JP2004175666A - オニウム塩 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】例えば、トリメチルプロピルアンモニウム−シアン化トリフロロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−シアン化トリフロロボレートのような、下記一般式(I)
(CN)aX4−aB− ・Z+ (I)
(式中、Xはハロゲン原子であり、aは1〜3の整数であり、Z+は有機オニウムカチオンであり、aが2以下のときにはXは互いに異なっていてもよい。)
で示されるオニウム塩。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一次もしくは二次のリチウム電池、色素増感型太陽電池、電気二重層キャパシタ、表示素子等の電気化学デバイスあるいは電析浴、更には化学合成の媒体として利用可能なオニウム塩に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年多く用いられるようになったリチウム一次電池、リチウム二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、エレクトロクロミック表示素子、あるいは将来的な実用化に向けて種々に検討がなされている色素増感型太陽電池などの電気化学デバイスにおける非水系の電解液としては、電解質をエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、あるいはアセトニトリル等の有機溶媒に溶解させた溶液が用いられてきた。しかし、これらの電解質溶液に用いられる有機溶媒は揮発しやすく、またそれ自体が可燃性を有す化合物であることから、長期の信頼性、耐久性、および安全性に問題がある。
【0003】
そこで電解質として有機溶媒を用いず、常温で液状であるオニウム塩を電解質として応用することが提案され、種々検討されている。例えば1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンと、ビストリフルオロメタンスルホン酸アミドアニオンからなるオニウム塩は、周囲温度で液状であり、高いイオン伝導率を示すことが示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】
特開平8−259543号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまで電解質として利用可能であることが知られているオニウム塩は少なく、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸アミド、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸等の極限られたアニオンを有するオニウム塩が報告されているだけであり、その性能の範囲も自ずと限定されているのが現状である。そこで、電解質を使用する電気化学的デバイスの分野においては、種々の用途に合った物性、具体的には、室温で液状であり、かつ高いイオン伝導度をもつ新たな有機オニウム塩の開発が求められていた。
【0005】
特に、リチウム電池用の電解質において要求される、Li+/Liに対して4V以上の電気化学安定特性および10mScm−1以上の高いイオン伝導度をもつ有機オニウム塩が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく、オニウム塩を構成するアニオンとカチオンのうち、これまで検討があまりされていないアニオンの構造について、その特性との相関性に関して鋭意検討を行なった。その結果、これまでオニウム塩のアニオンとして知られていない特定の非対称アニオンを有する新規なオニウム塩は、これまでに報告されているトリフルオロメタンスルホン酸イミド、テトラフロロボラン等のアニオンを有するオニウム塩と比べて同等以上の電気化学安定性を有し、より高い電気伝導度を持つという新たな知見を得た。そして、更に検討を行なった結果、上記アニオンを有する他のオニウム塩も非水電解液用の電解質として使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、 下記一般式(I)
(CN)aX4−aB− ・Z+ (I)
(式中、Xはハロゲン原子であり、aは1〜3の整数であり、Z+は有機オニウムカチオンであり、aが2以下のときにはXは互いに異なっていてもよい。)
で示されるオニウム塩である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のオニウム塩は、下記式(IV)
(CN)aX4−aB− (IV)
で示される非対称アニオンをアニオン成分として有することを最大の特徴とする。
【0009】
ここで、CNはシアノ基であり、該基の数を表すaは1〜3の整数である。
【0010】
前記一般式におけるXは、ハロゲン原子である。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、電気化学的耐酸化性及びイオン伝導度が共に高いという理由からXはフッ素原子であるのが好適である。例えば、トリメチルプロピルアンモニウム・シアン化トリフロロボレートは、常温で液体でありLi+/Liに対して0.4〜5.5V以下で安定であり、かつ電気伝導度は13mScm−1と非常に高い。
【0011】
本発明のオニウム塩における好適な上記非対称アニオンを具体的に例示すれば、シアン化トリフロロボレート、ジシアン化ジフロロボレート、トリシアン化フロロボレート等を挙げることができる。上記アニオンを含むオニウム塩は、イオンが小さいほどイオン移動度が増し、良好な性質を発現するため、上記アニオンの中でも、シアン化トリフロロボレートアニオンが最も好適である。
【0012】
