JP2004084463A - 伸縮継手装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度変化や車両走行等に起因する橋桁間の変位を吸収すると共に、路面の段差の発生を抑えて路面の平坦性を確保することができる、簡易で安価な伸縮継手装置を提供する。
【解決手段】伸縮継手装置10は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁の対向端部に設けた収容凹部2aに嵌合されアンカー16により固定された一対の支持層11と、その上面に橋桁2間の隙間である遊間3を跨いでかつ敷設された保持シート12、その上に遊間3を跨いで配設された多孔質弾性体層である第1伸縮層13と、その上面に重ね合わされた低充填砂利入りウレタンモルタルの第2伸縮層14とを備えている。第1伸縮層は、弾性骨材と、樹脂バインダーと、硬質骨材を含んでいる。アスファルト舗装と第2伸縮層の上面には、アスファルト製の路面表層15が敷設されている。
【選択図】 図1
【解決手段】伸縮継手装置10は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁の対向端部に設けた収容凹部2aに嵌合されアンカー16により固定された一対の支持層11と、その上面に橋桁2間の隙間である遊間3を跨いでかつ敷設された保持シート12、その上に遊間3を跨いで配設された多孔質弾性体層である第1伸縮層13と、その上面に重ね合わされた低充填砂利入りウレタンモルタルの第2伸縮層14とを備えている。第1伸縮層は、弾性骨材と、樹脂バインダーと、硬質骨材を含んでいる。アスファルト舗装と第2伸縮層の上面には、アスファルト製の路面表層15が敷設されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁の一対の橋桁の連結部分にて、橋桁の遊間を跨いで載置される伸縮継手装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の橋梁用の伸縮継手装置は、温度変化や車両走行等に起因する橋桁間の遊間変位を吸収すると共に、路面の段差の発生を抑えて、路面の平坦性を確保することにより、車両の安全かつ円滑な走行を確保する重要な役割を果たしている。ところで、車両の大型化に伴う橋桁への大きな輪荷重の繰返し付加により、伸縮継手装置の損傷の程度も高くなってその製品寿命が短くなっている。そのため、伸縮継手装置の補修や取り替え等の手間が増加し、橋梁の維持管理のコストが増加することが問題となっている。また、伸縮継手装置と路面アスファルトとの弾性差により、車両の通過に伴って継手装置の部分が騒音、振動の発生源となるという問題もある。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1に示すように、長手方向に延びる水平底部片の長手方向両側縁より両側片が立設されて長手方向と直角方向の断面が溝型状に形成され、かつ溝型状部を構成する側片の長手方向一端が開放され、他端が互いに狭められて重ね合させることにより閉縮され、かつ両側片の上端縁から外側下方に向って突出係合片を設けた多数の渡し金具を用いた伸縮継手装置が知られている。この多数の渡し金具が、伸縮遊間を介して隣接するコンクリート床版の対向端部上面に設けた段部に、その溝型状部が上面に開口し、かつその長手方向が橋軸と一致すると共に、その上端が床版上面より下となるように伸縮遊間を跨いで配設され、隣接する渡し金具の一端開放部と他端閉縮部とが交互に位置するようにして渡し金具の両側片が相隣る突出係合片に摺動可能に遊嵌される。さらに、各渡し金具の溝型状部の他端閉縮部がそれぞれ各床版に固定され、ついで段部にアスファルト混合物が床版上面とほぼ面一になるように填装される。さらに、アスファルト混合物及び各床版上に亘って重ね合された中間減摩材層を介してアスファルト混合表層がそれぞれの床版に対してかつ滑動自在なように設けられる。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−26004号公報(第1−2頁、第1図−第5図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記伸縮継手装置においては、多数の鋼製の渡し金具が必要であり、かつこれらを遊間を跨いで組み合わせて配列させる必要があり、材料コスト及び組み付けコストが非常に高価になるという問題がある。特に、橋桁が短く遊間変位も小さい小型橋梁用の簡易な構造で安価な伸縮継手装置として適当ではない。また、この伸縮継手装置は、鋼製の渡し金具を配列したものであるため、車両の通過に伴って発生する騒音、振動を抑制する効果も得られない。
【0006】
本発明は上記した問題を解決しようとするもので、温度変化や車両走行等に起因する橋桁間の変位を吸収すると共に、路面の段差の発生を抑えて、路面の平坦性を確保することができ、さらに車両の通過に伴う振動や騒音を抑制できる簡易で安価な伸縮継手装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、上記請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、橋梁の一対の橋桁の連結部分にて橋桁の遊間を跨いで橋桁上に載置され、橋桁の変動に伴う遊間の変位を吸収できる伸縮層を有する伸縮継手装置であって、伸縮層が、少なくとも弾性骨材と、樹脂バインダーを含む多孔質弾性体層であることにある。
【0008】
上記のように構成した請求項1の発明においては、伸縮層が弾性骨材と樹脂バインダーを含む多孔質弾性体層でありその伸縮率が大きいため、橋桁の変動により大きな遊間変位が生じたとき、それに応じて伸縮層が橋桁上でスムーズに伸縮する。そのため、遊間の変位が伸縮層全体に均一に伝えられ、さらに伸縮層の均一な伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項1の発明においては、路面表層も全体として均一に伸縮することにより、その局部に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、その強度が確保される。さらに、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、車両から伝播する振動を効果的に減衰させることができる。また、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、表面に溜まった雨水等の排水性が高められる。
【0009】
また、上記請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、前記請求項1に記載の伸縮継手装置において、多孔質弾性体層に含まれる弾性骨材が、ひじき状のゴムチップであることにある。このように多孔質弾性体層の弾性骨材がひじき状のゴムチップであることにより、伸縮層の強度が高められると共に、耐久性も高められる。また、ひじき状のゴムチップとして、廃タイヤ等を利用して製造することにより、伸縮層が安価に提供される。
【0010】
また、上記請求項3に記載の発明の構成上の特徴は、前記請求項1又は2に記載の伸縮継手装置において、多孔質弾性体層が、アスファルト混合物を含んだ表層の下側に続いて埋設されており、表層の一部が多孔質弾性体層内に浸透して多孔質弾性体層と一体化していることにある。このように、多孔質弾性体層の上側に、表層が加熱転圧等によって形成されて、その一部が多孔質弾性体層の空隙を通って内部に浸透することにより多孔質弾性体層と一体化し、表層と多孔質弾性体層との間が緊密に接着される。このように、表層と多孔質弾性体層が一体化することによるアンカー効果により、橋桁の伸縮による多孔質弾性体層の伸縮に対して、表層が一体となって均一な伸縮を行うことができる。
【0011】
また、上記請求項4に記載の発明の構成上の特徴は、橋梁の一対の橋桁の連結部分にて橋桁の遊間を跨いで橋桁上に載置され、橋桁の変動に伴う遊間の変位を吸収できる伸縮層を有する伸縮継手装置であって、伸縮層が、硬質ウレタンからなることにある。
