JP2004127550A - 燃料電池システムの運転方法および燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】冷媒の流路となる配管、熱交換器等に不具合を生じさせず、燃料電池を長期間にわたり安定して運転することのできる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム1を、燃料電池2と、燃料電池2に冷媒を供給し燃料電池2の温度を調整する燃料電池冷却手段3と、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定手段4とを備えるよう構成する。不純物イオン測定手段4により、冷媒における不純物イオンの溶出の程度が測定される。その測定値から、金属材料の腐食の進行状況を判断し、必要な場合に所定の処置を施すことで、冷媒の流路における不具合の発生を未然に回避することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料電池システム1を、燃料電池2と、燃料電池2に冷媒を供給し燃料電池2の温度を調整する燃料電池冷却手段3と、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定手段4とを備えるよう構成する。不純物イオン測定手段4により、冷媒における不純物イオンの溶出の程度が測定される。その測定値から、金属材料の腐食の進行状況を判断し、必要な場合に所定の処置を施すことで、冷媒の流路における不具合の発生を未然に回避することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒を供給して燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段を備えた燃料電池システムの運転方法、および燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスの電気化学反応により電気を発生させる燃料電池は、発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
なかでも、固体高分子型燃料電池は、80℃程度の低温で作動させることができるため、他の種類の燃料電池と比較して取扱いが比較的容易であり、また、出力密度が極めて大きいことから、その利用が期待されるものである。固体高分子型燃料電池は、通常、プロトン導電性のある高分子膜を電解質とする。電解質となる高分子膜の両側にそれぞれ燃料極、酸素極となる一対の電極が設けられ電極接合体が構成される。電極接合体をセパレータで挟持した単セルが発電単位となる。そして、水素や炭化水素等の燃料ガスを燃料極に、酸素や空気等の酸化剤ガスを酸素極にそれぞれ供給し、ガスと電解質と電極との三相界面において電気化学反応を進行させることにより電気を取り出す。
【0004】
燃料電池は発電の際に発熱する。そのため、燃料電池を長期間安定して運転するためには、発電の際の発熱を緩和して、燃料電池内部の温度を所定の運転温度に保持することが求められる。通常、空冷もしくは液冷により、燃料電池の温度が調整される。液冷の場合、水やエチレングリコール等の液体の冷媒が、配管を通じて燃料電池に供給される。冷媒は、燃料電池内部の冷媒水路を流れ、熱交換により昇温される。昇温された冷媒は、燃料電池の外へ排出され、熱交換器によって冷却された後、再び燃料電池へ供給される。
【0005】
一般に、冷媒の流路となる配管等には、耐食性の高いステンレス材料やアルミニウム系材料等の金属材料が用いられる。このため、燃料電池を長期間運転した場合には、配管等を構成する金属材料から水等の冷媒へ金属イオンが溶出する、いわゆる金属材料の腐食が問題となる。金属材料が腐食すると、配管等の穴あきが生じるおそれがある。また、配管中に腐食生成物が堆積して流路が狭まり、熱伝達率の低下や圧力損失の増加を引き起こすおそれもある。さらに、溶出した金属イオンにより、冷媒の電気伝導度が上昇すると、燃料電池の発電部から冷媒を通じて配管等へ電流が流れる、いわゆる迷走電流腐食が生じるおそれもある。
【0006】
このような不具合を生じさせる金属材料の腐食を抑制する試みとして、冷媒の循環部分に不純物イオンを吸着等する材料を配置した燃料電池システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、冷媒の電気伝導度の上昇を抑制するという観点から、イオン交換樹脂で処理された水を冷媒として供給する装置において、処理水の電気伝導度を監視して、イオン交換樹脂を効率よく交換する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−297784号公報
【特許文献2】
特開平9−231990号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に示された燃料電池システムは、冷却水に接する電池構成材料の電位と冷却水の電位との差を小さくすることにより、電池構成材料の腐食を抑制するものである。しかし、電位を制御するだけでは、金属材料の腐食を充分に抑制することは難しい。また、上記特許文献2に示された方法は、イオン交換樹脂による処理水の電気伝導度を監視している。しかし、冷媒中の金属イオン濃度等を直接測定するものではない。冷媒の電気伝導度は、例えば、大気中の二酸化炭素が溶解した場合でも上昇する。つまり、金属イオンの溶出と冷媒の電気伝導率とは、必ずしも一対一に対応するものではない。よって、特許文献2に示された方法では、金属材料の腐食を充分に抑制することは困難である。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、冷媒を供給して燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段を備えた燃料電池システムの運転方法であって、冷媒の流路となる配管、熱交換器等に不具合を生じさせず、燃料電池を長期間にわたり安定して運転することのできる運転方法を提供することを課題とする。また、冷媒の流路となる配管、熱交換器等に不具合が生じ難い燃料電池システムを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池システムの運転方法は、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された燃料電池と、該燃料電池に冷媒を供給し該燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段とを備える燃料電池システムの運転方法であって、前記冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定ステップと、前記不純物イオン測定ステップで測定された測定値が予め設定された許容範囲内の値であるかどうかを判断する判断ステップと、前記測定値が前記許容範囲を超えた値であると判断された場合に所定の処置を施す処置ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
燃料電池内部の冷媒水路や配管等における上述した不具合は、主に金属材料の腐食により生ずると考えられる。そして、金属イオンの冷媒への溶出は、冷媒のpH値や、冷媒中の塩化物イオン(Cl−)、フッ化物イオン(F−)等の存在により大きく影響を受ける。例えば、水以外の有機溶媒を冷媒として使用した場合には、長期間の使用により冷媒自身が酸化劣化する。その結果、酢酸やギ酸等の有機酸が生成し、冷媒のpH値が低下する。また、配管に使用されるシール材が熱劣化すると、冷媒へ塩化物イオンやフッ化物イオンが溶出し、冷媒のpH値が低下する。熱交換器のろう付けに用いられるフラックス残渣から、フッ化物イオンが溶出する場合もある。さらに、外部から電池系内に混入するCO2、SOX、NOX等のガスによっても冷媒のpH値は低下し、また、冷媒に海水や融雪剤が混入すると、イオン解離により塩化物イオンが生成する。冷媒のpH値の低下や、塩化物イオン等の濃度の上昇により、金属イオンの冷媒への溶出は加速される。
【0012】
本発明者は、冷媒に溶出した金属イオンや塩化物イオン等を不純物イオンと捉え、冷媒の流路となる配管等に不具合を生じさせる原因の一つとした。そして、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を監視することで、配管等における不具合の発生を未然に回避することができると考えた。すなわち、本発明の燃料電池システムの運転方法によれば、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定するため、測定された測定値から金属材料の腐食の進行状態を把握することができる。そして、測定値が許容範囲を超え、金属材料の腐食が進行していると判断された場合には、冷媒の交換等の所定の処置を施すことで、冷媒の流路における上記不具合の発生を未然に回避することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムは、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された燃料電池と、前記燃料電池に冷媒を供給し該燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段と、前記冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の燃料電池システムでは、上述した本発明の燃料電池システムの運転方法を実施することができる。すなわち、本発明の燃料電池システムでは、不純物イオン測定手段により冷媒における不純物イオンの溶出の程度が測定される。測定されたデータから、金属材料の腐食の進行状態を把握することができる。そして、金属材料の腐食が進行していると判断された場合には、冷媒の交換等の所定の処置を施すことで、冷媒の流路における上記不具合の発生を未然に回避することができる。このように、本発明の燃料電池システムによれば、冷媒の流路における不具合の発生を回避するために冷媒に対して行う処置の実施時期を、正確に把握することができる。そして、必要に応じて適切な処置を施すことで、燃料電池を長期間にわたり安定して運転することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の燃料電池システムの運転方法の実施形態と燃料電池システムの実施形態とを順に説明する。なお、本発明の燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムは、下記の実施形態に限定されるものではない。本発明の燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムは、下記実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0016】
