術を提供する。
【0005】
なお、特許文献3に開示された技術については、採取した原画像にエッジ強調処理や2値化処理を施さなければならない。このような前処理は原画像から重要な情報(指紋隆線情報)を取り除いてしまう可能性があり、これによって回転ズレ角が算出できない場合が生じ得る。したがって、この方法を指紋画像の回転ズレ補正に用いることはできない。
また、指紋画像から抽出されるマニューシャ(特徴点)により指紋画像の回転ズレを補正することも考えられる。すなわち、各指紋画像からマニューシャを抽出し、対応するマニューシャの相対的な位置関係から回転ズレを補正する。しかしながら、マニューシャを用いる方法では各指紋画像からマニューシャを抽出するための処理(例えば、2値化、細線化、マニューシャ抽出)が必要となり、処理に時間を要してしまう。
【0006】
【課題を解決するための手段と作用と効果】上記課題を解決するために創作された本願発明の方法は、指紋画像間の回転ズレ角を算出する方法であって、一方の指紋画像に対しては、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第1のスペクトルパターンを取得し、他方の指紋画像に対しては、その指紋画像内において前記第1基準点と対応する第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第2のスペクトルパターンを取得し、取得された第1のスペクトルパターンに対して第2のスペクトルパターンを回転方向に所定角度範囲内でずらしながら相関度を算出し、相関度が最大となるときのズレ角を指紋画像間の回転ズレ角に決定する。
上記の方法では、一方の指紋画像については第1基準点を中心とし、他方の指紋画像については第2基準点(第1基準点に対応する点)を中心とし、それぞれ回転方向のスペクトルパターンを取得する。そして、2つのスペクトルパターンを回転方向にずらしながら相関度を算出し、相関度が最大となるときのズレ角を指紋画像間の回転ズレ角とする。したがって、この方法では一方の指紋画像に対する他方の指紋画像の相対的な回転ズレ角を直接求めるようにしているため(すなわち、両指紋画像の傾きを個別には求めていないため)、背景領域を有していない指紋画像同士であっても回転ズレ角を算出することができる。
なお、対象となる2つの指紋画像が同一指から採取されたものではない場合は、上記方法により得られた回転ズレ角は実際の回転ズレ角とは異なるものとなる。しかしながら、このような場合はもともと2つの指紋画像が異なるものと判定されるべき場合であって、指紋画像間の回転ズレ角を正確に算出する意義もないので問題は生じない。
【0007】
上記の方法において、指紋画像間のx−y方向の位置ズレが無視できるような場合(例えば、指紋採取面に指をガイドする指ガイドが設けられている場合等)には、他方の指紋画像において基準となる第2基準点は予め設定しておくことができる。ただし、指紋画像間のx−y方向の位置ズレが無視できない場合(例えば、指ガイドがある場合でもより照合精度が要求されるとき)には、次に記載する構成を採用することが好ましい。
すなわち、前記第2基準点は、2つの指紋画像間のx−y方向の位置ズレ量によって第1基準点を補正することで得られる。このような構成によると、2つの指紋画像のx−y方向の位置ズレの影響を排除して回転ズレ角を算出することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するために創作された本願発明の装置は、識別対象者から採取した指紋画像と登録されている指紋画像を照合することで識別対象者が登録者か否かを判別する指紋照合装置であって、指紋を採取して指紋画像を出力する指紋画像採取手段と、採取された指紋画像と登録されている指紋画像とを照合する手段とを備える。
そして、指紋照合手段は、採取された指紋画像と登録指紋画像のx−y方向の位置ズレ量を算出し、照合する一方の指紋画像に対しては、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第1のスペクトルパターンを取得し、照合する他方の指紋画像に対しては、算出されたx−y方向の位置ズレ量を用いて第1基準点を補正することで第2基準点を求め、その第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第2のスペクトルパターンを取得し、取得された第1のスペクトルパターンに対して第2のスペクトルパターンを回転方向に所定角度範囲内でずらしながら相関度を算出し、相関度が最大となるときのズレ角と算出されたx−y方向の位置ズレ量とを用いて照合する指紋画像間の回転ズレ及び位置ズレを補正して2つの指紋画像が同一か否かを判定する。
上記の装置では、採取された指紋画像と登録されている指紋画像の相対的な位置ズレや回転ズレが補正されてから同一性が判定されるため、同一指に係る指紋画像同士が異なる指紋画像と判定される確率を低くすることができる。
【0009】
また本願は、2つの指紋画像を照合するための指紋照合方法を提供する。
すなわち、本願に係る方法は、(1)一方の指紋画像に対して、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させることで得られる走査線群の濃度値分布を取得する工程と、(2)他方の指紋画像に対して、その指紋画像内において前記第1基準点と対応する第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させることで得られる走査線群の濃度値分布を取得する工程と、(3)第1の画像から取得された濃度値分布から回転方向に関して第1の特徴情報を抽出する工程と、(4)第2の画像から取得された濃度値分布から回転方向に関して第2の特徴情報を抽出する工程と、(5)抽出された第1の特徴情報に対して第2の特徴情報を回転方向に所定角度でずらしながら相関度を算出する工程とを有する。この方法では、指紋画像内の対応する基準点(第1基準点と第2基準点)を中心に走査線を回転させることによって指紋画像から濃度値分布を得ている。このため、各指紋画像から得られた2つの濃度値分布は、x方向,y方向にズレはなく、回転方向にのみズレているだけとなる。そして、2つの濃度値分布からそれぞれ回転方向に特徴情報を抽出し、この特徴情報を回転方向にずらしながら相関度を算出する。したがって、算出された相関度の最大値は回転方向のズレまで補正されたもの、すなわち2つの指紋画像のズレ(x方向,y方向,回転方向)が補正されたものとすることができる。
なお、濃度値分布から抽出する「特徴情報」としては、パターン照合に使用することができる種々の情報を用いることができる。例えば、走査線上の指紋隆線部分の間隔(ピッチ)をパターン化したピッチパターンや、走査線と指紋隆線との交差数や、各走査線の指紋隆線長さをパターン化した最長隆線分布波形(特開平7−57085号参照)を用いることができる。
【0010】
上述したように、上記の方法で算出された相関度の最大値は回転方向のズレが補正されたものとなることから、その相関度により2つの指紋画像の同一性を判定することもできるし、2つの指紋画像の回転ズレ角を算出することもできる。すなわち、上記の方法において、算出された相関度のうち最大のものが所定の閾値を超えるときに、2つの指紋画像を同一指から採取したものであると決定することができる。
また、上記の方法において、算出された相関度が最大となるときの2つの特徴情報のズレ角を2つの指紋画像間の回転ズレ角に決定することもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の回転ズレ角算出方法を用いた一実施形態に係る指紋画像の位置ズレ補正方法について図面を参照して説明する。
まず、図1に基づいて本実施形態に係る位置ズレ補正方法の概要を説明する。同図中、左列1段目に示される指紋画像1と右列1段目に示される指紋画像2はいずれも同一人の同一指から採取した指紋画像であって、位置ズレ補正処理前のものである。また、図中2段目以降には、両指紋画像の位置ズレを補正する過程で得られる画像をそれぞれ示している。
図1に示すように、指紋画像2は、指紋画像1に対して位置ズレ(x方向,y方向,θ方向)が生じている。この位置ズレを補正するために、指紋画像1に対する指紋画像2の位置ズレ量(x方向,y方向,θ方向)を算出する必要が生じる。
本実施形態では、まず、指紋画像1に対する指紋画像2のx方向(水平方向)とy方向(直角方向)の位置ズレ量(δx,δy)を算出する。位置ズレ量(δx,δy)を算出する方法としては、例えば、各指紋画像から抽出したx方向とy方向の群遅延スペクトル(以下、GDSという)を移動照合する方法を用いることができる。指紋画像からGDSを算出する手順及び2つのGDSを移動照合する手順については後で詳述する。位置ズレ量(δx,δy)が算出されると、その位置ズレ量(δx,δy)を用いて指紋画像2の位置補正を行う。位置補正を行った後の指紋画像2が図1の右列2段目に示されている。図から明らかなように、2段目に示されている指紋画像2は、1段目に示されている指紋画像2に対してx軸方向にδx移動し、y軸方向にδy移動している。
x方向とy方向の位置ズレが補正されると、次に、指紋画像1に対する指紋画像2の回転方向の位置ズレ量(回転ズレ角δθ)を算出する。回転ズレ角δθを算出するためには、まず、指紋画像1と位置ズレ補正後の指紋画像2からそれぞれ回転指紋波形パターンを求め、次いで、それら回転指紋波形パターンから群遅延スペクトル(以下、回転GDSという)を算出する。図1の3段目には、2段目に示す指紋画像から抽出した回転指紋波形パターン(左側)と回転GDS(右側)が併せて示されている。指紋画像から回転指紋波形パターンを作成する手順及び回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する手順については後で詳述する。
各回転指紋波形パターンから回転GDSがそれぞれ算出されると、δx,δyの場合と同様に、それらを移動照合することで回転ズレ角δθを算出する。回転ズレ角δθを算出する手順は、2つのGDSからx方向又はy方向の位置ズレ量を算出する手順と同様の手順で行うことができる。回転ズレ角δθが算出されると、その回転ズレ角δθを用いて指紋画像2の位置補正を行う。回転方向の位置補正後の指紋画像2が図1の最下段に示されている。図から明らかなように、位置補正後の指紋画像2(最下段に示される画像)は位置補正前の指紋画像(2段目に示される画像)に対してδθだけ回転している。
【0012】
以上、本実施形態の概要を述べたが、次にその詳細を説明する。まず、2つの指紋画像(指紋画像1と指紋画像2)間のx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を算出する手順について、図2〜図5を用いて説明する。
図2は指紋センサ等によって採取される指紋画像データの構成を説明するための図である。図2に示すように、採取される指紋画像データは、x方向にnドット、y方向にmドットのn×mドットの2次元データである。各ドット(座標値(a,b)で表す(0≦a≦n−1、0≦b≦m−1))の濃淡はディジタル値dで表される。
【0013】
図3(a)には、採取された指紋画像データ、その指紋画像データから抽出されたx方向とy方向のGDSが併せて示されている。指紋画像データからGDS(x方向とy方向)を算出するためには、まず、指紋画像データ(n×mドット)をx方向に延びるm本の走査線に分解し、また、y方向に延びるn本の走査線に分解する。
次に、x方向の各走査線について、当該走査線上の濃度値変化(走査線上の各点の左端点からの距離(x座標の値)とその濃度値dとの関係)を求める。y方向の各走査線についても同様に、走査線上の濃度値変化(走査線上の各点の上端点からの距離(y座標の値)とその濃度値dとの関係)を求める。走査線上の濃度値変化の一例が図3(b)に示されている。指紋隆線上の点は濃度値が高く(暗く)、指紋谷線上の点は濃度値が低く(明るく)なるため、図3(b)に示すように走査線上の濃度値は周期的に変化している。
【0014】
x方向とy方向の各走査線について濃度値変化が求まると、その濃度値変化を時系列信号とみなして周波数変換処理を行い、x方向とy方向のそれぞれについてGDSパターンを算出する。具体的には、走査線毎に周波数変換処理を行い、全ての走査線からGDSデータを算出する。図4は、1本の走査線から抽出したGDSデータの一例を示している。図4に示すように、1本の走査線からは周波数チャンネル(ch,0≦ch≦15)毎に複数のGDSデータ(GDS強度)が算出される。
なお、指紋画像データはx方向にm本、y方向にn本の走査線に分解される。したがって、本明細書では抽出されたGDS強度をx方向又はy方向の走査線番号(i)と周波数チャンネル(ch)によって決まる関数として定義する。
