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JP2004070031A - 感光性樹脂版現像液の処理方法 - Google Patents

感光性樹脂版現像液の処理方法 Download PDF

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JP2004070031A
JP2004070031A JP2002229604A JP2002229604A JP2004070031A JP 2004070031 A JP2004070031 A JP 2004070031A JP 2002229604 A JP2002229604 A JP 2002229604A JP 2002229604 A JP2002229604 A JP 2002229604A JP 2004070031 A JP2004070031 A JP 2004070031A
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photosensitive resin
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Yoshifumi Araki
荒木 祥文
Katsuhiro Takahashi
高橋 勝弘
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Asahi Kasei Chemicals Corp
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Asahi Kasei Chemicals Corp
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Abstract

【課題】経済的に優れた現像廃液処理方法を提供する。
【解決手段】水系現像可能な感光性樹脂版を露光後、少なくとも水と水および界面活性剤を含有する現像液で未露光部を除去して現像する際に発生する現像廃液を処理する方法において、2気圧以下の条件下に水を蒸発せしめて、未露光部の樹脂を含有する濃縮液と水を主体とする凝縮液とに分離することを特徴とする感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
【選択図】  選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系現像可能な感光性樹脂印刷版の現像廃液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、作業環境改善や地球環境の保全の観点から有機溶剤の使用を減らそうという動きが各種産業界から出ており、印刷に用いる感光性のフレキソ印刷版の製版工程においても水現像可能な感光性樹脂版の使用が増えつつある状況にある。
従来の溶剤現像型では、現像時に版に吸収された溶剤の乾燥除去操作で大気に放出される、廃溶剤として大量に廃棄されるなど環境を悪化させる。その点、水系現像型では乾燥時に大気に放出される有機物量ははるかに少なく作業環境的にも改善されるが、現像廃液の処理には多量の水を含むため、かえって処理コストがかさむという問題点がある。
【0003】
これを解決すべく種々の提案がなされている。例えば、特開平7−136663号公報、特開2001−25776号公報等には凝集剤を用いて未硬化樹脂を凝集分離する方法が提案されている。しかしながら、これらの処理には高価な凝集剤を分離すべき樹脂と同程度の量を使用しなければならないだけでなく、凝集した固形物が大量の水を内包してしまうため、濾過が可能な場合でもその取り扱い性が悪いだけでなく、その水の蒸発に大量の熱が必要であり、改善効果が限定されているといわざるを得ない。その他、特開平7−328620号公報、特開平7−333860号公報、特開平8−299965号公報等に特殊な装置を用いて樹脂分を分離する方法が提案されているが、処理時間が長い、分離効果が劣る、スラッジの粘着性が悪く作業性が悪いなどの欠点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水と樹脂成分や現像液の有効成分との分離性がよく、且つ分離した樹脂等の有機物を含む成分の取り扱い性がよく、さらには経済性にも優れた水現像可能な感光性樹脂版の現像液の処理方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、現像廃液中の水を特定条件で蒸発せしめることにより、濃縮廃液は流動性を保ったまま取り扱うことができるばかりでなく、蒸発により発生したガスを凝縮して得られる凝縮液中の有機成分はきわめて低いレベルになるため、そのまま廃棄もしくは新たな現像液の希釈液として再利用できるなどの利点が大きく、現像廃液の処理が簡易かつ経済的に行なえることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.水系現像可能な感光性樹脂版を露光後、水あるいは水と界面活性剤とを含有する現像液で未露光部を除去して現像する際に発生する現像廃液を処理する方法であって、現像廃液中の水を2気圧以下の条件下に蒸発せしめて、未露光部の樹脂を含有する濃縮液と水を主体とする凝縮液とに分離することを特徴とする感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
