JP2004241146A - リチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物、並びにこれを用いたリチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム、リチウム及び遷移金属を含有してなる金属複合酸化物であって、27Al−NMRスペクトルが、1N−塩化アルミニウム水溶液のピーク位置を0ppmとした場合に、ケミカルシフト値として50〜100ppmの範囲内に極大値を示すピーク(A)と−10〜50ppmの範囲内に極大値を示すピーク(B)とを有しており、かつピーク強度比(B)/(A)が、0.1以上であることを特徴とするリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物、並びにこれを用いたリチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、エネルギー密度及び出力密度等に優れ、小型化・軽量化できるため、ノート型パソコン、携帯電話及びハンディビデオカメラ等の携帯機器の電源として急激な伸びを示している。また、電気自動車や電力のロードレベリング等の電源としても注目されている。
【0003】
リチウム二次電池用の正極活物質として、層状構造を有するリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、さらにはスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)、等のリチウム遷移金属複合化合物を用いた場合、4V級の高電圧を得ることができ、且つ高いエネルギー密度を有することから、高性能な電池特性が発現することが知られている。
【0004】
また、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の熱安定性向上、構造安定性向上、レート特性向上、サイクル特性向上、安全性向上、高温特性向上、等の電池性能向上のために、遷移金属の一部を他の金属元素(以下、このような遷移金属の置換のための金属元素を「置換金属元素」という場合がある)で置換したリチウム遷移金属複合酸化物を用いることも知られている。
【0005】
その中でも、置換金属元素としてアルミニウムを用いた場合には、特に熱安定性向上、構造安定性向上、及びサイクル特性向上、等の優れた電池性能が発現することが知られており、リチウム遷移金属複合酸化物の組成を変更して電池特性を向上させる研究が活発に行われている。
例えば、オキシ水酸化ニッケルと水酸化リチウムとからリチウムニッケル複合酸化物を製造する際に、コバルトとアルミニウムを含有させることにより、高い初期放電容量、良好なサイクル特性、及び熱的な安定性を有する正極活物質を合成できることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、リチウム二次電池を使用する条件がより過酷化してきたことに伴い、多様な用途、環境下でも長期間に渡り高出力が得られるリチウム二次電池が要求されている。これに対して、従来のリチウム二次電池正極材料では、長期間使用した場合の出力劣化という点では、まだ特性的に不十分である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−102054号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期使用による出力劣化が少ないリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルミニウムの存在形態として、27Al−NMRで測定したスペクトルのケミカルシフト値が特定の状態を示すように制御された、リチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物が、長期使用時の出力特性に優れている、ということを見出し本発明を完成させた。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物は、下記測定条件にて27Al−NMRを測定した場合、得られるスペクトルのケミカルシフト値として、50〜100ppmの範囲内に極大値を示すピーク(A)、及び−10〜50ppmの範囲内に極大値を示すピーク(B)を有する。なお、ピーク位置は、標準試料である1N−塩化アルミニウム水溶液を測定した場合に得られるピーク位置を0ppmとした場合のものである。またこの2つのピークの強度比(B)/(A)は、0.1以上である。0.2<(B)/(A)であるのが好ましく、より好ましくは0.5<(B)/(A)である。
(B)/(A)<0.1では、これを正極活物質とする二次電池は長期使用時に所望の出力特性を示さない。またピーク強度比(B)/(A)の上限は、通常(B)/(A)<1000であり、好ましくは(B)/(A)<500、より好ましくは(B)/(A)<100である。
【0011】
ここでピーク強度とは、ベースラインから、50〜100ppm、及び−10〜50ppmの範囲内に存在するピークの極大値までの高さのことである。なお、ベースラインは、110〜130ppmの強度の平均値及び−40〜−20ppmの強度の平均値をゼロとして、この2点を直線で結んだものである。
また、50ppmに極大値を示すピークが現れる場合、このピークはピーク(A)に相当するものとする。
