JP2004182943A - 紙塗工用共重合体ラテックスおよび共重合体ラテックスの製造方法 - Google Patents
紙塗工用共重合体ラテックスおよび共重合体ラテックスの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ハロゲン化炭化水素を使用しなくても、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、該共重合体ラテックスを紙塗工組成物に用いた場合に、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙を与え得る共重合体ラテックスの製造方法および該製造方法によって得られる紙塗工用に好適な紙塗工用共重合体ラテックスを提供すること。
【解決手段】共役ジエン単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物100重量部を、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、ベンゾチアジルスルフェンアミド誘導体又はビスフェノール誘導体の少なくとも1種0.01〜5重量部の存在下に乳化共重合することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法および該製造方法で得られる紙塗工用共重合体ラテックス。
【解決手段】共役ジエン単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物100重量部を、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、ベンゾチアジルスルフェンアミド誘導体又はビスフェノール誘導体の少なくとも1種0.01〜5重量部の存在下に乳化共重合することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法および該製造方法で得られる紙塗工用共重合体ラテックス。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙塗工用共重合体ラテックスおよび共重合体ラテックスの製造方法に関し、さらに詳しくは、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、紙塗工組成物に用いた場合に、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙を与え得る共重合体ラテックスの製造方法および紙塗工用に好適な共重合体ラテックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
塗工紙は、白紙光沢、白色度及び平滑性に優れ、印刷物の光沢及び印刷画像再現性を向上することから、大量に生産され、消費されている。この塗工紙は、一般に、顔料とバインダーを含む紙塗工組成物を紙に塗工したものであり、主として印刷用紙や印刷用板紙として使用される。
【0003】
紙塗工用組成物のバインダーとしては、共役ジエン単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、及びこれらと共重合可能な単量体を共重合して得られるカルボキシ変性共重合体ラテックスが主に用いられ、所望により、澱粉、カゼイン、大豆蛋白などの水溶性バインダーが併用される。
【0004】
バインダーとして使用される共重合体ラテックスには、(1)顔料を相互に接着すると共に、原紙上に固着すること、即ち、接着強度に優れること、(2)印刷時にしめし水が介在した際に、塗工層の接着強度に優れる(耐水接着強度に優れる。)こと、(3)耐ブリスター性に優れていること、などの諸特性を有することが要求される。カルボキシ変性共重合体ラテックスをバインダーとして含有する紙塗工用組成物を塗工した塗工紙は、優れた接着強度、耐水接着強度、耐ブリスター性等を有しているため、紙塗工分野において大量に使用されているが、近年、オフセット印刷用塗工紙に対する品質要求が高度化しているため、これらの諸特性に対する向上要求が高まっている。
【0005】
ところで、接着強度などの諸特性は、カルボキシ変性共重合体ラテックスのゲル含量に大きく依存することが知られている。従来、共重合体ラテックスのゲル含量を制御する方法としては、連鎖移動剤として、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、あるいは四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素を用い、これらの連鎖移動剤の存在下に乳化重合を行うのが一般的であった。
【0006】
しかし、近年の環境問題により、特定のハロゲン化炭化水素の使用が制限される方向にあり、特に、四塩化炭素の工業的使用はできなくなった。一方、メルカプタン類は、不快臭や腐食性がある他、接着強度及び耐ブリスター性等の諸物性を低下させるため、連鎖移動剤を全面的にメルカプタン類のみとすることには、環境上や物性上の問題がある。
【0007】
このような問題を解決し得る技術として、例えば、α−メチルスチレンダイマーの存在下に、共役ジエン単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及びこれらと共重合可能な単量体混合物を乳化共重合して得られる共重合体ラテックスを紙塗工用組成物のバインダーとして用いることが提案されている(特許文献1参照)。しかし、このような方法によれば、ハロゲン化炭化水素を用いなくても、共重合体ラテックスのゲル含量を制御できるものの、得られた塗工紙は不快な臭気を発生しやすく、また、粒子径が100nm以下の比較的小粒子径の共重合体ラテックスを製造した場合にラテックス粘度が上昇して、移送しにくくなる問題があった。
【0008】
また、特定の核置換芳香族化合物の存在下に、共役ジエン単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含有する単量体混合物を乳化共重合する共重合体ラテックスの製造方法が提案され、具体的には2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールまたは2,6−キシレノールを用いた実験例が示されている(特許文献2参照)。しかしながら、このような化合物を用いて粒子径が100nm以下の比較的小粒子径の共重合体ラテックスを製造した場合にラテックス粘度が上昇して、移送し難くなる問題があった。
【0009】
上記のように、乳化共重合時に種々の化合物を併用することが提案されているものの、いずれの方法も、紙塗工組成物のバインダーとしての様々な要求を満足させるには不十分であった。
【0010】
【特許文献1】
特開平3−109470号公報
【特許文献2】
特開平5−163309号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、連鎖移動剤としてハロゲン化炭化水素を使用しなくても、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、該共重合体ラテックスを紙塗工組成物に用いた場合に、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙を与え得る共重合体ラテックスの製造方法および紙塗工用に好適な共重合体ラテックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定構造の有機化合物の存在下に、共役ジエン単量体とエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を乳化共重合することにより、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、これを紙塗工用組成物のバインダーとして用いると、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙が得られることを見いだした。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0013】
かくして、本発明によれば、共役ジエン単量体10〜89.5重量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜20重量%およびこれらの単量体と共重合可能なその他の単量体10〜89.5重量%からなる単量体混合物100重量部を、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物0.01〜5重量部の存在下に乳化共重合することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法が提供される。
【0014】
式(1)
【化8】
式中、R1はアルキル基またはハロゲン原子を表し、nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合は、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、Wは−NH−C(R3)(R4)−を表し、その窒素原子がベンゼン環の炭素原子と結合している。R3及びR4は水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。lは2〜8を表す。
【0015】
式(2)
【化9】
式中、R5はアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上の場合はR5は同一でも異なっていてもよい。pは1または2を表し、R6は2級アミノ基または3級アミノ基を表す。
【0016】
式(3)
【化10】
式中、R7及びR8は炭素数4〜8の3級アルキル基を表し、 R9、R10、R11及びR12は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0017】
式(4)
【化11】
式中、R13及びR14は3級アルキル基を表し、R15及びR16は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。