GDS=GDS(i,ch)
以下、指紋画像をx方向の走査線に分解し、分解された各走査線から抽出された全GDSデータ〔すなわち、GDS(i,ch)(0≦i≦m−1,0≦ch≦15)〕をx方向のGDSパターンといい、指紋画像をy方向の走査線に分解し、分解された各走査線から抽出された全GDSデータ〔すなわち、GDS(i,ch)(0≦i≦n−1,0≦ch≦15)〕をy方向のGDSパターンという。
上述した手順で抽出されたx方向とy方向のGDSパターンをGDS強度に応じて濃淡を付けて(すなわち、GDS強度が大きい部分を濃く、GDS強度が小さい部分を淡く)二次元的に表したものが、図3(a)に示されている。すなわち、x方向のGDSパターンが指紋画像の右側方に表示され、y方向のGDSパターンが指紋画像の下方に表示されている。
【0015】
上述した手順で指紋画像1と指紋画像2のそれぞれからx方向とy方向のGDSパターンが算出されると、これらを用いて2つの指紋画像間のx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を算出する。位置ズレ量を算出する手順の一例を図5を用いて説明する。
なお、x方向の位置ズレ量δxはy方向のGDSパターンを用いて算出し、一方、y方向の位置ズレ量δyはx方向のGDSパターンを用いて算出する。x方向の位置ズレ量δxを算出する手順とy方向の位置ズレ量δyを算出する手順は、用いるGDSパターンが異なるだけで手順自体は同様である。したがって、以下の説明では、x方向の位置ズレ量δxを算出する手順についてのみ述べる。
【0016】
x方向の位置ズレ量δxの算出は、まず、一方のGDSパターン(例えば、指紋画像1から抽出したy方向のGDSパターン)を他方のGDSパターン(例えば、指紋画像2から抽出したy方向のGDSパターン)に対してx方向に複数の位置にずらし、各位置で2つのGDSパターンの非類似度を算出する(いわゆる、移動照合を行う)。図5(b)に示す2つのy方向のGDSパターンについて非類似度を算出した例が、図5(a)に示されている。図5(a)では、非類似度(本実施形態では、距離distという)を縦軸とし、2つのGDSパターンのズレ量(本実施形態では、ズレ幅wdという)を横軸としている。図5(a)から明らかなように、一方のGDSパターンに対して他方のGDSパターンを−30走査線〜+30走査線の範囲内でずらし、この範囲内において非類似度(すなわち、距離dist)が算出されている。
所定の範囲内でずらしたときの距離distが算出されると、距離distが最小となるときのズレ幅wdを特定する。特定されたズレ幅は、2つの指紋画像のx方向の位置ズレ量δxとなる。すなわち、同一指に係る2つのGDSパターンにおいては、2つの指紋画像の指の中心のずれが大きくなるほど2つのGDSパターンの距離distは大きくなり、逆に、2つの指紋画像の指の中心のずれが小さくなるほど2つのGDSパターンの距離distは小さくなる。したがって、距離distが最小となるときのズレ幅を2つの指紋画像の位置ズレ量とすることができる。図5(a)では、+16走査線の位置が比較する2つの指紋画像の位置ズレ量となっている。
【0017】
なお、上述した距離distは以下の手順で算出される。既に説明したように、GDSパターンは走査線(i番目)とチャンネル(ch)の関数GDS(i,ch)として表される。一方の指紋画像(例えば、指紋画像1)のGDSパターンをGDS1(i,ch)とし、他方の指紋画像(例えば、指紋画像2)のGDSパターンをGDS2(i,ch)とすると、一方のGDSパターンGDS1(i,ch)に対して他方のGDSパターンGDS2(i,ch)を走査線方向にjだけずらしたときの距離distは次の式で算出される。
dist=ΣΣ|GDS1(i,ch)−GDS2(i−j,ch)|
また、x方向のGDSパターンについて算出された距離(distx)の最小値と、y方向のGDSパターンについて算出された距離(disty)の最小値は、2つの指紋画像が同一であるか否かを判定する評価値とすることができる。
【0018】
上述した手順でx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)が算出されると、算出された位置ズレ量(δx,δy)を用いて指紋画像1に対する指紋画像2のx方向とy方向の位置ズレが修正される。次に、指紋画像1と指紋画像2からそれぞれ回転指紋波形パターンを作成し、それら回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する。
最初に、指紋画像1から回転指紋波形パターン及び回転GDSを作成する手順について説明する。回転指紋波形パターンを作成するためには、まず、指紋画像1内に基準となる基準点を設定する。例えば、指紋画像1については採取された指紋画像の中心点を基準点(例えば、(64,64))とする。
次に、基準点を通る基準走査線を所定の角度間隔で回転させ、回転角度毎に走査線を設定する。図6(b)〜(h)には、基準点を指紋画像の中心(64,64)とし、基準走査線を基準点を通る水平な直線とし、基準走査線を基準点を中心に所定の角度間隔で180°回転させたときの様子を示している。すなわち、図6(b)に示すように、指紋画像内には基準点(64,64)が設定され、その基準点(64,64)を通って水平に基準走査線が設けられる。基準走査線は、図6(b)〜(h)に示すように基準点を中心に時計回りに180°回転し、各回転角における基準走査線を当該回転角の走査線として設定する。例えば、基準走査線を1°間隔で180°回転させると、181本の走査線が設定される。そして、設定された各走査線について、当該走査線上の濃度値変化〔すなわち、走査線上の各点について、端点(例えば、図6(b)に示される基準走査線の左端点に相当する点)からの距離と濃度値の関係〕を取得する。各走査線について取得された濃度値変化が回転指紋波形パターンとなる。
取得された各走査線上の濃度値変化を回転角0°から180°まで上から順に並べたものが図7(a)に示されている。図7(a)から明らかなように、同図に示す回転指紋波形パターンは、縦軸方向が回転角とされ、横軸方向が走査線上の位置(端点からの距離)とされている。また、図7(a)中、回転角0°の走査線(▲1▼−▲3▼)は図6(a)に示す▲1▼−▲3▼の断面に相当し、回転角90°の走査線(▲2▼−▲4▼)は図6(a)に示す▲2▼−▲4▼の断面に相当し、回転角180°の走査線(▲3▼−▲1▼)は図6(a)に示す▲3▼−▲1▼の断面に相当する。
【0019】
上述した手順で図7(a)に示す回転指紋波形パターンが作成されると、その回転指紋波形パターンを横軸方向の走査線(すなわち、基準走査線を回転させることで設定される走査線)に分解し、分解された各走査線からGDSデータ(すなわち、回転GDS)を算出する。回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する手順は、指紋画像からx方向のGDSパターン又はy方向のGDSパターンを算出する手順と同一であるため、ここではその詳細な手順の説明は省略する。図7(b)には、図7(a)に示す回転指紋波形パターンから抽出された回転GDSがGDS強度に応じて濃淡を付けて二次元的に表示されている。
【0020】
なお、上述の説明から明らかなように、回転角θのときの濃度値変化をline(θ,i)(i=0,…,n)とすると次に示す式が成立する。
line(θ,i)=line(θ+180゜,n−i)
すなわち、回転角θの走査線の向きを逆向き(始点と終点とを逆)にすると、その走査線は回転角(θ+180°)の走査線となるためである。
また、回転角θのときの濃度値変化line(θ,i)から算出したGDSをgds(θ,ch)とすると次に示す式が成立する。
gds(θ,ch)=gds(θ+180゜,ch)
すなわち、line(θ,i)の濃度値変化とline(θ+180゜,n−i)の濃度値変化は逆向きになるが、それらを周波数分解したときのGDS強度は異ならないためである。
【0021】
次に、指紋画像2から回転指紋波形パターンを作成し、その回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する。指紋画像2から回転GDSを算出する手順を図8に示している。
図8に示すように、まず、指紋画像2の中心点(例えば、(64,64))をx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)で修正する(図8(a)参照)。次に、修正された基準点(例えば、(64+δx,64+δy))を通る基準走査線を回転させて(図8(b)参照)、指紋画像1と同様の方法にて回転指紋波形パターン(図8(c)参照)、回転GDS(図8(d)参照)を算出する。
【0022】
指紋画像1と指紋画像2とからそれぞれ回転GDSを算出すると、x方向やy方向の位置ズレ量を算出する手順と略同様の手順で、指紋画像1と指紋画像2の回転ズレ角δθを算出する。
すなわち、指紋画像1から抽出した回転GDS1に対し指紋画像2から抽出した回転GDS2を回転角方向に0°〜180°までずらし、各位置で2つの回転GDSの非類似度(距離distθ)を算出する(図9参照)。そして、距離distθが最小となるときのズレ角θを、2つの指紋画像の回転ズレ角δθとする。図9(a)には、指紋画像1から抽出した回転GDS1と指紋画像2から抽出した回転GDS2を回転角方向に0°〜180°までずらしたときの回転角度と距離distθの関係が示されている。図から明らかなように、指紋画像1と指紋画像2の回転ズレ角δθは140°近辺の値となる。
上述した手順で算出された位置ズレ量(δx,δy,δθ)によって指紋画像2を位置補正した指紋画像が指紋画像1と併せて図10に示されている。図10から明らかなように、位置補正後の指紋画像2(図中右側に示されている)は、指紋画像1(図中左側に示されている)と指の中心が略一致し、指紋隆線の方向も略一致している。
【0023】
【実施例】以下、本発明の一実施例に係る指紋照合装置について図面を参照して説明する。
図11に示すように、指紋照合装置は、採取した指紋画像をディジタルデータとして出力する指紋画像採取部10と、出力された指紋画像データの有効性を判定する指紋画像判定部14と、有効と判定された指紋画像データをメモリ26へ登録する指紋登録部18と、指紋画像採取部10で採取した指紋画像と登録されている指紋画像との同一性を判定する指紋照合部20と、登録や照合等の動作を制御する制御部22と、登録か照合かの動作を選択するためのテンキー等を配設した入力部24とを備える。
【0024】
指紋画像採取部10には、電界強度方式の半導体指紋リーダ〔オーセンテック社製(FingerLoc2.1)〕が装備される。この指紋リーダには指紋採取面が設けられ、指紋採取面に指が押圧されるようになっている。指紋採取面に指が押圧されると、指紋隆線部分では指が指紋採取面に直接接触し、指紋谷線部分では指と指紋採取面との間に隙間が形成される。このため、指紋隆線部分と指紋谷線部分とでは検出される電界強度が異なり、この電界強度の相違から指紋画像を撮影する。撮影された指紋画像(指紋隆線の濃淡画像)は、2次元のディジタル濃淡データとして所定時間毎(例えば、数百ms)に内蔵メモリに格納される。
なお、指紋画像を採取する装置としては、上述した電界強度式の半導体指紋リーダには限られない。例えば、光学的に指紋画像を採取する装置(例えば、直角プリズム,光源,CCD素子等により構成される)を用いることができ、また、静電容量式の半導体指紋リーダや熱検知方式の半導体指紋リーダを用いることもできる。
【0025】
指紋画像判定部14は、指紋画像採取部10で採取された指紋画像データに対して、その指紋画像データが有効であるか否かを判定する。具体的には、指紋読取面に指が置き始められたか否かを判定する処理と、採取された指紋画像が有効か否かを判定する処理を行う。各処理の詳細は後で詳述する。
また、指紋登録部18の動作や指紋照合部20の動作については、次に説明する指紋登録時の処理と指紋照合時の処理において詳述するため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0026】
つぎに、上述のように構成される指紋照合装置の“指紋登録時”の作動を、図12〜14のフローチャートに基づいて説明する。
識別対象者が登録処理(指紋画像を登録する処理)を開始するよう入力部24にコマンドを入力すると、制御部22は指紋画像採取部10に指紋画像採取処理を開始するよう指示を出す。これによって、指紋画像採取部10は指紋画像採取処理を開始する(S10)。
【0027】