【0012】
<測定条件>
プローブ : 4mmφ CP/MAS用プローブ
共鳴周波数 : 104.20MHz
測定法 : バックグラウンド信号低減のための4パルス系列法
パルス幅 : 1.0μs(90゜)
MAS回転数: 15kHz
待ち時間 : 3s
測定温度 : 室温
上記測定条件において、積算回数はアルミニウムの含有量に応じて、1600〜210000回である。
【0013】
27Al−NMRにおいて、異なる位置にピークが観測されるということは、アルミニウム元素に対する周辺状態の違い、例えば、周辺元素自体の違い、周辺の電子状態の違い、周辺元素との結合距離の違い、結合角の違い、配位数の違い、等の影響が反映されているものと考えられる。本発明に係るアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物が、50〜100ppmの範囲内に極大値を示すピーク(A)、及び−10〜50ppmの範囲内に極大値を示すピーク(B)を有することは、この複合酸化物には、アルミニウム元素に関して2つ以上の異なる状態が存在していることを示している。
【0014】
一般的な条件で27Al−NMRを測定した場合には、27Al−NMR測定時特有のバックグラウンド信号が観測されてしまい、定性及び定量が困難な場合が多い。本発明者らは、このバックグラウンド信号を低減するために、4パルス系列測定法(参考文献:Ad Bax,J.Mag.Reson.,65,142(1985))を用いて、より定性及び定量が可能となるようなスペクトルを得た。
【0015】
27Al−NMRを測定する場合の測定条件、特にパルス幅やパルス待ち時間を変化させると、それらの影響により得られるスペクトルの形状が異なり、ピーク強度の比較ができない可能性が高くなるため、ピーク強度比は、前記測定条件下で測定したスペクトルより求める。
本発明に係るアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物は、27Al−NMR測定におけるピーク強度比(B)/(A)を満たす限りにおいて特に制限はないが、通常は下記一般式(I)で示されるものである。
【0016】
【化2】
LixM11−y−zM2yAlzO2− δ (I)
【0017】
式(I)中、xは0.7≦x、好ましくは0.8≦x、より好ましくは0.9≦xの数を表し、上限はx≦1.3、好ましくはx≦1.2、より好ましくはx≦1.1の数を表す。この複合酸化物の基本組成はLiM11−y−zM2yAlzO2なので、xが定比(x=1)より小さすぎると結晶構造が不安定化する原因となり、またxが大きすぎると焼成によりこの複合酸化物を製造する際に焼結が進行しすぎる可能性があり、かつこれを正極活物質とするリチウム二次電池の容量低下を招く恐れがある。yは0≦yの数を表し、上限はy≦0.3である。zは0<z、好ましくは0.05≦z、より好ましくは0.07≦zの数を表し、上限はz≦0.5、好ましくはz≦0.45である。yやzの値が大きくなり過ぎると、単一相のアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物が製造しにくくなる。
【0018】
M1は、Ni、Co及びMnから選択される少なくとも一種の遷移金属元素を表す。M1は一種の元素であっても良いし、二種以上の元素の組合せであっても良い。M2は、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Ga、Bi、Sn、Zn、Mg、Ge、Nb、Ta、Be、Ca、Sc及びZrから選択される少なくとも一種の元素を表す。このうち電池性能、原料の入手のし易さ等の点から、好ましくは、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Ga、Bi、Zn、Mg、Nb及びCaから選択される元素であり、より好ましくはFe、Cr、V、Ga及びMgから選択される元素である。この複合酸化物において、M2は一般式(I)中のM1サイトの一部を置換して存在するが、場合によってはLiサイトを置換していてもよい。
δは酸素欠損、又は酸素過剰量に相当し、−0.1<δ、好ましくは−0.05<δの数を表し、上限はδ<0.1、好ましくはδ<0.05の数を表す。δの範囲が大きすぎたり小さすぎたりすると、結晶構造が不安定化する。
【0019】
本発明に係るアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物は、この複合酸化物を構成する金属元素、すなわちリチウム、M1、M2及びアルミニウムのそれぞれの化合物を含有するスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥物を調製し、更にこれを焼成する方法、又はこの複合酸化物を構成する金属元素もしくはこれからリチウムを除いたものの化合物を含有するスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥物を調製し。更にこれにリチウム化合物を混合した後焼成する方法、等により製造することができる。
【0020】
