JP2004117534A - 樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】現像ラチチュードおよび画像部の耐薬品性に優れ、且つ、赤外線レーザにより高感度で画像形成可能であり、高画質の画像を形成しうる平版印刷版原版の記録層に好適な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体、及び、赤外線吸収剤を含有し、赤外レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化することを特徴とする。下記式中、Aは重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Zは単結合又は2価の有機基を表す。R1〜R4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又は水酸基を表し、R5は水素原子、アルキル基、アルカノイル基、炭素環基又は複素環基を表す。
【化1】
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体、及び、赤外線吸収剤を含有し、赤外レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化することを特徴とする。下記式中、Aは重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Zは単結合又は2価の有機基を表す。R1〜R4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又は水酸基を表し、R5は水素原子、アルキル基、アルカノイル基、炭素環基又は複素環基を表す。
【化1】
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は赤外線レーザの露光により画像記録可能であり、露光部分の記録層の可溶性が変化するポジ型或いはネガ型の平版印刷版原版に用いられる樹脂組成物に関し、より詳細には、赤外線レーザー等の近赤外領域の露光により書き込み可能であり、特にコンピュータ等のディジタル信号から直接製版できるいわゆるダイレクト製版用の平版印刷版原版の記録層として好適な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザの発達に伴い、コンピュータのディジタルデータから直接製版するシステムとして、これらの赤外線レーザーを用いるものが注目されている。
ダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平板印刷版材料が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この発明は、アルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物を添加した画像記録材料であり、画像部ではポジ型感光性化合物が、アルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部では熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなり、現像により除去され得るようになって、画像を形成する。
【0003】
一方、オニウム塩やアルカリ溶解性の低い水素結合網を形成可能な化合物は、アルカリ可溶性高分子のアルカリ溶解抑制作用を有することが知られている。赤外線レーザー対応画像記録材料としては、カチオン性赤外線吸収色素をアルカリ水可溶高分子の溶解抑制剤として用いた組成物がポジ作用を示すことが知られている(例えば、特許文献2参照。)。このポジ作用は赤外線吸収色素がレーザー光を吸収し、発生する熱で照射部分の高分子膜の溶解抑制効果を消失させて画像形成を行う作用である。
【0004】
また、ネガ型の画像形成方法としては、光又は熱により発生した酸を触媒として露光後の加熱処理により縮合架橋反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式が挙げられ、このような酸触媒架橋系の記録層を有する印刷版の技術が広く提案されている(例えば、特許文献3参照。)。更に、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式が挙げられ、このような光又は熱による重合系の記録層を有する印刷版としては、光重合性或いは熱重合性組成物を感光層として用いる技術が知られている(例えば、特許文献4又は5参照。)。
【0005】
このようなポジ型或いはネガ型の画像形成材料としては、いずれも、画像部の膜強度(画像強度)が高いことが好ましい。これを達成する手段として、例えばスルホン酸エステル類、リン酸エステル類、芳香族カルボン酸エステル類等の溶解抑止剤を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献6参照。)が、このような組成物は、画像部の膜強度は向上するものの、非画像部の溶解性をも影響を及ぼしてしまい、露光部と未露光部の溶解度の差に起因する現像ラチチュードが低下するという問題を有していた。
上記現像ラチチュードの課題を解決するためには、非画像部がより容易に現像し得る材料からなる記録層を用いることが考えられるが、このような記録層の画像部は、化学的にも弱く、印刷中にインキ洗浄溶剤やプレートクリーナー等で拭くことによりダメージを受け、その結果、十分な耐薬品性が得られていないという問題を有していた。
【0006】
画像部の化学的強度を向上し、耐薬品性を向上する技術としては、フイルムを介して紫外線露光を行う従来のPS版において、アミド構造やスルホンアミド構造等の高極性構造をバインダーポリマーに導入する方法が提案されている(特許文献7参照。)。また、このような方法を赤外線レーザー対応の画像記録材料に適応した例も報告されているが(特許文献8参照。)、高極性構造を導入したバインダーポリマーの画像形成性が劣ることから、耐薬品性は向上しても現像ラチチュードが劣化するといった問題を有していた。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−285275号公報
【特許文献2】
国際公開97/39894号パンフレット
【特許文献3】
特開平7−271029号公報
【特許文献4】
特開平8−108621号公報
【特許文献5】
特開平9−34110号公報
【特許文献6】
特開平10−268512号公報
【特許文献7】
特開平3−58049号公報
【特許文献8】
国際公開第2001/46318号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、露光部と未露光部の溶解度の差に起因する現像ラチチュードを向上させると共に、画像部の耐薬品性に優れる樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、赤外線レーザにより高感度で画像形成可能であり、高画質の画像を形成しうる平版印刷版原版の記録層に好適に用い得る樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、優れた耐薬品性およびアルカリ溶解性を発現する官能基を有する構造単位と、上記官能基と相互作用して強固な皮膜を形成しうる官能基を有する構造単位と、を有する共重合体が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の樹脂組成物は、下記一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体、及び、赤外線吸収剤を含有し、赤外レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化することを特徴とする。
【0011】
【化2】
【0012】
(一般式(I)中、Aは重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Zは単結合又は2価の有機基を表す。また、R1〜R4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又は水酸基を表し、R5は水素原子、アルキル基、アルカノイル基、炭素環基又は複素環基を表す。)
【0013】
以下、作用は明確ではないが、本発明の樹脂組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合について説明する。
即ち、一般式(I)におけるスルホンアミド基が、その高い極性および酸性度により、インキ洗浄溶剤やプレートクリーナーなどの溶剤に対する高い耐性(耐薬品性)と優れたアルカリ溶解性とを示し、且つ、併用される3級アミド構造とも相互作用を形成し得る。従って、画像部においては、その優れた耐薬品性と共に、該3級アミド構造が、スルホンアミド基及び必要に応じて併用される他のアルカリ可溶性樹脂の極性基との適度な相互作用を形成し、画像部の強度を高めるが、非画像部ではスルホンアミド基の高い酸性度に起因する良好な溶解性が発現されるため、赤外線レーザー露光による画像部/非画像部のコントラストを高めることになり、画像形成性が向上するものと推定される。従って、本発明の樹脂組成物は、現像ラチチュード及び耐薬品性に優れるものとなる。
また、このような耐薬品性および現像性に優れるスルホンアミド基を有する化合物と、画像部の強度を高める化合物(例えば、3級アミド構造を有する化合物)とを単に併用するのではなく、各々の性質を示す基を有する構造単位を共重合させることにより、記録層内において各機能を有する部位が相分離することなく、均一に併存することになる。そのため、一方の機能を極端に低下させることなく、両方の機能が高いレベルで発現されるものと考えられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体、及び、赤外線吸収剤を含有し、赤外レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する樹脂組成物であることを特徴とする。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、平版印刷版原版の記録層に用いることが好ましい。
本発明の樹脂組成物が好適に用いられる平版印刷版原版の記録層は、赤外線露光により、アルカリ水溶液に対する溶解性が変化するものであり、このような記録層としては、アルカリ水溶液に対する可溶性が向上するポジ型と、逆にアルカリ水溶液に対する可溶性が赤外線の露光により低下するネガ型との2つに分けられる。これらの記録層の詳細については後述する。
【0016】
[一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体]
以下、本発明の樹脂組成物を構成する特徴的な成分である、一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を必須とし、更に、必要に応じて、他のモノマー単位を共重合成分として含む共重合体(以下、適宜、特定共重合体と称する。)について、構成単位毎に詳細に説明する。
【0017】
(一般式(I)で表わされるモノマー単位)
まず、本発明に用いられる特定共重合体における前記一般式(I)で表わされるモノマー単位について説明する。
【0018】
一般式(I)において、Aは重合性二重結合を有する1価の有機基を表す。好ましくは、下記一般式(A−1)及び(A−2)で表される有機基が挙げられ、中でも、共重合性の点で一般式(A−1)で表される有機基が特に好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
一般式(A−1)及び(A−2)において、R6〜R10は、各々独立に、水素原子、アルキル基、カルボキシ基、及びアルコキシカルボキシ基からなる群より選択される原子又は置換基を表す。R6〜R10がアルキル基である場合は、該アルキル基は更にカルボキシ基又はアルコキシカルボキシ基により置換されてもよい。重合性二重結合としての共重合性や入手性の観点から、R6〜R10は、水素原子、メチル基、カルボキシ基、及びアルコキシカルボニルメチル基より選択された原子又は置換基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0021】
上記一般式(I)において、Zは単結合又は2価の有機基を表し、好ましい2価の有機基としては、下記に示す(Z−1)〜(Z−5)が挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
上記(Z−1)〜(Z−5)において、Xは単結合、アルキレン基、及びアリーレン基からなる群より選択される結合又は2価の有機基を表し、中でも、アルキレン基又は単結合であることが好ましい。また、(Z−2)及び(Z−5)において、Ra〜Rcは、各々独立に、水素原子、アルキル基、及びアリール基からなる群より選択される原子又は置換基を表し、入手性等の点から水素原子であることが好ましい。
【0024】
一般式(I)においてR1〜R4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又は水酸基を表し、水素原子又はアルキル基が好ましい。R5は水素原子、アルキル基、アルカノイル基、炭素環基又は複素環基を表し、水素原子が好ましい。
【0025】
一般式(I)で表されるモノマー単位のうち、本発明において好適に用いられるものの具体例(S−1〜S−17)を以下に示す。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
(3級アミド構造を有するモノマー単位)
3級アミド構造を有するモノマー単位は、3級アミド構造及び重合性二重結合を有するモノマー単位であれば特に限定はないが、下記一般式(P−1)〜(P−5)で表されるモノマー単位であることが好ましい。
【0029】
【化7】
【0030】
一般式(P−1)〜(P−5)中、R1〜R3は各々独立に水素原子、アルキル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基より選択される原子または基を表し、水素原子またはメチル基、エチル基等のアルキル基が好ましい。
Xは、窒素原子または窒素原子及び炭素原子と共に3〜9員の複素環を形成しうる炭化水素原子群を表し、環の員数としては5〜6員環であることが好ましく5員環が特に好ましい。この複素環の中には、O、S、Se、Te等のヘテロ原子を含んでもよい。また、該環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。また、該置換基同士は、結合して、X及び窒素原子と共に縮合複素環を形成してもよい。
【0031】
一般式(P−2)、(P−4)中、Yは、2価の連結基を表し、該連結基としては、−COORy−、−CONHRy−、−CON(CH3)Ry−、−C6H4Ry−、−C6H4SO2NHRy−、−C6H4CONHRy−、−C6H4NHCORy−、−C6H4COORy−、−C6H4CORy−、−C6H4ORy−、−C6H4SRy−、−C6H4SO2Ry−が挙げられる。
ここでRyは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又は単結合を表す。
また、Yを構成する各原子は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トルイル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、トルイルオキシ基等のアリールオキシ基、水酸基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、シアノ基、カルボキシ基、又は、塩素、臭素等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0032】
一般式(P−5)中、R4、R5はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を示す。R4、R5を構成する各原子は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、フェニル基、トルイル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、トルイルオキシ基等のアリールオキシ基、水酸基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、シアノ基、カルボキシル基、又は、塩素、臭素等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0033】
一般式(P−1)〜(P−5)で表される化合物の中でも、作用機構は明確ではないが、本発明の効果の1つである現像液濃度変動への許容幅(現像ラチチュード)を広くすることから、(P−1)〜(P−4)の環構造を有する3級アミド構造を有するモノマー単位が好ましく、一般式(P−1)および(P−2)で示される、カルボニル基を環構造の中に有するものが特に好ましい。また、最も好ましいモノマー単位の具体例としてはN−ビニルピロリドンが挙げられる。
【0034】
(その他のモノマー単位)
本発明における特定共重合体は、一般式(I)で表されるモノマー単位と3級アミド構造を有するモノマー単位とを必須とするものであるが、これらのモノマー単位の他に、第3の共重合成分として以下に示すその他のモノマー単位から導かれる構造単位を有していてもよい。その他のモノマー単位の例としては、下記(m1)〜(m15)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
【0036】
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0037】
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等。
(m13)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595、特願2001−115598等に記載されている化合物。
(m14)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸や、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類と環状酸無水物の縮合物等のカルボキシル基含有モノマー等のカルボキシ基含有化合物。
(m15)4−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン類や4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、2−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド等のフェノール性水酸基を有する化合物を挙げる事ができる。
【0038】
これら共重合成分のうち、皮膜性を向上するためには、アルキルアクリレート(m2)、アルキルメタクリレート(m3)およびアクリロニトリル(m10)等を用いることが好ましい。
【0039】
これら第3の共重合成分として以下に示すその他のモノマー単位は、本発明に係る特定共重合体中に、70モル%以下の範囲で含まれているものが好ましく、60モル%以下の範囲で含まれているものがより好ましい。
【0040】