指紋画像採取処理について図13を参照して説明する。図13に示すように指紋画像採取処理では、まず、指紋画像採取部10を作動状態として画像データを採取する(S32)。次に、ステップS32で採取した画像データに対して指紋画像判定部14が画質判定量1を算出する(S34)。ステップS34で算出される画質判定量1は、採取した画像データを2値化し、明部の面積と暗部の面積の比とされている。
ステップS36では、ステップS34で算出された画質判定量1を予め設定された閾値P1と比較することで、指紋読取面に指が置かれ始めたか否かの判定を行う。すなわち、指紋読取面に指が置き始められ、指紋読取面への指の押圧力が徐々に増加すると、ステップS34で算出される画質判定量1も徐々に大きくなる。このため、指紋読取面に指が置かれていない、又は、充分に置かれていないと、ステップS34で算出される画質判定量1も小さな値となる。したがって、算出された画質判定量1が所定の閾値P1を超えたか否かを判定することで、指紋読取面に指が置かれ始めたか否かを判定する。具体的には、算出された画質判定量1が閾値P1を超えると指紋読取面に指が置かれ始めたと判定し、算出された画質判定量1が閾値P1を超えないと指紋読取面に指が置かれ始めていないと判定する。
ステップS36で指が置かれ始めていないと判定された場合は、ステップS32に戻ってステップS32からの処理を繰り返す。
【0028】
ステップS36で指が指紋読取面に置かれ始めたと判定されると、ステップS34で算出された画質判定量1を変数1として記憶し(S38)、再度、指紋画像採取部10を作動状態として画像データを採取する(S40)。ステップS40で画像データを採取すると、その採取した画像データに基づいて指紋画像判定部14が画質判定量1を算出する(S42)。
ステップS42で画質判定量1が算出されると、その算出された画質判定量1と変数1として保存された画質判定量1とを比較し、画質判定量1の時間的変動が安定したかどうかを判断する(S44)。具体的には、ステップS42で算出された画質判定量1から変数1として保存されている画質判定量1を減算し、その値が予め設定された閾値P2未満となった場合を、画質判定量1の時間的変動が安定したと判定する。
ステップS44で画質判定量1の時間的変動が安定していないと判断されると、ステップS42で算出した画質判定量1を変数1として記憶し、再度、ステップS40からの処理を繰り返す。逆に、ステップS44で画質判定量1の時間的変動が安定したと判断されると、指紋画像採取処理を終了する。
したがって、指紋読取面へ指が充分に置かれ、かつ、指紋読取面への指の押圧力が安定した状態となったときの指紋画像が採取されることとなる。
【0029】
指紋画像採取処理が終了すると、図12に戻って、ステップS10で採取された指紋画像データの画質判定処理が行われる(S12)。画質判定処理を図14に基づいて説明する。
画質判定処理では、まず、採取された指紋画像データに対してラベリングを行う(S52)。次いで、ステップS52のラベリングで得られたラベル数を画質判定量2とする(S54)。ラベリングによって指紋画像の質を判定するのは、下記の理由による。すなわち、指紋隆線が潰れた指紋画像では、隣り合う指紋隆線どうしが分離せずに一体となるため、所定の濃度値以上で互いに連結している画素の塊の数(すなわち、ラベル数)が少なくなる。一方、指紋隆線が途切れたり、ノイズが多く含まれる指紋画像では、所定の濃度値以上で互いに連結している画素の塊の数(すなわち、ラベル数)が多くなる。そこで、ステップS52では、指紋画像をラベリングすることで得られるラベル数が第3閾値P3以上第4閾値P4以下となるときに、指紋画像内に明瞭な指紋隆線が多数存在すると判断する(すなわち、指紋画像の質が高いと評価する)。
なお、図13に示す指紋画像採取処理では、指紋読取面へ指が安定して置かれた否かを判定するために明部と暗部の比を画質判定量としたが、ステップS54では指紋画像の質を判定するためにラベル数を画質判定量としている。
画質判定量2が算出されると、算出された画質判定量2が閾値P3以上で、かつ、閾値P4以下となるか否かを判定する(S56)。算出された画質判定量2がP3以上P4以下とならないときは不明瞭な指紋画像と判断され(S58)、算出された画質判定量2がP3以上P4以下となるときは明瞭な指紋画像と判断する(S60)。
【0030】
画質判定処理が終了すると、図12に戻って、指紋画像採取部10で採取した指紋画像が有効であるか否かが判断される(S14)。すなわち、上述した画質判定処理で明瞭な指紋画像と判定された場合はステップS16に進み、不明瞭な指紋画像と判定された場合はステップS10に戻って、ステップS10からの処理が繰り返される。
ステップS16では、採取された指紋画像データをIDコード等(入力部24から入力される)と関連付けてメモリ26に登録する。
このように、本実施例ではステップS12の画質判定処理で明瞭な指紋画像と判断された指紋画像のみがメモリ26に登録され、不明瞭な指紋画像についてはメモリ26に登録されないこととなる。
【0031】
つぎに、“指紋照合時”における指紋照合装置の作動を、図15,16のフローチャートに基づいて説明する。
まず、識別対象者は指紋照合を行うことを入力部24から入力する(S72)。指紋照合を行うことが入力部24から入力されると、上述した指紋画像採取処理(図13参照)が行われる(S74)。指紋画像採取処理が終了すると、同じく上述した画質判定処理(図14参照)が行われ(S76)、次いで指紋画像採取部10で採取した画像データが有効かどうかがの判定が行われる(S78)。すなわち、ステップS76の画質判定処理において明瞭な指紋画像と判断されたものは「YES」と判定され、不明瞭な画像と判断されたものは「NO」と判定される。
ステップS78で採取した指紋画像データが有効でないと判定された場合は、ステップS74に戻って、ステップS74からの処理が繰り返される。
【0032】
ステップS78で採取した指紋画像データが有効であると判定されると、その指紋画像データと登録されている指紋画像データとの非類似度が算出される(S80)。ステップS80で照合する2つの指紋画像データから非類似度を算出する手順を図16のフローチャートを参照して説明する。
図16に示すように、まず、照合する2つの指紋画像(すなわち、ステップS74で採取された指紋画像と登録されている1つの指紋画像)からx方向とy方向のGDSパターンを算出する(S88)。例えば、図17に示す指紋画像1を登録されている指紋画像とし、指紋画像2を採取された指紋画像とする場合、両者からx方向とy方向のGDSパターンが算出される。算出されたx方向のGDSパターンは各指紋画像の右側に示され、算出されたy方向のGDSパターンは各指紋画像の下側に示されている。
次に、ステップS88で算出されたx方向のGDSパターンとy方向のGDSパターンをそれぞれ移動照合することで、x方向のGDSパターンの非類似度distxとy方向のGDSパターンの非類似度distyを算出すると共に、位置ズレ量(δx,δy)を算出する(S90)。図18には、図17に示す指紋画像2を算出された位置ズレ量(δx,δy)によって位置ズレを補正した後の状態が示されている。
ステップS92では、照合する2つの指紋画像から回転指紋波形パターンを作成し、その回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する。図19には、2つの指紋画像から作成された回転指紋波形パターンと回転GDSを併せて示している。
照合する2つの指紋画像から回転GDSが算出されると、それらを移動照合することで2つの指紋画像の回転ズレ角δθを算出し(S94)、算出された回転ズレ角δθが閾値θs未満となるかを判定する(S96)。
【0033】
算出された回転ズレ角δθが閾値θs未満となる場合は、ステップS90で算出された各方向のGDSパターンの非類似度を足し合せて2つの指紋画像の非類似度とする(S104)。すなわち、算出された回転ズレ角δθが閾値θs未満となる場合は、2つの指紋画像の回転ズレは指紋照合に殆ど影響が無いと考えられる。したがって、回転ズレを補正する前に算出されたx方向のGDSパターンの非類似度distxとy方向のGDSパターンの非類似度distyとを足し合せ、2つの指紋画像の総合非類似度(distx+disty)とする。
【0034】
算出された回転ズレ角δθが閾値θs以上となる場合は、照合する2つの指紋画像の位置ズレを修正する(S98)。すなわち、ステップS90で算出された位置ズレ量(δx,δy)とステップS94で算出されたδθとで、一方の指紋画像の位置ズレを修正する。図20には、図17に示す指紋画像2を位置ズレおよび回転量(δx,δy,δθ)によって位置および回転ズレを補正した後の状態が示されている。
次に、位置ズレが補正された後の2つの指紋画像から再びx方向のGDSパターンとy方向のGDSパターンを算出し、その算出された各方向のGDSパターンを移動照合して各方向の非類似度(distx,disty)を算出する(S100)。なお、図20には、位置ズレが補正された後の指紋画像から算出されたGDSパターンが示されている。すなわち、各指紋画像の右側にはx方向のGDSパターンが示され、下側にはy方向のGDSパターンが示されている。
ステップS102では、ステップS100で算出された各方向の非類似度(distx,disty)を足し合せて、2つの指紋画像の総合非類似度(distx+disty)とする。
なお、上述した図16を用いたフローチャートは、採取された1つの指紋画像に対して1つの登録指紋画像を照合する例であったが、指紋照合装置に登録されている指紋画像が複数ある場合には、登録指紋画像毎に非類似度が算出される。そして、登録指紋画像毎にその非類似度が閾値を超えるか否か(すなわち、採取された指紋画像と登録指紋画像が同一指に係るか否か)が判断される。
【0035】
非類似度算出処理が終了すると、図15に戻って、算出された非類似度が閾値P5以下となるか否かを判定する(S82)。算出された非類似度が閾値P5以下となる場合は扉が開放され(S86)、算出された非類似度が閾値P5を超える場合にはブザーが鳴り入室が禁止される(S84)。
【0036】
上述したことから明らかなように本実施例の指紋照合装置では、照合する指紋画像間の回転ズレ角δθが閾値θs未満とのときは回転ズレの補正前に算出された非類似度を用いて指紋画像の同一性判定を行い、回転ズレ角δθが閾値θs以上のときは回転ズレの補正後に算出された非類似度を用いて指紋画像の同一性を判定する。したがって、回転ズレが大きい場合にはその回転ズレが補正されてから指紋画像の同一性判定が行われるため照合率を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明の一実施例について詳細に説明したが、これは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、下記に記載の形態で好適に実施することができる。
【0038】
(1)上述した実施例では、算出された回転ズレ角δθが閾値θsより大きいときに指紋画像間の回転ズレを修正して総合非類似度を算出した(図16参照)。しかしながら、図21に示すように所定の収束条件を満足するまで位置ズレ補正と総合類似度の算出を繰返すようにしてもよい。
すなわち、図21に示す非類似度算出処理では、照合する2つの指紋画像からx方向とy方向のGDSパターンを算出し(S110)、算出したGDSパターンを移動照合することで位置ズレ量(δx,δy)を算出する(S112)。次いで、各指紋画像から回転GDSをそれぞれ算出し(S114)、それら回転GDSから回転ズレ角δθを算出する(S116)。そして、2つの指紋画像間の総合非類似度を算出する(S118)。総合非類似度としては、上述の実施例と同様、x方向とy方向のGDSパターンを移動照合することで算出される距離distxとdistyの和としてもよいし、これらの和にさらに回転GDSを移動照合することで算出される距離distθを加えたものとしてもよい。なお、上述した実施例においても、総合非類似度を(distx+disty+distθ)としてもよい。
ステップS118で総合非類似度が算出されると、次いで、予め設定された収束条件を満足するか否かを判定する(S120)。ステップS120の収束条件としては、例えば、(1)ループ回数(すなわち、ステップS110〜S118までを繰返した回数)=設定値、(2)ステップS118で算出された総合非類似<閾値未満、あるいは(3)回転角δθの変動量<閾値未満、等を用いることができる。また、これらの条件を組合せて収束条件としてもよい。
収束条件を満足しているときはステップS118で算出されている総合非類似度を最終的な総合非類似度として非類似度算出処理を終了し、収束条件を満足していないときはステップS110に戻ってステップS110からの処理を繰返すこととなる。