この複合酸化物の製造に用いるリチウム化合物としては、例えば、酸化リチウム、水酸化リチウム、オキシ水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム等のリチウムの無機酸塩類、酢酸リチウム等のリチウムの有機酸塩類、塩化リチウム等のリチウムのハロゲン化物類、及びこれらの水和物を挙げることができるが、通常は酸化リチウム、水酸化リチウム、オキシ水酸化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムなどを用いるのが好ましい。中でも好ましいのは、水酸化リチウム、オキシ水酸化リチウム、炭酸リチウム、特に水酸化リチウムである。リチウム化合物は、複数種を併用することもできる。
【0021】
ニッケル化合物としては、例えば、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル等のニッケルの無機酸塩類、酢酸ニッケル等のニッケルの有機酸塩類、塩化ニッケル等のニッケルのハロゲン化物類、及びこれらの水和物を挙げることが出来る。中でも、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルを用いるのが好ましく特に酸化ニッケル又は水酸化ニッケルを用いるのが最も好ましい。ニッケル化合物も、複数種を併用することができる。
【0022】
コバルト化合物としては、例えば、酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、炭酸コバルト等のコバルトの無機酸塩類、酢酸コバルト等のコバルトの有機酸塩類、塩化コバルト等のコバルトのハロゲン化物類、及びこれらの水和物を挙げることが出来る。中でも、酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、特に酸化コバルト又は水酸化コバルトを用いるのが好ましい。コバルト化合物も、複数種を併用することができる。
【0023】
マンガン化合物としては、例えば、酸化マンガン、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、炭酸マンガン等のマンガンの無機酸塩類、酢酸マンガン等のマンガンの有機酸塩類、塩化マンガン等のマンガンのハロゲン化物類、及びこれらの水和物を挙げることが出来る。中でも、酸化マンガン、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガンなどを用いるのが好ましく、特に酸化マンガン又は水酸化マンガンを用いるのが最も好ましい。マンガン化合物も、複数種を併用することができる。
【0024】
アルミニウム化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウムの無機酸塩、酢酸アルミニウム等のアルミニウムの有機酸塩、塩化アルミニウム等のアルミニウムのハロゲン化物、及びこれらの水和物を挙げることができる。中でも、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウムを用いるのが好ましい。最も好ましいのは、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、特にオキシ水酸化アルミニウムである。アルミニウム化合物も、複数種を併用することができる。
【0025】
本発明では、スラリー中に更に他の1種又は2種以上の金属化合物を含有させることができ、これによりこれらの金属を含有するアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を製造することができる。このような金属元素としては、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Ga、Bi、Sn、Zn、Mg、Ge、Nb、Ta、Be、Ca、Sc及びZrから選ばれる元素を挙げることができる。この中でも電池性能などの点から、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Ga、Bi、Zn、Mg、Nb及びCaから選ばれる元素の化合物を含有させるのが好ましく、特にFe、Cr、V、Ga及びMgから選ばれる元素の化合物を含有させるのが好ましい。
【0026】
これらの置換金属元素源の化合物としては、例えば、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、酢酸塩等の有機酸塩、塩化物等のハロゲン化物、及びこれらの水和物を挙げることができる。これらの置換金属元素化合物も、複数種を併用することができる。
スラリー調製に際しての、リチウム、M1、M2及びアルミニウムの各元素の化合物の比率はリチウム、M1、M2及びアルミニウムの原子比が目的とするアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物の組成と一致するようにする。なお、リチウムは必ずしもスラリー中に含有させておく必要はなく、M1、M2及びアルミニウムの各元素の化合物、更にはこれに目的とする複合酸化物の組成に相当するよりも少量のリチウム化合物を含有するスラリーを噴霧乾燥して得た噴霧乾燥物に、リチウム化合物を粉末で混合して焼成しても、所望の組成のアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。すなわち、M1、M2及びアルミニウムの各元素と異なり、リチウムは焼成という固相反応に際して移動しやすいので、予め他の元素と均一に混合しておかなくてもよい。なお、リチウムは焼成に際して揮散しやすいので、複合酸化物に所望の組成よりも多めに用いることが好ましい。
