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JP4359446B2 - 平版印刷版原版 - Google Patents

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JP4359446B2
JP4359446B2 JP2003131947A JP2003131947A JP4359446B2 JP 4359446 B2 JP4359446 B2 JP 4359446B2 JP 2003131947 A JP2003131947 A JP 2003131947A JP 2003131947 A JP2003131947 A JP 2003131947A JP 4359446 B2 JP4359446 B2 JP 4359446B2
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  • Materials For Photolithography (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版に関し、より詳細には、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、耐刷性に優れ、かつ、非画像部の汚れのない、ポジ型の平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザの発達に伴い、コンピュータのディジタルデータから直接製版するシステムとして、これらの赤外線レーザを用いるものが注目されている。
【0003】
ダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料としては、例えば、アルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物とを添加したものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなポジ型平版印刷版原版の画像部では、ポジ型感光性化合物が、アルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部では、熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなり、現像により除去され得るようになって、画像を形成する。
【0004】
また、オニウム塩やアルカリ溶解性の低い水素結合網を形成可能な化合物は、アルカリ可溶性高分子のアルカリ溶解抑制作用を有することが知られている。赤外線レーザ対応画像記録材料としては、カチオン性赤外線吸収色素をアルカリ水可溶高分子の溶解抑制剤として用いた組成物がポジ作用を示すことが知られている(例えば、特許文献2参照。)。このポジ作用は赤外線吸収色素がレーザ光を吸収し、発生する熱で照射部分の高分子膜の溶解抑制効果を消失させて画像形成を行う作用である。
【0005】
このような平版印刷版原版に用いる支持体としては、従来、非画像部の汚れ防止のため、支持体表面を親水化する研究が盛んに行われている。例えば、アルミ板のような金属支持体を基材として用いる場合、陽極酸化されたアルミニウム基板、若しくは更に親水性を上げるためにこの陽極酸化されたアルミニウム基板をシリケート処理する等の、種々の技術が提案されている。
しかしながら、親水性を向上させるための種々の処理は、必ずしも感光層との親和性に優れているとはいえず、場合によっては支持体とその上に形成される感光層との密着性が低下し、厳しい印刷条件においては感光層が剥離してしまい、十分な耐刷性が得られないという問題もあった。
【0006】
そこで、親水化された支持体表面と感光層との密着性を高めるために、基材と感光層との間に種々の中間層を設ける方法が提案されている。感光層を構成する樹脂材料や支持体表面との親和性に優れた官能基を有する材料を中間層として用いることで、画像部においては密着性が向上し、十分な耐刷性が得られる。しかし、非画像部においては、現像時に感光層が速やかに除去されず、支持体表面の残膜となり、そこにインクが付着することで非画像部の汚れの原因となるなどの問題があった。
このため、表面親水性に優れ、かつ、画像部における感光層との密着性と、非画像部における感光層除去性をともに満たすような支持体が望まれていた。
【0007】
上記の諸問題を解決するために、本発明者らは、p−ビニル安息香酸などの特定の構造単位を含有する高分子化合物を含む中間層を設けた平版印刷版原版について提案している(例えば、特許文献3参照。)。また、酸基を有するモノマーとオニウム基を有するモノマーとを有する重合体(ランダムポリマー)含有する中間層を設けた平版印刷版原版を提案している(例えば、特許文献4参照。)。これらの中間層を有する平版印刷版原版は、一定の改良効果を奏するものではあるが、なお支持体及び感光層の双方の密着性の向上を図り、耐刷性を一層向上させるとともに、非画像部においても汚れの発生を効果的に抑制させる更なる改良が望まれているのが現状である。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−285275号公報
【特許文献2】
国際公開第97/39894号パンフレット
【特許文献3】
特開平10−69092号公報
【特許文献4】
特開2000−108538号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、耐刷性に優れ、かつ、非画像部の汚れのないポジ型平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、支持体と感光層との間に、ラクトン基とオニウム塩基とを有する重合体を含有する中間層を設けることにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、ラクトン基とオニウム塩基とを有する重合体を含有する中間層と、赤外線レーザー感光性ポジ型感光層と、を順次設けてなる。
また、上記重合体が、ラクトン基及びオニウム塩基を有すると共に、更に、酸基を有するものであることがより好ましい態様として挙げられる。
【0011】
本発明の平版印刷版原版は、支持体と、感光層との間に、ラクトン基とオニウム塩基とを有する重合体を含有する中間層を設けることを特徴とする。ラクトン基は、通常疎水性を示すが、現像液などのアルカリ水溶液と接触することにより、下記反応式のごとく環構造が開環してカルボン酸と水酸基とを生成し、親水性(アルカリ可溶性)となる。
【0012】
【化1】
Figure 0004359446
【0013】
即ち、ラクトン基を有する重合体を平版印刷版原版の中間層の成分として用いることで、画像部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性(疎水性)である感光層自体が中間層の保護膜として機能するため、中間層が現像液に曝されず、中間層の疎水性が保たれる。したがって、本発明における中間層は疎水性である感光層との密着性に優れる他、印刷時の湿し水などの浸透も抑制するため、高い耐刷性を維持することができるものと考えられる。
一方、非画像部においては、現像液によって感光層が除去されると、中間層が現像液に曝され、ラクトン基が開環し、該中間層は高いアルカリ可溶性を示すようになる。これにより、例えば、活性が低下した現像液などを用いた場合でも、感光層及び中間層共に速やかに溶解し、残膜などが発生することなく現像性に優れるものと考えられる。
また、中間層を形成する重合体中のオニウム塩基は、その構造から、感光層塗布液溶剤に対する溶解性を低下させる機能を有している。このため、本発明における中間層が形成された後の感光層の塗布時に、該中間層が感光層塗布液溶剤へ溶解、脱離してしまうことがなく、中間層の存在により感光層と支持体とを密着させることができるため、結果的に、耐刷性をより向上させることができると思われる。また、中間層が溶解されたり脱離することがないため、感光層が支持体に直接接触することで発生する現像不良を抑制でき、非画像部の現像脱離性が向上するものと推測される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、ラクトン基とオニウム塩基とを有する重合体を含有する中間層と、感光層と、を順次設けてなることを特徴とする。以下、本発明の平版印刷版原版の構成について詳細に説明する。
【0015】
[中間層]
まず、本発明の平版印刷版原版の特徴である、ラクトン基とオニウム塩基とを有する重合体(以下、適宜、「特定重合体」と称する)を含有する中間層について説明する。
本発明における特定重合体は、分子内にラクトン基とオニウム塩基とを有している重合体であればよく、好ましくは、ラクトン基を有するモノマーと、オニウム塩基を有するモノマーと、共に含む共重合体であることが好ましい。
【0016】
(ラクトン基及び該ラクトン基を有するモノマー)
本発明に係るラクトン基とは、ラクトン環構造を有するものであれば特に制限はないが、中でも、5員環ラクトン構造を有するものが特に好ましい。また、このようなラクトン基を重合体中に導入する方法としては、例えば、ラクトン基を有するモノマーを、公知の重合方法により、重合又は共重合する方法が挙げられる。
【0017】
ラクトン基を有するモノマーとしては、分子内にラクトン基と、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、を有するモノマーが挙げられる。また、一つのモノマー内に、ラクトン基を2つ以上有するものであってもよい。