本発明に係る共重合体を構成するモノマー単位は公知の重合方法により共重合されるが、好ましい方法としてはラジカル重合、アニオン重合が挙げられ、製造の容易さからラジカル重合が好ましい。
【0041】
このようなラジカル重合をする際に必要に応じて用いられる反応溶媒としては、上記モノマー単位を溶解することができる溶媒であれば限定することなく用いることができるが、ラジカル重合反応に対する影響が小さい点や一般式(I)で示されるモノマー単位の溶解性の観点から、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が好ましく、溶解性、安定性、安全性の観点からN,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい溶媒として挙げられる。
【0042】
また、必要に応じて用いられる重合開始剤としては種々の熱重合開始剤や光重合開始剤を用いることができるが、取り扱い性や入手性の観点からアゾ系熱重合開始剤が好ましく、好ましい開始剤としてはV−70、V−60、V−65(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾニトリル化合物、VA−545、VA−041(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミジン化合物、VA−080、VA−082(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミド化合物、V−601、V−501、VF−077(いずれも和光純薬工業(株)製)等のその他のアゾ化合物が挙げられ、V−65やV−601が特に好ましい開始剤として挙げられる。また、重合に際してはメルカプト化合物等に代表される公知の連鎖移動剤を併用することにより共重合体の末端部の組成や分子量を制御しても良い。さらに各々のモノマー単位は共重合体中にブロックまたはランダムのいずれの状態で導入しても良い。
【0043】
本発明における特定共重合体は、耐薬品性を良好にするという観点から、一般式(I)で表されるモノマー単位が特定共重合体中に10モル%以上60モル%以下の範囲で含まれているものが好ましく、15モル%以上55モル%以下の範囲で含まれているものがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物を平版印刷版原版の記録材料として用いた場合、その画像部/非画像部のコントラストを高め、画像形成性を向上させる観点から、3級アミド構造を有するモノマー単位が特定共重合体中に5モル%以上60モル%以下の範囲で含まれているものが好ましく、7モル%以上55モル%以下の範囲で含まれているものがより好ましい。
更に、本発明における特定共重合体において、3級アミド構造を有するモノマー単位と、一般式(I)で表されるモノマー単位と、のモル比は、15:85〜80:20の範囲であることが好ましく、20:80〜70:30の範囲であることがより好ましい。
【0044】
本発明における特定共重合体の重量平均分子量としては、5,000〜500,000が好ましく、10,000〜200,000が更に好ましく、20,000〜100,000が特に好ましい。分子量が少なすぎると十分な塗膜が得られず、大きすぎると現像性が劣る傾向がある。
【0045】
以下に、本発明における特定共重合体の代表例(BP−1〜BP−14)を示す。各共重合体の組成比はモル比を表し、Mwは重量平均分子量を表す。
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
本発明の樹脂組成物中の特定共重合体の含有量は25〜95重量%が好ましく、40〜85重量%であることがより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物中には、特定共重合体以外のアルカリ可溶性樹脂を併用してもよく、その場合に全アルカリ可溶性樹脂中の、本発明における特定共重合体の割合は40重量%以上であることが好ましい。その場合、本発明における特定共重合体以外のアルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂に代表されるフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
[赤外線吸収剤]
本発明における成分である赤外線吸収剤について説明する。
赤外線吸収剤としては、記録に使用する光エネルギー照射線(赤外レーザ)を吸収し、熱を発生する物質であれば特に制限はなく用いることができる。例えば、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0052】
赤外線吸収性染料としては、市販の染料、及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0053】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0054】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0055】
また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0056】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。更に、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に、下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の樹脂組成物をポジ型記録層中に使用した場合にはアルカリ可溶性樹脂との高い相互作用を与え、またネガ型記録層中に使用した場合には高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0057】
【化12】
【0058】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0059】
【化13】
【0060】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0061】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0062】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
【化17】
【0067】
【化18】
【0068】
一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0069】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0073】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0074】
【化21】
【0075】
【化22】
【0076】
一般式(d)中、R29ないしR31は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は、各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは、各々独立に、0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成してもよく、更に、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士或いはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X1及びX2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0077】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0078】
【化23】
【0079】
【化24】
【0080】
一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0081】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0082】
【化25】
【0083】
本発明において赤外線吸収剤として使用される赤外線吸収性顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0084】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0085】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0086】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像感光層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像感光層の均一性の点で好ましくない。
【0087】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0088】
これらの顔料若しくは染料を添加する場合、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10重量%の割合で添加することができる。顔料若しくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度向上効果が低くなり、また50重量%を越えると感光層の均一性が失われ、記録層の耐久性が悪くなる。
【0089】
既述のごとく、本発明の樹脂組成物は、平版印刷版原版の記録層に好適に用いられる。このような記録層としては、アルカリ水溶液に対する溶解性が向上するポジ型と、逆にアルカリ水溶液に対する溶解性が赤外線の露光により低下するネガ型との2つに分けられる。以下、それぞれの記録層について説明する。
【0090】
ポジ型の記録層について説明する。
ポジ型の記録層としては、相互作用解除系(感熱ポジ)、及び酸触媒分解系の記録層が挙げられる。これらは光照射や加熱により発生する酸や熱エネルギーそのものにより、層を形成していた高分子化合物の結合が解除されるなどの働きにより水やアルカリ水に可溶となり、現像により除去されて非画像部を形成するものである。
【0091】
本発明の樹脂組成物が、以下に挙げるポジ型の記録層に適用される場合、未露光部(画像部)では、特定共重合体中のスルホンアミド基が、その高い極性および酸性度により、インキ洗浄溶剤やプレートクリーナーなどの溶剤に対して優れた耐性(耐薬品性)を示し、露光部(非画像部)では優れた現像性を示す。一方、特定共重合体中の3級アミド構造は、未露光部(画像部)において、該スルホンアミド等の極性基と相互作用を形成して画像部の強度を高める。その結果、優れた現像ラチチュードの実現が可能となる。
従って、本発明の樹脂組成物は、ポジ型の記録層に適用することが特に好ましい。
【0092】
<相互作用解除系(感熱ポジ)>
相互解除系の記録層は、アルカリ可溶性樹脂と赤外線吸収剤とを含む層であり、光照射や加熱により発生する熱エネルギーにより、層を形成していた高分子化合物の結合が解除されるなどの働きにより水やアルカリ水に可溶となり、現像により除去されて非画像部を形成するものである。
相互作用解除系におけるアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収剤としては、本発明の樹脂組成物に含有される前記特定共重合体及び光熱変換剤が用いられるが、所望により他の公知の化合物を併用することもできる。
【0093】
<酸触媒分解系>
酸触媒分解系の記録層は、光又は熱の作用により酸を発生する化合物(酸発生剤)、及び、発生した酸を触媒として化学結合を開裂しアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化合物(酸分解性化合物)とを必須成分とする層である。かかる酸触媒分解のメカニズムにより、酸触媒分解系画像形成材料は、化学増幅系画像形成材料とも称される。
【0094】
酸触媒分解系の記録層には、更に、この系を形成するためのバインダー成分である高分子化合物を含有してもよい。該バインダー成分である高分子化合物としては、例えば、前記特定共重合体等のアルカリ可溶性樹脂であってもよく、或いは、後述する酸分解性化合物自体が、バインダー成分の機能を果たす高分子化合物又はその前駆体であってもよい。
また、酸触媒分解系の記録層には、感度向上を目的とする赤外線吸収剤(例えば、前記赤外線吸収剤等)を含有してもよい。
更に、酸触媒分解系記録層が、多層構造内の一層として複数の層中に設けられる場合には、特に、最上層として露光面に形成されることが好ましい。
【0095】
〔酸分解性化合物〕
本発明において、酸を触媒として化学結合を開裂しアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化合物(酸分解性化合物)とは、分子内に酸で分解し得る結合基を有する化合物と言い代えることができる。このような化合物は、特開平9−171254号公報に「(b)酸で分解結合を少なくとも1つ有する化合物」として記載されたものを用いることができる。酸で分解し得る結合としては、例えば、−(CH2CH2O)n−基(nは2〜5の整数を表す)等を好ましく挙げることができる。
このような化合物中、感度及び現像性の観点から、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0096】
【化26】
【0097】
一般式(1)中、R、R1及びR2は、各々水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基を表し、p、q及びrは、各々1〜3の整数を表し、m及びnは、各々1〜5の整数を表す。
【0098】
一般式(1)において、R、R1及びR2が表すアルキル基は直鎖でも分岐でもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられ、スルホ基及びカルボキシル基はその塩をも包含する。一般式(1)で表される化合物のうち、m及びnが1又は2である化合物が特に好ましい。一般式(1)で表される化合物は公知の方法で合成することができる。
【0099】
その他、本発明に適用し得る酸分解性化合物としては、特開昭48−89603号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、同56−17345号に記載のC−O−C結合を有する化合物、特開昭60−37549号、同60−121446号に記載のSi−O−C結合を有する化合物、特開昭60−3625号、同60−10247号に記載されているその他の酸分解化合物を挙げることができ、更に特開昭62−222246号に記載されているSi−N結合を有する化合物、特開昭62−251743号に記載されている炭酸エステル、特開昭62−209451号に記載されているオルト炭酸エステル、特開昭62−280841号に記載されているオルトチタン酸エステル、特開昭62−280842号に記載されているオルトケイ酸エステル、特開昭63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP−0884547Alに記載されているアセタール、ケタール及びオルトカルボン酸エステル、特開昭62−244038号に記載されているC−S結合を有する化合物を用いることができる。
【0100】
上記酸分解性化合物の中でも特に、特開昭53−133429号、同56−17345号、同60−121446号、同60−37549号、同62−209451号、同63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP0884647Alの各公報に記載されているC−O−C結合を有する化合物、Si−O−C結合を有する化合物、オルト炭酸エステル、アセタール類、ケタール類及びシリルエーテル類が好ましい。
この酸分解性化合物の中でも、主鎖中に繰り返しアセタール又はケタール部分を有し、アルカリ現像液中でその溶解度が発生した酸により上昇する高分子化合物が好ましく用いられる。
【0101】
これらの酸分解性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。また、添加量としては、化学増幅層全固形分に対し5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜35重量%の割合で層中に添加される。添加量が5重量%未満の場合は、非画像部の汚れが発生し易くなり、また添加量が70重量%を越える場合は、画像部の膜強度が不充分となり、いずれも好ましくない。
【0102】
次に、ネガ型の記録層について説明する。
ネガ型の記録層としては、ラジカル重合系、酸触媒架橋系(カチオン重合も含む)の記録層が挙げられる。これらは、光照射や加熱により発生するラジカル或いは酸が開始剤や触媒となり、記録層を構成する化合物が重合反応、架橋反応を起こし硬化して画像部を形成するものである。
本発明の樹脂組成物が、以下に挙げるネガ型の記録層に適用される場合、前記特定共重合体中のスルホンアミド基が、露光部(画像部)においてはその高い極性および酸性度により優れた耐薬品性を示し、未露光部(非画像部)では優れた現像性を示す。一方、特定共重合体中の3級アミド構造は、露光部(画像部)において、該スルホンアミド等の極性基と相互作用を形成して画像部の強度を高める。その結果、優れた現像ラチチュードの実現が可能となる。
【0103】
<ラジカル重合系>
ラジカル重合系記録層は、光又は熱によりラジカルを発生する化合物(以下、ラジカル発生剤と称する)と、ラジカル重合しうる化合物(重合性化合物と称する)とを含有し、例えば、赤外線レーザなどの照射により露光部においてラジカル発生剤からラジカルが発生し、それが開始剤となり、重合性化合物がラジカル重合反応によって硬化し、画像部を形成する。ここに用いられるラジカル発生剤と重合性化合物との組合せは、ラジカル重合により形成される膜の強度が記録層としての要求を満たすものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができる。また、ラジカル発生剤の反応性向上のために、オニウム塩、還元剤などの促進剤を併用することもできる。ラジカル重合層に使用し得る成分としては、例えば、特開平8−108621号公報において、熱重合性記録層の構成成分として記載された化合物、特開平9−34110号公報において、記録層の構成成分として記載された化合物なども好ましく使用することができる。
【0104】
(ラジカル発生剤)
ラジカル重合系記録層に用いられるラジカル発生剤としては、一般にラジカル重合による高分子合成反応に用いられる公知のラジカル重合開始剤を特に制限なく、使用することができ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル,2,2’−アゾビスプロピオニトリル等のアゾビスニトリル系化合物、過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,過酸化アセチル,過安息香酸−t−ブチル,α−クミルヒドロパーオキサイド,ジ−t−ブチルパーオキサイド,ジイソプロピルパーオキシジカーボネート,t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート,過酸類,アルキルパーオキシカルバメート類,ニトロソアリールアシルアミン類等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の無機過酸化物、ジアゾアミノベンゼン,p−ニトロベンゼンジアゾニウム,アゾビス置換アルカン類,ジアゾチオエーテル類,アリールアゾスルホン類等のアゾ又はジアゾ系化合物、ニトロソフェニル尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド等のテトラアルキルチウラムジスルフィド類、ジベンゾイルジスルフィド等のジアリールジスルフィド類、ジアルキルキサントゲン酸ジスルフィド類、アリールスルフィン酸類、アリールアルキルスルホン類、1−アルカンスルフィン酸類等を挙げることができる。
