JP2004060404A - 免震装置及び免震構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】相対配置された地盤側の基礎12と当該基礎12の上方に位置する上部13との間に免震装置10が設けられている。この免震装置10は、地震時等に建物18に付与される振動エネルギーを摩擦抵抗力で減衰させる摩擦ダンパーとして機能し、且つ、基礎12及び上部13の水平方向の相対移動を平行移動に限定する捩れ防止手段としても機能するダンパー22を備えている。このダンパー22は、地震が発生したときに、基礎12及び上部13の水平方向の相対移動を平行移動に限定して上部13の捩れ変形を規制する。ここで、他方の分離体側の残留変形を規制する残留変形防止手段を有する他のダンパー22を併用してもよい。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は免震装置及び免震構造に係り、更に詳しくは、建物等の捩れ変形や残留変形を防止するのに好適な免震装置及び免震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物に適用される公知の免震装置としては、例えば、特開平9−264376号公報に開示されたものがある。この免震装置は、基礎と建物との間に配置されたアイソレーター及びダンパーを備えて構成されており、地震が発生したときに、地盤側からの振動を建物に伝達し難くすることで建物の揺れを低減するように作用する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記免震装置にあっては、装置自体に建物の捩れ変形を防止する機構が設けられていないため、偏心の大きな建物の場合には、地震が発生すると、免震装置が適用されていない建物同様に、捩れ変形が発生し易く、当該捩れ変形に伴う建物の破損や倒壊等を招来するという不都合がある他、更に、地震終了後に免震装置に残留変形が残り建物の継続使用に不都合がある。
【0004】
ところで、前記ダンパーやアイソレーターを建物の捩れ変形を規制するように配置することで、当該捩れ変形を防止することも理論上可能である。ところが、この場合には、建物の特性が大きく変化したとき、例えば、建物の増改築等によって建物の重心位置や剛心位置が大きく変わったとき、若しくは、建物の総重量が大きく変わったとき等に、これら建物の特性に合わせてダンパーの配置をも変えなければ、建物の捩れ変形を効果的に防止できないという不都合がある。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、これら不都合に着目して案出されたものであり、その主目的は、基礎及び上部等からなる一対の分離体のうち一方の分離体側から地震等の振動が付与されたときに、他方の分離体側の変形を少なくすることができる免震装置及び免震構造を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、分離体を構成する上部に設置される建物の構造種別によらず適用でき、更に、増改築等によって建物の特性が変わったときでも、免震装置の配置を変えずに建物の捩れ変形を確実に防止することができる免震構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記主目的を達成するため、本発明は、相対配置された一対の分離体の間に設けられる免震装置において、
前記各分離体の相対面に沿う方向の相対移動を平行移動に限定する捩れ防止手段を備える、という構成を採っている。このような構成によれば、地震等による振動が分離体の一方側から付与されたときでも、捩れ防止手段によって、各分離体の相対面に沿う方向の相対移動が平行移動に限定されるため、各分離体の捩れ方向の相対移動が規制され、他方の分離体の捩れ変形を防止することができる。
【0008】
ここにおいて、前記捩れ防止手段は、各分離体を連結するリンク機構により構成され、当該リンク機構の回転節に摩擦抵抗を発生させる摩擦付与部材を設けることで、一方の分離体側に地震等の振動が付与されてリンク機構が作動すると、その回転節で摩擦抵抗が発生し、一方の分離体側の振動エネルギーを吸収することができる。すなわち、摩擦ダンパーに捩れ防止手段が併設され、これによって、ダンパーと捩れ防止手段を有する他の装置とを別配置する必要がなくなり、免震装置を構成する部品点数を低減でき、ひいては、施工上の手間を軽減することができる。