〈燃料電池システムの運転方法〉
本発明の運転方法の対象となる燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池冷却手段とを備える。燃料電池は、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成される。燃料電池は、燃料極および酸素極からなる一対の電極と電解質膜とセパレータとを備えるという点で、一般に知られている燃料電池の構成に従うものである。燃料電池は、その種類が特に限定されるものではない。ここでは、固体高分子型燃料電池を一例として説明する。
【0017】
固体高分子型燃料電池における燃料極および酸素極は、それぞれ、白金等をカーボン粒子に担持させた触媒を含む触媒層と、カーボンクロス等のガスが拡散可能な多孔質材料からなる拡散層との二層から構成される。この場合、後述する電解質膜の両表面に触媒層と拡散層とを形成して電極接合体とすればよい。例えば、各電極の触媒を、電解質膜を構成する高分子を含む液に分散し、その分散液を電解質膜の両表面に塗布、乾燥等して触媒層を形成する。そして、形成した各触媒層の表面に、カーボンクロス等を圧着等することで拡散層を形成し、電極接合体とすればよい。
【0018】
電解質膜には、通常、イオン導電性のある高分子膜が用いられる。高分子膜の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、全フッ素系スルホン酸膜、全フッ素系ホスホン酸膜、全フッ素系カルボン酸膜や、含フッ素炭化水素系グラフト膜、全炭化水素系グラフト膜、全芳香族膜等の炭化水素系電解質膜等を用いることができる。特に、耐久性等を考慮した場合には、全フッ素系電解質膜を用いることが望ましい。なかでも、電解質としての性能が高いという理由から、全フッ素系スルホン酸膜を用いることが望ましい。全フッ素系スルホン酸膜の一例として、「ナフィオン」(登録商標、デュポン社製)の商品名で知られる、スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜が挙げられる。
【0019】
上記一対の電極および電解質膜からなる電極接合体を挟持するセパレータとしては、集電性能が高く、酸化水蒸気雰囲気下でも比較的安定な焼成カーボン、成形カーボンや、ステンレス材料の表面に貴金属や炭素材料を被覆したもの等を用いればよい。
【0020】
また、燃料電池冷却手段は、燃料電池に冷媒を供給し、燃料電池の温度を調整するものであれば、その構成が特に限定されるものではない。例えば、燃料電池冷却手段を、冷媒を供給するための冷媒タンクと、燃料電池から排出された冷媒の熱交換を行う熱交換器とを含むよう構成すればよい。また、冷媒をイオン交換水とする場合には、イオン交換樹脂を備えたイオン交換器をも含めて燃料電池冷却手段を構成すればよい。冷媒は、一般に冷媒として用いられるものを採用すればよく、例えば、イオン交換水、エチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
本発明の燃料電池システムの運転方法は、不純物イオン測定ステップと、判断ステップと、処置ステップとを含む。以下、各ステップごとに詳しく説明する。
【0022】
(1)不純物イオン測定ステップ
本ステップは、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定するステップである。不純物イオン溶出の程度の測定箇所は、燃料電池を運転するシステムに応じて、適宜選択すればよい。例えば、冷媒の流路となる配管内で測定すればよい。測定個所は、一箇所でもよく、また二箇所以上であってもよい。不純物イオン溶出の程度の測定は、燃料電池システムの運転中連続して行ってもよく、また、所定の時間ごとに行ってもよい。
【0023】
溶出の程度が測定される不純物イオンは、冷媒の流路における不具合を生じさせる原因となるイオンとして、例えば、金属イオン、塩化物イオン、フッ化物イオンから選ばれる一種以上の溶出の程度を測定することが望ましい。以下(a)〜(c)において、上記各イオンの測定方法等を述べる。
【0024】
(a)金属イオン
上述したように、燃料電池を長期間運転した場合、冷媒と接する金属材料の腐食が問題となる。ここで、中性領域での金属イオンの溶出メカニズムを説明する。
【0025】
例えば、pH値が7程度では、ステンレス材料の酸化反応は次式(1)で表される。
Fe → Fe2+ + 2e− ・・・(1)
ここで、25℃における式(1)の熱力学的な平衡電位E0は、E0=−0.440(V vs.SHE)と計算される。また、燃料電池の発電部から電流が冷媒に漏れ、その電流密度がある程度以上になると、式(2)で表されるCrの過不働態溶出が生じる電位まで、局部的にアノード分極されうる。
Cr2O3 + 5H2O → 2CrO4 2− +10H+ + 6e− ・・・(2)
25℃における式(2)の熱力学的な平衡電位E0は、上記式(1)と同様に、E0=−0.579(V vs.SHE)と計算される。
【0026】
一方、還元反応は、pH値が7程度では、式(3)で表されるような溶存酸素の還元反応となる。
O2 + 2H2O + 4e− → 4OH− ・・・(3)
25℃における式(3)の熱力学的な平衡電位E0は、E0=0.401−0.0591×pH+0.0148×logP(O2)により計算される。
ちなみに、酸性領域における還元反応は、式(4)で表されるような水素発生反応となる。
2H+ + 2e− → H2 ・・・(4)
このように、中性領域では、上記式(1)と式(3)との混成電位でステンレス材料の腐食、すなわち金属イオンの溶出が進行する。金属イオンの溶出の程度は、冷媒中の金属イオンの濃度や金属材料の腐食速度を求めることにより測定することができる。なお、金属材料の腐食速度の測定で得られる腐食速度は瞬時値である。そのため、腐食速度から腐食量を積分計算し、その積算された腐食量を測定値として採用してもよい。
【0027】
冷媒中の金属イオンの濃度は、イオン選択性電極を用いて求めればよい。電界効果トランジスタ(FET)のゲート表面にイオン感応膜を塗布したイオン選択性電界効果トランジスタ(ISFET)を用いることもできる。なお、イオン選択性電極は、測定対象となるイオン以外の他イオンによる検出妨害や、イオン選択性透過膜の汚染により、正確に測定できない場合がある。このため、イオン選択性電極を用いる場合には、適宜イオン交換水等によりイオン選択性電極を洗浄しながら測定することが望ましい。
【0028】
金属材料の腐食速度は、分極抵抗法やガルバニックカップル法等の種々の電気化学的方法で求めることができる。自然浸漬電位近傍の腐食速度を長期間安定して求めるという観点からは、微小な電流を試料に通した場合の電位応答から腐食速度を求める分極抵抗法を採用することが望ましい。この場合、測定に用いる腐食センサは、作用電極と対極と参照電極との三電極系となる。また、腐食速度に対応する微小な電流値の変化を測定することができるという理由から、大気腐食モニター(Atmospheric Corrosion Monitor)等のガルバニックカップルタイプの腐食センサを用いることが望ましい。大気腐食モニターは、作用電極と対極との二種類の電極が至近距離で対向して配置された腐食センサである。電極の結露部における腐食電流を測定するものであるため、測定の際、腐食センサ全体を水没させる必要はないという利点がある。
【0029】
上記各腐食センサにおける作用電極の材料には、配管等に使用され耐食性に優れるステンレス材料やアルミニウム材料を用いればよい。また、対極の材料には、上記ステンレス材料やアルミニウム材料の他、耐食性に優れ、抵抗が小さくそれ自身が分極し難いことから、Pt、Au等の貴金属、Ti、黒鉛等の炭素材料等を用いることが望ましい。なかでも、炭素材料は、安価であり、自然浸漬電位近傍では高温下でも比較的安定であるため好適である。参照電極には、高温での安定性に優れる水素電極、塩化銀電極、安定化ジルコニア等の固体電解質を用いた電極等を用いることが望ましい。なお、予め上記水素電極等の標準電極との電位差を検定しておくことで、対極と同様、Pt、Au等の貴金属、Ti、黒鉛等の炭素材料等を用いた電極を参照電極とすることもできる。
【0030】
(b)塩化物イオン