【0105】
本発明に係るラジカル重合系記録層が赤外線レーザにより記録される場合、レーザのエネルギーにもよるが、露光面の到達温度が600℃以上にもなるため、活性化エネルギーの大きいラジカル発生剤でも充分な感度を得ることができる。
ラジカル発生剤のラジカル発生のための活性化エネルギーは30kcal/モル以上であることが好ましく、そのようなものとしてアゾビスニトリル系化合物、有機過酸化物が挙げられる。中でも、常温で安定性に優れ、過熱時の分解速度が速く、分解時に無色となる化合物が好ましく、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
上記ラジカル発生剤は単独で用いても2種以上併用してもよく、ラジカル重合層の全固形分に対し0.5〜30重量%程度、好ましくは2〜10重量%で用いる。
【0106】
また、後述するオニウム塩との相互作用によりラジカルを発生する化合物も好適に使用することができる。具体的には、ハロゲン化物(α−ハロアセトフェノン類、トリクロロメチルトリアジン類等)、アゾ化合物、芳香族カルボニル化合物(ベンゾインエステル類、ケタール類、アセトフェノン類、o−アシルオキシイミノケトン類、アシルホスフィンオキサイド類等)、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、過酸化物などが挙げられるが、好ましくは、前記特開平9−34110号公報の第16頁に(A−1)〜(A−4)として開示されたビスイミダゾール誘導体が挙げられる。
後者のラジカル発生剤は、オニウム塩との相互作用により高感度化を達成している。このラジカル発生剤と併用し得るオニウム塩としては、同公報の段落番号〔0022〕〜〔0049〕に記載のホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びアンモニウム塩の各化合物が挙げられる。
【0107】
前記オニウム塩の添加量は、オニウム塩の種類及び使用形態により異なるが、記録層全固形分に対して0.05〜50重量%であることが好ましい。
また、後述する<酸触媒架橋系>内の(酸発生剤)として好適用いることができるヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩は前記ラジカル発生剤と併用しなくても、単独でラジカル発生剤として使用することができ、その添加量は、種類及び使用形態により異なるが、記録層全固形分に対して0.05〜50重量%であることが好ましい。
【0108】
(重合性化合物)
ラジカル発生剤から発生するラジカルにより重合して硬化する重合可能な高分子化合物としては、重合性基を有する公知のモノマーが特に制限なく使用することができる。そのようなモノマーとしては、具体的には、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物;ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートを前記と同様にメタクリレート等に代えた化合物;或いはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートをメタクリレート等に代えた化合物等を挙げることができる。また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸又はメタアクリル酸を導入し、光重合性を付与した所謂プレポリマーと呼ばれるものも好適に使用できる。
【0109】
この他に、特開昭58−212994号、同61−6649号、同62−46688号、同62−48589号、同62−173295号、同62−187092号、同63−67189号、特開平1−244891号等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社,286〜294頁に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会,11〜65頁に記載の化合物なども好適に用いることができる。
【0110】
中でも、分子内に2個以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが望ましい。本発明においては、重合性化合物は、前記例示したものも含めて重合性基を有するモノマー、プレポリマーのなかから、目的に応じて1種或いは相溶性、親和性に問題がなければ、2種以上を組合せて用いることができる。
エチレン性不飽和基を有する化合物は、記録層中に固形分として、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜60重量%含有される。
【0111】
(バインダー樹脂)
ラジカル重合系記録層には、膜性向上の観点からバインダー樹脂を用いることが好ましい。バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン、ポリカプロラクトン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。又、樹脂内に不飽和結合を有する樹脂、例えばジアリルフタレート樹脂及びその誘導体、塩素化ポリプロピレンなどは、前述のエチレン性不飽和結合を有する化合物と重合させることが可能なため用途に応じて好適に用いることができる。バインダー樹脂としては前述の樹脂の中から、1種又は2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
これらのバインダー樹脂は、重合性化合物100重量部に対して500重量部以下、より好ましくは200重量部以下の範囲で使用するのが好ましい。
このようなラジカル重合系記録層においては、前記赤外線吸収剤が含まれることで感度向上や、ラジカル重合反応の促進を図ることができる。
【0112】
(その他の化合物)
ラジカル重合系記録層には、従来公知の光重合性化合物と併用される各種添加剤が、適宜、使用できる。
添加剤として熱重合抑制剤が挙げられる。具体的には、ハイドロキノン、ピロガロール、p−メトキシフェノール、カテコール、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のキノン系、フェノール系化合物が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とバインダー樹脂との合計100重量部に対して、10重量部以下で、好ましくは0.01〜5重量部程度で用いる。
【0113】
酸素クエンチャーとして添加しうる化合物では、米国特許第4,772,541号の第11カラム58行目〜第12カラム35行目に記載の化合物等のN,N−ジアルキルアニリン誘導体が挙げられる。
また、膜質向上のため、可塑剤を用いることができ、例えば、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、アジピン酸エステル類、その他飽和或いは不飽和カルボン酸エステル類、クエン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、ステアリン酸エポキシ類、正リン酸エステル類、亜燐酸エステル類、グリコールエステル類等が挙げられる。
【0114】
加熱により酸を発生しラジカル発生剤の分解を促進する添加剤として、酸発生剤を併用することも好ましい。この酸発生剤については、下記酸触媒架橋系記録層の説明において詳述するものを用いることができる。
ラジカル重合系記録層を記録層とする平版印刷版原版は、前記各成分を適宜選択して、適当な溶剤に溶解し、支持体上に塗布することで、ラジカル重合系記録層を形成することができるが、その乾燥後の塗布量としては0.01〜5.0g/m2程度が好ましい。
【0115】
なお、記録層としてラジカル重合系記録層を用いる場合、酸素による重合阻害を防止するために、該記録層に隣接して酸素不透過性のオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層の素材としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂が好ましく、膜厚は0.2〜3μm程度が適当である。
オーバーコート層には、必要に応じて記録に用いる光源からの光を吸収しない染料又は顔料をフィルター剤として添加してもよい。
【0116】
<酸触媒架橋系>
酸触媒架橋系記録層には、光又は熱により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」と称する)と、発生した酸を触媒として架橋しうる化合物(以下、架橋剤と称する)とを含有し、更に、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうるバインダーポリマーを含む。この酸触媒架橋系記録層においては、光照射又は加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士或いは架橋剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。
【0117】
このような特性を有する酸触媒架橋系記録層としては、公知の同様の特性を有する層の構成成分を用いることができる。例えば、特開平7−20629号公報に記載されるレゾール樹脂、ノボラック樹脂、潜伏性ブレンステッド酸、及び赤外吸収剤を含んでなる放射線感受性組成物からなる層の構成成分として記載された化合物が挙げられる。ここで、「潜伏性ブレンステッド酸」とは、分解してブレンステッド酸を生成する先駆体を指し、本発明における酸発生剤と酸架橋剤との双方の特性を有する化合物である。ブレンステッド酸は、レゾール樹脂とノボラック樹脂との間のマトリックス生成反応を触媒すると考えられており、この目的に適切なブレンステッド酸の例としては、トリフルオロメタンスルホン酸及びヘキサフルオロホスホン酸である。
【0118】
更に、イオン性潜伏性ブレンステッド酸が好ましく、これらの例は、オニウム塩、特にヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、セレノニウム、ジアゾニウム、及びアルソニウム塩を包含する。非イオン性潜伏性ブレンステッド酸もまた好適に用いることができ、例えば、下記の化合物:RCH2X、RCHX2、RCX3、R(CH2X)2、及びR(CH2X)3、(式中、Xは、Cl、Br、F、若しくはCF3、SO3であり、Rは、芳香族基、脂肪族基若しくは芳香族基及び脂肪族基の結合体である)を挙げることができる。
【0119】
また、特開平11−95415号公報に記載の酸架橋性化合物と高分子量結合剤とを含有する記録層も好適なものとして挙げられる。これは、活性光線の照射により酸を発生し得る化合物、例えば、ジアゾニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びヨードニウムのなどの塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、及び有機金属/有機ハロゲン化合物と、前記酸の存在下で架橋しうる結合を少なくとも1つ有する化合物、例えば、官能基としてアルコキシメチル基、メチロール基、アセトキシメチル基等を少なくとも2個有するアミノ化合物、官能基としてアルコキシメチル基、メチロール基、アセトキシメチル基等を有する少なくとも2置換の芳香族化合物、レゾール樹脂及びフラン樹脂、特定の単量体から合成されるアクリル樹脂など、とを含有する感光層であり、これを使用することができる。
【0120】
本発明に係る酸触媒架橋系記録層には、酸発生剤、架橋剤及びバインダーポリマー、その他が含まれるが、次に、これらの化合物について個々に説明する。
【0121】
(酸発生剤)
光又は熱により酸を発生する化合物(酸発生剤)とは、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。
【0122】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、米国特許第4,708,925号明細書や特開平7−20629号公報に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号公報及び特開平1−102457号公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号明細書や米国特許第5,200,544号明細書に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。更に、特開平2−100054号公報、特開平2−100055号公報及び特開平9−197671号公報に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号公報に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
【0123】
これらの酸発生剤は、酸触媒架橋系記録層の全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%の割合で酸架橋層中に添加される。添加量が0.01重量%未満の場合は、画像が得られない。また添加量が50重量%を越える場合は、印刷時非画像部に汚れを発生する。
【0124】
これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、ここに挙げた酸発生剤は、紫外線照射によっても分解できるため、このような形態の記録層を用いれば、赤外線だけではなく紫外線の照射によっても画像記録可能である。
【0125】
(酸架橋剤)
酸触媒架橋系記録層に用い得る架橋剤としては、酸により架橋する化合物であれば、特に制限はないが、下記一般式(I)で表されるフェノール誘導体(以下、適宜、低分子フェノール誘導体と称する)、下記一般式(II)で表される、環上に2又は3個のヒドロキシメチル基を有するフェノール環を分子内に3個以上有する多核型フェノール性架橋剤、及び、前記低分子フェノール誘導体と多核型フェノール性架橋剤及び/又はレゾール樹脂との混合物、などが好ましく使用される。
【0126】
【化27】
【0127】
式中、Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示す。R1及びR2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。R3は、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。mは、2〜4の整数を示す。nは、1〜3の整数を示す。Xは2価の連結基を示し、Yは前記の部分構造を有する1価乃至4価の連結基或いは末端が水素原子である官能基を示し、ZはYが末端基である場合には存在せず、或いは、Yの連結基の数に応じて存在する1価乃至4価の連結基又は官能基を示す。
【0128】
【化28】
【0129】
式中、Aは、炭素数1〜20のr価の炭化水素連結基を示し、rは3〜20の整数を示す。pは、2〜3の整数を示す。
一般式(I)で表されるフェノール誘導体については、本願出願人が先に提出した特開2001−166462公報の段落番号〔0098〕〜〔0155〕に詳述されており、一般式(II)で表される、環上に2又は3個のヒドロキシメチル基を有するフェノール環を分子内に3個以上有する多核型フェノール性架橋剤についても、同明細書段落番号〔0156〕〜〔0165〕に詳述されている。
【0130】
これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
上記架橋剤は、酸触媒架橋系記録層の固形分中、5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%の添加量で用いられる。架橋剤の添加量が5重量%未満であると画像記録した際の画像部の膜強度が悪化し、また、70重量%を越えると保存時の安定性の点で好ましくない。
【0131】
酸触媒架橋系記録層に用い得るバインダーポリマーとしては、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーが挙げられる。アルコキシ基としては、感度の観点から、炭素数20個以下のものが好ましい。また、芳香族炭化水素環としては、原料の入手性から、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。これらの芳香族炭化水素環は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基以外の置換基、例えば、ハロゲン基、シアノ基等の置換基を有していてもよいが、感度の観点から、ヒドロキシ基又はアルコキシ基以外の置換基を有さない方が好ましい。
【0132】
酸触媒架橋系記録層において、好適に用いることができるバインダーポリマーは、下記一般式(III)で表される構成単位を有するポリマー、又はノボラック樹脂等のフェノール樹脂である。
【0133】
【化29】
【0134】
一般式(III)中、Ar2は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環を示す。R4は、水素原子又はメチル基を示す。R5は、水素原子又は炭素数20個以下のアルコキシ基を示す。X1は、単結合又は、C、H、N、O、Sより選ばれた1種以上の原子を含み、かつ炭素数0〜20個の2価の連結基を示す。kは、1〜4の整数を示す。
【0135】
酸触媒架橋系記録層においては、バインダーポリマーとして、一般式(III)で表される構成単位のみから成る単独重合体を用いてもよいが、この特定構成単位とともに、他の公知のモノマーより誘導される構成単位を有する共重合体を用いてもよい。
これらを用いた共重合体中に含まれる一般式(III)で表される構成単位の割合は、50〜100重量%であることが好ましく、更に好ましくは60〜100重量%である。
【0136】
また、使用し得る上記バインダーポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0137】
次にノボラック樹脂等のフェノール樹脂について述べる。
酸触媒架橋系記録層において好適に用いられるノボラック樹脂は、フェノールノボラック、o−、m−、p−の各種クレゾールノボラック、及びその共重合体、ハロゲン原子、アルキル基等で置換されたフェノールを利用したノボラックが挙げられる。
これらのノボラック樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜2万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1000以上であり、更に好ましくは2,000〜15,000の範囲である。多分散度は1以上が好ましくは、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0138】