また、ラクトン基と、エチレン性不飽和基とは、単結合又は連結基を介して結合されており、そのような連結基の分子量としては1000以下のものが好ましい。
【0018】
本発明において好適に用いられるラクトン基を有するモノマーは、下記一般式(A)で表されるものである。
【0019】
【化2】
Figure 0004359446
【0020】
一般式(A)中、Rは水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子を表し、より好ましくは、水素原子又はメチル基である。また、Xは下記一般式(B)又は一般式(C)で表される。更に、Yは2価の連結基を表す。
【0021】
【化3】
Figure 0004359446
【0022】
一般式(B)及び(C)中、R1〜R8は、各々独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表す。炭素数1〜30の炭化水素基としては、特に限定されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1以上含むヘテロアリール基などが挙げられ、中でも、より好ましくは、アルキル基である。
一般式(B)及び(C)において、R1〜R8が全て水素原子である構造や、R1及びR2がメチル基であり、R3及びR4が水素原子である構造であることが特に好ましい。
【0023】
また、一般式(A)におけるYで表される2価の連結基としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1以上含む基を有してもよい、2価の炭化水素基が挙げられる。また、かかる2価の炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。
かかる2価の炭化水素基としては、エステル結合、アミド結合、ウレア結合、フェニレン結合、エーテル結合、チオエーテル結合などを少なくとも1つ有する炭素数1〜30の2価の炭化水素基であることが好ましく、特に好ましくは、以下に示す構造を含むものである。
【0024】
【化4】
Figure 0004359446
【0025】
本発明に係るラクトン基を有するモノマーの具体例としては、パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、又は、下記化合物などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
以下に示すラクトン基を有するモノマーの具体例の各化合物において、lは1〜30の整数であり、好ましくは2〜15の整数である。また、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100の整数であり、好ましくは1〜30の整数である。また、モノマー中に、m及びnが存在する場合、m+nが100以下であることが好ましい。
【0026】
【化5】
Figure 0004359446
【0027】
【化6】
Figure 0004359446
【0028】
【化7】
Figure 0004359446
【0029】
【化8】
Figure 0004359446
【0030】
本発明に係るラクトン基を有するモノマーとしては、特に、原料の入手性、合成の容易性などの点、また、アルカリによる分解性の点で、α位に重合性基が連結したγ−ブチロラクトンが特に好ましい。
【0031】
(オニウム塩基及び該オニウム塩基を有するモノマー)
本発明に係るオニウム塩基とは、従来公知のオニウム塩構造を有するものであれば特に制限されず、使用することができる。このようなオニウム塩基を重合体中に導入する方法としては、例えば、オニウム塩基を有するモノマーを、公知の重合方法により、重合又は共重合する方法が挙げられる。
【0032】
オニウム塩基を有するモノマーとしては、分子内にオニウム塩基と、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、を有するモノマーが挙げられる。また、一つのモノマー内に、オニウム塩基を2つ以上有するものであってもよい。
また、オニウム塩基と、エチレン性不飽和基とは、単結合又は連結基を介して結合されており、そのような連結基の分子量としては1000以下のものが好ましい。
【0033】
本発明において好適に用いられるオニウム塩基を有するモノマーは、下記一般式(I)〜(III)で表されるものである。
【0034】
【化9】
Figure 0004359446
【0035】
一般式(I)〜(III)中、Jは2価の連結基を表す。Kは芳香族基又は置換芳香族基からなる連結基を表す。Mは2価の連結基を表す。Y1は周期率表第V族の原子を表し、Y2は周期率表第VI族の原子を表す。Z-は対アニオンを表す。R2は水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。R3、R4、R5、R7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、芳香族基、又はアラルキル基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R6はアルキリジン基又は置換アルキリジンを表す。R3とR4、R6とR7は、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。j、k、及びmは、それぞれ独立して、0又は1を表す。uは1〜3の整数を表す。
【0036】
一般式(I)〜(III)で表されるオニウム塩基を有するモノマーにおいて、より好ましくは、以下に示す場合である。
一般式(I)〜(III)中、Jが−COO−又はCONH−を表す。Kがフェニレン基或いは置換フェニレン基を表し、その置換基としては、水酸基、ハロゲン原子或いはアルキル基である。Mがアルキレン基、又は、分子式がCn2nO、Cn2nS、或いはCn2n+1Nで表される2価の連結基を表す。但し、ここで、nは1〜12の整数を表す。Y1は窒素原子又はリン原子を表し、Y2はイオウ原子を表す。Z-はハロゲンイオン、PF6 -、BF4 -、又はR8SO3 -を表す。ここで、R8は置換基が結合してもよい、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、アラルキル基を表す。R2は水素原子又はアルキル基を表す。R3、R4、R5、R7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、アラルキル基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R6は炭素数1〜10のアルキリジン基又は置換アルキリジンを表す。R3とR4、R6とR7は、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。j、k、mは、それぞれ独立して、0又は1を表すが、jとkは同時に0ではない。
【0037】
一般式(I)〜(III)で表されるオニウム塩基を有するモノマーにおいて、特に好ましくは、以下に示す場合であり、中でも、一般式(I)で表される構造が最も好ましい。
一般式(I)〜(III)中、Kがフェニレン基或いは置換フェニレン基を表し、その置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基である。Mが炭素数1〜2のアルキレン基、又は酸素原子で連結した炭素数1〜2のアルキレン基を表す。Z-は、塩素イオン或いはR8SO3 -を表す。ここで、R8は炭素数1〜3のアルキル基を表す。R2は水素原子又はメチル基を表す。jは0であり、kは1である。
【0038】
以下に、上記オニウム塩基を有するモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化10】
Figure 0004359446
【0040】
【化11】
Figure 0004359446
【0041】
本発明に係る特定重合体は、上記ラクトン基を有するモノマー1種類以上と、上記オニウム塩基を有するモノマー1種類以上と、更に、必要に応じて、後述する酸基を有するモノマー1種類以上や、後述するその他のモノマー成分1種類以上と、を組み合わせ、共重合させることで得ることができる。重合方法としては、一般的に公知の懸濁重合法、或いは溶液重合法などを用いて容易に重合或いは共重合することができる。また、共重合体の構成としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0042】
特定重合体中におけるラクトン基を有する構造単位(モノマー)の含有量としては、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることが更に好ましく、20モル%以上であることが最も好ましい。
また、特定重合体中におけるオニウム塩基を有する構造単位(モノマー)の含有量としては、1〜90モル%の範囲であることが好ましく、3〜70モル%の範囲であることが更に好ましく、5〜50モル%の範囲であることが最も好ましい。
【0043】
また、特定重合体の重量平均分子量としては、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることがより好ましい。
【0044】
(酸基を有する特定重合体)
本発明に係る特定重合体としては、親水化処理した支持体との相互作用力強化と、現像性向上の目的から、上記ラクトン基及びオニウム塩基以外に、酸基を有することが、更に好ましい態様として挙げられる。
本発明に好適に用いられる酸基としては、−COOH、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2、−SO2NHSO2等が挙げられ、−COOHが特に好ましい。