海水や融雪剤に含まれるNaCl、CaCl2等が冷媒へ混入した場合等には、冷媒へ塩化物イオンが溶出する。そして、冷媒中の塩化物イオン濃度が上昇すると、上記金属イオンの溶出が加速される。したがって、塩化物イオンの溶出の程度を把握することは、冷媒の流路における不具合の発生を抑制する上で重要となる。塩化物イオンの溶出の程度は、冷媒中の塩化物イオンの濃度を求めることにより測定することができる。塩化物イオンの濃度は、上記金属イオン等と同様、イオン選択性電極を用いて求めればよい。例えば、銀・塩化銀を参照電極とした固体膜電極や、ポリ塩化ビニル等の高分子支持膜中に第4級アンモニウム塩を感応物質として添加した高分子支持膜型電極等を用いればよい。
【0031】
(c)フッ化物イオン
例えば、配管に使用されるシール材の熱劣化により、また、熱交換器のろう付けに用いられるフラックス残渣から、冷媒へフッ化物イオンが溶出する。冷媒中のフッ化物イオン濃度が上昇すると、上記金属イオンの溶出が加速される。また、冷媒中にフッ化物イオンが多く含まれるということは、配管等の劣化が進行していることをも示す。したがってフッ化物イオンの溶出の程度を把握することは、冷媒の流路における不具合の発生を抑制する上で重要となる。フッ化物イオンの溶出の程度は、冷媒中のフッ化物イオンの濃度を求めることにより測定することができる。フッ化物イオンの濃度は、上記金属イオンと同様、イオン選択性電極を用いて求めればよい。例えば、LaF3等のフッ化物イオン導電性固体膜をセンサとしたフッ化物イオン選択性電極を用いればよい。
【0032】
不純物イオンの溶出の程度の測定は、上述したように、各イオンごとに測定する他、不純物イオンの溶出と密接な関係がある冷媒のpH値を測定することにより行うことができる。冷媒へ不純物イオンが溶出するとpH値が変化する。よって、冷媒のpH値を測定することにより、不純物イオンの溶出の程度を測定することができる。pH値は、ガラス膜をセンサとした水素イオン選択性電極により測定すればよい。また、測定装置に堅牢性が要求される場合には、pH電極としてPt、Au等の貴金属を、参照電極として銀・塩化銀電極または水素電極を用いて、pH電極と参照電極との電位差からpH値を測定すればよい。
【0033】
また、イオン交換樹脂で処理されたイオン交換水等を冷媒とする場合、イオン交換樹脂からなるイオン交換膜の抵抗変化を測定することにより、イオン交換能の低下の程度を把握することができる。イオン交換膜のイオン交換能の低下は、不純物イオンの溶出の程度に比例する。したがって、イオン交換膜の抵抗変化を測定することで、不純物イオンの溶出の程度を測定することができる。この場合、まず、イオン交換膜の両表面にPt等の貴金属からなる電極を形成した膜センサを作製する。そして、膜センサを配管の内側等、冷媒と接する場所に設置して、膜センサの電気伝導度を測定すればよい。
【0034】
(2)判断ステップ
本ステップは、不純物イオン測定ステップで測定された測定値が予め設定された許容範囲内の値であるかどうかを判断するステップである。許容範囲は、測定される項目に応じて適宜設定すればよい。例えば、予備実験により上限値となる基準値を設定しておき、測定値がその基準値を超えたかどうかを判断すればよい。例えば、不純物イオン測定ステップにおいて、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定した場合には、基準値となる腐食速度の上限値を、以下のように決定すればよい。
【0035】
例えば、腐食速度が1μA/cm2である場合、単位時間当たりに溶出する鉄イオン(Fe2+)の量は、式[1(μA)/96500(As/mol)=1×10−5(μmol/s)、1×10−5(μmol/s)/2×55.85=2.8×10−4(μg/s)]より、2.8×10−4(μg/s)と計算される。1年に1000時間運転した場合、鉄(Fe)の消耗速度は、式[2.8×10−4(μg/s)×1000×60×60/7.86(g/cm3)×1(cm2)=1.3(μm/年)]より、1.3(μm/年)と計算される。これより、主に鉄からなる金属材料の表面が均一に腐食されると仮定すれば、厚さが50μmの同材料は、約40年で消耗することになる。しかし、実際には、塩化物イオン等により孔食が生じたり、溶出した金属イオンにより電解質膜のプロトン導電性が低下する。これらを考慮すれば、金属材料の腐食速度の上限値を1μA/cm2とすることが望ましい。上限値を0.1μA/cm2とするとより好適である。
【0036】
(3)処置ステップ
本ステップは、判断ステップにて、測定値が許容範囲を超えた値であると判断された場合に所定の処置を施すステップである。すなわち、冷媒の流路における不具合の発生を未然に回避するために、適切な処置を施すステップである。処置の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、冷媒を交換したり、冷媒を処理するためのイオン交換樹脂を交換あるいは洗浄すればよい。
【0037】
〈燃料電池システム〉
本発明の一実施形態である燃料電池システムの構成を説明する。図1に、本発明の燃料電池システムの概略を示す。図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池2と、燃料電池冷却手段3と、不純物イオン測定手段4とを備える。
【0038】
燃料電池2は、固体高分子型燃料電池であり、電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成されている。電極接合体は、電解質とその両側に設けられた燃料極および酸素極とからなる。セパレータには、冷媒となる冷却水の流路が形成されている。燃料電池2の上流側には、水素ボンベ8および空気圧縮機9が設けられている。燃料ガスとしての水素ガスは、水素ボンベ8から水素圧力調整バルブ81、水素吸気バルブ82を介して燃料電池2の燃料極に供給される。酸化剤ガスとしての空気は、加湿器91により加湿された後、空気圧縮機9から燃料電池2の酸素極に供給される。燃料極で反応に使用されなかった水素ガスは、燃料電池2の下流側に設けられた水素気液分離器83により、水素と生成水とに分離されて排出される。生成水は、燃料電池2の温度を調整するための冷却水として使用される。酸素極で生成した生成水は、酸素極で反応に使用されなかった空気とともに燃料電池2の下流側に設けられた空気気液分離器92に送られる。空気気液分離器92にて空気と分離された生成水の一部は、酸化剤ガスである空気を加湿する加湿水として利用される。空気気液分離器92にて分離された空気は排出される。
【0039】
燃料電池冷却手段3は、燃料電池に冷却水を供給し、燃料電池の温度を調整する。燃料電池冷却手段3は、冷却水タンク31と、イオン交換器32と、熱交換器33とを備える。冷却水タンク31は、水素気液分離器83の下流側に設けられている。水素気液分離器83から排出された生成水は、冷却水ポンプを介して冷却水タンク31に導かれる。イオン交換器32は、冷却水タンク31の下流側に設けられ、冷却水の一部をイオン交換樹脂により処理する。熱交換器33は、燃料電池2の下流側に設けられている。燃料電池2から排出された冷却水は、熱交換器33により冷却され、冷却水タンク31に戻される。冷却水の流路となる配管34は、SUS316L製である。
【0040】
不純物イオン測定手段4は、腐食センサ41と、腐食計42と、温度測定装置43と、腐食速度測定装置44とを備える。不純物イオン測定手段4は、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定する電気化学的手段として機能する。腐食センサ41は、冷却水が燃料電池2へ流入する入口付近の配管34内に設置されている。腐食センサ41は、三電極系の電気化学センサであり、腐食計42に接続されている。図2に、腐食センサ41の構成を模式的に示す。図2に示すように、腐食センサ41は、作用電極412と対極413と参照電極414とがエポキシ樹脂に埋め込まれてなる。ここで、作用電極412はSUS316Lからなる。対極413と参照電極414とはいずれも黒鉛からなる。腐食計42により、腐食センサ41に定電流(ΔI)がパルスで流れた時の分極電圧値(ΔE)が測定される。腐食計42により測定された分極電圧値は、腐食速度測定装置44へ送られる。腐食速度測定装置44にて、見かけの分極抵抗値(R)が[R=ΔE/ΔI]より求められ、この分極抵抗値に基づいて金属材料の腐食速度が算出される。また、温度測定装置43は、腐食センサ41と同様に、冷却水が燃料電池2へ流入する入口付近の配管34内に設置されており、腐食センサ41近傍の温度を測定する。測定された温度値は、腐食速度測定装置44へ送られる。
【0041】
燃料電池システム1の運転中、不純物イオン測定手段4で測定された金属材料の腐食速度が、予め設定された許容範囲内の値であるかどうかの判断が行われる。そして、金属材料の腐食速度が許容範囲を超えた値であると判断された場合には、冷却水を交換する等の所定の処置が施される。
【0042】
本実施形態では、不純物イオン測定手段として、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定する電気化学的手段を採用した。しかし、測定対象となる不純物イオンは、金属イオンに限定されるものではない。フッ化物イオンや塩化物イオン等を測定対象とする態様を採用してもよい。また、測定手段も、上記電気化学的手段に限定されるものではない。冷媒中の不純物イオンの濃度を測定する濃度測定手段や、冷媒のpH値を測定するpH測定手段等、測定対象とする不純物イオンに応じて、適宜好適な測定手段を採用すればよい。
【0043】
本実施形態では、燃料電池冷却手段として、イオン交換器を含み、また、冷却水として生成水を利用する態様を採用した。しかし、燃料電池冷却手段は、本実施形態に限定されるものではない。冷却水を外部から供給する態様や、イオン交換器を設置せずに冷却水をそのまま循環させる態様を採用しても構わない。
【0044】