Yは、硫黄原子または
【化12】
を表す。R17及びR18は、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0018】
また、本発明によれば、前記の製造方法によって得られる紙塗工用共重合体ラテックスが提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明において使用する共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ハロゲン置換ブタジエンなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、1,3−ブタジエンが好ましく使用できる。共役ジエン単量体の使用量は、全単量体混合物中、10〜89.5重量%であり、好ましくは20〜69.5重量%である。この使用量が少ないと接着強度が低下し、逆に多いと耐水接着強度が低下し、オフセット印刷において要求される特性を満足することができない。
【0020】
本発明で使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル;などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、全単量体混合物中、0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。この使用量が少ないと、接着強度が低下すると共にラテックスの安定性が不十分となり、紙塗工用組成物の調製時や該組成物の紙への塗工時に障害を起こす。一方、この使用量が多いと、共重合体ラテックスの粘度が高くなり、共重合体ラテックスの移送や計量が困難になる。
【0022】
前記共役ジエン単量体及び前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミド類;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル類;酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジンなどのその他のビニル化合物;などを挙げることができる。これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸β−ヒドロキシエチルが好ましく使用される。
【0023】
その他の単量体の使用量は、全単量体混合物中、10〜89.5重量%、好ましくは30〜79.5重量%である。
スチレンなどの芳香族ビニル化合物は、適当な硬さと耐水性を付与する役割をもち、全単量体混合物中、好ましくは10〜65重量%の範囲で使用される。
メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステルは、適当な硬さと親水性を付与する役割をもち、全単量体混合物中、好ましくは5〜30重量%の割合で使用される。
アクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル化合物は、耐油性を付与し、塗工紙の印刷光沢を高める役割をもち、全単量体混合物中、好ましくは5〜30重量%の範囲で使用される。
エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類やエチレン性不飽和カルボン酸アミド類は、共重合体ラテックスの安定性向上に有効であり、全単量体混合物中、好ましくは20重量%までの範囲で使用される。
したがって、諸特性を満足させるために、これらの単量体を2種以上を組み合わせてそれぞれ適量の範囲で使用することが好ましい。
【0024】
本発明の共重合体ラテックスの製造方法は、前記の単量体混合物を、下記式(1)〜(4)で表される化合物の少なくとも1種の存在下で、乳化共重合する点に特徴を有する。
【0025】
式(1)
【化13】
式中、R1はアルキル基またはハロゲン原子を表し、nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合は、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、Wは−NH−C(R3)(R4)−を表し、その窒素原子がベンゼン環の炭素原子と結合している。R3及びR4は水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。lは2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等の重合体を示すための整数であり、2〜8を表す。
【0026】
R1のアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を含む。具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。また、R1のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。R1は、アルキル基であることが好ましい。
R2の炭素数1〜6の低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基が挙げられる。この中でも、メチル基が好ましい。
R3及びR4の炭素数1〜6の低級アルキル基も、R2の低級アルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0027】
式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体が挙げられる。
【0028】
式(2)
【化14】
式中、R5はアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上の場合はR5は同一でも異なっていてもよい。pは1または2を表し、R6は2級アミノ基または3級アミノ基を表す。
【0029】
R5としては、R1で挙げたアルキル基またはハロゲン原子と同様のものを挙げることができる。
R6の2級アミノ基は、アミノ基の水素原子のうち1つが炭素数(C)1〜4のアルキル基、C3〜6の環状アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基によって置換されたものである。2級アミノ基としては、C1〜6のアルキルアミノ基もしくはC5又は6の環状アルキルアミノ基が好ましい。具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などが挙げられるが、t−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基が好ましい。
R6の3級アミノ基は、アミノ基の水素原子の2つが置換基によって置換されたものである。2つの置換基が一緒に環状構造を形成してもよい。置換基は、2級アミノ基で例示したものと同様である。具体的には、ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基、モルホリノ基等が挙げられる。これらの中では、モルホリノ基が好ましい。
【0030】
式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドが挙げられる。
【0031】
式(3)
【化15】
式中、R7及びR8は炭素数4〜8の3級アルキル基を表し、 R9、R10、R11及びR12は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0032】
R7及びR8は炭素数4〜8の3級アルキル基であり、例えば、t−ブチル基、t−アミル基などを挙げることができる。
R9、R10、R11及びR12は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などを挙げることができる。
R9及びR10はメチル基又はエチル基であることが好ましく、R11及びR12は水素であることが好ましい。
【0033】
式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0034】
式(4)
【化16】
式中、R13及びR14は3級アルキル基を表し、R15及びR16は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。
Yは、硫黄原子または
【化17】
を表す。R17及びR18は、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0035】
R13及びR14はR7と同様の3級アルキル基を有し、R15及びR16はR2と同様の炭素数1〜6の低級アルキル基を有する。
R17及びR18は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基を挙げることができる。
【0036】
式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(3−エチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0037】
式(1)〜(4)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
式(1)〜(4)で表される化合物の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜2重量部、より好ましくは0.05〜1重量部である。この使用量が少ないと所期の目的を達成することができず、逆に、多いと接着強度が低下する。
【0039】
また、式(1)〜(4)で表される化合物のほかに、式(5)又は(6)で表される化合物の少なくとも1種を併用することが好ましい。
式(5)
【化18】
式中R19及びR20は3級アルキル基を表す。3級アルキル基は、R7で例示した基と同様である。
【0040】
式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンが挙げられる。