また、バインダーポリマーとして、環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いることも好ましい態様である。
ここで、複素環とは、環系を構成する原子の中に、炭素以外のヘテロ原子を1個以上含むものをいう。用いられるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子が好ましい。このような複素環基を有するポリマーを用いることにより、本複素環に存在するローンペアの機能により、化学構造的に反応し易くなり、耐刷性の良好な膜が形成されると考えられる。
【0139】
以上説明した本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらポリマーは、酸触媒架橋系記録層の全固形分に対し20〜95重量%、好ましくは40〜90重量%の割合で添加される。添加量が20重量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95重量%を越える場合は、画像形成されない。
【0140】
この酸触媒架橋系記録層においても、前記赤外線吸収剤を含有することで感度向上を図ることができる。
この酸触媒架橋系記録層の形成に際して、塗布性、膜質の向上などの目的で界面活性剤などの種々の添加物を併用することができる。
【0141】
以上、ポジ型及びネガ型の記録層について説明してきたが、特に断らない限り、各記録層には、任意で、前記アルカリ可溶性樹脂をバインダーポリマーとして、前記赤外線吸収剤を、感度向上を目的として使用することができる。
【0142】
〔その他の成分〕
上述された本発明の樹脂組成物が好適に用いられるポジ型及びネガ型の記録層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等を添加すると、アルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させることができるので好ましい。
【0143】
前記オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げることができる。オニウム塩は、記録層を構成する全固形分に対して、1〜50重量%添加するのが好ましく、5〜30重量%添加するのがより好ましく、10〜30重量%添加するのが特に好ましい。
【0144】
また、更に、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0145】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物及び本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
【0146】
また、記録層には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0147】
記録層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0148】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%の割合で記録層中に添加することができる。
【0149】
更に、記録層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0150】
[平版印刷版原版]
本発明の樹脂組成物は、平版印刷版原版の記録層として好適に使用することができる。かかる平版印刷版原版は、本発明の樹脂組成物を含む記録層塗布液や、保護層等の所望の層の塗布液用成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより平版印刷版原版を製造することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0151】
本発明の樹脂組成物を用いた記録層塗布液中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層の全固形分の0.01〜1重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0152】
平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物が用いられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙、若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0153】
平版印刷版原版に用いられる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0154】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0155】
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0156】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0157】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号の各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号の各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0158】
本発明の樹脂組成物を含む記録層を設けた平版印刷版原版は、必要に応じて、支持体と当該記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0159】
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、波長720〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0160】
上記のようにして作製された平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
【0161】
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号公報に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0162】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。
更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の樹脂組成物が適用された平版印刷版原版を、印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0163】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0164】
本発明の樹脂組成物が適用された平版印刷版原版について説明する。
画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行われる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行う方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0165】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニング処理する場合には、該バーニング処理前に、特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0166】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0167】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行われている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合には、ガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0168】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0169】
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を組み合わせて処理することで支持体A、B、C、及びDを作製した。
【0170】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0171】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0172】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0173】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0174】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0175】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15重量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0176】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0177】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0178】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0179】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0180】
<支持体A>
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体を作製した。
【0181】
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0182】
<支持体C>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0183】
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体を作製した。
【0184】
上記によって得られた支持体A、B、C、Dは続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
【0185】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1重量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
【0186】
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0187】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0188】
【化30】
【0189】
〔実施例1〜6、比較例1〕
(記録層の形成)
得られた支持体A〜Dに以下の感光液を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥膜厚が0.9g/m2のポジ型感赤外線感光性記録層を有するポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0190】
<感光液>
・フッ素含有ポリマーA(下記構造式) 0.02g
・フッ素含有ポリマーB(下記構造式) 0.04g
・フッ素含有ポリマーC(下記構造式) 0.002g
・表1に記載の共重合体 2.00g
・クレゾールノボラック 0.50g
(PR−54046、住友ベークライト(株)製)
・p−トルエンスルホン酸 0.01g
・テトラヒドロキシ無水フタル酸 0.20g
・4,4’−スルホニルジフェノール 0.15g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン 0.03g
・シアニン染料A(下記構造式) 0.12g
・シアニン染料B(下記構造式) 0.05g
・ジミリスチルチオジプロピオネート 0.02g
・ジラウリルチオジプロピオネート 0.04g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.10g
・N,N−ジメチルアセトアミド 10g
・メチルエチルケトン 20g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10g
【0191】
【化31】
【0192】
【化32】
【0193】
【化33】
【0194】
〔平版印刷版原版の評価〕
(現像ラチチュードの評価)
得られた平版印刷版原版を温度25℃相対湿度50%の条件下で10日間保存した後に、Creo社製Trendsetter3244にてビーム強度9.0W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、下記A組成及びB組成のアルカリ現像液の水の量を変更することにより、希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間22秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。その結果を表1に示す。
【0195】
<アルカリ現像液A組成>
・SiO2・K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0重量%
・クエン酸 0.5重量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5重量%
(重量平均分子量1,000)
・水 95.0重量%
<アルカリ現像液B組成>
・Dソルビット 2.5重量%
・水酸化ナトリウム 0.85重量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5重量%
(重量平均分子量1,000)
・水 96.15重量%
【0196】
(感度の評価)
得られた平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter3244にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。結果を表1に示す。
【0197】
(耐薬品性の評価)
上記アルカリ現像液B組成を用いた現像ラチチュードの評価において、現像処理を行った平版印刷版のうち、良好に現像が行えた現像液電導度幅の中央にあたる電導度の現像液により現像した平版印刷版を、ハイデルKOR−D機で、大日本インキ化学工業(株)製のDIG−GEOS(N)墨のインキを用い、5,000枚印刷毎に、富士写真フイルム(株)製プレートクリーナーCL−1で版面を拭きながら印刷を行い、良好な印刷物が得られた印刷枚数を計測した。結果を表1に示す。印刷枚数が多いほど画像部の耐薬品性(耐刷性)が良好であると評価する。
【0198】
【表1】
【0199】
以下に、表1に記載の共重合体BP−Cの構造を示す。
【0200】
【化34】
【0201】
表1に示されるように、本発明の樹脂組成物を記録層に用いた平版印刷版原版(実施例1〜6)は、シリケート系、非シリケート系いずれの現像液を用いた場合においても、スルホンアミド基のみを有する樹脂組成物を用いた平版印刷版原版(比較例1)と比べ、現像ラチチュード、感度および耐薬品性に優れていることがわかった。
【0202】
〔実施例7〜10、比較例2〕
得られた支持体A〜Dに、実施例1〜6と同様に下塗り液を塗布した後、記録層として、下記組成の第1層(下層)用塗布液を、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥して塗布量を0.8g/m2とした。得られた下層付き支持体に、下記組成の第2層(上層)用塗布液をワイヤーバーで塗布した。塗布後、乾燥オーブンで、145℃で70秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.1g/m2としてポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0203】
<第1層(下層)用塗布液>
・表2に記載の共重合体 表2に記載の量
・シアニン染料C(下記構造) 0.098g
・2−メルカプト−5−メチルチオ−
1,3,4−チアジアゾール 0.030g
・シス−Δ4−テトラヒドロフタル酸無水物 0.100g
・4,4’−スルホニルジフェノール 0.090g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・ビクトリアピュアブルーBOH 0.100g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン 0.030g
ヘキサフルオロホスフェート(熱分解性化合物)
・フッ素系界面活性剤 0.035g
(メガファックF−780、大日本インキ工業(株)社製)
・メチルエチルケトン 26.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.6g
・γ−ブチロラクトン 13.8g
【0204】
<第2層(上層)用塗布液>
・メタクリル酸エチルと
2−メタクリロイロキシエチルコハク酸の共重合体 0.030g
(モル比67:33、重量平均分子量92,000)
・クレゾールノボラック樹脂 0.320g
(PR−54046、住友ベークライト(株)製)
・シアニン染料A(請求項1〜6記載) 表2に記載の量
・1−(4−メチルベンジル)−1−
フェニルピペリジニウムの5−ベンゾイル−4−
ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホン酸塩 0.005g
・ビクトリアピュアブルーBOH 0.007g
・フッ素系界面活性剤 0.022g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・1−メトキシ−2−プロパノール 19.9g
【0205】
【化35】
【0206】
〔平版印刷版原版の評価〕
(現像ラチチュード、感度、及び耐薬品性の評価)
得られた平版印刷版原版に対し、実施例1〜6と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度、及び耐薬品性を評価した。結果を表2に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
表2に示されるように、本発明の樹脂組成物を記録層に用いた平版印刷版原版(実施例7〜10)は、その記録層を2層構造にした場合においても、スルホンアミド基のみを有する樹脂組成物を用いた平版印刷版原版(比較例2)と比べ、現像ラチチュード、感度および耐薬品性に優れていることがわかった。
【0209】
〔実施例11〜13、比較例3〕
実施例8〜10および比較例2で用いた平版印刷版原版に対し、現像液を富士写真フイルム(株)製現像液DT−1希釈液に替え、現像時間を14秒に変更した以外は実施例8〜10と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード及び感度を評価した。結果を表3に示す。