本発明のオニウム塩における有機オニウムカチオン{前記一般式(I)におけるZ+}は、窒素、硫黄、酸素、リン、セレン、錫、ヨウ素、アンチモン等の孤立電子対を有する元素を含んだ化合物に陽イオン型の原子団が配位して生ずる少なくとも一つの有機基を有するカチオンであれば特に制限されるものではない。
【0013】
有機オニウムカチオンのなかでも、耐還元性が高い点で、Z+で示される有機オニウムイオンが、下記一般式(II)
R1R2R3R4N+ (II)
(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR1、R2、R3及びR4のうちの2つ又は3つが結合して環を形成していてもよい。)
で示されるカチオン、又は下記一般式(III)
R1R2R3R4P+ (III)
{式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ前記一般式(II)におけるR1、R2、R3及びR4と同義である。}
で示されるカチオンであることが好ましい。
【0014】
上記式(II)又は(III)において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR1、R2、R3及びR4のうちの2つ又は3つが結合して複素環を形成していてもよい。
【0015】
当該炭化水素基としては特に制限されず、公知の如何なる炭化水素基でもよいが、炭素数が多いほど融点と粘度が高くなる傾向にある為、炭素数1〜10の炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
当該炭化水素基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状のアルキル基;アリル基、2−ブテニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;フェニル基、アントラニル基等の炭素数6〜10のアリール基;トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等のアルキル基で置換された炭素数7〜10(アルキル基の有す炭素原子も含む)のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等が例示される。
【0017】
これら炭化水素基のなかでも、オニウム塩の融点が低く、電気化学的耐還元性が高い点で炭素数1〜6の直鎖又は分枝状のアルキル基が好ましい。
【0018】
また、これらのR1、R2、R3及びR4は、そのうちの2つ又は3つが結合して環(窒素原子又はリン原子を含むため、必然的に複素環となる)を形成していてもよい。形成される複素環も特に限定されるものではなく飽和複素環でも芳香族複素環でも良い。飽和複素環としては、ピロリジン環、ピペリジン環等の含窒素複素環類やペンタメチレンフォスフィン環等の含リン複素環類等の単環類;キヌクリジン環等の窒素原子が橋頭位となる橋かけ環類等が例示され、芳香族環としてはピロール環、ピリジン環、イミダゾール環等が例示される。
【0019】
飽和複素環が形成される際に、その複素環がピロリジン環、ピペリジン環等の単環である場合には、その環の構成原子(窒素原子又はリン原子を含む)数が8以下の環であることが好ましく、6員環又は5員環であることがより好ましい。他方、キヌクリジン環等の橋かけ環である場合には、もっとも大きな環が8員環より小さいことが好ましく、6員環より小さいことがより好ましい。
【0020】
前記一般式(II)で示されるカチオンを具体的に例示すると、R1、R2、R3及びR4がいずれもアルキル基であるものとして、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン等の対称アンモニウムカチオン類(R1、R2、R3及びR4がいずれもの同一のアンモニウムカチオン類);エチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリエチルイソプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルイソプロピルアンモニウムカチオン、ブチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、オクチルトリメチルアンモニウムカチオン、ドデシルトリメチルアンモニウムカチオン、ジメチルジプロピルアンモニウムカチオン等の非対称アンモニウムカチオン類(R1、R2、R3及びR4の少なくとも一つが他と異なるアンモニウムカチオン類)が例示される。
【0021】
またR1、R2、R3及びR4のうちの2つが結合して飽和複素環を形成しているものとして、N、N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−エチルピロリジニウムカチオン等が例示され、R1、R2、R3及びR4のうちの3つが結合して飽和複素環を形成しているものとして、N−メチルキノクリジウムカチオン等が例示される。
【0022】
R1、R2、R3及びR4のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン等の対称イミダゾリウムカチオン類(R1、R2、R3及びR4のうちの環を構成していない残る2つが同一のイミダゾリウムカチオン類);1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−tert−ブチル−3−イソプロピルイミダゾリウムカチオン等の非対称イミダゾリウムカチオン類(R1、R2、R3及びR4のうちの環を構成していない残る2つが異なるイミダゾリウムカチオン類);N−エチルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン類等が例示される。
【0023】