【0027】
スラリーの調製に用いる分散媒としては、各種の有機溶媒、水性溶媒を使用しすることができるが、好ましいのは水である。
スラリー全体に含まれる、複合酸化物を構成する各金属元素化合物の総重量比は、通常スラリーの全重量に対し10重量%以上、好ましくは12.5重量%以上である。スラリー濃度が低すぎると、噴霧乾燥工程における乾燥負荷が大きくなる。また通常上限として50重量%以下、特に40重量%以下とすることが好ましい。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度の上昇を招き、噴霧乾燥工程におけるスラリーポンプによるスラリー輸送が困難になる。
【0028】
スラリー中の固形分の平均粒子径は通常2μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。スラリー中の固形分の平均粒子径が大きすぎると、焼成工程における反応性が低下するだけでなく、噴霧乾燥により得られる造粒物の球状度が低下し、最終的に得られる複合酸化物の粉体充填密度が低くなる傾向にある。しかしスラリー中の固形分を必要以上に小粒子化することは、コストアップを招くので、固形分の平均粒子径は通常0.01μm以上である。粉砕費用と粉砕により得られる利点とを考慮すると、粉砕は平均粒子径が0.05μm、特に0.1μmを下廻らないようにするのが好ましい。
【0029】
本発明においては、複合酸化物を構成する各金属元素化合物を分散媒中で混合してスラリーを調製するに際し、媒体攪拌型粉砕機等を使用して強く攪拌して湿式粉砕を行うことが好ましい。これによりスラリー中での金属元素の分散の均一性を向上させ、且つ焼成工程での反応性を向上させることができる。湿式粉砕に用いる湿式粉砕機としては、ホモジナイザー、ホモミキサー等の主に分散粉砕を目的とするものや、ビーズミル、ボールミル、振動ミル等の主に粉砕を目的とするもの等が挙げられるが、後者の粉砕機はスラリー固形分の粉砕効率が非常に高いことから、これを用いてスラリー中の固形分を所望の小粒径にまで粉砕するのが好ましい。特に好ましいのは、ビーズミルによる湿式粉砕である。
【0030】
なお、本発明においては、スラリー中の固形分の平均粒子径、及び噴霧乾燥により得られた造粒物の平均粒子径は、いずれも公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定する。
また、スラリーの粘度は、通常50mPa・s以上である。100mPa・s以上、特に200mPa・s以上であることが好ましい。粘度が上記範囲以下の場合は、噴霧乾燥により得られる粗造粒物が小粒径化したり破損しやすくなったりする。逆に粘度が大きすぎると、前述したようにポンプによるスラリー輸送が困難になるので、粘度は通常3000mPa・s以下とすべきである。2000mPa・s以下、特に1600mPa・s以下とするのが好ましい。スラリーの粘度測定は、公知のBM型粘度計を用いて行う。
【0031】
噴霧乾燥は常法により行えばよい。例えば、ノズルの先端に気体流とスラリーとを流入させることによってノズルからスラリーを液滴として吐出させ、乾燥ガスと接触させて液滴を迅速に乾燥させる方法を用いることができる。乾燥ガスとしては、空気、窒素等を用いることができるが、通常は空気が用いられる。これらは加圧して使用することが好ましい。
【0032】
乾燥ガス温度は、通常50℃以上、好ましくは70℃以上であり、かつ通常300℃以下、好ましくは250℃以下とする。温度が高すぎると、得られた造粒粒子が中空構造の多いものとなったり、これが破裂して粉体となったりして、最終的に得られる複合酸化物の充填密度が低下する傾向がある。
噴霧乾燥は造粒物の平均粒子径が50μm以下、特に30μm以下となるよう行うのが好ましい。ただし、あまりに小さな粒径の造粒物は製造困難なので、通常は平均粒子径で3μm以上、好ましくは4μm以上のものを製造する。造粒物の粒子径は、噴霧形式、気体流供給速度、スラリー供給速度、乾燥温度等を適宜選定することによって制御することができる。
【0033】
造粒物は、スラリーに十分な量のリチウム源を混合した場合にはそのまま焼成して、又リチウム源をスラリーに混合しない場合や、混合量が不十分な場合は、粉末のリチウム源と混合したのち焼成して、目的とするアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物とする。粉末のリチウム源との混合は常用の混合装置を用いて行えばよい。なお、混合に際しては造粒物が破砕しないように、すなわち造粒物がその形状を実質的に保持するように行うことが好ましい。粉末のリチウム源としては、前述のスラリー調製に用いる物として説明したものを用いればよい。
【0034】
上記造粒物、又は粉末のリチウム源との混合物は、焼成する前に必要に応じて、各種金属元素化合物等の添加物を混合することができる。この場合も、混合手法に特に制限はないが、工業的に使用させる粉体混合装置を使用して混合するのが均一性の点から好ましい。