【0045】
このような酸基を特定重合体に導入する方法としては、例えば、酸基を有するモノマーと、上述のラクトン基を有するモノマーと、上述のオニウム塩基を有するモノマーと、を共重合する方法が挙げられる。
酸基を有するモノマーとしては、分子内に上記した酸基と、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、を有するモノマーが挙げられる。
【0046】
ここで、特定重合体に導入される酸基として特に好ましい、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基を有するモノマーを例に挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
−カルボン酸基を有するモノマー−
カルボン酸基を有するモノマーとしては、カルボン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなカルボン酸基を有するモノマーの好ましい例としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0048】
【化12】
Figure 0004359446
【0049】
一般式(1)中、R1〜R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は下記一般式(2)で示される有機基を表し、R1〜R4の少なくとも1つは下記一般式(2)で表される有機基である。
ここで、特定重合体を製造する際の共重合性や原料入手性の観点からは、R1〜R4中に、下記一般式(2)で表される有機基を1〜2個有することが好ましく、1個有することが特に好ましい。重合の結果として得られる特定重合体の柔軟性の観点からは、R1〜R4のうち、下記一般式(2)で表される有機基の他は、アルキル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また、同様の理由から、R1〜R4のいずれかがアルキル基である場合は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0050】
【化13】
Figure 0004359446
【0051】
一般式(2)中、Xは、単結合、アルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は下記構造式(i)〜(iii)で表されるうちのいずれかを表す。重合性、入手性等の観点からは、単結合、フェニレン基に代表されるアリーレン基、又は下記構造式(i)で表されるもの好ましく、アリーレン基又は下記構造式(i)で表されるものがより好ましく、下記構造式(i)で表されるものが特に好ましい。
【0052】
【化14】
Figure 0004359446
【0053】
構造式(i)〜(iii)中、Yは2価の連結基、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Yとしては、炭素原子数1〜16のアルキレン基又は単結合が好ましい。アルキレン基内のメチレン(−CH2−)は、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONR−;Rは水素原子又はアルキル基)で置換されていてもよく、メチレン基を置換する結合としては、エーテル結合又はエステル結合が特に好ましい。
このような2価の連結基のうち、特に好ましい具体例を以下に挙げる。
【0054】
【化15】
Figure 0004359446
【0055】
一般式(1)で表されるカルボン酸基を有する共重合成分として、特に好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化16】
Figure 0004359446
【0057】
−スルホン酸基を有するモノマー−
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スルホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなスルホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、及び4−スチレンスルホン酸、等が挙げられる。
【0058】
−ホスホン酸基を有するモノマー−
ホスホン酸基を有するモノマーとしては、ホスホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなホスホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、等が挙げられる。
【0059】
特定重合体中における酸基を有する構造単位(モノマー)の含有量としては、0〜95モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることが更に好ましく、30〜60モル%であることが最も好ましい。
【0060】
(その他のモノマー成分)
本発明に係る特定重合体は、必要に応じて、種々の目的で、その他のモノマー成分を共重合してもよい。
その他のモノマー成分としては、例えば、感光層との相互作用性を強化することを目的として、感光層との相互作用可能な官能基を有するモノマーが用いられる。
【0061】
以下に、感光層との相互作用可能な官能基を有するモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド又はN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン、o−又はm−ブロモーp−ヒドロキシステレン、o−又はm−クロル−p−ヒドロキンスチレン、o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルアクリレート又はメタクリレート等の芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類及びヒドロキシスチレン類;
(2)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びそのハーフエステル、イタコン駿、無水イタコン酸及びそのハーフエステルなどの不飽和カルボン酸;
【0062】
(3)N−(o−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)アクリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタタリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリレートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド;
【0063】
(4)トシルアクリルアミドのように置換基があってもよいフェニルスルホニルアクリルアミド、及びトシルメタクリルアミドのような置換基があってもよいフェニルスルホニルメタクリルアミド;
(5)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
【0064】
(6)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸へキシル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置換)アクリル酸エステル;
(7)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリル酸エステル;
【0065】
(8)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロへキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド及びN−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアクリルアミド若しくはメタクリルアミド;
(9)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;
【0066】
(10)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;
(11)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類;
(12)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン類;
(13)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類;
【0067】
(14)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(15)パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトンなどのラクトン基含有モノマー;
(16)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アタリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのエチレンオキシド基含有モノマーなど。
【0068】
特定重合体中におけるのその他のモノマーの含有率としては、30モル%以下であることが好ましい。
【0069】