このような実施形態によると、所定の収束条件を満足するまで総合非類似度を算出する処理が繰返し行われる。したがって、使用目的(例えば、要求されるセキュリティ度)に応じて収束条件を設定することで、指紋照合装置の仕様を使用目的に適合させることができる。
【0039】
(2)上述した実施例においては、照合する指紋画像間の位置ズレ量(δx,δy)をx方向のGDSパターンとy方向のGDSパターンをそれぞれ移動照合することで算出していた。しかしながら、x方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を算出する手順としては公知の種々の方法を用いることができる。例えば、隆線交差数を用いる方法(すなわち、x方向の隆線交差数を比較することでx方向の位置ズレ量δxを求め、y方向の隆線交差数を比較することでy方向の位置ズレ量δyを求める方法)等を用いることができる。
位置ズレ量(δx,δy)が算出された後は、上述した実施例や上記(1)の実施形態に開示された方法を適宜変更して実施することができる。例えば、算出された位置ズレ量(δx,δy)によって一方の指紋画像の位置ズレを補正し、補正後の指紋画像から回転GDSを算出する。次いで、算出された回転GDSを用いて回転ズレ角δθを算出し、その回転ズレ角δθにより指紋画像の回転ズレを補正する。そして、補正された指紋画像(すなわち、位置ズレ量(δx,δy,δθ)が補正された指紋画像)を周波数変換処理することでスペクトルパターン(例えば、x方向とy方向のGDSパターン)を算出し、それらスペクトルパターンを移動照合することで2つの指紋画像の同一性を判定する。
【0040】
(3)上述した実施例及び実施形態において行われる回転GDSの移動照合処理には、x方向やy方向のGDSパターンを照合するときに利用される各種の計算を高速化するための技術を利用することができる。例えば、特開2002−150289号に開示された技術〔すなわち、非類似度を算出する間隔が粗い状態で最小非類似度を探索する範囲を絞り込み、絞り込んだ範囲内で最小非類似度を探索する技術〕を利用することができる。
また、照合する回転GDSの一部(例えば、所定の走査線(0°〜180°のうち所定の角度範囲)から抽出した回転GDS)を用いて回転ズレ角δθを算出するようにしてもよい。さらに、上記(1)の実施形態において、第1回目の回転ズレ角δθ1は回転GDSの一部を用いて算出し、2回目以降の回転ズレ角δθiは回転GDSの全部を用いて行うようにしてもよい。
【0041】
(4)上述した実施例に係る指紋照合装置に同一指から採取された複数の指紋画像が登録されている場合には、これらの指紋画像間の位置ズレ量(δx,δy,δθ)を予め算出し登録しておくことで、指紋照合時の計算量を少なくすることができる。
例えば、同一指から採取され登録された複数の指紋画像のうち1つを基準登録指紋画像とし、残りの登録指紋画像については基準登録指紋画像との位置ズレ量(δx1,δy1,δθ1)を算出し登録しておく。
指紋照合時には、まず、採取された指紋画像と基準登録指紋画像の照合を行う。これによって、採取された指紋画像と基準登録指紋画像の位置ズレ量(δx2,δy2,δθ2)が算出される。
つぎに、採取された指紋画像と残りの登録指紋画像(同一指に係るもの)の照合を行う。この際、登録されている位置ズレ量(δx1,δy1,δθ1)と算出された位置ズレ量(δx2,δy2,δθ2)を用いて、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量を算出する。すなわち、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量は(δx1+δx2,δy1+δy2,δθ1+δθ2)となる。つまり、採取された指紋画像と照合対象となっている登録指紋画像との位置ズレの補正は、まず、採取された指紋画像を基準指紋画像の位置まで移動させ(すなわち、(δx1,δy1,δθ1)だけ移動させ)、次いで、基準指紋画像の位置から登録指紋画像の位置まで移動(すなわち、(δx2,δy2,δθ2)だけ移動)させればよいためである。
上述のように採取された指紋画像と登録指紋画像との位置ズレ量が計算されるので、まず、計算された位置ズレ量で採取された指紋画像の位置ズレを補正し、次いで、x方向とy方向にGDSパターンを算出し、これら2つのGDSパターンから総合非類似度を算出する。そして、算出された総合非類似度によって採取された指紋画像と登録指紋画像の同一性を判定すればよい。したがって、この場合には回転GDSを算出することなく、指紋画像の同一性判定を行うことができる。
なお、上記の例とは異なり、登録されている位置ズレ量(δx1,δy1,δθ1)と算出された位置ズレ量(δx2,δy2,δθ2)を用いて、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量を予測するようにしてもよい。すなわち、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量は(δx1+δx2,δy1+δy2,δθ1+δθ2)の近辺にあると予測し、位置ズレ量を算出するときの探索範囲を狭めることができる。
【0042】
(5)上述した実施例では、指紋画像から抽出したGDSに基づいて指紋画像の位置ズレ量(δx,δy,δθ)の算出を行ったが、本発明はこれ以外にも各種周波数変換処理により得られたスペクトル(FFTスペクトル、DFTスペクトル、LPCスペクトル等)を用いて位置ズレ量(δx,δy,δθ)の算出を行うようにしても良い。また、周波数変換して得られたスペクトルを波形信号と見なしてフーリエ逆変換を行うことにより得られたケプストラムを用いて位置ズレ量(δx,δy,δθ)を算出してもよい。
【0043】
(6)上述した実施例では、回転指紋画像(すなわち回転指紋波形パターン)から抽出した回転GDSを用いて指紋画像間の回転ズレ角を算出したが、回転指紋画像から他の特徴情報を抽出しその特徴情報を用いて回転ズレ角を算出してもよい。例えば、図22に示すように、回転指紋画像(同図(a))から指紋ピッチパターン(同図(b))や指紋隆線交差数(同図(c))を抽出し、これらを回転方向に移動照合することによって回転ズレ角を算出してもよい。指紋ピッチパターンは回転方向の各走査線について隣り合う指紋隆線の間隔の平均値をパターン化したものであり、指紋隆線交差数は回転方向の各走査線についてその走査線と指紋隆線との交差数を求めることで得られる。
さらに、回転指紋画像の回転方向の各走査線から最長隆線分布波形を求め、この最長隆線分布波形を用いて回転ズレ角を算出することもできる。最長隆線分布波形を抽出する方法としては、特開平7−57085号に開示された方法を用いることができる。
【0044】
(7)上述した実施例では、回転指紋画像を得るために基準点を中心に両側に伸びる走査線(すなわち直径)を回転させたが、図23に示すように基準点を中心に片側に伸びる走査線(すなわち半径)を回転させて回転指紋画像(図24)を取得するようにしてもよい。
【0045】
(8)上述した実施例では、回転指紋画像から抽出した回転GDSを用いて指紋画像間の回転ズレ角を算出したが、この回転GDSを用いて指紋画像の同一性判定を行ってもよい。
【0046】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る位置ズレ補正方法の概略を示す図
【図2】指紋画像のデータ構成を説明するための図
【図3】採取された指紋画像、その指紋画像から抽出されたGDSパターン及び一走査線上の濃度値変化の一例を示す図
【図4】一走査線上の濃度値変化から得られたGDSパターンの一例を示す図
【図5】照合する二つのGDSパターンの非類似度と、その非類似度が最小となるときのズレ幅を算出する手順を説明するための図
【図6】図1に示す指紋画像1から回転指紋波形パターンを作成する手順を説明するための図
【図7】作成された回転指紋波形パターンと、回転指紋波形パターンから作成された回転GDS
【図8】図1に示す指紋画像2から回転指紋波形パターンを作成し、その回転指紋波形パターンから回転GDSを作成するための手順の概略を示す図
【図9】回転GDSを移動照合したときの非類似度と回転角の関係を示す図
【図10】位置ズレと回転ズレが補正された状態を示す図
【図11】本発明の一実施例に係る指紋照合装置の全体構成を示すブロック図
【図12】指紋登録処理を示すフローチャート
【図13】指紋画像採取処理を示すフローチャート
【図14】画質判定処理を示すフローチャート
【図15】指紋照合処理を示すフローチャート
【図16】非類似度算出処理を示すフローチャート
【図17】照合する2つの指紋画像と、これらの指紋画像から抽出したx方向とy方向のGDSパターンを併せて示す図
【図18】図17に示す指紋画像のx方向とy方向の位置ズレを補正した状態を示す図
【図19】図18に示す指紋画像から作成した回転指紋波形パターンと、回転指紋波形パターンから抽出した回転GDSを併せて示す図
【図20】図17に示す指紋画像のx方向、y方向及び回転方向の位置ズレを補正した指紋画像と、その指紋画像からx方向とy方向に抽出したGDSパターンを併せて示す図
【図21】他の実施形態における非類似度算出処理を示すフローチャート
【図22】他の実施形態を説明するための図
【図23】回転指紋画像を作成するための他の方法を示す図
【図24】図23の方法で得られた回転指紋画像と回転GDS
【符号の説明】
10・・指紋画像採取部
14・・指紋画像判定部
18・・指紋登録部
20・・指紋照合部
22・・制御部
24・・入力部
【発明の属する技術分野】本発明は、指紋画像の照合を行なう指紋照合技術に関し、詳しくは、照合される指紋画像間の回転ズレを補正するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】指紋照合装置では、指紋採取部への指の置き方によって採取される指紋画像が異なるものとなる。例えば、指紋採取部に対して異なる向きで指が置かれると、得られた指紋画像の間には回転ズレが発生する。照合する指紋画像間に回転ズレがあると、両指紋画像が同一指から採取されたものであっても同一と判断されないことが生じる。このため、従来から指紋画像間の回転ズレを補正するための技術が開発されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。前者の文献に開示された技術では、指紋画像(指紋領域と背景領域を含むもの)が入力される入力層と、指紋の重心位置(x,y)と傾きθを出力する出力層と、入力層と出力層を接続する中間層とでニューラルネットワークが構築される。学習用データには傾いていない指紋画像を使用し、その指紋画像の位置と傾きを人工的に変えながら学習を行わせる。学習後のニューラルネットワークに指紋画像を入力すると、その指紋画像の傾きが出力される。各指紋画像の傾きが分かれば、それらの値から指紋画像間の回転ズレ角を算出することができる。
一方、後者の文献に開示された技術では、指紋画像を指紋が写っている指紋領域と、それ以外の背景領域に分類する。次に、指紋領域と背景領域の境界線(すなわち、指紋領域の輪郭線)を楕円に近似する。そして、近似された楕円についてその傾きを求め、その求めた傾きを指紋画像の傾きとする。この方法によっても、各指紋画像の傾きが求められ、それらの傾きから指紋画像間の回転ズレ角を算出することができる。
なお、指紋照合とは異なる画像(例えば印鑑画像)に対して回転補正を行う技術として特許文献3に開示された技術も知られている。この技術では、照合する2つの印鑑画像にそれぞれエッジ強調・2値化処理を行い、処理後の画像からエッジ上の点を抽出する。そして、その抽出されたエッジ上の点に対してハフ変換・フーリエ変換を行い、変換後のパターンを照合することで回転ズレ角を算出する。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−76144
【特許文献2】
特開2001−76145
【特許文献3】
特開平9−245167号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した特許文献1と特許文献2の技術では、指紋画像毎に傾きを求めなければならず、傾きを求めるためには対象となる指紋画像に指紋領域と背景領域が含まれていることが条件となる。このため、指紋採取部の面積が小さい等の理由によって背景領域を有しない指紋画像の場合は、その傾き(ひいては、指紋画像間の回転ズレ角)を求めることができないという問題があった。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、背景領域を有しない指紋画像でもそれら指紋画像間の回転ズレを補正することが可能となる技術を提供する。
【0005】