焼成温度は、原料として使用される各金属元素化合物の種類や、原子比によって異なるが、通常650℃以上、好ましくは700℃以上であり、また通常1100℃以下、好ましくは1000℃以下である。温度が低すぎると、結晶性の良いアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を得るために長時間の焼成時間を要する。また、温度が高すぎると目的とするアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物以外の結晶相が生成したり、欠陥が多いアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を生成したりする。このようなアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として使用したリチウム二次電池は、電池容量が低下したり、充放電による結晶構造の崩壊による劣化を招くことがある。
【0035】
焼成時間は、温度によっても異なるが、通常前述の温度範囲であれば30分以上、50時間以下である。焼成時間が短すぎると結晶性の良いアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を得るのが困難である。
焼成時の雰囲気は、最終的には純酸素、空気等の酸素含有ガスを用いるが、昇温過程では窒素ガス等の不活性ガスを一部用いてもよい。
【0036】
焼成装置としては常用のものを用いればよく、例えば箱型炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。
上述のリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物の製法において、27Al−NMRを測定した場合のケミカルシフト値が本発明で規定する複合酸化物を生成させるためには、例えば以下に示すような手段をいくつか組み合わせればよい。
【0037】
1)アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物中のアルミニウム含有量(z)を、一般的に用いられている複合酸化物中のアルミニウム含有量よりも増加させる。
具体的には、前記(I)式の中のアルミニウム含有量(z)を、0.07≦z≦0.4の範囲とすることにより、27Al−NMRのピーク強度比(B)/(A)を大きくすることが可能となる。
【0038】
2)アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物中のアルミニウム含有量(z)とM2金属元素含有量(y)の合計量として、適切な値を選択する。
具体的には、0.1≦z+y≦0.45の範囲とすると、27Al−NMRのピーク強度比(B)/(A)を大きくすることが可能となる。
【0039】
3)M2金属元素として、アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物中における価数およびイオン半径が適切な値を示すものを選択する。
アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物中におけるM2金属元素の価数は、好ましくは2価と4価の間であり、より好ましくは3価である。アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物中での遷移金属イオンの価数と同じ3価の元素を選択することで、酸化物内の価数バランスを保つことができ、27Al−NMRのピーク強度比(B)/(A)が大きくなりやすい。この価数があまりに高い元素や低い元素を含有しようとすると、アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物中の全体の価数バランスが崩れてしまう。
【0040】
また、複合酸化物中におけるM2金属元素のイオン半径は、遷移金属イオンのイオン半径に近いものであるのが好ましい。例えば、主たる遷移金属がニッケルである場合には、3価のニッケルイオンのイオン半径である0.70ű0.2Å、特に0.7ű0.1Åのイオン半径を有するM2元素を選択することで、27Al−NMRのピーク強度比(B)/(A)を大きくすることが可能となる。
【0041】
具体的な置換元素として、好ましくはFe、Cr、V、Ga及びMgから選ばれる元素であり、より好ましくはFe、Cr、V及びGaから選ばれる。
イオン半径とは、イオンを球とみなした場合の半径として、ShannonとPrewittが実測に基づいて整理した値(Acta Crystallor.,B25,P925(1969))に、Shannonが改良を加えて得たもの(Acta Crystallor.,A32,P751(1976))による。(日本化学会編 化学便覧 基礎編 改訂4版、丸善株式会社、PII−725(1999))
【0042】
4)アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を製造する際のスラリー調製工程において、十分に湿式粉砕を行う。これにより、各原料金属化合物の粒子表面が活性な状態となるので、その後の焼成過程での各原料粒子間の反応性が向上し、27Al−NMRの測定において本発明で規定するケミカルシフトを示す複合酸化物が生成しやすくなる。
また、原料として各元素の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物等を用い、スラリー中の固形分の平均粒径を、0.1μm〜0.5μmとするのも好ましい。
【0043】