【0210】
【表3】
【0211】
表3に示されるように、本発明の樹脂組成物を記録層に用いたいずれの平版印刷版原版(実施例11〜13)も、スルホンアミド基のみを有する樹脂組成物を用いた平版印刷版原版(比較例1)と比べ、現像ラチチュードおよび感度に優れていることがわかった。
【0212】
【発明の効果】
本発明によれば、露光部と未露光部の溶解度の差に起因する現像ラチチュードを向上させると共に、画像部の耐薬品性に優れる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明の他の目的は、赤外線レーザにより高感度で画像形成可能であり、高画質の画像を形成しうる平版印刷版原版の記録層に好適に用い得る樹脂組成物を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は赤外線レーザの露光により画像記録可能であり、露光部分の記録層の可溶性が変化するポジ型或いはネガ型の平版印刷版原版に用いられる樹脂組成物に関し、より詳細には、赤外線レーザー等の近赤外領域の露光により書き込み可能であり、特にコンピュータ等のディジタル信号から直接製版できるいわゆるダイレクト製版用の平版印刷版原版の記録層として好適な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザの発達に伴い、コンピュータのディジタルデータから直接製版するシステムとして、これらの赤外線レーザーを用いるものが注目されている。
ダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平板印刷版材料が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この発明は、アルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物を添加した画像記録材料であり、画像部ではポジ型感光性化合物が、アルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部では熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなり、現像により除去され得るようになって、画像を形成する。
【0003】
一方、オニウム塩やアルカリ溶解性の低い水素結合網を形成可能な化合物は、アルカリ可溶性高分子のアルカリ溶解抑制作用を有することが知られている。赤外線レーザー対応画像記録材料としては、カチオン性赤外線吸収色素をアルカリ水可溶高分子の溶解抑制剤として用いた組成物がポジ作用を示すことが知られている(例えば、特許文献2参照。)。このポジ作用は赤外線吸収色素がレーザー光を吸収し、発生する熱で照射部分の高分子膜の溶解抑制効果を消失させて画像形成を行う作用である。
【0004】
また、ネガ型の画像形成方法としては、光又は熱により発生した酸を触媒として露光後の加熱処理により縮合架橋反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式が挙げられ、このような酸触媒架橋系の記録層を有する印刷版の技術が広く提案されている(例えば、特許文献3参照。)。更に、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式が挙げられ、このような光又は熱による重合系の記録層を有する印刷版としては、光重合性或いは熱重合性組成物を感光層として用いる技術が知られている(例えば、特許文献4又は5参照。)。
【0005】
このようなポジ型或いはネガ型の画像形成材料としては、いずれも、画像部の膜強度(画像強度)が高いことが好ましい。これを達成する手段として、例えばスルホン酸エステル類、リン酸エステル類、芳香族カルボン酸エステル類等の溶解抑止剤を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献6参照。)が、このような組成物は、画像部の膜強度は向上するものの、非画像部の溶解性をも影響を及ぼしてしまい、露光部と未露光部の溶解度の差に起因する現像ラチチュードが低下するという問題を有していた。
上記現像ラチチュードの課題を解決するためには、非画像部がより容易に現像し得る材料からなる記録層を用いることが考えられるが、このような記録層の画像部は、化学的にも弱く、印刷中にインキ洗浄溶剤やプレートクリーナー等で拭くことによりダメージを受け、その結果、十分な耐薬品性が得られていないという問題を有していた。
【0006】
画像部の化学的強度を向上し、耐薬品性を向上する技術としては、フイルムを介して紫外線露光を行う従来のPS版において、アミド構造やスルホンアミド構造等の高極性構造をバインダーポリマーに導入する方法が提案されている(特許文献7参照。)。また、このような方法を赤外線レーザー対応の画像記録材料に適応した例も報告されているが(特許文献8参照。)、高極性構造を導入したバインダーポリマーの画像形成性が劣ることから、耐薬品性は向上しても現像ラチチュードが劣化するといった問題を有していた。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−285275号公報
【特許文献2】
国際公開97/39894号パンフレット
【特許文献3】
特開平7−271029号公報
【特許文献4】
特開平8−108621号公報
【特許文献5】
特開平9−34110号公報
【特許文献6】
特開平10−268512号公報
【特許文献7】
特開平3−58049号公報
【特許文献8】
国際公開第2001/46318号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、露光部と未露光部の溶解度の差に起因する現像ラチチュードを向上させると共に、画像部の耐薬品性に優れる樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、赤外線レーザにより高感度で画像形成可能であり、高画質の画像を形成しうる平版印刷版原版の記録層に好適に用い得る樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、優れた耐薬品性およびアルカリ溶解性を発現する官能基を有する構造単位と、上記官能基と相互作用して強固な皮膜を形成しうる官能基を有する構造単位と、を有する共重合体が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の樹脂組成物は、下記一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体、及び、赤外線吸収剤を含有し、赤外レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化することを特徴とする。
【0011】
【化2】
【0012】
(一般式(I)中、Aは重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Zは単結合又は2価の有機基を表す。また、R1〜R4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又は水酸基を表し、R5は水素原子、アルキル基、アルカノイル基、炭素環基又は複素環基を表す。)
【0013】
以下、作用は明確ではないが、本発明の樹脂組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合について説明する。
即ち、一般式(I)におけるスルホンアミド基が、その高い極性および酸性度により、インキ洗浄溶剤やプレートクリーナーなどの溶剤に対する高い耐性(耐薬品性)と優れたアルカリ溶解性とを示し、且つ、併用される3級アミド構造とも相互作用を形成し得る。従って、画像部においては、その優れた耐薬品性と共に、該3級アミド構造が、スルホンアミド基及び必要に応じて併用される他のアルカリ可溶性樹脂の極性基との適度な相互作用を形成し、画像部の強度を高めるが、非画像部ではスルホンアミド基の高い酸性度に起因する良好な溶解性が発現されるため、赤外線レーザー露光による画像部/非画像部のコントラストを高めることになり、画像形成性が向上するものと推定される。従って、本発明の樹脂組成物は、現像ラチチュード及び耐薬品性に優れるものとなる。
また、このような耐薬品性および現像性に優れるスルホンアミド基を有する化合物と、画像部の強度を高める化合物(例えば、3級アミド構造を有する化合物)とを単に併用するのではなく、各々の性質を示す基を有する構造単位を共重合させることにより、記録層内において各機能を有する部位が相分離することなく、均一に併存することになる。そのため、一方の機能を極端に低下させることなく、両方の機能が高いレベルで発現されるものと考えられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体、及び、赤外線吸収剤を含有し、赤外レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する樹脂組成物であることを特徴とする。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、平版印刷版原版の記録層に用いることが好ましい。
本発明の樹脂組成物が好適に用いられる平版印刷版原版の記録層は、赤外線露光により、アルカリ水溶液に対する溶解性が変化するものであり、このような記録層としては、アルカリ水溶液に対する可溶性が向上するポジ型と、逆にアルカリ水溶液に対する可溶性が赤外線の露光により低下するネガ型との2つに分けられる。これらの記録層の詳細については後述する。
【0016】
[一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を共重合成分として含む共重合体]
以下、本発明の樹脂組成物を構成する特徴的な成分である、一般式(I)で表わされるモノマー単位と、3級アミド構造を有するモノマー単位と、を必須とし、更に、必要に応じて、他のモノマー単位を共重合成分として含む共重合体(以下、適宜、特定共重合体と称する。)について、構成単位毎に詳細に説明する。
【0017】
(一般式(I)で表わされるモノマー単位)
まず、本発明に用いられる特定共重合体における前記一般式(I)で表わされるモノマー単位について説明する。
【0018】
一般式(I)において、Aは重合性二重結合を有する1価の有機基を表す。好ましくは、下記一般式(A−1)及び(A−2)で表される有機基が挙げられ、中でも、共重合性の点で一般式(A−1)で表される有機基が特に好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
一般式(A−1)及び(A−2)において、R6〜R10は、各々独立に、水素原子、アルキル基、カルボキシ基、及びアルコキシカルボキシ基からなる群より選択される原子又は置換基を表す。R6〜R10がアルキル基である場合は、該アルキル基は更にカルボキシ基又はアルコキシカルボキシ基により置換されてもよい。重合性二重結合としての共重合性や入手性の観点から、R6〜R10は、水素原子、メチル基、カルボキシ基、及びアルコキシカルボニルメチル基より選択された原子又は置換基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0021】
上記一般式(I)において、Zは単結合又は2価の有機基を表し、好ましい2価の有機基としては、下記に示す(Z−1)〜(Z−5)が挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
上記(Z−1)〜(Z−5)において、Xは単結合、アルキレン基、及びアリーレン基からなる群より選択される結合又は2価の有機基を表し、中でも、アルキレン基又は単結合であることが好ましい。また、(Z−2)及び(Z−5)において、Ra〜Rcは、各々独立に、水素原子、アルキル基、及びアリール基からなる群より選択される原子又は置換基を表し、入手性等の点から水素原子であることが好ましい。
【0024】
一般式(I)においてR1〜R4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又は水酸基を表し、水素原子又はアルキル基が好ましい。R5は水素原子、アルキル基、アルカノイル基、炭素環基又は複素環基を表し、水素原子が好ましい。
【0025】
一般式(I)で表されるモノマー単位のうち、本発明において好適に用いられるものの具体例(S−1〜S−17)を以下に示す。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
(3級アミド構造を有するモノマー単位)
3級アミド構造を有するモノマー単位は、3級アミド構造及び重合性二重結合を有するモノマー単位であれば特に限定はないが、下記一般式(P−1)〜(P−5)で表されるモノマー単位であることが好ましい。
【0029】
【化7】
【0030】
一般式(P−1)〜(P−5)中、R1〜R3は各々独立に水素原子、アルキル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基より選択される原子または基を表し、水素原子またはメチル基、エチル基等のアルキル基が好ましい。
Xは、窒素原子または窒素原子及び炭素原子と共に3〜9員の複素環を形成しうる炭化水素原子群を表し、環の員数としては5〜6員環であることが好ましく5員環が特に好ましい。この複素環の中には、O、S、Se、Te等のヘテロ原子を含んでもよい。また、該環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。また、該置換基同士は、結合して、X及び窒素原子と共に縮合複素環を形成してもよい。
【0031】
一般式(P−2)、(P−4)中、Yは、2価の連結基を表し、該連結基としては、−COORy−、−CONHRy−、−CON(CH3)Ry−、−C6H4Ry−、−C6H4SO2NHRy−、−C6H4CONHRy−、−C6H4NHCORy−、−C6H4COORy−、−C6H4CORy−、−C6H4ORy−、−C6H4SRy−、−C6H4SO2Ry−が挙げられる。
ここでRyは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又は単結合を表す。
また、Yを構成する各原子は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トルイル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、トルイルオキシ基等のアリールオキシ基、水酸基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、シアノ基、カルボキシ基、又は、塩素、臭素等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0032】
一般式(P−5)中、R4、R5はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を示す。R4、R5を構成する各原子は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、フェニル基、トルイル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、トルイルオキシ基等のアリールオキシ基、水酸基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、シアノ基、カルボキシル基、又は、塩素、臭素等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0033】
一般式(P−1)〜(P−5)で表される化合物の中でも、作用機構は明確ではないが、本発明の効果の1つである現像液濃度変動への許容幅(現像ラチチュード)を広くすることから、(P−1)〜(P−4)の環構造を有する3級アミド構造を有するモノマー単位が好ましく、一般式(P−1)および(P−2)で示される、カルボニル基を環構造の中に有するものが特に好ましい。また、最も好ましいモノマー単位の具体例としてはN−ビニルピロリドンが挙げられる。
【0034】
(その他のモノマー単位)
本発明における特定共重合体は、一般式(I)で表されるモノマー単位と3級アミド構造を有するモノマー単位とを必須とするものであるが、これらのモノマー単位の他に、第3の共重合成分として以下に示すその他のモノマー単位から導かれる構造単位を有していてもよい。その他のモノマー単位の例としては、下記(m1)〜(m15)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
【0036】
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0037】
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等。
(m13)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595、特願2001−115598等に記載されている化合物。
(m14)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸や、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類と環状酸無水物の縮合物等のカルボキシル基含有モノマー等のカルボキシ基含有化合物。
(m15)4−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン類や4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、2−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド等のフェノール性水酸基を有する化合物を挙げる事ができる。
【0038】
これら共重合成分のうち、皮膜性を向上するためには、アルキルアクリレート(m2)、アルキルメタクリレート(m3)およびアクリロニトリル(m10)等を用いることが好ましい。
【0039】
これら第3の共重合成分として以下に示すその他のモノマー単位は、本発明に係る特定共重合体中に、70モル%以下の範囲で含まれているものが好ましく、60モル%以下の範囲で含まれているものがより好ましい。
【0040】
本発明に係る共重合体を構成するモノマー単位は公知の重合方法により共重合されるが、好ましい方法としてはラジカル重合、アニオン重合が挙げられ、製造の容易さからラジカル重合が好ましい。
【0041】
このようなラジカル重合をする際に必要に応じて用いられる反応溶媒としては、上記モノマー単位を溶解することができる溶媒であれば限定することなく用いることができるが、ラジカル重合反応に対する影響が小さい点や一般式(I)で示されるモノマー単位の溶解性の観点から、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が好ましく、溶解性、安定性、安全性の観点からN,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい溶媒として挙げられる。
【0042】