【0012】
上記のように構成した請求項4の発明においては、伸縮層が、硬質ウレタンからなり、その伸縮率が大きいため、橋桁の変動により大きな遊間変位が生じたとき、これに応じて伸縮層が橋桁上でスムーズに伸縮する。そのため、遊間の変位が伸縮層全体に均一に伝えられ、さらに伸縮層の均一な伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項4の発明においては、路面表層も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、安価に提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態である橋桁の長さが50m以下で遊間変位も短い小型橋梁用の伸縮継手装置の使用状態を正面図により示したものである。この伸縮継手装置10は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁2の対向端部上面側に断面長方形に切り欠いて設けた収容凹部2aに嵌合されてアンカー16により固定された略断面長方形の一対の支持層11と、支持層11上面に橋桁2間の隙間である遊間3を跨いで敷設された保持シート12、保持シート12上面に遊間3を跨いで配設された多孔質弾性体の厚板である第1伸縮層13と、その上面に重ね合わされた低充填砂利入りウレタンモルタルの厚板である第2伸縮層14とを備えている。橋桁2の上面には、伸縮継手装置10を挟んで面一にアスファルト舗装4が配設されている。アスファルト舗装4及び第2伸縮層14の上面には、薄い伸縮アスファルト製の路面表層15が敷設されている。
【0014】
支持層11は、硬質の砂利入りウレタンモルタルにより形成されている。保持シート12は、剛性の高いワイヤ入りゴムシートあるいは強化繊維シート等であり、遊間3に対応する部分が下側に円弧状に凹んでいる。保持シート12は、支持層11と共にその上面に取付板16aを介してアンカー16により橋桁2に固定されている。
【0015】
第1伸縮層13は、弾性骨材であるひじき状のゴムチップと、樹脂バインダーと、第3の成分材料として硬質骨材である砂を混合成形した多孔質弾性体により構成され、伸縮率が数10%程度と大きくされている。なお、ゴムチップの形状としては、第1伸縮層の強度を高める上でひじき状が好ましいが、その他粒状タイプ、粉状タイプ等も用いられる。弾性骨材としては、天然,合成ゴム等のゴム材料の他に、熱可塑性エラストマー、発泡ポリウレタン等の弾性を有する合成樹脂材料が用いられるが、資源再利用の観点から廃タイヤより作製されるゴムチップが好適に利用される。また、樹脂バインダーについては、ウレタン系が望ましいが、その他エポキシ系バインダー等特に限定しない。硬質骨材は、無機材料として砕石、砂、珪砂、シリカ、ガラス等の窯業材料等が、有機材料としてナイロン、ウレタン等の樹脂材料等の中から少なくとも1種類を選択して用いられる。
【0016】
上記多孔質弾性体の製造方法について説明する。まず、弾性骨材であるひじき状ゴムチップと、ウレタン系バインダーと、硬質骨材である珪砂とを攪拌機にて混合して調整した合材を、例えば空隙率40%になるように計量して、金型内に投入し、加圧状態で加熱することにより形成される。この場合、合材に熱風を吹き付けて透過させることにより、短時間に均一な加圧加熱が行われ、そのため多孔質弾性体本来の特性を有すると共に耐久性も適正に確保される均一な物性の第1伸縮層13が得られる。また、第1伸縮層13を短時間で製造できるので、製造コストを安価にすることができる。
【0017】
第2伸縮層14は、第1伸縮層13に比べて低いが所定の伸縮率を有している。路面表層15は、通常のアスファルトより摩擦係数の低い伸縮アスファルト製の薄板でありその破壊歪が大きくされている。路面表層15としては伸縮アスファルトを用いることが好ましいが、場合によっては、通常のアスファルト、コンクリート、モルタル等を用いることも可能である。
【0018】
上記構成の第1実施形態においては、橋桁2の遊間3を跨いでかつ保持シート12を介して設けられた第1伸縮層13が、多孔質弾性体でありその伸縮率が大きいので、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、遊間変位に応じて均一に伸縮する。さらに、第2伸縮層14も伸縮率が大きくされており、第1伸縮層13に応じて均一に伸縮する。このように、第2伸縮層14の各部分が均一に伸縮するため、第2伸縮層14上の伸縮アスファルト製の路面表層15に伸縮が均一に伝達される。そのため、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15におけるしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。
【0019】
また、第1伸縮層13が多孔質弾性体層であるため、その強度が確保され、第1伸縮層13の信頼性が高められる。さらに、第1伸縮層13が多孔質弾性体層であるため、車両から伝播する振動を効果的に減衰させることができ、交通騒音を大幅に低減する効果が得られる。また、第1伸縮層13が多孔質弾性体層であるため、雨水等の排水性が高められ、路面の滑り摩擦係数が高められる。その結果、降雨時等における車両のスリップ事故等の発生を防止できる。また、伸縮継手装置10は、構造が簡易で安価に提供されるため、特に橋桁が50m以下と短く遊間の最大変位も小さい小規模橋梁用の継手装置として特に好適である。
【0020】
つぎに、第1実施形態の変形例1について説明する。
変形例1においては、図2に示すように、伸縮継手装置20は、保持シート12上の第1伸縮層及び第2伸縮層の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、支持部11上には、低充填砂利入りウレタンモルタルの厚板である一対の第2伸縮層22が配設されて、アスファルト舗装4と面一にされており、一対の第2伸縮層22に挟まれた間の保持シート12上に多孔質ゴム弾性体の厚板である第1伸縮層21が配設されている。アスファルト舗装4、第1及び第2伸縮層21,22の上面には、薄いアスファルト製の路面表層15が敷設されている。
【0021】
これにより、橋桁2の変位により遊間寸法に大きな変化が生じたとき、伸縮率の大きい第1伸縮層21が、橋桁2の長手方向を向いてスムーズかつ均一に伸縮する。また、第2伸縮層22も、第1伸縮層21よりは小さいがスムーズにかつ均一な伸縮が行われる。その結果、第1及び第2伸縮層21,22の伸縮が、路面表層15に均一に伝えられる。その結果、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15におけるしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。
【0022】
また、変形例1においても、第1伸縮層21が多孔質のゴム弾性体層であるため、車両からの振動を効果的に減衰させることができ、交通騒音を低減する効果が得られる。また、第1伸縮層21が多孔質弾性体層であるため、雨水等の排水性が高められ、路面の濡れによる滑り摩擦係数の低下を抑える効果が得られる。
【0023】
また、第1実施形態及び変形例1においては、第2伸縮層14,22は低充填砂利入りウレタンモルタルを用いているが、これに代えて、第1伸縮層13,21と同様に、弾性骨材と樹脂バインダーからなる多孔質弾性体層とすることも可能である。これにより、伸縮継手装置10,20全体として多孔質弾性体層による遊間変位の吸収効果と共に、振動減衰効果及び排水効果が高められる。さらに、路面表層15についても、アスファルトの代りに多孔質弾性体層とすることができる。
【0024】