5)アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を製造する際の、焼成工程において、リチウムサイトへの遷移金属の混入、及び遷移金属サイトへのリチウムの混入が少なくなるような条件を選択する。
リチウムサイトへの遷移金属の混入、及び遷移金属サイトへのリチウムの混入を少なくするには、リチウム層と遷移金属層が明確に区別できる複合酸化物が生成するような焼成条件で焼成する。含有する元素やその量により変動するが、具体的には、下限としては好ましくは650℃以上、より好ましくは700℃以上、上限としては好ましくは950℃以下、より好ましくは900℃以下である。
リチウムサイトへの遷移金属の混入、及び遷移金属サイトへのリチウムの混入がある場合には、充放電時のリチウムの拡散がスムーズに行かなくなったり、充放電時の構造安定性が低くなったりして、その結果電池特性、特にサイクル特性、出力特性が不良となってしまう。
【0044】
本発明に係るアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物をバインダーと混合し、所望により更に導電材を混合したのち、溶媒を加えて均一な塗布液とし、これを集電体上に塗布して乾燥させることにより正極を形成することができる。
正極中には、本発明の効果を妨げない限り、他のアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を併用しても良い。またLiFePO4等のように、アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物以外のリチウムイオンを吸蔵・放出しうる活物質を更に含有していても良い。
【0045】
導電材としては、通常は天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料が用いられる。正極中の導電材の割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上であり、かつ通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。導電材の割合が低すぎると導電性が不十分になることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下することがある。
【0046】
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を挙げることができる。正極中のバインダーの割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、更に好ましくは5重量%以上であり、かつ通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。バインダーの割合が低すぎると、活物質を十分に保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させることがあり、一方高すぎると電池容量や導電性を下げることがある。
【0047】
溶媒としては、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の有機溶剤を用いるが、水を用いることもできる。また、バインダー樹脂のラテックスを用いることもできる。
【0048】
集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が挙げられる。好ましくはアルミニウムである。集電体の厚さは、通常1〜1000μm、好ましくは5〜500μm程度である。正極は、通常集電体上に前述の塗布液を塗布、乾燥したのち、ローラープレス等の手法により圧密する。
負極としては、天然黒鉛、熱分解炭素等の炭素材料、さらにSnO、SnO2、Sn1−xMxO(M=Hg、P、B、Si、Ge又はSb、但し0≦x<1)、Sn3O2(OH)、Sn3−xM’xO2(OH)2(M’=Mg、P、B、Si、Ge、Sb又はMn、但し0≦x<3)、LiSiO2、SiO2又はLiSnO2等の負極活物質を、銅、アルミニウム等の集電体上に塗布したもの、或いはリチウム金属箔、リチウム−アルミニウム合金等が使用できる。負極活物質として好ましくは炭素材料を使用する。
【0049】
その炭素材料としては、通常は、黒鉛、コークス、石炭系や石油系ピッチの炭化物、或いはこれらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が用いられる。
【0050】
リチウム二次電池に使用する電解質は通常非水電解液であり、電解塩を非水系溶媒に溶解したものである。電解塩としてはLiCiO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiBr、LiCF3SO3等のリチウム塩が挙げられる。また、非水系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素系炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等が挙げられる。これら電解塩や非水系溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。なお、これらの電解液の代わりに、従来公知の各種の固体電解質やゲル状電解質を使用することもできる。
【0051】