【0009】
また、本発明は、相対配置された一対の分離体の間に設けられる免震装置において、
振動付与後の所定部位の残留変形を抑制する残留変形防止手段を備える、という構成を採っている。このような構成によれば、地震の終了後に発生する分離体相互の残留変形を略ゼロにでき、若しくは、従来よりも大幅に低減することができる。
【0010】
ここで、前記残留変形防止手段は、前記各分離体が離間接近する方向に動作する付勢機構により構成され、当該付勢機構は、前記各分離体が相対変位したときに、原状態への復帰を促進する、という構成を採っている。この際、前記付勢機構の動作に追従して摩擦抵抗を発生させる摩擦機構を更に備えると、摩擦機構と付勢機構とが一体化した摩擦ダンパーとすることができ、これによって、前記捩れ防止手段に摩擦付与部材を併設した場合における前述の効果と同様の効果が得られる。
【0011】
また、本発明は、前記免震装置を建物に適用した免震構造であって、
前記分離体は、地盤側の基礎と、当該基礎の上方に位置するとともに、前記建物を含む上部とからなり、前記捩れ防止手段は、前記基礎及び上部の水平方向の相対移動を平行移動に限定する、という構成を採ることができる。このような構成によっても、地震等が発生したときに、建物の捩れ変形を効果的に防止することができる。特に、免震装置の位置に拘わらず、基礎及び上部の水平方向の相対移動を平行移動に限定して建物の捩れ変形を常に防止することができる。従って、施工時に免震装置の厳密な配置が不要となる他、増改築等によって建物の特性が大きく変わったときでも、免震装置の配置を変えずに建物の捩れ変形を防止することが可能となる。ここで、前記上部は、前記建物が載る土台を備え、当該土台が前記免震装置を介して前記基礎に連結される、という構成を採るとよい。これにより、建物に免震装置を直接取り付けなくても良いため、建物の増改築時に免震装置を取り外す必要がなく、免震装置の脱着に伴う施工の煩雑化を回避することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1実施例]
図1には、第1実施例に係る免震装置が適用された免震住宅の概略分解斜視図が示され、図2には、図1のA−A線に沿う拡大断面図が示されている。これらの図において、免震装置10は、相対配置された一対の分離体、すなわち、地盤側の基礎12と当該基礎12の上方の上部13との間の免震層に設けられており、地震が発生したときに、上部13の振動及び捩れ変形を規制するように作用する。
【0014】
ここで、基礎12は、特に限定されるものではないが、平面視略長方形状の枠体をなす外周部14を含んで構成されており、当該外周部14の上端面に免震装置10が取り付けられている。
【0015】
一方、上部13は、基礎12の直上に位置する土台17と、この土台17の上に載った状態で当該土台17に固定された建物18とにより構成されている。土台17は、特に限定されるものではないが、基礎12の外周部14に対応した平面視略長方形状をなす枠体状の外周材19を含んでいる。この外周材19の下端面には、免震装置10が取り付けられ、これによって、基礎12と土台17とが免震装置10を介して連結されることになる。なお、土台17は、図示例のように、縦断面視コ字状をなす鋼材によって形成する他、H型鋼等によって形成してもよく、その形状は問わない。
【0016】
前記免震装置10は、基礎12及び土台17に配置されるアイソレーター21と、所定のリンク機構により構成されるとともに、略同一高さで配置される二個のダンパー22,22とにより構成されている。
【0017】
前記アイソレーター21は、地震が発生したときに、建物18の揺れを基礎12の揺れに対して緩やかにするものであり、本第1実施例においては、ボールベアリング支承構造を有する公知のアイソレーターが採用されている。すなわち、ここでのアイソレーター21は、図2に示されるように、基礎12側に固定された受け部材24と、当該受け部材24上を転動する球状部材25と、この球状部材25を保持するとともに、土台17側に固定された球保持体26とを備えており、受け部材24上を球状部材25が転動することで、基礎12及び土台17の水平方向の相対移動が可能となっている。なお、アイソレーター21としては、図示例に限定されず、積層ゴムからなるアイソレーター等、他のアイソレーターを採用することも可能である。