本発明における特定重合体の好ましい具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0070】
【化17】
Figure 0004359446
【0071】
【化18】
Figure 0004359446
【0072】
【化19】
Figure 0004359446
【0073】
【化20】
Figure 0004359446
【0074】
(中間層の塗布)
以上、本発明における中間層の各成分は、後述する支持体上に、種々の方法により塗布して設けることができる。中間層を塗布する方法には、特に制限はないが、代表的なものとして、次の方法が挙げられる。
【0075】
メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはこれらの混合溶剤、又はこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に、本発明における特定重合体を溶解させた溶液を支持体上に塗布、乾燥して設ける塗布方法。或いは、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤、又はこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に、本発明における特定重合体を溶解させた溶液に、支持体を浸漬し、しかる後、水洗或いは空気などによって洗浄、乾燥して中間層を設ける塗布方法を挙げることができる。
【0076】
前者の方法では、上記化合物合計で0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布すればよく、塗布手段としては、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの手段を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.005〜20質量%、好ましくは0.01%〜10質量%であり、浸漬温度0℃〜70℃、好ましくは5〜60℃であり、浸渡時間は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜120秒である。
【0077】
上記の溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などの無機酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸、フェニルホスホン酸などの有機ホスホン酸、安息香酸、クマル酸、リンゴ酸などの有機カルボン酸など種々有機酸性物質、ナフタレンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライドなどの有機クロライド等によりpHを調整し、pH=0〜12、より好ましくはpH=0〜6の範囲で使用することもできる。また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために紫外光や可視光、赤外光などを吸収する物質を添加することもできる。
【0078】
本発明における中間層の乾燥後の被覆量は、合計で1〜100mg/m2が適当であり、好ましくは2〜70mg/m2である。
【0079】
[感光層]
本発明に係る赤外線レーザー感光性ポジ型感光層(以下、適宜「感光層」と称する。)について説明する。かかる感光層は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)赤外線吸収剤、及び、必要に応じて(C)その他の成分を含有して構成されることが好ましい。以下、感光層に含有される各成分について、順次説明する。
【0080】
〔(A)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明に係る感光層は、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。該アルカリ可溶性樹脂は、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物を包含する。
中でも、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖及び/又は側鎖中に有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0081】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO32
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0082】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基及び(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基又は(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を充分に確保する点から最も好ましい。
【0083】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、又はm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、及びピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。更に、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0084】
フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0085】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜(v)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
【化21】
Figure 0004359446
【0087】
一般式(i)〜(v)中、X1及びX2は、それぞれ独立に−O−又は−NR7を表す。R1及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12及びR16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7及びR13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6及びR17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10及びR14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11及びR15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0088】
一般式(i)〜(v)で表される化合物のうち、本発明の平版印刷版原版では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0089】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0090】
【化22】
Figure 0004359446
【0091】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0092】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0093】
感光層に用いるアルカリ可溶性樹脂を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、又は異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0094】
前記共重合体は、現像ラチチュード向上の観点から、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。
【0095】
本発明では、化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0097】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0098】
アルカリ可溶性樹脂としては、赤外線レーザー等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性水酸基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0099】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
【0100】
アルカリ可溶性樹脂は、その重量平均分子量が500以上であることが画像形成性の点で好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
【0101】
また、これらのアルカリ可溶性樹脂は単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
組み合わせる場合には、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、本発明者らが先に提出した特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などを併用してもよい。
【0102】