本実施形態では、金属材料の腐食速度を監視して、金属材料の腐食速度が予め設定された許容範囲を超えた場合に、所定の処置を施すこととした。しかし、上記燃料電池システムを、さらに、金属材料の腐食速度が予め設定された許容範囲内の値であるかどうかを判断する判断手段と、金属材料の腐食速度が許容範囲を超えた値であると判断された場合に所定の処置を施す処置手段とを備えるよう構成してもよい。すなわち、燃料電池と燃料電池冷却手段と不純物イオン測定手段とを備える上記本発明の燃料電池システムに、判断手段と処置手段とを加えることで、必要に応じて所定の処置を自動的に行うことができる。
【0045】
判断手段と処置手段としては、例えば、測定値をデジタル信号に変換するA/D変換器と、コンピュータと、出力された電気信号を処理する駆動回路とを備える制御ユニットを用いればよい。この場合、不純物イオン測定ステップで測定された測定値が、A/D変換器によりデジタル信号に変換される。デジタル信号はインターフェースを介してコンピュータに入力される。コンピュータでは、測定値が、予め設定された許容範囲内の値であるかどうかの判断が行われる。そして、測定値が許容範囲を超えた値であると判断された場合には、電気信号がインターフェースを介して出力される。出力された電気信号は駆動回路により処理され、例えば、冷媒の流路を変更するための装置等、対象となる装置に送られる。
【0046】
【実施例】
単セルの固体高分子型燃料電池を作製し、上述した実施形態の本発明の燃料電池システムにより運転試験を行った。そして、所定時間運転した後、電池から排出される冷媒の出口となる配管を観察した。以下、固体高分子型燃料電池の作製、運転試験および配管の観察結果について説明する。
【0047】
〈固体高分子型燃料電池の作製〉
まず、酸素極および燃料極を作製した。酸素極および燃料極の触媒には、白金がカーボンブラックに担持された触媒を用いた。上記触媒を、電解質であるナフィオン115(商品名、デュポン社製)のアルコール分散液に混合してペースト状とした。このペーストを拡散層となるカーボンクロスの表面に塗布、乾燥して、酸素極および燃料極とした。次いで、これら酸素極および燃料極を、ナフィオン115からなる電解質膜(膜厚約50μm)の両表面にそれぞれ120℃でホットプレスして電極接合体を形成し、焼成カーボン製のセパレータで挟持して単セルの固体高分子型燃料電池を作製した。なお、電極接合体にかかる締結圧力を、感圧試験紙で別途測定した結果、最大で8kgf/cm2であった。
【0048】
〈運転試験および配管の観察結果〉
(1)第一運転試験
作製した固体高分子型燃料電池を、上記図1に示した本発明の燃料電池システムによって運転した。図1に示すように、冷却水が固体高分子型の燃料電池2へ流入する入口付近の配管34内に、腐食センサ41と温度測定装置43とが設置されている。腐食センサ41は、腐食計42に接続されており、腐食計42では、腐食センサ41に定電流がパルスで流れた時の分極電圧値が測定される。本実施例では、腐食計42として、北斗電工社製の腐食計(HK−103)を使用した。腐食計42により測定された分極電圧値は、腐食速度測定装置44へ送られる。
【0049】
固体高分子型燃料電池の運転条件は、作動温度を80℃、水素バブラ温度を85℃、空気バブラ温度を70℃とした。燃料極には、燃料ガスとして水素を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。酸素極には、酸化剤ガスとして空気を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。電流密度を0.1A/cm2として、650時間運転した。そして、運転中、腐食速度測定装置44で算出された腐食速度が1μA/cm2を超えた場合、その都度冷却水を新しいものに交換して運転した。本運転方法を実施例1の運転方法とする。なお、不純物イオン測定手段4が設置されていない点以外は、上記本発明の燃料電池システムと同様の燃料電池システムを運転し、比較例の運転方法とした。比較例の運転方法では、冷却水の交換は行わなかったが、それ以外の運転条件は、上述した実施例1の運転方法における運転条件と同じとした。
【0050】
上記運転試験の後、固体高分子型燃料電池から排出される冷媒の出口となる配管を目視にて観察した。実施例1の運転方法では、配管に特に変化は見られなかった。一方、比較例の運転方法では、配管の内壁面に堆積物が沈着していた。また、冷却水の循環ポンプの圧力損失も増加していた。これは、配管を構成する金属材料が腐食したことを示すものである。この結果から、実施例1の運転方法は、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を監視し、必要に応じて冷却水の交換という処置を施したことで、配管等における不具合の発生を回避できたことがわかる。
【0051】
(2)第二運転試験
上記第一運転試験で用いた燃料電池システムにおいて、不純物イオン測定手段を変更した。本運転試験では、腐食センサ41として、ガルバニックカップルタイプの腐食センサを使用した。また、腐食計42に代えて無抵抗電流計45を使用した。図3に、使用した腐食センサ41の構成を模式的に示す。図3に示すように、腐食センサ41は、作用電極412と対極413とがエポキシ樹脂に埋め込まれてなる。作用電極412と対極413とは、それぞれ100μmのポリエステルフィルムで覆われ絶縁されている。ここで、作用電極412はアルミニウム材料のAl1050からなる。対極413は黒鉛からなる。腐食センサ41は無抵抗電流計45に接続されている。無抵抗電流計45は、腐食センサ41に流れた電流値を測定する。測定された電流値は、腐食速度測定装置44へ送られる。腐食速度測定装置44では、温度測定装置43により測定された温度値に基づいて、温度補正が行われ、金属材料の腐食速度が算出される。この不純物イオン測定手段の変更以外は、上記第一運転試験と同様にして、作製した固体高分子型燃料電池を図1に示した燃料電池システムによって運転した。
【0052】
本運転試験における固体高分子型燃料電池の運転条件は、上述した実施例1の運転方法と同様、作動温度を80℃、水素バブラ温度を85℃、空気バブラ温度を70℃とした。また、燃料極には、燃料ガスとして水素を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。酸素極には、酸化剤ガスとして空気を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。電流密度を0.1A/cm2として、1200時間運転した。そして、運転中、腐食速度測定装置44で算出された腐食速度が初期値の2倍となった場合、その都度冷却水およびイオン交換樹脂を新しいものに交換して運転した。本運転方法を実施例2の運転方法とする。
【0053】
上記運転試験の後、固体高分子型燃料電池から排出される冷媒の出口となる配管を目視にて観察した。その結果、配管に特に変化は見られなかった。これより、実施例2の運転方法は、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を監視し、必要に応じて冷却水およびイオン交換樹脂の交換という処置を施したことで、配管等における不具合の発生を回避できたことがわかる。
【0054】
以上二種類の運転試験より、本発明の運転方法によれば、冷媒の流路における不具合の発生を回避するために採りうる処置の実施時期を、正確に把握することができることがわかった。そして、上記実施時期に適切な処置を施すことで、燃料電池を長期間にわたり安定して運転できることが確認された。
【0055】
【発明の効果】
本発明の燃料電池システムの運転方法では、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定し、その測定値から金属材料の腐食が進行していると判断された場合には、冷媒の交換等の所定の処置が施される。本発明の燃料電池システムの運転方法によれば、冷媒に関して施される処置の効果的な実施時期を把握することができるため、冷媒の流路における不具合の発生を回避し、燃料電池を長期間にわたり安定して運転することができる。
【0056】
また、本発明の燃料電池システムによれば、上記本発明の燃料電池システムの運転方法を簡便に実施することができる。すなわち、本発明の燃料電池システムでは、不純物イオン測定手段により冷媒における不純物イオンの溶出の程度が測定される。その測定値から、金属材料の腐食の進行状況を判断し、必要な場合に所定の処置を施すことで、冷媒の流路における上記不具合の発生を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である燃料電池システムの概略を示す。
【図2】分極抵抗法により金属材料の腐食速度を測定する腐食センサの構成を模式的に示す。
【図3】ガルバニックカップル法により金属材料の腐食速度を測定する腐食センサの構成を模式的に示す。
【符号の説明】
1:燃料電池システム 2:燃料電池
3:燃料電池冷却手段
31:冷却水タンク 32:イオン交換器 33:熱交換器 34:配管
4:不純物イオン測定手段
41:腐食センサ 42:腐食計 43:温度測定装置
44:腐食速度測定装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒を供給して燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段を備えた燃料電池システムの運転方法、および燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスの電気化学反応により電気を発生させる燃料電池は、発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