つぎに、第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態である50m以上の長桁で長遊間の大型橋梁用の伸縮継手装置の使用状態を正面図により示したものである。この伸縮継手装置30は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁2間の隙間である遊間3を跨いでかつ橋桁2に非接着で敷設されたスライド層31と、スライド層31上に重ね合わされて遊間3を跨いで配設されて両端が橋桁2に固定されたシート状の多孔質ゴム弾性体である第1伸縮層32と、その上面に重ね合わされた第2スライド層33と、その上に重ね合わされたシート状の多孔質弾性体である第2伸縮層34と、その上面に重ね合わされたジョイントレスの路面表層35とを備えている。なお、橋桁2の上面には、伸縮継手装置30を挟んでアスファルト舗装4が配設されている。また、配橋桁2の上端側の遊間3には、緩衝ゴム5が橋桁2の対向面に固定して配設されている。緩衝ゴム5は、橋桁2間の衝突を防止すると共に通過する車両による路面表層35、第1及び第2伸縮層32,34の変形を防止するバックアップ部材としても機能する。
【0025】
スライド層31は、摩擦係数の小さいフッ素樹脂製、ステンレス製等の薄板である。第2スライド層33も同様の構成である。第1伸縮層32は、上記伸縮層13と同様に弾性骨材であるひじき状のゴムチップと、樹脂バインダーと、第3の成分材料として硬質骨材である砂を混合成形した多孔質弾性体により構成したものである。第1伸縮層32は、その両端がアンカー等の止具32aによってそれぞれ一対の橋桁2に固定されている。また、第2伸縮層34についても、第1伸縮層32と同様の構造であり、その両端が止具34aによってそれぞれ一対の橋桁2に固定されている。
【0026】
第1伸縮層32及び第2伸縮層34の長手方向両側の橋桁2上には、アスファルト製の側壁層36が敷設されており、その上面が第2伸縮層34上面と面一にされている。第1及び第2伸縮層32,34の止具32a,34aによる固定は、両橋桁2に側壁層36を介して行われる。なお、側壁層36としては、アスファルトの代りに、通常のコンクリート,モルタル等であってもよい。
【0027】
路面表層35は、第2伸縮層34及び側壁層36上面に敷設された、通常のアスファルトより摩擦係数の低い伸縮アスファルト製の厚板である。路面表層35の破壊歪εaは、第2伸縮層34の歪ε2より大きくなるようにされている。路面表層35として、伸縮アスファルトが望ましいが、場合によっては、通常のアスファルト、コンクリート、モルタル等を用いることも可能である。
【0028】
上記構成の第2実施形態においては、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、橋桁2の遊間3を跨いで非接着で敷設されたスライド層31が橋桁2をスムーズに滑る。さらに、スライド層31上を多孔質ゴム弾性体である第1伸縮層32が滑ることにより、遊間3の変位が第1伸縮層32全体に均一に伝えられ、第1伸縮層32が均一に伸縮する。特に、第1伸縮層32は、多孔質弾性体層であるため伸縮率が数10%と高くなっていることにより、第1伸縮層32のスライド層31に対する滑りがスムーズに行われると共に、第1伸縮層32全体の均等な変位がより適正に確保される。
【0029】
さらに、第1伸縮層32上に非接着で敷設された第2スライド層33上を第2伸縮層34が滑ることにより、遊間3の変位が第2伸縮層34全体に均一に伝えられる。第2伸縮層34についても多孔質弾性体層であり伸縮率が大きくなっていることにより、第2伸縮層34の第2スライド層33に対する滑りがスムーズに行われると共に、第2伸縮層34全体の均等な変位がより適正に確保される。このように、第2伸縮層34の各部分が均一に伸縮するため、第2伸縮層34の伸縮が伸縮アスファルト製の路面表層35に均一に伝達される。
【0030】
その結果、路面表層35も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層35のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層32,34が2層の積層構造であり、遊間3の変位による各伸縮層12,14及び路面表層35への変位の伝播が段階的に行われることにより、路面表層35における局部的な歪の発生が一層効果的に抑えられる。
【0031】
また、路面表層35が、伸縮可能な弾性材料である伸縮アスファルトにより構成されていることにより、その破壊歪εaが大きくされる。その結果、第1及び第2伸縮層32,34の長さを小さくして伸縮継手装置10全体の寸法を小さくできるか、あるいは、同じ大きさの伸縮継手装置でより大きな遊間3の最大変位に対応することができる。さらに、第2実施形態によれば、橋桁2の変位により遊間寸法に大きな変化が生じたとき、スライド層31,33と第1及び第2伸縮層32,34によって、路面表層35に伸縮が均一に伝達されるため、伸縮継手装置30は、橋桁が50m以上である長桁であり遊間3の最大変位も大きい大型の橋梁用の継手装置として特に好適である。
【0032】
つぎに、第2実施形態の変形例2について説明する。
変形例2においては、図4に示すように、伸縮継手装置30Aは、第1伸縮層32及び第2伸縮層34の下面側に、遊間3に添って橋軸直角方向に延びた断面三角形の線状溝部37,38を設けたものであり、その他の構成については第2実施形態と同様である。これにより、遊間変位に伴う第1及び第2伸縮層32,34の伸縮が、線状溝部37,38によってさらにスムーズに行われる。また、線状溝部37,38によって、第1及び第2伸縮層32,34に溜まった雨水等が、線状溝部37,38によって非常にスムーズに排水され、伸縮継手装置の排水効果が一層高められる。
【0033】
なお、第2実施形態及び変形例2においては、路面表層35が伸縮アスファルトにより形成されているが、これに代えて、第1及び第2伸縮層32,34と同様に、ゴムチップとウレタン樹脂等からなる多孔質弾性体層とすることも可能である。これにより、伸縮継手装置30全体として多孔質弾性体層による遊間変位の吸収効果と共に、振動減衰効果及び排水効果が一層高められる。また、路面表層35を多孔質弾性体層することにより、車両から伝播する振動を効果的に減衰させることができ、交通騒音を低減する効果が得られ、さらに、雨水等の排水性が高められ、濡れによる路面の滑り摩擦係数の低下を抑える効果が得られる。また、第2実施形態及び変形例2において、側壁層36についてもアスファルト等の代りに、ゴムチップとウレタン樹脂等からなる多孔質弾性体層とすることも可能であり、振動減衰効果及び排水効果が一層高められる。
【0034】
つぎに、第3実施形態について図面を用いて説明する。
図5は、第3実施形態である橋桁の長さが50m以下で遊間変位も短い小型橋梁用の伸縮継手装置の使用状態を正面図により示したものである。この伸縮継手装置40は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁2の対向端部上面側に断面長方形に切り欠いて設けた両収容凹部2aに遊間3を跨いで嵌合されてアンカー44により固定された長方形厚板である伸縮材41と、伸縮材41の上面に重ね合わされた表層であるアスファルト層45とを備えている。伸縮材41は、上層が空隙率が30%以上である上記多孔質弾性体からなる多孔質弾性体層42であり、下層が天然ゴム等のゴム材料からなるゴムプレート43であり、上下層は接着剤により固定されるが、これに代えて非接着でもよい。ゴムプレート43は、その伸縮性と共に、上層からの水分の透過を阻止するものである。従って、ゴムプレート以外にも、伸縮性と水分透過阻止性能を有するエキスパンドメタル、ヘキサメタル、瀝青シート等を用いることができる。
【0035】
アスファルト層45は、加熱状態で多孔質弾性体層42に重ね合わされ、さらに圧力が加えられる。これにより、アスファルト層45は、その一部が多孔質弾性体層42の空隙を通して内部に浸透した状態で硬化した浸透層45aとなる。その結果、アスファルト層45が多孔質弾性体層42上に一体化して接着された状態にされる。なお、アスファルト層45としては、伸縮性アスファルトを用いることが望ましいが、通常のアスファルトであってもよい。伸縮継手装置40は、ゴムプレート43においてアンカー44により橋桁2に固定される。なお、橋桁2の上端側の遊間3には、緩衝ゴム5が橋桁2の対向面に固定して配設されている。
【0036】