また、必要に応じて用いられる重合開始剤としては種々の熱重合開始剤や光重合開始剤を用いることができるが、取り扱い性や入手性の観点からアゾ系熱重合開始剤が好ましく、好ましい開始剤としてはV−70、V−60、V−65(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾニトリル化合物、VA−545、VA−041(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミジン化合物、VA−080、VA−082(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミド化合物、V−601、V−501、VF−077(いずれも和光純薬工業(株)製)等のその他のアゾ化合物が挙げられ、V−65やV−601が特に好ましい開始剤として挙げられる。また、重合に際してはメルカプト化合物等に代表される公知の連鎖移動剤を併用することにより共重合体の末端部の組成や分子量を制御しても良い。さらに各々のモノマー単位は共重合体中にブロックまたはランダムのいずれの状態で導入しても良い。
【0043】
本発明における特定共重合体は、耐薬品性を良好にするという観点から、一般式(I)で表されるモノマー単位が特定共重合体中に10モル%以上60モル%以下の範囲で含まれているものが好ましく、15モル%以上55モル%以下の範囲で含まれているものがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物を平版印刷版原版の記録材料として用いた場合、その画像部/非画像部のコントラストを高め、画像形成性を向上させる観点から、3級アミド構造を有するモノマー単位が特定共重合体中に5モル%以上60モル%以下の範囲で含まれているものが好ましく、7モル%以上55モル%以下の範囲で含まれているものがより好ましい。
更に、本発明における特定共重合体において、3級アミド構造を有するモノマー単位と、一般式(I)で表されるモノマー単位と、のモル比は、15:85〜80:20の範囲であることが好ましく、20:80〜70:30の範囲であることがより好ましい。
【0044】
本発明における特定共重合体の重量平均分子量としては、5,000〜500,000が好ましく、10,000〜200,000が更に好ましく、20,000〜100,000が特に好ましい。分子量が少なすぎると十分な塗膜が得られず、大きすぎると現像性が劣る傾向がある。
【0045】
以下に、本発明における特定共重合体の代表例(BP−1〜BP−14)を示す。各共重合体の組成比はモル比を表し、Mwは重量平均分子量を表す。
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
本発明の樹脂組成物中の特定共重合体の含有量は25〜95重量%が好ましく、40〜85重量%であることがより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物中には、特定共重合体以外のアルカリ可溶性樹脂を併用してもよく、その場合に全アルカリ可溶性樹脂中の、本発明における特定共重合体の割合は40重量%以上であることが好ましい。その場合、本発明における特定共重合体以外のアルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂に代表されるフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
[赤外線吸収剤]
本発明における成分である赤外線吸収剤について説明する。
赤外線吸収剤としては、記録に使用する光エネルギー照射線(赤外レーザ)を吸収し、熱を発生する物質であれば特に制限はなく用いることができる。例えば、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0052】
赤外線吸収性染料としては、市販の染料、及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0053】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0054】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0055】
また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0056】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。更に、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に、下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の樹脂組成物をポジ型記録層中に使用した場合にはアルカリ可溶性樹脂との高い相互作用を与え、またネガ型記録層中に使用した場合には高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0057】
【化12】
【0058】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0059】
【化13】
【0060】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0061】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0062】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
【化17】
【0067】
【化18】
【0068】
一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0069】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0073】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0074】
【化21】
【0075】
【化22】
【0076】
一般式(d)中、R29ないしR31は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は、各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは、各々独立に、0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成してもよく、更に、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士或いはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X1及びX2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0077】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0078】
【化23】
【0079】
【化24】
【0080】
一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0081】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0082】
【化25】
【0083】
本発明において赤外線吸収剤として使用される赤外線吸収性顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0084】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0085】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0086】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像感光層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像感光層の均一性の点で好ましくない。
【0087】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0088】
これらの顔料若しくは染料を添加する場合、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10重量%の割合で添加することができる。顔料若しくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度向上効果が低くなり、また50重量%を越えると感光層の均一性が失われ、記録層の耐久性が悪くなる。
【0089】
既述のごとく、本発明の樹脂組成物は、平版印刷版原版の記録層に好適に用いられる。このような記録層としては、アルカリ水溶液に対する溶解性が向上するポジ型と、逆にアルカリ水溶液に対する溶解性が赤外線の露光により低下するネガ型との2つに分けられる。以下、それぞれの記録層について説明する。
【0090】
ポジ型の記録層について説明する。
ポジ型の記録層としては、相互作用解除系(感熱ポジ)、及び酸触媒分解系の記録層が挙げられる。これらは光照射や加熱により発生する酸や熱エネルギーそのものにより、層を形成していた高分子化合物の結合が解除されるなどの働きにより水やアルカリ水に可溶となり、現像により除去されて非画像部を形成するものである。
【0091】
本発明の樹脂組成物が、以下に挙げるポジ型の記録層に適用される場合、未露光部(画像部)では、特定共重合体中のスルホンアミド基が、その高い極性および酸性度により、インキ洗浄溶剤やプレートクリーナーなどの溶剤に対して優れた耐性(耐薬品性)を示し、露光部(非画像部)では優れた現像性を示す。一方、特定共重合体中の3級アミド構造は、未露光部(画像部)において、該スルホンアミド等の極性基と相互作用を形成して画像部の強度を高める。その結果、優れた現像ラチチュードの実現が可能となる。
従って、本発明の樹脂組成物は、ポジ型の記録層に適用することが特に好ましい。
【0092】
<相互作用解除系(感熱ポジ)>
相互解除系の記録層は、アルカリ可溶性樹脂と赤外線吸収剤とを含む層であり、光照射や加熱により発生する熱エネルギーにより、層を形成していた高分子化合物の結合が解除されるなどの働きにより水やアルカリ水に可溶となり、現像により除去されて非画像部を形成するものである。
相互作用解除系におけるアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収剤としては、本発明の樹脂組成物に含有される前記特定共重合体及び光熱変換剤が用いられるが、所望により他の公知の化合物を併用することもできる。
【0093】
<酸触媒分解系>
酸触媒分解系の記録層は、光又は熱の作用により酸を発生する化合物(酸発生剤)、及び、発生した酸を触媒として化学結合を開裂しアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化合物(酸分解性化合物)とを必須成分とする層である。かかる酸触媒分解のメカニズムにより、酸触媒分解系画像形成材料は、化学増幅系画像形成材料とも称される。
【0094】
酸触媒分解系の記録層には、更に、この系を形成するためのバインダー成分である高分子化合物を含有してもよい。該バインダー成分である高分子化合物としては、例えば、前記特定共重合体等のアルカリ可溶性樹脂であってもよく、或いは、後述する酸分解性化合物自体が、バインダー成分の機能を果たす高分子化合物又はその前駆体であってもよい。
また、酸触媒分解系の記録層には、感度向上を目的とする赤外線吸収剤(例えば、前記赤外線吸収剤等)を含有してもよい。
更に、酸触媒分解系記録層が、多層構造内の一層として複数の層中に設けられる場合には、特に、最上層として露光面に形成されることが好ましい。
【0095】
〔酸分解性化合物〕
本発明において、酸を触媒として化学結合を開裂しアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化合物(酸分解性化合物)とは、分子内に酸で分解し得る結合基を有する化合物と言い代えることができる。このような化合物は、特開平9−171254号公報に「(b)酸で分解結合を少なくとも1つ有する化合物」として記載されたものを用いることができる。酸で分解し得る結合としては、例えば、−(CH2CH2O)n−基(nは2〜5の整数を表す)等を好ましく挙げることができる。
このような化合物中、感度及び現像性の観点から、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0096】
【化26】
【0097】
一般式(1)中、R、R1及びR2は、各々水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基を表し、p、q及びrは、各々1〜3の整数を表し、m及びnは、各々1〜5の整数を表す。
【0098】
一般式(1)において、R、R1及びR2が表すアルキル基は直鎖でも分岐でもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられ、スルホ基及びカルボキシル基はその塩をも包含する。一般式(1)で表される化合物のうち、m及びnが1又は2である化合物が特に好ましい。一般式(1)で表される化合物は公知の方法で合成することができる。
【0099】
その他、本発明に適用し得る酸分解性化合物としては、特開昭48−89603号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、同56−17345号に記載のC−O−C結合を有する化合物、特開昭60−37549号、同60−121446号に記載のSi−O−C結合を有する化合物、特開昭60−3625号、同60−10247号に記載されているその他の酸分解化合物を挙げることができ、更に特開昭62−222246号に記載されているSi−N結合を有する化合物、特開昭62−251743号に記載されている炭酸エステル、特開昭62−209451号に記載されているオルト炭酸エステル、特開昭62−280841号に記載されているオルトチタン酸エステル、特開昭62−280842号に記載されているオルトケイ酸エステル、特開昭63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP−0884547Alに記載されているアセタール、ケタール及びオルトカルボン酸エステル、特開昭62−244038号に記載されているC−S結合を有する化合物を用いることができる。
【0100】
上記酸分解性化合物の中でも特に、特開昭53−133429号、同56−17345号、同60−121446号、同60−37549号、同62−209451号、同63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP0884647Alの各公報に記載されているC−O−C結合を有する化合物、Si−O−C結合を有する化合物、オルト炭酸エステル、アセタール類、ケタール類及びシリルエーテル類が好ましい。
この酸分解性化合物の中でも、主鎖中に繰り返しアセタール又はケタール部分を有し、アルカリ現像液中でその溶解度が発生した酸により上昇する高分子化合物が好ましく用いられる。
【0101】
これらの酸分解性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。また、添加量としては、化学増幅層全固形分に対し5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜35重量%の割合で層中に添加される。添加量が5重量%未満の場合は、非画像部の汚れが発生し易くなり、また添加量が70重量%を越える場合は、画像部の膜強度が不充分となり、いずれも好ましくない。
【0102】
次に、ネガ型の記録層について説明する。
ネガ型の記録層としては、ラジカル重合系、酸触媒架橋系(カチオン重合も含む)の記録層が挙げられる。これらは、光照射や加熱により発生するラジカル或いは酸が開始剤や触媒となり、記録層を構成する化合物が重合反応、架橋反応を起こし硬化して画像部を形成するものである。
本発明の樹脂組成物が、以下に挙げるネガ型の記録層に適用される場合、前記特定共重合体中のスルホンアミド基が、露光部(画像部)においてはその高い極性および酸性度により優れた耐薬品性を示し、未露光部(非画像部)では優れた現像性を示す。一方、特定共重合体中の3級アミド構造は、露光部(画像部)において、該スルホンアミド等の極性基と相互作用を形成して画像部の強度を高める。その結果、優れた現像ラチチュードの実現が可能となる。
【0103】
<ラジカル重合系>
ラジカル重合系記録層は、光又は熱によりラジカルを発生する化合物(以下、ラジカル発生剤と称する)と、ラジカル重合しうる化合物(重合性化合物と称する)とを含有し、例えば、赤外線レーザなどの照射により露光部においてラジカル発生剤からラジカルが発生し、それが開始剤となり、重合性化合物がラジカル重合反応によって硬化し、画像部を形成する。ここに用いられるラジカル発生剤と重合性化合物との組合せは、ラジカル重合により形成される膜の強度が記録層としての要求を満たすものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができる。また、ラジカル発生剤の反応性向上のために、オニウム塩、還元剤などの促進剤を併用することもできる。ラジカル重合層に使用し得る成分としては、例えば、特開平8−108621号公報において、熱重合性記録層の構成成分として記載された化合物、特開平9−34110号公報において、記録層の構成成分として記載された化合物なども好ましく使用することができる。
【0104】
(ラジカル発生剤)
ラジカル重合系記録層に用いられるラジカル発生剤としては、一般にラジカル重合による高分子合成反応に用いられる公知のラジカル重合開始剤を特に制限なく、使用することができ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル,2,2’−アゾビスプロピオニトリル等のアゾビスニトリル系化合物、過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,過酸化アセチル,過安息香酸−t−ブチル,α−クミルヒドロパーオキサイド,ジ−t−ブチルパーオキサイド,ジイソプロピルパーオキシジカーボネート,t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート,過酸類,アルキルパーオキシカルバメート類,ニトロソアリールアシルアミン類等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の無機過酸化物、ジアゾアミノベンゼン,p−ニトロベンゼンジアゾニウム,アゾビス置換アルカン類,ジアゾチオエーテル類,アリールアゾスルホン類等のアゾ又はジアゾ系化合物、ニトロソフェニル尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド等のテトラアルキルチウラムジスルフィド類、ジベンゾイルジスルフィド等のジアリールジスルフィド類、ジアルキルキサントゲン酸ジスルフィド類、アリールスルフィン酸類、アリールアルキルスルホン類、1−アルカンスルフィン酸類等を挙げることができる。
【0105】
本発明に係るラジカル重合系記録層が赤外線レーザにより記録される場合、レーザのエネルギーにもよるが、露光面の到達温度が600℃以上にもなるため、活性化エネルギーの大きいラジカル発生剤でも充分な感度を得ることができる。