なかでも、固体高分子型燃料電池は、80℃程度の低温で作動させることができるため、他の種類の燃料電池と比較して取扱いが比較的容易であり、また、出力密度が極めて大きいことから、その利用が期待されるものである。固体高分子型燃料電池は、通常、プロトン導電性のある高分子膜を電解質とする。電解質となる高分子膜の両側にそれぞれ燃料極、酸素極となる一対の電極が設けられ電極接合体が構成される。電極接合体をセパレータで挟持した単セルが発電単位となる。そして、水素や炭化水素等の燃料ガスを燃料極に、酸素や空気等の酸化剤ガスを酸素極にそれぞれ供給し、ガスと電解質と電極との三相界面において電気化学反応を進行させることにより電気を取り出す。
【0004】
燃料電池は発電の際に発熱する。そのため、燃料電池を長期間安定して運転するためには、発電の際の発熱を緩和して、燃料電池内部の温度を所定の運転温度に保持することが求められる。通常、空冷もしくは液冷により、燃料電池の温度が調整される。液冷の場合、水やエチレングリコール等の液体の冷媒が、配管を通じて燃料電池に供給される。冷媒は、燃料電池内部の冷媒水路を流れ、熱交換により昇温される。昇温された冷媒は、燃料電池の外へ排出され、熱交換器によって冷却された後、再び燃料電池へ供給される。
【0005】
一般に、冷媒の流路となる配管等には、耐食性の高いステンレス材料やアルミニウム系材料等の金属材料が用いられる。このため、燃料電池を長期間運転した場合には、配管等を構成する金属材料から水等の冷媒へ金属イオンが溶出する、いわゆる金属材料の腐食が問題となる。金属材料が腐食すると、配管等の穴あきが生じるおそれがある。また、配管中に腐食生成物が堆積して流路が狭まり、熱伝達率の低下や圧力損失の増加を引き起こすおそれもある。さらに、溶出した金属イオンにより、冷媒の電気伝導度が上昇すると、燃料電池の発電部から冷媒を通じて配管等へ電流が流れる、いわゆる迷走電流腐食が生じるおそれもある。
【0006】
このような不具合を生じさせる金属材料の腐食を抑制する試みとして、冷媒の循環部分に不純物イオンを吸着等する材料を配置した燃料電池システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、冷媒の電気伝導度の上昇を抑制するという観点から、イオン交換樹脂で処理された水を冷媒として供給する装置において、処理水の電気伝導度を監視して、イオン交換樹脂を効率よく交換する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−297784号公報
【特許文献2】
特開平9−231990号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に示された燃料電池システムは、冷却水に接する電池構成材料の電位と冷却水の電位との差を小さくすることにより、電池構成材料の腐食を抑制するものである。しかし、電位を制御するだけでは、金属材料の腐食を充分に抑制することは難しい。また、上記特許文献2に示された方法は、イオン交換樹脂による処理水の電気伝導度を監視している。しかし、冷媒中の金属イオン濃度等を直接測定するものではない。冷媒の電気伝導度は、例えば、大気中の二酸化炭素が溶解した場合でも上昇する。つまり、金属イオンの溶出と冷媒の電気伝導率とは、必ずしも一対一に対応するものではない。よって、特許文献2に示された方法では、金属材料の腐食を充分に抑制することは困難である。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、冷媒を供給して燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段を備えた燃料電池システムの運転方法であって、冷媒の流路となる配管、熱交換器等に不具合を生じさせず、燃料電池を長期間にわたり安定して運転することのできる運転方法を提供することを課題とする。また、冷媒の流路となる配管、熱交換器等に不具合が生じ難い燃料電池システムを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池システムの運転方法は、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された燃料電池と、該燃料電池に冷媒を供給し該燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段とを備える燃料電池システムの運転方法であって、前記冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定ステップと、前記不純物イオン測定ステップで測定された測定値が予め設定された許容範囲内の値であるかどうかを判断する判断ステップと、前記測定値が前記許容範囲を超えた値であると判断された場合に所定の処置を施す処置ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
燃料電池内部の冷媒水路や配管等における上述した不具合は、主に金属材料の腐食により生ずると考えられる。そして、金属イオンの冷媒への溶出は、冷媒のpH値や、冷媒中の塩化物イオン(Cl−)、フッ化物イオン(F−)等の存在により大きく影響を受ける。例えば、水以外の有機溶媒を冷媒として使用した場合には、長期間の使用により冷媒自身が酸化劣化する。その結果、酢酸やギ酸等の有機酸が生成し、冷媒のpH値が低下する。また、配管に使用されるシール材が熱劣化すると、冷媒へ塩化物イオンやフッ化物イオンが溶出し、冷媒のpH値が低下する。熱交換器のろう付けに用いられるフラックス残渣から、フッ化物イオンが溶出する場合もある。さらに、外部から電池系内に混入するCO2、SOX、NOX等のガスによっても冷媒のpH値は低下し、また、冷媒に海水や融雪剤が混入すると、イオン解離により塩化物イオンが生成する。冷媒のpH値の低下や、塩化物イオン等の濃度の上昇により、金属イオンの冷媒への溶出は加速される。
【0012】
本発明者は、冷媒に溶出した金属イオンや塩化物イオン等を不純物イオンと捉え、冷媒の流路となる配管等に不具合を生じさせる原因の一つとした。そして、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を監視することで、配管等における不具合の発生を未然に回避することができると考えた。すなわち、本発明の燃料電池システムの運転方法によれば、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定するため、測定された測定値から金属材料の腐食の進行状態を把握することができる。そして、測定値が許容範囲を超え、金属材料の腐食が進行していると判断された場合には、冷媒の交換等の所定の処置を施すことで、冷媒の流路における上記不具合の発生を未然に回避することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムは、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された燃料電池と、前記燃料電池に冷媒を供給し該燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段と、前記冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の燃料電池システムでは、上述した本発明の燃料電池システムの運転方法を実施することができる。すなわち、本発明の燃料電池システムでは、不純物イオン測定手段により冷媒における不純物イオンの溶出の程度が測定される。測定されたデータから、金属材料の腐食の進行状態を把握することができる。そして、金属材料の腐食が進行していると判断された場合には、冷媒の交換等の所定の処置を施すことで、冷媒の流路における上記不具合の発生を未然に回避することができる。このように、本発明の燃料電池システムによれば、冷媒の流路における不具合の発生を回避するために冷媒に対して行う処置の実施時期を、正確に把握することができる。そして、必要に応じて適切な処置を施すことで、燃料電池を長期間にわたり安定して運転することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の燃料電池システムの運転方法の実施形態と燃料電池システムの実施形態とを順に説明する。なお、本発明の燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムは、下記の実施形態に限定されるものではない。本発明の燃料電池システムの運転方法および燃料電池システムは、下記実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0016】
〈燃料電池システムの運転方法〉
本発明の運転方法の対象となる燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池冷却手段とを備える。燃料電池は、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成される。燃料電池は、燃料極および酸素極からなる一対の電極と電解質膜とセパレータとを備えるという点で、一般に知られている燃料電池の構成に従うものである。燃料電池は、その種類が特に限定されるものではない。ここでは、固体高分子型燃料電池を一例として説明する。
【0017】