上記構成の第3実施形態においては、多孔質弾性体層42の上側に、アスファルト層45が加熱転圧等によって形成されて、その一部が多孔質弾性体層42の空隙を通って内部に浸透することにより多孔質弾性体層42と一体化し、両者間が緊密に接着される。そのため、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、遊間変位に応じて伸縮材41が均一に伸縮することにより、多孔質弾性体層42の各部分が均一に伸縮し、さらに多孔質弾性体層42と一体になったアンカー効果により伸縮がアスファルト層45に均一に伝達される。そのため、アスファルト層45も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、アスファルト層45におけるしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。
【0037】
また、伸縮材41の下層がゴムプレート43になっているため、アスファルト層45側からの雨水等の漏れを防止し、橋桁2への水の浸透による耐久性の低下を防止できる。なお、アスファルト層45は予め伸縮材41と一体にされて、橋桁2の両収容凹部2aに嵌め合わされるものであるが、これに代えて、予め橋桁2に伸縮材41を嵌め合わせておき、その上からアスファルト層45を加熱転圧等により形成してもよい。
【0038】
つぎに、第4実施形態について説明する。
本実施形態の伸縮継手装置50は、図6に示すように、構造的には第1実施形態に示した伸縮継手装置10とほぼ同様の構成であり、保持シート12の上に配設した第1伸縮層51を多孔質ゴム弾性体層の代りに硬質ウレタン樹脂層とし、その上の第2伸縮層52を支持層11上に直接載置させたものである。その他の構成については、上記第1実施形態に示した伸縮継手装置10と同様である。第1伸縮層51を構成する硬質ウレタン樹脂の配合としては、例えば下記表1に示すように、種々の主剤と硬化剤を組み合わせた3種類の配合が好適に用いられ、その伸縮率は5〜6%程度の値にされている。
【0039】
【表1】
【0040】
上記のように構成した第4実施形態においては、第1伸縮層51が、硬質ウレタンからなり、その伸縮率が大きいため、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、遊間3を跨いで保持シート12上をスムーズに滑って収縮することにより、遊間3の変位が第1伸縮層51全体に均一に伝えられる。さらに、第2伸縮層52の各部分が均一に伸縮して、路面表層15に伸縮が均一に伝達される。その結果、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、第1伸縮層51が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、伸縮継手装置50が安価に提供される。
【0041】
つぎに、第4実施形態の変形例3について説明する。
変形例3においては、図7に示すように、伸縮継手装置55は、保持シート12上の第1伸縮層56及び第2伸縮層57の構成が第4実施形態とは異なっている。すなわち、支持部11上には、低充填砂利入りウレタンモルタルの厚板である一対の第2伸縮層57がそれぞれ配設されて、アスファルト舗装4と面一にされており、この一対の第2伸縮層57に挟まれた間の保持シート12上に硬質ウレタン製の第1伸縮層56が配設されている。アスファルト舗装4,第1及び第2伸縮層56,57の上面には、薄いアスファルト製の路面表層15が敷設されている。その他の構成については、上記第4実施形態と同様である。
【0042】
これにより、橋桁2の変位により遊間寸法に大きな変化が生じたとき、伸縮率の大きい第1伸縮層56が、橋桁2の長手方向を向いてスムーズかつ均一に伸縮する。また、第1伸縮層56を挟む第2伸縮層57においても、第1伸縮層56よりは小さいがスムーズにかつ均一な伸縮が行われる。その結果、第1及び第2伸縮層56,57の伸縮が、路面表層15に均一に伝播し、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15のしわ、ひび、亀裂等の損傷が確実に防止される。また、第1伸縮層56が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、伸縮継手装置55が安価に提供される。なお、上記各実施形態及び変形例に示した伸縮継手装置については、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【0043】
【発明の効果】
上記請求項1の発明によれば、伸縮層が弾性骨材と樹脂バインダーを含む多孔質弾性体層でありその伸縮率が大きいため、橋桁の変動により生じた大きな遊間変位に対して、伸縮層が均一に伸縮して、その伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項1の発明においては、路面表層に局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、その強度が確保されその耐久性が高められる。さらに、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、伸縮装置において、車両の通過に伴う交通騒音を効果的に抑制することができる。また、伸縮層に溜まった雨水等の排水が効率よく行われることにより、降雨時等における路面の摩擦係数が高められ、車両の制動距離が短縮されてその運転安全性が高められる。
【0044】
また、多孔質弾性体層の弾性骨材をひじき状のゴムチップとすることにより、伸縮層の強度が高められると共に、耐久性も高められる。また、ひじき状のゴムチップとして、資源再利用の観点から廃タイヤ等を利用して製造することにより、伸縮層が安価に提供される(請求項2の発明の効果)。また、表層の一部が、その下側に埋設された多孔質弾性体層内に浸透して一体化したことにより、両者間が緊密に接着され、表層が多孔質弾性体層一体となるアンカー効果によって均一な伸縮を行うことができるため、表層に局部的に大きな力が加わることが避けられ、しわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される(請求項3の発明の効果)。
【0045】
また、請求項4の発明によれば、伸縮層が、硬質ウレタンからなり、その伸縮率が大きいため、橋桁の変動により生じた大きな遊間変位に対して、伸縮層の各部分が均一に伸縮して、その伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項3の発明においては、路面表層も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、伸縮継手装置が安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図2】変形例1である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図3】第2実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図4】変形例2である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図5】第3実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図6】第4実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図7】変形例3である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