【0018】
前記ダンパー22は、地震時等における振動エネルギーを摩擦抵抗力により減衰させる摩擦ダンパーとして機能する他、基礎12及び上部13の水平方向の相対移動を平行移動に限定する捩れ防止手段としても機能する。すなわち、ダンパー22は、図3〜図5に示されるように、基礎12及び土台17を連結する複数本のアーム28と、これらアーム28に対する関節部位となる回転節29とを備えて構成されている。
【0019】
前記アーム28は、ステンレス材等の鋼材によって形成されており、基礎12に連結される一対の基礎連結部31,31と、土台17に連結される一対の土台連結部32,32と、これら各連結部31,32に連なって図4中左右方向に延びる中間連結部33とからなる。
【0020】
前記基礎連結部31は、図3及び図5に示されるように、上下に相対配置される長片状の上片35及び下片36により構成され、これら上片35及び下片36は、相互に略同一長さに設定されている。また、土台連結部32についても、基礎連結部31と実質的に同一の上片37及び下片38により構成されている。更に、前記中間連結部33は、前記各片35〜38よりも長い長片状とされて上下に相対配置される上片39及び下片40により構成されている。
【0021】
前記回転節29は、図3〜図5に示されるように、基礎12及び土台17に対して、基礎連結部31,31及び土台連結部32,32をピン接合する図4中下側四箇所のピン節42と、基礎連結部31及び土台連結部32の相対移動を許容する同図中上側二箇所の摩擦節43とからなる。
【0022】
前記ピン節42は、基礎連結部31,31及び土台連結部32,32の一端側31A,31A、32A,32Aにそれぞれ設けられており、これら連結部31、32の回転を許容した状態で、当該連結部31、32を基礎12及び土台17に固定するようになっている。ここで、各ピン節42は、実質的に同一構造となっており、以下のピン節42の構造の説明においては、図4及び図5中最も左側に位置するピン節42について説明する。
【0023】
このピン節42は、上片35及び下片36の間に固定されるスペーサ45と、上片35の上面側及び下片36の下面側に固定されるリング状部材46とを備えている。これら各片35,36、スペーサ45及びリング状部材46には、基礎12に形成された貫通穴H1(図3参照)に連通する貫通穴H2(図5参照)が形成されている。これら各貫通穴H1,H2には、ボルトBが挿通され、ナットNで基礎連結部31が基礎12に取り付けられる。ここで、前記スペーサ45は、公知のベアリング機能を有し、挿通されたボルトBとの相対回転を許容するようになっており、これによって、基礎連結部31は、基礎12に対して回転可能にピン接合されることになる。なお、ピン節42は、前述の構造に限定されず、連結部31,32を基礎12及び土台17に対して回転可能に接合するものであれば何でもよい。
【0024】
前記摩擦節43は、中間連結部33の左右両端側に位置し、当該左右両端側と、基礎連結部31,31及び土台連結部32,32の各他端側31B,31B、32B,32Bとが、ボルトB及びナットNを用いて相対回転可能に接合されるようになっている。すなわち、摩擦節43では、図5に示されるように、各連結部31〜33の各片35〜40が互い違い積層された状態となっており、それらの位置関係は次のようになっている。つまり、上から、中間連結部33の上片39、土台連結部32の上片37、基礎連結部31の上片35、土台連結部32の下片38、基礎連結部31の下片36、中間連結部33の下片40の順で積層配置されている。これら各片35〜40の間には、摩擦節43に回転摩擦抵抗を発生させる摩擦付与部材としての摩擦パッド49が設けられている。この摩擦パッド49は、特に限定されるものではないが、樹脂製のリング状をなしており、基礎連結部31及び土台連結部32が相対回転する際、つまり、基礎12と土台17とが水平方向に相対移動する際に、所定の摩擦抵抗力を発生させるようになっている。具体的に、摩擦パッド49は、建物18の風揺れを防止可能な摩擦抵抗力を発生させるとともに、想定される大きさの地震に対して、地盤側からの振動エネルギーを有効に減衰できる摩擦抵抗力を発生可能となっている。なお、アーム28が鉄製等の場合には、摩擦パッド49が接触する当該各片35〜40の摩擦面を適宜研磨すると一層良好な摩擦ダンパー効果が得られる。