なお、特許文献3に開示された技術については、採取した原画像にエッジ強調処理や2値化処理を施さなければならない。このような前処理は原画像から重要な情報(指紋隆線情報)を取り除いてしまう可能性があり、これによって回転ズレ角が算出できない場合が生じ得る。したがって、この方法を指紋画像の回転ズレ補正に用いることはできない。
また、指紋画像から抽出されるマニューシャ(特徴点)により指紋画像の回転ズレを補正することも考えられる。すなわち、各指紋画像からマニューシャを抽出し、対応するマニューシャの相対的な位置関係から回転ズレを補正する。しかしながら、マニューシャを用いる方法では各指紋画像からマニューシャを抽出するための処理(例えば、2値化、細線化、マニューシャ抽出)が必要となり、処理に時間を要してしまう。
【0006】
【課題を解決するための手段と作用と効果】上記課題を解決するために創作された本願発明の方法は、指紋画像間の回転ズレ角を算出する方法であって、一方の指紋画像に対しては、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第1のスペクトルパターンを取得し、他方の指紋画像に対しては、その指紋画像内において前記第1基準点と対応する第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第2のスペクトルパターンを取得し、取得された第1のスペクトルパターンに対して第2のスペクトルパターンを回転方向に所定角度範囲内でずらしながら相関度を算出し、相関度が最大となるときのズレ角を指紋画像間の回転ズレ角に決定する。
上記の方法では、一方の指紋画像については第1基準点を中心とし、他方の指紋画像については第2基準点(第1基準点に対応する点)を中心とし、それぞれ回転方向のスペクトルパターンを取得する。そして、2つのスペクトルパターンを回転方向にずらしながら相関度を算出し、相関度が最大となるときのズレ角を指紋画像間の回転ズレ角とする。したがって、この方法では一方の指紋画像に対する他方の指紋画像の相対的な回転ズレ角を直接求めるようにしているため(すなわち、両指紋画像の傾きを個別には求めていないため)、背景領域を有していない指紋画像同士であっても回転ズレ角を算出することができる。
なお、対象となる2つの指紋画像が同一指から採取されたものではない場合は、上記方法により得られた回転ズレ角は実際の回転ズレ角とは異なるものとなる。しかしながら、このような場合はもともと2つの指紋画像が異なるものと判定されるべき場合であって、指紋画像間の回転ズレ角を正確に算出する意義もないので問題は生じない。
【0007】
上記の方法において、指紋画像間のx−y方向の位置ズレが無視できるような場合(例えば、指紋採取面に指をガイドする指ガイドが設けられている場合等)には、他方の指紋画像において基準となる第2基準点は予め設定しておくことができる。ただし、指紋画像間のx−y方向の位置ズレが無視できない場合(例えば、指ガイドがある場合でもより照合精度が要求されるとき)には、次に記載する構成を採用することが好ましい。
すなわち、前記第2基準点は、2つの指紋画像間のx−y方向の位置ズレ量によって第1基準点を補正することで得られる。このような構成によると、2つの指紋画像のx−y方向の位置ズレの影響を排除して回転ズレ角を算出することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するために創作された本願発明の装置は、識別対象者から採取した指紋画像と登録されている指紋画像を照合することで識別対象者が登録者か否かを判別する指紋照合装置であって、指紋を採取して指紋画像を出力する指紋画像採取手段と、採取された指紋画像と登録されている指紋画像とを照合する手段とを備える。
そして、指紋照合手段は、採取された指紋画像と登録指紋画像のx−y方向の位置ズレ量を算出し、照合する一方の指紋画像に対しては、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第1のスペクトルパターンを取得し、照合する他方の指紋画像に対しては、算出されたx−y方向の位置ズレ量を用いて第1基準点を補正することで第2基準点を求め、その第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第2のスペクトルパターンを取得し、取得された第1のスペクトルパターンに対して第2のスペクトルパターンを回転方向に所定角度範囲内でずらしながら相関度を算出し、相関度が最大となるときのズレ角と算出されたx−y方向の位置ズレ量とを用いて照合する指紋画像間の回転ズレ及び位置ズレを補正して2つの指紋画像が同一か否かを判定する。
上記の装置では、採取された指紋画像と登録されている指紋画像の相対的な位置ズレや回転ズレが補正されてから同一性が判定されるため、同一指に係る指紋画像同士が異なる指紋画像と判定される確率を低くすることができる。
【0009】
また本願は、2つの指紋画像を照合するための指紋照合方法を提供する。
すなわち、本願に係る方法は、(1)一方の指紋画像に対して、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させることで得られる走査線群の濃度値分布を取得する工程と、(2)他方の指紋画像に対して、その指紋画像内において前記第1基準点と対応する第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させることで得られる走査線群の濃度値分布を取得する工程と、(3)第1の画像から取得された濃度値分布から回転方向に関して第1の特徴情報を抽出する工程と、(4)第2の画像から取得された濃度値分布から回転方向に関して第2の特徴情報を抽出する工程と、(5)抽出された第1の特徴情報に対して第2の特徴情報を回転方向に所定角度でずらしながら相関度を算出する工程とを有する。この方法では、指紋画像内の対応する基準点(第1基準点と第2基準点)を中心に走査線を回転させることによって指紋画像から濃度値分布を得ている。このため、各指紋画像から得られた2つの濃度値分布は、x方向,y方向にズレはなく、回転方向にのみズレているだけとなる。そして、2つの濃度値分布からそれぞれ回転方向に特徴情報を抽出し、この特徴情報を回転方向にずらしながら相関度を算出する。したがって、算出された相関度の最大値は回転方向のズレまで補正されたもの、すなわち2つの指紋画像のズレ(x方向,y方向,回転方向)が補正されたものとすることができる。
なお、濃度値分布から抽出する「特徴情報」としては、パターン照合に使用することができる種々の情報を用いることができる。例えば、走査線上の指紋隆線部分の間隔(ピッチ)をパターン化したピッチパターンや、走査線と指紋隆線との交差数や、各走査線の指紋隆線長さをパターン化した最長隆線分布波形(特開平7−57085号参照)を用いることができる。
【0010】
上述したように、上記の方法で算出された相関度の最大値は回転方向のズレが補正されたものとなることから、その相関度により2つの指紋画像の同一性を判定することもできるし、2つの指紋画像の回転ズレ角を算出することもできる。すなわち、上記の方法において、算出された相関度のうち最大のものが所定の閾値を超えるときに、2つの指紋画像を同一指から採取したものであると決定することができる。
また、上記の方法において、算出された相関度が最大となるときの2つの特徴情報のズレ角を2つの指紋画像間の回転ズレ角に決定することもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の回転ズレ角算出方法を用いた一実施形態に係る指紋画像の位置ズレ補正方法について図面を参照して説明する。
まず、図1に基づいて本実施形態に係る位置ズレ補正方法の概要を説明する。同図中、左列1段目に示される指紋画像1と右列1段目に示される指紋画像2はいずれも同一人の同一指から採取した指紋画像であって、位置ズレ補正処理前のものである。また、図中2段目以降には、両指紋画像の位置ズレを補正する過程で得られる画像をそれぞれ示している。
図1に示すように、指紋画像2は、指紋画像1に対して位置ズレ(x方向,y方向,θ方向)が生じている。この位置ズレを補正するために、指紋画像1に対する指紋画像2の位置ズレ量(x方向,y方向,θ方向)を算出する必要が生じる。
本実施形態では、まず、指紋画像1に対する指紋画像2のx方向(水平方向)とy方向(直角方向)の位置ズレ量(δx,δy)を算出する。位置ズレ量(δx,δy)を算出する方法としては、例えば、各指紋画像から抽出したx方向とy方向の群遅延スペクトル(以下、GDSという)を移動照合する方法を用いることができる。指紋画像からGDSを算出する手順及び2つのGDSを移動照合する手順については後で詳述する。位置ズレ量(δx,δy)が算出されると、その位置ズレ量(δx,δy)を用いて指紋画像2の位置補正を行う。位置補正を行った後の指紋画像2が図1の右列2段目に示されている。図から明らかなように、2段目に示されている指紋画像2は、1段目に示されている指紋画像2に対してx軸方向にδx移動し、y軸方向にδy移動している。
x方向とy方向の位置ズレが補正されると、次に、指紋画像1に対する指紋画像2の回転方向の位置ズレ量(回転ズレ角δθ)を算出する。回転ズレ角δθを算出するためには、まず、指紋画像1と位置ズレ補正後の指紋画像2からそれぞれ回転指紋波形パターンを求め、次いで、それら回転指紋波形パターンから群遅延スペクトル(以下、回転GDSという)を算出する。図1の3段目には、2段目に示す指紋画像から抽出した回転指紋波形パターン(左側)と回転GDS(右側)が併せて示されている。指紋画像から回転指紋波形パターンを作成する手順及び回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する手順については後で詳述する。
各回転指紋波形パターンから回転GDSがそれぞれ算出されると、δx,δyの場合と同様に、それらを移動照合することで回転ズレ角δθを算出する。回転ズレ角δθを算出する手順は、2つのGDSからx方向又はy方向の位置ズレ量を算出する手順と同様の手順で行うことができる。回転ズレ角δθが算出されると、その回転ズレ角δθを用いて指紋画像2の位置補正を行う。回転方向の位置補正後の指紋画像2が図1の最下段に示されている。図から明らかなように、位置補正後の指紋画像2(最下段に示される画像)は位置補正前の指紋画像(2段目に示される画像)に対してδθだけ回転している。
【0012】
以上、本実施形態の概要を述べたが、次にその詳細を説明する。まず、2つの指紋画像(指紋画像1と指紋画像2)間のx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を算出する手順について、図2〜図5を用いて説明する。
図2は指紋センサ等によって採取される指紋画像データの構成を説明するための図である。図2に示すように、採取される指紋画像データは、x方向にnドット、y方向にmドットのn×mドットの2次元データである。各ドット(座標値(a,b)で表す(0≦a≦n−1、0≦b≦m−1))の濃淡はディジタル値dで表される。
【0013】
図3(a)には、採取された指紋画像データ、その指紋画像データから抽出されたx方向とy方向のGDSが併せて示されている。指紋画像データからGDS(x方向とy方向)を算出するためには、まず、指紋画像データ(n×mドット)をx方向に延びるm本の走査線に分解し、また、y方向に延びるn本の走査線に分解する。
次に、x方向の各走査線について、当該走査線上の濃度値変化(走査線上の各点の左端点からの距離(x座標の値)とその濃度値dとの関係)を求める。y方向の各走査線についても同様に、走査線上の濃度値変化(走査線上の各点の上端点からの距離(y座標の値)とその濃度値dとの関係)を求める。走査線上の濃度値変化の一例が図3(b)に示されている。指紋隆線上の点は濃度値が高く(暗く)、指紋谷線上の点は濃度値が低く(明るく)なるため、図3(b)に示すように走査線上の濃度値は周期的に変化している。
【0014】
x方向とy方向の各走査線について濃度値変化が求まると、その濃度値変化を時系列信号とみなして周波数変換処理を行い、x方向とy方向のそれぞれについてGDSパターンを算出する。具体的には、走査線毎に周波数変換処理を行い、全ての走査線からGDSデータを算出する。図4は、1本の走査線から抽出したGDSデータの一例を示している。図4に示すように、1本の走査線からは周波数チャンネル(ch,0≦ch≦15)毎に複数のGDSデータ(GDS強度)が算出される。
なお、指紋画像データはx方向にm本、y方向にn本の走査線に分解される。したがって、本明細書では抽出されたGDS強度をx方向又はy方向の走査線番号(i)と周波数チャンネル(ch)によって決まる関数として定義する。
GDS=GDS(i,ch)