1…橋脚、2…橋桁、3…遊間、10…伸縮継手装置、11…支持層、12…保持シート、13…第1伸縮層、14…第2伸縮層、15…路面表層、20…伸縮継手装置、21…第1伸縮層、22…第2伸縮層、30…伸縮継手装置、31…スライド層、32…第1伸縮層、33…第2スライド層、34…第2伸縮層、40…伸縮継手装置、41…伸縮材、42…多孔質弾性体層、43…ゴムプレート、45…アスファルト層、45a…浸透層、50…伸縮継手装置、51…第1伸縮層、52…第2伸縮層、55…伸縮継手装置、56…第1伸縮層、57…第2伸縮層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁の一対の橋桁の連結部分にて、橋桁の遊間を跨いで載置される伸縮継手装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の橋梁用の伸縮継手装置は、温度変化や車両走行等に起因する橋桁間の遊間変位を吸収すると共に、路面の段差の発生を抑えて、路面の平坦性を確保することにより、車両の安全かつ円滑な走行を確保する重要な役割を果たしている。ところで、車両の大型化に伴う橋桁への大きな輪荷重の繰返し付加により、伸縮継手装置の損傷の程度も高くなってその製品寿命が短くなっている。そのため、伸縮継手装置の補修や取り替え等の手間が増加し、橋梁の維持管理のコストが増加することが問題となっている。また、伸縮継手装置と路面アスファルトとの弾性差により、車両の通過に伴って継手装置の部分が騒音、振動の発生源となるという問題もある。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1に示すように、長手方向に延びる水平底部片の長手方向両側縁より両側片が立設されて長手方向と直角方向の断面が溝型状に形成され、かつ溝型状部を構成する側片の長手方向一端が開放され、他端が互いに狭められて重ね合させることにより閉縮され、かつ両側片の上端縁から外側下方に向って突出係合片を設けた多数の渡し金具を用いた伸縮継手装置が知られている。この多数の渡し金具が、伸縮遊間を介して隣接するコンクリート床版の対向端部上面に設けた段部に、その溝型状部が上面に開口し、かつその長手方向が橋軸と一致すると共に、その上端が床版上面より下となるように伸縮遊間を跨いで配設され、隣接する渡し金具の一端開放部と他端閉縮部とが交互に位置するようにして渡し金具の両側片が相隣る突出係合片に摺動可能に遊嵌される。さらに、各渡し金具の溝型状部の他端閉縮部がそれぞれ各床版に固定され、ついで段部にアスファルト混合物が床版上面とほぼ面一になるように填装される。さらに、アスファルト混合物及び各床版上に亘って重ね合された中間減摩材層を介してアスファルト混合表層がそれぞれの床版に対してかつ滑動自在なように設けられる。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−26004号公報(第1−2頁、第1図−第5図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記伸縮継手装置においては、多数の鋼製の渡し金具が必要であり、かつこれらを遊間を跨いで組み合わせて配列させる必要があり、材料コスト及び組み付けコストが非常に高価になるという問題がある。特に、橋桁が短く遊間変位も小さい小型橋梁用の簡易な構造で安価な伸縮継手装置として適当ではない。また、この伸縮継手装置は、鋼製の渡し金具を配列したものであるため、車両の通過に伴って発生する騒音、振動を抑制する効果も得られない。
【0006】
本発明は上記した問題を解決しようとするもので、温度変化や車両走行等に起因する橋桁間の変位を吸収すると共に、路面の段差の発生を抑えて、路面の平坦性を確保することができ、さらに車両の通過に伴う振動や騒音を抑制できる簡易で安価な伸縮継手装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、上記請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、橋梁の一対の橋桁の連結部分にて橋桁の遊間を跨いで橋桁上に載置され、橋桁の変動に伴う遊間の変位を吸収できる伸縮層を有する伸縮継手装置であって、伸縮層が、少なくとも弾性骨材と、樹脂バインダーを含む多孔質弾性体層であることにある。
【0008】
上記のように構成した請求項1の発明においては、伸縮層が弾性骨材と樹脂バインダーを含む多孔質弾性体層でありその伸縮率が大きいため、橋桁の変動により大きな遊間変位が生じたとき、それに応じて伸縮層が橋桁上でスムーズに伸縮する。そのため、遊間の変位が伸縮層全体に均一に伝えられ、さらに伸縮層の均一な伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項1の発明においては、路面表層も全体として均一に伸縮することにより、その局部に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、その強度が確保される。さらに、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、車両から伝播する振動を効果的に減衰させることができる。また、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、表面に溜まった雨水等の排水性が高められる。
【0009】
また、上記請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、前記請求項1に記載の伸縮継手装置において、多孔質弾性体層に含まれる弾性骨材が、ひじき状のゴムチップであることにある。このように多孔質弾性体層の弾性骨材がひじき状のゴムチップであることにより、伸縮層の強度が高められると共に、耐久性も高められる。また、ひじき状のゴムチップとして、廃タイヤ等を利用して製造することにより、伸縮層が安価に提供される。
【0010】
また、上記請求項3に記載の発明の構成上の特徴は、前記請求項1又は2に記載の伸縮継手装置において、多孔質弾性体層が、アスファルト混合物を含んだ表層の下側に続いて埋設されており、表層の一部が多孔質弾性体層内に浸透して多孔質弾性体層と一体化していることにある。このように、多孔質弾性体層の上側に、表層が加熱転圧等によって形成されて、その一部が多孔質弾性体層の空隙を通って内部に浸透することにより多孔質弾性体層と一体化し、表層と多孔質弾性体層との間が緊密に接着される。このように、表層と多孔質弾性体層が一体化することによるアンカー効果により、橋桁の伸縮による多孔質弾性体層の伸縮に対して、表層が一体となって均一な伸縮を行うことができる。
【0011】
また、上記請求項4に記載の発明の構成上の特徴は、橋梁の一対の橋桁の連結部分にて橋桁の遊間を跨いで橋桁上に載置され、橋桁の変動に伴う遊間の変位を吸収できる伸縮層を有する伸縮継手装置であって、伸縮層が、硬質ウレタンからなることにある。
【0012】
上記のように構成した請求項4の発明においては、伸縮層が、硬質ウレタンからなり、その伸縮率が大きいため、橋桁の変動により大きな遊間変位が生じたとき、これに応じて伸縮層が橋桁上でスムーズに伸縮する。そのため、遊間の変位が伸縮層全体に均一に伝えられ、さらに伸縮層の均一な伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項4の発明においては、路面表層も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、安価に提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態である橋桁の長さが50m以下で遊間変位も短い小型橋梁用の伸縮継手装置の使用状態を正面図により示したものである。この伸縮継手装置10は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁2の対向端部上面側に断面長方形に切り欠いて設けた収容凹部2aに嵌合されてアンカー16により固定された略断面長方形の一対の支持層11と、支持層11上面に橋桁2間の隙間である遊間3を跨いで敷設された保持シート12、保持シート12上面に遊間3を跨いで配設された多孔質弾性体の厚板である第1伸縮層13と、その上面に重ね合わされた低充填砂利入りウレタンモルタルの厚板である第2伸縮層14とを備えている。橋桁2の上面には、伸縮継手装置10を挟んで面一にアスファルト舗装4が配設されている。アスファルト舗装4及び第2伸縮層14の上面には、薄い伸縮アスファルト製の路面表層15が敷設されている。