【0041】
式(6)
【化19】
式中、R21、R25は炭素数4〜8の3級アルキル基を表し、R22〜R24は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数4〜8の3級アルキル基はR7と同様であり、炭素数1〜8のアルキル基はR9と同様である。
【0042】
式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。
【0043】
式(5)または(6)で表される化合物を併用する場合の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜0.2重量部、好ましくは0.03〜0.09重量部である。
【0044】
本発明においては、式(1)〜(6)で表される化合物と公知の連鎖移動剤とを併用してもよい。
併用できる連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのメルカプタン類;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのジスルフィド類;テルピノーレン、α−ピネン、β−ピネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、ミルセン、ジペンテンなどのテルペン類;ペンタフェニルエタンなどの炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、α−メチルスチレンダイマー、1,4−シクロヘキサジエン;3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ヘキセンニトリル、2−メチル−3−ペンテンニトリル、3−メチル−3−ペンテンニトリル、4−メチル−3−ペンテンニトリル、2−エチル−3−ブテンニトリル、2,3−ジメチル−3−ブテンニトリル、3−シアノシクロペンテン、3−シアノシクロヘキセン、フェニルアセトニトリル、2−フェニルプロピオニトリルなどのニトリル類;などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて併用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく使用できる。
【0045】
公知の連鎖移動剤を併用する場合の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。
【0046】
本発明において、乳化重合の方法とその条件については、上記の点を除き、特に限定はなく、従来公知の方法が採用できる。
【0047】
単量体混合物の添加方法としては、反応容器に、全量を一括して添加する方法、重合の進行にしたがって連続的または断続的に添加する方法、単量体混合物の一部を一括して添加して重合した後、残余の単量体混合物を一括ないしは連続的または断続的に添加して重合する方法など、いずれの方法でもよい。連続的または断続的に添加される単量体混合物の組成は、重合中、同一であっても、あるいは変化しても構わない。
【0048】
連鎖移動剤の添加方法についても特に限定はなく、一括添加方式、分割添加方式、連続添加方式、あるいはこれらを組み合わせた方式のいずれでもよい。
【0049】
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプルピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチルなどのアゾ化合物;過酸化水素などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの重合開始剤は、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
【0050】
重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
【0051】
乳化剤としては、特に限定されず、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等のノニオン性界面活性剤;アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩、リン酸エステル塩を、カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム塩を持つ両性界面活性剤;などが挙げられる。なかでも、アニオン性界面活性剤が好ましく使用できる。これらの乳化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。
【0052】
本発明においては、以上のほかに、キレート剤、無機塩、pH調整剤などが適宜使用できる。これらの種類は、特に限定されるものではなく、公知のものが使用できる。
【0053】
重合温度は、通常、0〜100℃、好ましくは40〜90℃である。
重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。重合反応の停止は、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして行うことができる。
【0054】
重合反応を停止した後、得られた共重合体ラテックスは、通常、未反応単量体の除去を行い、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基を用いて所望のpHに調整される。また、濃縮を行って所望の固形分濃度に調整することもできる。さらに、必要に応じて共重合体ラテックスには、防腐剤、安定化剤、分散剤等を添加することができる。
【0055】
本発明の方法は、数平均粒子径が20〜200nm、好ましくは30〜120nmの共重合体ラテックスの製造に好適であり、また、テトラヒドロフラン(THF)不溶解分が30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%の共重合体のラテックスを製造するのに好適である。
【0056】
本発明の方法で製造される共重合体ラテックスは、例えば、紙塗工用バインダー、不織布用バインダー、カーペットバッキング用バインダー、タイヤコード用バインダー、樹脂フィルム用バインダー、紙含浸用バインダー、布含浸用バインダー、塗料用バインダー、インク用バインダー、樹脂改質用ラテックスなどとして好適に使用でき、なかでも、紙塗工用のバインダーとして特に好適に使用できる。
【0057】
本発明の紙塗工用共重合体ラテックスは、前記の方法で得られる。
紙塗工用組成物は、顔料および本発明の紙塗工用共重合体ラテックスからなる。紙塗工用共重合体ラテックスの使用量は、顔料100重量部に対して、固形分として、好ましくは4〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部である。この範囲で使用すると、表面強度と耐ブリスター性のバランスに優れる塗工紙が得られる。
【0058】
顔料としては、紙塗工の分野で通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、クレイ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、サチン白などの無機顔料;プラスチックピグメントやバインダーピグメントなどとして知られる有機顔料;などが挙げられる。顔料は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
紙塗工用組成物のバインダーとしては、例えば、澱粉、カゼイン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールなどの水溶性バインダー;ポリ酢酸ビニル系ラテックス、ポリアクリル酸エステル系ラテックスなどのエマルジョン系ラテックス;などを併用することもできる。
【0060】
紙塗工用組成物には、分散剤、増粘剤、染料、着色顔料、蛍光染料、消泡剤、防腐剤、耐水化剤、滑剤、着肉向上剤、保水剤などの添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0061】
紙塗工用組成物を、原紙に塗工し、乾燥することにより塗工紙が得られる。原紙としては、特に限定されず、もちろん板紙なども含まれる。塗工方法についても、限定されず、例えば、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター等の各種塗工設備を用いて塗工することができる。得られた塗工紙を、さらにスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダーなどの仕上げ装置を通すことにより、塗工紙表面の光沢や平滑性を向上させることもできる。
【0062】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、これらの例中の部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0063】
共重合体ラテックスおよび塗工紙の評価は以下のように行なった。
(ラテックス粘度)
pH8、固形分濃度50%の共重合体ラテックスの粘度を、25℃で回転式粘度計を用いて測定した。この粘度が300mP・s以上であると、ラテックスの移送がし難くなり、移送効率が低下する。
(数平均粒子径)
得られた共重合体ラテックスを、透過型電子顕微鏡(日立製作所製:H7500)を使用して、ラテックス粒子の200個の粒子径を測定し、その数平均値を求めた。
【0064】
(THF不溶解分)
水平に保たれたガラス板に、乾燥後のフィルムの厚さが約2mmとなるように、共重合体ラテックスを流延し、温度23℃、相対湿度65%に保たれた恒温恒湿室内で48時間自然乾燥させる。得られたフィルムを2mm×2mmに裁断し、その約0.3gを箱型の80メッシュ金網(重量:Ag)に精秤(重量:Bg)して入れる。これをガラスビーカーに入れ、テトラヒドロフラン100mlを注ぎ込んで室温で48時間静置する。48時間静置後、金網を引き上げて、あらかじめ重量を測っておいたアルミ皿(重量:Cg)にのせて、ドラフト内で4時間放置する。この後、アルミ皿ごと105℃の乾燥機内で3時間乾燥させ、アルミ皿ごと乾燥重量(重量:Dg)を測定する。THF不溶解分は次式により計算する。