2.蒸発させた水蒸気の潜熱を回収し、蒸発のためのエネルギーとして使用することを特徴とする1.に記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
3.ヒートポンプを用いて、蒸発させた水蒸気の潜熱を回収し、蒸発のためのエネルギーとして使用することを特徴とする1.または2.に記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
4.現像廃液中の水を蒸発させて生じた水蒸気を圧縮昇温し、蒸発のためのエネルギーとして循環使用することを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
【0007】
5.現像液が少なくとも水、界面活性剤、さらに沸点が130℃以上の有機溶剤を含有する、1.〜4.のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
6.水を主体とする凝縮液を現像液の希釈液として再利用することを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
7.現像廃液中の水の蒸発を、濃縮器中の現像廃液の液面の高さを一定範囲に保つように調整しながら行うことを特徴とする1.〜6.のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
8.現像廃液に凝集剤を添加することを特徴とする1.〜7.のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
9.感光性樹脂版現像廃液中の水を蒸発させるための蒸発器およびガス圧縮機を備えてなり、水蒸気の潜熱を蒸発のためのエネルギーとして循環使用可能とした感光性樹脂版現像廃液の処理装置。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、具体的に説明する。
本発明で用いられる感光性樹脂版は、水あるいは水と界面活性剤からなる現像液を用いて、未露光部を除去して作成される。
感光性樹脂版用組成物は、少なくとも親水性ポリマー、光重合性不飽和単量体および光重合開始剤を含有する。
【0009】
親水性ポリマーとは、水に溶解あるいは膨潤するものであり、ラジカル系共重合体、ポリアミド系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリエステル系重合体、あるいはウレタン系共重合体等があげられる。
親水性のラジカル系共重合体は、例えば、不飽和単量体100質量部のうち、親水性の不飽和単量体を1.0質量部以上用い共重合して得られる。親水性の不飽和単量体には、酸性官能基含有不飽和単量体が好ましく、酸性官能基含有不飽和単量体にはカルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基、ホウ酸基あるいは水酸基を有するエチレン性不飽和単量体などが例示される。
【0010】
酸性官能基含有不飽和単量体の使用量は不飽和単量体全量のうち1〜30wt%が好ましく、これ以下だと水系現像が困難となる場合があり、これ以上だと感光性樹脂の吸湿量が増加したり、インキの膨潤量が増加したり、感光性樹脂の混合時の加工性が損なわれる場合がある。
親水性のラジカル系共重合体に用いられる親水性の不飽和単量体としては、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有するエチレン系モノカルボン酸アルキルエステル単量体、不飽和二塩基酸アルキルエステル、無水マレイン酸、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル類、アミノ基を有する塩基性単量体、ビニルピリジン、オレフィン、ケイ素含有α,β−エチレン性不飽和単量体、アリル化合物等があげられる。
【0011】
これらの単量体は単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
2個以上の付加重合可能な基を有する単量体を使用してもよい。
本発明に用いられる親水性のラジカル系共重合体の重合方法は特に限定されないが、乳化重合が好ましい。
【0012】
本発明で用いられる光重合性不飽和単量体とは、アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸又はそのエステル化合物(例えばアルキル−、シクロアルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、ベンジル−、フェノキシ−(メタ)アクリレート;アルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリットテトラ(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体(例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基でN−置換又はN,N’−置換した(メタ)アクリルアミド;ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド等)、アリル化合物(例えばアリルアルコール、アリルイソシアナート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等)、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸又はそのエステル(例えばアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシアルキルのモノ又はジマレエート及びフマレート等)、その他不飽和化合物(例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等)が挙げられる。
【0013】
前記エチレン性不飽和モノマーは単独でも、2種以上を組み合わせて用いても良い。
成分の光重合性不飽和単量体は配合量が少なすぎると、細かい点や文字の形成性を低下させる傾向がある。また、配合量が多すぎると、未硬化版の貯蔵・輸送時の変形が大きくなるし、得られた版の硬度が高くなって、表面凹凸のある紙質の悪い被印刷体への印刷におけるベタ部分のインキ乗りを損なう傾向があるため、フレキソ印刷用感光性樹脂組成物100質量部に対して1〜30質量部用いるのが望ましい。
また、光重合性不飽和単量体は、濃縮時に水と共沸し難く、凝縮液の純度が高くなるように、沸点が130℃以上が好ましく、光重合性不飽和単量体の70wt%以上が、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基、ホウ酸基あるいは水酸基の無い疎水性の単量体であることが好ましい。
【0014】
本発明で用いられる光重合開始剤とは、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノ ン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オ ン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6− トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7−ビスアクリジニルヘプタン;9 −フェニルアクリジン;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
光重合開始剤の量は感光性樹脂組成物全量に対して、0.1〜10wt%が好ましい。細かい点や文字の形成性の点で0.1wt%以上、紫外線等の活性光の透過率低下による露光感度低下の点で10wt%以下が好ましい。
必要に応じて、熱可塑性エラストマーを用いても良い。熱可塑性エラストマーとは、常温付近でゴム弾性を示し、塑性変形し難く、押出機等で組成物を混合するときに熱で可塑化するエラストマーで、熱可塑性ブロック共重合体、1,2―ポリブタジエン、ポリウレタン系エラストマー等を例示することができる。
【0016】
これらのうち、熱可塑性ブロック共重合体が好ましく、この中でも、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーを重合して得られるものがより好ましい。モノビニル置換芳香族炭化水素モノマ−としては、スチレン,α−メチルスチレン,p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等が、また共役ジエンモノマ−としてはブタジエン,イソプレン等が用いられ、代表的な例としてはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体や、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。ここで熱可塑性エラスマー中におけるモノビニル置換芳香族炭化水素の含量については、低い場合は感光性エラストマー組成物のコールドフローを引き起こして良好な厚み精度を損ないやすく、また高い場合はフレキソ版の硬度が高くなりすぎて良好な印刷品質を損ないやすいため、8〜50wt%の範囲にあることが好ましい。
【0017】
熱可塑性エラストマーの共役ジエンセグメント中のビニル結合単位はレリーフの再現性向上に寄与するが、同時にフレキソ版表面の粘着性を高める原因にもなる。この両特性のバランスをとる観点でビニルセグメントの平均比率は5〜40%が好ましく、さらに好ましい範囲としては10〜35%である。
その他、本発明における感光性樹脂版用組成物には前記した必須成分の他に、所望に応じ種々の補助添加成分、例えば可塑剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤などを添加することができる。
【0018】
可塑剤としては、常温で流動性のある液状のもので、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンの変性物、液状アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体、数平均分子量2,000以下のポリスチレン、セバチン酸エステル、フタル酸エステルなどが挙げられる。これらの組成に光重合性の反応基が付与されていても構わない。