【0014】
支持層11は、硬質の砂利入りウレタンモルタルにより形成されている。保持シート12は、剛性の高いワイヤ入りゴムシートあるいは強化繊維シート等であり、遊間3に対応する部分が下側に円弧状に凹んでいる。保持シート12は、支持層11と共にその上面に取付板16aを介してアンカー16により橋桁2に固定されている。
【0015】
第1伸縮層13は、弾性骨材であるひじき状のゴムチップと、樹脂バインダーと、第3の成分材料として硬質骨材である砂を混合成形した多孔質弾性体により構成され、伸縮率が数10%程度と大きくされている。なお、ゴムチップの形状としては、第1伸縮層の強度を高める上でひじき状が好ましいが、その他粒状タイプ、粉状タイプ等も用いられる。弾性骨材としては、天然,合成ゴム等のゴム材料の他に、熱可塑性エラストマー、発泡ポリウレタン等の弾性を有する合成樹脂材料が用いられるが、資源再利用の観点から廃タイヤより作製されるゴムチップが好適に利用される。また、樹脂バインダーについては、ウレタン系が望ましいが、その他エポキシ系バインダー等特に限定しない。硬質骨材は、無機材料として砕石、砂、珪砂、シリカ、ガラス等の窯業材料等が、有機材料としてナイロン、ウレタン等の樹脂材料等の中から少なくとも1種類を選択して用いられる。
【0016】
上記多孔質弾性体の製造方法について説明する。まず、弾性骨材であるひじき状ゴムチップと、ウレタン系バインダーと、硬質骨材である珪砂とを攪拌機にて混合して調整した合材を、例えば空隙率40%になるように計量して、金型内に投入し、加圧状態で加熱することにより形成される。この場合、合材に熱風を吹き付けて透過させることにより、短時間に均一な加圧加熱が行われ、そのため多孔質弾性体本来の特性を有すると共に耐久性も適正に確保される均一な物性の第1伸縮層13が得られる。また、第1伸縮層13を短時間で製造できるので、製造コストを安価にすることができる。
【0017】
第2伸縮層14は、第1伸縮層13に比べて低いが所定の伸縮率を有している。路面表層15は、通常のアスファルトより摩擦係数の低い伸縮アスファルト製の薄板でありその破壊歪が大きくされている。路面表層15としては伸縮アスファルトを用いることが好ましいが、場合によっては、通常のアスファルト、コンクリート、モルタル等を用いることも可能である。
【0018】
上記構成の第1実施形態においては、橋桁2の遊間3を跨いでかつ保持シート12を介して設けられた第1伸縮層13が、多孔質弾性体でありその伸縮率が大きいので、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、遊間変位に応じて均一に伸縮する。さらに、第2伸縮層14も伸縮率が大きくされており、第1伸縮層13に応じて均一に伸縮する。このように、第2伸縮層14の各部分が均一に伸縮するため、第2伸縮層14上の伸縮アスファルト製の路面表層15に伸縮が均一に伝達される。そのため、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15におけるしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。
【0019】
また、第1伸縮層13が多孔質弾性体層であるため、その強度が確保され、第1伸縮層13の信頼性が高められる。さらに、第1伸縮層13が多孔質弾性体層であるため、車両から伝播する振動を効果的に減衰させることができ、交通騒音を大幅に低減する効果が得られる。また、第1伸縮層13が多孔質弾性体層であるため、雨水等の排水性が高められ、路面の滑り摩擦係数が高められる。その結果、降雨時等における車両のスリップ事故等の発生を防止できる。また、伸縮継手装置10は、構造が簡易で安価に提供されるため、特に橋桁が50m以下と短く遊間の最大変位も小さい小規模橋梁用の継手装置として特に好適である。
【0020】
つぎに、第1実施形態の変形例1について説明する。
変形例1においては、図2に示すように、伸縮継手装置20は、保持シート12上の第1伸縮層及び第2伸縮層の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、支持部11上には、低充填砂利入りウレタンモルタルの厚板である一対の第2伸縮層22が配設されて、アスファルト舗装4と面一にされており、一対の第2伸縮層22に挟まれた間の保持シート12上に多孔質ゴム弾性体の厚板である第1伸縮層21が配設されている。アスファルト舗装4、第1及び第2伸縮層21,22の上面には、薄いアスファルト製の路面表層15が敷設されている。
【0021】
これにより、橋桁2の変位により遊間寸法に大きな変化が生じたとき、伸縮率の大きい第1伸縮層21が、橋桁2の長手方向を向いてスムーズかつ均一に伸縮する。また、第2伸縮層22も、第1伸縮層21よりは小さいがスムーズにかつ均一な伸縮が行われる。その結果、第1及び第2伸縮層21,22の伸縮が、路面表層15に均一に伝えられる。その結果、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15におけるしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。
【0022】
また、変形例1においても、第1伸縮層21が多孔質のゴム弾性体層であるため、車両からの振動を効果的に減衰させることができ、交通騒音を低減する効果が得られる。また、第1伸縮層21が多孔質弾性体層であるため、雨水等の排水性が高められ、路面の濡れによる滑り摩擦係数の低下を抑える効果が得られる。
【0023】
また、第1実施形態及び変形例1においては、第2伸縮層14,22は低充填砂利入りウレタンモルタルを用いているが、これに代えて、第1伸縮層13,21と同様に、弾性骨材と樹脂バインダーからなる多孔質弾性体層とすることも可能である。これにより、伸縮継手装置10,20全体として多孔質弾性体層による遊間変位の吸収効果と共に、振動減衰効果及び排水効果が高められる。さらに、路面表層15についても、アスファルトの代りに多孔質弾性体層とすることができる。
【0024】
つぎに、第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態である50m以上の長桁で長遊間の大型橋梁用の伸縮継手装置の使用状態を正面図により示したものである。この伸縮継手装置30は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁2間の隙間である遊間3を跨いでかつ橋桁2に非接着で敷設されたスライド層31と、スライド層31上に重ね合わされて遊間3を跨いで配設されて両端が橋桁2に固定されたシート状の多孔質ゴム弾性体である第1伸縮層32と、その上面に重ね合わされた第2スライド層33と、その上に重ね合わされたシート状の多孔質弾性体である第2伸縮層34と、その上面に重ね合わされたジョイントレスの路面表層35とを備えている。なお、橋桁2の上面には、伸縮継手装置30を挟んでアスファルト舗装4が配設されている。また、配橋桁2の上端側の遊間3には、緩衝ゴム5が橋桁2の対向面に固定して配設されている。緩衝ゴム5は、橋桁2間の衝突を防止すると共に通過する車両による路面表層35、第1及び第2伸縮層32,34の変形を防止するバックアップ部材としても機能する。
【0025】
スライド層31は、摩擦係数の小さいフッ素樹脂製、ステンレス製等の薄板である。第2スライド層33も同様の構成である。第1伸縮層32は、上記伸縮層13と同様に弾性骨材であるひじき状のゴムチップと、樹脂バインダーと、第3の成分材料として硬質骨材である砂を混合成形した多孔質弾性体により構成したものである。第1伸縮層32は、その両端がアンカー等の止具32aによってそれぞれ一対の橋桁2に固定されている。また、第2伸縮層34についても、第1伸縮層32と同様の構造であり、その両端が止具34aによってそれぞれ一対の橋桁2に固定されている。
【0026】