THF不溶解分(%)=(D−C−A)×100/B
【0065】
(共重合体ラテックスの色調)
pH8、固形分濃度50%の共重合体ラテックスの色調を目視で判断した。乳白色のものを○で表し、着色している場合はその色調で表す。
(耐ブロッキング性)
上質紙に共重合体ラテックスを塗布乾燥した後、塗布面にラシャ紙を重ねて、温度80℃、線圧300N/cmの条件でカレンダー処理を行った。その後、ラシャ紙を剥し、その剥離状態を5点法で評価する。点数の高いものほど耐ブロッキング性が高い。
【0066】
(ドライピック強度)
印刷インク(タック値20)0.4cm3をRIテスター(明石製作所製)のゴムロールに付着させた後、このRIテスター(明石製作所製)を用いて塗工紙に4回重ね刷りした。紙面の剥がれ(ピッキング)状態を観察し5点法で評価し。点数の高いものほどドライピック強度が高い。
【0067】
(ウェットピック強度)
塗工紙に、モルトンロールで水を塗布し、次に印刷インク(タック値14)0.4cm3をゴムロールに付着させたRIテスターを用いてベタ刷りした。紙面の剥がれ(ピッキング)状態をドライピック強度の評価方法と同様にして5点法で評価した。点数の高いものほどウェットピック強度が高い。
【0068】
(耐ブリスター性)
RI印刷試験機を用いて塗工紙の両面に、それぞれ、印刷インク(大日本インキ化学工業(株)製、Web Zett黄)0.3cm3をベタ刷りした。この塗工紙を温度25℃、相対湿度65%の雰囲気下に12時間放置した後、適当な大きさに裁断して試験片とした。この試験片を、5℃刻みの所定温度に加熱したシリコンオイルバスに浸漬して、ブリスターが発生する最低温度を測定した。この温度が高いほど、耐ブリスター性に優れる。
【0069】
(カルモアΣ上昇値)
20cm四方に切断した塗工紙を、内容積100mlのガラス容器に入れ、蓋で密封した。これを40℃の恒温槽に4時間静置した後、取り出し、蓋を外して、ガラス容器内部のカルモアΣ値の最大値を携帯型におい測定装置(KALMOR−Σ:株式会社カルモア製)を用いて測定した。
このカルモアΣ値の最大値から別途測定した測定室内のカルモアΣ値を減じて、カルモアΣ上昇値を計算した。この数値が小さいほど臭気成分が少なく、概ね200以下であれば、不快な臭気として感知されない。
【0070】
(実施例1)
撹拌機付き耐圧容器に、水26部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.1部、重炭酸ソーダ0.1部、スチレン10部、メタクリル酸メチル5部、アクリロニトリル8部、1,3−ブタジエン25部、イタコン酸1部、アクリル酸1部、t−ドデシルメルカプタン0.2部および2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(ノクラック224;大内新興化学工業(株)製)0.065部を添加し、攪拌して単量体エマルジョンIを調製した。
別の撹拌機付き耐圧容器に、水22部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.1部、重炭酸ソーダ0.1部、スチレン20部、メタクリル酸メチル5部、アクリロニトリル10部、1,3−ブタジエン14部、アクリル酸1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部および2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体0.065部を添加し、攪拌して単量体エマルジョンIIを調製した。
【0071】
撹拌機付き耐圧反応容器に、水80部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩0.1部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5部、シードラテックス(固形分)3部および過硫酸カリウム0.5部を仕込み、65℃に昇温した。ここで、シードラテックスは、1,3−ブタジエン36部、スチレン50部、メタクリル酸メチル10部およびメタクリル酸4部を乳化共重合した数平均粒子径35nmのものを使用した。
反応温度を65℃に保持したまま、単量体エマルジョンIを2時間に亘り反応容器に連続的に添加し、次いで単量体エマルジョンIIを2.5時間に亘り反応容器に連続的に添加した。添加終了後、90℃に昇温し、さらに4時間反応させた後、室温まで冷却して重合反応を停止した。
得られた共重合体ラテックスに水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体を除去した。次いで、固形分濃度50%、pH8に調整し、共重合体ラテックスAを得た。共重合体ラテックスAの特性値を測定し、その結果を表1に示す。
【0072】
前記共重合体ラテックスAを固形分として10部、1級クレー(エンゲルハルド社製、ウルトラホワイト90)40部、2級クレー(エンゲルハルド社製、ウルトラコート)30部、重質炭酸カルシウム(イメリス ミネラルズ ジャパン社製、Carbital−90)30部、分散剤(東亜合成社製、アロンT−40)0.2部、水酸化ナトリウム0.15部及び酸化デンプン3部を混合して攪拌し、固形分濃度65%、pH10に調整して紙塗工用組成物を得た。
この紙塗工用組成物を上質紙に塗工量が片面あたり15g/m2となるように両面に塗工し、それぞれ、塗工直後に120℃の熱風で10秒間乾燥した。両面に塗工された塗工紙を、温度20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室内に一夜放置した。その後、温度50℃、線圧100Kg/cmの条件で2回スーパーカレンダー処理を行って塗工紙を得た。この塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0073】
(実施例2〜8)
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体0.13部を、表1に示す化合物または混合物の添加量に変更する以外は、実施例1と同様に乳化共重合して共重合体ラテックスB〜Hを得た。なお、各化合物は、表1に示す量の半量を、それぞれ単量体エマルジョンIおよびIIに添加した。共重合体ラテックスB〜Hの特性値を測定し、結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、それぞれ共重合体ラテックスB〜Hを用いる以外は、実施例1と同様に塗工紙を得た。塗工紙の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1〜4)
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体0.13部を、表1に示す化合物または混合物の添加量に変更する以外は、実施例1と同様に乳化共重合して共重合体ラテックスI〜Lを得た。なお、各化合物は、表1に示す量の半量を、それぞれ単量体エマルジョンIおよびIIに添加した。共重合体ラテックスI〜Lの特性値を測定し、結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、それぞれ共重合体ラテックスI〜Lを用いる以外は、実施例1と同様に塗工紙を得た。塗工紙の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0075】
(比較例5)
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を使用せずに、単量体エマルジョンIにおけるt−ドデシルメルカプタンの量を0.4部に、また、単量体エマルジョンIIにおけるt−ドデシルメルカプタンの量を0.8部に変更する以外は、実施例1と同様に乳化共重合して共重合体ラテックスMを得た。共重合体ラテックスMの特性値を測定し、結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスMを用いる以外は、実施例1と同様に塗工紙を得た。塗工紙の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から以下のようなことがわかる。
t−ドデシルメルカプタンとα−メチルスチレンダイマーを併用して得られた比較例1の共重合体ラテックスIは、ラテックス粘度が高く、この共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、不快な臭気を有している。
t−ドデシルメルカプタンと2,6−ジアミルハイドロキノンを併用して得られた比較例2の共重合体ラテックスJは、ラテックス粘度が高い上に色調も悪い。
【0078】
t−ドデシルメルカプタンと2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを併用して得られた比較例3の共重合体ラテックスKは、ラテックス粘度が高く、この共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、表面強度に劣る。
t−ドデシルメルカプタンとハイドロキノンモノメチルエーテルを併用して得られた比較例4の共重合体ラテックスLは、色調が悪く、この共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、表面強度と耐ブリスター性のバランスに劣る。
t−ドデシルメルカプタンでTHF不溶解分を調節した比較例5の共重合体ラテックスMを用いて製造した塗工紙は、表面強度と耐ブリスター性のバランスに劣る。
【0079】
これらの比較例に比べ、本発明で規定する範囲内で製造した共重合体ラテックスA〜Hは、低粘度で色調も良好であり、これらの共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、表面強度と耐ブリスター性のバランスに優れており、不快な臭気も極めて少ないといえる。