固体高分子型燃料電池における燃料極および酸素極は、それぞれ、白金等をカーボン粒子に担持させた触媒を含む触媒層と、カーボンクロス等のガスが拡散可能な多孔質材料からなる拡散層との二層から構成される。この場合、後述する電解質膜の両表面に触媒層と拡散層とを形成して電極接合体とすればよい。例えば、各電極の触媒を、電解質膜を構成する高分子を含む液に分散し、その分散液を電解質膜の両表面に塗布、乾燥等して触媒層を形成する。そして、形成した各触媒層の表面に、カーボンクロス等を圧着等することで拡散層を形成し、電極接合体とすればよい。
【0018】
電解質膜には、通常、イオン導電性のある高分子膜が用いられる。高分子膜の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、全フッ素系スルホン酸膜、全フッ素系ホスホン酸膜、全フッ素系カルボン酸膜や、含フッ素炭化水素系グラフト膜、全炭化水素系グラフト膜、全芳香族膜等の炭化水素系電解質膜等を用いることができる。特に、耐久性等を考慮した場合には、全フッ素系電解質膜を用いることが望ましい。なかでも、電解質としての性能が高いという理由から、全フッ素系スルホン酸膜を用いることが望ましい。全フッ素系スルホン酸膜の一例として、「ナフィオン」(登録商標、デュポン社製)の商品名で知られる、スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜が挙げられる。
【0019】
上記一対の電極および電解質膜からなる電極接合体を挟持するセパレータとしては、集電性能が高く、酸化水蒸気雰囲気下でも比較的安定な焼成カーボン、成形カーボンや、ステンレス材料の表面に貴金属や炭素材料を被覆したもの等を用いればよい。
【0020】
また、燃料電池冷却手段は、燃料電池に冷媒を供給し、燃料電池の温度を調整するものであれば、その構成が特に限定されるものではない。例えば、燃料電池冷却手段を、冷媒を供給するための冷媒タンクと、燃料電池から排出された冷媒の熱交換を行う熱交換器とを含むよう構成すればよい。また、冷媒をイオン交換水とする場合には、イオン交換樹脂を備えたイオン交換器をも含めて燃料電池冷却手段を構成すればよい。冷媒は、一般に冷媒として用いられるものを採用すればよく、例えば、イオン交換水、エチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
本発明の燃料電池システムの運転方法は、不純物イオン測定ステップと、判断ステップと、処置ステップとを含む。以下、各ステップごとに詳しく説明する。
【0022】
(1)不純物イオン測定ステップ
本ステップは、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定するステップである。不純物イオン溶出の程度の測定箇所は、燃料電池を運転するシステムに応じて、適宜選択すればよい。例えば、冷媒の流路となる配管内で測定すればよい。測定個所は、一箇所でもよく、また二箇所以上であってもよい。不純物イオン溶出の程度の測定は、燃料電池システムの運転中連続して行ってもよく、また、所定の時間ごとに行ってもよい。
【0023】
溶出の程度が測定される不純物イオンは、冷媒の流路における不具合を生じさせる原因となるイオンとして、例えば、金属イオン、塩化物イオン、フッ化物イオンから選ばれる一種以上の溶出の程度を測定することが望ましい。以下(a)〜(c)において、上記各イオンの測定方法等を述べる。
【0024】
(a)金属イオン
上述したように、燃料電池を長期間運転した場合、冷媒と接する金属材料の腐食が問題となる。ここで、中性領域での金属イオンの溶出メカニズムを説明する。
【0025】
例えば、pH値が7程度では、ステンレス材料の酸化反応は次式(1)で表される。
Fe → Fe2+ + 2e− ・・・(1)
ここで、25℃における式(1)の熱力学的な平衡電位E0は、E0=−0.440(V vs.SHE)と計算される。また、燃料電池の発電部から電流が冷媒に漏れ、その電流密度がある程度以上になると、式(2)で表されるCrの過不働態溶出が生じる電位まで、局部的にアノード分極されうる。
Cr2O3 + 5H2O → 2CrO4 2− +10H+ + 6e− ・・・(2)
25℃における式(2)の熱力学的な平衡電位E0は、上記式(1)と同様に、E0=−0.579(V vs.SHE)と計算される。
【0026】
一方、還元反応は、pH値が7程度では、式(3)で表されるような溶存酸素の還元反応となる。
O2 + 2H2O + 4e− → 4OH− ・・・(3)
25℃における式(3)の熱力学的な平衡電位E0は、E0=0.401−0.0591×pH+0.0148×logP(O2)により計算される。
ちなみに、酸性領域における還元反応は、式(4)で表されるような水素発生反応となる。
2H+ + 2e− → H2 ・・・(4)
このように、中性領域では、上記式(1)と式(3)との混成電位でステンレス材料の腐食、すなわち金属イオンの溶出が進行する。金属イオンの溶出の程度は、冷媒中の金属イオンの濃度や金属材料の腐食速度を求めることにより測定することができる。なお、金属材料の腐食速度の測定で得られる腐食速度は瞬時値である。そのため、腐食速度から腐食量を積分計算し、その積算された腐食量を測定値として採用してもよい。
【0027】
冷媒中の金属イオンの濃度は、イオン選択性電極を用いて求めればよい。電界効果トランジスタ(FET)のゲート表面にイオン感応膜を塗布したイオン選択性電界効果トランジスタ(ISFET)を用いることもできる。なお、イオン選択性電極は、測定対象となるイオン以外の他イオンによる検出妨害や、イオン選択性透過膜の汚染により、正確に測定できない場合がある。このため、イオン選択性電極を用いる場合には、適宜イオン交換水等によりイオン選択性電極を洗浄しながら測定することが望ましい。
【0028】
金属材料の腐食速度は、分極抵抗法やガルバニックカップル法等の種々の電気化学的方法で求めることができる。自然浸漬電位近傍の腐食速度を長期間安定して求めるという観点からは、微小な電流を試料に通した場合の電位応答から腐食速度を求める分極抵抗法を採用することが望ましい。この場合、測定に用いる腐食センサは、作用電極と対極と参照電極との三電極系となる。また、腐食速度に対応する微小な電流値の変化を測定することができるという理由から、大気腐食モニター(Atmospheric Corrosion Monitor)等のガルバニックカップルタイプの腐食センサを用いることが望ましい。大気腐食モニターは、作用電極と対極との二種類の電極が至近距離で対向して配置された腐食センサである。電極の結露部における腐食電流を測定するものであるため、測定の際、腐食センサ全体を水没させる必要はないという利点がある。
【0029】
上記各腐食センサにおける作用電極の材料には、配管等に使用され耐食性に優れるステンレス材料やアルミニウム材料を用いればよい。また、対極の材料には、上記ステンレス材料やアルミニウム材料の他、耐食性に優れ、抵抗が小さくそれ自身が分極し難いことから、Pt、Au等の貴金属、Ti、黒鉛等の炭素材料等を用いることが望ましい。なかでも、炭素材料は、安価であり、自然浸漬電位近傍では高温下でも比較的安定であるため好適である。参照電極には、高温での安定性に優れる水素電極、塩化銀電極、安定化ジルコニア等の固体電解質を用いた電極等を用いることが望ましい。なお、予め上記水素電極等の標準電極との電位差を検定しておくことで、対極と同様、Pt、Au等の貴金属、Ti、黒鉛等の炭素材料等を用いた電極を参照電極とすることもできる。
【0030】
(b)塩化物イオン
海水や融雪剤に含まれるNaCl、CaCl2等が冷媒へ混入した場合等には、冷媒へ塩化物イオンが溶出する。そして、冷媒中の塩化物イオン濃度が上昇すると、上記金属イオンの溶出が加速される。したがって、塩化物イオンの溶出の程度を把握することは、冷媒の流路における不具合の発生を抑制する上で重要となる。塩化物イオンの溶出の程度は、冷媒中の塩化物イオンの濃度を求めることにより測定することができる。塩化物イオンの濃度は、上記金属イオン等と同様、イオン選択性電極を用いて求めればよい。例えば、銀・塩化銀を参照電極とした固体膜電極や、ポリ塩化ビニル等の高分子支持膜中に第4級アンモニウム塩を感応物質として添加した高分子支持膜型電極等を用いればよい。
【0031】
(c)フッ化物イオン
例えば、配管に使用されるシール材の熱劣化により、また、熱交換器のろう付けに用いられるフラックス残渣から、冷媒へフッ化物イオンが溶出する。冷媒中のフッ化物イオン濃度が上昇すると、上記金属イオンの溶出が加速される。また、冷媒中にフッ化物イオンが多く含まれるということは、配管等の劣化が進行していることをも示す。したがってフッ化物イオンの溶出の程度を把握することは、冷媒の流路における不具合の発生を抑制する上で重要となる。フッ化物イオンの溶出の程度は、冷媒中のフッ化物イオンの濃度を求めることにより測定することができる。フッ化物イオンの濃度は、上記金属イオンと同様、イオン選択性電極を用いて求めればよい。例えば、LaF3等のフッ化物イオン導電性固体膜をセンサとしたフッ化物イオン選択性電極を用いればよい。
【0032】
不純物イオンの溶出の程度の測定は、上述したように、各イオンごとに測定する他、不純物イオンの溶出と密接な関係がある冷媒のpH値を測定することにより行うことができる。冷媒へ不純物イオンが溶出するとpH値が変化する。よって、冷媒のpH値を測定することにより、不純物イオンの溶出の程度を測定することができる。pH値は、ガラス膜をセンサとした水素イオン選択性電極により測定すればよい。また、測定装置に堅牢性が要求される場合には、pH電極としてPt、Au等の貴金属を、参照電極として銀・塩化銀電極または水素電極を用いて、pH電極と参照電極との電位差からpH値を測定すればよい。
【0033】