ラジカル発生剤のラジカル発生のための活性化エネルギーは30kcal/モル以上であることが好ましく、そのようなものとしてアゾビスニトリル系化合物、有機過酸化物が挙げられる。中でも、常温で安定性に優れ、過熱時の分解速度が速く、分解時に無色となる化合物が好ましく、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
上記ラジカル発生剤は単独で用いても2種以上併用してもよく、ラジカル重合層の全固形分に対し0.5〜30重量%程度、好ましくは2〜10重量%で用いる。
【0106】
また、後述するオニウム塩との相互作用によりラジカルを発生する化合物も好適に使用することができる。具体的には、ハロゲン化物(α−ハロアセトフェノン類、トリクロロメチルトリアジン類等)、アゾ化合物、芳香族カルボニル化合物(ベンゾインエステル類、ケタール類、アセトフェノン類、o−アシルオキシイミノケトン類、アシルホスフィンオキサイド類等)、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、過酸化物などが挙げられるが、好ましくは、前記特開平9−34110号公報の第16頁に(A−1)〜(A−4)として開示されたビスイミダゾール誘導体が挙げられる。
後者のラジカル発生剤は、オニウム塩との相互作用により高感度化を達成している。このラジカル発生剤と併用し得るオニウム塩としては、同公報の段落番号〔0022〕〜〔0049〕に記載のホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びアンモニウム塩の各化合物が挙げられる。
【0107】
前記オニウム塩の添加量は、オニウム塩の種類及び使用形態により異なるが、記録層全固形分に対して0.05〜50重量%であることが好ましい。
また、後述する<酸触媒架橋系>内の(酸発生剤)として好適用いることができるヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩は前記ラジカル発生剤と併用しなくても、単独でラジカル発生剤として使用することができ、その添加量は、種類及び使用形態により異なるが、記録層全固形分に対して0.05〜50重量%であることが好ましい。
【0108】
(重合性化合物)
ラジカル発生剤から発生するラジカルにより重合して硬化する重合可能な高分子化合物としては、重合性基を有する公知のモノマーが特に制限なく使用することができる。そのようなモノマーとしては、具体的には、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物;ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートを前記と同様にメタクリレート等に代えた化合物;或いはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートをメタクリレート等に代えた化合物等を挙げることができる。また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸又はメタアクリル酸を導入し、光重合性を付与した所謂プレポリマーと呼ばれるものも好適に使用できる。
【0109】
この他に、特開昭58−212994号、同61−6649号、同62−46688号、同62−48589号、同62−173295号、同62−187092号、同63−67189号、特開平1−244891号等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社,286〜294頁に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会,11〜65頁に記載の化合物なども好適に用いることができる。
【0110】
中でも、分子内に2個以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが望ましい。本発明においては、重合性化合物は、前記例示したものも含めて重合性基を有するモノマー、プレポリマーのなかから、目的に応じて1種或いは相溶性、親和性に問題がなければ、2種以上を組合せて用いることができる。
エチレン性不飽和基を有する化合物は、記録層中に固形分として、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜60重量%含有される。
【0111】
(バインダー樹脂)
ラジカル重合系記録層には、膜性向上の観点からバインダー樹脂を用いることが好ましい。バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン、ポリカプロラクトン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。又、樹脂内に不飽和結合を有する樹脂、例えばジアリルフタレート樹脂及びその誘導体、塩素化ポリプロピレンなどは、前述のエチレン性不飽和結合を有する化合物と重合させることが可能なため用途に応じて好適に用いることができる。バインダー樹脂としては前述の樹脂の中から、1種又は2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
これらのバインダー樹脂は、重合性化合物100重量部に対して500重量部以下、より好ましくは200重量部以下の範囲で使用するのが好ましい。
このようなラジカル重合系記録層においては、前記赤外線吸収剤が含まれることで感度向上や、ラジカル重合反応の促進を図ることができる。
【0112】
(その他の化合物)
ラジカル重合系記録層には、従来公知の光重合性化合物と併用される各種添加剤が、適宜、使用できる。
添加剤として熱重合抑制剤が挙げられる。具体的には、ハイドロキノン、ピロガロール、p−メトキシフェノール、カテコール、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のキノン系、フェノール系化合物が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とバインダー樹脂との合計100重量部に対して、10重量部以下で、好ましくは0.01〜5重量部程度で用いる。
【0113】
酸素クエンチャーとして添加しうる化合物では、米国特許第4,772,541号の第11カラム58行目〜第12カラム35行目に記載の化合物等のN,N−ジアルキルアニリン誘導体が挙げられる。
また、膜質向上のため、可塑剤を用いることができ、例えば、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、アジピン酸エステル類、その他飽和或いは不飽和カルボン酸エステル類、クエン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、ステアリン酸エポキシ類、正リン酸エステル類、亜燐酸エステル類、グリコールエステル類等が挙げられる。
【0114】
加熱により酸を発生しラジカル発生剤の分解を促進する添加剤として、酸発生剤を併用することも好ましい。この酸発生剤については、下記酸触媒架橋系記録層の説明において詳述するものを用いることができる。
ラジカル重合系記録層を記録層とする平版印刷版原版は、前記各成分を適宜選択して、適当な溶剤に溶解し、支持体上に塗布することで、ラジカル重合系記録層を形成することができるが、その乾燥後の塗布量としては0.01〜5.0g/m2程度が好ましい。
【0115】
なお、記録層としてラジカル重合系記録層を用いる場合、酸素による重合阻害を防止するために、該記録層に隣接して酸素不透過性のオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層の素材としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂が好ましく、膜厚は0.2〜3μm程度が適当である。
オーバーコート層には、必要に応じて記録に用いる光源からの光を吸収しない染料又は顔料をフィルター剤として添加してもよい。
【0116】
<酸触媒架橋系>
酸触媒架橋系記録層には、光又は熱により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」と称する)と、発生した酸を触媒として架橋しうる化合物(以下、架橋剤と称する)とを含有し、更に、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうるバインダーポリマーを含む。この酸触媒架橋系記録層においては、光照射又は加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士或いは架橋剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。
【0117】
このような特性を有する酸触媒架橋系記録層としては、公知の同様の特性を有する層の構成成分を用いることができる。例えば、特開平7−20629号公報に記載されるレゾール樹脂、ノボラック樹脂、潜伏性ブレンステッド酸、及び赤外吸収剤を含んでなる放射線感受性組成物からなる層の構成成分として記載された化合物が挙げられる。ここで、「潜伏性ブレンステッド酸」とは、分解してブレンステッド酸を生成する先駆体を指し、本発明における酸発生剤と酸架橋剤との双方の特性を有する化合物である。ブレンステッド酸は、レゾール樹脂とノボラック樹脂との間のマトリックス生成反応を触媒すると考えられており、この目的に適切なブレンステッド酸の例としては、トリフルオロメタンスルホン酸及びヘキサフルオロホスホン酸である。
【0118】
更に、イオン性潜伏性ブレンステッド酸が好ましく、これらの例は、オニウム塩、特にヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、セレノニウム、ジアゾニウム、及びアルソニウム塩を包含する。非イオン性潜伏性ブレンステッド酸もまた好適に用いることができ、例えば、下記の化合物:RCH2X、RCHX2、RCX3、R(CH2X)2、及びR(CH2X)3、(式中、Xは、Cl、Br、F、若しくはCF3、SO3であり、Rは、芳香族基、脂肪族基若しくは芳香族基及び脂肪族基の結合体である)を挙げることができる。
【0119】
また、特開平11−95415号公報に記載の酸架橋性化合物と高分子量結合剤とを含有する記録層も好適なものとして挙げられる。これは、活性光線の照射により酸を発生し得る化合物、例えば、ジアゾニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びヨードニウムのなどの塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、及び有機金属/有機ハロゲン化合物と、前記酸の存在下で架橋しうる結合を少なくとも1つ有する化合物、例えば、官能基としてアルコキシメチル基、メチロール基、アセトキシメチル基等を少なくとも2個有するアミノ化合物、官能基としてアルコキシメチル基、メチロール基、アセトキシメチル基等を有する少なくとも2置換の芳香族化合物、レゾール樹脂及びフラン樹脂、特定の単量体から合成されるアクリル樹脂など、とを含有する感光層であり、これを使用することができる。
【0120】
本発明に係る酸触媒架橋系記録層には、酸発生剤、架橋剤及びバインダーポリマー、その他が含まれるが、次に、これらの化合物について個々に説明する。
【0121】
(酸発生剤)
光又は熱により酸を発生する化合物(酸発生剤)とは、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。
【0122】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、米国特許第4,708,925号明細書や特開平7−20629号公報に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号公報及び特開平1−102457号公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号明細書や米国特許第5,200,544号明細書に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。更に、特開平2−100054号公報、特開平2−100055号公報及び特開平9−197671号公報に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号公報に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
【0123】
これらの酸発生剤は、酸触媒架橋系記録層の全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%の割合で酸架橋層中に添加される。添加量が0.01重量%未満の場合は、画像が得られない。また添加量が50重量%を越える場合は、印刷時非画像部に汚れを発生する。
【0124】
これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、ここに挙げた酸発生剤は、紫外線照射によっても分解できるため、このような形態の記録層を用いれば、赤外線だけではなく紫外線の照射によっても画像記録可能である。
【0125】
(酸架橋剤)
酸触媒架橋系記録層に用い得る架橋剤としては、酸により架橋する化合物であれば、特に制限はないが、下記一般式(I)で表されるフェノール誘導体(以下、適宜、低分子フェノール誘導体と称する)、下記一般式(II)で表される、環上に2又は3個のヒドロキシメチル基を有するフェノール環を分子内に3個以上有する多核型フェノール性架橋剤、及び、前記低分子フェノール誘導体と多核型フェノール性架橋剤及び/又はレゾール樹脂との混合物、などが好ましく使用される。
【0126】
【化27】
【0127】
式中、Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示す。R1及びR2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。R3は、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。mは、2〜4の整数を示す。nは、1〜3の整数を示す。Xは2価の連結基を示し、Yは前記の部分構造を有する1価乃至4価の連結基或いは末端が水素原子である官能基を示し、ZはYが末端基である場合には存在せず、或いは、Yの連結基の数に応じて存在する1価乃至4価の連結基又は官能基を示す。
【0128】
【化28】
【0129】
式中、Aは、炭素数1〜20のr価の炭化水素連結基を示し、rは3〜20の整数を示す。pは、2〜3の整数を示す。
一般式(I)で表されるフェノール誘導体については、本願出願人が先に提出した特開2001−166462公報の段落番号〔0098〕〜〔0155〕に詳述されており、一般式(II)で表される、環上に2又は3個のヒドロキシメチル基を有するフェノール環を分子内に3個以上有する多核型フェノール性架橋剤についても、同明細書段落番号〔0156〕〜〔0165〕に詳述されている。
【0130】
これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
上記架橋剤は、酸触媒架橋系記録層の固形分中、5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%の添加量で用いられる。架橋剤の添加量が5重量%未満であると画像記録した際の画像部の膜強度が悪化し、また、70重量%を越えると保存時の安定性の点で好ましくない。
【0131】
酸触媒架橋系記録層に用い得るバインダーポリマーとしては、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーが挙げられる。アルコキシ基としては、感度の観点から、炭素数20個以下のものが好ましい。また、芳香族炭化水素環としては、原料の入手性から、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。これらの芳香族炭化水素環は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基以外の置換基、例えば、ハロゲン基、シアノ基等の置換基を有していてもよいが、感度の観点から、ヒドロキシ基又はアルコキシ基以外の置換基を有さない方が好ましい。
【0132】
酸触媒架橋系記録層において、好適に用いることができるバインダーポリマーは、下記一般式(III)で表される構成単位を有するポリマー、又はノボラック樹脂等のフェノール樹脂である。
【0133】
【化29】
【0134】
一般式(III)中、Ar2は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環を示す。R4は、水素原子又はメチル基を示す。R5は、水素原子又は炭素数20個以下のアルコキシ基を示す。X1は、単結合又は、C、H、N、O、Sより選ばれた1種以上の原子を含み、かつ炭素数0〜20個の2価の連結基を示す。kは、1〜4の整数を示す。
【0135】
酸触媒架橋系記録層においては、バインダーポリマーとして、一般式(III)で表される構成単位のみから成る単独重合体を用いてもよいが、この特定構成単位とともに、他の公知のモノマーより誘導される構成単位を有する共重合体を用いてもよい。
これらを用いた共重合体中に含まれる一般式(III)で表される構成単位の割合は、50〜100重量%であることが好ましく、更に好ましくは60〜100重量%である。
【0136】
また、使用し得る上記バインダーポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0137】
次にノボラック樹脂等のフェノール樹脂について述べる。
酸触媒架橋系記録層において好適に用いられるノボラック樹脂は、フェノールノボラック、o−、m−、p−の各種クレゾールノボラック、及びその共重合体、ハロゲン原子、アルキル基等で置換されたフェノールを利用したノボラックが挙げられる。
これらのノボラック樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜2万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1000以上であり、更に好ましくは2,000〜15,000の範囲である。多分散度は1以上が好ましくは、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0138】
また、バインダーポリマーとして、環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いることも好ましい態様である。
ここで、複素環とは、環系を構成する原子の中に、炭素以外のヘテロ原子を1個以上含むものをいう。用いられるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子が好ましい。このような複素環基を有するポリマーを用いることにより、本複素環に存在するローンペアの機能により、化学構造的に反応し易くなり、耐刷性の良好な膜が形成されると考えられる。
【0139】
以上説明した本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらポリマーは、酸触媒架橋系記録層の全固形分に対し20〜95重量%、好ましくは40〜90重量%の割合で添加される。添加量が20重量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95重量%を越える場合は、画像形成されない。