【発明の効果】
本発明によれば、連鎖移動剤としてハロゲン化炭化水素を使用しなくても、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、該共重合体ラテックスを紙塗工組成物に用いた場合に、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙を与え得る共重合体ラテックスの製造方法および紙塗工用に好適な共重合体ラテックスが提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙塗工用共重合体ラテックスおよび共重合体ラテックスの製造方法に関し、さらに詳しくは、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、紙塗工組成物に用いた場合に、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙を与え得る共重合体ラテックスの製造方法および紙塗工用に好適な共重合体ラテックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
塗工紙は、白紙光沢、白色度及び平滑性に優れ、印刷物の光沢及び印刷画像再現性を向上することから、大量に生産され、消費されている。この塗工紙は、一般に、顔料とバインダーを含む紙塗工組成物を紙に塗工したものであり、主として印刷用紙や印刷用板紙として使用される。
【0003】
紙塗工用組成物のバインダーとしては、共役ジエン単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、及びこれらと共重合可能な単量体を共重合して得られるカルボキシ変性共重合体ラテックスが主に用いられ、所望により、澱粉、カゼイン、大豆蛋白などの水溶性バインダーが併用される。
【0004】
バインダーとして使用される共重合体ラテックスには、(1)顔料を相互に接着すると共に、原紙上に固着すること、即ち、接着強度に優れること、(2)印刷時にしめし水が介在した際に、塗工層の接着強度に優れる(耐水接着強度に優れる。)こと、(3)耐ブリスター性に優れていること、などの諸特性を有することが要求される。カルボキシ変性共重合体ラテックスをバインダーとして含有する紙塗工用組成物を塗工した塗工紙は、優れた接着強度、耐水接着強度、耐ブリスター性等を有しているため、紙塗工分野において大量に使用されているが、近年、オフセット印刷用塗工紙に対する品質要求が高度化しているため、これらの諸特性に対する向上要求が高まっている。
【0005】
ところで、接着強度などの諸特性は、カルボキシ変性共重合体ラテックスのゲル含量に大きく依存することが知られている。従来、共重合体ラテックスのゲル含量を制御する方法としては、連鎖移動剤として、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、あるいは四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素を用い、これらの連鎖移動剤の存在下に乳化重合を行うのが一般的であった。
【0006】
しかし、近年の環境問題により、特定のハロゲン化炭化水素の使用が制限される方向にあり、特に、四塩化炭素の工業的使用はできなくなった。一方、メルカプタン類は、不快臭や腐食性がある他、接着強度及び耐ブリスター性等の諸物性を低下させるため、連鎖移動剤を全面的にメルカプタン類のみとすることには、環境上や物性上の問題がある。
【0007】
このような問題を解決し得る技術として、例えば、α−メチルスチレンダイマーの存在下に、共役ジエン単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及びこれらと共重合可能な単量体混合物を乳化共重合して得られる共重合体ラテックスを紙塗工用組成物のバインダーとして用いることが提案されている(特許文献1参照)。しかし、このような方法によれば、ハロゲン化炭化水素を用いなくても、共重合体ラテックスのゲル含量を制御できるものの、得られた塗工紙は不快な臭気を発生しやすく、また、粒子径が100nm以下の比較的小粒子径の共重合体ラテックスを製造した場合にラテックス粘度が上昇して、移送しにくくなる問題があった。
【0008】
また、特定の核置換芳香族化合物の存在下に、共役ジエン単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含有する単量体混合物を乳化共重合する共重合体ラテックスの製造方法が提案され、具体的には2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールまたは2,6−キシレノールを用いた実験例が示されている(特許文献2参照)。しかしながら、このような化合物を用いて粒子径が100nm以下の比較的小粒子径の共重合体ラテックスを製造した場合にラテックス粘度が上昇して、移送し難くなる問題があった。
【0009】
上記のように、乳化共重合時に種々の化合物を併用することが提案されているものの、いずれの方法も、紙塗工組成物のバインダーとしての様々な要求を満足させるには不十分であった。
【0010】
【特許文献1】
特開平3−109470号公報
【特許文献2】
特開平5−163309号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、連鎖移動剤としてハロゲン化炭化水素を使用しなくても、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、該共重合体ラテックスを紙塗工組成物に用いた場合に、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙を与え得る共重合体ラテックスの製造方法および紙塗工用に好適な共重合体ラテックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定構造の有機化合物の存在下に、共役ジエン単量体とエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を乳化共重合することにより、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、これを紙塗工用組成物のバインダーとして用いると、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙が得られることを見いだした。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0013】
かくして、本発明によれば、共役ジエン単量体10〜89.5重量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜20重量%およびこれらの単量体と共重合可能なその他の単量体10〜89.5重量%からなる単量体混合物100重量部を、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物0.01〜5重量部の存在下に乳化共重合することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法が提供される。
【0014】
式(1)
【化8】
式中、R1はアルキル基またはハロゲン原子を表し、nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合は、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、Wは−NH−C(R3)(R4)−を表し、その窒素原子がベンゼン環の炭素原子と結合している。R3及びR4は水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。lは2〜8を表す。
【0015】
式(2)
【化9】
式中、R5はアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上の場合はR5は同一でも異なっていてもよい。pは1または2を表し、R6は2級アミノ基または3級アミノ基を表す。
【0016】
式(3)
【化10】
式中、R7及びR8は炭素数4〜8の3級アルキル基を表し、 R9、R10、R11及びR12は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0017】
式(4)
【化11】
式中、R13及びR14は3級アルキル基を表し、R15及びR16は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。
Yは、硫黄原子または
【化12】
を表す。R17及びR18は、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0018】
また、本発明によれば、前記の製造方法によって得られる紙塗工用共重合体ラテックスが提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明において使用する共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ハロゲン置換ブタジエンなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、1,3−ブタジエンが好ましく使用できる。共役ジエン単量体の使用量は、全単量体混合物中、10〜89.5重量%であり、好ましくは20〜69.5重量%である。この使用量が少ないと接着強度が低下し、逆に多いと耐水接着強度が低下し、オフセット印刷において要求される特性を満足することができない。
【0020】
本発明で使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル;などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、全単量体混合物中、0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。この使用量が少ないと、接着強度が低下すると共にラテックスの安定性が不十分となり、紙塗工用組成物の調製時や該組成物の紙への塗工時に障害を起こす。一方、この使用量が多いと、共重合体ラテックスの粘度が高くなり、共重合体ラテックスの移送や計量が困難になる。