【0025】
以上のように構成されたダンパー22は、図3及び図4に示された状態で基礎12及び土台17に取り付けられる。つまり、一対の基礎連結部31,31は、略同一の高さ位置に設けられて相互に平行とされる。また、一対の土台連結部32,32も、略同一の高さ位置に設けられて相互に平行とされる。ここで、基礎連結部31と土台連結部32との交差角度α1(図4参照)は略90度とされる。更に、四箇所のピン節42は、略一直線上に並ぶように配置され、これらピン節42を結ぶ仮想直線L(図4参照)に対して略平行となるように、中間連結部33が配置される。ここで、中間連結部33と基礎連結部31との交差角度α2、及び、中間連結部33と土台連結部32との交差角度α3は、それぞれ略45度とされる。
【0026】
このように基礎12及び土台17に取り付けられたダンパー22は、図6に示されるように作動する。なお、図6においては、図面上の錯綜を回避するため、土台17の平面形状を図1に対して相対的に小さな方形状とした点、了解されたい。
【0027】
先ず、図6(A)の初期状態から地震が発生して基礎12が振動した場合、基礎連結部31と土台連結部32とが、摩擦節43を中心として水平面内を相対回転する。このとき、基礎連結部31,31の一端側31A,31Aが基礎12に固定されている一方、土台連結部32,32の一端側32A,32Aが土台17に固定されているため、基礎連結部31,31の平行状態と土台連結部32,32の平行状態が維持されたまま、各連結部31,32が相対回転される。このように連結部31,32が相対回転すると、図6(B)に示されるように、土台17は、同(B)中破線で示される初期位置から同図中二点鎖線で示される位置に平行移動することになり、基礎12に対する土台17及び建物18の捩れ方向の移動が規制されることになる。この際、摩擦節43で摩擦抵抗が付与され、基礎12側の振動エネルギーが減衰されることになる。このような作用は、ダンパー22の設置位置に拘わらず、建物18の総重量が大きく変化しても、或いは、増改築等で建物18の偏心状態が変わったときでも常に保障されることになる。
【0028】
従って、このような第1実施例によれば、地震が発生したときに、ダンパー22によって、建物18の最大変形及び最大加速度を低減できるばかりか、建物18の捩れ方向の相対移動を規制することもでき、建物18の捩れ変形による建物の倒壊や破損を防止できるという効果を得る。特に、建物18の特性が変わったときでも、ダンパー22の設置位置を変えずに建物18の捩れ変形を防止できるため、建物の増改築の際に、ダンパー22の配置変更や交換等を不要にし、免震構造が適用されていない建物と略同様の工程で増改築を行うことができる。
【0029】
なお、前記捩れ防止手段の形状や構造は、前記第1実施例のものに限定されず、基礎12と上部13との水平方向の相対移動を平行移動に限定できる限りにおいて、種々の形状や構造のものを採用することができる。
【0030】
また、前記第1実施例のダンパー22に対して摩擦パッド49を省略した捩れ防止装置を採用することもできる。この場合は、基礎12と土台17との間に、後述する第2実施例のダンパー52やその他のダンパーが別途配置されることになる。
【0031】
更に、ダンパー22は、前記図示例の取付位置に限定されるものではなく、基礎12や土台17の形状に合わせて任意に取付可能である。また、ダンパー22は、一箇所若しくは三箇所以上に設置してもよい。ここで、前記第1実施例のようにダンパー22を対称配置すると、当該ダンパー22が加力方向に非対称性を有している場合でも、当該非対称性を相殺して設計上の計算を簡単に行うことができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施例について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施例と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【0033】
[第2実施例]
この第2実施例は、図7に示されるように、前記第1実施例に対し、免震装置10として、基礎12及び土台17を連結する他のダンパー52を更に備えたところに特徴を有する。なお、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」は、特に明示しない限り、図8における「上」、「下」、「左」、「右」を意味する。