以下、指紋画像をx方向の走査線に分解し、分解された各走査線から抽出された全GDSデータ〔すなわち、GDS(i,ch)(0≦i≦m−1,0≦ch≦15)〕をx方向のGDSパターンといい、指紋画像をy方向の走査線に分解し、分解された各走査線から抽出された全GDSデータ〔すなわち、GDS(i,ch)(0≦i≦n−1,0≦ch≦15)〕をy方向のGDSパターンという。
上述した手順で抽出されたx方向とy方向のGDSパターンをGDS強度に応じて濃淡を付けて(すなわち、GDS強度が大きい部分を濃く、GDS強度が小さい部分を淡く)二次元的に表したものが、図3(a)に示されている。すなわち、x方向のGDSパターンが指紋画像の右側方に表示され、y方向のGDSパターンが指紋画像の下方に表示されている。
【0015】
上述した手順で指紋画像1と指紋画像2のそれぞれからx方向とy方向のGDSパターンが算出されると、これらを用いて2つの指紋画像間のx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を算出する。位置ズレ量を算出する手順の一例を図5を用いて説明する。
なお、x方向の位置ズレ量δxはy方向のGDSパターンを用いて算出し、一方、y方向の位置ズレ量δyはx方向のGDSパターンを用いて算出する。x方向の位置ズレ量δxを算出する手順とy方向の位置ズレ量δyを算出する手順は、用いるGDSパターンが異なるだけで手順自体は同様である。したがって、以下の説明では、x方向の位置ズレ量δxを算出する手順についてのみ述べる。
【0016】
x方向の位置ズレ量δxの算出は、まず、一方のGDSパターン(例えば、指紋画像1から抽出したy方向のGDSパターン)を他方のGDSパターン(例えば、指紋画像2から抽出したy方向のGDSパターン)に対してx方向に複数の位置にずらし、各位置で2つのGDSパターンの非類似度を算出する(いわゆる、移動照合を行う)。図5(b)に示す2つのy方向のGDSパターンについて非類似度を算出した例が、図5(a)に示されている。図5(a)では、非類似度(本実施形態では、距離distという)を縦軸とし、2つのGDSパターンのズレ量(本実施形態では、ズレ幅wdという)を横軸としている。図5(a)から明らかなように、一方のGDSパターンに対して他方のGDSパターンを−30走査線〜+30走査線の範囲内でずらし、この範囲内において非類似度(すなわち、距離dist)が算出されている。
所定の範囲内でずらしたときの距離distが算出されると、距離distが最小となるときのズレ幅wdを特定する。特定されたズレ幅は、2つの指紋画像のx方向の位置ズレ量δxとなる。すなわち、同一指に係る2つのGDSパターンにおいては、2つの指紋画像の指の中心のずれが大きくなるほど2つのGDSパターンの距離distは大きくなり、逆に、2つの指紋画像の指の中心のずれが小さくなるほど2つのGDSパターンの距離distは小さくなる。したがって、距離distが最小となるときのズレ幅を2つの指紋画像の位置ズレ量とすることができる。図5(a)では、+16走査線の位置が比較する2つの指紋画像の位置ズレ量となっている。
【0017】
なお、上述した距離distは以下の手順で算出される。既に説明したように、GDSパターンは走査線(i番目)とチャンネル(ch)の関数GDS(i,ch)として表される。一方の指紋画像(例えば、指紋画像1)のGDSパターンをGDS1(i,ch)とし、他方の指紋画像(例えば、指紋画像2)のGDSパターンをGDS2(i,ch)とすると、一方のGDSパターンGDS1(i,ch)に対して他方のGDSパターンGDS2(i,ch)を走査線方向にjだけずらしたときの距離distは次の式で算出される。
dist=ΣΣ|GDS1(i,ch)−GDS2(i−j,ch)|
また、x方向のGDSパターンについて算出された距離(distx)の最小値と、y方向のGDSパターンについて算出された距離(disty)の最小値は、2つの指紋画像が同一であるか否かを判定する評価値とすることができる。
【0018】
上述した手順でx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)が算出されると、算出された位置ズレ量(δx,δy)を用いて指紋画像1に対する指紋画像2のx方向とy方向の位置ズレが修正される。次に、指紋画像1と指紋画像2からそれぞれ回転指紋波形パターンを作成し、それら回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する。
最初に、指紋画像1から回転指紋波形パターン及び回転GDSを作成する手順について説明する。回転指紋波形パターンを作成するためには、まず、指紋画像1内に基準となる基準点を設定する。例えば、指紋画像1については採取された指紋画像の中心点を基準点(例えば、(64,64))とする。
次に、基準点を通る基準走査線を所定の角度間隔で回転させ、回転角度毎に走査線を設定する。図6(b)〜(h)には、基準点を指紋画像の中心(64,64)とし、基準走査線を基準点を通る水平な直線とし、基準走査線を基準点を中心に所定の角度間隔で180°回転させたときの様子を示している。すなわち、図6(b)に示すように、指紋画像内には基準点(64,64)が設定され、その基準点(64,64)を通って水平に基準走査線が設けられる。基準走査線は、図6(b)〜(h)に示すように基準点を中心に時計回りに180°回転し、各回転角における基準走査線を当該回転角の走査線として設定する。例えば、基準走査線を1°間隔で180°回転させると、181本の走査線が設定される。そして、設定された各走査線について、当該走査線上の濃度値変化〔すなわち、走査線上の各点について、端点(例えば、図6(b)に示される基準走査線の左端点に相当する点)からの距離と濃度値の関係〕を取得する。各走査線について取得された濃度値変化が回転指紋波形パターンとなる。
取得された各走査線上の濃度値変化を回転角0°から180°まで上から順に並べたものが図7(a)に示されている。図7(a)から明らかなように、同図に示す回転指紋波形パターンは、縦軸方向が回転角とされ、横軸方向が走査線上の位置(端点からの距離)とされている。また、図7(a)中、回転角0°の走査線(▲1▼−▲3▼)は図6(a)に示す▲1▼−▲3▼の断面に相当し、回転角90°の走査線(▲2▼−▲4▼)は図6(a)に示す▲2▼−▲4▼の断面に相当し、回転角180°の走査線(▲3▼−▲1▼)は図6(a)に示す▲3▼−▲1▼の断面に相当する。
【0019】
上述した手順で図7(a)に示す回転指紋波形パターンが作成されると、その回転指紋波形パターンを横軸方向の走査線(すなわち、基準走査線を回転させることで設定される走査線)に分解し、分解された各走査線からGDSデータ(すなわち、回転GDS)を算出する。回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する手順は、指紋画像からx方向のGDSパターン又はy方向のGDSパターンを算出する手順と同一であるため、ここではその詳細な手順の説明は省略する。図7(b)には、図7(a)に示す回転指紋波形パターンから抽出された回転GDSがGDS強度に応じて濃淡を付けて二次元的に表示されている。
【0020】
なお、上述の説明から明らかなように、回転角θのときの濃度値変化をline(θ,i)(i=0,…,n)とすると次に示す式が成立する。
line(θ,i)=line(θ+180゜,n−i)
すなわち、回転角θの走査線の向きを逆向き(始点と終点とを逆)にすると、その走査線は回転角(θ+180°)の走査線となるためである。
また、回転角θのときの濃度値変化line(θ,i)から算出したGDSをgds(θ,ch)とすると次に示す式が成立する。
gds(θ,ch)=gds(θ+180゜,ch)
すなわち、line(θ,i)の濃度値変化とline(θ+180゜,n−i)の濃度値変化は逆向きになるが、それらを周波数分解したときのGDS強度は異ならないためである。
【0021】
次に、指紋画像2から回転指紋波形パターンを作成し、その回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する。指紋画像2から回転GDSを算出する手順を図8に示している。
図8に示すように、まず、指紋画像2の中心点(例えば、(64,64))をx方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)で修正する(図8(a)参照)。次に、修正された基準点(例えば、(64+δx,64+δy))を通る基準走査線を回転させて(図8(b)参照)、指紋画像1と同様の方法にて回転指紋波形パターン(図8(c)参照)、回転GDS(図8(d)参照)を算出する。
【0022】
指紋画像1と指紋画像2とからそれぞれ回転GDSを算出すると、x方向やy方向の位置ズレ量を算出する手順と略同様の手順で、指紋画像1と指紋画像2の回転ズレ角δθを算出する。
すなわち、指紋画像1から抽出した回転GDS1に対し指紋画像2から抽出した回転GDS2を回転角方向に0°〜180°までずらし、各位置で2つの回転GDSの非類似度(距離distθ)を算出する(図9参照)。そして、距離distθが最小となるときのズレ角θを、2つの指紋画像の回転ズレ角δθとする。図9(a)には、指紋画像1から抽出した回転GDS1と指紋画像2から抽出した回転GDS2を回転角方向に0°〜180°までずらしたときの回転角度と距離distθの関係が示されている。図から明らかなように、指紋画像1と指紋画像2の回転ズレ角δθは140°近辺の値となる。
上述した手順で算出された位置ズレ量(δx,δy,δθ)によって指紋画像2を位置補正した指紋画像が指紋画像1と併せて図10に示されている。図10から明らかなように、位置補正後の指紋画像2(図中右側に示されている)は、指紋画像1(図中左側に示されている)と指の中心が略一致し、指紋隆線の方向も略一致している。
【0023】
【実施例】以下、本発明の一実施例に係る指紋照合装置について図面を参照して説明する。
図11に示すように、指紋照合装置は、採取した指紋画像をディジタルデータとして出力する指紋画像採取部10と、出力された指紋画像データの有効性を判定する指紋画像判定部14と、有効と判定された指紋画像データをメモリ26へ登録する指紋登録部18と、指紋画像採取部10で採取した指紋画像と登録されている指紋画像との同一性を判定する指紋照合部20と、登録や照合等の動作を制御する制御部22と、登録か照合かの動作を選択するためのテンキー等を配設した入力部24とを備える。
【0024】
指紋画像採取部10には、電界強度方式の半導体指紋リーダ〔オーセンテック社製(FingerLoc2.1)〕が装備される。この指紋リーダには指紋採取面が設けられ、指紋採取面に指が押圧されるようになっている。指紋採取面に指が押圧されると、指紋隆線部分では指が指紋採取面に直接接触し、指紋谷線部分では指と指紋採取面との間に隙間が形成される。このため、指紋隆線部分と指紋谷線部分とでは検出される電界強度が異なり、この電界強度の相違から指紋画像を撮影する。撮影された指紋画像(指紋隆線の濃淡画像)は、2次元のディジタル濃淡データとして所定時間毎(例えば、数百ms)に内蔵メモリに格納される。
なお、指紋画像を採取する装置としては、上述した電界強度式の半導体指紋リーダには限られない。例えば、光学的に指紋画像を採取する装置(例えば、直角プリズム,光源,CCD素子等により構成される)を用いることができ、また、静電容量式の半導体指紋リーダや熱検知方式の半導体指紋リーダを用いることもできる。
【0025】
指紋画像判定部14は、指紋画像採取部10で採取された指紋画像データに対して、その指紋画像データが有効であるか否かを判定する。具体的には、指紋読取面に指が置き始められたか否かを判定する処理と、採取された指紋画像が有効か否かを判定する処理を行う。各処理の詳細は後で詳述する。
また、指紋登録部18の動作や指紋照合部20の動作については、次に説明する指紋登録時の処理と指紋照合時の処理において詳述するため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0026】
つぎに、上述のように構成される指紋照合装置の“指紋登録時”の作動を、図12〜14のフローチャートに基づいて説明する。
識別対象者が登録処理(指紋画像を登録する処理)を開始するよう入力部24にコマンドを入力すると、制御部22は指紋画像採取部10に指紋画像採取処理を開始するよう指示を出す。これによって、指紋画像採取部10は指紋画像採取処理を開始する(S10)。
【0027】
指紋画像採取処理について図13を参照して説明する。図13に示すように指紋画像採取処理では、まず、指紋画像採取部10を作動状態として画像データを採取する(S32)。次に、ステップS32で採取した画像データに対して指紋画像判定部14が画質判定量1を算出する(S34)。ステップS34で算出される画質判定量1は、採取した画像データを2値化し、明部の面積と暗部の面積の比とされている。