【0019】
本発明の方法で使用される現像液としては、水あるいは水と界面活性剤を含有したものが用いられる。界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性の界面活性剤の単独もしくは二種類以上を混合して用いられる。
【0020】
アニオン系界面活性剤の具体的な例としては、平均炭素数8〜16のアルキルを有する直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、平均炭素数10〜20のα−オレフィンスルフォン酸塩、アルキル基またはアルケニル基の炭素数が4〜10のジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸低級アルキルエステルのスルフォン酸塩、平均炭素数10〜20のアルキル硫酸塩、平均炭素数10〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均0.5〜8モルのエチレンオキサイドを附加したアルキルエーテル硫酸塩、および平均炭素数10〜22の飽和または不飽和脂肪酸塩等があげられる。
【0021】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルアミン塩、アルキルアミンエチレンオキシド付加物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩、あるいはピリジウム塩等があげられる。
【0022】
ノニオン系界面活性剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールアルキレンオキシド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、油脂のアルキレンオキシド付加物、およびポリプロピレングリコールアルキレンオキシド付加物、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールとソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテルおよびアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等があげられる。
【0023】
両性界面活性剤の具体的な例としては、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムやラウリルジメチルベタイン等があげられる。
界面活性剤の濃度には特に制限はないが、通常0.5〜10wt%の範囲で使用される。
必要に応じて、界面活性剤に、洗浄促進剤やPH調整剤などの現像助剤を配合することができる。
洗浄促進剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、グリコールエーテル類、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアンモニウム塩類、あるいはパラフィン系炭化水素等の有機溶剤がある。
PH調整剤としては、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、コハク酸ソーダ、酢酸ソーダ等がある。
【0024】
これらの現像助剤は、単独もしくは2種類以上を混合して用いられる。
用いる現像助剤の沸点は、常圧で130℃以上であることが好ましい。沸点がこれより低い場合、現像液から水を蒸発させて凝縮液として回収する際に溶剤の相当量が水に同時に流去される傾向がある。あるいはこれを現像液の濃度調整の目的で利用する際に、現像液の性能を安定にするために同伴された溶剤の量を測定して調整しなければならないなどの手間がかかる。
【0025】
水現像可能な感光性樹脂の未露光部の樹脂は上記の現像液を用いて、通常、ブラシなどを装着した現像機で除去され、現像液中に溶出・分散される。現像を繰り返し、液中の未露光部樹脂濃度が高まると現像性能の低下や装置への樹脂付着などを引き起こすため、適当な段階で現像液を更新する必要が出てくる。これは樹脂の種類や現像液の組成によっても異なるが、樹脂濃度として1〜15wt%程度が一般的な目安である。
【0026】
この現像廃液の一部もしくは全部を抜き出し、液中の水を蒸発させて現像液の量を減じるとともに有機物の濃度を高めて、最終的な処理を行なう。代表的には焼却による処理があげられるが、現像廃液中の水を減じることで実質的に廃液の処理にかかる費用を減じることができる。
濃縮の度合いは特に限定されないが、経済性の点から、通常は2倍以上が好ましく、より好ましくは4倍以上、濃縮槽内の流動性が大きく低下することで、濃縮速度が低下しないように、あるいは濃縮後に取り出し難くならないように、通常20倍以下に濃縮することが望ましい。濃縮の程度が過剰にならないように、濃縮槽に、現像廃液を、連続的あるいは定期的に、電磁弁やポンプ等を用いて、供給しても良い。濃縮器内の現像廃液の液面の高さが、常に初期の1/3以上になるよう保つのが好ましい。より好ましくは、1/2以上に保つのが好ましい。
【0027】