【0022】
前記共役ジエン単量体及び前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミド類;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル類;酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジンなどのその他のビニル化合物;などを挙げることができる。これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸β−ヒドロキシエチルが好ましく使用される。
【0023】
その他の単量体の使用量は、全単量体混合物中、10〜89.5重量%、好ましくは30〜79.5重量%である。
スチレンなどの芳香族ビニル化合物は、適当な硬さと耐水性を付与する役割をもち、全単量体混合物中、好ましくは10〜65重量%の範囲で使用される。
メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステルは、適当な硬さと親水性を付与する役割をもち、全単量体混合物中、好ましくは5〜30重量%の割合で使用される。
アクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル化合物は、耐油性を付与し、塗工紙の印刷光沢を高める役割をもち、全単量体混合物中、好ましくは5〜30重量%の範囲で使用される。
エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類やエチレン性不飽和カルボン酸アミド類は、共重合体ラテックスの安定性向上に有効であり、全単量体混合物中、好ましくは20重量%までの範囲で使用される。
したがって、諸特性を満足させるために、これらの単量体を2種以上を組み合わせてそれぞれ適量の範囲で使用することが好ましい。
【0024】
本発明の共重合体ラテックスの製造方法は、前記の単量体混合物を、下記式(1)〜(4)で表される化合物の少なくとも1種の存在下で、乳化共重合する点に特徴を有する。
【0025】
式(1)
【化13】
式中、R1はアルキル基またはハロゲン原子を表し、nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合は、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、Wは−NH−C(R3)(R4)−を表し、その窒素原子がベンゼン環の炭素原子と結合している。R3及びR4は水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。lは2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等の重合体を示すための整数であり、2〜8を表す。
【0026】
R1のアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を含む。具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。また、R1のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。R1は、アルキル基であることが好ましい。
R2の炭素数1〜6の低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基が挙げられる。この中でも、メチル基が好ましい。
R3及びR4の炭素数1〜6の低級アルキル基も、R2の低級アルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0027】
式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体が挙げられる。
【0028】
式(2)
【化14】
式中、R5はアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上の場合はR5は同一でも異なっていてもよい。pは1または2を表し、R6は2級アミノ基または3級アミノ基を表す。
【0029】
R5としては、R1で挙げたアルキル基またはハロゲン原子と同様のものを挙げることができる。
R6の2級アミノ基は、アミノ基の水素原子のうち1つが炭素数(C)1〜4のアルキル基、C3〜6の環状アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基によって置換されたものである。2級アミノ基としては、C1〜6のアルキルアミノ基もしくはC5又は6の環状アルキルアミノ基が好ましい。具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などが挙げられるが、t−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基が好ましい。
R6の3級アミノ基は、アミノ基の水素原子の2つが置換基によって置換されたものである。2つの置換基が一緒に環状構造を形成してもよい。置換基は、2級アミノ基で例示したものと同様である。具体的には、ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基、モルホリノ基等が挙げられる。これらの中では、モルホリノ基が好ましい。
【0030】
式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドが挙げられる。
【0031】
式(3)
【化15】
式中、R7及びR8は炭素数4〜8の3級アルキル基を表し、 R9、R10、R11及びR12は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0032】
R7及びR8は炭素数4〜8の3級アルキル基であり、例えば、t−ブチル基、t−アミル基などを挙げることができる。
R9、R10、R11及びR12は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などを挙げることができる。
R9及びR10はメチル基又はエチル基であることが好ましく、R11及びR12は水素であることが好ましい。
【0033】
式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0034】
式(4)
【化16】
式中、R13及びR14は3級アルキル基を表し、R15及びR16は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。
Yは、硫黄原子または
【化17】
を表す。R17及びR18は、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0035】
R13及びR14はR7と同様の3級アルキル基を有し、R15及びR16はR2と同様の炭素数1〜6の低級アルキル基を有する。
R17及びR18は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基を挙げることができる。
【0036】
式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(3−エチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0037】
式(1)〜(4)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
式(1)〜(4)で表される化合物の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜2重量部、より好ましくは0.05〜1重量部である。この使用量が少ないと所期の目的を達成することができず、逆に、多いと接着強度が低下する。
【0039】
また、式(1)〜(4)で表される化合物のほかに、式(5)又は(6)で表される化合物の少なくとも1種を併用することが好ましい。
式(5)
【化18】
式中R19及びR20は3級アルキル基を表す。3級アルキル基は、R7で例示した基と同様である。
【0040】
式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンが挙げられる。
【0041】
式(6)
【化19】
式中、R21、R25は炭素数4〜8の3級アルキル基を表し、R22〜R24は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数4〜8の3級アルキル基はR7と同様であり、炭素数1〜8のアルキル基はR9と同様である。
【0042】
式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。
【0043】
式(5)または(6)で表される化合物を併用する場合の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜0.2重量部、好ましくは0.03〜0.09重量部である。
【0044】
本発明においては、式(1)〜(6)で表される化合物と公知の連鎖移動剤とを併用してもよい。