ステップS36では、ステップS34で算出された画質判定量1を予め設定された閾値P1と比較することで、指紋読取面に指が置かれ始めたか否かの判定を行う。すなわち、指紋読取面に指が置き始められ、指紋読取面への指の押圧力が徐々に増加すると、ステップS34で算出される画質判定量1も徐々に大きくなる。このため、指紋読取面に指が置かれていない、又は、充分に置かれていないと、ステップS34で算出される画質判定量1も小さな値となる。したがって、算出された画質判定量1が所定の閾値P1を超えたか否かを判定することで、指紋読取面に指が置かれ始めたか否かを判定する。具体的には、算出された画質判定量1が閾値P1を超えると指紋読取面に指が置かれ始めたと判定し、算出された画質判定量1が閾値P1を超えないと指紋読取面に指が置かれ始めていないと判定する。
ステップS36で指が置かれ始めていないと判定された場合は、ステップS32に戻ってステップS32からの処理を繰り返す。
【0028】
ステップS36で指が指紋読取面に置かれ始めたと判定されると、ステップS34で算出された画質判定量1を変数1として記憶し(S38)、再度、指紋画像採取部10を作動状態として画像データを採取する(S40)。ステップS40で画像データを採取すると、その採取した画像データに基づいて指紋画像判定部14が画質判定量1を算出する(S42)。
ステップS42で画質判定量1が算出されると、その算出された画質判定量1と変数1として保存された画質判定量1とを比較し、画質判定量1の時間的変動が安定したかどうかを判断する(S44)。具体的には、ステップS42で算出された画質判定量1から変数1として保存されている画質判定量1を減算し、その値が予め設定された閾値P2未満となった場合を、画質判定量1の時間的変動が安定したと判定する。
ステップS44で画質判定量1の時間的変動が安定していないと判断されると、ステップS42で算出した画質判定量1を変数1として記憶し、再度、ステップS40からの処理を繰り返す。逆に、ステップS44で画質判定量1の時間的変動が安定したと判断されると、指紋画像採取処理を終了する。
したがって、指紋読取面へ指が充分に置かれ、かつ、指紋読取面への指の押圧力が安定した状態となったときの指紋画像が採取されることとなる。
【0029】
指紋画像採取処理が終了すると、図12に戻って、ステップS10で採取された指紋画像データの画質判定処理が行われる(S12)。画質判定処理を図14に基づいて説明する。
画質判定処理では、まず、採取された指紋画像データに対してラベリングを行う(S52)。次いで、ステップS52のラベリングで得られたラベル数を画質判定量2とする(S54)。ラベリングによって指紋画像の質を判定するのは、下記の理由による。すなわち、指紋隆線が潰れた指紋画像では、隣り合う指紋隆線どうしが分離せずに一体となるため、所定の濃度値以上で互いに連結している画素の塊の数(すなわち、ラベル数)が少なくなる。一方、指紋隆線が途切れたり、ノイズが多く含まれる指紋画像では、所定の濃度値以上で互いに連結している画素の塊の数(すなわち、ラベル数)が多くなる。そこで、ステップS52では、指紋画像をラベリングすることで得られるラベル数が第3閾値P3以上第4閾値P4以下となるときに、指紋画像内に明瞭な指紋隆線が多数存在すると判断する(すなわち、指紋画像の質が高いと評価する)。
なお、図13に示す指紋画像採取処理では、指紋読取面へ指が安定して置かれた否かを判定するために明部と暗部の比を画質判定量としたが、ステップS54では指紋画像の質を判定するためにラベル数を画質判定量としている。
画質判定量2が算出されると、算出された画質判定量2が閾値P3以上で、かつ、閾値P4以下となるか否かを判定する(S56)。算出された画質判定量2がP3以上P4以下とならないときは不明瞭な指紋画像と判断され(S58)、算出された画質判定量2がP3以上P4以下となるときは明瞭な指紋画像と判断する(S60)。
【0030】
画質判定処理が終了すると、図12に戻って、指紋画像採取部10で採取した指紋画像が有効であるか否かが判断される(S14)。すなわち、上述した画質判定処理で明瞭な指紋画像と判定された場合はステップS16に進み、不明瞭な指紋画像と判定された場合はステップS10に戻って、ステップS10からの処理が繰り返される。
ステップS16では、採取された指紋画像データをIDコード等(入力部24から入力される)と関連付けてメモリ26に登録する。
このように、本実施例ではステップS12の画質判定処理で明瞭な指紋画像と判断された指紋画像のみがメモリ26に登録され、不明瞭な指紋画像についてはメモリ26に登録されないこととなる。
【0031】
つぎに、“指紋照合時”における指紋照合装置の作動を、図15,16のフローチャートに基づいて説明する。
まず、識別対象者は指紋照合を行うことを入力部24から入力する(S72)。指紋照合を行うことが入力部24から入力されると、上述した指紋画像採取処理(図13参照)が行われる(S74)。指紋画像採取処理が終了すると、同じく上述した画質判定処理(図14参照)が行われ(S76)、次いで指紋画像採取部10で採取した画像データが有効かどうかがの判定が行われる(S78)。すなわち、ステップS76の画質判定処理において明瞭な指紋画像と判断されたものは「YES」と判定され、不明瞭な画像と判断されたものは「NO」と判定される。
ステップS78で採取した指紋画像データが有効でないと判定された場合は、ステップS74に戻って、ステップS74からの処理が繰り返される。
【0032】
ステップS78で採取した指紋画像データが有効であると判定されると、その指紋画像データと登録されている指紋画像データとの非類似度が算出される(S80)。ステップS80で照合する2つの指紋画像データから非類似度を算出する手順を図16のフローチャートを参照して説明する。
図16に示すように、まず、照合する2つの指紋画像(すなわち、ステップS74で採取された指紋画像と登録されている1つの指紋画像)からx方向とy方向のGDSパターンを算出する(S88)。例えば、図17に示す指紋画像1を登録されている指紋画像とし、指紋画像2を採取された指紋画像とする場合、両者からx方向とy方向のGDSパターンが算出される。算出されたx方向のGDSパターンは各指紋画像の右側に示され、算出されたy方向のGDSパターンは各指紋画像の下側に示されている。
次に、ステップS88で算出されたx方向のGDSパターンとy方向のGDSパターンをそれぞれ移動照合することで、x方向のGDSパターンの非類似度distxとy方向のGDSパターンの非類似度distyを算出すると共に、位置ズレ量(δx,δy)を算出する(S90)。図18には、図17に示す指紋画像2を算出された位置ズレ量(δx,δy)によって位置ズレを補正した後の状態が示されている。
ステップS92では、照合する2つの指紋画像から回転指紋波形パターンを作成し、その回転指紋波形パターンから回転GDSを算出する。図19には、2つの指紋画像から作成された回転指紋波形パターンと回転GDSを併せて示している。
照合する2つの指紋画像から回転GDSが算出されると、それらを移動照合することで2つの指紋画像の回転ズレ角δθを算出し(S94)、算出された回転ズレ角δθが閾値θs未満となるかを判定する(S96)。
【0033】
算出された回転ズレ角δθが閾値θs未満となる場合は、ステップS90で算出された各方向のGDSパターンの非類似度を足し合せて2つの指紋画像の非類似度とする(S104)。すなわち、算出された回転ズレ角δθが閾値θs未満となる場合は、2つの指紋画像の回転ズレは指紋照合に殆ど影響が無いと考えられる。したがって、回転ズレを補正する前に算出されたx方向のGDSパターンの非類似度distxとy方向のGDSパターンの非類似度distyとを足し合せ、2つの指紋画像の総合非類似度(distx+disty)とする。
【0034】
算出された回転ズレ角δθが閾値θs以上となる場合は、照合する2つの指紋画像の位置ズレを修正する(S98)。すなわち、ステップS90で算出された位置ズレ量(δx,δy)とステップS94で算出されたδθとで、一方の指紋画像の位置ズレを修正する。図20には、図17に示す指紋画像2を位置ズレおよび回転量(δx,δy,δθ)によって位置および回転ズレを補正した後の状態が示されている。
次に、位置ズレが補正された後の2つの指紋画像から再びx方向のGDSパターンとy方向のGDSパターンを算出し、その算出された各方向のGDSパターンを移動照合して各方向の非類似度(distx,disty)を算出する(S100)。なお、図20には、位置ズレが補正された後の指紋画像から算出されたGDSパターンが示されている。すなわち、各指紋画像の右側にはx方向のGDSパターンが示され、下側にはy方向のGDSパターンが示されている。
ステップS102では、ステップS100で算出された各方向の非類似度(distx,disty)を足し合せて、2つの指紋画像の総合非類似度(distx+disty)とする。
なお、上述した図16を用いたフローチャートは、採取された1つの指紋画像に対して1つの登録指紋画像を照合する例であったが、指紋照合装置に登録されている指紋画像が複数ある場合には、登録指紋画像毎に非類似度が算出される。そして、登録指紋画像毎にその非類似度が閾値を超えるか否か(すなわち、採取された指紋画像と登録指紋画像が同一指に係るか否か)が判断される。
【0035】
非類似度算出処理が終了すると、図15に戻って、算出された非類似度が閾値P5以下となるか否かを判定する(S82)。算出された非類似度が閾値P5以下となる場合は扉が開放され(S86)、算出された非類似度が閾値P5を超える場合にはブザーが鳴り入室が禁止される(S84)。
【0036】
上述したことから明らかなように本実施例の指紋照合装置では、照合する指紋画像間の回転ズレ角δθが閾値θs未満とのときは回転ズレの補正前に算出された非類似度を用いて指紋画像の同一性判定を行い、回転ズレ角δθが閾値θs以上のときは回転ズレの補正後に算出された非類似度を用いて指紋画像の同一性を判定する。したがって、回転ズレが大きい場合にはその回転ズレが補正されてから指紋画像の同一性判定が行われるため照合率を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明の一実施例について詳細に説明したが、これは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、下記に記載の形態で好適に実施することができる。
【0038】
(1)上述した実施例では、算出された回転ズレ角δθが閾値θsより大きいときに指紋画像間の回転ズレを修正して総合非類似度を算出した(図16参照)。しかしながら、図21に示すように所定の収束条件を満足するまで位置ズレ補正と総合類似度の算出を繰返すようにしてもよい。
すなわち、図21に示す非類似度算出処理では、照合する2つの指紋画像からx方向とy方向のGDSパターンを算出し(S110)、算出したGDSパターンを移動照合することで位置ズレ量(δx,δy)を算出する(S112)。次いで、各指紋画像から回転GDSをそれぞれ算出し(S114)、それら回転GDSから回転ズレ角δθを算出する(S116)。そして、2つの指紋画像間の総合非類似度を算出する(S118)。総合非類似度としては、上述の実施例と同様、x方向とy方向のGDSパターンを移動照合することで算出される距離distxとdistyの和としてもよいし、これらの和にさらに回転GDSを移動照合することで算出される距離distθを加えたものとしてもよい。なお、上述した実施例においても、総合非類似度を(distx+disty+distθ)としてもよい。
ステップS118で総合非類似度が算出されると、次いで、予め設定された収束条件を満足するか否かを判定する(S120)。ステップS120の収束条件としては、例えば、(1)ループ回数(すなわち、ステップS110〜S118までを繰返した回数)=設定値、(2)ステップS118で算出された総合非類似<閾値未満、あるいは(3)回転角δθの変動量<閾値未満、等を用いることができる。また、これらの条件を組合せて収束条件としてもよい。
収束条件を満足しているときはステップS118で算出されている総合非類似度を最終的な総合非類似度として非類似度算出処理を終了し、収束条件を満足していないときはステップS110に戻ってステップS110からの処理を繰返すこととなる。
このような実施形態によると、所定の収束条件を満足するまで総合非類似度を算出する処理が繰返し行われる。したがって、使用目的(例えば、要求されるセキュリティ度)に応じて収束条件を設定することで、指紋照合装置の仕様を使用目的に適合させることができる。
【0039】