これらのアルカリ可溶性樹脂としては、未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点、及び、非シリケート現像液に対して、未露光部、露光部の現像性の差が大きい点から、画像形成性が向上するため、フェノール性水酸基を有する高分子化合物が望ましい。更に好ましくはノボラック樹脂である。
【0103】
感光層に含有されるアルカリ可溶性樹脂は、感光層の耐久性、感度、及び画像形成性等の観点から、その合計の含有量が、感光層全固形分中、30〜98質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましい。
【0104】
〔(B)赤外線吸収剤〕
本発明に係る感光層は、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。該赤外線吸収剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、本発明における感光層が赤外線レーザーに対して感光性を有することから、波長760nm〜1200nmの赤外領域に吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
【0105】
赤外線吸収性染料としては、市販の染料、及び、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0106】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭58−194595号公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、特開昭58−224793号公報、特開昭59−48187号公報、特開昭59−73996号公報、特開昭60−52940号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0107】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号公報、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0108】
また、赤外線吸収染料として好ましい別の例としては、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0109】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。更に、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明に係る感光層中に使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、かつ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0110】
【化23】
Figure 0004359446
【0111】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0112】
【化24】
Figure 0004359446
【0113】
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。本発明の感光性組成物を、平版印刷版原版の感光層塗布液に用いた場合の保存安定性からは、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0114】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性からは、好ましくは水素原子である。
また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボン酸イオン、及びスルホン酸イオンであり、アルカリ可溶性樹脂との相溶性や塗布液への溶解性の観点からは、ハロゲンイオン、及び、カルボン酸イオンやスルホン酸イオンの有機酸イオンが好ましく、より好ましくはスルホン酸イオンであり、中でもアリールスルホン酸イオンが特に好ましい。
【0115】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0116】
【化25】
Figure 0004359446
【0117】
【化26】
Figure 0004359446
【0118】
【化27】
Figure 0004359446
【0119】
【化28】
Figure 0004359446
【0120】
一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は、互いに独立に、水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0121】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0122】
【化29】
Figure 0004359446
【0123】
【化30】
Figure 0004359446
【0124】
一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za-は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
【0125】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0126】
【化31】
Figure 0004359446
【0127】
【化32】
Figure 0004359446
【0128】
一般式(d)中、R29ないしR31は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよい。また、R29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成してもよく、更に、R33或いはR34が複数存在する場合には、R33同士或いはR34同士は、互いに結合して環を形成してもよい。X2及びX3は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X2及びX3の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc-は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
【0129】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0130】
【化33】
Figure 0004359446
【0131】
【化34】
Figure 0004359446
【0132】
一般式(e)中、R35〜R50は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0133】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0134】
【化35】
Figure 0004359446
【0135】
本発明に係る赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0136】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0137】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0138】
顔料の粒径は、感光層塗布液中の分散の安定性や感光層の均一性の観点から、0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
【0139】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0140】
これらの顔料又は染料の添加量は、感光層の均一性、耐久性、及び感度の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。染料の場合は、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合は、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
【0141】
〔(C)その他の成分〕
本発明に係る感光層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。特に、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質(分解性溶剤抑止剤)を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩及び、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましく、ジアゾニウム塩を熱分解性の溶解抑止剤として添加することが特に好ましい。
【0142】
本発明において、分解性溶剤抑止剤として用いられるオニウム塩として好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号明細書、米国特許第5,041,358号明細書、同第4,491,628号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報に記載のヨードニウム塩、
【0143】