【0140】
この酸触媒架橋系記録層においても、前記赤外線吸収剤を含有することで感度向上を図ることができる。
この酸触媒架橋系記録層の形成に際して、塗布性、膜質の向上などの目的で界面活性剤などの種々の添加物を併用することができる。
【0141】
以上、ポジ型及びネガ型の記録層について説明してきたが、特に断らない限り、各記録層には、任意で、前記アルカリ可溶性樹脂をバインダーポリマーとして、前記赤外線吸収剤を、感度向上を目的として使用することができる。
【0142】
〔その他の成分〕
上述された本発明の樹脂組成物が好適に用いられるポジ型及びネガ型の記録層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等を添加すると、アルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させることができるので好ましい。
【0143】
前記オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げることができる。オニウム塩は、記録層を構成する全固形分に対して、1〜50重量%添加するのが好ましく、5〜30重量%添加するのがより好ましく、10〜30重量%添加するのが特に好ましい。
【0144】
また、更に、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0145】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物及び本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
【0146】
また、記録層には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0147】
記録層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0148】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%の割合で記録層中に添加することができる。
【0149】
更に、記録層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0150】
[平版印刷版原版]
本発明の樹脂組成物は、平版印刷版原版の記録層として好適に使用することができる。かかる平版印刷版原版は、本発明の樹脂組成物を含む記録層塗布液や、保護層等の所望の層の塗布液用成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより平版印刷版原版を製造することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0151】
本発明の樹脂組成物を用いた記録層塗布液中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層の全固形分の0.01〜1重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0152】
平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物が用いられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙、若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0153】
平版印刷版原版に用いられる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0154】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0155】
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0156】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0157】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号の各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号の各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0158】
本発明の樹脂組成物を含む記録層を設けた平版印刷版原版は、必要に応じて、支持体と当該記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0159】
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、波長720〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0160】
上記のようにして作製された平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
【0161】
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号公報に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0162】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。
更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の樹脂組成物が適用された平版印刷版原版を、印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0163】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0164】
本発明の樹脂組成物が適用された平版印刷版原版について説明する。
画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行われる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行う方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0165】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニング処理する場合には、該バーニング処理前に、特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0166】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0167】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行われている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合には、ガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0168】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0169】
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を組み合わせて処理することで支持体A、B、C、及びDを作製した。
【0170】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0171】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0172】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0173】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0174】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0175】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15重量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0176】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0177】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0178】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0179】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0180】
<支持体A>
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体を作製した。
【0181】
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0182】
<支持体C>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0183】
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体を作製した。
【0184】
上記によって得られた支持体A、B、C、Dは続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
【0185】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1重量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
【0186】
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0187】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0188】
【化30】
【0189】
〔実施例1〜6、比較例1〕
(記録層の形成)
得られた支持体A〜Dに以下の感光液を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥膜厚が0.9g/m2のポジ型感赤外線感光性記録層を有するポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0190】
<感光液>
・フッ素含有ポリマーA(下記構造式) 0.02g
・フッ素含有ポリマーB(下記構造式) 0.04g
・フッ素含有ポリマーC(下記構造式) 0.002g
・表1に記載の共重合体 2.00g
・クレゾールノボラック 0.50g
(PR−54046、住友ベークライト(株)製)
・p−トルエンスルホン酸 0.01g
・テトラヒドロキシ無水フタル酸 0.20g
・4,4’−スルホニルジフェノール 0.15g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン 0.03g
・シアニン染料A(下記構造式) 0.12g
・シアニン染料B(下記構造式) 0.05g
・ジミリスチルチオジプロピオネート 0.02g
・ジラウリルチオジプロピオネート 0.04g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.10g
・N,N−ジメチルアセトアミド 10g
・メチルエチルケトン 20g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10g
【0191】
【化31】
【0192】
【化32】
【0193】
【化33】
【0194】
〔平版印刷版原版の評価〕
(現像ラチチュードの評価)
得られた平版印刷版原版を温度25℃相対湿度50%の条件下で10日間保存した後に、Creo社製Trendsetter3244にてビーム強度9.0W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、下記A組成及びB組成のアルカリ現像液の水の量を変更することにより、希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間22秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。その結果を表1に示す。
【0195】
<アルカリ現像液A組成>
・SiO2・K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0重量%
・クエン酸 0.5重量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5重量%
(重量平均分子量1,000)
・水 95.0重量%
<アルカリ現像液B組成>
・Dソルビット 2.5重量%
・水酸化ナトリウム 0.85重量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5重量%
(重量平均分子量1,000)
・水 96.15重量%
【0196】
(感度の評価)
得られた平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter3244にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。結果を表1に示す。
【0197】
(耐薬品性の評価)
上記アルカリ現像液B組成を用いた現像ラチチュードの評価において、現像処理を行った平版印刷版のうち、良好に現像が行えた現像液電導度幅の中央にあたる電導度の現像液により現像した平版印刷版を、ハイデルKOR−D機で、大日本インキ化学工業(株)製のDIG−GEOS(N)墨のインキを用い、5,000枚印刷毎に、富士写真フイルム(株)製プレートクリーナーCL−1で版面を拭きながら印刷を行い、良好な印刷物が得られた印刷枚数を計測した。結果を表1に示す。印刷枚数が多いほど画像部の耐薬品性(耐刷性)が良好であると評価する。
【0198】
【表1】
【0199】
以下に、表1に記載の共重合体BP−Cの構造を示す。
【0200】
【化34】
【0201】
表1に示されるように、本発明の樹脂組成物を記録層に用いた平版印刷版原版(実施例1〜6)は、シリケート系、非シリケート系いずれの現像液を用いた場合においても、スルホンアミド基のみを有する樹脂組成物を用いた平版印刷版原版(比較例1)と比べ、現像ラチチュード、感度および耐薬品性に優れていることがわかった。
【0202】
〔実施例7〜10、比較例2〕
得られた支持体A〜Dに、実施例1〜6と同様に下塗り液を塗布した後、記録層として、下記組成の第1層(下層)用塗布液を、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥して塗布量を0.8g/m2とした。得られた下層付き支持体に、下記組成の第2層(上層)用塗布液をワイヤーバーで塗布した。塗布後、乾燥オーブンで、145℃で70秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.1g/m2としてポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0203】
<第1層(下層)用塗布液>
・表2に記載の共重合体 表2に記載の量
・シアニン染料C(下記構造) 0.098g
・2−メルカプト−5−メチルチオ−
1,3,4−チアジアゾール 0.030g
・シス−Δ4−テトラヒドロフタル酸無水物 0.100g
・4,4’−スルホニルジフェノール 0.090g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・ビクトリアピュアブルーBOH 0.100g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン 0.030g
ヘキサフルオロホスフェート(熱分解性化合物)
・フッ素系界面活性剤 0.035g
(メガファックF−780、大日本インキ工業(株)社製)
・メチルエチルケトン 26.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.6g
・γ−ブチロラクトン 13.8g
【0204】
<第2層(上層)用塗布液>
・メタクリル酸エチルと
2−メタクリロイロキシエチルコハク酸の共重合体 0.030g
(モル比67:33、重量平均分子量92,000)
・クレゾールノボラック樹脂 0.320g
(PR−54046、住友ベークライト(株)製)
・シアニン染料A(請求項1〜6記載) 表2に記載の量
・1−(4−メチルベンジル)−1−
フェニルピペリジニウムの5−ベンゾイル−4−
ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホン酸塩 0.005g
・ビクトリアピュアブルーBOH 0.007g
・フッ素系界面活性剤 0.022g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・1−メトキシ−2−プロパノール 19.9g
【0205】
【化35】
【0206】
〔平版印刷版原版の評価〕
(現像ラチチュード、感度、及び耐薬品性の評価)
得られた平版印刷版原版に対し、実施例1〜6と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度、及び耐薬品性を評価した。結果を表2に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
表2に示されるように、本発明の樹脂組成物を記録層に用いた平版印刷版原版(実施例7〜10)は、その記録層を2層構造にした場合においても、スルホンアミド基のみを有する樹脂組成物を用いた平版印刷版原版(比較例2)と比べ、現像ラチチュード、感度および耐薬品性に優れていることがわかった。
【0209】
〔実施例11〜13、比較例3〕
実施例8〜10および比較例2で用いた平版印刷版原版に対し、現像液を富士写真フイルム(株)製現像液DT−1希釈液に替え、現像時間を14秒に変更した以外は実施例8〜10と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード及び感度を評価した。結果を表3に示す。
【0210】
【表3】
【0211】
表3に示されるように、本発明の樹脂組成物を記録層に用いたいずれの平版印刷版原版(実施例11〜13)も、スルホンアミド基のみを有する樹脂組成物を用いた平版印刷版原版(比較例1)と比べ、現像ラチチュードおよび感度に優れていることがわかった。
【0212】
【発明の効果】
本発明によれば、露光部と未露光部の溶解度の差に起因する現像ラチチュードを向上させると共に、画像部の耐薬品性に優れる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明の他の目的は、赤外線レーザにより高感度で画像形成可能であり、高画質の画像を形成しうる平版印刷版原版の記録層に好適に用い得る樹脂組成物を提供することができる。
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