従来の凝集剤を用いる方法による樹脂成分の分離では、大量の凝集剤を使用し、加えて発生する固形状成分が水分や洗浄液成分をも取り込んで取り扱い性が悪く、且つ水分の分離性も不充分であったが、本発明者らの検討により、蒸留による方法は濃縮された樹脂成分等の有機成分が液状になるため抜き出し等の操作が容易であるだけでなく、水分の分離性も良く、加えて凝集剤を加えないので最終的な処理、例えば焼却処理、の量も少なく経済性が高いことが証明された。
【0028】
濃縮の操作は濃縮液の温度が130℃以下であることが好ましい。この範囲を越えると装置内にポリマー状の付着物が生じやすく、濃縮液がゲル化しやすい。
さらに、水を蒸発せしめた際に生じる水蒸気の蒸発潜熱を回収し、蒸発のためのエネルギーとして使用することでその経済性はさらに高まる。その方法は特に限定されないが、効率的な方法として例えばエアコンに使用されるフロンのような熱交換媒体を用い圧縮機を介して熱の回収・放出を行なうヒートポンプ方式の方法が第一に挙げられる。第二の方法として、現像液中の水を蒸発させて生じた水蒸気を圧縮機により圧縮昇温し、蒸発のためのエネルギーとして循環使用する自己蒸気圧縮方式が挙げられる。これらの方法により、単純に蒸発をした場合に較べエネルギーの使用量を大幅に削減できる。
【0029】
このような効率的、取り扱い性の良い処理方法を実施する際に用いる装置には、蒸発器およびガス圧縮機を含むものが好ましい。装置の配列は操作が行なえるものであれば特に限定されないしバッチ処理、連続処理を問わないが、例えば図1〜3は装置の概念を示したものである。このうち図1はヒートポンプ方式の最も単純なものである。図2、3は自己蒸気圧縮方式の最も単純な例であり、前者はバッチ方式の例であり、後者は連続方式の一例である。エネルギーの利用効率を高めるため多重効用方式を採用することもできる。
【0030】
他方、蒸留により分離して得られた水を主体とする凝集液は、ほとんどの場合同伴される有機成分は極めて微量であり、そのまま廃棄したり現像液の希釈などに利用することも可能であり、廃棄にともなう付加を大幅に減じることが可能になる。特に現像液の希釈に利用する方法は環境保護の面からみて極めて有効な方法である。感光性樹脂版の成分や現像液の成分の選択によっては水に同伴される場合もありうるが、本発明の有効性を高めるためにそのような成分の使用を極力避けるよう材料の選択をすべきであるし、過去の水現像可能な感光性樹脂版に関する種々の提案から充分に達成可能であると考える。
【0031】
濃縮器内で、泡が立つ場合には、消泡剤を現像廃液に添加することが好ましい。
消泡剤とは、高級アルコール類、油脂類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、リン酸エステル類、金属石鹸類、鉱物油類、ポリエーテル系あるいはシリコーン系等があげられる。消泡性と低揮発性のため、シリコーン系が好ましい。
消泡剤の添加剤は、経済性の点から、現像廃液に1wt%以下の添加量が好ましい。
【0032】
場合により、濃縮器内の現像廃液中に分散していた未露光部の感光性樹脂が凝集し、現像廃液表面に、膜を張り、処理速度が低下することが起こるが、発明者らの検討により、濃縮前に、現像廃液に凝集剤を添加することで、粒子状に凝集する傾向となるため、膜張りの程度を抑制することができる。
本発明における凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、あるいは硫酸第一鉄等の無機凝集剤、アルギン酸ナトリウムあるいはキトサン等の天然高分子凝集剤、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合物、ポリアクリル酸ナトリウム、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物、アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物あるいはアルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド・アクリル酸共重合物等の合成高分子凝集剤があげられる。
【0033】
凝集剤の添加量は、少なすぎると効果が小さいし、多すぎると経済的ではないので、現像廃液100質量部に対して、0.05〜2質量部添加することが好ましい。さらに好ましい範囲は、0.1〜1質量部である。
また、濃縮前に、現像廃液中の分散物を、フィルター等で減量することでも、当然、膜張りの程度を抑制することができる。
【0034】
以下、参考例、実施例、及び比較例により本発明について具体的に説明する。
【0035】
【参考例】
(1)親水性のラジカル系共重合体(A)の合成
撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125質量部および乳化剤(α−スルホ−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、商品名:アデカリアソープSE1025(旭電化工業製))3質量部を初期仕込みし、内温を重合温度に昇温し、表1および2にそれぞれ示した単量体混合物とt−ドデシルメルカプタンの油性混合液と水28質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2質量部、水酸化ナトリウム0.2質量部および乳化剤(商品名:アデカリアソープSE1025(旭電化工業製))1質量部からなる水溶液をそれぞれ5時間および6時間かけて一定の流速で添加した。そして、そのままの温度で1時間保って、重合反応を完了した後、冷却した。ついで、生成した共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpHを7に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去し、200メッシュの金網で濾過し、最終的には固形分濃度が40wt%になるように調整して親水性共重合体溶液を得た。親水性共重合体の粒子径は日機装株式会社製、商品名、MICROTRAC粒度分析計(型式:9230UPA)を用いて数平均粒子径として求めた。
乳化重合した溶液を60℃で乾燥し親水性共重合体を得た。
【0036】
(2)感光性樹脂組成物および感光性樹脂版の作成
(1)で得た親水性のラジカル系共重合体(A)30質量部と、スチレンブタジエンブロック共重合体[クレイトンD−KX405:シェル化学製]30質量部を、加圧ニーダを用いて140℃で10分混合後に、 液状ポリブタジエン[B−2000:日本石油化学製]30質量部と、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート3質量部と、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート2質量部と、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート5質量部と、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン2質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1質量部を15分かけて少しずつ加えて、加え終えてからさらに10分間混練し、感光性樹脂組成物を得た。
【0037】
この組成物を取り出し、片面が熱可塑性エラストマーを用いた接着剤がコートされた厚さ100μのポリエステルフィルム(以下PETと略す)ともう片方は厚さ5μのポリビニルアルコール(PVA)がコートされた厚さ100μのPETでサンドイッチしてプレス機を用いて130℃で厚み3mmの板状に成形した。
【0038】
(3)印刷版の作成
(2)で得た接着剤がコートされたPETの側から、硬化層の厚さが1.8mm程度となるように、紫外線露光機(日本電子精機製JE−A2−SS)を用いて露光した。次に、PVAがコートされた方のPETをPVAが樹脂面に残るようにして剥ぎ、印刷画像のネガを密着させ前記露光機で10分間露光した。露光後に、ネガフィルムを剥がして、高級アルコールアルキレンオキシド付加物4wt%、ジエチレングリコールジブチルエーテル0.4wt%、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル0.5wt%および炭酸ナトリウム0.4wt%の水溶液(水系現像液)を調製し、日本電子精機製洗浄機(JOW−A3−P)を用いて、40℃で洗浄し、未露光部を除去した。乾燥後、紫外殺菌線ランプ、紫外線ケミカルランプで後露光して印刷版を作成した。
【0039】
(4)現像廃液
(3)の現像液で、現像液中の未露光部の感光性樹脂濃度が6wt%となった現像廃液30kgを用いて、実施例および比較例の処理を行った。
【0040】
(5)物性評価試験
(評価a)分離度(濃縮度)
実施例処理後の凝縮液量や比較例処理後の濾液量は多い方が良く、2時間処理後の濾液量が16kg以上を合格、16kg未満を不合格とした。
【0041】
(評価b)水層の浄化度
処理後の凝縮液や濾液の水の純度は高い方がよい。水層中の感光性樹脂組成物の光重合性不飽和単量体(C)および光重合開始剤(D)の含有量は、ガスクロマトグラフィーで測定し、ポリマーおよびオリゴマー成分量は、60℃減圧乾燥による乾燥重量で、界面活性剤は、液クロマトグラフィーで測定し求めた。これらの含有量は少ないほうが好ましく、光重合性不飽和単量体、光重合性開始剤、オリゴマー、親水性共重合体、熱可塑性エラストマーおよび界面活性剤の水層中の合計が、1wt%未満を合格とし、1wt%以上を不合格とした。
【0042】
【実施例1】
現像廃液30kgに、消泡剤(KM72F、信越化学工業製、商品名)を、30g添加し、図4に示した装置で、濃縮器の温度を40℃に設定、2時間減圧蒸留を行った結果、得られた凝縮液は18kgで、凝縮液中の不純物は、1wt%未満で、CODおよびBODがともに、600mg/l以下であった。また、濃縮液は流動性が高く抜き出しも容易で、濃縮器内のポリマーの付着も水で流し落とせる程度であった。要したヒーターのエネルギーは、16.3kW・hであった。
【0043】
【実施例2】
現像廃液30kgに、消泡剤KM72F(信越化学工業製、商品名)を、30g添加し、図1に示した装置で、濃縮器の温度を40℃に設定、2時間減圧蒸留を行った結果、得られた凝縮液は18kgで、凝縮液中の不純物は、1wt%未満で、CODおよびBODがともに、600mg/l以下であった。また、濃縮液は流動性が高く抜き出しも容易で、濃縮器内のポリマーの付着も水で流し落とせる程度であった。要したエネルギーは、5.4kW・hであった。