J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号明細書、同233,567号明細書、同297,443号明細書、同297,442号明細書、米国特許第4,933,377号明細書、同3,902,114号明細書、同5,041,358号明細書、同4,491,628号明細書、同4,760,013号明細書、同4,734,444号明細書、同2,833,827号明細書、独国特許第2,904,626号明細書、同3,604,580号明細書、同3,604,581号明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
【0144】
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0145】
また、これらオニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0146】
本発明において、分解性溶剤抑止剤として用いられるキノンジアジド類の好適なものとしては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物或いは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号明細書及び同第3,188,210号明細書に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0147】
更に、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂或いはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0148】
分解性溶解抑止剤として用いるオニウム塩、及び/又は、o−キノンジアジド化合物の添加量は、感光層の全固形分に対し、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0149】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に用いられる添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0150】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0151】
更に、画像のディスクリミネーション(疎水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することができる。このような化合物の添加量としては、感光層の全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0152】
本発明の平版印刷版原版の感光層中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許6,117,913号明細書に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。このような化合物の添加量としては、、感光層の全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0153】
また、本発明の平版印刷版原版の感光層中には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでいてもよい。酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を挙げることができる。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることができる。
【0154】
その他、更に感光層の感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の平版印刷版原版の感光層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0155】
また、本発明に係る感光層には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
【0156】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光層中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0157】
本発明に係る感光層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0158】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、感光層の全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。
【0159】
更に、本発明に係る感光層中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0160】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には、特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物、及び、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物などを目的に応じて適宜添加することができる。
【0161】
〔感光層の形成〕
本発明に係る感光層は、上記した感光層を構成する各成分をを溶媒に溶かして、上述の中間層の表面に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0162】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0163】
本発明に係る感光層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、感光層全固形分中0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0164】
〔感光層の構成〕
本発明に係る感光層は重層構造をとってもよく、例えば、下層(支持体側)として、アルカリ可溶性高分子からなる樹脂層を、上層として、先に述べた感光層を、設け2層構造とすることができる。
これにより、露光によりアルカリ現像液への溶解性が低下する感光層(上層)が、露光面又はその近傍に設けられることで赤外線レーザーに対する感度が良好となると共に、支持体と該感光層との間にこの樹脂層(下層)が存在し、断熱層として機能することで、赤外線レーザーの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることからの高感度化が図れる。
また、露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性となった感光層(上層)がこの樹脂層(下層)の保護層として機能するために、現像安定性が良好になると共にディスクリミネーションに優れた画像が形成され、かつ、経時的な安定性も確保されるものと考えられる。更に、未露光部においては、未硬化のバインダー成分が速やかに現像液に溶解、分散し、更には、支持体に隣接して存在するこの樹脂層(下層)がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解するため、現像性に優れるものと考えられる。
【0165】
[支持体]
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物が用いられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙、若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0166】
本発明に係る支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0167】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0168】
このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0169】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号の各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号の各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
特に好ましい支持体処理としては、アルミニウム板に、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理、硝酸を含有する電解液を用いた電気化学的粗面化処理及び塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施すことが好ましい。このような処理を行った支持体は非常に高い表面積を有している。
【0170】
本発明に係る中間層が、上記処理を行った支持体でより好ましい効果を発現する理由はよく分かっていないが、本発明に係る中間層は、非常に表面積が高い支持体に対しても基板と相互作用する効果により、基板表面を充分に被覆できるため、感光層(感光層)と支持体との密着性を更に向上させ、かつ良好な非画像部汚れ性を両立できると考えられる。
【0171】
上記のようにして作製されたポジ型平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0172】