(2)上述した実施例においては、照合する指紋画像間の位置ズレ量(δx,δy)をx方向のGDSパターンとy方向のGDSパターンをそれぞれ移動照合することで算出していた。しかしながら、x方向とy方向の位置ズレ量(δx,δy)を算出する手順としては公知の種々の方法を用いることができる。例えば、隆線交差数を用いる方法(すなわち、x方向の隆線交差数を比較することでx方向の位置ズレ量δxを求め、y方向の隆線交差数を比較することでy方向の位置ズレ量δyを求める方法)等を用いることができる。
位置ズレ量(δx,δy)が算出された後は、上述した実施例や上記(1)の実施形態に開示された方法を適宜変更して実施することができる。例えば、算出された位置ズレ量(δx,δy)によって一方の指紋画像の位置ズレを補正し、補正後の指紋画像から回転GDSを算出する。次いで、算出された回転GDSを用いて回転ズレ角δθを算出し、その回転ズレ角δθにより指紋画像の回転ズレを補正する。そして、補正された指紋画像(すなわち、位置ズレ量(δx,δy,δθ)が補正された指紋画像)を周波数変換処理することでスペクトルパターン(例えば、x方向とy方向のGDSパターン)を算出し、それらスペクトルパターンを移動照合することで2つの指紋画像の同一性を判定する。
【0040】
(3)上述した実施例及び実施形態において行われる回転GDSの移動照合処理には、x方向やy方向のGDSパターンを照合するときに利用される各種の計算を高速化するための技術を利用することができる。例えば、特開2002−150289号に開示された技術〔すなわち、非類似度を算出する間隔が粗い状態で最小非類似度を探索する範囲を絞り込み、絞り込んだ範囲内で最小非類似度を探索する技術〕を利用することができる。
また、照合する回転GDSの一部(例えば、所定の走査線(0°〜180°のうち所定の角度範囲)から抽出した回転GDS)を用いて回転ズレ角δθを算出するようにしてもよい。さらに、上記(1)の実施形態において、第1回目の回転ズレ角δθ1は回転GDSの一部を用いて算出し、2回目以降の回転ズレ角δθiは回転GDSの全部を用いて行うようにしてもよい。
【0041】
(4)上述した実施例に係る指紋照合装置に同一指から採取された複数の指紋画像が登録されている場合には、これらの指紋画像間の位置ズレ量(δx,δy,δθ)を予め算出し登録しておくことで、指紋照合時の計算量を少なくすることができる。
例えば、同一指から採取され登録された複数の指紋画像のうち1つを基準登録指紋画像とし、残りの登録指紋画像については基準登録指紋画像との位置ズレ量(δx1,δy1,δθ1)を算出し登録しておく。
指紋照合時には、まず、採取された指紋画像と基準登録指紋画像の照合を行う。これによって、採取された指紋画像と基準登録指紋画像の位置ズレ量(δx2,δy2,δθ2)が算出される。
つぎに、採取された指紋画像と残りの登録指紋画像(同一指に係るもの)の照合を行う。この際、登録されている位置ズレ量(δx1,δy1,δθ1)と算出された位置ズレ量(δx2,δy2,δθ2)を用いて、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量を算出する。すなわち、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量は(δx1+δx2,δy1+δy2,δθ1+δθ2)となる。つまり、採取された指紋画像と照合対象となっている登録指紋画像との位置ズレの補正は、まず、採取された指紋画像を基準指紋画像の位置まで移動させ(すなわち、(δx1,δy1,δθ1)だけ移動させ)、次いで、基準指紋画像の位置から登録指紋画像の位置まで移動(すなわち、(δx2,δy2,δθ2)だけ移動)させればよいためである。
上述のように採取された指紋画像と登録指紋画像との位置ズレ量が計算されるので、まず、計算された位置ズレ量で採取された指紋画像の位置ズレを補正し、次いで、x方向とy方向にGDSパターンを算出し、これら2つのGDSパターンから総合非類似度を算出する。そして、算出された総合非類似度によって採取された指紋画像と登録指紋画像の同一性を判定すればよい。したがって、この場合には回転GDSを算出することなく、指紋画像の同一性判定を行うことができる。
なお、上記の例とは異なり、登録されている位置ズレ量(δx1,δy1,δθ1)と算出された位置ズレ量(δx2,δy2,δθ2)を用いて、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量を予測するようにしてもよい。すなわち、採取された指紋画像と登録指紋画像の位置ズレ量は(δx1+δx2,δy1+δy2,δθ1+δθ2)の近辺にあると予測し、位置ズレ量を算出するときの探索範囲を狭めることができる。
【0042】
(5)上述した実施例では、指紋画像から抽出したGDSに基づいて指紋画像の位置ズレ量(δx,δy,δθ)の算出を行ったが、本発明はこれ以外にも各種周波数変換処理により得られたスペクトル(FFTスペクトル、DFTスペクトル、LPCスペクトル等)を用いて位置ズレ量(δx,δy,δθ)の算出を行うようにしても良い。また、周波数変換して得られたスペクトルを波形信号と見なしてフーリエ逆変換を行うことにより得られたケプストラムを用いて位置ズレ量(δx,δy,δθ)を算出してもよい。
【0043】
(6)上述した実施例では、回転指紋画像(すなわち回転指紋波形パターン)から抽出した回転GDSを用いて指紋画像間の回転ズレ角を算出したが、回転指紋画像から他の特徴情報を抽出しその特徴情報を用いて回転ズレ角を算出してもよい。例えば、図22に示すように、回転指紋画像(同図(a))から指紋ピッチパターン(同図(b))や指紋隆線交差数(同図(c))を抽出し、これらを回転方向に移動照合することによって回転ズレ角を算出してもよい。指紋ピッチパターンは回転方向の各走査線について隣り合う指紋隆線の間隔の平均値をパターン化したものであり、指紋隆線交差数は回転方向の各走査線についてその走査線と指紋隆線との交差数を求めることで得られる。
さらに、回転指紋画像の回転方向の各走査線から最長隆線分布波形を求め、この最長隆線分布波形を用いて回転ズレ角を算出することもできる。最長隆線分布波形を抽出する方法としては、特開平7−57085号に開示された方法を用いることができる。
【0044】
(7)上述した実施例では、回転指紋画像を得るために基準点を中心に両側に伸びる走査線(すなわち直径)を回転させたが、図23に示すように基準点を中心に片側に伸びる走査線(すなわち半径)を回転させて回転指紋画像(図24)を取得するようにしてもよい。
【0045】
(8)上述した実施例では、回転指紋画像から抽出した回転GDSを用いて指紋画像間の回転ズレ角を算出したが、この回転GDSを用いて指紋画像の同一性判定を行ってもよい。
【0046】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る位置ズレ補正方法の概略を示す図
【図2】指紋画像のデータ構成を説明するための図
【図3】採取された指紋画像、その指紋画像から抽出されたGDSパターン及び一走査線上の濃度値変化の一例を示す図
【図4】一走査線上の濃度値変化から得られたGDSパターンの一例を示す図
【図5】照合する二つのGDSパターンの非類似度と、その非類似度が最小となるときのズレ幅を算出する手順を説明するための図
【図6】図1に示す指紋画像1から回転指紋波形パターンを作成する手順を説明するための図
【図7】作成された回転指紋波形パターンと、回転指紋波形パターンから作成された回転GDS
【図8】図1に示す指紋画像2から回転指紋波形パターンを作成し、その回転指紋波形パターンから回転GDSを作成するための手順の概略を示す図
【図9】回転GDSを移動照合したときの非類似度と回転角の関係を示す図
【図10】位置ズレと回転ズレが補正された状態を示す図
【図11】本発明の一実施例に係る指紋照合装置の全体構成を示すブロック図
【図12】指紋登録処理を示すフローチャート
【図13】指紋画像採取処理を示すフローチャート
【図14】画質判定処理を示すフローチャート
【図15】指紋照合処理を示すフローチャート
【図16】非類似度算出処理を示すフローチャート
【図17】照合する2つの指紋画像と、これらの指紋画像から抽出したx方向とy方向のGDSパターンを併せて示す図
【図18】図17に示す指紋画像のx方向とy方向の位置ズレを補正した状態を示す図
【図19】図18に示す指紋画像から作成した回転指紋波形パターンと、回転指紋波形パターンから抽出した回転GDSを併せて示す図
【図20】図17に示す指紋画像のx方向、y方向及び回転方向の位置ズレを補正した指紋画像と、その指紋画像からx方向とy方向に抽出したGDSパターンを併せて示す図
【図21】他の実施形態における非類似度算出処理を示すフローチャート
【図22】他の実施形態を説明するための図
【図23】回転指紋画像を作成するための他の方法を示す図
【図24】図23の方法で得られた回転指紋画像と回転GDS
【符号の説明】
10・・指紋画像採取部
14・・指紋画像判定部
18・・指紋登録部
20・・指紋照合部
22・・制御部
24・・入力部
Claims (6)
- 指紋画像間の回転ズレ角を算出する方法であって、
一方の指紋画像に対しては、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第1のスペクトルパターンを取得し、
他方の指紋画像に対しては、その指紋画像内において前記第1基準点と対応する第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第2のスペクトルパターンを取得し、
取得された第1のスペクトルパターンに対して第2のスペクトルパターンを回転方向に所定角度範囲内でずらしながら相関度を算出し、
相関度が最大となるときのズレ角を指紋画像間の回転ズレ角に決定することを特徴とする指紋画像間の回転ズレ角算出方法。 - 前記第2基準点は、2つの指紋画像間のx−y方向の位置ズレ量によって第1基準点を補正することで得られることを特徴とする請求項1に記載の指紋画像間の回転ズレ角算出方法。
- 識別対象者から採取した指紋画像と登録されている指紋画像を照合することで識別対象者が登録者か否かを判別する指紋照合装置であって、
指紋を採取して指紋画像を出力する指紋画像採取手段と、
採取された指紋画像と登録されている指紋画像とを照合する手段とを備え、
その指紋照合手段は、
採取された指紋画像と登録指紋画像のx−y方向の位置ズレ量を算出し、
照合する一方の指紋画像に対しては、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第1のスペクトルパターンを取得し、
照合する他方の指紋画像に対しては、算出されたx−y方向の位置ズレ量を用いて第1基準点を補正することで第2基準点を求め、その第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させて得られる複数の走査線について、各走査線上の濃度値群をそれぞれ周波数変換することで第2のスペクトルパターンを取得し、
取得された第1のスペクトルパターンに対して第2のスペクトルパターンを回転方向に所定角度範囲内でずらしながら相関度を算出し、
相関度が最大となるときのズレ角と算出されたx−y方向の位置ズレ量とを用いて照合する指紋画像間の回転ズレ及び位置ズレを補正して2つの指紋画像が同一か否かを判定することを特徴とする指紋照合装置。 - 2つの指紋画像を照合する方法であって、
一方の指紋画像に対して、その指紋画像内に設定された第1基準点を通る基準走査線を第1基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させることで得られる走査線群の濃度値分布を取得する工程と、
他方の指紋画像に対して、その指紋画像内において前記第1基準点と対応する第2基準点を通る基準走査線を第2基準点を中心に所定の角度間隔で順次回転させることで得られる走査線群の濃度値分布を取得する工程と、
第1の画像から取得された濃度値分布から回転方向に関して第1の特徴情報を抽出する工程と、
第2の画像から取得された濃度値分布から回転方向に関して第2の特徴情報を抽出する工程と、
抽出された第1の特徴情報に対して第2の特徴情報を回転方向に所定角度でずらしながら相関度を算出する工程と、
を有する指紋画像照合方法。 - 算出された相関度のうち最大のものが所定の閾値を超えるときに、2つの指紋画像を同一指から採取したものであると決定することを特徴とする請求項4に記載の指紋画像照合方法。
- 算出された相関度が最大となるときの2つの特徴情報のズレ角を2つの指紋画像間の回転ズレ角に決定することを特徴とする請求項4に記載の指紋画像照合方法。
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