【0034】
前記ダンパー52は、基礎12の各辺一箇所づつとなる合計四箇所に設けられている。このダンパー52は、図8(A)に示されるように、右半分側に位置して、地震時等における振動エネルギーを摩擦抵抗により減衰させる摩擦機構53と、左半分側に位置するとともに、地震による振動付与後における残留変形を抑制する残留変形防止手段としての付勢機構54とを備えて構成されている。
【0035】
前記摩擦機構53は、基礎12及び土台17の何れか一方(本実施例では基礎12側)に連結される右端側の連結部56と、この連結部56に連なる中空の本体57と、この本体57の内部で左右方向に摺動可能に収容された鋼製の摺動部59と、本体57の内壁部分と摺動部59の外周部分との間に介装されるとともに、前記第1実施例の摩擦パッド49と同様の効果を奏する摩擦パッド61と、この摩擦パッド61を本体57に固定するボルトB及びナットNとを備えている。前記本体57の左端側には、上下両方向に屈曲する外向きの屈曲部63,63が形成されている。前記摩擦パッド61は、ボルトB及びナットNの締め付けによって所定の圧力が付加されている。なお、ボルトB及びナットNは、摺動部59に非干渉となる位置に設けられており、当該摺動部59の摺動は、ボルトB及びナットNによって規制されることはない。
【0036】
前記付勢機構54は、左右方向に重ね合わされた複数の皿ばねからなる付勢部材64と、この付勢部材64の略中央を貫通して左右に延びる軸部材65と、この軸部材65の上下両側で左右に延びるガイド66,66と、付勢部材64の右端側に相対配置された押部材68と、各ガイド66の右端側に固定されたストッパ69とを備えている。
【0037】
前記付勢部材64は、ガイド66,66と押部材68とで囲まれる空間内に配置されており、通常時の状態である図8(A)の初期状態では、ある程度圧縮された状態でセットされている。なお、付勢部材64としては、前述した皿ばねに限定されず、後述する作用を奏する限りにおいて、コイルばね等の他のばねやゴム等の他の弾性部材を採用することもできる。
【0038】
前記軸部材65は、その右端側が前記摺動部59に固定される一方、その左端側が、基礎12及び土台17の何れか他方(本実施例では土台17側)が連結される連結部65Aとなっている。この軸部材65は、付勢部材64及び押部材68の略中央を貫通しており、これら各部材64,68に対して左右方向に相対移動可能となっている。また、軸部材65には、押部材68の右側の一定位置にリング状の移動規制部材71が固定されている。この移動規制部材71は、押部材68の軸挿通穴よりも大きな外径を備えるとともに、図8(A)の初期状態では、押部材68の右端側に略当接するように配置されている。
【0039】
前記各ガイド66は、前記押部材68が摺動可能に係合するとともに、この押部材68の右側で前記屈曲部63が摺動可能に係合しており、これら屈曲部63と押部材68は、各ガイド66に沿って左右方向にスライド可能となっている。なお、屈曲部63と押部材68の右方へのスライドは、前記ストッパ69によって規制される。
【0040】
このような構成のダンパー23は、所定の条件で、図8(A)の初期状態から、同図(B),(C)に示される状態に変化する。
【0041】
すなわち、図8(A)の初期状態から地震が発生して基礎12が振動し、一定以上の力がダンパー52に作用すると、基礎12側に連結される連結部56と、土台17側に連結される連結部65Aとが、それらを結ぶ直線に略沿って水平方向に離間接近するように付勢機構54が動作し、この動作に追従して摩擦機構53で摩擦力を発生する。
【0042】
具体的に、各連結部56,65Aが相互に接近する圧縮方向に所定の力が作用した場合、図8(B)に示されるように、屈曲部63が押部材68を押しながら各ガイド66に沿って左方に移動して付勢部材64を初期状態から更に圧縮する。従って、この場合は、各連結部56,65Aが相互に接近して、基礎11及び土台17が初期状態から接近する。このとき、本体57の左方への移動により、摺動部59が本体57と相対的に摺動することになり、これによって、摺動部59と摩擦パッド61との直線的な相対滑りによる摩擦抵抗が発生し、基礎12側からの振動エネルギーが減衰される。
【0043】