【0044】
【比較例1】
現像廃液30kgに、高分子凝集剤(アロンフロックC−303、東亜合成製、商品名)を、600g添加し、室温で、4時間攪拌し、通気量145ml/cm2・secの不織布を直径15cmにカットし、2時間濾過した。得られた濾液は15kgで、濾液には、樹脂組成成分および界面活性剤が、1wt%以上混入した。
【0045】
【実施例3】
図5に示した装置で、現像廃液50kgに、消泡剤KM72F(信越化学工業製、商品名)を、50g添加し、そのうち30kgを濃縮器に入れ、濃縮器温度を40℃に設定、現像廃液を、10kg/hの速度で濃縮器に供給しながら、2時間減圧蒸留を行った結果、得られた凝縮液は19kgで、凝縮液中の不純物は、1wt%未満で、CODおよびBODがともに、600mg/l以下であり、また濃縮器内の現像廃液の液面は、常に初期の1/2以上に保っていた。濃縮液は、実施例2より、流動性が高く抜き出しも容易で、濃縮器内のポリマーの付着も水で容易に流し落とせた。
【0046】
【実施例4、5】
現像廃液30kgに、実施例4では凝集剤(アロンフロックC−303、東亜合成製、商品名)、実施例5では凝集剤(ユニセンスCP−101、センカ株式会社製、商品名)を、150gそれぞれ添加し、実施例1と同様な方法で、処理速度をみるため、減圧蒸留を開始して、1時間後の凝縮液の量を測定した。その結果、1時間減圧蒸留後の凝縮液の量は、実施例1では、18kgに対し、実施例4では、19kgであり、実施例5では、20kgで、処理速度が上がった。
【0047】
【実施例6、7、8、9、10】
実施例1〜5より得られた凝縮液を、それぞれ現像液の希釈剤(水の代替)として、再使用し、(3)で示した現像液組成を調整した現像液で、樹脂版を作成した場合、得られた樹脂版表面は、水を希釈剤として得られた樹脂版表面と同等に滑らかであった。
【0048】
【比較例2】
比較例1で得られた濾液を、現像液の希釈剤として、現像液の希釈剤(水の代替)として、再使用し、(3)で示した現像液組成を調整した現像液で、樹脂版を作成した場合、得られた樹脂版表面に、微細なクラックが入り、印刷に支障をきたした。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、水と樹脂成分の分離性がよく、且つ分離した樹脂等の有機物を含む成分の取り扱い性がよく、さらには経済的にも優れた水現像可能な廃液処理方法の提供を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の例であり、ヒートポンプ方式の例を示す概念図。
【図2】本発明装置の例であり、自己蒸気圧縮方式の例を示す概念図。
【図3】本発明装置の例であり、自己蒸気圧縮方式の別の例を示す概念図。
【図4】実施例1および2で用いた装置を示す概念図。
【図5】実施例3で用いた装置を示す概念図。

Claims (9)

  1. 水系現像可能な感光性樹脂版を露光後、水あるいは水と界面活性剤とを含有する現像液で未露光部を除去して現像する際に発生する現像廃液を処理する方法であって、現像廃液中の水を2気圧以下の条件下に蒸発せしめて、未露光部の樹脂を含有する濃縮液と水を主体とする凝縮液とに分離することを特徴とする感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  2. 蒸発させた水蒸気の潜熱を回収し、蒸発のためのエネルギーとして使用することを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  3. ヒートポンプを用いて、蒸発させた水蒸気の潜熱を回収し、蒸発のためのエネルギーとして使用することを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  4. 現像廃液中の水を蒸発させて生じた水蒸気を圧縮昇温し、蒸発のためのエネルギーとして循環使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  5. 現像液が少なくとも水、界面活性剤、さらに沸点が130℃以上の有機溶剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  6. 水を主体とする凝縮液を現像液の希釈液として再利用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  7. 現像廃液中の水の蒸発を、濃縮器中の現像廃液の液面の高さを一定範囲に保つように調整しながら行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  8. 現像廃液に凝集剤を添加することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂版現像廃液の処理方法。
  9. 感光性樹脂版現像廃液中の水を蒸発させるための蒸発器およびガス圧縮機を備えてなり、水蒸気の潜熱を蒸発のためのエネルギーとして循環使用可能とした感光性樹脂版現像廃液の処理装置。
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