本発明の平版印刷版原版は、露光後、以下のようにして、アルカリ現像液を用いて現像する方法により、平版印刷版とするのが好ましい。
本発明の平版印刷版原版に用いる現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0173】
上記アルカリ水溶液のうち、特に、本発明による効果が発揮される現像液は、1つは、塩基としてケイ酸アルカリを含有した、又は、塩基にケイ素化合物を混ぜでケイ酸アルカリとしてものを含有した、所謂、「シリケート現像液」と呼ばれるpH12以上の水溶液であり、もう1つは、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖(緩衝作用を有する有機化合物)と塩基とを含有した、所謂、「非シリケート現像液」である。
これらの現像液において、特に、シリケート現像液は、現像液中にシリケートかすが生じやすく、処理安定性に懸念があるため、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液(上記非シリケート現像液)により処理されることが好ましい。また、本発明の平版印刷版原版に対する現像性能に関しては、シリケート現像及び非シリケート現像のどちらでも差がなく、シリケート現像液であっても非シリケート現像液であっても良好な現像が行なわれる。
なお、本方法については、特開平11−109637号公報に詳細に記載されており、本発明においては、該公報に記載されている内容を用いることができる。
【0174】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0175】
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明のに適用される後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0176】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0177】
本発明の平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0178】
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0179】
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0180】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0181】
[特定重合体(P−1)の合成]
DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)9.1gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン(ダイセル化学工業(株)製)11.9g(70.0mmol)、ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド7.61g(30.0mmol)、V−601(2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル)1.15g、及びDMAc36.4gからなる溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、本発明に係る特定重合体(P−1)を15.6g(Mw6.5×105)得た。
【0182】
[特定重合体(P−3)の合成]
DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)8.6gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、ライトエステルD−Q100(共栄社化学(株))8.31g(40.0mmol)、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(ダイセル化学工業(株)製)10.21g(60.0mmol)、V−601(2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル)1.15g、及びDMAc34.6gからなる溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、本発明に係る特定重合体(P−3)を16.3g(Mw4.50×104)得た。
【0183】
[特定重合体(P−13)の合成]
DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)7.6gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、p−ビニル安息香酸(北興化学工業)7.4g(50.0mmol)、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(ダイセル化学工業(株)製)6.8g(40.0mmol)、ライトエステルD−Q100(共栄社化学(株))2.08g(10.0mmol)、V−601(2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル)1.15g、及びDMAc30.4gからなる溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、本発明に係る特定重合体(P−13)を15.9g(酸価3.00meq/g、Mw9.20×104)得た。
【0184】
[特定重合体(P−17)の合成]
DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)10.8gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、ライトエステルHOMS(共栄社化学(株))17.16g(70.0mmol)、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン(ダイセル化学工業(株)製)3.4g(20.0mmol)、ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド2.54g(10.0mmol)、V−601(2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル)1.15g、及びDMAc43.1gからなる溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、本発明に係る特定重合体(P−17)を20.8g(酸価3.00meq/g、Mw8.50×104)得た。
【0185】
[特定重合体(P−22)の合成]
DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)16.7gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、p−ビニル安息香酸(北興化学工業)7.4g(50.0mmol)、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン(ダイセル化学工業(株)製)6.8g(40.0mmol)、ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド2.54g(10.0mmol)、V−601(2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル)1.15g、及びDMAc50.3gからなる溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、本発明に係る特定重合体(P−22)を13.88g(酸価2.95meq/g、Mw9.60×104)得た。
【0186】
上述のようにして合成された特定重合体(P−1)、(P−3)、(P−13)(P−17)、及び(P−22)の構造を以下に示す。
【0187】
【化36】
Figure 0004359446
【0188】
[(A)アルカリ可溶性樹脂1の合成]
撹拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三ロフラスコに、メタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)、及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を撹拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴をとり去り、室温下で30分間混合物を撹拌した。
この反応混合物に、p−アミノベンゼシスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間撹拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を撹拌しながら投入し、30分間得られた混合物を撹拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色団体が得られた(収量46.9g)。
【0189】