また、イオン交換樹脂で処理されたイオン交換水等を冷媒とする場合、イオン交換樹脂からなるイオン交換膜の抵抗変化を測定することにより、イオン交換能の低下の程度を把握することができる。イオン交換膜のイオン交換能の低下は、不純物イオンの溶出の程度に比例する。したがって、イオン交換膜の抵抗変化を測定することで、不純物イオンの溶出の程度を測定することができる。この場合、まず、イオン交換膜の両表面にPt等の貴金属からなる電極を形成した膜センサを作製する。そして、膜センサを配管の内側等、冷媒と接する場所に設置して、膜センサの電気伝導度を測定すればよい。
【0034】
(2)判断ステップ
本ステップは、不純物イオン測定ステップで測定された測定値が予め設定された許容範囲内の値であるかどうかを判断するステップである。許容範囲は、測定される項目に応じて適宜設定すればよい。例えば、予備実験により上限値となる基準値を設定しておき、測定値がその基準値を超えたかどうかを判断すればよい。例えば、不純物イオン測定ステップにおいて、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定した場合には、基準値となる腐食速度の上限値を、以下のように決定すればよい。
【0035】
例えば、腐食速度が1μA/cm2である場合、単位時間当たりに溶出する鉄イオン(Fe2+)の量は、式[1(μA)/96500(As/mol)=1×10−5(μmol/s)、1×10−5(μmol/s)/2×55.85=2.8×10−4(μg/s)]より、2.8×10−4(μg/s)と計算される。1年に1000時間運転した場合、鉄(Fe)の消耗速度は、式[2.8×10−4(μg/s)×1000×60×60/7.86(g/cm3)×1(cm2)=1.3(μm/年)]より、1.3(μm/年)と計算される。これより、主に鉄からなる金属材料の表面が均一に腐食されると仮定すれば、厚さが50μmの同材料は、約40年で消耗することになる。しかし、実際には、塩化物イオン等により孔食が生じたり、溶出した金属イオンにより電解質膜のプロトン導電性が低下する。これらを考慮すれば、金属材料の腐食速度の上限値を1μA/cm2とすることが望ましい。上限値を0.1μA/cm2とするとより好適である。
【0036】
(3)処置ステップ
本ステップは、判断ステップにて、測定値が許容範囲を超えた値であると判断された場合に所定の処置を施すステップである。すなわち、冷媒の流路における不具合の発生を未然に回避するために、適切な処置を施すステップである。処置の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、冷媒を交換したり、冷媒を処理するためのイオン交換樹脂を交換あるいは洗浄すればよい。
【0037】
〈燃料電池システム〉
本発明の一実施形態である燃料電池システムの構成を説明する。図1に、本発明の燃料電池システムの概略を示す。図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池2と、燃料電池冷却手段3と、不純物イオン測定手段4とを備える。
【0038】
燃料電池2は、固体高分子型燃料電池であり、電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成されている。電極接合体は、電解質とその両側に設けられた燃料極および酸素極とからなる。セパレータには、冷媒となる冷却水の流路が形成されている。燃料電池2の上流側には、水素ボンベ8および空気圧縮機9が設けられている。燃料ガスとしての水素ガスは、水素ボンベ8から水素圧力調整バルブ81、水素吸気バルブ82を介して燃料電池2の燃料極に供給される。酸化剤ガスとしての空気は、加湿器91により加湿された後、空気圧縮機9から燃料電池2の酸素極に供給される。燃料極で反応に使用されなかった水素ガスは、燃料電池2の下流側に設けられた水素気液分離器83により、水素と生成水とに分離されて排出される。生成水は、燃料電池2の温度を調整するための冷却水として使用される。酸素極で生成した生成水は、酸素極で反応に使用されなかった空気とともに燃料電池2の下流側に設けられた空気気液分離器92に送られる。空気気液分離器92にて空気と分離された生成水の一部は、酸化剤ガスである空気を加湿する加湿水として利用される。空気気液分離器92にて分離された空気は排出される。
【0039】
燃料電池冷却手段3は、燃料電池に冷却水を供給し、燃料電池の温度を調整する。燃料電池冷却手段3は、冷却水タンク31と、イオン交換器32と、熱交換器33とを備える。冷却水タンク31は、水素気液分離器83の下流側に設けられている。水素気液分離器83から排出された生成水は、冷却水ポンプを介して冷却水タンク31に導かれる。イオン交換器32は、冷却水タンク31の下流側に設けられ、冷却水の一部をイオン交換樹脂により処理する。熱交換器33は、燃料電池2の下流側に設けられている。燃料電池2から排出された冷却水は、熱交換器33により冷却され、冷却水タンク31に戻される。冷却水の流路となる配管34は、SUS316L製である。
【0040】
不純物イオン測定手段4は、腐食センサ41と、腐食計42と、温度測定装置43と、腐食速度測定装置44とを備える。不純物イオン測定手段4は、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定する電気化学的手段として機能する。腐食センサ41は、冷却水が燃料電池2へ流入する入口付近の配管34内に設置されている。腐食センサ41は、三電極系の電気化学センサであり、腐食計42に接続されている。図2に、腐食センサ41の構成を模式的に示す。図2に示すように、腐食センサ41は、作用電極412と対極413と参照電極414とがエポキシ樹脂に埋め込まれてなる。ここで、作用電極412はSUS316Lからなる。対極413と参照電極414とはいずれも黒鉛からなる。腐食計42により、腐食センサ41に定電流(ΔI)がパルスで流れた時の分極電圧値(ΔE)が測定される。腐食計42により測定された分極電圧値は、腐食速度測定装置44へ送られる。腐食速度測定装置44にて、見かけの分極抵抗値(R)が[R=ΔE/ΔI]より求められ、この分極抵抗値に基づいて金属材料の腐食速度が算出される。また、温度測定装置43は、腐食センサ41と同様に、冷却水が燃料電池2へ流入する入口付近の配管34内に設置されており、腐食センサ41近傍の温度を測定する。測定された温度値は、腐食速度測定装置44へ送られる。
【0041】
燃料電池システム1の運転中、不純物イオン測定手段4で測定された金属材料の腐食速度が、予め設定された許容範囲内の値であるかどうかの判断が行われる。そして、金属材料の腐食速度が許容範囲を超えた値であると判断された場合には、冷却水を交換する等の所定の処置が施される。
【0042】
本実施形態では、不純物イオン測定手段として、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定する電気化学的手段を採用した。しかし、測定対象となる不純物イオンは、金属イオンに限定されるものではない。フッ化物イオンや塩化物イオン等を測定対象とする態様を採用してもよい。また、測定手段も、上記電気化学的手段に限定されるものではない。冷媒中の不純物イオンの濃度を測定する濃度測定手段や、冷媒のpH値を測定するpH測定手段等、測定対象とする不純物イオンに応じて、適宜好適な測定手段を採用すればよい。
【0043】
本実施形態では、燃料電池冷却手段として、イオン交換器を含み、また、冷却水として生成水を利用する態様を採用した。しかし、燃料電池冷却手段は、本実施形態に限定されるものではない。冷却水を外部から供給する態様や、イオン交換器を設置せずに冷却水をそのまま循環させる態様を採用しても構わない。
【0044】
本実施形態では、金属材料の腐食速度を監視して、金属材料の腐食速度が予め設定された許容範囲を超えた場合に、所定の処置を施すこととした。しかし、上記燃料電池システムを、さらに、金属材料の腐食速度が予め設定された許容範囲内の値であるかどうかを判断する判断手段と、金属材料の腐食速度が許容範囲を超えた値であると判断された場合に所定の処置を施す処置手段とを備えるよう構成してもよい。すなわち、燃料電池と燃料電池冷却手段と不純物イオン測定手段とを備える上記本発明の燃料電池システムに、判断手段と処置手段とを加えることで、必要に応じて所定の処置を自動的に行うことができる。
【0045】
判断手段と処置手段としては、例えば、測定値をデジタル信号に変換するA/D変換器と、コンピュータと、出力された電気信号を処理する駆動回路とを備える制御ユニットを用いればよい。この場合、不純物イオン測定ステップで測定された測定値が、A/D変換器によりデジタル信号に変換される。デジタル信号はインターフェースを介してコンピュータに入力される。コンピュータでは、測定値が、予め設定された許容範囲内の値であるかどうかの判断が行われる。そして、測定値が許容範囲を超えた値であると判断された場合には、電気信号がインターフェースを介して出力される。出力された電気信号は駆動回路により処理され、例えば、冷媒の流路を変更するための装置等、対象となる装置に送られる。
【0046】
【実施例】
単セルの固体高分子型燃料電池を作製し、上述した実施形態の本発明の燃料電池システムにより運転試験を行った。そして、所定時間運転した後、電池から排出される冷媒の出口となる配管を観察した。以下、固体高分子型燃料電池の作製、運転試験および配管の観察結果について説明する。
【0047】
〈固体高分子型燃料電池の作製〉
まず、酸素極および燃料極を作製した。酸素極および燃料極の触媒には、白金がカーボンブラックに担持された触媒を用いた。上記触媒を、電解質であるナフィオン115(商品名、デュポン社製)のアルコール分散液に混合してペースト状とした。このペーストを拡散層となるカーボンクロスの表面に塗布、乾燥して、酸素極および燃料極とした。次いで、これら酸素極および燃料極を、ナフィオン115からなる電解質膜(膜厚約50μm)の両表面にそれぞれ120℃でホットプレスして電極接合体を形成し、焼成カーボン製のセパレータで挟持して単セルの固体高分子型燃料電池を作製した。なお、電極接合体にかかる締結圧力を、感圧試験紙で別途測定した結果、最大で8kgf/cm2であった。