第1伸縮層32及び第2伸縮層34の長手方向両側の橋桁2上には、アスファルト製の側壁層36が敷設されており、その上面が第2伸縮層34上面と面一にされている。第1及び第2伸縮層32,34の止具32a,34aによる固定は、両橋桁2に側壁層36を介して行われる。なお、側壁層36としては、アスファルトの代りに、通常のコンクリート,モルタル等であってもよい。
【0027】
路面表層35は、第2伸縮層34及び側壁層36上面に敷設された、通常のアスファルトより摩擦係数の低い伸縮アスファルト製の厚板である。路面表層35の破壊歪εaは、第2伸縮層34の歪ε2より大きくなるようにされている。路面表層35として、伸縮アスファルトが望ましいが、場合によっては、通常のアスファルト、コンクリート、モルタル等を用いることも可能である。
【0028】
上記構成の第2実施形態においては、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、橋桁2の遊間3を跨いで非接着で敷設されたスライド層31が橋桁2をスムーズに滑る。さらに、スライド層31上を多孔質ゴム弾性体である第1伸縮層32が滑ることにより、遊間3の変位が第1伸縮層32全体に均一に伝えられ、第1伸縮層32が均一に伸縮する。特に、第1伸縮層32は、多孔質弾性体層であるため伸縮率が数10%と高くなっていることにより、第1伸縮層32のスライド層31に対する滑りがスムーズに行われると共に、第1伸縮層32全体の均等な変位がより適正に確保される。
【0029】
さらに、第1伸縮層32上に非接着で敷設された第2スライド層33上を第2伸縮層34が滑ることにより、遊間3の変位が第2伸縮層34全体に均一に伝えられる。第2伸縮層34についても多孔質弾性体層であり伸縮率が大きくなっていることにより、第2伸縮層34の第2スライド層33に対する滑りがスムーズに行われると共に、第2伸縮層34全体の均等な変位がより適正に確保される。このように、第2伸縮層34の各部分が均一に伸縮するため、第2伸縮層34の伸縮が伸縮アスファルト製の路面表層35に均一に伝達される。
【0030】
その結果、路面表層35も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層35のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層32,34が2層の積層構造であり、遊間3の変位による各伸縮層12,14及び路面表層35への変位の伝播が段階的に行われることにより、路面表層35における局部的な歪の発生が一層効果的に抑えられる。
【0031】
また、路面表層35が、伸縮可能な弾性材料である伸縮アスファルトにより構成されていることにより、その破壊歪εaが大きくされる。その結果、第1及び第2伸縮層32,34の長さを小さくして伸縮継手装置10全体の寸法を小さくできるか、あるいは、同じ大きさの伸縮継手装置でより大きな遊間3の最大変位に対応することができる。さらに、第2実施形態によれば、橋桁2の変位により遊間寸法に大きな変化が生じたとき、スライド層31,33と第1及び第2伸縮層32,34によって、路面表層35に伸縮が均一に伝達されるため、伸縮継手装置30は、橋桁が50m以上である長桁であり遊間3の最大変位も大きい大型の橋梁用の継手装置として特に好適である。
【0032】
つぎに、第2実施形態の変形例2について説明する。
変形例2においては、図4に示すように、伸縮継手装置30Aは、第1伸縮層32及び第2伸縮層34の下面側に、遊間3に添って橋軸直角方向に延びた断面三角形の線状溝部37,38を設けたものであり、その他の構成については第2実施形態と同様である。これにより、遊間変位に伴う第1及び第2伸縮層32,34の伸縮が、線状溝部37,38によってさらにスムーズに行われる。また、線状溝部37,38によって、第1及び第2伸縮層32,34に溜まった雨水等が、線状溝部37,38によって非常にスムーズに排水され、伸縮継手装置の排水効果が一層高められる。
【0033】
なお、第2実施形態及び変形例2においては、路面表層35が伸縮アスファルトにより形成されているが、これに代えて、第1及び第2伸縮層32,34と同様に、ゴムチップとウレタン樹脂等からなる多孔質弾性体層とすることも可能である。これにより、伸縮継手装置30全体として多孔質弾性体層による遊間変位の吸収効果と共に、振動減衰効果及び排水効果が一層高められる。また、路面表層35を多孔質弾性体層することにより、車両から伝播する振動を効果的に減衰させることができ、交通騒音を低減する効果が得られ、さらに、雨水等の排水性が高められ、濡れによる路面の滑り摩擦係数の低下を抑える効果が得られる。また、第2実施形態及び変形例2において、側壁層36についてもアスファルト等の代りに、ゴムチップとウレタン樹脂等からなる多孔質弾性体層とすることも可能であり、振動減衰効果及び排水効果が一層高められる。
【0034】
つぎに、第3実施形態について図面を用いて説明する。
図5は、第3実施形態である橋桁の長さが50m以下で遊間変位も短い小型橋梁用の伸縮継手装置の使用状態を正面図により示したものである。この伸縮継手装置40は、橋脚1に支持された一対の橋桁2の連結部分にて、両橋桁2の対向端部上面側に断面長方形に切り欠いて設けた両収容凹部2aに遊間3を跨いで嵌合されてアンカー44により固定された長方形厚板である伸縮材41と、伸縮材41の上面に重ね合わされた表層であるアスファルト層45とを備えている。伸縮材41は、上層が空隙率が30%以上である上記多孔質弾性体からなる多孔質弾性体層42であり、下層が天然ゴム等のゴム材料からなるゴムプレート43であり、上下層は接着剤により固定されるが、これに代えて非接着でもよい。ゴムプレート43は、その伸縮性と共に、上層からの水分の透過を阻止するものである。従って、ゴムプレート以外にも、伸縮性と水分透過阻止性能を有するエキスパンドメタル、ヘキサメタル、瀝青シート等を用いることができる。
【0035】
アスファルト層45は、加熱状態で多孔質弾性体層42に重ね合わされ、さらに圧力が加えられる。これにより、アスファルト層45は、その一部が多孔質弾性体層42の空隙を通して内部に浸透した状態で硬化した浸透層45aとなる。その結果、アスファルト層45が多孔質弾性体層42上に一体化して接着された状態にされる。なお、アスファルト層45としては、伸縮性アスファルトを用いることが望ましいが、通常のアスファルトであってもよい。伸縮継手装置40は、ゴムプレート43においてアンカー44により橋桁2に固定される。なお、橋桁2の上端側の遊間3には、緩衝ゴム5が橋桁2の対向面に固定して配設されている。
【0036】
上記構成の第3実施形態においては、多孔質弾性体層42の上側に、アスファルト層45が加熱転圧等によって形成されて、その一部が多孔質弾性体層42の空隙を通って内部に浸透することにより多孔質弾性体層42と一体化し、両者間が緊密に接着される。そのため、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、遊間変位に応じて伸縮材41が均一に伸縮することにより、多孔質弾性体層42の各部分が均一に伸縮し、さらに多孔質弾性体層42と一体になったアンカー効果により伸縮がアスファルト層45に均一に伝達される。そのため、アスファルト層45も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、アスファルト層45におけるしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。
【0037】
また、伸縮材41の下層がゴムプレート43になっているため、アスファルト層45側からの雨水等の漏れを防止し、橋桁2への水の浸透による耐久性の低下を防止できる。なお、アスファルト層45は予め伸縮材41と一体にされて、橋桁2の両収容凹部2aに嵌め合わされるものであるが、これに代えて、予め橋桁2に伸縮材41を嵌め合わせておき、その上からアスファルト層45を加熱転圧等により形成してもよい。
【0038】
つぎに、第4実施形態について説明する。