併用できる連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのメルカプタン類;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのジスルフィド類;テルピノーレン、α−ピネン、β−ピネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、ミルセン、ジペンテンなどのテルペン類;ペンタフェニルエタンなどの炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、α−メチルスチレンダイマー、1,4−シクロヘキサジエン;3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ヘキセンニトリル、2−メチル−3−ペンテンニトリル、3−メチル−3−ペンテンニトリル、4−メチル−3−ペンテンニトリル、2−エチル−3−ブテンニトリル、2,3−ジメチル−3−ブテンニトリル、3−シアノシクロペンテン、3−シアノシクロヘキセン、フェニルアセトニトリル、2−フェニルプロピオニトリルなどのニトリル類;などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて併用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく使用できる。
【0045】
公知の連鎖移動剤を併用する場合の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。
【0046】
本発明において、乳化重合の方法とその条件については、上記の点を除き、特に限定はなく、従来公知の方法が採用できる。
【0047】
単量体混合物の添加方法としては、反応容器に、全量を一括して添加する方法、重合の進行にしたがって連続的または断続的に添加する方法、単量体混合物の一部を一括して添加して重合した後、残余の単量体混合物を一括ないしは連続的または断続的に添加して重合する方法など、いずれの方法でもよい。連続的または断続的に添加される単量体混合物の組成は、重合中、同一であっても、あるいは変化しても構わない。
【0048】
連鎖移動剤の添加方法についても特に限定はなく、一括添加方式、分割添加方式、連続添加方式、あるいはこれらを組み合わせた方式のいずれでもよい。
【0049】
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプルピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチルなどのアゾ化合物;過酸化水素などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの重合開始剤は、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
【0050】
重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
【0051】
乳化剤としては、特に限定されず、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等のノニオン性界面活性剤;アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩、リン酸エステル塩を、カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム塩を持つ両性界面活性剤;などが挙げられる。なかでも、アニオン性界面活性剤が好ましく使用できる。これらの乳化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。
【0052】
本発明においては、以上のほかに、キレート剤、無機塩、pH調整剤などが適宜使用できる。これらの種類は、特に限定されるものではなく、公知のものが使用できる。
【0053】
重合温度は、通常、0〜100℃、好ましくは40〜90℃である。
重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。重合反応の停止は、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして行うことができる。
【0054】
重合反応を停止した後、得られた共重合体ラテックスは、通常、未反応単量体の除去を行い、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基を用いて所望のpHに調整される。また、濃縮を行って所望の固形分濃度に調整することもできる。さらに、必要に応じて共重合体ラテックスには、防腐剤、安定化剤、分散剤等を添加することができる。
【0055】
本発明の方法は、数平均粒子径が20〜200nm、好ましくは30〜120nmの共重合体ラテックスの製造に好適であり、また、テトラヒドロフラン(THF)不溶解分が30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%の共重合体のラテックスを製造するのに好適である。
【0056】
本発明の方法で製造される共重合体ラテックスは、例えば、紙塗工用バインダー、不織布用バインダー、カーペットバッキング用バインダー、タイヤコード用バインダー、樹脂フィルム用バインダー、紙含浸用バインダー、布含浸用バインダー、塗料用バインダー、インク用バインダー、樹脂改質用ラテックスなどとして好適に使用でき、なかでも、紙塗工用のバインダーとして特に好適に使用できる。
【0057】
本発明の紙塗工用共重合体ラテックスは、前記の方法で得られる。
紙塗工用組成物は、顔料および本発明の紙塗工用共重合体ラテックスからなる。紙塗工用共重合体ラテックスの使用量は、顔料100重量部に対して、固形分として、好ましくは4〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部である。この範囲で使用すると、表面強度と耐ブリスター性のバランスに優れる塗工紙が得られる。
【0058】
顔料としては、紙塗工の分野で通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、クレイ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、サチン白などの無機顔料;プラスチックピグメントやバインダーピグメントなどとして知られる有機顔料;などが挙げられる。顔料は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
紙塗工用組成物のバインダーとしては、例えば、澱粉、カゼイン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールなどの水溶性バインダー;ポリ酢酸ビニル系ラテックス、ポリアクリル酸エステル系ラテックスなどのエマルジョン系ラテックス;などを併用することもできる。
【0060】
紙塗工用組成物には、分散剤、増粘剤、染料、着色顔料、蛍光染料、消泡剤、防腐剤、耐水化剤、滑剤、着肉向上剤、保水剤などの添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0061】
紙塗工用組成物を、原紙に塗工し、乾燥することにより塗工紙が得られる。原紙としては、特に限定されず、もちろん板紙なども含まれる。塗工方法についても、限定されず、例えば、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター等の各種塗工設備を用いて塗工することができる。得られた塗工紙を、さらにスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダーなどの仕上げ装置を通すことにより、塗工紙表面の光沢や平滑性を向上させることもできる。
【0062】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、これらの例中の部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0063】
共重合体ラテックスおよび塗工紙の評価は以下のように行なった。
(ラテックス粘度)
pH8、固形分濃度50%の共重合体ラテックスの粘度を、25℃で回転式粘度計を用いて測定した。この粘度が300mP・s以上であると、ラテックスの移送がし難くなり、移送効率が低下する。
(数平均粒子径)
得られた共重合体ラテックスを、透過型電子顕微鏡(日立製作所製:H7500)を使用して、ラテックス粒子の200個の粒子径を測定し、その数平均値を求めた。
【0064】
(THF不溶解分)
水平に保たれたガラス板に、乾燥後のフィルムの厚さが約2mmとなるように、共重合体ラテックスを流延し、温度23℃、相対湿度65%に保たれた恒温恒湿室内で48時間自然乾燥させる。得られたフィルムを2mm×2mmに裁断し、その約0.3gを箱型の80メッシュ金網(重量:Ag)に精秤(重量:Bg)して入れる。これをガラスビーカーに入れ、テトラヒドロフラン100mlを注ぎ込んで室温で48時間静置する。48時間静置後、金網を引き上げて、あらかじめ重量を測っておいたアルミ皿(重量:Cg)にのせて、ドラフト内で4時間放置する。この後、アルミ皿ごと105℃の乾燥機内で3時間乾燥させ、アルミ皿ごと乾燥重量(重量:Dg)を測定する。THF不溶解分は次式により計算する。
THF不溶解分(%)=(D−C−A)×100/B
【0065】
(共重合体ラテックスの色調)
pH8、固形分濃度50%の共重合体ラテックスの色調を目視で判断した。乳白色のものを○で表し、着色している場合はその色調で表す。
(耐ブロッキング性)
上質紙に共重合体ラテックスを塗布乾燥した後、塗布面にラシャ紙を重ねて、温度80℃、線圧300N/cmの条件でカレンダー処理を行った。その後、ラシャ紙を剥し、その剥離状態を5点法で評価する。点数の高いものほど耐ブロッキング性が高い。
【0066】
(ドライピック強度)
印刷インク(タック値20)0.4cm3をRIテスター(明石製作所製)のゴムロールに付着させた後、このRIテスター(明石製作所製)を用いて塗工紙に4回重ね刷りした。紙面の剥がれ(ピッキング)状態を観察し5点法で評価し。点数の高いものほどドライピック強度が高い。
【0067】
(ウェットピック強度)
塗工紙に、モルトンロールで水を塗布し、次に印刷インク(タック値14)0.4cm3をゴムロールに付着させたRIテスターを用いてベタ刷りした。紙面の剥がれ(ピッキング)状態をドライピック強度の評価方法と同様にして5点法で評価した。点数の高いものほどウェットピック強度が高い。
【0068】
(耐ブリスター性)