【0048】
〈運転試験および配管の観察結果〉
(1)第一運転試験
作製した固体高分子型燃料電池を、上記図1に示した本発明の燃料電池システムによって運転した。図1に示すように、冷却水が固体高分子型の燃料電池2へ流入する入口付近の配管34内に、腐食センサ41と温度測定装置43とが設置されている。腐食センサ41は、腐食計42に接続されており、腐食計42では、腐食センサ41に定電流がパルスで流れた時の分極電圧値が測定される。本実施例では、腐食計42として、北斗電工社製の腐食計(HK−103)を使用した。腐食計42により測定された分極電圧値は、腐食速度測定装置44へ送られる。
【0049】
固体高分子型燃料電池の運転条件は、作動温度を80℃、水素バブラ温度を85℃、空気バブラ温度を70℃とした。燃料極には、燃料ガスとして水素を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。酸素極には、酸化剤ガスとして空気を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。電流密度を0.1A/cm2として、650時間運転した。そして、運転中、腐食速度測定装置44で算出された腐食速度が1μA/cm2を超えた場合、その都度冷却水を新しいものに交換して運転した。本運転方法を実施例1の運転方法とする。なお、不純物イオン測定手段4が設置されていない点以外は、上記本発明の燃料電池システムと同様の燃料電池システムを運転し、比較例の運転方法とした。比較例の運転方法では、冷却水の交換は行わなかったが、それ以外の運転条件は、上述した実施例1の運転方法における運転条件と同じとした。
【0050】
上記運転試験の後、固体高分子型燃料電池から排出される冷媒の出口となる配管を目視にて観察した。実施例1の運転方法では、配管に特に変化は見られなかった。一方、比較例の運転方法では、配管の内壁面に堆積物が沈着していた。また、冷却水の循環ポンプの圧力損失も増加していた。これは、配管を構成する金属材料が腐食したことを示すものである。この結果から、実施例1の運転方法は、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を監視し、必要に応じて冷却水の交換という処置を施したことで、配管等における不具合の発生を回避できたことがわかる。
【0051】
(2)第二運転試験
上記第一運転試験で用いた燃料電池システムにおいて、不純物イオン測定手段を変更した。本運転試験では、腐食センサ41として、ガルバニックカップルタイプの腐食センサを使用した。また、腐食計42に代えて無抵抗電流計45を使用した。図3に、使用した腐食センサ41の構成を模式的に示す。図3に示すように、腐食センサ41は、作用電極412と対極413とがエポキシ樹脂に埋め込まれてなる。作用電極412と対極413とは、それぞれ100μmのポリエステルフィルムで覆われ絶縁されている。ここで、作用電極412はアルミニウム材料のAl1050からなる。対極413は黒鉛からなる。腐食センサ41は無抵抗電流計45に接続されている。無抵抗電流計45は、腐食センサ41に流れた電流値を測定する。測定された電流値は、腐食速度測定装置44へ送られる。腐食速度測定装置44では、温度測定装置43により測定された温度値に基づいて、温度補正が行われ、金属材料の腐食速度が算出される。この不純物イオン測定手段の変更以外は、上記第一運転試験と同様にして、作製した固体高分子型燃料電池を図1に示した燃料電池システムによって運転した。
【0052】
本運転試験における固体高分子型燃料電池の運転条件は、上述した実施例1の運転方法と同様、作動温度を80℃、水素バブラ温度を85℃、空気バブラ温度を70℃とした。また、燃料極には、燃料ガスとして水素を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。酸素極には、酸化剤ガスとして空気を背圧約0.05MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。電流密度を0.1A/cm2として、1200時間運転した。そして、運転中、腐食速度測定装置44で算出された腐食速度が初期値の2倍となった場合、その都度冷却水およびイオン交換樹脂を新しいものに交換して運転した。本運転方法を実施例2の運転方法とする。
【0053】
上記運転試験の後、固体高分子型燃料電池から排出される冷媒の出口となる配管を目視にて観察した。その結果、配管に特に変化は見られなかった。これより、実施例2の運転方法は、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を監視し、必要に応じて冷却水およびイオン交換樹脂の交換という処置を施したことで、配管等における不具合の発生を回避できたことがわかる。
【0054】
以上二種類の運転試験より、本発明の運転方法によれば、冷媒の流路における不具合の発生を回避するために採りうる処置の実施時期を、正確に把握することができることがわかった。そして、上記実施時期に適切な処置を施すことで、燃料電池を長期間にわたり安定して運転できることが確認された。
【0055】
【発明の効果】
本発明の燃料電池システムの運転方法では、冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定し、その測定値から金属材料の腐食が進行していると判断された場合には、冷媒の交換等の所定の処置が施される。本発明の燃料電池システムの運転方法によれば、冷媒に関して施される処置の効果的な実施時期を把握することができるため、冷媒の流路における不具合の発生を回避し、燃料電池を長期間にわたり安定して運転することができる。
【0056】
また、本発明の燃料電池システムによれば、上記本発明の燃料電池システムの運転方法を簡便に実施することができる。すなわち、本発明の燃料電池システムでは、不純物イオン測定手段により冷媒における不純物イオンの溶出の程度が測定される。その測定値から、金属材料の腐食の進行状況を判断し、必要な場合に所定の処置を施すことで、冷媒の流路における上記不具合の発生を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である燃料電池システムの概略を示す。
【図2】分極抵抗法により金属材料の腐食速度を測定する腐食センサの構成を模式的に示す。
【図3】ガルバニックカップル法により金属材料の腐食速度を測定する腐食センサの構成を模式的に示す。
【符号の説明】
1:燃料電池システム 2:燃料電池
3:燃料電池冷却手段
31:冷却水タンク 32:イオン交換器 33:熱交換器 34:配管
4:不純物イオン測定手段
41:腐食センサ 42:腐食計 43:温度測定装置
44:腐食速度測定装置
Claims (10)
- イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された燃料電池と、該燃料電池に冷媒を供給し該燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段とを備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定ステップと、
前記不純物イオン測定ステップで測定された測定値が予め設定された許容範囲内の値であるかどうかを判断する判断ステップと、
前記測定値が前記許容範囲を超えた値であると判断された場合に所定の処置を施す処置ステップと
を含む燃料電池システムの運転方法。 - 前記不純物イオン測定ステップにおいて溶出の程度が測定される不純物イオンは、金属イオン、塩化物イオン、フッ化物イオンから選ばれる一種以上である請求項1に記載の燃料電池システムの運転方法。
- 前記不純物イオン測定ステップにおいて、前記冷媒中の不純物イオンの濃度を測定することにより、前記不純物イオンの溶出の程度を測定する請求項1に記載の燃料電池システムの運転方法。
- 前記不純物イオン測定ステップにおいて、前記冷媒のpH値を測定することにより、前記不純物イオンの溶出の程度を測定する請求項1に記載の燃料電池システムの運転方法。
- 前記不純物イオン測定ステップにおいて、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定することにより、金属イオンの溶出の程度を測定する請求項1に記載の燃料電池システムの運転方法。
- イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された燃料電池と、
前記燃料電池に冷媒を供給し該燃料電池の温度を調整する燃料電池冷却手段と、
前記冷媒における不純物イオンの溶出の程度を測定する不純物イオン測定手段と
を備える燃料電池システム。 - 前記不純物イオン測定手段により溶出の程度が測定される不純物イオンは、金属イオン、フッ化物イオン、塩化物イオンから選ばれる一種以上である請求項6に記載の燃料電池システム。
- 前記不純物イオン測定手段は、前記冷媒中の不純物イオンの濃度を測定する濃度測定手段を含む請求項6に記載の燃料電池システム。
- 前記不純物イオン測定手段は、前記冷媒のpH値を測定するpH測定手段を含む請求項6に記載の燃料電池システム。
- 前記不純物イオン測定手段は、金属材料の腐食速度を電気化学的方法により測定する電気化学的手段を含む請求項6に記載の燃料電池システム。
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