リチウム二次電池に用いられるセパレーターとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエステル、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル等の微多孔性高分子フィルター、又はガラス繊維等の不繊布フィルター、或いはガラス繊維と高分子繊維の複合不繊布フィルター等を挙げることができる。セパレータの化学的及び電気化学的安定性は重要な因子であり、この点からポリオレフィン系高分子が好ましく、電池セパレータの目的の1つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であることが望ましい。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて更に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
実施例1
NiO、Co(OH)2、及びAlOOHを、Ni:Co:Al=0.76:0.15:0.09(原子比)となるように混合し、これに水を加えて固形分濃度30重量%のスラリーを調製した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.3μm以下になるまで粉砕した。このスラリー粘度は550mPa・sであった。
このスラリーを、二流体ノズル型スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を行った。乾燥ガスとしては空気を用い、乾燥ガス入口温度は90℃とした。
その後、得られた造粒物とLiOHとを、Li:(Ni+Co+Al)=1.05:1.00(原子比)となるように十分に乾式混合して混合粉とした。
その混合粉を、酸素雰囲気下にて740℃で12時間焼成することにより、ほぼ仕込みの原子比組成のアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を得た。
【0053】
得られたアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、単一相が得られており、菱面体晶の層状型リチウム遷移金属複合酸化物の構造を有していることが確認された。
【0054】
実施例2
NiO、Co(OH)2、及びAlOOHを、Ni:Co:Al=0.55:0.15:0.30(原子比)となるように混合してスラリーを調製した以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を得た。得られたアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、単一相が得られており、菱面体晶の層状型リチウム遷移金属複合酸化物の構造を有していることが確認された。
【0055】
比較例1
NiO、Co(OH)2、及びAlOOHを、Ni:Co:Al=0.80:0.15:0.05(原子比)となるように混合してスラリーを調製した以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を得た。得られたアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、単一相が得られており、菱面体晶の層状型リチウム遷移金属複合酸化物の構造を有していることが確認された。
【0056】
<27Al−NMR測定>
下記条件にて、本発明の実施例及び比較例の27Al−NMR測定を実施した。実際の測定には、Chemagnetics社製核磁気共鳴スペクトル分析装置(CMX−400型)を用いた。
<測定条件>
プローブ : 4mmφ CP/MAS用プローブ
共鳴周波数 : 104.20MHz
測定法 : バックグラウンド信号低減のための4パルス系列法
パルス幅 : 1.0μs(90゜)
MAS回転数: 15kHz
積算回数 : 1600〜210000回
待ち時間 : 3s
測定温度 : 室温
標準試料 : 1N−塩化アルミニウム水溶液(0ppm)
得られた27Al−NMRスペクトルより、ケミカルシフト値として50〜100ppmの範囲内に極大値を示すピーク(A)、及びケミカルシフト値として−10〜50ppmの範囲内に極大値を示すピーク(B)のピーク強度比(B/A)を算出した結果を表1に示す。
【0057】
<低温雰囲気下での出力特性評価>
以下の方法で、本発明の実施例及び比較例の低温雰囲気下での出力特性評価を行った。
A.正極の作製
実施例及び比較例で得られたアルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を75重量部、アセチレンブラック20重量部、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量部を乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを12mmφに打ち抜いた。これをアルミニウムのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
【0058】
B.負極の作製
粒径約8〜10μmの黒鉛粉末92.5重量部と、ポリフッ化ビニリデン7.5重量部とを混合し、これにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとした。銅箔の片面にこのスラリーを塗布し、乾燥させた。これを12mmφに打ち抜き、更にに0.5ton/cm2でプレス処理して負極とした。