次に、撹拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた100ml三ロフラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g(0.0210モル)、メタクリル酸エチル2.05g(0.0180モル)、アクリロニトリル1.11g(0.021モル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を撹拌した。この混合物に「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を撹拌した。この反応混合物に、更に、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g、メタクリル酸エチル2.05g、アクリロニトリル1.11g、N,N−ジメチルアセトアミド20g、及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後更に65℃で2時間、得られた混合物を撹拌した。
反応終了後メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットル中にこの水を撹拌しながら投入し、30分混合物を撹拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体(アルカリ可溶性樹脂1)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、このアルカリ可溶性樹脂1の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ53,000であった。
【0190】
[実施例1〜8]
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、下記に示す処理することで支持体1〜支持体3を作製した。
【0191】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0192】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0193】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0194】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0195】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0196】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0197】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0198】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0199】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0200】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0201】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.5mg/dm2であった。
【0202】
<支持体1>
上記(a)〜(k)の各工程を順に行い、(e)工程におけるエッチング量は3.5g/m2となるようにして支持体1を作製した。
【0203】
<支持体2>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体2を作製した。
【0204】
<支持体3>
上記工程のうち(a)(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体3を作製した。
【0205】
〔中間層の形成〕
上述のように作製された支持体1〜支持体3上に、下記の中間層用塗布液を塗布した後、80℃で15秒間乾燥し、中間層を設けた。乾燥後の被覆量は、15mg/m2であった。
【0206】
<中間層用塗布液>
・表1に記載の特定重合体 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0207】
〔感光層の形成〕
(実施例1、実施例3、実施例5、実施例6、及び実施例8の感光層の形成)
上述のようにして支持体上に設けられた中間層表面に、以下の感光層用塗布液1を塗布量が0.85g/m2になるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVENPH200にてWind Controlを7に設定して110℃で50秒間乾燥した。その後、感光層用塗布液2を塗布量が0.30g/m2になるよう塗布したのち、120度で1分間乾燥し、実施例1、実施例3、実施例5、実施例6、及び実施例8の平版印刷版原版を得た。
【0208】
Figure 0004359446
【0209】
【化37】
Figure 0004359446
【0210】
Figure 0004359446
【0211】
【化38】
Figure 0004359446
【0212】
(実施例2、実施例4、及び実施例7の感光層の形成)
上述のようにして支持体上に設けられた中間層表面に、以下の感光層用塗布液3を乾燥後の塗布量が1.2g/m2となるように塗布し、実施例2、実施例4、及び実施例7の平版印刷版原版を得た。
【0213】
Figure 0004359446
【0214】
【化39】
Figure 0004359446
【0215】
[比較例1、2]
表1に示すように、実施例1〜8の中間層用塗布液における特定重合体に代えて、下記構造の比較重合体(PA−0)を用いた他は、実施例1〜8と同様にして、比較例1、2の平版印刷版原版を得た。
【0216】
【化40】
Figure 0004359446
【0217】
[露光・現像]
得られた実施例1〜5、比較例1、2の各平版印刷版原版を、CREO社製TrenndSetter3244Fを用い、セッター露光量、8.0W、150rpmで像様露光した。
次に、実施例1〜5、及び実施例8、比較例1、2の各平版印刷版原版は、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液である富士写真フイルム(株)製のPS版用現像液DT−1を標準使用条件で用いて、実施例6、7の各平版印刷版原版は、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液(富士写真フイルム製PS版用現像液DP−4)を標準使用条件で用いて、それぞれ自動現像機900NPにより現像した。
【0218】
[評価]
得られた実施例1〜8、比較例1、2の各平版印刷版原版に対し、非画像部の耐汚れ性、及び、耐刷性について、以下ごとく評価を行った。
【0219】
1.非画像部の耐汚れ性
上記の方法で露光・現像処理を行って得られた各平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
評価基準は、全く汚れていなかったものを◎、殆ど汚れていないものを○、顕著に汚れていたものを×とした。結果を表1に併記する。
【0220】
2.耐刷性の評価
上記の方法で露光・現像処理を行って得られた各平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表1に併記する。
【0221】
【表1】
Figure 0004359446
【0222】
表1に示すように、特定重合体を中間層に含有する実施例1〜8の平版印刷版原版は、ラクトン基を有しない重合体を中間層に含有する比較例1、2の平版印刷版原版と比較して、非画像部の耐汚れ性は同等若しくはそれ以上であり、かつ、耐刷性も優れたものであることが明らかとなった。特に、実施例3〜8の平版印刷版原版は、ラクトン基とオニウム塩基に加え酸基をも有する3成分系の特定重合体を用いているため、その耐汚れ性がより高いものとなっていることが明らかとなった。
【0223】
また、オニウム塩基とラクトン基とを有する特定重合体を用いた実施例1と、ラクトン基と酸基とを有する重合体を用いた比較例1と、を比較すると、どちらの中間層にもオニウム塩基を有する重合体が含有されており、感光層塗布液溶剤への耐性が高いため、非画像部の耐汚れ性はともに良好であるが、耐刷性に関しては、ラクトン基の持つ効果により、特定重合体を含む中間層を有している実施例1の方が優れていることが明らかとなった。
【0224】
更に、表1に示すように、実施例1〜8の平版印刷版原版の現像処理においては、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液(非シリケート現像液)用いた場合であっても、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液(シリケート現像液)を用いた場合であっても、どちらも実用上問題のない平版印刷版を得ることができることが判明した。
【0225】
【発明の効果】
本発明によれば、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、耐刷性に優れ、かつ、非画像部の汚れのないポジ型平版印刷版原版を提供することができる。

Claims (2)

  1. 支持体上に、ラクトン基とオニウム塩基とを有する重合体を含有する中間層と、赤外線レーザー感光性ポジ型感光層と、を順次設けてなる平版印刷版原版。
  2. 前記重合体が更に酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
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