一方、各連結部56,65Aが相互に離間する引張方向に所定の力が作用した場合、図8(C)に示されるように、本体57側は、ストッパ69によりガイド66との相対移動が規制されるが、軸部材65は、移動規制部材71が押部材68の右端に引っ掛かって当該押部材68と一体的に左方に移動し、この場合も、付勢部材64が初期状態から更に圧縮されることになる。従って、この場合は、各連結部56,65Aが相互に離間して、基礎11及び土台17が初期状態から離間する。このときにおいても、摺動部59が本体57内を相対的に摺動することになり、基礎12側からの振動エネルギーが減衰される。
【0044】
以上の各場合のように、原状態すなわち初期状態からの各連結部56,65Aの相対変位は、付勢部材64が予め圧縮された状態となっているため、当該付勢部材64を更に圧縮させることが可能となる一定以上の力が必要になる。また、各連結部56,65Aが初期状態から相対移動した後、再び初期状態に復帰する際には、当該復帰が付勢機構54により促進される。つまり、この際には、更に圧縮された付勢部材64の復元力を利用して、基礎11及び土台17を原状態に復帰し易くする。また、このときも、摺動部59と摩擦パッド61との相対滑りで基礎12側からの振動エネルギーが減衰するが、ここでの摩擦力の大きさは、前記復元力を妨げない程度とされる。
【0045】
このように、ダンパー52は、基礎12,上部13がそれぞれ支持される連結部56,65Aの相対的な移動により、付勢部材64に更なる圧縮力が常に付与されるとともに、摩擦機構53によって変位方向に応じて正負逆の抵抗力を発生するようになっている。このダンパー52の特性は、図9(A)に示される付勢機構54の特性と、同図(B)に示される摩擦機構53の特性とを組み合わせてなる同図(C)のようになっている。なお、図9内における矢印は、変位方向を意味する。
【0046】
つまり、図9(A)の特性は、剛塑性型の履歴のない非線形ばね特性、つまり、一定力以上の力を付与しない限り原状態から変位せず、且つ、変位時には、変位の正負両方向共に、変位と荷重(抵抗力)とが略比例関係となる特性である。一方、図9(B)の特性は、略矩形状の履歴ループをなす通常の摩擦ダンパーの特性である。そして、これらの特性を組み合わせることで、図9(C)に示されるように、原状態から変位する際には、連結部56,65Aの離間接近の何れの場合にも、一定の力を付与しない限り変位せず、また、変位後は、荷重(抵抗力)と変位とが略正比例する関係になるとともに、原状態(原点)に復帰する際には、原状態から変位する場合よりも必要荷重(抵抗力)が減少する特性となる。
【0047】
従って、このような第2実施例によれば、地震が発生したときに、摩擦機構53によって、建物18の最大変形及び最大加速度を低減できる他、ダンパー52の付勢機構54により、土台17側を原位置に復帰させ易くすることができ、これによって、基礎12よりも図7中上方部分の残留変形を略ゼロにし、若しくは、従来よりも大幅に低減できるという効果を得る。
【0048】
なお、前記残留変形防止手段の形状や構造は、前記第2実施例のものに限定されず、基礎12と上部13との相対移動の原位置復帰特性を持たせる限りにおいて、種々の形状や構造のものを採用することができる。つまり、前記残留変形防止手段としては、一定以上の力が付加されない限り基礎12側と上部13側との相対変位を不能とし、且つ、当該相対変位した状態から原状態に復帰する時に、復帰前よりも抵抗力を減少させ、若しくは略ゼロにするものであればよい。
【0049】
また、ダンパー52は、前記図示例の取付位置に限定されるものではなく、基礎12や土台17の形状に合わせて任意に取付可能である。また、ダンパー52の取り付け数も前述に限定されない。
【0050】
更に、前記第2実施例においては、前記残留変形防止手段を第1実施例のダンパー22と併用したが、建物18の構造上、当該建物18の捩れ変形がさほど問題にならない場合等においては、ダンパー22を省略することもできる。
【0051】
また、前記第2実施例のダンパー52に対して摩擦機構53を省略した残留変形防止装置を採用することもできる。このとき、前記ダンパー22を含む他のダンパーを別途配置することが必要となる。
【0052】
更に、前記各実施例では、基礎12と土台17との間に免震装置10を設けたが、本発明はこれに限らず、土台17を省略して基礎12と建物18との間に免震装置10を設けてもよい。