【0059】
C.電池の作製
上記で作製した正極と負極、及び多孔性ポリエチレンフィルム製のセパレータを用いてコインセルを作製した。電解液は、エチレンカーボネート3重量部とジエチルカーボネート7重量部との混合溶媒に六弗化燐酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルとなるように溶解させたものを用いた。
【0060】
D.出力特性の評価
コインセルは、コンディショニング電流値0.2Cで、充電上限電圧4.1V、放電下限電圧3.0Vとして、充放電2サイクルの初期コンディショニングを行った。
1時間程度室温で放置し、電圧を安定させた後、定電流1/(3C)で72分間充電を行い、1時間静置した。次いで、−30℃雰囲気下で1時間以上静置した後、クロノポテンショメトリー法にて、定電流2.5Cで10秒間放電を行った。このときの放電直前のOCV(Open Circuit Voltage)と放電10秒後のOCVとの差(ΔV1)を測定した。
【0061】
また、ΔV1測定後のコインセルを、60℃雰囲気下で、定電流1C、充電上限電圧4.1V、放電下限電圧3.0Vとして、充放電を100サイクル繰り返した。引き続きΔV1測定時と同様の条件で、放電直前のOCVと放電10秒後のOCVとの差(ΔV2)を測定した。
これらサイクル前の値(ΔV1)とサイクル後の値(ΔV2)の比を取って表1に示した。OCVの差(ΔV)が大きいということは、電池の抵抗が大きいことを表し、その結果出力は低くなる。従って、この比(ΔV2/ΔV1)の値が1以下であれば、低温雰囲気下での出力がサイクル後で向上していることを意味する。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明のリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池は、長期間使用した場合の出力特性に優れていることから、工業的に極めて有利である。
Claims (7)
- アルミニウム、リチウム及び遷移金属を含有してなる金属複合酸化物であって、下記の測定条件に従って得られる27Al−NMRスペクトルが、1N−塩化アルミニウム水溶液のピーク位置を0ppmとした場合に、ケミカルシフト値として50〜100ppmの範囲内に極大値を示すピーク(A)と−10〜50ppmの範囲内に極大値を示すピーク(B)とを有しており、かつピーク強度比(B)/(A)が、0.1以上であることを特徴とするリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物。
<測定条件>
プローブ : 4mmφ CP/MAS用プローブ
共鳴周波数 : 104.20MHz
測定法 : バックグラウンド信号低減のための4パルス系列法
パルス幅 : 1.0μs(90゜)
MAS回転数 : 15kHz
パルス待ち時間: 3s
測定温度 : 室温 - ピーク強度比(B)/(A)が、0.5より大であることを特徴とする請求項1に記載の金属複合酸化物。
- 下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属複合酸化物。
【化1】
LixM11−y−zM2yAlzO2− δ (I)
〔式(I)中、xは、0.7≦x≦1.3の数であり、yは、0≦y≦0.3の数であり、zは、0<z≦0.5の数であり、M1は、Ni、Co及びMnから選択される少なくとも一種の遷移金属元素を示し、M2は、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Ga、Bi、Sn、Zn、Mg、Ge、Nb、Ta、Be、Ca、Sc及びZrから選択される少なくとも一種の元素を示し、δは、−0.1<δ<0.1の数を表す。〕 - zが、0.07≦z≦0.4の数であることを特徴とする請求項3に記載の金属複合酸化物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物であって、
1)この複合酸化物を構成する各金属元素の化合物を含有するスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥物を調製し、更にこれを焼成する過程を経て製造されたものであるか、又は、
2)この複合酸化物を構成する各金属元素の化合物又はこれからリチウム化合物の除いたものを含有するスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥物を調製し、更にこれにリチウム化合物を混合した後、焼成する過程を経て製造されたものであることを特徴とする、金属複合酸化物。 - 少なくとも正極活物質、結着剤及び導電材を含有するリチウム二次電池用の正極であって、前記正極活物質が請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用アルミニウム含有リチウム遷移金属複合酸化物であるリチウム二次電池正極。
- 請求項5に記載のリチウム二次電池正極を正極とするリチウム二次電池。
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2003
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