これら一般式(II)で示されるカチオンのなかでも、オニウム塩が低融点であることを重視すると、R1、R2、R3及びR4がいずれもアルキル基であるアンモニウムカチオン類であるか、R1、R2、R3及びR4のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものが好ましい。そのなかでもイオン伝導度が高い点で、アルキル基が何れも炭素数が1〜3のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0024】
また、高いイオン伝導度を有する点を重視すると、R1、R2、R3及びR4のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものが好ましく、特に耐還元性も良好であり、かつ、イオン伝導度も良好である点でイミダゾリウムカチオン類であることが好ましく、非対称イミダゾリウムカチオンであることがより好ましく、R1、R2、R3及びR4のうちの残る2つが炭素数3以下のアルキル基であるの非対称イミダゾリウムカチオンが最も好ましい。
【0025】
他方、耐還元性に優れていることを重視する場合には、R1、R2、R3及びR4のうちの2つ又は3つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましく、さらにそのなかでもオニウム塩が低融点であることから、R1、R2、R3及びR4のうちのいずれか2つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましい。
【0026】
前記一般式(III)で示されるカチオンを具体的に例示すると、R1、R2、R3及びR4がいずれもアルキル基であるものとして、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン等の対称ホスホニウムカチオン類;トリメチルエチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、ヘキシルトリメチルホスホニウムカチオン、トリメチルオクチルホスホニウムカチオン等の非対称ホスホニウムカチオン類が挙げられる。
【0027】
これら一般式(III)で示されるカチオンのなかでも、オニウム塩が低融点であることを重視すると、R1、R2、R3及びR4がいずれもアルキル基であるホスホニウムカチオン類が好ましく、そのなかでもイオン伝導度が高い点で、アルキル基が何れも炭素数が1〜3のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0028】
また耐還元性に優れていることを重視する場合には、R1、R2、R3及びR4のうちの2つ又は3つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましく、さらにおのなかでもオニウム塩が低融点であることから、R1、R2、R3及びR4のうちのいずれか2つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましい。
【0029】
電気化学的安定性および電気伝導度が高く、更に融点が低く、電気化学デバイス用電解質として特に好適な本発明のオニウム塩を具体的に例示すると、トリメチルプロピルアンモニウム−シアン化トリフロロボレート(融点 17℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−シアン化トリフロロボレート(融点−18℃)を挙げることができる。
【0030】
本発明のオニウム塩を製造する方法は特に制限されるものではないが、好ましくは、前記一般式(IV)に示される非対称アニオンの金属塩と、アニオンとしてハロゲンイオンを持つ有機オニウム塩(有機オニウムカチオンのハロゲン塩)とを混合する塩交換法を挙げることができる。
【0031】
塩交換法に用いられる非対称アニオンの金属塩において、好適に用いられる金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属類等を挙げることができる。中でも、イオン交換の容易さから、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類が好適に用いられる。さらには、原料となる金属塩の吸湿性の低さより、カリウムが特に好適に用いられる。
【0032】
塩交換法に用いられる有機カチオンのハロゲン塩において、ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、沃素を特に制限無く用いることができるが、塩交換の容易さから、塩素、臭素、沃素が好適に用いられる。さらには、塩交換後に副生する無機塩の除去の容易さから、非対称アニオンの金属塩の金属と同周期のハロゲンを選択するのが好適である。
【0033】
これら非対称アニオンの金属塩、及び有機オニウムカチオンのハロゲン塩の合成方法は特に制限されるものではなく、公知の方法に従って合成すればよい。
【0034】
塩交換反応は一般に溶媒中で行われる。溶媒は特に制限されるものではないが、具体的に例を挙げて説明すると、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類等の有機溶媒及び水を挙げることができる。中でも、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、水等の比誘電率が10以上の溶媒が、原料である非対称アニオン金属塩及び有機カチオンハロゲン塩の溶解度が高く、好適に用いることができる。
【0035】
塩交換の反応は、特に制限されるものではなく、加熱下、冷却下、加圧下、減圧下、常圧下で行うことができ、通常は、常圧下、室温条件で、反応時間数分〜10時間程度で十分進行にする。イオン交換を行った後、副生する無機塩を除去し、目的物を単離すればよい。例えば、無機塩を水層に抽出した後に溶媒を除去する方法、無機塩を析出させて濾別した後に溶媒を除去する方法、無機塩を溶解させさらに目的の有機塩を結晶化させ濾取する方法等により好適に単離することができる。また、単離されたオニウム塩が水分を含む場合には、必要に応じて濃縮、共沸脱水等を行うことで乾燥すればよい。