本実施形態の伸縮継手装置50は、図6に示すように、構造的には第1実施形態に示した伸縮継手装置10とほぼ同様の構成であり、保持シート12の上に配設した第1伸縮層51を多孔質ゴム弾性体層の代りに硬質ウレタン樹脂層とし、その上の第2伸縮層52を支持層11上に直接載置させたものである。その他の構成については、上記第1実施形態に示した伸縮継手装置10と同様である。第1伸縮層51を構成する硬質ウレタン樹脂の配合としては、例えば下記表1に示すように、種々の主剤と硬化剤を組み合わせた3種類の配合が好適に用いられ、その伸縮率は5〜6%程度の値にされている。
【0039】
【表1】
【0040】
上記のように構成した第4実施形態においては、第1伸縮層51が、硬質ウレタンからなり、その伸縮率が大きいため、橋桁2の変動により大きな遊間変位が生じたとき、遊間3を跨いで保持シート12上をスムーズに滑って収縮することにより、遊間3の変位が第1伸縮層51全体に均一に伝えられる。さらに、第2伸縮層52の各部分が均一に伸縮して、路面表層15に伸縮が均一に伝達される。その結果、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、第1伸縮層51が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、伸縮継手装置50が安価に提供される。
【0041】
つぎに、第4実施形態の変形例3について説明する。
変形例3においては、図7に示すように、伸縮継手装置55は、保持シート12上の第1伸縮層56及び第2伸縮層57の構成が第4実施形態とは異なっている。すなわち、支持部11上には、低充填砂利入りウレタンモルタルの厚板である一対の第2伸縮層57がそれぞれ配設されて、アスファルト舗装4と面一にされており、この一対の第2伸縮層57に挟まれた間の保持シート12上に硬質ウレタン製の第1伸縮層56が配設されている。アスファルト舗装4,第1及び第2伸縮層56,57の上面には、薄いアスファルト製の路面表層15が敷設されている。その他の構成については、上記第4実施形態と同様である。
【0042】
これにより、橋桁2の変位により遊間寸法に大きな変化が生じたとき、伸縮率の大きい第1伸縮層56が、橋桁2の長手方向を向いてスムーズかつ均一に伸縮する。また、第1伸縮層56を挟む第2伸縮層57においても、第1伸縮層56よりは小さいがスムーズにかつ均一な伸縮が行われる。その結果、第1及び第2伸縮層56,57の伸縮が、路面表層15に均一に伝播し、路面表層15も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層15のしわ、ひび、亀裂等の損傷が確実に防止される。また、第1伸縮層56が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、伸縮継手装置55が安価に提供される。なお、上記各実施形態及び変形例に示した伸縮継手装置については、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【0043】
【発明の効果】
上記請求項1の発明によれば、伸縮層が弾性骨材と樹脂バインダーを含む多孔質弾性体層でありその伸縮率が大きいため、橋桁の変動により生じた大きな遊間変位に対して、伸縮層が均一に伸縮して、その伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項1の発明においては、路面表層に局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、その強度が確保されその耐久性が高められる。さらに、伸縮層が多孔質弾性体層であるため、伸縮装置において、車両の通過に伴う交通騒音を効果的に抑制することができる。また、伸縮層に溜まった雨水等の排水が効率よく行われることにより、降雨時等における路面の摩擦係数が高められ、車両の制動距離が短縮されてその運転安全性が高められる。
【0044】
また、多孔質弾性体層の弾性骨材をひじき状のゴムチップとすることにより、伸縮層の強度が高められると共に、耐久性も高められる。また、ひじき状のゴムチップとして、資源再利用の観点から廃タイヤ等を利用して製造することにより、伸縮層が安価に提供される(請求項2の発明の効果)。また、表層の一部が、その下側に埋設された多孔質弾性体層内に浸透して一体化したことにより、両者間が緊密に接着され、表層が多孔質弾性体層一体となるアンカー効果によって均一な伸縮を行うことができるため、表層に局部的に大きな力が加わることが避けられ、しわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される(請求項3の発明の効果)。
【0045】
また、請求項4の発明によれば、伸縮層が、硬質ウレタンからなり、その伸縮率が大きいため、橋桁の変動により生じた大きな遊間変位に対して、伸縮層の各部分が均一に伸縮して、その伸縮が路面表層に均一に伝達される。その結果、請求項3の発明においては、路面表層も全体として均一に伸縮することにより、局部的に大きな力が加わることが避けられ、路面表層のしわ、ひび、亀裂等の損傷の発生が確実に防止される。また、伸縮層が硬質ウレタンからなることにより、その強度が確保されると共に、伸縮継手装置が安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図2】変形例1である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図3】第2実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図4】変形例2である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図5】第3実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図6】第4実施形態である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【図7】変形例3である伸縮継手装置の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
1…橋脚、2…橋桁、3…遊間、10…伸縮継手装置、11…支持層、12…保持シート、13…第1伸縮層、14…第2伸縮層、15…路面表層、20…伸縮継手装置、21…第1伸縮層、22…第2伸縮層、30…伸縮継手装置、31…スライド層、32…第1伸縮層、33…第2スライド層、34…第2伸縮層、40…伸縮継手装置、41…伸縮材、42…多孔質弾性体層、43…ゴムプレート、45…アスファルト層、45a…浸透層、50…伸縮継手装置、51…第1伸縮層、52…第2伸縮層、55…伸縮継手装置、56…第1伸縮層、57…第2伸縮層。
Claims (4)
- 橋梁の一対の橋桁の連結部分にて該橋桁の遊間を跨いで該橋桁上に載置され、該橋桁の変動に伴う該遊間の変位を吸収できる伸縮層を有する伸縮継手装置であって、
該伸縮層が、少なくとも弾性骨材と、樹脂バインダーを含む多孔質弾性体層であることを特徴とする伸縮継手装置。 - 前記多孔質弾性体層に含まれる前記弾性骨材が、ひじき状のゴムチップであることを特徴とする前記請求項1に記載の伸縮継手装置。
- 前記多孔質弾性体層が、アスファルト混合物を含んだ表層の下側に続いて埋設されており、該表層の一部が該多孔質弾性体層内に浸透して該多孔質弾性体層と一体化していることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の伸縮継手装置。
- 橋梁の一対の橋桁の連結部分にて該橋桁の遊間を跨いで該橋桁上に載置され、該橋桁の変動に伴う該遊間の変位を吸収できる伸縮層を有する伸縮継手装置であって、
該伸縮層が、硬質ウレタンからなることを特徴とする伸縮継手装置。
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- 2003-06-18 JP JP2003174045A patent/JP2004084463A/ja not_active Withdrawn
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