【0053】
また、本発明に係る免震装置は、建物の免震構造に適用する他に、家具や置物の架台等に適用される免震構造等、相対配置された一対の分離体のうち一方の分離体への振動を絶縁するものに適用することができる。この場合は、相対する各分離体の相対面に沿う方向の相対移動を平行移動に限定し、一方の分離体の捩れ方向の相対移動を規制でき、及び/又は、振動停止時の残留変形を略ゼロにし若しくは従来よりも低減できればよい。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、各分離体の相対面に沿う方向の相対移動を平行移動に限定する捩れ防止手段を免震装置に備えたから、地震等による振動が分離体の一方側から付与されたときでも、各分離体の捩れ方向の相対移動が規制され、他方の分離体の捩れ変形を防止することができる。
【0055】
また、前記捩れ防止手段は、建物の特性に拘わらず、基礎及び上部の水平方向の相対移動を平行移動に限定可能となるため、増改築等によって建物の特性が変わったときでも、免震装置の配置を変えずに建物の捩れ変形を確実に防止することができる。
【0056】
更に、振動付与後の所定部位の残留変形を抑制する残留変形防止手段を備えたから、振動停止時の残留変形を略ゼロにし若しくは従来よりも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係る免震装置が適用された免震住宅の概略分解斜視図。
【図2】図2には、図1のA−A線に沿う拡大断面図。
【図3】図1の要部を分解した拡大斜視図。
【図4】前記免震装置を構成するダンパーの拡大平面図。
【図5】前記ダンパーの拡大正面図。
【図6】(A)は、ダンパーの初期状態を模式的に示した平面図であり、(B)は、前記初期状態からダンパーが作動した一状態を模式的に示した平面図である。
【図7】第2実施例に係る免震装置が適用された免震住宅の概略分解斜視図。
【図8】(A)は、第2実施例に係るダンパーの初期状態の概略断面図であり、(B)は、前記初期状態からダンパーが圧縮方向に作動した状態を示す概略断面図であり、(C)は、前記初期状態からダンパーが引張方向に作動した状態を示す概略断面図である。
【図9】(A)は、第2実施例に係る付勢機構の特性を示すグラフであり、(B)は、第2実施例に係る摩擦機構の特性を示すグラフであり、(C)は、第2実施例に係るダンパーの特性を示すグラフである。
【符号の説明】
10 免震装置
12 基礎(分離体)
13 上部(分離体)
17 土台
18 建物
22 ダンパー(捩れ防止手段)
29 回転節
49 摩擦パッド(摩擦付与部材)
52 ダンパー
53 摩擦機構
54 付勢機構(残留変形防止手段)
Claims (7)
- 相対配置された一対の分離体の間に設けられる免震装置において、
前記各分離体の相対面に沿う方向の相対移動を平行移動に限定する捩れ防止手段を備えたことを特徴とする免震装置。 - 前記捩れ防止手段は、各分離体を連結するリンク機構により構成され、当該リンク機構の回転節に摩擦抵抗を発生させる摩擦付与部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の免震装置。
- 相対配置された一対の分離体の間に設けられる免震装置において、
振動付与後の所定部位の残留変形を抑制する残留変形防止手段を備えたことを特徴とする免震装置。 - 前記残留変形防止手段は、前記各分離体が離間接近する方向に動作する付勢機構により構成され、当該付勢機構は、前記各分離体が相対変位したときに、原状態への復帰を促進することを特徴とする請求項3記載の免震装置。
- 前記付勢機構の動作に追従して摩擦抵抗を発生させる摩擦機構を更に備えたことを特徴とする請求項4記載の免震装置。
- 請求項1又は2記載の免震装置を建物に適用した免震構造であって、
前記分離体は、地盤側の基礎と、当該基礎の上方に位置するとともに、前記建物を含む上部とからなり、前記捩れ防止手段は、前記基礎及び上部の水平方向の相対移動を平行移動に限定することを特徴とする免震構造。 - 前記上部は、前記建物が載る土台を備え、当該土台が前記免震装置を介して前記基礎に連結されていることを特徴とする請求項6記載の免震構造。
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