【0036】
この様にして得られた本発明のオニウム塩は、一般に低融点で高イオン伝導性を示すため、1次及び2次Li電池用電解質、湿式太陽電池用電解質、キャパシタ用電解質、エレクトロクロミック表示素子用電解質、メッキ用電解質、反応用溶媒等に好適に用いられる。また、この様なオニウム塩から成る電解質を用いて、Li電池、湿式太陽電池、キャパシタ、エレクトロクロミック素子等の電気化学デバイスを構成することにより、低温特性の良好な電気化学デバイスを構築することもできる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(1)NMR測定
試料10〜20mgを約1mlのジメチルスルフォキシド−d6(標準物質として1−トリフルオロメチルベンゼン含有)に溶解し日本電子製核磁気共鳴装置JNM−LA500により13C、19F核を測定した。13C−NMRスペクトルの化学シフト値はジメチルスルフォキシド−d6のピークのテトラメチルシランのピーク0ppmに対するシフト値39.7ppmを、19F−NMRスペクトルの化学シフト値はCFCl3のピーク0ppmに対する1−トリフルオロメチルベンゼンの化学シフト値−64ppmを標準として決定した。
【0039】
(2) 耐電圧測定
実施例1から12ならびに比較例1から6の各塩について、北斗電子株式会社製CV測定装置HSV−100を用いて、掃引速度10mVsec−1でサイクリックボルタモグラムを作成し、これに基づいて各塩の酸化電位を求めた。電位は、ヨウ素カップル(I−/I3 −)参照電極(EMI−TFN塩に15mM I2、60mMヨウ化テトラプロピルアンモニウム塩を溶解させたものに白金線を侵漬させたもの)に対する電位として求めた。なお、サイクリックボルタモグラムにおいて電流密度1mAcm−2以上流れる電位の高位側を酸化電位として求めた。
【0040】
実施例1
トリフロロボラン・ジエチルエーテラート14.2gにKCN6.5gを加え、50℃で5時間還流後、減圧濃縮し白色固体13.0gを得た。この白色固体13.0gと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド14.7gをグローブボックス内、窒素雰囲気下、相対湿度10%以下の状態で秤量し、イオン交換水50mlに溶解させ、さらに、塩化メチレン100mlを加えて抽出し、有機層をイオン交換水50mlで2回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、10.2gの無色透明液体(シアン化トリフロロボレート・1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・塩)を得た。(融点−21.7℃) 13C−NMR化学シフト値(ppm):19.0、36.1、44.7、114.1、122.7、134.4、139.2、19F−NMR:−126.9ppm(s)。
【0041】
この液体の25℃におけるイオン伝導度を測定したところ、11.3mS/cmであった。また、5.4(V vs Li+/Li)以下の電位では酸化分解されなかった。
【0042】
実施例2〜3
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドの代わりに表1に示す化合物を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、表1に示す化合物を得た。得られたオニウム塩はいずれも25℃において液体であり、またこれらの塩は5.4(V vs Li+/Li)以下の電位では酸化分解されなかった。得られたオニウム塩のNMR分析結果及び25℃におけるオニウム塩のイオン伝導度を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
比較例1
テトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレート塩(Aldrich社)は、白色の粉末で固体であるためにイオン伝導度は測定できなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、電気化学的デバイスの電解質や化学合成の溶媒等として使用可能な新規なオニウム塩を提供するものである。上記本発明のオニウム塩は、電気化学的安定性(特に耐酸化性)が高く、液体を示す温度範囲が広いという特徴に加え、従来のオニウム塩と比べて電気伝導度(イオン伝導度)が高いという特徴を有する。
Claims (4)
- 下記一般式(I)
(CN)aX4−aB− ・Z+ (I)
(式中、Xはハロゲン原子であり、aは1〜3の整数であり、Z+は有機オニウムカチオンであり、aが2以下のときにはXは互いに異なっていてもよい。)
で示されるオニウム塩。 - Z+で示される有機オニウムカチオンが、下記一般式(II)
R1R2R3R4N+ (II)
(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR1、R2、R3及びR4のうちの2つ又は3つが結合して環を形成していてもよい。)
で示されるカチオン、又は下記一般式(III)
R1R2R3R4P+ (III)
{式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ前記一般式(II)におけるR1、R2、R3及びR4と同義である。}
で示されるカチオンである請求項1に記載のオニウム塩。 - 請求項1又は2に記載のオニウム塩を用いた非水電解液用電解質。
- 請求項3記載の電解質を用いることを特徴とする電気化学的デバイス。
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