RI印刷試験機を用いて塗工紙の両面に、それぞれ、印刷インク(大日本インキ化学工業(株)製、Web Zett黄)0.3cm3をベタ刷りした。この塗工紙を温度25℃、相対湿度65%の雰囲気下に12時間放置した後、適当な大きさに裁断して試験片とした。この試験片を、5℃刻みの所定温度に加熱したシリコンオイルバスに浸漬して、ブリスターが発生する最低温度を測定した。この温度が高いほど、耐ブリスター性に優れる。
【0069】
(カルモアΣ上昇値)
20cm四方に切断した塗工紙を、内容積100mlのガラス容器に入れ、蓋で密封した。これを40℃の恒温槽に4時間静置した後、取り出し、蓋を外して、ガラス容器内部のカルモアΣ値の最大値を携帯型におい測定装置(KALMOR−Σ:株式会社カルモア製)を用いて測定した。
このカルモアΣ値の最大値から別途測定した測定室内のカルモアΣ値を減じて、カルモアΣ上昇値を計算した。この数値が小さいほど臭気成分が少なく、概ね200以下であれば、不快な臭気として感知されない。
【0070】
(実施例1)
撹拌機付き耐圧容器に、水26部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.1部、重炭酸ソーダ0.1部、スチレン10部、メタクリル酸メチル5部、アクリロニトリル8部、1,3−ブタジエン25部、イタコン酸1部、アクリル酸1部、t−ドデシルメルカプタン0.2部および2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(ノクラック224;大内新興化学工業(株)製)0.065部を添加し、攪拌して単量体エマルジョンIを調製した。
別の撹拌機付き耐圧容器に、水22部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.1部、重炭酸ソーダ0.1部、スチレン20部、メタクリル酸メチル5部、アクリロニトリル10部、1,3−ブタジエン14部、アクリル酸1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部および2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体0.065部を添加し、攪拌して単量体エマルジョンIIを調製した。
【0071】
撹拌機付き耐圧反応容器に、水80部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩0.1部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5部、シードラテックス(固形分)3部および過硫酸カリウム0.5部を仕込み、65℃に昇温した。ここで、シードラテックスは、1,3−ブタジエン36部、スチレン50部、メタクリル酸メチル10部およびメタクリル酸4部を乳化共重合した数平均粒子径35nmのものを使用した。
反応温度を65℃に保持したまま、単量体エマルジョンIを2時間に亘り反応容器に連続的に添加し、次いで単量体エマルジョンIIを2.5時間に亘り反応容器に連続的に添加した。添加終了後、90℃に昇温し、さらに4時間反応させた後、室温まで冷却して重合反応を停止した。
得られた共重合体ラテックスに水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体を除去した。次いで、固形分濃度50%、pH8に調整し、共重合体ラテックスAを得た。共重合体ラテックスAの特性値を測定し、その結果を表1に示す。
【0072】
前記共重合体ラテックスAを固形分として10部、1級クレー(エンゲルハルド社製、ウルトラホワイト90)40部、2級クレー(エンゲルハルド社製、ウルトラコート)30部、重質炭酸カルシウム(イメリス ミネラルズ ジャパン社製、Carbital−90)30部、分散剤(東亜合成社製、アロンT−40)0.2部、水酸化ナトリウム0.15部及び酸化デンプン3部を混合して攪拌し、固形分濃度65%、pH10に調整して紙塗工用組成物を得た。
この紙塗工用組成物を上質紙に塗工量が片面あたり15g/m2となるように両面に塗工し、それぞれ、塗工直後に120℃の熱風で10秒間乾燥した。両面に塗工された塗工紙を、温度20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室内に一夜放置した。その後、温度50℃、線圧100Kg/cmの条件で2回スーパーカレンダー処理を行って塗工紙を得た。この塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0073】
(実施例2〜8)
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体0.13部を、表1に示す化合物または混合物の添加量に変更する以外は、実施例1と同様に乳化共重合して共重合体ラテックスB〜Hを得た。なお、各化合物は、表1に示す量の半量を、それぞれ単量体エマルジョンIおよびIIに添加した。共重合体ラテックスB〜Hの特性値を測定し、結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、それぞれ共重合体ラテックスB〜Hを用いる以外は、実施例1と同様に塗工紙を得た。塗工紙の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1〜4)
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体0.13部を、表1に示す化合物または混合物の添加量に変更する以外は、実施例1と同様に乳化共重合して共重合体ラテックスI〜Lを得た。なお、各化合物は、表1に示す量の半量を、それぞれ単量体エマルジョンIおよびIIに添加した。共重合体ラテックスI〜Lの特性値を測定し、結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、それぞれ共重合体ラテックスI〜Lを用いる以外は、実施例1と同様に塗工紙を得た。塗工紙の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0075】
(比較例5)
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を使用せずに、単量体エマルジョンIにおけるt−ドデシルメルカプタンの量を0.4部に、また、単量体エマルジョンIIにおけるt−ドデシルメルカプタンの量を0.8部に変更する以外は、実施例1と同様に乳化共重合して共重合体ラテックスMを得た。共重合体ラテックスMの特性値を測定し、結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスMを用いる以外は、実施例1と同様に塗工紙を得た。塗工紙の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から以下のようなことがわかる。
t−ドデシルメルカプタンとα−メチルスチレンダイマーを併用して得られた比較例1の共重合体ラテックスIは、ラテックス粘度が高く、この共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、不快な臭気を有している。
t−ドデシルメルカプタンと2,6−ジアミルハイドロキノンを併用して得られた比較例2の共重合体ラテックスJは、ラテックス粘度が高い上に色調も悪い。
【0078】
t−ドデシルメルカプタンと2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを併用して得られた比較例3の共重合体ラテックスKは、ラテックス粘度が高く、この共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、表面強度に劣る。
t−ドデシルメルカプタンとハイドロキノンモノメチルエーテルを併用して得られた比較例4の共重合体ラテックスLは、色調が悪く、この共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、表面強度と耐ブリスター性のバランスに劣る。
t−ドデシルメルカプタンでTHF不溶解分を調節した比較例5の共重合体ラテックスMを用いて製造した塗工紙は、表面強度と耐ブリスター性のバランスに劣る。
【0079】
これらの比較例に比べ、本発明で規定する範囲内で製造した共重合体ラテックスA〜Hは、低粘度で色調も良好であり、これらの共重合体ラテックスを用いて製造した塗工紙は、表面強度と耐ブリスター性のバランスに優れており、不快な臭気も極めて少ないといえる。
【発明の効果】
本発明によれば、連鎖移動剤としてハロゲン化炭化水素を使用しなくても、低粘度の比較的小粒子径の共重合体ラテックスが得られ、該共重合体ラテックスを紙塗工組成物に用いた場合に、接着強度と耐ブリスター性のバランスに優れ、不快な臭気の発生が極めて少ない塗工紙を与え得る共重合体ラテックスの製造方法および紙塗工用に好適な共重合体ラテックスが提供される。
Claims (3)
- 共役ジエン単量体10〜89.5重量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜20重量%およびこれらの単量体と共重合可能なその他の単量体10〜89.5重量%からなる単量体混合物100重量部を、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物0.01〜5重量部の存在下に乳化共重合することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法。
式(1)
式(2)
式(3)
式(4)
Yは、硫黄原子または
- 請求項1または2記載の製造方法によって得られる紙塗工用共重合体ラテックス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002354653A JP2004182943A (ja) | 2002-12-06 | 2002-12-06 | 紙塗工用共重合体ラテックスおよび共重合体ラテックスの製造方法 |
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